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「杉本文楽 曾根崎心中」 神奈川芸術劇場

杉本文楽

「杉本文楽 木偶坊 入情 付り観音廻り 曾根崎心中」 KAAT神奈川芸術劇場 8月15日 17時~
公式サイト:http://sugimoto-bunraku.com/

文楽を一度も観たことがないくせに、「杉本文楽 曾根崎心中」に行ってしまった。
「木偶坊 入情 付り観音廻り」は、「でくのぼう、いりなさけ、つけたりかんのんめぐり」と読む。
文楽を観たことがない人でも楽しめる内容だったのは、曾根崎心中という心中ものが演目であったことも大きいと思う。
男女の刃傷沙汰は、古今東西相通ずるものがある。例えて言えばシェークスピアの「ロミオとジュリエット」が近松に先だって書いている。

「杉本文楽」は当初、3月に上演の予定が震災により中止。3月上演前に、青山ブックセンター本店で杉本博司さん、橋本麻里さんを聴き手に、公演にまつわる裏話や解説などの講演会にも参加していたので、やむを得ないこととはいえ、がっかりした。
チケット払い戻し再上演はないのかと諦めていたところ、今回の再上演が決定。
ただし、チケット代が3月の倍に跳ね上がっていたのはきつかった。
何とかA席のチケットを入手し本番に臨む。

人形の顔をアップにした映像と観音めぐりだけに、関西のお寺の名前の看板が順々に上映されていく。スクリーンは正面に大きいのがひとつ、左にひとつ。

文楽は元々人形をひとりの人形遣いが動かしていたことに端を発し、現在の3人遣いになったと、ブログ「Art and The City」のcatnoelさん(たまたま同じ回を観に来られていた)に教えていただく。
catnoelさんの青山ブックセンターでのトークまとめ → http://ameblo.jp/noel0901/entry-10987325260.html

1人遣いは冒頭の場面だけ、後は通常の3人遣いである。

奥行きのある長い花道から人形が少しずつ舞台前面に登場するかと思えば、せり上がりから天井スポットを浴びながら、登場したり、退場したり。
通常の文楽では観られない舞台装置や演出が随所に見られる。

また、杉本博司さん所蔵の「十一面観音」(平安時代)も舞台美術のひとつとして、役目を与えられ登場。
お初が観音像につつと寄り添う場面など、杉本演出が随所に見られる!
その後、いとうせいこう氏のtwitterでの呟きで、舞台装置として使われていた神社のお社も古美術品と知った。ということは、あれも杉本さん所蔵品。。。

こうした演出もさることながら、私の心を捉えたのは浄瑠璃語りの太夫の朗々とした場内に響き渡る声と三味線の音色。通常の文楽では三味線だけのようだが、今回は他の楽器も使用されていた。特に冒頭鳴っていたのは胡弓もまた忘れがたいが、これはさすがに初演ではなかっただろう。

今年に入って、能も一度観に行ったが、この時も謡に痺れた。
テレビで聴く謡と生で聴く謡や鼓の音の響き、この違いはあまりに大きかった。

今回も独特の節回しでまるで音楽のような浄瑠璃語りが、実に素晴らしい。

更に文楽と言えば、人間でなく人形が役を演じるのだが、小さな動きひとつひとつ、身をくねらせ、時にコミカルな演技を見せ、動きはかなり激しい時もあった。

クライマックスの心中シーンに入る前には、モノクロで松林の映像がゆっくりと背後のスクリーンン流れ、いかにも杉本さんらしい背景。
同時に本当の火を使用してひとだまを飛ばしていた。これは、歌舞伎ではよくあるらしいと翌日知った。
縦に横に上下にと空間をダイナミックに使用するのも通常文楽との大きな違い。
女性役の人形たちの着物にも注視。何度か衣装替えもある。実は、この着物には、エルメスのスカーフが使用されている!

最後の心中で短刀を取りだす場面、お初を刺し、自らの首に刃物を当てるその姿は、魂が宿っているようにも見え、人間以上にリアルに心中を再現していたのに驚く。

場内が暗転し舞台が終了した後、人形遣いの方、太夫、三味線の皆さん全員が顔出しで観客へご挨拶して下さった。
最後にせり上がりから登場された人形遣いの方は、両手を広げ観客の声援にこたえて下さった。
壇上に上がられた皆さん全員が、とても晴れやかで誇らしげで、かつ、舞台を楽しんでおられる様子が伝わってきたのが何より嬉しかった。

杉本氏の申し出に応じ、新しい試みにチャレンジされた文楽界の重鎮の方々のご英断に、心から敬意を表したい。

伝統芸能をそのまま継承していくことは勿論重要なことだと思うけれど、現代において文楽を継続して行くには、時に新しい試みも必要なのではないだろうか。時代に即して、素晴らしい舞台ができれのであれば、それはそれとして評価されるべきことだと思う。
勿論、古来からの文楽も継続していくことは大前提として必要だと思っている。
従来の文楽、新しい文楽の共存によって、新たな文楽ファンの増加、ひいては伝統芸能たる文楽の継承につながるのではないだろうか。

今回の公演は、海外、例えばニューヨークあたりで上演したら評判になりそう。
海外へ日本の伝統芸能を持っていく、そんな試みがあっても良いのにと勝手な妄想は膨らむのだった。

当日券も出るようなので、興味をもたれた方はぜひ、足を運ばれることをお薦めします。

再演を期待したいものです。
8月17日最新情報:9月25日21時~放送日程が変更になりました。10/16(日)22時~TV:NHKEテレにて、ETV特集「杉本文楽」(仮)で公演ドキュメンタリー番組がオンエアされるそうです。そういえば、昨日の公演にTVクルーが入るって貼紙があったのはそのせいか。録画必至ですね。
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マレビトの会 『HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』 自由学園明日館講堂

昨日で終了してしまったが、約1ヶ月にわたる舞台芸術の祭典「フェスティバル/トーキョー」略してF/T10のプログラムであるマレビトの会 『HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』を観て来た。

今秋京都でも上演されていて、私が最初この演劇のポスターを見つけたのは京都藝術センターだった。
展覧式演劇というのに惹かれたのだが、テーマ性の重さといわゆる「演劇」は苦手なので、今回東京でも上演されると知っていたが前売り券の購入は見送っていた。
しかし、上演後twitter上での評判がすこぶる良く、フォロワ-さんからのお薦めもあって最終上演の当日券で鑑賞することができた。
本当にtwitterとフォロワーさんには感謝です。

しかし、百聞は一見に如かずとはよく言ったもの。
いわゆる劇場で観る演劇とこの 『HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』はまるで異なっていた。
例えていうなら、演技者によるパフォーマンス&映像で見せる展覧会に近い。
また、会場が素晴らしかった。
自由学園明日館はフランク・ロイド・ライトの設計で著名な建築で以前から行ってみたいと思っていたが、明日館は外観しかのぞめなかったが、このプログラムは講堂で開催されていたので、もちろん中に入って鑑賞。
外光が差し込む中で観る演劇は新鮮、演劇は暗い劇場の中で観るという常識を既に会場からして打ち破っていた。

内容は以下のF/T10の公式サイトによるプログラム紹介をご参照いただくとして、私個人の勝手な感想を書いてみる。
http://www.festival-tokyo.jp/program/marebito/

演技者は全部で13人。
講堂の中に、点在していて、最初に受付で渡される配置図により番号が振られた場所を中心に演技を行っているが、時に動き歩きまわったり、演技時間外の時はいなかったりする。
タイムテーブルがあり、同一人の演技の中でコアな部分には黒い編みかけが付されているので、この編みかけの演技者を追いかけるのが一番効率よくこの演目を観る方法だったのだと30分後に気がついた。
同時並行で、何人もが互いに直接的に関係ない演技を始めるので、最初は勝手が分からず戸惑った。
つまり、誰の演技を観るのが良いのか分からなかったのだ。
同時に複数のチャネルから台詞や演技、視覚と聴覚による刺激を受けて、一つに集中するのが慣れないうちは難しい。
暫くすると、慣れて来て、とりあえず面白そうな演技をしている人の傍に寄って行って一人の演技に集中することにした。約20~30分でコアな演技部分が終了するが、すぐに別の演技者の演技が始まるのでまたそちらに移動する。
鑑賞者回遊型の演劇なのだ。
当初恐れていたずっと立ちっぱなしで鑑賞するのかという心配は杞憂で、壁にもたれたり、舞台に座ってもよし、会場内にある舞台装置のひとつである椅子に座っても構わない。思い思いに好きな場所で鑑賞し、歩きまわることができる。
舞台となっている講堂で、鑑賞者と演技者は完全に空間を共有し、通常の演劇のように舞台と観客席を隔てるものは何もない。
したがって、慣れないうちは誰が演技者で誰が観賞者なのかの見わけが付かないこともある。ブツブツ話していると演技者なのかと思ってしまうが、鑑賞者が独り言を言っているのだと持っていたチケットで漸く分かることもあった。

演劇の内容はタイトル通り広島の原爆投下をテーマに、広島だけでなく原爆投下時に日本にいた在日韓国人が多くいたという韓国の都市HAPCHEONを扱っている。
演技者は自らの体験や創作、台詞もテキストも演技もすべて演技者に寄って考えられ、それを報告する形式を取っている。演技者の傍らには小さなモニターが設置されていて、演技者の名前や彼らの報告内容の抜粋が映像を交えつつ映し出されている。
解説書によれば、美術館で言う作品キャプションのようなものとあったが、まさにその通り。
この小さなモニターが演技者のキャプションの役割を果たしているので、彼らが何を演技し、語っているのかのおおよそはモニターを観ているとつかめる。

また、講堂の中央舞台側にはこの演劇のガイドの役割を果たす演技者がいて、彼女が時折旗をもって各演技者を案内したり、舞台中央にある原爆投下のポイントを指示したりと不思議な動きをするのだ。
また、各演技者は基本的に単独に演技(報告)を行っているが、時折複数名によっての絡みがあり、一時たりとも目が離せない。

報告と言う形式をとっている以上、ストーリーがある訳ではないが、報告を聴いていると詩的に聴こえることが度々あり、目を閉じて彼らの語りを聴いている心地よさ、いや内容は原爆や広島に関する思い出だったりするので、楽しい話題ではないのだが、抑揚の効いた語り口に聴きほれるといった方がしっくりくる。

私は、島崇による「広島と七つの川」とチャン・ヨンドゥによる「野菜が医者になった」そして桐沢千晶の「生きているヒロシマ」「見る/見られる」が特に印象に残った。

ヨンドゥの場合、語りもだが長い手足を使ったダンスのような身体表現に目を奪われた。
それはとても美しい動きだった。

各人の報告内容は体験に基づくもので、それゆえより迫真とリアリティを持って迫って来る。

また、2階からは全体の様子を俯瞰でき、どこで何が行われているかを上から見るのも、視点が変化してこの演劇を楽しむ要素の一つになっている。
同時チャネルによる放送のようで、集中できなかったり、聞こえにくかったりという問題点も多少はあるが、すぐに慣れてしまう。

また、特筆すべきは効果音とBGMの使い方であろう。
上空を飛行する飛行機の音、サイレン、これらが流れるとバラバラに演技を行っている演技者も一端動きを止める。例えば飛行機の音が聞こえると、皆が上空を見上げるなど統一した動作を行う場面もあった。

鑑賞者と演技者の距離感がこれだけ近いという、常識破りの演劇であったが、こんな方法もあるのかという驚き。
そして、鑑賞者は上映中、出入り自由なのである。
一旦、外に出て再び会場に再入場することも可能。

しかし、演技者はずっと同じ報告を繰り返している訳ではないので、結局、次はどうなるのか、何をするのかという期待と関心のため、長居をしてしまう。
私も、その後の予定さえ入っていなければ昨日の最終公演は4時間だったので、最後までいたに違いない。

ここでは、各演技者の報告についての感想は割愛する。そこまで書くと長大な文章になりそうなので。
しかし、この演目によって「広島や原爆」のイメージが自分の体内に形づくられたことは間違いない。

また、機会があったらぜひマレビトの会の公演を観たいと思っている。
マレビトの会の公式サイト⇒ http://www.marebito.org/
*公演は既に終了しています。

「和田淳と世界のアニメーション」 シアター・イメージフォーラム

wada

11月20日から渋谷と表参道のちょうど真ん中に位置するシアター・イメージフォーラムにて「和田淳と世界のアニメーション」が11月26日まで7日間限定で上映されています。
詳細は、以下主宰のCALF公式サイトをご覧ください。
http://calf.jp/wadaworld/home.html

プログラムはAプログラム、Bプログラムと2種類用意され、昨日より1日交替でAプロ、Bプロを上映。毎回、上映前にゲストと和田監督とのトークがあります。各プログラム13作品、76分、75分の上映時間です。
昨日の初日は上映後に、CALF(アニメーションレーベル)主宰のお一人である土居伸彰氏と和田監督とのトーク。
なお、土居氏は先日、京都賞受賞記念のワークショップにてパネリストのお一人として参加されていて、ケントリッジへの鋭い質疑応答に敬服したばかり。

そして、本日は、公開中の映画『ゲゲゲの女房』鈴木監督とのトークがあり、『ゲゲゲの女房』では映画中のアニメーションで和田さんと大山慶さんが協力されたご縁で、同映画で使用したアニメーション制作秘話などのお話が伺えました。

さて、各プログラムの上映作品はCALFの公式サイトをご覧いただくこととして、私の感想を簡単にまとめてみます。なお、私は和田さんの作品を拝見するのは今回初めて。今年、ロシアのノルシュテイン監督の展覧会を神奈川県立近代美術館葉山館で拝見して以来、俄かに短編アニメーションの魅力にとりつかれたアニメ新参者です。

<Aプログラム>
アニメーションの魅力のひとつは、まず描画、キャラクターの絵の魅力が大きい。和田さんの作品は細い線と、基本的に顔が大きい割に目・鼻・口などパーツが小さめ。今回は初期の作品から順に上映していたので、キャラクターの変遷もよく分かった。初期の作品より、やはり近作のキャラクターの方が親しみやすくて、ほのぼのした感じがある。

和田作品は全部で7作品。中でも圧倒的に面白かったのは『春のしくみ』2010年。これは最高でした!場内からも思わず笑いが何度か会ったほど。こういう発想がどうしたらできるんだろうと思う程、予想外の動きをしてきます。
あと、私が好きだったのは象が登場する『係』2004年。ペチペチっていう音は、和田さ自身がご自分の身体を使ってどこを叩けば一番それらしい音がするだろうと実検し、選ばれた効果音が配される。
そして、そのペチペチという音が、映像以上に印象に残る不思議な作品。ペチペチと象の身体に貼られるシールのイメージだけが私の記憶に強く残った。
『やさしい増え、鳥、石』2005年はわずか3分30秒の作品だが、これも身体感覚を伴うような描画とどこかおっとりした間合いで、観ていてほんわかする。
和田さんの作品は、このほんわかさとちょっとキモイ所の組み合わせとバランスが魅力ではなかろうか。
もちろん、あの太っちょいキャラも好きです。

海外作品の方では、『ミラマーレ』ミカエラ・ミュラー(2010年クロアチア/スイス)。水彩で描かれたコマ撮りだろうか。やっぱり、絵の魅力がこの作品は優っていた。スピード感もあるし、あっという間の8分だった。

和田さん自身も「よく分からない」とおっしゃっていたフランスの『悩ましい愛撫』ジェレミー・ブラー(2009年)。巨大な顔面がクローズアップされるのですが、この顔が液体のようにぐにゃぐにゃと変化する様が気持ち悪いようで、触感的でとにかく不思議な作品。でも絵なのか、人形なのか、キャラの魅力があった。
『オオカミたち』ラファエル・ゾンマーハルダー(スイス・イギリス2009年)はモノクロで、線のしっかりした描画で、ストーリーはラブストーリーなんだけど、悲しい結末だったが、大人のアニメーションという感じで個人的にはこれも好み。

<Bプログラム>
和田作品の中では、『このマヨネーズはゆるすぎる』2002年、『kiro no hito』2003年『そういう眼鏡』2007年の3作品が特に気に入った。
中でも『そういう眼鏡』は羊が沢山出て来て、羊と人間が一体化したり、生えて来たりとメタモルフォーゼと身体運動の面白さ、これも発想と映像化が見事に上手く組み合わさった映像作品になっていた。

『kiro no hito』はモノトーンの映像の中で、突然赤いイアリングと口紅の色が映えて、女性をよく観てるなぁと感心してしまった。そして、おばあさん風なのに、なぜか全員ランドセルしょってるのが笑える。

世界のアニメーションはBプロも魅力的な作品が多く、中で特に印象深かったのは『ベニーニ』エリ・ヴォリネン他2名(フィンランド)2009年。男の脇から突如エイリアンのようなつぶらな瞳をした分身が生えてきたら、あなたはどうする?男と分身は仲良く暮らしていたのに、ある日、シャボン玉を作って窓辺で遊んでいたら、悲劇が・・・。切ないお話だった。

もう1つは『オルソリャ』ヴェラ・セデルケニイ(ハンガリー・2009年)。逆立ちしないと生きていけない女の子のお話。でも、これってハッピーエンドだったような。
『生命線』アンジェラ・シュテフェン(ドイツ・2009年)はストーリー性より絵画性が目を惹いた。次々と移り変るハリネズミの身体の紋様が面白い。
・・・て、どれもそれぞれ面白いし、見どころがあるので、もうこれは自分の目で確かめてみるしかないでしょう。

短編アニメーションの魅力にとりつかれます。しかし、上映順序とか練りに練ってらっしゃるでしょうね。特に世界のアニメーションは順番が変わると印象も変わってくるかもしれません。

11月26日まで21時~のレイトショーです。
ハーブ&ドロシーの後の上映だと思われます。併せてみるのも吉。
なお、シアター・イメージフォーラムは整理券制です、今回の上映会場の定員は108名。お早めに。

「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」 シアター・イメージフォーラム

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シアター・イメージフォーラムにて、話題のドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』を観て来ました。
公式サイトはこちら
昨日は、この映画の監督・プロデューサーである佐々木芽生監督による舞台挨拶があると知り、急遽駆け付けた。

私と同じ思いの観客が多かったのか、はたまた映画そのものの人気のせいか会場は満席。
ほぼ定刻にまずは佐々木監督の舞台挨拶が始まる。

ほとんど予備知識なしで観に行ったのだが、佐々木監督は元々TV番組などの取材陣のコーディネーターなどのお仕事をされていて、映画を自分が作ることなど考えてもみなかったという。
それが2002年に、NYでハーブ&ドロシーと出会い、彼らのことを知った時、心底驚いた。
この時、佐々木監督の中で何かがはじけたのだと思う。

そして、それから2年その時の思いは封印されていたが、2004年に彼らに再会。
ここで、佐々木監督は思い切って彼らにアプローチ、取材をして媒体がTVになるのか何になるのか分からないがお二人のことを世界の人々に知って欲しいと熱い気持ちを伝えた。
ハーブとドロシー(以下ヴォーゲル夫妻)は、快諾してくれた。
初めて、二人の住むマンションに行った時、作品で一杯で本当に驚いたそうだ。
何から始めて良いのか分からないので、まずはデジタルビデオを片手に夫妻の姿を追いかけたのが始まり。

気が付けば、映画を作ることになり、多くの心ある皆さんの協力をいただいて完成にこぎつけたが、途中何度もくじけそうになり、「なぜ、自分はこんなことを始めてしまったのだろう?」と後悔に近い気持ちを抱いた日もあった。そして、映画となると予想以上に制作費も嵩み、気が付けばNYにあるご自身のマンションも抵当に入れ日本円にして5000万円の制作費用を捻出した。しかし、困難はまだ続く。映画は全米で無事公開でき、幸いにも好評を博したが、今年2010年に日本で公開することが佐々木監督の目標だったが、なかなか配給先が決まらず、こちらも頓挫しかけた所、様々な方面から有志の方々の援助があり、こうして無事日本公開にこぎつけ、私も鑑賞できることになった。
人の強い情熱は、目に見えない何かを通じて伝播して行くのだ。

佐々木監督ご自身は、ヴォーゲル夫妻と関わるまでアートに関心があった訳でもなく、ただ二人の情熱に心を打たれ教えられることがあったのだと思う。そして、ヴォーゲル夫妻から受けついだご自身の情熱を映画に昇華したのだと思う。

ご夫婦は、身長150センチ程の小柄で地味な外見で、NYのアートギャラリーのオープニングでは却って目立ってしまう程だが、彼らは人気者で常に温かく迎えられている様子は監督のお話にもあったし、映画のシーンにも出て来た。

「ごく普通の市民が、全米の美術館中でもワシントンナショナルギャラリーを中心に2000点以上のアート作品を寄贈し奇跡をおこした老夫婦の物語。」

この映画は、単なるアートコレクターのお話ではない。
むしろ、アート作品は彼らの情熱の向けたベクトルの一つであっただけで、本当に監督がこの映画で表現したかったのは、夫婦が同じ目的に向かって、30年もの間助け合い、ひたむきに「美は楽しい」というその思いだけで、アーティストを追い、作品について調べ、時にはアーティストのアトリエにまで出向き彼らと対話し、作品や作家について理解を深め、それによって人間関係、信頼関係を構築したという生き様だったのではないだろうか。

映画は二人の出会いとなれそめから始まる。
夫のハーブは元々絵を描いていて、美術に関心があった。妻のドロシーも夫の影響を受け絵筆を取り始める。
しかし、彼らはアーティストとしてでなくコレクターの道を選んでいく。
二人には子供はいないが、猫や亀と1LDKのアパートに慎ましく暮らし始めた。

映画の中で、作品を見つめる二人の姿勢の対比が撮影されていたが、前のめりになって見つめる夫ハーブと、一歩引いて冷静に見つめる妻ドロシー。
相補い合って、助け合って、お互いの好きなことに情熱とお金と時間を注ぎ続けた。
ドロシーはアートだけでなく、お芝居も好きで、二人はNYという街とお互いをとても愛している様子が場面の至る所からあふれ出ていた。作品がどんどん増えて行って、ワシントンナショナルギャラリーに運びだす時にはトラック5台分だったのだから恐れ入る。
美術館からオファーが来るようなコレクションを築きあげることができたのは、ハーブの知識と夫妻の審美眼の賜物なのだが、果たしてそれだけが理由だろうか。否、私はそれだけではないと思った。

この映画の鑑賞には、美術に関心があろうがなかろうが関係ない。
どちらかと言えば夫婦愛や人生の楽しみ方、生き方、そして情熱を注ぎ続けることを私たちに教えてくれる。

多くのアーティストも出演しているが、中でもクリストと亡くなってしまった妻のジャンヌ=クロード夫妻が、ヴォーゲル夫妻についてのエピソードを語る場面がとても印象深かった。
リチャード・タトルと夫妻とのやりとりもおかしかったが、やはりクリスト夫妻とヴォーゲル夫妻の間柄は別格だったようだ。

映画を観ていて不思議だったのは、彼らがどこから作品を購入していたのかということ。
映画だと、直接アーティストから作品を購入しているように見えるのだが、恐らくギャラリーの仲介はあるのだろう。しかし、それらしきギャラリストは出演していなかったように記憶している。更に彼らが好んでコレクションしていたのは、ミニマルアートやコンセプチュアルアート。一見してこれらの作品を理解するのは非常に難しい。私など、コンセプチュアルアートというだけで、尻込みしたくなる時がある。彼らは作家を長期にわたり見つめ続けて来て、作品を集め続けたからこそ、価値あるコレクションを成し得たのだろう。これまた情熱と夫婦の協力があってこそ。

ワシントン・ナショナルギャラリーから送られたいくばくかの金銭もまた国民に還元と作品購入にあててしまう。
根っから、アート、美を愛する二人の姿勢に脱帽した。
世界中にアートコレクターは沢山いるだろうが、夫婦でという点がヴォーゲル夫妻の素晴らしさなのだ。これだけの情熱を夫婦で半世紀にわたり注ぎ続け、作品やアーティストと関わってきた、関わることができたのは、ご夫婦の人格、相補い合う愛情ゆえであろう。
まさに、ふたりだったからこそなしとげた、それもごく自然に。それは彼らにとっては必然だったのだ。

独り身の我が身にとっては羨ましくもあり、ちょっとセンチメンタルに陥ってしまった。

最後にお知らせをひとつ。
来週11月22日は「いい夫婦の日」。
この日を記念して、青山学院大学において『ハーブ&ドロシー』特別トークショーが開催されます。
何と、NYからスカイプを通じてヴォーゲル夫妻が登場します!!!
*トークショー:佐々木芽生、鳩山幸
*NY中継:ハーブ&ドロシー・ヴォーゲル夫妻
日時:11月22日 18時~20時
場所:青山学院大学 青山キャンパス 総研ビル(14号館)12階大会議室
参加費:無料 定員250名 申込要
詳細および参加申込は以下のサイトからお願いします。
http://www.sccs.aoyama.ac.jp/topics/101111.html 

*この後、順次全国で公開予定です。詳細は公式サイトをご確認ください。

「個室都市 京都」 高山明/Port B JR京都駅ビル

「個室都市 京都」という作品が現在、京都駅東口広場を舞台に開催されている。
現在、京都では舞台芸術の祭典『KYOTO EXPERIMENT 2010』を開催中で、本作品もそのプログラムのひとつとなっている。
「個室都市 京都」公式サイトはこちら

作品と簡単に言ってしまったが、一応「演劇」としてジャンル分けされているが、私個人としてはそのジャンル分けに非常に抵抗感を覚える。

作品の演出は、高山明氏で既に東京の池袋にて「個室都市東京」で評価を得、今回は京都を舞台に新たな展開を試みる。
なお、高山明氏は同時並行で山手線各駅に避難所を設けるという「完全避難マニュアル東京版」の演出・制作に携わっておられ、こちらも近日中に記事にしたいが、まだ二箇所しか避難できていないためもう少し時間が必要。

さて、個室都市京都は、仕組み自体は至ってシンプル。
京都駅ビル7階東広場に突如、DVDを鑑賞する個室ブースを作り出し、部屋数は12位だろうか、各部屋によって、内部が微妙に異なり、中は恐らくすべて畳敷だが、椅子が違う。
リクライニング可能なリラックスチェアだったり、マッサージ機能が付いた電動マッサージチェアだったり、シンプルなクッションだったり。
部屋が空いていれば、希望の部屋を利用できるが、基本料金は一時間で500円なので、タイミングがうまくあえば、希望の部屋を押さえられると思う。

私は幸いにもすぐに、希望していたマッサージチェアのお部屋が空いたので、そちらを利用する。
なお、個室にはフリードリンク制でコーヒーや紅茶など、マンガ喫茶のように飲物の持込可能。
そして、これが最も重要だが個室では京都駅近辺でインタビューされたおよそ200名分のDVDを鑑賞するのだが、一度に五本まで持ち込み、観終わったら返却してまた5本を選ぶシステム。
インタビューされている人によって一本あたりの長さは異なるがほぼ五分前後。従って、ー時間だと10本は鑑賞できる。

問題はズラリと並ぶDVDのどれを選択するかだろう。
DVDのパッケージにはインタビューされている人物の上半身の写真がカバーリングされているが、情報はそれだけ。

いかにも濃そうな人物を選ぶか好みの異性のものを選ぶかは、鑑賞者に委ねられている。年齢、性別、国籍すべて様々。

私はできるだけ、属性に偏りのないように選んだつもりだったが、今思えば、もっと冒険しても良かった。内容が無難なものが多かったから。

インタビュアーの質問はまるで脈絡がなく、
通天閣と京都タワーのどちらが好きか?
京都駅にはよく来るか?
京都の駅ビルについてどう思うか?
今、一番会いたい人は?
あなたには守るものがあるか?
国際結婚についてどう思うか?
自分の家族であっても国際結婚は構わないか?
外国人が日本で働くことをどう思うか?
昨日の今頃なにをしていたか?
インタビューの御礼として貰う500円を何に遣うか?
あなたの夢は?
あなたは誰かに愛されていると思うか?
今後、戦争が起きると思うか?
天皇は京都に戻った方が良いと思うか?
今朝の朝食は何だったか?
東西南北のうち好きな方角は?
その方角を選んだ理由は?
どの季節がいちばんすきか?
その季節を選んだ理由は?

などなど矢継ぎ早に聞かれる。そして、「さいごにあなたは一体誰ですか?」という質問でしめくくられる。

個々人の回答や態度の差違も興味深いが、私が最も驚いたのは好きな方角。
私が選んだインタビュアーのうち男性はほぼ全員が北を好きだと言っていた。女性は逆に南と北に別れる。東西に至っては、誰1人好きと回答する人がいなかったのにも驚いた。また、その方角が好きな理由も聞かれるのだが、回答は千差万別でしかも曖昧なものが多かった。
北には人類が、殊に男性が惹かれる何か原始的な要素が潜んでいるのだろうか。

これらのインタビュー映像を通じて思い出したのは、今和次郎の「考現学」である。
高山氏本人の意図はこの際、脇に置いておこう。
様々な問についての回答を聞いていると、社会学的アプローチ、かつ、都市論、そして現代という時代に生きる人間像をあぶり出しているように思えてならない。
それらのインタビューを聞いている鑑賞者本人もいつしか、自分だったらどう答えるだろうと無意識のうちに考えてしまうだろう。

鑑賞は次の予約者がいなければ延長も可能で、30分で200円。

そして、この後希望者にはオプショナルツアー(ツアー代金は別途1000円)が用意されている。
3名集まると出発するが、結局1人ずつ時間差で動き始める。
今回は、イヤホンから流れる声の主の誘導に従って、ツアーを開始するのだが、これ以上書くとネタばれになって、面白くないので詳細は割愛する。
私個人の感想は、私の知らない京都が見えたこと。
何十回と京都駅には来ているけれど、これまで知らなかった場所や、見方があったのだと、そして、京都ならではの誘導トークも良かった。

個室都市京都は、舞台が終了してもなお、続いていくように思う。全部のDVDの中で一番人気はどれだったのかや参加者の感想を分析しても面白そう。

京都駅に来たら、ふらっと立ち寄ってみるのもこの舞台には相応しい。ぜひとも、気軽に体験を。
予約は、こちらのサイトより可能です。⇒ http://compartment.shop-pro.jp/

*11月21日まで開催中。

わたしのすがた/飴屋法水 F/T10 西巣鴨周辺の4会場

10月30日からフェスティバル/トーキョー、略してF/T10と題する東京発、舞台芸術の祭典が約1ヶ月にわたり開催されています。

これまで舞台芸術には関心がなかったのですが、今年の春に高山明演出の横浜日ノ出町を舞台に繰り広げられた『赤い靴クロニクル』で俄かに開眼。
今回も鷹山さんの『完全避難マニュアル東京版』が演目にあり、これも含めて興味を覚えた作品をいくつか体験、鑑賞してみることにした。

そして、まず選んだのが飴屋法水(あめや のりみず)構成・演出の観客参加型作品『わたしのすがた』である。
チラシによれば、
今回、飴屋が着目したのは「不動産」。かつて誰かがそこに存在し生を営んでいた空間、しかし今は誰も存在しない場所。にしすがも創造者を基点に、観客はたったひとりで4箇所の「不動産」を訪れ、そこに息づく事物や生物、物質、言葉と対峙する。複数の生や時間が交錯する場所/非場所で、どんな「わたしのすがた」を見出すのだろうか?

まず、向かった先はにしすがも創造舎。都営三田線西巣鴨駅からわずか2~3分。
西巣鴨には、今回初めて訪れた。
受付を済ませ、地図を手渡される。地図にはにしすがも創造舎を中心にした近隣のもので①②と番号が振られており、この番号がふられた場所(建物)を一人ずつ訪れる。

最初は校庭(にしすがも創造者はもと学校だったようだ)にある三角屋根の木造の小屋。
中には椅子が数個あった。
私が訪れたのは18時過ぎ。夜の帳がすっかり下りて、星空の美しい晩だった。

実はこの①に行くのに、地図の見方と方向が分からなかったのでかなり迷ってしまった。
②の場所には幸い、迷わず行けたが、徒歩5分程度。
門の入口に受付の男性がいなければ通り過ぎてしまうような廃屋だった。
1年ほど前までお妾さんが住んでいて、今は空き家状態と貼り紙がされている。ここだけでなく建物内にはところどころ、メッセージが貼られていて、内容は多分に宗教的、キリスト教的だった。例えば十字架であるとか、懺悔であるとか言葉や内容そして、展示物も宗教的要素の強いものが多かった。

真っ暗な廃屋にかすかにLEDと思しきスポット照明がポイントとなる場所にだけ当たっている。
誰もいない筈の家なのに、水道から水がぽたぽたと落ちる。
全身で、この家の主の気配を感じた。
もし自分一人だけしかいなかったら、お化け屋敷並の恐怖を感じたことだろう。
しかし、数分の間隔をおいて次の観賞者や前を行く鑑賞者と出会うので、なかなか建物内で一人になることは難しかった。

②の入口で地図を渡すと、これが入場券代わりになって鑑賞でき、代わりに次の③の場所が指示された地図を受け取る。
③は古い2階建の洋風建築で、この2階のスペースや1階のスペースは床を割ってしまいむき出しにされている。
そして、なぜか天井や各所に蜜蜂の巣がぶら下がる。
ここでは、1階に懺悔室があって、部屋には一人ずつ入室し、壁に懺悔の言葉を書く。
待っている間、階段スペースから鼠の鳴き声のような物が聞こえてくる。古いお家だから鼠でもいるのだろうと思いきや、たまたまいらっしゃった飴屋さんが、鼠ではなく音楽担当の方の喉を鳴らした声だというから恐れ入った。

懺悔室には以前の居住者かはたまた、今回この家に相応しい人物を見つけ、その手記やキリスト教の懺悔にまつわる切り抜き絵がノートに貼られていた。
悔悛。既に壁にはいくつも言葉や文章が綴られる。
無論私も書いたけれど、これは秘密。

2階の洋間の展示も哲学的宗教的文章の手記が置かれていたり、亡くなられたご家族の遺影があったり、意味深なスペースになっているのでお忘れなく。

最後の④の場所。
これが一番遠かった。
③の住宅から徒歩15分くらいだろうか。巣鴨駅に向かって歩く。
元は、休日診療所だった建物を利用しての展示。
受付も真っ暗なので、危うく気付かない所だった。
受付でペンライトを渡され、真っ暗な元診療所を探索するのはミステリアス以外の何物でもない。
おまけに2階には肝臓がんで亡くなられた方の遺骨(あれは本物なのか?!)がベッドの上に置かれていた。
室内の空間に山盛りの土。

古いTV映像。
1年ほど前までは診療所として機能していたのに、今では廃墟以外の何物でもない。
何を置き去りにし、何が1年で起きたのか。
そして、今自分は何をしているのか。

五感という五感がフルに稼働し、ありったけの好奇心と想像力で作品と対峙した約2時間。
地図がやや分かりづらいのと、会場が暗いので要注意。
これは演劇というより、空間演出、インスタレーションそのもの。言わば舞台芸術を足で観て回る作品。
美術ファン必見です。

前売り当日券ともに1500円。
チケット販売他詳細はF/T10公式サイトをご参照ください(以下)。
http://www.festival-tokyo.jp/program/ameya/

なお、飴屋さんは横浜のBANKARTの「大野一雄の世界」展で飴屋法水「体の壁の前で考える」を11月20日(土)13時~17時に行う予定です。

「アニメーションズ・フェスティバル2010」 吉祥寺バウスシアター

animations

9月18日から10月1日まで開催されている「アニメーションズ・フェスティバル2010」のAプログラムを観て来ました。
プログラムなど関連情報は下記公式サイトをご覧ください。
http://www.animations-cc.net/festival10.html

そもそも「アニメーションズ・フェスティバル」とは何ぞや?という方も多いことでしょう。

アニメーション作家山村浩二を中心に2006年に結成された「Animations Creators and Critics」がお届けする、
短編を中心とした新たなアニメーション映画祭です。


かくいう私もパンフレットをたまたま見つけなかったら、その存在体を知らなかったに違いありません。
パンフレットをどこで入手したのか記憶がないのですが、観音開きでイラストがカッコ良かったので目を引きました。更に、日本のアニメーション世界では超有名な山村浩二氏のことをほとんど知らなかった。
今夏、東京国立近代美術館フィルムセンターで開催された「アニメーションの先駆者 大藤信郎」展で、大藤の未完成作「竹取物語」のセル画を使用した動画化の監修者が山村浩二氏であったのだ。
(参考)過去ログ:「アニメーションの先駆者 大藤信郎」展

私はこの動画化した「竹取物語」を観ているので、山村氏作品の一端に触れたのは、大藤信郎を通じてとなった。
上記過去ログにも記したように、今年はアニメーションに接する機会が例年になく多い。そして、一旦面白いなと思うと、次々と観たくなるのが信条。

「世界中の映画祭から現代的な短編作品を独自に厳選した刺激的な2プログラム--
現代アニメーションの巨匠の最新作も、
若手たちの先鋭的な意欲作も、
アニメーション界の今後を担う学生作品も、
2000年代のクラシック作品もすべてひっくるめて、
「今」を物語る短編アニメーションをスクリーンで堪能できる」

の謳い文句と、やはり多彩な上映プログラムに強い関心があって、レイトショー(21時開始)にも関わらず、観に行くことにした。辛抱たまらんという、いつもの癖だ。

私が観たのはAプログラム 2010年(内的)宇宙の旅 (9作品・約99分)
たまたま、行った日に山村氏の上映前トークとサイン会もあり、しっかり『ヤマムラ月報』(↓)を買って、サインをいただいた。

yamamura

しかし、こともあろうに、サインの時に描いて下さった、山村作品『頭山』のキャラクターを「自画像でしょうか?」とご本人にお伺いしたのは、失礼千万、無礼千万、赤っ恥で、本当に申し訳ございませんでした。
直接お伝えしましたが、再度この場を借りて深くお詫び申し上げます。

それにしても、サイン1つ1つにキャラクターを描いて下さるとは!内容は、私がアニメーションに関心を強く抱くに至ったロシアのノルシュテイン訪問記などをイラストを交えたショートエッセイで、興味深く拝見した。これまた生涯の宝もの決定。

さて、本題のAプログラム感想です。

上映前のトークで山村氏は「9作品の上映順に一番頭を悩ませた。上映順序が違うだけで、作品の印象も受け取り方も変わる可能性があるので、一番個々の作品が活きる順番を考えた。」と語っておられたのが印象的で、全作品を観終わった時も、すぐにその言葉が浮かんだ。

短編作品、一番長い作品で22分、短いものだと5分。自分だったら、どんな順番にするだろうと考えてみたり。
「宇宙の旅」を99分の間、自分はしていたのだろうかと問うてみたり。確かに各作品に宇宙を感じさせる、場合によっては宇宙そのものがモチーフとして使用されていたと記憶している。
そして、劇場で観るのとTVの小さな画面で観るの場合の違い。当たり前と言えば当たり前だが、やはり優れた音響と大画面の迫力の威力は大きい。

特に印象に残った作品は次の通り。上映順。

・「頭山」2002年・10分 監督:山村浩二 (日本)
何より面白いのは、古典落語風に起承転結を語らせる点である。講談を聴いているような感覚のうちに、目の前に映像を鑑賞する不思議さ。画面のキャラクターも私の好み。9作品のうち、キャラクター描写に関しては「頭山」が一番好みだった。9作品中、すべての点でバランス良く高評価だった。最後の落ちだけ、納得いかないかな。

・「スキゼン」2008年・13分 監督:ジェレミー・クラバン (フランス)
これは、ストーリーが奇抜。なぜ、隕石とぶつかって91センチずれるのか。91センチという数字の意味が最後まで理解不能だったが、意味が分からないままの面白さもある。
すべてが仮定で成り立つのであれば、こんな生活もありかなと思わせる。

・「ルシア/ルイス」2007年/2008年・8分 監督:ヨアキン・コチナ、クリストバル・レオン、ナイルズ・アタラー(チリ)
インパクトは、9作品中NO.1。終わった後、今自分が観たものは何であったのかを反芻したかったが、すぐに次の作品が始まり余韻に浸れず。
ストーリー性はほとんどないが、自己の昔の体験が鮮明に蘇り、怖くなる。誰もが、この作品で語られるような経験をしたことがあるのではないだろうか。ストーリーがほみえないまま、映像だけで恐怖を感じさせる手法、そして、技術的にもアニメーションというより、実写風で、実際は模型?を使用しているのか。とにかく映像自体が素晴らしい出来栄え。
これは、もう1度観たい。8分はあまりにもあっという間の出来事に思えた。

・「きっとすべて大丈夫」2006年・17分、「あなたは私の誇り」2008年・22分 監督:ドン・ハーツフェルト(アメリカ)
この2作品はビルという主人公を共通とした作品シリーズ。「あなたは私の誇り」は続編として制作された。
ビルをはじめとする登場人物のキャラクターは、拍子抜けする程、簡略化された線描画。しかし、それゆえ却って
残酷でむごいことも、さらりと語れる。この2編は、ビルの決して平坦ではない、寧ろ厳しい人生を描く。
この作品の特徴は、アニメーションと実写映像が上手く組み合わさっている点、そして脚本の凄さにある。
前者の実写との組み合わせは、他の作品でもあったと思うが、ハーツフェルト監督の見せ方は実に上手い。漫画の吹き出しのように、映像を時折混ぜ込み、意図的なのかどうかは不明だが、映像は粒子が粗く、敢えて古びた感じを演出しているのか、本当に使用した画像ネタが古かったのか、どちらにしても、古びた映像が作品に深みと時間概念を追加していたと思う。
それにしても、タイトルが泣かせる。「あなたは私の誇り」って似たような台詞聞いたことありませんか?

全般的に、展開が早過ぎる作品が多かったように感じた。それに加え、海外作品は字幕を追ってしまうのに忙しく、映像に集中できなかったり、頭に会話や語りの内容が定着していないままに次の場面に進むこともあり、内容的に未消化になってしまったのが残念。その点、冒頭の「頭山」のスピードが適度に思えたのは、やはり字幕なしで内容を耳で理解できたからだろうか。もうひとつ、内容の理解が進んでいたら、更なる感動を得られたのは間違いない。この手の違和感はノルシュテイン監督作品を観た時には感じなかったので、単に言語の問題だけではないのだろう。

映像の展開方法に主眼を置いたような作品、たとえば、「愛と剽窃」2010年・7分(ドイツ)は、見ているだけでも楽しい。

Bプログラムの「雨のダイバー」2010年・25分(エストニア)と「ディアロゴス」2008年・5分(エストニア)、オライリー監督や、韓国のヂョン・ユミ作品は非常に気になる。やっぱり、何とか都合をつけて最終日に行こうか悩ましい。

短編アニメーションは長編ものにはない良さがある。アニメーションには、わずか数分の作品を制作するのに膨大な時間と作業量とコストを要する。したがって、インディペンデントで行うには、長さにもおのずと限界がある。
個人の手作業、監督の力量がより表出するのが短編アニメーションの良さではないだろうか。

それを思うとノルシュテイン監督が制作中のゴーゴリー原作の「外套」など、完成した暁には奇跡としか思えない。

*10月1日(金)まで開催中。オススメです。
連日19:30より整理番号付き当日券の受付を開始。開場時間より整理番号順で入場/自由席。
1回券 一般 1,500円 学生 1,300円  2回券 2,500円

映画 『ANPO』 ジャック&ベティ(全国順次公開)

映画『ANPO』チラシ YOUTUBE

このブログで映画のことを取り上げることはかつてなかったと思う。

映画館で映画を鑑賞することが上京してから、皆無になってしまった。TVやDVDを通してさえ、同じく鑑賞回数が激減した。しかし、昨日から公開開始の映画『ANPO』は、映画館ですぐにでも観たいと思った映画。

何にそんなに惹かれたのか、まず1960年安保がテーマになっていること、もうひとつは、アメリカ人監督が日本のアーティストの表現活動やインタビューを通して『安保』をどう見せるかに興味があった。

映画チラシの表面掲載の強烈な緑色の顔と何も見ていないような目、この先にあるものは何か、チラシにも誘われた。
出演しているアーティストがまた凄い。
絵画、写真、映像、舞台、音楽、様々な分野で安保や日米関係をテーマにした作品制作をしている面々が揃った。出演作家の選定は、監督のリサーチによるものか。

作品映像と実写、そしてアーティストのインタビューを上手く編集して作りあげられた映画だった。
今日は横浜・黄金町のジャック&ベティの19時15分の回上映後、リンダ・ホーグランド監督と出演者のお一人である石内都さんのトークショーを目当てに黄金町で鑑賞した。

トークショーはてっきり通訳がいるかと思いきや、突然監督がバリバリの日本語で話し始めたので、びっくり。
何でも中学2年までは日本の普通中学、その後インターナショナルスクールに転校し、17歳で離日しイエール大学に入学。映像翻訳家として活躍されている中、2007年には映画『TOKKO-特攻-』では、プロデューサーを務め、旧特攻隊員の真相を追求した。

監督については映画「ANPO」公式サイトにインタビューが掲載されているのでご覧ください。以下。
http://www.uplink.co.jp/anpo/director.php

ご本人のWEBサイトもありますが、現在は英語ヴァージョンのみアップされています。
http://www.lhoaglund.com/

映画「ANPO」を作るきっかけになったのが日本映画であり、濱谷浩『怒りと悲しみの記録』という写真集と2007年に開催された東京都現代美術館の「中村宏・図画事件 1953-2007」であったとは恐れ入る。
中村宏の同展は私も観ているが、この時、安保について強い感慨を抱いた記憶はない。つい戦時t9月5日まで開催された練馬区立美術館で開催された『タブロオ・マシン[図画機械]中村宏の絵画と模型』展は行かなかった。
濱谷浩は、『裏日本』1957年という写真集をごく最近実見して強く記憶に残った写真家。

安保についてまったく知らない訳ではない。
しかし、この映画を観て実にいろいろなことを考えさせられた。特にこうだ!というメッセージ性がなく、鑑賞者の自由に任せる姿勢がホーグランド監督の姿勢。監督がこの映画で訴えたかったのは、日本にも「抵抗」の歴史があり、その「抵抗」を世階級のアートとして表現し続けているアーティストたちの存在を世界に、そして若い世代にもっと知ってもらうこと。

映画には、様々な作品が登場するが、美術館で観るのとはまた違った印象があった。目の前に実写で提供される安保運動や米軍基地、戦後の焼け跡、それと作品との対比。
こと、作品に関して言えば、山下菊二、石井茂雄、池田龍雄、中村宏らの作品は本当に強烈だった。
作品を舐めるようなカメラワークと自作を前に語るアーティストもしくは故人の親族のインタビューがないまぜになって脳内炸裂した感じ。
石内都さんの映画で果たされた役割は大きく、横尾忠則さんも予想以上に出番が多かった。

幸いにも池田龍雄さんの展覧会は10月9日より川崎市岡本太郎記念美術館にて「池田龍雄 アヴァンギャルドの軌跡」展が間もなく開催される。これは行ってみようと思った。

しかし、このテーマで映画ができて、展覧会ができないということはないだろうに。
現在、国内で常時戦争画を鑑賞できるのは、私が知る限り東近美の常設展だけ。
「安保」で映画ができるなら、展覧会も可能なはず。これをぜひ、本土の美術館で開催して欲しい。

戦前、戦中、戦後を通して、日本に民主主義政治はあるのか?ということをずっと映画を観ながら考えていた。
あれだけの強い反対運動が起きながら、日米安全保障条約が更新されたのはなぜなのか。なぜ止められなかったのか。一人の政治家を原因ではなく、国会が、国民が選出した筈の議員も賛成したから更新された。
ここに、更なる政治的な無気力を来す要因が始まったようにも思う。

結局誰を選んでも変わらない。個人という枠組みを超えた何か、それが組織なのか国家なのか。
マイナスのベクトルには一直線に進んで行くが、プラスのベクトルには遅々として進まない。そんな現状に厭いてしまうのは自分ばかりではない筈。

この映画が、少しでもプラスのベクトルに、日本だけでなく世界中が向く一つのきっかけになれば嬉しい。

ベネトン キッチンエコバッグ

ついについに入手しました「ベネトン キッチンエコバッグ」!

発売後少ししてラジオでオススメされていたのを聞いてからず~っと欲しいと思っていました。

巷の大手スーパーも徐々にレジ袋有料化に動いていると言うし、何よりYoginiとしてはやはり環境への配慮は忘れずにしていきたい。

されど、スーパーの名前が入ったエコバッグでは味気ないし、美術館のミュージアムショップで見かけるカラフルなエコバッグは何と3千円以上のお値段。
気軽に手を出せるお値段ではない。

その点このベネトンエコバッグは、全10色展開でお値段500円と財布にもやさしい設定です。
私はたまたま行った東急ハンズのエコバッグ特集売場で憧れ?のベネトンエコバッグ見つけて思わず心の中でガッツポーズ!

早くもかなり売れていて10色ある筈が4色(イエロー、ホワイト、レッド、ピンク)しかありませんでしたが、迷わずピンクを選択。

バッグ本体はピンクですがケース兼持ち手はイエローグリーンでポップな色使いが気に入りました。

◆ポイント
1)もち手をグリップに巻いて長さを調節できます。
2)グリップは肩の負担を和らげてくれます。
3)コンパクトにたたんでバッグの中にしまえます。
4)マグネット付きなので冷蔵庫にピタっと張って置けます。
5)袋のステッチを目安に簡単に折りたたむことができます。
(ベネトンHPより転載)

私にとっては5番目のポイントが一番重要でした。
折りたたみバッグは他にもいろいろありましたが、一度使用した後、同じように元に戻すのって結構大変だったりしませんか?
その点このエコバッグはデザインのアクセントにもなっているステッチを目安に畳めば良いので、楽ちんです。

気になったのは色うつりしないかなということ。
使用上の注意にも水にぬれた場合色落ちすると書かれていました。
雨の日は要注意ですね。
白い洋服でも着ていた日には恐ろしいことになるかもしれません。

さぁこれで、私もエコ生活第1歩を踏み出せそうです。


詳細は以下HPご覧下さい。
http://www.benetton.co.jp/whatsnew/2007_04/index3.html

観音崎京急ホテルスパ SPASSO

美術館見学ばかりしているのでは疲れてしまいます。
好きな事をしている疲れは仕事の疲れとは全く異質なものではありますが、やはり癒しは必要なもの。
前置きが長くなりましたが、横須賀美術館から徒歩1分の場所に観音崎京急ホテルスパ施設「SPASSO」があります。
横須賀美術館のチケットを見せると入場料が1割安くなります。

祝日ということで1割引で1620円+ヒーリングルーム(これが凄い!)利用料700円計2320円を支払早速中へ。
こちらは温泉ではありませんが、三陸沖の海洋深層水を利用した入浴施設となっています。
海を目の前にした絶景が広がる中、お風呂でぷかぷか。
夢のような現実です。

しかし三陸沖は船が多い。
ヨットから大型貨物船何でもあり。こちらからあちらが見えるということはあちらからもこちらが見えるという図式が成り立ちます。
双眼鏡でもあれば入浴客の裸体は丸見え間違いなし!

そしてこちらでのオススメはヒーリングルーム。
いわゆる岩盤浴なのですが通常の岩盤浴施設と比べて息苦しさがない!

(以下スパッソHPからの抜粋)
40℃前後に保たれた室内で、50℃前後に温められた「北投石」や「ゲルマニウム」など7種類の石のベッドに、専用着を着て横たわり利用する低温サウナです。10分程の使用で石から出る赤外線効果により、体の芯から発汗し、利用後は爽快感が広がります。

7種類の石から私が選んだのは「古代石」。
良い波動が出ているっていうのに惹かれました。古代に弱いし。。。

かく言う私も過去1度岩盤浴に行きましたがやはり息苦しく長時間入っていられず気持ち良いという体験はできませんでしたが、こちらは違います。
思わず寝てしまい自分のいびきではっとして起きたほど。

他の2人のお客様も終了後もう1度予約したいとおっしゃっていました。
汗を出すことよりヒーリングを重視されているそうですが、ふむふむ確かにと癒し度満点でした。
*SPASSO 公式HP
http://go-spasso.jp/top.html



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