スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1月30日〜31日鑑賞記録

頭痛がひどくまたも更新できず。
簡単に先週末に見に行った展覧会のみ記録。

広島市現代美術館「ふぞろいなハーモニー」
台湾のチェ・ジョンファ作の2010年映像『西方公司』70分の長編が印象深い。モノクロで戦後台湾とCIAが立ち上げた『西方公司』をめぐる映像。フィクションとノンフィクションの境界上にある作品。本展は戦前戦後を扱うテーマの作品がほとんどでとにかく重かった。映像作品多く疲れた。

和歌山県立近代美術館「村井正誠」展
初期から晩年まで個人蔵と館蔵品による油彩と版画作品を紹介。図録はないが、出展作品画像を掲載した小冊子を無料で配布。これまで見て来たのが戦後作品ばかりであり、戦後は戦前ほとんど使用していなかった黒を主体とした作品に変化。戦中作品は出展されていないが、過去の図録を見ると戦中とは思えない《花》など明るい色調の穏やかな作品を描いている事に驚いた。抽象化に至るまでの経過は非常に面白い。オススメの展覧会。常設も村井正誠ゆかりの作家の作品を中心に構成。常設特集「光」も面白かった。

国立国際美術館 竹岡雄二展
本展は埼玉近美と遠山記念館に巡回。図録を見る限り埼玉メインの企画展のよう。大阪では展示されていない作品が数点図録に掲載されていた。埼玉で再訪。これも良かった。常設料金で鑑賞可能で今回は東近美のパスポートで無料。

yoshimi arts 興梠優護 pond
奥にあった2点が良かった。特にDMに使われていた作品はこれまでにない試みとテクニックが使われていて新境地を切開いた感あり。やはり大画面の方がこの作家には適している、小品は出さない方が良いのではと思った。

旧名村造船所 クロニクル・クロニクル
広大かつ強い空間を活かしきりキュレーションの行き届いた展示。京都造形芸術大学副学長の大野木啓人氏による「マネキンについてのトークイベント」は非常に面白かった。クロニクル・クロニクルで展示されているのは今ではこれだけしか残っていない貴重な1950年代60年代の職人仕事のマネキン達(京都の株式会社七彩にて制作)。大野木氏曰く、顔を見れば(身体でも分かるが)すぐに誰の制作したマネキンか分かる!というから恐れ入る。マネキンの需要が高まり大量生産が必要になると高度な技術を使ったマネキンのニーズはなくなり、現代では50年代〜60年代に制作されたマネキンと同じものを作ることができないという。それだけの技術を持った職人が現代にはいないからだ。マネキンの制作方法や大正時代に日本初のマネキンが制作されたなどマネキンの歴史も興味深く、大野氏の言葉「マネキンは時代を、ファッションを象徴する存在」が印象的。後日、マネキンについて調べていたら、神戸市立ファッション美術館では美術館独自で制作したオリジナルのマネキン70体を所有しているとのこと。まさに大野氏の言葉を裏付けるような事実を知る。
これらのマネキンと清水久兵衛の彫刻、そしてその上の階に展開されていた谷中佑輔の彫刻と鈴木崇の新作(写真と映像)が個人的には良かった。こちらもオススメ、こんな面白い空間と展示はなかなか見ることはできない。本展は2年にわたり企画されている。第1期は本年2月21日まで。次回は来年の1月23日〜2月19日が会期。何がどう繰り返されるのか。

京都市美術館 琳派降臨-近世・近代・現代の「琳派コード」を巡って
神坂雪佳の能に関する日本画が目をひいた。「雪佳と能楽」と題した講演会があったくらいなので、雪佳が能好きであったことは間違いない。福田平八郎の大作も琳派を継承した見事な大作であった。現代作品はどれも。。。

京都国立近代美術館 写真の〈原点〉再考―ヘンリー・F・トルボット『自然の鉛筆』か
トルボットの写真もさることながら、やっぱり畠山直哉の被災地を撮影した写真は見るたびに不思議な気持ちにさらされる。東京都写真美術館で見たスナップと額におさまった写真、時間の経過とともに写真家の心境の変化が写真に投影されている。しかし、どの写真も水平線がぴたりと縦の中心にある。ATOMOSシリーズも出展されていた。ダヤニータ・シンが去年表参道のギャラリーで販売した写真集兼写真(個人蔵)が展示されていたのでちょっと驚いた。3月にシンポジウムあり。赤々舎の『自然の鉛筆』もミュージアムショップで販売されていたのでざっと目を通す。

この後、強い頭痛が始まって予定を繰り上げて帰名。

更新がないときは頭痛で寝てるか旅に出てるかのどちらかです。

スポンサーサイト

ボヴェ太郎 舞踊公演 『夜の白波ー能《江口》ー』

名古屋市内には中川運河というかつて名古屋港から旧国鉄笹島駅まで物資を運ぶため掘られた運河がある。

中川運河近辺は物流拠点であるため運送会社や倉庫が立ち並ぶ。この一角を利用して2010年から中川運河キャナルアートというイベントが年に1度開催されている。

10月19日の19時半〜有料イベント(といっても1000円!)としてボヴェ太郎 舞踊公演『夜の白波ー能《江口》ー』が開催され鑑賞の機会を得たので感想を。
舞踊も能も半年前の私には遠い世界だった。美術は好きでもダンスや演劇、能・狂言、歌舞伎は年に数回観るかどうかの自分が、ひょうんなことから今年の6月の能「道成寺」を皮切りに突如この未知なる世界にずぶずぶとはまりつつある。

運河の近くで『夜の白波ー能《江口》』とは何とも粋な趣向ではないか。

ボヴェ太郎氏の名はおろかその舞踊も初。能《江口》も未見曲であったため、こちらは事前にあらすじを予習した。
能《江口》→http://www.nohbutai.com/contents/05/01a/4eguchi.htm

舞踊はボヴェ太郎氏であるが、この日の囃子方、謡を務められた皆様もまた看過できない以下の面々(敬称略)。
笛:竹市学
小鼓:曽和尚靖
大鼓:河村大
謡:田茂井廣道
詳細→http://www.canal-art.org/art/artist/markt.html

広大な鉄骨造鉄板梁屋根の倉庫の中央に白いスクエアな敷物(薄いマット?)その奥に囃子方の席と後ろにはピクチャーウインドウよろしく開口部が。
そして照明がぐっと落とされ、スポットライトが中央の白い舞台面を照らす。

竹市さんの笛が空気を裂く。
小鼓、大鼓と低い掛け声、倉庫内の音の反響は能楽堂以上に強かった。
周囲の空気が変わっていくのを観客皆が固唾を飲んで見守る。ちびっこ達もこの時ばかりは静かに舞台を見守っていた。
そして、囃子に耳を傾けていると奥から黒いベルベットのハイネックに袴姿の長身ボヴェ氏がしずしずとすり足で舞台の脇をスクエアな線を描く。橋懸かりの代替としてあえてすぐに舞台中央に進まず、周囲をすり足でしずしずと進んでいく姿は既に能楽師のようであった。

ほぼ1周したところで、中央へ。
ここから夢幻能の世界が始まった。
長い手を活かした非常にゆっくりとした動きがに魅了されていく。背筋は棒でも入っているかのごとく常にまっすぐ。
クラシックバレエのダンサーのような身体つき。
激しい動きはまるでないが、すぐにボヴェ氏の額に汗が光る。
汗が秋露のように見えた。

照明が絶技と言えるハイレベルさで、スポットライトが月に見え、ボヴェ氏のマットにのびる黒い影もまた見どころ。
陰影は霊の現世への名残のようで。

月明かりに照らされてボヴェ氏演ずる遊女が舞う、艶かしい艶やかな動き。
まるで遊女の生き様のような笛と鼓の音色は時に強く時に弱くやさしく鳴り響く。

ラストを飾る田茂井師の謡はしっとりと川面に流れる。
川面倉庫の向かいだけでなく、会場内の倉庫にも広がった。
照明は微妙に色を変え、これも囃子や舞踊にぴたりとあわせた演出。

謡が消え、江口の君の霊も月夜の力で普賢菩薩へと成仏し暗闇へと消えていった。

時間も場所も変成させる美しい美しすぎる舞台だった。

椅子が板で1時間超の舞台で辛かったことも忘れさせる貴重な舞台。川沿いの倉庫という場所であったからこそ可能になった一夜の夢舞台。

関係者の皆様のご尽力とご協力にひとりの鑑賞者として厚く御礼申し上げます。

2011年第4クォーター 書いてない展覧会 No.2 

漸く、本日仕事納め。
ブログの方も、今年の展覧会記事納めしないと・・・ということで「書いてない展覧会No.2」(ギャラリー除く)、まだまだ記事に書いていないのはありますが、思い出せるだけ書いておきます。
鑑賞納めは、明日、渋谷パルコのパルコミュージアムでラストの予定です。日本橋高島屋の「隠元禅師と黄檗文化の魅力」(1月16日迄)も早く行きたい所ではあります。

・「瀧口修造とマルセル・デュシャン」 千葉市美術館 1月29日迄
待ちに待った展覧会。
瀧口修造は、初めて富山県立近代美術館で彼の部屋を模したコーナーがあり、その展示品の数々に心惹かれて以来関心を持ち続けている。大規模な個展は2001年富山近美・松濤美術館で開催された「瀧口修造 造形的実験」展の後、2005年に富山近美・世田谷美術館の「瀧口修造 夢の漂流物」展以来となる。そして、今回は瀧口修造とデュシャンの関係に焦点を当て、両者の作品を回顧するという大規模なもの。酒井抱一展も展示総数338点でしたが、こちらも330点と負けていません。千葉市美術館の企画展はホント体力勝負です。
企画展だけでなく、今回は常設で実験工房特集が組まれていて、こちらの作品も充実しており、2つ合わせると相当な数、というかヘロヘロになりました。12月11日の巖谷國士氏による講演「瀧口修造とマルセル・デシュシャン」を拝聴しましたが、巖谷氏も初めて観たとおっしゃっていたデュシャンが瀧口に宛てた書簡はファン必見もの。
第3部では、岡崎和郎、荒川修作らの作品も紹介している。
個人的には、奈良原一高が瀧口の依頼でデュシャンの「大ガラス」を撮影した一連の写真の美しさに呆然とした。瀧口修造は書く人であって描く人では当初なかったけれど、後にドローイングや有名なデカルコマニーでアーティストとしての活動を始める。瀧口の場合、その思念そのものが芸術だと思った。
12月25日まで、千葉市美術館のあるビル8階で、瀧口修造のデカルコマニー展が開催されていた。瀧口修造研究の第一人者・土淵信彦氏所蔵のデカルコマニー約30点(?)を一同に展示。千葉市美の展覧会でデカルコマニーは6点程と少なかったので、この期間限定展示を見ることができたのは非常にラッキーだった。

年明けに担当学芸員の方の講演が開催されるので、それを聴講しがてら再訪したい。なお、図録(2300円)は書籍のようなハンディサイズ(縦19×横14.9×厚2.9cm 重さ614g)で真っ白な装幀が目をひく。掲載論文5本、書簡資料集など関連資料も充実している。詳細はこちら

・虚舟(うつろぶね) 「私たちは、何処から来て何処へ行くのか」 川崎市岡本太郎美術館 2012年1月9日まで
「大野一雄、岡本太郎、澁澤龍彦、土方 巽、三島由紀夫を、画家・篠 崇と写真家・細江英公の手により表象した作品と、9人の現代作家の科学を視野に入れた制作を展示するとともに、その背景としての「宇宙」「脳」「細胞」という3つの分野の最先端の研究成果を、国立天文台、東京大学数物連携宇宙研究機構、理化学研究所などの研究者のご協力を得て、大画面の映像で見せる。」というもの。芸術と科学の婚姻とまでチラシには謳われていましたが、あまりピンと来ませんでした。
大画面の映像ってどれだったのだろう。
元々、展覧会開催のきっかけは、画家・篠 崇のアプローチだったようで、篠 崇と写真家・細江英公の作品がメイン。
全体的にどこか無理があるような印象を受けました。こういう見せ方しかなかったのでしょうか。
作品出品作家:粟野ユミト、岩崎秀雄、植田信隆、杉本博司、多田正美、銅金裕司、戸田裕介、能勢伊勢雄、藤本由紀夫

・「日本絵画のひみつ」 神戸市立博物館 1月22日迄
「日本絵画のひみつ」という展覧会タイトルがこざかしい程アンマッチな内容。展示品の中心は、「日本において製作された異国趣味美術品」で、それをもって「日本絵画」と言い切る所に欺瞞を感じた。
展示作品は南蛮美術、秋田蘭画、洋風画家・石川大浪(いしかわ・たいろう)の画業、唐絵目利(からえめきき)の仕事として、石崎融思と渡辺鶴洲など、かなりニッチな内容で出展作品は満足できたのに、どうしてもタイトルと内容の不一致が気になって集中できなかったのが残念。最初から、「異国趣味美術品のひみつ」だったら素直になれたのに。
日本絵画のポイントは取ってつけたようで、却って混乱しただけだった。

・「長谷川等伯と狩野派」 出光美術館
展覧会概要では、等伯作品を中心に狩野派との関係を踏まえて見せる内容。屏風の良いものがたくさん出ていた。能阿弥≪『四季花鳥図屏風≫、元信印の≪花鳥図屏風≫などの室町絵画も室町好きには嬉しいところ。しかし、本展で一番記憶に残っているのは後半の等伯作品と狩野派作品の「長谷川派と狩野派 ―親近する表現」。長谷川派と狩野常信の≪波濤図屏風≫を並べて、近しい表現と違う点をそれぞれ比較でき、これは面白かった。
ラストに「やまと絵への傾倒」として≪柳橋水車図屏風≫が登場。この屏風を観ていると、琳派への影響を感じずにはいられません。
狩野派も長谷川派も中国の宋(南宋)・元画、朝鮮絵画を参考に自派の画風を築きあげてきたので、似ているのは当然かもしれない。長谷川派は雪舟との関係も考えないと。
ということで、来年岡山県立美術館で「長谷川等伯と雪舟流」という展覧会が開催されます(1月20日-2月19日)。こちらも気になる所です。

・「世紀末、美のかたち」 府中市美術館

作品のかたちに注目しながら、ルドン、ゴーギャン、ドニ、ミュシャらの絵画とガレ、ドーム兄弟、ラリックなどの工芸作品、合計80点で世紀末美術を展観。「光と闇」「異形の美」「文字を刻む」「自然とかたち」の4つの視点で絵画と工芸を組み合わせ、共通する造形の特徴を紹介していた。通常は絵画単独、工芸単独、もっと言えば、作家単位での展観が多い所を両者をミックスして見せたところにこの展覧会の特徴があったように思う。作品自体に新鮮味はなかったけれど、見せ方、構成が上手い。

・「野見山暁治展」 ブリヂストン美術館
先日ブログ「弐代目・青い日記帳」のTakさんのお声かけで、第4Q展覧会ベスト3をTwitte上で募集、寄せられた呟きの中で、この「野見山暁治展」を挙げられていた方もかなりいらっしゃった。
(参考)「弐代目・青い日記帳」:2011 「第4クォーター展覧会ベスト3」 

初期の具象絵画、フランス留学後、そして帰国後と作風は変わり、抽象絵画へと進んでいく。その過程において、抽象と言っても、どこかにモチーフの形が残る作品が私は好みだった。現在の新作群では、筆は益々のびやかに自由になり、より抽象化が進みストロークも大胆になっていたように感じた。えてして、大家の作品は年を経ると、緻密とは逆方向になっていく。
初期のボタ山を描いた作品も忘れ難い。

・「酒井抱一と江戸琳派の全貌」 千葉市美術館

抱一生誕250年記念展。こちらも前述の「第4Q展覧会ベスト3」では多く挙げられていた展覧会。
展示替えで2回訪問したが、結局記事は書かなかった。酒井抱一展としては過去最大級というだけあって、作品数は凄かった。これだけのボリュームがありながら、どうも小粒だなと感じたのは私だけでしょう、きっと。「夏秋草図屏風」(東博蔵)、「秋草鶉図屏風」や鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」(根津美術館蔵)などもあったけれど、全体として書籍や掛軸、画帖などが多かった。緻密な調査で抱一前、抱一後もしっかり見せるのはさすが千葉市美術館。
特に、抱一の高弟を鈴木其一だけでなく、池田狐邨なども紹介している丁寧さ。それでも、あんまり感動しなかったのは、単に私が琳派をそれ程好きではないってことなのかも。いや、抱一より鈴木其一が好きなだからかな。

・「版画でつくる―驚異の部屋へようこそ!」 町田市立国際版画美術館 10月8日~11月23日

初日に出かけて、とても面白い内容だったが記事を書かなかったのは作品リストがなかったから。作品名をメモしてまで記事にする気力がなかった。「驚異の部屋へようこそ」シリーズは2009年にも開催されていて、今回はその第2弾。なぜか、開催概要に2009年での企画展についての記載がなく、しかも展覧会タイトルも2009年と全く同じ。検索したら、このブログがヒットしてびっくりした。タイトルは同じでも、展示作品は一部重複していたが、大半は違っていた。
更に、今回は展示室途中の休憩コーナーで荒俣宏氏のビデオ上映が行われており、それを観てから、展覧会を回ると理解しやすかった。
本展最大の目玉は、キルヒャーの作品。金沢工業大学ライブラリーセンターの所蔵品で今回はちょっと出展数が少なかったので、もう少しまとめて観たい。動物図譜や植物図譜など珍品版画や書籍が全200点と大変満足でした。図録が2600円で泣く泣く諦め。しかし2009年の同展は図録が作成されておらず、やはりこの際購入すべきか。

・「モーリス・ドニ いのちの輝き、子どものいる風景」 損保ジャパン東郷青児美術館

いや、これはもうドニの家族愛溢れる絵画の連続でした。ドニは結構好きなのですが、こんなに家族ばかり、子供ばかり集めて展示されると、抱いていたイメージが変わって行く。。。どうも、この展覧会もピンと来ませんでした。
彼の家族を中心としたプライベートな人生を追いかけた感があり。ただ、本当はそれだけじゃなかった筈で、そちらの方が気になります。

・「日本画壇の風雲児 中村正義 新たなる全貌」 名古屋市美術館
チラシ掲載図版を見て、てっきり油彩画家と思っていたら大間違い。日本画家の方でした。
日本画壇というのは、日本画の画壇のことだったのですね。この展覧会、作品解説一切なし。ひたすら作品が連なるという非常に思い切った展示方法で約230点の作品を一挙に見せる。こちらは資料や書籍ではなく、ほぼすべてタブローなのでその充実ぶりたるや伝わるでしょうか。ご本人の写真が会場にあって、ちょっと堤真一に似たイケメンの方。
しかし、その作風の変遷たるやまさに嵐のごとく次々とめまぐるしく変化していく。深く静かな雪景色があるかと思えば、やや毒々しい片岡球子の作品を思わせるビビッドな色遣いの舞子シリーズなどなど。グラフィックアートや装幀にも向いているような、現に書籍装幀もされていた。日本画だけでなく、油彩もちょっと手がけていたようで、それも納得。確かに型にはまらない作品群だった。

2011年第4クォーター 書いていない展覧会 NO.1

近頃、さっぱり早く書けなくなってしまって、気がつけば12月もあと10日足らずになってしまった。12月どころか2011年が残す所わずかなのだ。

行ったのに書いていない記事が膨大にあり過ぎて、どこからどう手をつけてよいものか分からない。
とりあえず11月、12月に行って書いていない展覧会の感想をざっとまとめておきます。順不同。

・「感じる服・考える服:東京ファッションの現在形」 東京オペラシティ
ポストイッセイ・ミヤケ世代の東京で活躍するファッションデザイナー10組による展示。この展覧会で一番目を引くのはファッションでなく、中村竜治の会場構成だった。ファッションをテーマとする美術館での展覧会で記憶に新しいのは、MOTのフセイン・チャラヤン。その記憶と比べると、こじんまりしているのは否めない。バッグデザインとか好きなミナ・ペルホネンは展覧会向きではないような。ファッションデザインでなく、商品についているタグで音楽を作る展示があって、それは遊べた。でも、趣旨からはデザインとかファッションという枠組みとは違う楽しさ。

・「アーヴィング・ペンと三宅一生」 21_21DESIGN SIGHT
同じくファッション系展覧会で、こちらも会場構成に特色がある。坂茂の紙管を利用した空間は見事。

・三上晴子 「欲望のコード」、「オープンスペース2011」 ICC

今秋、YCAMへ行って体験した視線を利用して描画する装置は体験できなかったが、広いスペースでの作品は体験できた。
どこに動いても監視カメラのごときカメラが執拗に追いかけてくるのが、今後の未来を予兆するようで空恐ろしかった。
中央のスクリーンでは各カメラがとらえた画像がランダムに流れ、それはそれで迫力なんだけれど、管理されている感覚を強く受けた。

・アンリ・シダネル展 埼玉県立近代美術館
アンティームとは、フランス語で「親愛」や「親密」という意味を表す言葉。ル・シダネルは暮らしの情景を親しみをもって情感を込めて描いたため、アンティミストと呼ばれる。とにかく画面の静寂なことこの上なし。同じ光でも太陽の輝く光ではなく月や黄昏時の静かな光を描く。特に印象深いのは、窓辺の明かり。雪の日、夜、自宅に戻るとき、窓辺に明かりが付いているのを見つけると誰しもほっとするのではないだろうか。そんな、ほっとする安らぎを与えてくれるシダネルの静かな画面だった。

・「ウルトラマン・アート! 時代と創造-ウルトラマン&ウルトラセブン」 茨城県立近代美術館
ウルトラマンシリーズの中でも、ウルトラマンとウルトラセブンに的を絞った展覧会。
これがなかなか面白くて良くできた展覧会だった。冒頭は撮影コーナーで、ウルトラマンもセブンもドラマの1シーンのセットあり、怪獣は当然のこと飛行船まであって、みんな楽しそうにシャッター切ってました。
そこから先は撮影禁止。台本やウルトラマンのかぶり物やら、原画やら関連資料が大量に並んでいる。最終コーナーは、かつて観たことのない量のフィギュアが並んでいた。奥ではウルトラマンの飛行シーンの再現をやっていて、種明かしされてしまと、なんてことないのだけれど、なるほどと思わず納得の撮影技術だった。
家族で楽しめるので年始や冬休みにはぴったりかもしれない。

・クリテリオム82 上村洋一 水戸芸術館
エリック・サティ(1866~1925)作曲『ジムノペディ』を素材に複数の手法を駆使して解体再構成し、音とビジュアルで表現した作品。エリック・サティってよくアーティストが使用する作曲家。同じくジョン・ケージも。サティはドビュッシーやラベルに多大な影響を与えた当時の革新的作曲家だったのですね。これは、来年ブリジストン美術館で開催される「ドビュッシー展」とも絡んできそう。上村さんは、他の作品をもっと拝見したい。過去にギャラリーmomoで鎌田友介さんらとグループ展を行っているのに、これを見逃したのは痛い。

・清川あさみ 美女採集 水戸芸術館

ご存じ、刺繍を使ってアプローチしている清川あさみさん。今回もビジュアルの美しい画面を次々と繰り出す。
過去最大級の大作ではないだろうか。個人的には最後の両面展示が一番良かった。

2011年11月26日 鑑賞記録

来週、名古屋に戻るので本日はギャラリーで会期末が迫っているものを中心に回れるだけ頑張ってみました。
それでも、伺えなかった展示もあり。やはり限界はあります。
ということで本日の振り返り。

・「朝鮮陶磁名品展」 静嘉堂文庫美術館 12月4日迄

静嘉堂文庫の中国陶磁は驚嘆をもって以前拝見しましたが、朝鮮陶磁は未見。こちらは三菱財閥のお宝をお持ちでとにかく蔵が深い。朝鮮陶磁もまず間違いなく素晴らしいものをお持ちだろうと、この展覧会だけは行かねばと思っていた。
やはり、初めて拝見する朝鮮陶磁コレクションは本場韓国の美術館で拝見したものに勝るとも劣らぬ名品が並ぶ。
私の好きな高麗青磁が中心で、しかも小瓶をはじめとして掌サイズの愛らしいものも多くもろに好み。
粉青鉄絵はあまり好きではないのだけれど、今日観た「三葉文瓶」の鉄絵の黒はよく色が乗っており見事。
また、陶磁だけでなく螺鈿などの漆芸、特に「漆地螺鈿葡萄栗鼠文箱」や「華角張十長生文箱」などの工芸品も合わせて出展されている。やきものお好きな方は是非。

・高山登退任記念展 「枕木―白い闇×黒い闇」 東京藝術大学美術館 12月4日迄 入場無料
宮城県美術館での個展を拝見できなかったので、今回は必ずと思っていた。
インスタレーションは宮城県美の個展展示に似ている。枕木の組み上げと蒸気音、映像を使ったインスタレーション。大掛かりなインスタレーションになぜか、あまり感動や感情の動きを得ることがない。これが何故なのかと考えるけれど、理由が分からない。インスタレーヨンンの奥にドローイングや版の作品があり、私としては寧ろこちらの方にぐっと来た。
反対側には過去の制作風景や枕木ドキュメンタリー映像などが複数のプロジェクターで上映されている。

この後、藝大プラザの「藝大アートプラザ大賞展」へ。今年は漆芸やデザインの方が頑張っているように思う。特段欲しいと思った作家さんはなし。

・土屋信子 「宇宙11次元計画」 2012年1月28日(土)迄

注意:開廊日時:12:00-18:00 *日・月・祝および2011年12月20日(火)~2012年1月7日(土)は休廊。
水戸芸術館の「クワイエット・アテンション展」で拝見しているので、作品を観て土屋さんの作品を思い出す。
海外中心での活動と活躍。水戸で拝見した時より更にパワーアップしているように思った。

・加藤大介展 「-今は見える-」 INAXギャラリー 11月28日迄

木彫作家さんの個展なので楽しみにしていたのに、結局会期末近くとなってしまった。しかし、やはり上手いですね。
お面を取り外しても立派に彫刻として成立する等身大の人物立像が3体。
微妙に異なるアイビールック(死語?)に身を包み、顔にはお面を付けている。これ、全て乾漆造、阿修羅像と同じ技法で制作されている。お面に開けられた穴から中の顔をどうしても覗きたくなってしまうのが我ながら情けなかった。
中の顔に集中するあまり肝心のお面の記憶が飛んだのが情けない。これは私好みで良かったです。

・清澄白河のコンプレックスへ。
小山登美夫ギャラリーのディエゴ・シン展、タカ・イシイギャラリーの前田征紀展、ヒロミヨシイでは津田直展、キドプレスの樋口佳絵展、SPROUT、アイコワダギャラリーへ。米田知子展は前回拝見したので時間なくパス。

個々の感想を書くと長くなるので、好印象はディエゴ・シンと前田征紀展。

・宮永亮展 ギャラリーαM 再訪 宮永亮氏、下道基行氏、キュレーターの高橋瑞木氏とのトークを拝聴

・TARO NASU 春木麻衣子展
新作は画面2分割で縦に黒帯。左右で異なる人物のパーツをつなげて見せる写真。これはまた変化しているがう~ん。

・マキファインアーツ グループ展「Winter Show」 12月10日まで
中谷ミチコさん目当てで行って、ご本人が在廊されていたのでラッキーだった。
今回は、新・港村にも出ていた石膏彫刻の白い小品とアイディアスケッチメイン。「一度自分がやってきたことを壊して、新しい何かに進みたいと思った」とのこと。
ここ最近、VOCA展や森岡書店での個展イメージからどんどん離れて行っているようで、直接ご本人からお話を伺えたのは良かった。

・「Color of future たぐりよせるまなざし」 ターナーギャラリー 12月4日迄
西澤諭志さんの新作、特に『コジマ』が良かったです。行った甲斐あり!カミトユウシさんの作品は油彩で良いのでしょうか?会場内に作家名も作品名も案内図もないのは何とも残念。あとキュレーションに対してなぜ、この作家を選んだのかも分からず。有賀慎吾さんの作品はもう少し落ち着いたところで見たかった。小便小僧の1階にあった立体も誰の作品だか分からずじまいで終わる所だったけれど、奥村昴子さんのものだと帰宅後判明、これは入口で目を引く作品。1階、3階、4階が展示スペース。

2011年6月19日 鑑賞記録

本日終了する展覧会で観ていないものがいくつかあったので、それを観てから国立新美術館の「ワシントン ナショナル・ギャラリー」展へ。大型展かつ印象派と来たら、会期末になると混雑必至、早目に行っておくことにした。

では、本日の鑑賞記録です。

1.「トーキョーワンダーウォール公募2011入選作品展」東京都現代美術館 本日終了
2011年は、平面作品86名、立体・インスタレーション作品6名入選。
このうち、12名の入賞作家の作品が1年間順次都庁の壁に展示され、別途、上記入選者の中から選考があり、「TWS-EMERGING」で展示の機会を与えられる。

1人1点だし、ポートフォリオもないので、1点だけで判断するのは危険だし厳しいけれど、特に気になった作家さんは次の通り(私がリストに☆を付けた皆さま)。
稲垣遊、間瀬朋成、遠山裕崇、岸雪絵、宮崎雄樹、木下令子
次に、気になった作家さん(私がリストに○を付けた皆さま)
有馬莉菜、安藤文也、杉田悠介、鈴木明日香、酒井龍一、森智弘、久保ひかる、佐々木かなえ、森糸沙樹、村上佳苗、江川純太、小林利充

さて、来年のTWS-EMERGINGが楽しみです。

2.「花鳥の美-珠玉の日本・東洋美術」 出光美術館 本日終了
Ⅰ.花鳥が出会う水辺
のっけから、明代の邉楚善「夏景聚禽図」が登場して眼福。さすが、出光美術館。良いものをお持ちです。
水紋の表現、雀達が戯れ遊ぶ姿がとても愛らしい。状態も良く堪能。

青銅銀象嵌柳水禽文浄瓶、朝鮮・高麗時代のものという。近頃、銅の浄瓶の姿に背中がすっと伸びるような感覚を得る。青磁象嵌蒲柳鷺唐子文浄瓶、こちらも同じく高麗時代のものだが、青磁象嵌の優品。
以下印象に残った作品。
・四季花鳥図屏風 伝雪舟等揚 室町時代 右隻 枯淡の風情が絶妙。これに限らず室町時代の屏風絵が一番好き。
・四季花鳥図屏風 山本梅逸 同じ四季花鳥図屏風でも江戸絵画になると全く様相が変わる。梅逸お得意の花鳥図。華麗でありつつ墨とアクセントに藍や赤の使い方が抜群にうまい。

・日月四季花鳥図屏風 室町時代
昨日拝見した三井記念の室町時代の屏風絵と合わせ、日月四季花鳥図屏風を拝む。これは過去にも数回観ていると思う。

Ⅱ.文様の美を競う
・金銅蓮唐草文透彫経箱 室町時代
文様の美を一番感じたのは、この仏具の経箱だった。華曼でもよくこういった文様は観られる。

Ⅲ.富貴花の展開
ここはほとんどが、陶芸作品。田能村竹田の1点の絵画「春園富貴図」が目を引く。

Ⅳ.幻想世界に迎えられた鳥たち
・鳳凰図 サントリー美術館で開催中の「鳳凰と獅子」に出陳しても良さそうな作品。どこか朝鮮絵画には素朴感が漂う。

・「理趣経種子曼荼羅」 勝覚
黄雲母で孔雀と瓜唐草文を描いた料紙装飾が非常に珍しくかつ美しかった。
・色絵鳳凰文共蓋壺 野々村仁清

Ⅴ.人々に愛された花鳥の主題
・谷文晁 「枯木山鳩図」
緑青の美しい山鳩がバランス良く配されている。

・吉野龍田図屏風 桃山時代
左隻に紅葉、右隻に満開の桜。豪華な屏風は桃山時代らしい。四季の花々を愛でる人々の心持が伝わる。

3.「表象とかたち-伊藤熹朔と昭和の舞台美術-」早稲田大学演劇博物館 本日終了
http://www.waseda.jp/enpaku/special/2011butai.html

伊藤熹朔(いとう・きさく)の存在は本展で初めて知る。以下、本展のチラシが素敵な出来栄えで手に取った時から行こうと決めていたのに、最終日になってしまった。
昭和を代表する舞台美術家伊藤熹朔(1899-1967)の舞台美術デッサンやメモ、舞台写真など豊富な資料で、彼の手がけた芝居や音楽劇などの舞台美術の成果を展観する。
伊藤が影響を受けた明治時代の美術思潮、伊藤熹朔の活躍の足跡、伊藤熹朔以後の時代の舞台美術の三部構成。

1967年に満67歳の生涯を閉じるまで、演劇、バレエ、ミュージカル、新派、歌舞伎、映画と幅広い分野で舞台美術家、美術監督として活躍。弟がかの新劇の巨匠:千田是也だから驚く。

舞台衣装デザインも素敵だったが、舞台美術デッサンの緻密さ、そして実際に演じられている様子が撮影されている写真との組み合わせ展示が非常に良かった。更に、ポスターデザインまで手掛けていたらしく、もう目から鱗がボロボロ落ちる。これまで舞台美術と言えば小村雪岱しか知らなかったが、伊藤と小村雪岱、田中良の3名が昭和の舞台美術に残した足跡は非常に大きい。

どれもこれも貴重な作品ばかりで、言葉にならずメモを取るのも忘れて熟視。
こんなに凄い内容で入場無料、しかオールカラーで80ページもある図録が、何と500円!即買い。
村山知義も関係する築地小劇場とか、舞台美術は興味深々。田中良についても、いずれ展覧会があるだろうか。
伊藤と田中、小村はみな、東京美術学校卒業、伊藤と田中2名の卒業制作の自画像が展示されていた。

これは今日のイチオシでした。行って良かった。

この後、ワシントンナショナル・ギャラリー展へ向かったが別記事。16時半頃から空いてくる。

4.白須純『エントランス・オブ・ザ・ワールド』eitoeiko 7月16日迄
http://eitoeiko.com/exhibition.html

大理石にエッチングを施すストーン・エッチング作品を展示。モチーフ別に、蝶類、鳥類、魚類、神話や仏、動物などに展示。色も赤、青、緑、金、銀、オレンジと様々。
5グラム50円だったかな、グラム単位で販売しているのが面白い。
一番小さい作品だと600円位だそう。気軽に購入できるアート作品。プレゼントにしても良さそう。
eitoeikoは初訪問。漸く、行けました。矢来能楽堂とあんなに近いとは!


5.宇田川愛 個展 人形町三日月座 7月3日迄 水曜定休 11時~23時(日曜は18時まで)

宇田川さんは、シルクに版画を施す美しい作品を紡ぎだす方。2009年のキドプレスでの個展以後、作品を発表されておらず、ご自身のサイトも閉鎖してしまわれたので、作家活動を辞めてしまわれたのかと心配していた。
過去ログ:http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-566.html

ところが、突然久々の個展の案内が届き、とっても嬉しくなって初日に行ったが、日曜は18時まで。
宇田川さんは日曜に在廊されるとのことだったが、既に帰られた後で残念。
この人形町三日月座はカフェスペースなのだが、既に閉店していて作品だけささっと拝見させていただいた。
久々に拝見する宇田川さんの世界観はやはり変わっておらず、特にブルーに銀を配した作品は非常に良かった。

来週もう1度行ってみようと思う。
彼女はとてもセンスのある作家さんなのに、制作を辞めてしまうのは余りにも惜しい。女性が作家活動を継続するのは色々とハードルがあるかもしれないけれど、マイペースで良いので、これからも美しくかつ繊細な作品を見せていただけたらと思っている。

2011年6月18日鑑賞記録

本日も曇天→小雨→曇天とど真ん中の梅雨模様。
そして、3日連続の頭痛に悩まされ連日投薬で凌ぎつつ、本日も適度に徘徊。
以下、簡単な鑑賞記録です。

1.特集陳列 「海外の日本美術品の修復」 東京藝術大学美術館 6月19日まで
http://www.tobunken.go.jp/info/info110607/info110607j.html
海外の美術館・博物館が所蔵する絵画4点と漆工品4点を所蔵機関に返却する前に一般公開。入場無料で、海外に出て行ってしまったお宝を拝めるのだから非常に貴重な機会。二度と再び見えることのない作品もあるだろう。
中で、気に入ったのは、
・四季花鳥図 狩野松栄筆 6曲1双 ブルックリン美術館(アメリカ)蔵
・源平合戦図 6曲1双 ベルン歴史博物館(スイス)蔵
・竹に雀図 6曲1双 荒木寛一筆 ベルン歴史博物館(スイス)蔵
特に「竹に雀図」は「源平合戦図」の裏に貼られていて、今回別作品として表具・表装を付け直し修復している。
狩野松栄の「四季花鳥図」も様々な草花が散りばめられ、修復したばかりなのでとても美しい。
・花鳥螺鈿枕 1基 ライデン国立民族学博物館(オランダ)蔵
枕に引き出しが付いているのに目が釘付け。しかも、螺鈿細工の美しいことと言ったら。枕が高すぎるのは気になるが、一夜を共にしたい。

2.「伝統・現代・発生」ドローイング展 東京藝術大学美術館陳列館 6月19日まで
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm
東京藝大と中国中央美術学院の教員などによる伝統を現代表現として展開したドローイング約50点による展覧会。
目に留まったのは、臼井英之、松下徹、西山大基、廣川惠乙、大石雪野、原真一、大西博。そして、お目当ての興梠優護。今回の興梠さんの作品は、背景の下地と下の茶の組み合わせにメリハリあり。いつもの溶けていくような裸婦像が比較的しっかりと形態を留めている。この人はどんどん上手くなっていく。

3.「Beyond」SCAI THE BATH HOUSE 7月2日まで
http://www.scaithebathhouse.com/ja/exhibitions/2011/06/beyond/
中西夏之、名和晃平、イェッペ・ハイン、川上幸之介、ブライアン・アルフレッド、嵯峨篤によるグループ展。
名和晃平と、イェッペ・ハインはそれぞれ、MOTと金沢21世紀美術館で個展開催中。
中西夏之の1960年制作の作品と2000年の作品2点の対比が面白かった。40年経過しても、基本はぶれていない。
イェッペ・ハインのオブジェも良かった。やはり金沢には行こう。
名和さんのドローイングは、今回ピンと来なかった。

4.東博本館 総合文化展
月例講演会「関東大震災からの復興本館ものがたり-国産技術に裏付けられた建築デザイン」
・・・木下史青氏(東博デザイン室長)、加藤雅久氏(居住技術研究所)

総合文化展では、国宝室の「和歌体十種」の料紙装飾の美しさにやられる。他、1階の近代日本画、洋画のコーナーで岡田三郎助「傾く日影(雑草)」、中村彜「海辺の村(白壁の家)」、吉田博「精華」の普段あまり見かけない作品を拝見。日本画では速水御舟の「比叡山」の青に梅雨の鬱陶しさが吹き飛ぶよう。

月例講演会では、関東大震災から、現在の本館建物建築にまつわる数々の逸話や史実を画像や資料を交えて聴講。純国産の建築物だったとは!小屋組み鉄骨、柱は鉄筋コンクリート造。しかも外光を取り入れんとする照明への朝鮮。タイル、銅金具。設計は渡辺仁だが、コンペ2位以下の図面は見つかっているのに、なぜか1等の渡辺の図面だけが見つかっていないという怪。

5.三井記念美術館 館蔵品展 6月19日まで
展示室1では、茶道具の名品の数々。展示室2では長次郎の黒楽名椀 銘「俊寛」
展示室4では、「日月松鶴図屏風」室町時代(重文)をじっくりと。室町時代のやまと絵風屏風はやはり桃山時代の豪華絢爛金ぴか屏風より私の好み。
「源氏物語画帖」醍醐冬基も線の美しい華麗な源氏物語帖だった。
最後の展示室7では江戸末期~明治にかけての作品が。狩野栄信「四季山水図」が断然良かった。縦に観る遠近法描写。離れて見るとより雄大さが分かる。

6.「三井美幸展」6月25日迄、「窪愛美展」7月2日迄、「凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展」8月20日迄 INAXギャラリー
http://inax.lixil.co.jp/gallery/

一番良かったのは、「凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展」。
ブガッティに萌えた。ブガッティと言えば、かつて夢中になって読んだ『鋼鉄の騎士』著:藤田 宜永を思い出す。厚かった、暑かったあの冒険小説は、傑作。

7.松尾高弘 インタラクティブアート展 ポーラミュージアムアネックス 7月10日迄
http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/

新作「White Rain」2011年、「Aquatic Colors」2009年は、いずれも体験型のインスタレーション作品。
「White Rain」は光だけでなく、音楽も楽しめる。自分の動きに従って光も移動し、音楽も変化する。
そして、「Aquatic Colors」は元ダイバーにとっては海中を思い出させるような、久々に海に沈んでいく感覚を思い出した。鑑賞者が曲面の壁に近寄ったり、触ったりするとそこにクラゲがどこからともなく映像として発生し近寄ってくる。深海にいるような、気持ちが落ち着く。

8.「showcaseshow」第2回 MEGUMI OGITA GALLERY SHOW CASE 6月25日迄
入選:: 高井和夫・冨塚大樹・中井伸治・沼田月光
http://showcaseshow.org/thisweek
個人的には、富塚大樹の作品が一番インパクトがあったと思う。ただ、1名1点のグループ賞では、各作家の個性を発揮させるのは難しい局面がある。個性を相殺しあってしまう危険性をはらんでいる。
できるだけ、ポートフォリオを提出して、他の作品や作品傾向を来場者に知って貰うことが重要だと思う。

1回目の矢野耕市郎さんの陶芸作品は良かった。http://showcaseshow.org/yano 映像学科のご出身で、徳島県の窯元を継承されている若き陶芸家。


9.北野謙「深海 ー世界があることへー」 日本橋高島屋美術画廊X 7月4日迄
「our face 」、「one day 」、「Flow And Fusion」3つのシリーズからセレクトして展示。「One Day」シリーズのラージサイズは日本初公開。
北野さんご本人のサイトで各シリーズの作品画像を観ることができます。このサイト良くできている(以下)。
http://www.ourface.com/japanese/

どのシリーズも良いのですが、どうも私にはぐっと来るものがありませんでした。なぜだろう。客観的には評価できるけれど、主観的判断での好みとは違う。


この後、茅場町のギャラリーSUCHIにて枝史織「-自然、人、不自然-」へ。
こちらは、別記事にします。

映画「ブラック・スワン」 TOHOシネマズ日劇

今年のアカデミー主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマン主演の映画「ブラック・スワン」をTOHOシネマズ日劇に観に行った。

せっかくなので、大スクリーンで観たかったのだが、水曜レディースデイだったこともあり、上映30分前に行ったが既に前の方の列しか座席が開いていなかった。恐らく、上映時間にはほぼ満席だったと思う。

この映画、ナタリーポートマンがバレリーナの役を体当たりで熱演し、バレエシーンもかなり自身がこなしたという。
あらすじは公式サイト、wikipediaでは詳細なストーリーが記載されていますので、ご参照ください。

以下、ネタばれになります。あしからず。

とにかく怖い映画だった。主人公の精神が崩壊していく過程で、主役に感情移入するとこちらまで追い詰められてしまう。

この映画で気になったのは、母親と娘の関係。
「白鳥の湖」は悪魔の呪いにかけられたオデットが白鳥に姿を変えられてしまうというお話だが、映画において、悪魔の呪い=母親の呪縛なのではないかという思いが離れなかった。母親の呪縛は、母と娘の間で生じやすい。だから、男性にとって、この女性同士だから起こりえる関係というのは想像しにくいかもしれない。

ナタリー・ポートマン演じる主人公のニナは、幼少期より無意識のうちに背中を爪で掻く癖がある。
そして、彼女は母親と二人暮らし。母親も元バレリーナだが、ニナを妊娠したため、バレエの道を捨て、現在は絵を描いて暮らしている。
母は、娘を溺愛し、自身がなしえなかった夢を娘に託す。娘は母の思いを知り、その夢をかなえようと努力する。既にこの時、囚われの身となっていることに気付かない。
映画中の母親の台詞「あなたを妊娠したから諦めたのよ。」は親が子供に対して言ってはならない禁句だと思うが、世の親は「あなたのために・・・」「あなたのためを思って・・・」を娘に繰り返す。
ニナは、母親の言いつけを守る優等生だったのだろう。いつも、どこか不安げで繊細な様子をしている。
彼女は母親の夢を自分の夢としていたのか、もしくは、群舞の踊り手だった母を乗り越えんとしたのか、とにかくベテランプリマの引退を契機に新しい主役の座を狙う。

紆余曲折はありながら、思わぬ主役の座が転がり込むが、そこからが自我の解放と狂気の始まりとなる。

主役を射止めて最初に電話した相手はやはり母親。
そして、虎視眈眈と主役を狙う野性的なライバルのリリーの存在が、常に彼女を脅かす。

上品でかよわい白鳥は演じられるが、魔性のブラック・スワン(黒鳥)を思うように踊れないニナは苦しむ。
引退したベテランプリマ・ベス(ウィノナ・ライダー)からの中傷、彼女の事故、リリーの甘い罠。
そして、官能に目覚め始めるあたりから、これまで抑制されてきたニナの自我が解放を始めると同時に狂気の世界へと進む。

親離れする時には、精神的な嵐が吹き荒れる。
心理学用語でいう「疾風怒涛の時代」が、ニナに遅れてやってきたとしか見えない。

リリーの誘いに乗って、ニナは服従し続けて来た母親に反抗し、抵抗する。
しかし、同時に幻覚や幻聴が出始めていることに彼女自身が気付かない。
自分自身に病識がない段階で、精神を病み始めていることになるのだが、彼女は主役の座を諦めず、母親の「あなたには無理。役に殺される。」という言葉に耳を傾けず、舞台に立つ。

自分との戦いに敗れたニナが手に入れたのは、望み通り完璧な踊りだった。完璧な踊り=王子の愛への置き換え。
憧れのプリマだったベスに対して「あなたは完璧だった。」と伝えるニナ。これに対して事故後のベスは「完璧なんかじゃない。私の中身は空っぽ」という言葉が印象深い。

ニナは、最後に狂気から覚めたのか、いや最後まで狂気と役に取り付かれていたのか。
母親の呪縛を自ら解き放ったが、白鳥の湖のオデット同様に、悪魔の呪いが解けた暁に待ち受けていたのは・・・。

バレエ界の主役を巡る争い、孤独なプリマドンナ、それだけではなく、この映画では母親と娘の関係について注目すると、また違った見方ができると思う。

2011年6月4日 鑑賞記録

久しぶりの好天に恵まれたものの、始動は遅く11時頃より本日の鑑賞開始。行った順。

1.秋吉風人 榎本耕一 TARO NASU 6月18日迄
秋吉風人のペインティングはより抽象化され、全面単一色で塗られたものが数点。榎本耕一の映像作品はなかなか面白かった。手前にあったペインティングは、映像作品と関連していたのか。

ギャラリーαMの増山士郎展は、別記事に。

2.フォイル・ギャラリー「NAZE?」6月21日迄
ゴミかアートかをテーマに、ストリート系アートな内容。奥のグラフィティ絵画は気になった。

3.「掌10」ラディウム・レントゲンヴェルケ 6月28日
内海聖史さんの「惜色」は、十方視野を回転させて見せるという新展開。回すとまた違った風景が呈示される。田安規子・政子の小品やあるがせいじさんの手のひらサイズの作品が愛らしかった。

4.「Group Show IV」CASHI°6月25日迄
興梠優護さんの旧作4点をじっくりと。「soul wax」の爆発時の閃光と他の溶けるような描画について考える。セクシャルなモチーフを取り上げるのはなぜなのか。
助田徹臣さんの絵画と見まごうような人物の表情のクローズアップ写真も忘れ難い。またも、写真と絵画の境界について思い出した。

5.「奇想の自然-レンブラント以前の北方版画」 国立西洋美術館 版画素描展示室 6月12日迄
版画作品そのものについては、惹かれる作品はなかったが、「恋人たち(抱擁)」の左上端に登場する馬の寓意について関心を持つ。当時の西洋もしくは北方ヨーロッパでは馬は性欲の象徴だったとのこと。仏教美術での天馬の意味の違い、オリエントでの馬の意味合いとの違いは興味深い。

6.金村修「White Rabbit Opium Dream」 Broiler Space 6月4日で終了
金村氏ご本人のステートメントは意味不明だったが、写真展示を観た後では、おぼろげながら言わんとすることが分かったような。東京を中心として盛り場のネオンサインや街の風景をモノクロで撮影。
日本ってこんなに電線が多かったっけと思うほど、電線が目だった。金村さんの写真の街を撮る角度、焦点の当て方、息が詰まるくらい濃厚で密な展示だった。この展示は、本日一番心に強く残った。
ヒートアップした頭を休めるのにしばし休憩。

ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリーは別記事。同時に開催されている「李禹煥と韓国の作家たち」は良かった。昨年行ったleeum museumでも韓国の作家の現代美術作品を沢山観たけれど、強い精神性を感じる作品が多かった。
クサナギシンペイの作品は初見。う~ん、私の好みではないなということで省略。

7.渡辺英司新作展 Kenji Taki Gallery 東京 7月16日迄
渡辺英司と言えば、図鑑から切り取った蝶のインスタレーションでお馴染みだが、今回はペインティングに立体に写真とこれまでの作品とは異なる手法で作品を展開。現在に至るまでの軌跡を過去作品で見せつつ、新作の布を使った作品などを合わせて展示。とても、興味深い内容で、渡辺英司ファンは必見だと思う。国旗を使ったインスタレーション、布の新作、そして「石の目」と題された石彫や鉱石を使った作品が気に入った。

8.野村佐紀子写真展「野村佐紀子 4」「Requiem」photographers' gallery&Kula photogallery 6月17日迄
モノクロ中心の作品。私小説を写真というメディウムを使用し文字なしで見る感じを受けた。モチーフはバラバラだが、一貫して感じるのはセクシャルさ。ご本人が在廊されていたこと+笹岡啓子さんもいらっしゃって、暫くお話をする。レクイエムの方は既に他界してしまった男性モデルのスナップ写真が中心。彼が亡くなったという事実を知らなければ、あの写真は見え方が違ってくるだろう。
プリントされたベッドシーツが販売されていたけれど、まさしく体感的なエロティシズムを経験できそうなグッズだった。

9.「皮膚と地図Ⅱ」 新宿眼科画廊 6月8日まで
利部志穂 / 白木麻子 / 村上郁 / DIG&BURY / TOLTAによるグループ展。
やっぱり、利部志穂の作品が一番面白い。今回は映像とインスタレーション。ごちゃっとしてないで、シンプルに仕上げているのが好感を持てた。村上郁の電球を付けたり消したりする作品「伝達の軌跡」(?)も面白い。ただ、「皮膚と地図」というテーマについての関連性を作品と結び付けるのは難しい。

10.照屋勇賢・グオ イーチェン「OKINAWA / TAIWAN」Maki Fine Arts 6月18日迄
照屋勇賢の作品は、いつものブランド紙袋を使用したペーパーワーク。紙は木から生まれ、木に帰る。3点はちょっとさびしい。奥のスペースに紅型を使った平面作品もあるので、お見逃しなく。
グオ・イーチェンは映像作品で、恐らく人種差別をテーマにした作品。

映像作品上映会 「MOVING」 京都シネマ

映像作品上映会「Moving」 京都シネマ 5/20,21,22

本日から、京都ではホテルモントレ京都を会場にアートフェア京都が開催されている。
これにあわせて、京都シネマ(地下鉄烏丸線 四条駅すぐ上のCOCON烏丸3F)で、全国から新進の映像作家9組を招いて実写、アニメーション、ドキュメンタリーなど、様々な技法で制作された短編映像作品9本を上映するイベント“MOVING”が開催されている。
“MOVING”の公式サイト→ http://www.andart.jp/moving/
参加している映像作家9組の顔ぶれは以下の通り。
かなもりゆうこ、トーチカ、林勇気、平川祐樹、松本力、水野勝規、宮永亮、村川拓也、八木良太(アイウエオ順)
*各作家さんのプロフィールは上記公式サイトをご覧ください。

ウェブサイト / アートプロジェクト“&ART”と、京都を拠点とする映像作家(実行委員は水野勝規、林勇気、宮永亮の3名)が企画する新しい試みだが、何と言っても私を惹きつけたのは参加作家の顔ぶれ。
個人的に好きな映像作家さんが名前を連ねていて、これが行かずにおれようか。
しかも、ホテルモントレ京都の“株式会社フィールド / &ART”としてブース内では、200枚限定生産オリジナルDVD(5,000円)を販売中。DVDに収録されている作品と上映される作品は違うらしい(同じ作品もあるのかも?)ので、二度お楽しみがある。*Movingとアートフェア京都で500円の相互割引あり。

さて、上映順は、林勇気→平川祐樹、八木良太→宮永亮→かなもりゆうこ→トーチカ→水野勝規→村川拓也→松本力。この順番は実行委員の面々と関係者の方とで作品が出揃ってから検討し決定したとのこと。

この中で、私が過去に作品を一度も拝見したことがなかったのは、かなもりゆう、村川拓也。以下敬称略。

村川は、今回ウィーンから生中継を使用した映像作品を上映するという、実験的なアプローチで作品を見せる。
逆に、過去に同じ作品を観ていたのが、宮永亮「Wondjina」2009年、トーチカ「STEPS」2010年(あいトリの長者町会場で上映されていた作品)。八木良太「Lento-Presto(Coridor)」2008年は、確かあざみ野市民ギャラリーでの個展で上映されていたような記憶が。。。

全作品を通じて、映画館での上映に適した作品とそうでない作品、そして容赦なく連続して9つの映像作品が流れると、作品の完成度や個性が明確になる。

個人的に良かったのは、平川祐樹「ささやきの奥に」2011年。
この作品は、先月名古屋の長者町でOne Day Cafeで3面スクリーンを使用して上映された作品をリバイズし新しい画像を追加し再構成し直したもの。私にはまるで別作品のように思えた。

このイベントでは上映後、約1時間毎日交代で出品作家3組+ゲストによるアフタートークがある。初日は、平川、八木、宮永の3名によるトーク。私はこの組み合わせのトークを拝聴したかったので、初日に行くことにした。
トークの中で、平川さんは以前は映画を撮影していたこと、そしてお金を取って上映した経験もあったが、その経験の中で違和感を感じ、映画でなく映像作家を目指すことにしたと語っていた。
確かに、映画館という強制的な場(ゲストの南氏の発言による)で、映像を観た時、もっともその雰囲気にマッチしていたのは彼の作品だった。
彼の映像には、観る者に何らかのストーリー性を想起させる力がある。
立ち込める不穏さ、言ってみればミステリー映画の一場面のような画像を観ると、次は一体どんな展開があるのかと知らず知らずのうちに考えていることに気付くだろう。
更に、映像の質においても非常に美しかったことを追記しておく必要がある。映画館のスクリーン、大画面に映し出された時の映像の美しさは、映像を語る上で重要な要素だと思う。

次に、トップに上映された林勇気の新作「The layers of everything」2011年。
林さんに関しては、兵庫県立美術館ギャラリーで開催された個展が記憶に新しいところ。
今回も上記個展作品でも使用されていたように、写真のデータをPC画面で切り抜き重ねて作り上げている。
彼の作品に特徴的なリズム感、軽やかさは、今回のイベントのトップを飾るのに相応しかった。
また、ジャスト5分という上映時間も長くもなく短くもなく、もう少し観ていたいなと思わせる適切さがあった。

ラストの松本力「halo/grow glow」2011年も非常に完成度の高い作品だった。
松本力は今年の恵比寿映像祭で、インスタレーションとして映像作品を展開。この時は、私の好みではないなと思ったのだが、今回の上映で印象が大きく変わった。彼の作品は映画館での上映に適しており、観る側にとっての環境において、立ったまま作品を観るのと逃げづらい映画館でじっくり腰を据えて作品と対峙することの違いを一番感じたのはこの作品。紙に描かれたドローイングが生き物のように自在に動き、そして背景の光や色彩の組み合わせと音楽は心地良かった。

音楽と言えば、サイレントで12分の映像を見せた水野勝規「graphite」2010年も忘れがたい。
恐らく、12分が長過ぎると思った観客も多かったのではないか。
しかし、冒頭の山水水墨画を思わせる画像が出た瞬間を私は忘れることができない。
目の前に現れたのは映像というより、山水画そのものだった。しかも、ずっと眺めていてもまるで動きがない。
機械の不調?と思ったが、しばらくしたら、別の画像が登場し、そして何度か拝見しているおびただしい水量の滝の映像が。
上映会の後、水野さんご本人にお話を伺うことができた。
私:「なぜ、いつもサイレントなのですか?」
水野さん:「映像において音楽が与える影響、印象が大き過ぎる。自分としてはそれを排除したい。映像を制作しているつもりはなく、絵画を描いているつもりで作品を制作している。」
私:「水を使用したモチーフが多いように思いますが、それについて教えてください。」
水野さん:「元々デザイン専攻だったが、ある日、水に反射した像の美しさに気付いた。これをビデオカメラで撮影し反転させ、カラーでなくモノクロで見せたら面白いかもと思ったのが映像制作の始まり。水の表情といったものが好きなんだと思う。」

今回の上映では、もう少し映像と映像の切り替えタイミングを短くした方が良かったのではないかと思った。あまりにも静止時間が長過ぎる。そういえば、昨年だったか心斎橋SIXでデビット・リンチの映画特集を観に行った時、まるで動かない画像が延々と続く作品があったことを思い出す。ただし、ご本人は自作上映中に寝てもらっても構わないと笑っておられた。

未見の作家お二人の作品は、私にはちょっとピンと来なかった。村川さんのネット空間や時差を超えてオーストリアからのネット画像をそのままスクリーンに映し出すアプローチは今後の展開によって面白くなるかもしれない。

宮永亮「Wondjina」2009年、八木良太「Lento-Presto(Coridor)」2008年はスクリーンで観てもその個性は失われることはなかった。特に「Wondjina」を私が初めて観たのは、TWS本郷の大きなスクリーンだったので、久しぶりに、同じような状況で観られたのは嬉しい。
宮永亮「Wondjina」は、TWS本郷の上映では9分と私の過去ログに記載されているが、今回は14分34秒針のフルバージョン。改めて、「Wondjina」のタイトルと作品との関連性を考えさせられた。この作品を観ていると、太古、人類が地球に生命体として誕生した時、目にしたものではないか。「Wondjina」はオーストラリアの先住民アボリジニに伝わる神話を意味する。彼らは古の生活や伝統を現在においても受け継いでいる。(参考)http://en.wikipedia.org/wiki/Wondjina

なお、上映作品について実行委員3名による作品解説が掲載されたパンフレットが配布されるが、この解説が秀逸。
そして、アフタートークでの各作家による上映作品についての感想を拝聴すると、さすがに映像作家同士、目の付け所が素人とはまるで違う。
が、美術館やギャラリー、映画館に来場する人の多くはプロフェッショナルではない。
一般の人たちが楽しめ、感動し、新たな発見があるような映像を私は期待したい。

この企画をプレイイベントとして、来年開催に向け準備中の「MOVING-京都芸術祭-」へと活動をつなげて行く予定とのこと。1人の映像ファンとして、この新しい活動に敬意を評すると共に、このプレイベントを足がかりとし、作品の更なる高次化と映像作品の普及を切に願っている。
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
ブログ内検索
twitter
最近のエントリ
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。