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富山県立近代美術館 常設展

順序が逆になってしまいましたが、昨日アップした水墨美術館の前に訪れたのは富山県立近代美術館でした。
富山市内では2時間半しか時間を取れなかったので、企画展はパスして常設のみ駆け足で鑑賞しましたが、その充実度には驚かされました。

常設展は
常設Ⅰ 「20世紀美術の流れ」
常設Ⅱ 「四季の美 夏から秋」
常設Ⅲ 「シャガール 聖書の世界」
常設Ⅳ 「再現:物々控」(瀧口修造コレクション)
常設Ⅴ 「ポスターと文字」
の5室より展覧されています。
テーマや内容はメインの常設Ⅰを除き、年に4~5回展示替えがあります。

私は常設ⅤからⅠの逆順で見て行ったのですが、強く印象に残ったのは常設Ⅳと常設Ⅰ。

瀧口修造は富山県出身の詩人・美術評論家ということで、特別に一室が設けられていました。

コレクションでは、国内外の作家たちから瀧口に贈られた様々な作品と、誰かの旅の土産や瀧口が拾ったのかもしれない石ころ、貝殻などが区別されることなく共存しています。これら"瀧口の書斎にたどり着いたモノたち"によるコレクションは、多領域にわたる作家たちと瀧口との交流のスブニール(思い出の品)であるといえます。 今期は、瀧口がこれら書斎のモノたちに寄せた言葉とともに「オブジェの店」について綴ったテキスト「物々控」(ものものひかえ)をテーマとして、作品や資料を紹介します。
(美術館HPより抜粋)

この中で目を引いたのは作家達から贈られた作品群です。
草間弥生の作品は今まで見た中で一番いいなと思えるもので、サイズは小さいのですが例のぶつぶつもなく(あのぶつぶつは、個人的にあまり好みではないので)、作品から漲る力のようなものを感じました。
草間の作品で欲しいと思ったのはこれが初です。

他にも良いなと思うものがいくつかありましたが、作品リストが準備されていないため、タイトルや作家名の記憶が既に失われてここに挙げられないのが残念。


メインの常設Ⅰは、2階のほとんどの空間を占めています。
いきなり対面したのがピカソの「広場の入口」。
ロートレックの影響が伺われるカラフルな作品です。
他にも「肘かけ椅子の女」を含め計4点がありました。

ピカソは20世紀美術のほんの入口で、この後ルオー、レジェ、クレーにカンディンスキー他へと続き、シュルレアリストの作品につながります。
これがまた素晴らしい内容で、ミロ、エルンスト、デュシャン、ダリ、ポール・デルヴォー、マグリットなど主たる作家のものはほぼ見ることが可能。
中でも一番嬉しかったのが、アンリ・ミショーの水彩3点との出会いでした。
東京近美での展示を見ることができず、図録だけを買い求めました。
まさか、ここでミショー作品と出会えるとは!
ミショーは瀧口修造との関わりも深いため、富山近美で購入したのかもしれません。
これだけで、ここまで来た甲斐がありました。

更に常設は戦後のアメリカンアートとヨーロッパの主たる作家(ベーコン、デビュッフェら)のものを見ました。
なかったのは、オキーフやロスコー、リヒテンシュタインでしょうか。


富山近美は名作椅子のコレクションでも有名ですが、今回は展示されておらずそれが心残りです。
それでも、これだけの内容で常設入場料200円はお値打ち。

水墨美術館の喧騒とは裏腹に、近美の常設は私1人の貸切状態でもったいないような、嬉しいような・・・。
また機会があれば是非立ち寄りたい美術館でした。
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「東京富士美術館所蔵 珠玉の日本美術名宝展」 富山県水墨美術館

入善町の内藤礼「母型」展に行く前に富山駅で下車し、富山県水墨美術館へ行って来ました。もう一つ、富山県近代美術館のご紹介はまた後日と致します。

水墨美術館は、平屋建てで茶室も併設する純和風の建物です。
中庭には広大な芝生が広がっていました。
平成11年4月に開館と比較的新しい美術館で、8年経過したとは思えないほど内部も美しく維持されていました。

さて、この「珠玉の日本美術名宝展」は江戸時代を中心に狩野派や琳派の屏風絵と襖絵、葛飾北斎、歌川広重らの浮世絵をはじめ、書、工芸、武具などの東京富士美術館所蔵の優品約70点を展示しています。

会場は強風にも関わらず、大変な賑わい。

私が見たかったのは鈴木其一の「風神雷神図襖」。
宗達、光琳、酒井抱一の「風神雷神図」は出光美術館でそろい踏みしたのをしかと鑑賞しましたが、其一による作品は未見でこれだけは見たい!と勇んで行ったのです。

其一の「風神雷神図」は背景が墨絵となっていたのが特徴的で、やや迫力には欠けるものの墨で描かれた雲と風が却って主役の風神雷神を際立たせていたように思いました。

お目当ての風神雷神意外にも面白い作品がいくつかありました。
絵画では
・「鶴図屏風」曽我蕭白
173.8×396.2の六曲1隻墨画淡彩ですが、燐とした鶴の様子はすばらしかったです。

・「耕作図屏風」
・「武蔵野図屏風」はいずれも作者不詳ですが、シンプルな画面構成が個性的、色使いも仰々しくなく気持ちが落ち着いてくる心和む作品でした。

浮世絵も目を奪われる作品がいくつか。
・歌麿の「教訓 親の眼鑑 正直者」
・渓斎英泉「東都両国橋夕涼之景色」
・歌川豊国「新吉原楼之景色」

現在、後期の松濤美術館浮世絵展を前に「浮世絵の歴史」について学習中ですが、渓斎英泉の作品などは、歴史を知ってから見ていればまた違っただろうに・・・と今更ながらに思うのです。


この後、常設もまわりましたが水墨美術館の名に恥じない良い作品が展示されています。
この日は、菱田春草「四季山水(春・夏)」、小川芋銭「沼」前田青邨らの作品や、富山県出身の下保昭展示室などもあります。


この特別展で水墨美術館入場者は開館以来100万人を突破したとのこと。
通りで人気のはずです。

*11月4日(日)まで開催中。


「京都と日本絵画」 京都市美術館

kyyoubi


夏に購入した「関西ミュージアムぐるっとパス」が予想以上に使えない代物で、掲載されている美術館にはとっくに10以上行っているのだが、パスの割引券より美術館独自の割引制度の方が安かったりで、有効期限2日前にしてあと一つスタンプが埋まらない状況を迎えてしまった。

19日は京都一円の美術館に行こうと思っていたが、近美も京博も細見も既にスタンプ取得済み。
近隣の美術館でスタンプがなかったのは京都市美だけ。
スタンプを得るためにとりあえず行ってみることにした。

折しも19日には「北欧モダンデザイン・クラフト」展と「京都と日本絵画」の2つの展覧会が開催中であったが、チラシを見た瞬間「京都と日本画」に決定。
それほど、チラシに掲載されていた「ピアノ」中村大三郎の日本画に惹かれた。
更に、購入したチケットにも上村松園のかわいい美人画が。。。
思わず「かわいい」と声に出したら、係の女性が「残念ですがこの絵は後期のみの展示で今は展示されていないのです」とおっしゃって、ちょっとがっかり。
でも他にも松園の作品は数点あると聞いて、気を取り直して会場に入る。

展覧会は以下6部構成。

1章 博覧会と京都画壇
2章 文部省美術展と京都画壇
3章 帝国美術院展と京都画壇
4章 大礼記念京都美術館京都展覧会と市展
5章 改組帝展/昭和日本文展と京都画壇
6章 新文展/戦時文展と京都画壇

約120点の作品の中で印象に残ったのは、中村大三郎、上村松園、秋野不矩、池田遥邨、西山英雄。

池田遥邨も西山英雄も初めてその名を知った。
特に西山英雄の作品「港」は油絵のような雰囲気で異彩を放っていた。
池田遥邨は「雨の大阪」が良い。理由は自分にもよく分からないのだけれど、惹かれるものがあった。

思わぬ大作ぞろいの展覧会で、見終わった後すがすがしい気持ちになった。

*前期:10月6日(土)~11月4日(日)
 後期:11月6日(火)~12月9日(日)

「王朝美の精華・石山切」-かなと料紙の競演- 徳川美術館

「料紙」の文字にひかれて、徳川美術館で開催中の特別展「王朝美の精華・石山切」に行って来ました。

料紙に関心をもったのは、奈良博で開催された「院政期の絵画」展で平家納経を見てからです。
平家納経に使用されていた紙の美しさはまさに神業。
こんなに可憐な紙の文化は日本固有のものではないかとただひたすら感心したのです。

石山切とは展覧会チラシによれば、

国宝「本願寺本三十六人家集」(西本願寺蔵)のうち、「貫之集下」及び「伊勢集」の断簡のこと。昭和4年(1929年)に分割されるに際し、本願寺がもとあった摂津の石山にちなんで名付けられました。
本展では「石山切」を中心に「尾形切」など早くに切り出された「本願寺本三十六人集」のツレの古筆切や歌仙絵を展示し、平安時代以来いつくしんできた三十六人の歌人とその家集の享受の歴史を紹介します。

「石山切」が分割されて以来、78年ぶりに92点の「石山切」が一堂に会すだけでなく、関連の古筆切、36人の歌仙の姿を描いた作品などを含め220点あまりの作品を展示。(会期中大幅に展示替えあり。)

1

3


私は和歌には疎く、上記解説を読んでもピンと来ませんでしたが、目的の料紙に的を絞って鑑賞することにしました。


愛用の双眼鏡を持参していったのですが、一点一点丹念に眺めていくと
装飾模様の細かさ、草花や鳥、うかし彫りを始め、金銀の砂粉や箔を撒いたりと極めて繊細な美の世界です。

もう一つ料紙の美をあげるとすれば、色合いの妙。
紫や濃緑、茜といった古来日本の色(植物染料で着色したのか)は西洋画には見られない美しさです。
色のちらし方、デザインもすばらしいのですが、そのデザイン性は紙の継ぎ方によるもの。優美な曲線と流れを作って何枚かの紙を重ねている作品もありました。


さて、特別展もすばらしかったのですが常設展の方で驚くような屏風絵があったのでご紹介しましょう。

1.「豊国祭礼図屏風」(重要文化財) 六曲一双
トヨクニ


この屏風は岩佐又兵衛が描いたと伝えられる(確証はなし)作品です。画面右隻は豊国神社の社頭における田楽・猿楽の様子、左隻には方広寺大仏殿のを背景に、上京・下京の町衆(まちしゅう)が華美ないでたちで豊国踊(ほうこくおどり)に熱中するさまが描かれています。
一双で千人近い人物が描かれている様は圧巻。
永徳展で見た「洛中洛外図」屏風のきらびやかさには劣りますが、こちらは町の人々の熱狂ぶりが見ているこちらに伝わります。

2.「歌舞伎図巻」詞書 伝鳥丸光広筆 (重要文化財)
出雲の阿国に続く采女の女歌舞伎を描いた風俗画ですが、保存状態が良く美しい。
描かれている内容も当時の女歌舞伎の様子がよく分かり、これまたじっくり鑑賞しました。


この他国宝千代姫所用の「初音蒔絵文台、硯箱」も展示されており、東博の「大徳川展」にねこそぎ所蔵品を貸し出したのかと思っていましたが、徳川の歴史はそんな浅いものではなかったようです。

常設をじっくり見たせいで、本来の目的「石山切」は閉館が迫ってきて最後は駆け足になってしまったのが残念でしたが、充実した内容で大満足です。

*特別展は11月4日(日)までの開催です。お早めに!
常設の上記2作品は11/13まで展示されています。

「パッションコンプレックス オルブライトノックス美術館コレクション」 金沢21世紀美術館 

京都から富山へ行くのに、金沢を素通りするわけにはいきません。
金沢21世紀美術館開館3周年記念の「パッション・コンプレックス」展を見て来ました。

アメリカはバッファローにあるオルブライト=ノックス美術館のコンテンポラリーアートコレクションから15名の作家による作品が展示されています。

私が見知った名前では、ソフィ・カル、シュテファン・バルケンホールの2人。
バルケンホールの彫刻作品は大好きなので、楽しみにしていました。

ところが、本展での最大のヒットは特別展示ローリー・シモンズ作「悔恨のミュージック」(映像作品)でした。
44分14秒もの長丁場の作品であったため、最後まで見ることはないだろうと大して期待もせず展示室に入ったのですが、あっという間の44分。
時間を忘れるエンターテイメント?作品です。


本作は3幕から構成されていて、私は第1幕の後半から見始めました。

タイトル「悔恨のミュージック」にふさわしく内容はミュージカル仕立てになっています。

第1幕は、おもちゃと腹話術人形が登場。

第2幕、この2幕が最高!!!
名女優メリル・ストリープが腹話術人形達と過去の恋を歌と共に回想するという趣向です。
2


最初、登場人物の女性(本作唯一顔を出している人間)がストリープそっくりで、まさか本人じゃないよな~、名女優が人形と共演なんてと思
いましたが、最後のスーパーでストリープの名前が出ていたので間違いなく本人。

人形相手でも恋のせつなさを名演していました。
ストリープは本当に素晴らしい。

第3幕は、映画「コーラスライン」を彷彿とさせるオーディションが舞台です。
登場するのは様々なかぶりものをした人間で、タップやバレエで楽しませてくれます。
3


ローリー・シモンズの大作に偽りはありません。
本展では、この作品のみ金沢21世紀美術館が所蔵しています。


肝心のオルブライト=ノックス美術館コレクションはと言えば、ジリアンウェリングの写真が良かったです。

本展チラシにも彼女の作品が使用されていますが、チラシの写真1枚ではその良さは分かりません。
シリーズで見てこそ、面白みがあるという作品です。

アルバムシリーズの6点の家族の自画像は、全て作家本人(女性)が演じているのですが、同一人物のとはとても信じられません。
ジリアン

特に「弟」を演じた作品は特殊メイクだと分かっていても、男性としか思えない。注:上記画像は「弟」を演じた作品ではありません。


もう一つ。モナ・ハトゥムの代表作「+と-」。
ハトム


この作品を過去にどこかで見たことがあるような気がしたのですが、思い出せず。
単調な動きの繰り返しであるにも関わらず、飽きがこないのは輪廻を感じさせるからなのか不思議な作品です。

*11月11日まで開催中。
特別展示の「悔恨のミュージック」は毎時15分から放映されます。
必見です。
3

内藤礼 「母型」(matrix) 入善町発電所美術館

昨秋、愛知県佐久島のアートプロジェクトで内藤礼の「返礼」展が開催されていました。
私は「返礼」展の「舟送りイベント」に参加する予定だったのですが、石段を踏み外し1ヶ月のギプス生活をする羽目になり、敢え無くキャンセル。
今回富山での「母型」展はリベンジと、開催を知った時から絶対行こうと決めていました。

発電所美術館は富山県入善駅よりタクシーで約10分程行った所にあります。外観はレンガ作り、大きな箱のようにも見えました。

大正時代に水力発電所として建設された建物を北陸電力から入善町が譲り受け、美術館としてリノベーションし運営しています。
この美術館は1995年4月にオープンし、その後1996年に建物が国の「登録有形文化財」に指定されました。


当日はもの凄い強風で曇天。
しかも行った時間は午後4時頃だったので、周囲の景色を楽しむ余裕もなく中に入りました。

これから行かれる方のために、展示内容は書けませんが靴を脱いで鑑賞します。そして、電力美術館ならではの展示です。
ここでは、私の感じたことを単語だけで書いておこうと思います。
後は、行ってからのお楽しみ~。

・「視ること」
・「待つ」
・「音」
・「一体感」
・「生」


検索エンジンでこの展覧会について検索したところ、内藤さんと同じ武蔵野美術大学同級生の方のブログ「Reiko's Living Room」にたどりつきました。

開催初日のオープニングに参加されたようで、私の拙い記事より大変参考になる内容です(以下URL)。是非、ご覧になってみて下さい。
http://blog.goo.ne.jp/miss_saurus/e/ac2cb7b5b98ed2c217719b987ae17233


展望塔もあって、そこからの眺めは最高!だそうです。
→ タクシーの運転手さん談

今回は展望塔まで行けなかったので、また面白そうな展覧会があれば次回こそ!と思っています。

*12月16日(日)まで開催中。
入善町下山芸術の森 発電所美術館HPは以下です。
http://www.town.nyuzen.toyama.jp/nizayama/

「琳派展X 神坂雪佳 京琳派ルネサンス」 細見美術館

琳派


ようやく神坂雪佳の作品をまとめて見ることができました。
訪れたのは京都岡崎にある細見美術館。

前回のリクエスト展で、人気の高い「金魚玉図」や「百々世草」を見てもっともっと作品を見たいという気持ちが強く残りました。

今回はその雪佳の作品ばかり、細見美術館所蔵品だけでなく近隣の京都市美や京近美等の所蔵品も展示されています。

展示は
・雪佳の魅力 -近代琳派の誕生-
・京琳派へのあこがれと古画学習
・生活を彩る -工芸図案家として-
・意匠・図案 -雪佳デザインの世界-
・光悦・光琳顕彰と雪佳
・古谷紅麟の図案
以上の構成です。

特に印象に残った作品を挙げると

1.白梅図
すっきりとした琳派らしい上品な作品。
決して派手ではないのですが、凛とした感じが好きです。

2.百々世草
前回見たのとは別の図案が展示されていました。
展示期間中に頁替があります。
一気に全ての頁を見たい衝動に駆られました。
何だかお預けをくらった犬みたいな心境です。

3.柿蒔絵螺鈿文庫
この螺鈿文庫だけでなく工芸図案家としての雪佳作品は見事としか言いようがありません。
光悦とも違う、雪佳独特のデザインで現代にも十分通用する新しい息吹を感じます。
どれもこれも欲しい箱たちでした。

4.「衣かへ」「蝶千種」
百々世草のみならず雪佳デザインの素晴らしさを感じたのがこの2つ。
同じくこれらも頁替があります。
ごく一部の図案しか見ていないことになりますが、そのわずかな枚数どれもが絶妙な色のバランスで和の魅力満載。

この展覧会では雪佳の絵画、図案、陶器など様々な分野で活躍した様子がよく分かりました。

本展は
前期:9月22日~11月4日(日)
後期:11月6日~12月16日(日)
作品の展示替えがかなりあります。
作品リストは美術館HPには見当たりませんでしたが、会場には用意されていました。

永徳展と共にお時間あれば、お楽しみ下さい。

Great Ukiyoe Masters ミネアポリス美術館秘蔵コレクションより(前期)  松濤美術館

やっと、この記事をアップする時間が取れました。
院政期の絵画展に続く今年一推しの展覧会です。
この内容で300円は破格!

松濤美術館は白井晟一設計の美術館としてつとに有名で、今回やっと訪れることができました。

さて、肝心のミネアポリス美術館秘蔵浮世絵コレクション。
ブロガーの皆様のご報告通り素晴らしい内容で、「浮世絵とはこんなにも美しいものだったのか」と初めてその素晴らしさに気付かせてくれました。

気に入った作品は枚挙に暇がありませんが、絵師を挙げれば歌麿、春信は特に新鮮でした。
歌麿は美人画浮世絵として過去何点か作品を目にしていたのに、これまで印象が薄く、本展で見た「台所」(下図)や「とかげ」の動植版画を見た時ぐぐ~っと惹き付けられ、その非凡ぶりを痛感しました。
台所



展覧会は2階から地下の展示室へ移る流れとなっています。
2階展示室では鈴木春信の「水売り」の前で固まりました。
水売り

何と言う美しい色。
こんなにきれいなピンク色を見たことはあっただろうかと。。。
解説を読むとこのピンク色は紅花で出したとか(記憶がおぼろげ)。
天然染料使用で、この2007年までよくぞこの色を保てたものだと、その保存状態の良さには感服です。

水売りを始め紹介されていた浮世絵は「絵暦」として作成されたもので、現在で言う所のカレンダー。
こんな素敵なカレンダーが当時作成されていたのなら、華やかなことこの上ありません。私も欲しい!

他に2階では写楽の作品を初めて見ました。
これがあの有名な写楽の浮世絵・・・独特の作風です。

地階では北斎、広重と有名どころの名作しかも大判や珍しい図版があったりで、これまた楽しめます。
全ての浮世絵に言えるのですが、どれもコンディションが素晴らしいので、今まで自分が見てきたものは一体何だったのか、同じ作品とは思えない美しさでした。

いづつや様のブログにて「浮世絵の魅力は鮮やかな色彩」というお言葉をいただきましたが、まさしくその通り。

歌麿、春信以外の作品で気に入ったのは、国芳の「義勇八犬伝 犬坂毛野」。
八犬伝

右上の2匹のわんこが八犬伝のマークなんでしょうか?
現代でも十分通用する愛らしいキャラ。
そのわんこと対照的な武者の美しさ。
艶っぽささえ感じるほど妖しげで、でもカッコいい!


1週間を経過してもなお、この浮世絵達の像が頭から離れません。
後期も必ず行きます。


なお、下記日程でNHKハイビジョンで「天才画家の肖像」と題した歌麿や国芳永徳のスペシャル番組が放映されるようです。

11月5日(月) 永遠の風神雷神図 ~俵屋宗達~

11月6日(火) 美人画・香りたつ色気の秘密 ~喜多川歌麿~
2007年春、世界最高の浮世絵コレクションが高精細デジタル画像で公開された。ボストン美術館で展示されずに封印されてきた「スポルディング・コレクション」である。なかには歌麿の浮世絵が400枚、驚くほど鮮やかな姿で残されていた。
圧倒的な人気を誇る歌麿の美人画は、どのようにして生まれたのか? 400枚の分析から、歌麿の繊細な色使いや巧みな透かしの技術が初めて明らかになった。女性の色香を最大限に表現するため、柔らかなポーズやしぐさをしなやかな曲線で描いていたことも分かった。
さらに、最新の調査から、人気を決定づけた美女の上半身クローズアップ「大首絵」のシリーズは、松平定信の「寛政の改革」で出された、浮世絵に対する禁令をかいくぐるために発明されたことも浮かび上がった。歌麿には、作品を発表していない空白の1年がある。このとき、定信の目を逃れた歌麿は栃木にいた。今回の取材で見つかった1枚の肉筆画。謎の絵は、大首絵誕生の鍵を握るものなのか?
番組では、スポルディング・コレクションの最高品質の歌麿作品や栃木で発見された絵を手がかりに、歌麿が生涯追い求めた女性美の秘密を紐解きながら、希代の絵師の実像に迫る。


11月7日(水)江戸っ子浮世絵師、参上 ~歌川国芳~
宵越しの金は持たず、祭りと火事が何より好きで、地獄模様のドテラをはおるチャキチャキの江戸っ子絵師、それが幕末に活躍した歌川国芳(1797‐1861)である。
国芳は、水滸伝の英雄たちを描いた“武者絵”で一躍名を上げると、大判錦絵3枚を連ねたワイドスクリーンに胸のすくようなスペクタクル活劇を展開し、浮世絵に革命をもたらした。その一方、根っからのユーモリストで、動物たちをディズニー風に擬人化したり、絵文字や影絵遊びを取り入れるなど、アイデア満載の“戯画”で、不動の人気絵師となった。そして、浮世絵を弾圧した天保の改革の時代、国芳は意地と頓智で幕府の禁令をかいくぐり、落書き風“役者絵”や将軍や老中たちを揶揄した“風刺画”を発表、大向こうの拍手喝采を浴びた。
国芳はまた無類の猫好きだった。仕事場には数匹の猫が我が物顔にたむろし、出かけるときはいつも2~3匹の猫を懐に入れていた。もちろん猫を描いた絵は数限りなく、別名「猫の絵師」と言われるほどである。
番組では、「吾輩は猫である」のように、愛猫の目を通して、国芳の人生やその江戸っ子絵師ぶりをユーモアたっぷりに紹介するとともに、国芳の多彩な絵の魅力をドキュメントする。


11月8日(木) 美で乱世を制した絵師 ~狩野永徳~

いずれも放送は夜8時~9時50分まで。お見逃しなく。



特別展「狩野永徳」 京都国立博物館

「京都限定30日間の奇跡」と華々しいコピーで宣伝されている「狩野永徳」展です。
これだけの大作を一度に見られる機会はもうないことでしょう。

展覧会は
・墨を極める(1号室、2号室、4号室、5号室)
・永徳と扇面図(3号室)
・為政者たちのはざまで(6号室)
・時代の息づかい-風俗画-(中央室)
・桃山の華ー金碧障屏画-(7~9号室)
・壮大なる金碧大画(10号室)
計6部より構成されています。
部屋番号は入口より右手から順に1号室→2号室・・・5号室の後、中央室を挟み6号室~10号室→出口です。


丹念に見て行きましたが、やはり印象に残ったのは前評判通りの作品でした。
順を追って振り返ってみようと思います。

・「花鳥図襖」京都・聚光院 狩野永徳筆 (1号室)
4


永徳らしい伸びやかな梅樹が特徴。生き物のような激しさと言われる筆使いはこの作品でも垣間見ることができますが、後年の作品と比較すると若干大人しめというか上品さも感じます。

・「梔子に小禽図」 狩野永徳筆
虫を捕らえようとする鳥が身構えた瞬間を梔子と共に描いた作品。
大作ぞろいの本展でしたが、この一幅は永徳の違った一面を味わえます。個人的に好きな作品。

・「柘榴図扇面」 狩野永徳筆 (3号室)
永徳は扇面制作にあまり関与しなかったということですが、数少ない作品のうち永徳真筆と謳われるものを見ることができました。
そのうち一番気に入ったのが「柘榴図」。
梔子といい柘榴といい何を書かせても上手い人です。

・「洛中洛外図屏風」米沢市上杉博物館 狩野永徳筆 (中央室)
2左

2右


前評判の高い作品の一つですが、金箔の美しさにはただただ息を飲むばかり。きらきらぴかぴか、献上品にふさわしい屏風です。
画面が大きい上に、細かい内容なので観客はここで塊となり動きません。
混雑必至の山場です。オペラグラス等持参された方が良いかと。
コーナーの隅で、屏風のハイビジョン映像が流されています。
永徳は23歳でこの屏風を描いたそうですが、大胆な作品と対照的な緻密で繊細な描写、天才ぶりを発揮です。
京都の風景と街中の人々の生活ぶりがそこかしこに描かれ、いつまで見ていても飽きません。

・「洛外名所遊楽図屏風」 狩野永徳筆 (中央室)
新発見の本作は、前述の洛中洛外図屏風に比べると小ぶりで金ぴかぶりも地味ですが、永徳の緻密な筆はここでも冴えています。

・「織田信長像」京都・大覚寺蔵 狩野永徳筆 (6号室)
6


神経質そうな性格が画面から感じられます。
保存状態がよく、色が美しい肖像画。隣に並べてあるもう一つの信長像より、この大覚寺蔵の方がきりっとした信長です。


・「唐獅子図屏風」宮内庁三の丸尚三館蔵 (2作とも10号室)
1


・「檜図屏風」 東京国立博物館蔵
3


やはり、最後はこの2点に尽きるかと。
「唐獅子図屏風」は大きいの何の。
サイズ感は図録や画像ではもっとも伝わりにくいものですが、実物を前に立った時、思わずひれ伏したくなるような迫力です。
シンプルな構成が却って迫力を増しているのかもしれません。
本展でのMyBestはこの作品。

「檜図屏風」はご存知永徳最晩年の名作。
檜の湾曲ぶりは、狂おしいほどで永徳は精神的にも肉体的にも疲労していたのでしょうか。
どこか破れかぶれのような感じを受け、見ていて悲しくなりました。

最後の展示室でこの2品含め、更に里帰り作品としてホノルル美術館蔵「老松桜図屏風」等の大作計5品があります。
洛中洛外図で力を使いすぎず、余力を残して観覧することをおすすめします。


京博はお茶や食事をする場所が館内になく、今回特にそれが辛かったです。宣伝に力を注ぐのも良いのですが、観客が利用しやすい優しい施設を目指していただければと思う次第。


*11月18日(日)まで開催中。
場内が狭いため、土日は入場制限ありそうです。

京都経由金沢・富山美術館巡り

金曜日にお休みをいただき、1泊2日で京都→金沢→富山へ行って参りました。

先週の東京レポートも書き終えていないうちに、インプットを重ねています。とりあえず寸評と共に道程をまとめました。

(1日目)10/19(金)
京都着午前10時過ぎ。

1.京都国立博物館にて16日より開催中の「狩野永徳」展へ直行。

当日は雨足が強く生憎のお天気だったためか、入口入ってすぐに展示されている国宝の水墨障壁画2点のあたりと同じく国宝「洛中洛外図屏風」はかなりの人だかりでした。
京博は東博に比べ展示室が狭目なので、混雑しやすいように思います。
展示室を進んで行くにつれ、人はまばらになり人の頭越しに作品を見るようなことはありませんでした。
「唐獅子図屏風」や「檜図屏風」がある最後の展示室など空き空きで、
皆さん洛中洛外図屏風を見てさ~っと帰られてしまうのか、ちょうど12時過ぎたあたりから人が減り始めたように思います。

土日はやはり混雑必至かと思います。ねらい目は12時頃入館かな。

肝心の作品ですが「洛中洛外図屏風」と「唐獅子図屏風」はド迫力でした。やはり本物の力は偉大です。
「檜図屏風」は見ていて悲しくなります。

この3点だけでも行った甲斐はありますが、私は奈良博の「院政期の絵画」展の方が面白かったです(狩野派と院政期絵画を比較することはどうかと思いますが・・・)。


2.京都国立近美の常設展。ランチは近美のカフェにて。
常設より1階に3点だけ展示されていた特別展作家の「カルロ・ザウリ」の陶彫にひかれました。常設にも1点彼の作品を見ることができましたが、特別展を見たかったです。時間がなく諦めたのが今回の心残り。

3.細見美術館で開催中の「琳派展X 神坂雪佳 京琳派ルネサンス」。
これは良かったです。
神坂雪佳の作品をやっとまとめて見ることができました。

4.京都市立美術館「京都と近代日本画」。
ぐるっとパスのスタンプ欲しさに入館。駆け足で流して見ましたが、印象に残ったのは上村松園2点と中村大三郎「ピアノ」など。
良質で大作が多く、駆け足で見た割には充実感がありました。無理にでも入って良かったと思います。

ここで、時間を読み誤り予定していた金沢行きの特急に間に合わないことが判明し、次の列車まで高島屋で開催中の「北斎展」へ。
たまたま同じ階で開催していた「大北海道物産展」の影響か平日にもかかわらず場内は混雑。
先日のミネアポリス蔵の浮世絵と同じ図柄の作品が何点もありましたが、同じものとは思えないと言いますかこれが今まで私の見てきた浮世絵で、ミネアポリスの浮世絵がいかに素晴らしいかを改めて痛感しました。松濤に戻りたくなります。
ただし、高島屋では北斎の肉筆画や北斎漫画も展示されているので、それなりに楽しめます。

サンダーバードに乗って一路金沢へ。
宿泊は金沢白鳥路ホテル。このホテル一推しです。
ホテルなのに弱アルカリ性の炭酸水素天然温泉大浴場があり、浴場行き専用エレベーターがあるため、お部屋から大浴場までバスローブや部屋着+スリッパOK。


(2日目)10/20(土)

1.金沢21世紀美術館「パッション・コンプレックス オルブライト・ノックス美術館コレクションより」、「コレクション展」など。

オルブライト・ノックス美術館コレクションより同館所蔵フィルム作品
「悔恨のミュージック」(ローリー・シモンズ作)が最高。
44分もの長丁場を飽きさせない素晴らしい内容です。

コレクション展では大好きな木村太陽の「牛乳パック」と森村泰昌の新作が楽しめました。


2.富山県立近代美術館常設展。
この美術館初めて行きましたが、常設展の充実度は群を抜いてます。
特に瀧口修三のコレクションルームはもっと時間をかけて見たかったです。
3階にはピカソの作品をはじめ、主要な20世紀以後の美術の流れが分かるような展示構成。
ここで思いがけずアンリ・ミショーの水彩画と巡り合いました。


3.「東京富士美術館所蔵 珠玉の日本美術名宝展」富山県水墨画美術館。

鈴木其一「風神雷神図襖」と曽我蕭白「鶴図屏風」、歌川豊国の浮世絵等、日本美術で未見の作品ばかりでした。
上記特別展だけでなく常設の水墨画で菱田春草や前田青邨らで好みの作品を堪能。


再び富山駅へ戻り入善へ。

4.「内藤 礼 母型」 入善町 下山芸術の森 発電所美術館

旅の最後を飾るにふさわしい内容。
シンプルであるが故に、いろいろ考えさせられました。
ここでは観客が途中私1人きりになり。
室内は靴を脱いで観覧する必要があったため足が冷え込んでくるのに耐えつつ小1時間過ごしました。
内藤礼も「場」を作る名手です。


いつにも増して強行なスケジュールでしたが、楽しい旅となりました。
旅先で出会った皆様に感謝いたします。


「鈴木理策 熊野 雪 桜」 東京都写真美術館

諦めようとしたけれど諦めきれず結局、東京都写真美術館「鈴木理策 熊野 雪 桜」展に足を運びました。

のっけの夕日と海の写真にまずやられました。
ここで、佇むこと数分。

目を移し、歩みを進めた時、間違いなく「気」を感じました。
熊野と言えば霊場、世界遺産、神仏習合と様々なキーワードが浮かんできますが、あの場所(展示空間)に立った時、自分が熊野を訪れたような錯覚を覚えたのです。

写真は「時」や「場面」の一部分しか表現することはできません。
しかし、連作となるとその一部がつながりとなり、流れとなり大きな景色を作り出します。
鈴木理策は、私達にそれを伝えたかったのではないでしょうか。

作品「熊野」の炎から雪が舞い落ちる写真へと導かれ、観客は白の空間に導かれます。
黒から白へ誰もが、言葉を失っている様子が分かりました。

喩えて言うなら、冬の早朝、玄関口を出た時、窓を開けた時、前の晩に降り積もった雪景色を見て驚くような・・・あの瞬間です。

白い空間に立った時、私は熊野から雪一面の世界にワープしていました。
写真一点一点も素晴らしいのですが、やはり展示空間と見せ方両者が噛みあって最高の空間を作り上げています。

たまたま本日目にした雑誌「和楽11月号」にかの山下裕二教授による同展記事が掲載されており、その中で鈴木自身の言葉が取り上げられていました。


「私の写真は一つ一つ見るのではなく、シリーズとして見て初めて意味をなす・・・」
注:メモを取らなかったので、正確な引用ではありません。

本展を語るのにもっともふさわしい気がします。

*10月21日まで開催中。
作品数は少ないので時間はそんなに取られません。
ぜひ、時間を作って足を運んでいただきたいと思います。

東京駆け足 日帰り旅

おとといの金曜日夕方までは、翌々日の日曜に東京へ行くことなど考えていませんでした。
美術系ブロガーの皆様の熱い記事を読むにつけ、やはりこれは我慢せず行った方が、いや行かねばと激情に駆られ東京へ行って参りました。

7:47 名古屋発のぞみ82号にて新横浜→八王子へ。

向かった先は村内美術館。
気持ちがバルビゾンだったのです(どんな気持ちでしょう???)。

家具店6階にあるレストランで昼食。
八王子に戻り新宿→渋谷を経て松濤美術館で開催中の「ミネアポリス美術館蔵浮世絵コレクション」を鑑賞。

これが予想外に珠玉の展覧会で思いがけず時間を取られました。

最後に向かったのはお目当ての東京都写真美術館で開催中の「鈴木理策 熊野 雪 桜」。
この展覧会が開催されていなかったら、今回の東京行きはありませんでした。巡回もなく、会期は来週の日曜までだったので今朝のぞみに飛び乗った訳です。

感想はボツボツアップしようと思いますが、3つの美術館の中でもっとも印象深かったのは、バルビゾンでも理策でもなくミネアポリス美術館蔵の浮世絵だったのは自分でも意外でした。

もちろん他の2つも素晴らしかったのですが、松濤の浮世絵は衝撃的で帰路の車内でも頭に浮かぶのは歌麿や春信の浮世絵ばかり。
後期に総展示替えされるそうなので、来月の上京もこれで決定的です。

松濤で買いそびれた図録は、来月やっぱり買おうっと。
どうか売り切れませんように。

「レンブラント版画展」 名古屋ボストン美術館

前回名古屋ボストン美術館を訪れたのはいつだったでしょうか。
同美術館がある金山駅周辺の様子が、大きく変わっているのに驚きました。

さて「レンブラント版画展」-呼び交わす光と闇-を見て来ました。
17世紀オランダの画家レンブラントは、光と闇を巧みに描いた油彩画で誰しも一度は名前を聞いたことのある巨匠です。
一方油彩画とは別に、約300点に上る銅版画を作成しており、本展ではその3分の1にあたる版画117点と銅版(原版)1点の他、彼が制作にあたり着想を得たとされるデューラーらの作品13点の計131点により構成されています。

黒と白のモノクロ世界でしたが、これが予想外に素晴らしい作品ばかりで最後まで飽きずに見ることができました。
過去私が名古屋ボストン美術館で見た中で一番良かったと思います。

今回展示されていた版画作品は①肖像画、②宗教画、③風景画に大別されます。
私が特に好きだったのは肖像画全般と1点の風景画そしてただ一つ展示されていた静物画です。


①肖像画
「石のてすりに寄りかかる自画像」 1639年
自画像

レンブラントは数多くの自画像を残しています。
この貴族風に描かれた作品で惹かれるのは、その瞳。
版画とは思えない瞳。瞳孔や虹彩まで見えます。
一つ一つの線は、どれも自由で一切の無駄がありません。

彼の肖像画作品では皺の一本一本、それも顔だけでなく手の皺までも丁寧に表現しています。
先に目黒美術館で開催された「線の迷宮」にあった木下晋の鉛筆作品を思い出しました。

②宗教画
「説教をするキリスト(百フルデン版画)」 1649年頃
レンブラントエッチングの中でも最高傑作と言われている作品。
作品に登場している人物の表情一つ一つ、そして本展のテーマである「光と闇」が絶妙です。

フルデン


レンブラントは、一旦完成させて刷った銅版にしばしば手を加え、別の図に作り変えました。
「この人を見よ(エッケ・ホモ)」が2点並べて展示されているのも見もの。
この人

人2



上図では前景に群衆が描かれていますが、その後改変された下図では群集が削り落とされ、代わりに真っ暗な穴が二つ現れています。群衆のざわめきが感じられる上図に対し、下図はキリストの孤独感が強調されています。レンブラントはまるで舞台演出家のように、わずか一部分を変えるだけで作品全体の意味を変化させています。(美術館HPより)

③風景画
本展でのMyBest「三本の木」1643年。

木


オランダの田園風景をバックに手前には沼地で釣りをする人、農作業帰りの人、丘の上にはわずか4ミリだそうですが画家本人と思われる人物を見ることができます。
解説では上記の人物群に加え「茂みの中に恋人がいる」と書かれていましたが、これがなかなか見つからない。
多分5分くらいじ~っと見つめて探していると、漸く2人を発見!
だまし絵とは異なりますが「ウォーリー君を探せ」(古い?)的な楽しみもありました。

唯一の静物画は「貝殻」1650年。
これがまたリアルで興味をそそります。


レンブラントは版画原版を作成することだけでなく、台紙やインク、刷る技術にもとことんこだわり研鑽を重ねました。
後期の作品では和紙を使用した版画作品も出ています。

彼は晩年破産をし、版画作品に欠かせないプレス機を手放すまで制作を続けました。

この展覧会で、レンブラントの新しい魅力を見せ付けられその作品の虜となってしまいました。油彩より版画の方が好きかも。

*12月9日(日)まで開催中。

雑誌で見る美術館の秋

先日Takさんのブログにて雑誌「一個人」にて「世界の名画に出会える美本の美術館BEST100」が特集されていることを知り、早速買ってみました。
個人


その二日後、定期購読している「日経おとなのOFF」最新号が手許に届き、そこでも「日本で楽しめる世界の名画100」が特集されていてびっくり。
日経


思い切り企画だぶってます。

昨今美術館ブームなんでしょうか。
日経おとなのOFFでは半年に1回程度に割合で美術館関係の特集が組まれますが、「一個人」までもついに・・・「ブルータスよお前もか」のノリですね。

両誌の内容を比較すると取り上げられている美術館はほぼ重複しているものの切り口は異なっているため、それぞれ興味深く読むことができました。
両誌とも見るべき価値はあったということです(ほっ)。
特に一個人では「空間、建築美を愉しむ美術館」等テーマ別に美術館が分類され紹介されており、写真を見ているだけで行った気分を味わっています。


先月発売された日経おとなのOFF10月号では「京都最高の美」が特集として組まれており、話題の「狩野永徳」展もとりあげられ、京都訪問の事前準備には国宝特集のBrutus共々予習にはもってこいかと。
京都


さて、雑誌を読んでみて私が今一番行ってみたい美術館は東京八王子郊外にある村内美術館。
ここにあるバルビゾン派の絵を思う存分堪能してみたいと思いますが、八王子郊外にある村内はかなりハードル高し。
対面できるのはいつのことやら。

いずれにせよ、雑誌を読み耽りつつ行きたい展覧会のピックアップをするのは楽しいものですね。

「美人画の三巨匠 清方・深水・紫明」展 松坂屋美術館

ここ最近、松坂屋美術館へ行く機会が増えています。
展示替えが頻繁で、ほぼ月1回新しい企画展を開催している上に、私自身の鑑賞対象の幅が広がったということも大きい。

というわけで、今回は「美人画三巨匠 清方・深水・紫明」展です。
以前だったら、きっと行ってない分野の美人画。

今回の収穫は以下4点に尽きます。紫明作品にはこれというものがありませんでした。


1.「刺青の女」 鏑木清方

刺青


ひょえ~、何と言う艶っぽさ、妖艶さ。
同性の私が見ても思わず着物を脱がせたくなってしまう衝動に駆られます。危ない危ない。
解説によると、この時代に姉御と呼ばれる女性の1人をモデルにしたとか。
確かに姉御と言われればそんな感じも受けますが、気風の良さよりやはり色香を強く感じました。

2.「妖魚」 鏑木清方

妖魚


日本画による人魚です。
こんな人魚がいたらびっくりするより、ちょっと怖い。
惚れられたら最後、しぶと~く思い続けられそうな。。。
妖しさ100%の人魚でした。
しかも、屏風絵で大きいため、迫力満点。

3.「指」 伊東深水

爪


今回私が一番気に入ったのはこの作品かもしれません。
黒をメインにしていながら、決して暗い感じはせず、却ってその黒が女性の白い肌を引き立てています。
指を見る女性のたおやかさと言ったら・・・もうため息ものです。
女性が腰掛けている縁台も美しく描かれており、この絵はかなり長時間眺めていました。

4.「浄晨」 伊東深水

浄


この絵を見た時、どういうわけか上野の森美術館「アートで候」展で見た会田誠の「滝の絵」を思い出しました。
通常の美人画とは異なる視点での描き方と深水はあまり裸婦は描かなかったようで新鮮な印象を受けます。


今回の展覧会で特に清方作品は「福富太郎」コレクションから出展されているものが多く見受けられました。
福富太郎さんとは?お名前や以前TV出演されていたような記憶がうっすらとありますが、一体何者であるか。
無知なため、早速調べてみたら「昭和のキャバレー王」でいらっしゃるとか。
キャバレーと美人画結びつくようなつかないような。

とにかく目の保養になりました。

*10月14日まで開催中。

「パート・ド・ベールガラスの魅力 内田邦太郎展」 為三郎記念館

ぎりぎりの駆け込みで為三郎記念館の夜間拝観に行って来ました。
当日は金曜夜、ダッシュで退社し記念館の入口をくぐったのは7時頃。
辺りは、夕暮れを過ぎ夜の気配が立ち込めていました。

為三郎記念館は今回初めて訪れたのですが、中に入って驚きました。
外からでは想像できないほどの広い空間、大木、せせらぎが耳に心地良いお庭、見事なものです。

記念館入口左手には小さなミュージアムショップ。実際に展示されている作家さんの作品も購入することができます(でも、非常に高価でした)。

チケットを見せて、靴を脱ぎ日本家屋に入っていきます。
ご興味のある方は以下HPにて間取り図を見ることができます。
http://www.furukawa-museum.or.jp/memorial/map/index.html

美術館というかしこまった空間でなく、日本家屋に置かれたガラス作品はまた違った魅力を感じます。

美術館の説明によると、
パート・ド・ベールとは、予め制作した型にガラス粉を流し込み、そのまま窯の中で焼き上げ、冷却後、型を壊し磨き、形作るガラス成型法です。19世紀末、フランス・パリで流行したこの成型法は、深みのある色彩と重厚感溢れる品質、そして豊かな造形が特徴とされています。

ほたる

赤



正直申しまして、作品はあまり私の好みではなかったのですが、奥のお部屋でお庭を見ながら、内田氏作抹茶茶碗の中から自分の好きな器を選んでお抹茶と和菓子がいただける(500円)のは魅力的でした。

自分とは遠い世界にあった作品が、手にとって実際に使用できる器として目の前にあると、ぐっと親近感がわいてきます。
しかも、私は気に入っていた瑠璃色主体のお茶碗を選ぶことができたので尚更嬉しかったです。

広いお庭の明かりが少し乏しかったのが残念ですが、お抹茶をいただきほっこり気分。

その後館内を探検しましたが、思った以上に広かったです。

お庭に出ると、館内からはよく分からなかった木々の大きさや、小川まで流れていることに驚きました。
外にも内田氏のガラス作品にろうそくが灯されてほのかな明かりを演出していましたが、風がやや強かったため、蝋燭が消えて真っ暗になっているものの方が多かったのが残念です。
薄暗い夜も良いかもしれませんが、もう少し明るい夕暮れ時がベストタイムのように思います。

かの枕草子でも「秋は夕暮れ・・・」と申します。

為三郎記念館では次回インテリアデザイナー内田繁氏の展覧会が予定されています。
私にはこちらの方が好みに合うかもしれません。

*内田邦太郎展は10月8日(月・祝)まで開催中。

愛知県美術館 常設展

前回アップした「サイクルとリサイクル展」に合わせ、愛知県美の常設展も展示替えが行われていました。
県美には何度も行っているのに、初めて目にした作品もあり今回の常設はなかなか面白いものがありました。


1.「17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像」 グスタフ・クリムト
フレーゲ


県美のクリムトと言えば「人生は戦いなり(黄金の騎士)」(下)が有名でこちらは今回も含め毎回展示されているようですが、「エミーリエ・フレーゲの肖像」は初めて見ました。

騎士


キャプションを見るまで誰の作品か分からなかったです。
透明感のある美しい少女にしばし見とれていました。その後クリムト作と知って「えぇ~!」とちょっと驚きです。


2.「忘我」 エルンスト・バルラハ

今回の常設では特集として「ドイツ表現主義」が取り上げられていました。中でも、常設入口に置かれたバルラハ彫刻2点に出会えたのは嬉しかったです。
昨年東京芸大美術館での「バルラハ展」で初めてその存在と作品に触れましたが、県美もバルラハの彫刻を所有していたとは知りませんでした。
嬉しい再会です☆


3.「恋人」(『バウハウス・マイスター版画作品集』より)

クレーの作品は「女の館」がよく展示されているのですが、今回は女の館を含め3点が展示されていました。
そのうちの1点が「恋人」です。版画作品ですが、これまた未見でした。


4.「スザンナの部屋」 島田章三

島田


日本人画家の作品では戦後の具象絵画に焦点が当てられ、中でも島田章三「スザンナの部屋」は良かったです。
先日行ったメナード美術館でも島田作品が目を引いたのですが、島田章三は私の好みの画家かも。


5.「つばさを拡げる鳥がみえた」 舟越 桂

展示室6では舟越彫刻が2点だけ置かれていました。一つは常設でおなじみの「肩で眠る月」(1996年)、そしてもう一つが「つばさ・・・」(1985年)。
10年の時を経過して、同じ木彫の人物像でも大きく形態が異なっていることが分かります。
私はどちらかと言えば、最近の作品より過去の具象に近い作風の方が好きです。

*11月4日まで愛知県美術館常設展にて上記作品をご覧になることができます。
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