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2008年1月展覧会鑑賞記録(総括)

元旦の計で掲げた、展覧会ログブックが既に挫折しているため、ブログで転用することにしました。というわけで、今月出かけた展覧会を振り返ってみようと思います。

①「ボストン美術館浮世絵名品展」 名古屋ボストン美術館 1/2
②「ガンダーラ美術とバーミヤン遺跡」展 静岡県立美術館 1/3
③「ロートレック」展 愛知県美術館 1/6
④「金刀比羅宮書院の美」展 金刀比羅宮 高橋由一館、宝物館含む 1/11 初
⑤「鏑木清方の芸術」展 美術館「えき」KYOTO  1/11
⑥「おん祭と春日信仰の美術」展 奈良国立博物館 1/12
⑦「宋元と高麗 東洋古典美の誕生」展 大和文華館 1/12
⑧「絵でつづる日本~ゆかしい情景~」展 古川美術館 1/14
⑨「川村美術館所蔵 巨匠と出会う名画」展 松坂屋美術館 1/14
⑩「酔うて候-河鍋暁斎と幕末明治の書画会」展 成田山書道美術館 1/19 初
⑪「天才絵師河鍋暁斎」展 成田山霊宝館 1/19 初
⑫「版画とは何か 日本の版画1940年代~1950年代」展 千葉市美術館 1/19 初
⑬「芳年・芳幾の錦絵新聞」展 千葉市美術館 1/19
⑭「朝鮮通信使の道」 建築博物館(建築会館内) 1/20 初 
⑭「吉祥のかたち」泉屋博古館分館  1/20 初
⑮「春のめざめ」展 山種美術館 1/20 初
⑯「宮廷のみやび-近衛家1000年の名宝」展 東京国立博物館 1/21
⑰「北斎漫画」含む常設展 江戸東京博物館 1/21 初
⑱「神像」 熱田神宮宝物館 1/27 初
⑲「トプカプ宮殿の至宝」展 名古屋市博物館 1/27 初

以上19展、初訪美術館・博物館は10館でした。

今月は、何と言っても金刀比羅宮の「書院の美」展に尽きます。感動いっぱいでした。
渋いけれど非常に良かったのは、千葉市美の「日本の版画」展。この内容、テーマ、作品量の展示は今後難しいかもしれません。
成田山詣でも展覧会と成田山を取り巻く街の雰囲気、重要文化財となっている寺社建築など見所が多く印象的でした。
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琵琶湖文化館を守りたい!

拝見させていただいているブログ「見もの読みもの日記」にて、滋賀県の琵琶湖文化館が本年3月31日をもって休館するという方針が先日発表されたとというニュースを知った。正式決議は2月の県議会になるそうだが、これには驚いた。

実のところ、私は琵琶湖文化館には、まだ一度も訪れたことがない。そんな分際で文化館の存続を求めるのはおこがましいかもしれない。けれど、滋賀県内でもっとも訪れてみたいと思っていた博物館であったことは間違いない。

滋賀県は、奈良・京都に次ぐ仏教美術の宝庫である。にも関わらず、休館後の所蔵品の行き先なども決まっておらず、寄託先寺社等に返還されるなど散逸の危機が生じている。
地方美術館、博物館の予算はどこも厳しいと聞いているが、本当に存続の道はないのだろうか?

私個人ができることはたかが知れているかもしれない。それでも何かせずにはいられない、このもどかしさ。
まずは、行ってみることから始めよう。それから知事への嘆願書を書くなり次に続く行動に移せば良い。

現在、琵琶湖文化館では、総力を結集して収蔵品による「近江の美術 花鳥風月」という企画展を開催中。この記事に関心を持たれた方は、是非足をお運びいただければと思う次第です。

琵琶湖文化館HP
http://www2.ocn.ne.jp/~biwa-bun/

以下の方のブログでも本件に関する記事がアップされています。是非ご一読ください。
http://blog.livedoor.jp/yamaharasakura/archives/2008-01.html#20080128
http://kanbutuzanmai.blog66.fc2.com/blog-entry-11.html
http://metacequoi.exblog.jp/d2008-01-20 *1月29日追加

「日本の版画 1941-1950 日本の版画とは何か」 千葉市美術館

同時開催の「芳年・芳幾の錦絵新聞」展を目当てに出かけたのですが、こちらの展示の方が感動しました。「日本の版画」シリーズ第5弾最終回だそうですが、先にあった1~4回を見ていないのが悔やまれます。それほど、充実した内容であったと思います。

最終回は1940年代の日本版画を概観し、版画にとってこの時代がいかなるものであったかを243点の展示により検証しています。

印象に残った作品はほぼ全てと言いたい所ですが、特に良かったものは以下。


第Ⅰ章 戦中の創作版画
・「萩原朔太郎像」 恩地孝四郎 1943年
のっけから、この木版画が飾られているのですが、強烈なインパクト。ぐっときます。顔に刻まれた皺は深い思索の表出か?

・「孤独な夕餉」「眠る女」 ワルワーラ・ブブノワ 1941年、1942年 石版
名前からも推測されるように、ブブノワはロシア人で、戦後旧ソ連に帰国し晩年はレニングラードで終えた。油彩作品の傍ら、版画も手がけたようだが上記2作品とも国内作家とは異なる雰囲気がある。特に眠る女は戦中の作とは思えない。

・「花芭蕉」 前田藤四郎 1940年 リノカット
着物の紋様のような作品。バックの藍色に花が映える。

・「石垣苺」 山口源 1942年 木版
美味しそうな石垣苺、以前石垣イチゴ狩りに行ったことを思い出す。懐かしい感じ。山口源の作品は色が美しい。

・前川千帆-1943年3月 川西英-1943年7月による日本版画協会カレンダー
前川千帆のやさしい作風が気に入った。川西英は赤・青・黄・黒 原色使いが上手い。

第Ⅱ章 奉公する版画
・「古式三段構之図」 奥山儀八郎 木版 1941年
・「吉田松陰先生之像」 同上 1943年
第Ⅱ章では戦時色の濃い作品群が展示されている。Ⅰ章で石垣苺など日本の風景を描いた山口源、川西英も戦争にまつわるモチーフを採り上げていたのが印象的。
奥山の「吉田松陰先生之像」はどこか似顔絵チックで太い眉と厳しい目等特徴をよくとらえていると思う。

第Ⅲ章 「戦中の版画本」
最近とみに、本の装丁画に興味を持ち始めた。本展では戦中の版画本という稀少なものを多く目にすることができた。ここでは川上澄生の作品が印象深い。

第Ⅳ章 「標本たちの箱庭 -加藤太郎と杉原正巳
本展チラシに大きく掲載されているのが加藤太郎の木版画。私の好みはシャープで写実的に草花を描いた杉原作品の方だった。

第Ⅴ章 「焦土より-進駐軍と日本の版画」
やはり、恩地孝四郎、奥山儀八郎の木版作品が良い。

第Ⅵ章 「戦後-抽象と具象のあいだに」
・「版画集 苫小牧」 川上澄生 1948年 木版
気に入った作品はリストに印を付けるのが習慣になっている。何ということもない風景版画であったが、版画集としてまとめて見ると味わい深い。王子製紙の依頼で作成した限定版画集である。

第Ⅶ章 「世界という舞台へ」
いよいよ世界に羽ばたく日本版画の復活である。
山口源、恩地らの戦中には描けなかった抽象版画が見事。

・「海辺」 品川工
シュールレアリスムの影響を感じたが、実際はどうなのだろう。

・「Marikoに」 1950年 浜田知明 エッチング
浜田知明といえば、昨年東京芸大で見た自画像展での自画像作品が深く記憶に残っている。同時代を生きた他の卒業生の自画像と比べ、浜田のそれは背筋をしゃんとのばし、きりっとしたまなざしをしていて、一体この人はどんな作品を描いたのだろうと思っていた。
「Markoに」は戦争を何とか生き抜いた浜田の戦後初作。娘を対象とした浜田の心境はいかなるものだったろうか。生への希望が見出せる。

・「初年兵哀歌」 同上 1952年
モノトーンで決して消えることのない戦争の記憶を表現している。見ていると、悲哀、痛切な傷みが伝わってくる。

この展覧会の翌日に放映された新日曜美術館で浜田の版画作品がウフィッツィ美術館に日本人として初めて収蔵されたことを知った。素晴らしい快挙だと思う。

この他、最終章では駒井哲郎、棟方志功、浜口陽三ら名だたる戦後の日本版画家の作品を見ることができる。


以上、だらだらと書いてしまいましたが、作品数が多いのでこれから行かれる方は時間を多めに見積もられた方が良いかも。版画は印刷に適しているのか図録は上出来。特に料紙仕立てになっているのが気に入って買い求めました。ミュージアムショップで宅配もしていただけます。

チラシは地味ですが、おススメの展覧会です。

*3月2日(日)まで開催中。

2008年1月27日(日) 鑑賞記録

1.「神様の息吹 姿をあらわした神々」 熱田神宮宝物館
  
熱田神宮にはいつ行ったか思い出せないくらい、ご無沙汰していた。
今回は神像のチラシが気になって、宝物館に初訪問。
かなり立派な宝物館で驚いた。今回は様々な神社からご神宝をお借りしての展覧会。
・女神坐像 (平等院蔵)
・大将軍神像 (大将軍八神社蔵)
・「伝日本武尊坐像」 (熱田神宮蔵)
・金銀装鳥頸太刀 (熊野速玉大社蔵)
特に国宝の神像をさしおき、私の一番のお気に入りは平等院の女神坐像。お顔が良いし彩色も残っていた。ご霊木から作成されたのか、お顔含め全体が左寄りとなっている。


2.「トプカプ宮殿の至宝」 名古屋市博物館

愛知県に長く住みながら、何と初訪問。灯台もと暗しとはまさにこのこと。
最近県内で見た展覧会の中でもっとも混んでいた。金ぴかはやはり名古屋人好みなのであろうか。人の頭越しに展示品を見る。確かにすごい。
バラの香つきの作品リスト+展示会場内のバラの香は名古屋にもあったが、そのせいか頭痛が。。。

3.為三郎記念館

スルタンの至宝より、数奇屋の方が好ましい。新春のしつらえとなっているお部屋を鑑賞し、庭を愛でつつ、コーヒーと小菓子をいただく。
ほっとくうろげるひと時。寒さをしのぐため、毛氈の下にはホットカーペットが敷いてあるのか、ホカホカだった。

「天才絵師 河鍋暁斎」 成田山霊光館

前回の続き。
同じ成田山新勝寺境内 平和大塔裏手に霊光館はあります。書道美術館からは徒歩5分程度でしょうか。

こちらでも、書道美術館同様に河鍋暁斎記念美術館所蔵作品中心に「天才 河鍋暁斎」と題した展覧会を開催中です。
書道美術館の展示と比較すると、霊光館で展示されていた作品の方は仏画や本格的な水墨画、日本画が多くわずか32点と作品数は少ないものの、大変見応えがありました。
私は、むしろこちらの展示の方が良かったと思います。

以下印象に残った作品。
・「風神雷神図」
暁斎の風神雷神は彼らしさが溢れており、躍動感があります。

・「日課観音図」
晩年、暁斎は信仰心厚くどんなに酔っていても観音図を描くことを日課としていたとのこと。
晩年の彼の心中はいかなるものだったのでしょう。
「百衣観音図」もそうですが、暁斎の描く観音が私は好きです。

・「霊山群仙図」
娘の暁翠との合作。暁翠の作品は、後半に6点ほど並んでいましたが、「百福図」など微笑ましい作品もあり、北斎の娘応為同様、偉大な父の背中を追いつつ絵筆をとった姿が浮かびました。

・「大森彦七鬼女と争うの図」 成田山霊光館蔵
霊光館には、多くの画家が絵馬を奉納しています。暁斎の傑作と言える絵で、相変わらずの着物のひだのゆらめきと紋様の美、力強く踏み出した右足、こぶしを握った左手・・・どこをとっても素晴らしい。左上端に描かれた薄雲のかかった月夜に浮かぶ武者はまさにヒーローです。


別室では、成田山の由来などが紹介されていますが、ここでは国芳が描いた絵馬「火消千組の図」(本物)を見ることがでます。まさか翌日江戸博でこの絵馬の摸品を見ることになったのは予想外のこと。。。
国芳以外に歌川国貞、鳥居派の浮世絵師による歌舞伎の所作を画題にした絵馬が何点か展示されており、こちらも楽しめます。
絵馬堂にこれらの絵馬が実際に納められていた様子はさぞかし壮観であったろうと当時が偲ばれます。

霊光館の入場料は300円。ご参拝の後にちょっと立ち寄れる気楽さです。
なお、書道美術館と併せて入館すると書道ハガキ3枚をプレゼント。期間限定かも?美術館霊宝館いずれも作品リストが準備されており、好印象でした。

*2月11日(日)まで開催中。

「酔うて候―河鍋暁斎と幕末明治の書画会」展 成田山書道美術館

河鍋暁斎の作品をまとめて見たくなり、千葉の成田山まで出かけてきました。地元愛知県にも成田山はあるため、「成田山へ行って来た!」と話をしても周囲の人は皆、愛知県犬山市の犬山成田山(千葉成田山の別院)だと勘違いします。

これは、あくまでも大本山の千葉成田山のお話です。

今回の旅のきっかけとなったのは昨年三井記念美術館で見た暁斎の「観音図」(国宝 雪松図と近世絵画にて1月末まで展示中)でした。
何と面白い衣の表現だろう・・・。
更に、今年の4月には京博で暁斎の特別展が開催されるため、その予習になるかなという考えも少々。

成田山参道は大変な人出で、まるでお祭りのように屋台のお店、お饅頭のお店、酒店、様々なお店が軒を並べ美味しそうな香がしてきます。が、ここはぐっと我慢し、書道美術館へと向かいました。
成田山新勝寺は、広大で書道美術館は一体どこにあるのか歩けど歩けど着きません。大本堂の右手を進むと成田山公園。公園内の池を有する素晴らしいお庭の先に美術館はありました。

今回の展示は2階がメインとなっています。

<概要>*書道美術館HPより抜粋
河鍋暁斎の席画と考えられる作品や合作、彼を取り巻く人びとの作品などを通して、幕末から明治にかけてしばしば催された書画会の様相を垣間見ようとするものです。即興で描いた作は、展覧会への出品を意図した作品や、寺社や貴顕からの注文画などの周到に用意された作品にはない、書画会の熱気を宿していると同時に、暁斎の機知に富んだ豊かな表現を見ることができます。

注目の作品はこれ!

・「新富座妖怪引幕」 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館蔵
国内でも何度か展示されているので、ご覧になった方も多いことと思いますが、私は初見。
縦4m×横17mの横長の引幕を酔いにまかせ4時間で描きあげたそうです。
九世市川団十郎を見立てたろくろ首はじめ、妖怪たちが楽しげな様子。
この作品の前には赤の毛氈が敷かれており、観客は靴を脱いでゆったりじっくり鑑賞することができます。

・「暁斎デザイン蛙付蓮の葉」 河鍋暁斎記念美術館蔵
蛙好きな暁斎が愛用していた作品。蛙は苦手な私もこれなら、恐怖どころか愛らしさを感じます。

・「放屁合戦絵巻」 2巻 河鍋暁斎記念美術館蔵
お得意の戯画。日本発「漫画」のはしりかと思われます。面白い。

冒頭でご紹介した「観音図」とは違う様々な分野<デザイン、画帖、戯画等>で卓越したセンスを見せてくれました。

1階では、書画会に参加した暁斎以外の作家の作品が展示されています。こちらは書道美術館所蔵作品はほとんどで書が中心です。

*2月11日まで開催中です。

次回:霊宝館へとつづく。

「北斎漫画展」含む常設展 江戸東京博物館

前回の上京時に「ぐるっとパス2007」を購入したので、江戸東京博物館の常設展(ぐるっとパスだと常設展無料)に行ってきました。
前回記事でも書いたように、江戸東京博物館どころか両国自体が今回初。まずJR両国駅のホームで力士の方数名を見かけ、駅構内の壁には巨大な力士の肖像画が、更に改札を出たらそこはもう相撲一色で、ちゃんこ屋さんに相撲関連グッズのお店など立ち並び、同じ東京でも全然街の風景が違っていることに驚くばかり。

驚いてばかりもいられないので、江戸東京博物館へ向かいます。左手に両国国技館と思しき建物が見えて来ました。そして、その先に何やら巨大な建造物が。。。まさかあれが噂の。
両国国技館を凌駕するようなその大きさは、ある種異様さを感じましたが、近づくにつれますますその思いは強くなるばかり。
どこから入ればよいのかがまず分からず、左に進む人と、まっすぐ進み動く歩道エスカレーターに向かう人、二つの流れがありました。
そして到着した場所は荒涼としたコンクリート広場。
広場は、ただただ広いばかりで社会主義国家に来たのかと思ってしまうほど、閑散とし寒々冷え冷えとしておりました。係の女性に「この先ロッカーはないので、荷物をここで預けた方が良い」と教えられ、ガードマンの方に連れられ、柱の奥絶対そんな場所じゃ分からない!という裏手にロッカーがちんまりとありました。

先を急ぎましょう。荷物を預け延々と続くエスカレーターにMOA美術館を思い出し、ついに博物館の中へ。いつの間にか6階まで上がっていたのですが、そこには。。。吹き抜けを利用した約9000㎡の巨大空間に、江戸と東京にを再現したようなテーマパークがあったのです。

ひょえ~っ!何なのこれは。。。私が想像していた江戸東京博物館はもっとちんまりしていました。外観を見た時から、その想像が裏切られたのは分かっていましたが、まさかこんなテーマパークだったとは。

日本橋を渡り、早速展示拝見です。
ここでも「朝鮮通信使」に関する展示があり、建築博物館の「朝鮮通信使の道」が多役に立ち、更に先日行った金刀比羅参拝のついて、この前日に行った成田山宝物館で見た国芳の絵馬の複製があったりと、なかなか楽しませてくれます。

5階で、お目当ての「北斎漫画展」は開催されていました。
今回は通常数ページしか紹介されない北斎漫画が多数出展され、しかも貴重な版木や版元に関する資料なども併せて紹介されています。

興味深かったのは「無頼講」と題された頁(8編)。
この中に描かれた褌1つの男性がとっている動きは、どこかヨガのポーズに似ています。
江戸時代に早くもヨガは伝わっていたのか?!と思わせるような動きです。

もう1つ。今回展示されていたか記憶が定かではないのですが、同じ8編の「無頼講」次ページは、象にしがみつく人達が滑稽に描かれています。
北斎漫画については以下HPで全編紹介されていますので、関心のある方は是非そちらをご参照ください。
☆近代デジタルライブラリー

これはほんのごくごく一部ですが、いずれを見ても北斎の描写力、観察力には舌をまきます。
まさに、天才の名に相応しい画家だと今更ながらに感じました。

北斎漫画の版元は名古屋にあった永楽屋。江戸中心に発展した浮世絵ですが、この北斎漫画発祥の地は名古屋だということにちょっと嬉しくなりました。地元びいきというやつです。


閉館間際まで、東京ゾーンを含め様々な展示を見させていただきました。

楽しい時間ではありましたが、これだけのものを建設し維持・管理していくのはさぞや負荷が大きいだろうと思う次第。果たしてこの建物が両国の景観に相応しいものなのかにも疑問を覚えます。
東京現代美術館と言い、江戸東京博物館と言いバブル時代の遺産と言ってしまえばそれまでですが、都市と建築物との調和、環境への影響、コスト意識、地方行政のあり方などを真面目に考えてしまいました。

*北斎漫画展は2月11日まで開催中です。

千葉・東京 1泊2日の旅

金刀比羅での興奮も冷めやらぬまま、千葉・東京へ行って来ました。
まずは旅程のみ。

1月19日(土) <1日目>
6:50発 のぞみにて新横浜へ
一旦改札を出て、JR東日本管内でしか購入できないホリデーパス(2300円)を購入。

9:00 綱島にて所用。

9:30 予定より早く終了したので、上野の東博へ向かう。

10:20頃 東博到着。
おなかが空いたので何か食べたかったが、館内のレストランは11時からしか食事させてくれなかった。空腹のまま我慢して、平常展を拝見。
11時になるやいなやレストランへ向かい、早めのランチ。
再び平常展に戻る。

12:30 JRにて上野から成田山新勝寺へ。
成田山書道美術館、霊宝館で開催中の河鍋暁斎展を見る。成田山は愛知県にもあるけれど、こちらは本山だけあって広い広い。驚きました。しかも年明けから19日過ぎていても、参拝客でごった返していた。幸いにも、周囲の喧騒をよそに美術館や霊宝館は静かで、特に本堂→美術館→霊宝館への景観は美しい。
書道美術館にあった暁斎がわずか4時間で仕上げたという大幕絵(早大演劇博物館所蔵)は必見。ここまで来た甲斐があったというもの。
注:上記以外の暁斎の展示作品はほぼ河鍋暁斎記念美術館からの出展。

15:30 JR成田駅から千葉市美へ向かう。

16:20頃 千葉市美へ駆け込む。
「芳年・芳幾の錦絵新聞」と「日本の版画-1941-1950」展を見る。
これも素晴らしい展覧会。千葉市美は初めて訪れたが、良い展覧会を企画すると感心していたら、ついつい散財(図録いっぱい買っちゃった)。

18:30 夕食

22:30頃 JR田町下車でお宿に到着。

1月20日(日) <2日目>

たまにはゆっくりしようと朝寝坊。

10:00朝食後散歩がてらに宿近くの建築会館にて開催中の「朝鮮通信使の道」を見る。「え、これだけ?・・・」といきなり出鼻をくじかれる、あっけない内容。無料なので深手にならずにすんだが危ない危ない。

ホテルに戻る道すがら、たまたま六本木行きの「ちいばす」(全区間100円)が来たので、乗車。無計画な1日が始まる。

10:45 六本木駅にて下車し、徒歩で泉屋博古館別館へ向かう。
こちらも初訪。朝一で行くにはお手頃な感じ。

11:15 日本画が見たくなり、そのまま東京メトロで山種美術館へ。
行きは半蔵門から、帰りは九段下からホテルへ。日本画ではつとに著名な山種美術館へ漸く行くことができた。確かに優品が多いと思う。名古屋の古川美術館展示数の2倍~3倍。
ただし、展示空間としては手狭な印象を受けた。ちょっと落ち着かない。

13:30 ホテルへ戻り、近辺で昼食。

14:10 JRで田町から東博で開催中の「宮廷のみやび-近衛家1000年の名宝」を見る。
書が中心の展示が続く中、近衛家所蔵のお人形やお雛様が目をひいた。
さっくりと鑑賞を終える。

15:40 JRにて上野より両国の江戸東京博物館へ。
初訪が続く。両国駅で、力士の方を数名見かけ、やはり両国に来た感が高まる。
両国には生まれて初めて訪れたが、同じ東京でも街の雰囲気が違う。両国国技館が見えたと思ったら、その奥に巨大な建造物が・・・。え、え、え~っ!
噂にはちらちらと耳にしていたが、これほど大きいとは。
ここでの感想は後日改めて。江戸東京を最後にして良かったとつくづく思う。

18:06 力尽きて、東京よりのぞみにて名古屋へ。

20:10 帰宅

1日目は見たいものを見て、2日目は最後の最後で驚いたというのが総括です。

2008年1月14日 鑑賞記録

「あべまつ行脚」のあべまつ様のアイデアを借用して、簡易な鑑賞記録をブログ上で始めてみることにしました。まとめて残すのも大変だし、展覧会記録として1つの記事を書けないような場合に便利かと。

<1/14の鑑賞記録>

・「絵でつづる日本~ゆかしい情景~」 古川美術館
やはり、鏑木清方、上村松園の小品であるが美人画が好ましい。
同じ美人画で梶原緋佐子の「清香」も展示されていた。以前も良いと思った記憶がある。
今回は、展示作品の何点かにクイズがあって、楽しませてもらった。古川美術館の作品解説は丁寧すぎず、短すぎず本当に程よいと思う。
他には市野龍起の「磯」、山内一生の小原和紙を使用した作品「みのり」も留めておきたい作品だった。

・川村美術館所蔵「巨匠と出会う名画展」 松坂屋美術館
川村美術館には2度行ったことがあって、名画ぞろいなのは承知していたが、特に日本画は今回初めて見たものばかりであった。
・「柳に水鳥」 尾形光琳
・「牧童図」 長沢芦雪
・「墨田川焼窯場図」 酒井抱一 等々。
他の巡回先で展示されていた長谷川等伯の重要美術品「烏鷺図」は名古屋での展示はなし。見たかった~~~~~。
気になったのは、抱一作品の展示方法、日本画なのにライトが強すぎてガラスが反射し、作品がよく見えなかったのが非常に残念。

洋画で良かったのは2つでいずれも初見。
・「姉妹」 キスリング
・「冒険の衣服」 マグリット
前回のキスリング展以来、すっかりキスリングが好きになってしまった。
今回も光琳・芦雪をさしおき、マイベストはキスリング「姉妹」。      

金刀比羅宮の旅(5) 宝物館編

最後の最後の隠し球はこの宝物館。
宝物館は明治38年(1905年)に建てられ、登録有形文化財に指定されています。石造りの2階建てで、この建物を見学するために訪れる人もあるそうですが、納得できる佇まい。

まず、中に入って驚いた。
1階2階ともに、これ以上展示できませんというくらい、ぎっしりとお宝が展示されています。壁という壁に絵画が、人1人行き交うのがやっとの間隔でガラスケースがぎっしりと並んでいるのです。
両端に古いどっしりとした木製階段があり、どちらからでも2階に上がれるようになっていますが、階段横にも大きな絵画がかかっています。
しかし、この狭い空間によくぞこれだけ詰め込んだもの。1平米単位のお宝密度は日本一、いや世界一かもしれません。

作品リストや解説はなく、メモをとる時間がなかったのが惜しまれます。
帰宅後HPをチェックしたら掲載されている作品以外のものも展示されていたり、いなかったり。アバウトなのが金刀比羅流かも。この無造作感が堪りませんね。

特に気になった作品は以下の通りです。

・「三十六歌仙額」 狩野探幽、尚信、安信 筆
入口正面の壁一面にこの36個の額が天井近くまでひしめいてます。36枚全てをこのスペースに飾るにはこれしか方法がないのでしょうが上の方に飾られているのは、双眼鏡を使っても見づらかったです。保存状態は極めて良好で、一点一点つぶさに見たい所でしたが、首が疲れてしまい断念。この作品は高松藩主松平頼重公が奉納したもので、高松藩主参詣時のみ飾られていたため、良好な保存状態を保っているそうです。

一挙に36枚全部を展示するあたりが凄い。

・「文殊菩薩並びに牡丹図」 狩野探幽 寛文9年(1669年)
三幅対のこの作品は、宝物館中のMYベスト。素晴らしい作品。

・「百鬼夜行図 牛田久一
昭和はじめに描かれた摸本ですが、妖怪の絵がどれもこれも憎めない愛らしさがあります。見ていて全く飽きません。ガラスケースにくっついて、食い入るように眺めたのですが、なぜか展示ケースのガラスがゆがんでいて、これまた見づらい。
これ、欲しい!残念ながら、図録にも掲載はありませんでした。

・「不動明王立像」
重要文化財の十一面観音も良かったけれど、印象に残ったのは断然こちら。
お顔がこれまで見たことのない形相で、珍しかったです。

これ以外に司馬江漢「扇面旭日鶴亀図」や長沢芦雪初期の作品「鯉魚図」、2階に非常に長い扁額作品(タイトル不明)があり、こちらも見応えがありました。


長々と5回に分けて記事を書かせていただきましたが、拙い文章にも関わらず、ここまでお読みいただき本当に有難うございます。

今回で完結です。この展覧会はこの後、三重県美立術館に巡回しますが、三度目の対面をするために足を運ぶかもしれません。現地で見た後に、巡回展を見るとどんな感じがするのかを知るために。

*金刀比羅宮での「書院の美」は今月末まで開催中です。

金比羅宮への旅(4) 「書院の美」展

さて、高橋由一館を出発し、本宮を再び目指します。ここからの記憶が実はあまり残っていません。旭社という本宮と見紛うようなお社を過ぎるとやがて、本宮に到着。無事参拝をし、いよいよ「書院の美」拝見です。
その前に「神椿」でサンドウィッチで軽く腹ごしらえし、「書院」へと向かいました。

東京芸大での展示については、このブログでわずか2行程しか残していません。こんなはずじゃあない、もっと素晴らしいはずなのに。。。期待が大きすぎたのか感動がわいてこない展覧会となってしまいました。
やはり、金刀比羅宮で見てみたい!この思いが強くなり、今回の旅となったわけです。

結果、素晴らしい内容であったことは旅程編で書いた通りです。では何が違っていたのか。
明確な違いが現れたのは応挙の「瀑布古松図」でした。この障壁画は前回複製画を見ていた筈ですが、ここでは全く別モノ、見た瞬間圧倒されます。
凄い凄い凄い。。。言葉になりません。

「瀑布古松図」は書院横のお庭とその背後の山、更には隣の「七賢の間」とをつなげた作品でした。滝から流れる水流はそのまま庭の池に続いています。絵画が庭の一部なのか庭が絵画の一部なのか、両者を隔てるものはなく全てが一体と化している。
障壁画はむろんのこと、お庭や池も移動させることはできません。この金刀比羅宮でしか、応挙の意図を感じ取ることは難しいのです。

通常公開時は、この障壁画のある部屋の中には入ることができず、ガラス越しにしか見ることができません。私はこのお部屋に入った時、自然と正座をしていました。それが絵を見るのに一番落ち着いて自然な形であると身体が勝手に動いた感じです。
かつては貴人が接待されていたように、現在の自分も同じ体験ができるのです。こんな体験はこの先あるかどうか。

この日は曇り空でしたが、薄暗いことが幸いして、金箔が殊更美しく映えていました。1日中、このお部屋にいらっしゃる係の方のお話では、夕暮れ時も素晴らしいとのこと。
プライスコレクションの展覧会の際、照明の当て方で障屏画の見方が変わることを知りましたが、ここでも光によって作品の見え方が異なる日本絵画の素晴らしさを再び感じます。

このお部屋では丸天井や欄間などの建物も見所です。当時、天井の角を丸く作ることは最高水準の技術であったそうです。

もう1つ。
次の邨田丹陵の「富士一の間」「富士二の間」も空間を活かした作品です。こちらも係の方が一番作品が美しく見える位置を教えて下さって、正座して富士の山を遠目で見ました。
すると、富士山の麓で狩をする武士という作品意図が明瞭に分かります。


更に奥書院へと続きます。
奥書院と表書院の間に、若冲の「花丸図」襖絵と「象頭山社頭並大祭行列図屏風」が展示されています。後者は、まさに自分がたどってきたそのままの道のりが描かれており、江戸時代とさほど変わっていない参道とその雰囲気を感じとれます。これも、階段を上ったおかげ。

奥書院に入ると最初は茶室に通され、正面に鹿を描いた作品(岸岱の弟子作)があります。やがて奥書院上段の間へ。
ここでも、入ったと同時にもう声が出ません。金の美しさと若冲の花の絵がきらめていて、まぶしい程。金箔や画料の輝きまでは複製画で再生することはできないのだと再び痛感。
このお部屋は金刀比羅宮の別当の住居であったそうで、蚊帳を吊る金具が4隅に取り付けられていることから、往時の状態がうかがわれると教わりました。
いかめしいガードマンの方がこういったことを教えて下さるのも楽しかったです。
このお部屋では、釘隠しの細工にも注目。応挙の部屋にあったものとは違っています。

この後、岸岱のお部屋へと続きますが、あまりにも素晴らしい作品の連続で既に感覚は麻痺状態。
呆然自失のまま、芸大展示で一番お気に入りの群蝶図や柳の間を拝見。
柳の間には、今回初公開の若冲作「飛燕図断片」がかつてそこにあったであろう、壁の前に厳かに展示されています。

何はさておき、繰り返しになりますが、かつてと同じ状態で作品を拝見できるのは、非常に貴重な経験でした。あらためて、金刀比羅宮の関係各位の皆様にお礼申し上げます。


最後の白書院では田窪恭治による製作途中の「椿」が壁一面に鮮やかな彩を添えています。
応挙、若冲、岸岱の名画を横に、作品の制作にあたるのは名誉でもありますが、非常にプレッシャーのかかる仕事ではないでしょうか。
あと2年後に完成予定だそうですが、完成の暁には再び訪れたいものです。


次回、宝物館編で金刀比羅宮への旅は最終回です。

金刀比羅宮への旅(3) これから金刀比羅宮へ行かれる方のために 

漸く、図録類一式が本日到着しました。が、ここで1つ入口でいただいたチラシをどこかに忘れて来たようで、中に入っていませんでした。あのチラシが欲しい~っ。

今日は、これから金刀比羅宮へ行く予定のある方、行こうかどうしようか迷っていらっしゃる方のために何か参考となることをご案内しようと思います。

1.持参した方が良いもの
(1)双眼鏡  
単眼鏡も良いのですが、今回の展示では主要作品「花丸図」や応挙の障壁画等は少し距離があるため、細部まで見たいと思われる方は持参された方が良いです。
ちなみに私は昨年購入したPENTAXの「Papilio」が今回も大活躍でした。「Papilio」は近くも遠くも見られてすこぶる便利。

(2)厚手のソックス
これは特に冷えの気になる方へのアドバイスです。書院は靴を脱いでの拝観となります。長時間の鑑賞だと、やはり足が冷えてきますので寒いのは嫌!と思われる方は是非。

2.飲食、休憩
大門をくぐると、食事可能な場所は「神椿」だけです。カフェにはHPをご覧いただいても分かるように、カレーライスかミートソーススパなどしかありません。私は神椿サンドウィッチをいただきましたが、少量で昼食としては不足感がありました。
ここで、食事をと考えていらっしゃる方はB1Fのレストランを予約された方が良いでしょう。
2500円からお食事できるので、カフェのカレーで900円出すなら、こちらの方がお得感、プチセレブ感が味わえるような気がします。
ただし、レストランは2名以上からで、お一人様はお断りのようです。交渉したらどうなるんでしょうか。。。

他には、由一館入口横が休憩コーナーになっています。

大門を出れば、うどん店、お土産屋さん、何でもありますのでご安心下さい。

3.図録、絵葉書、お守り等
中身を見ないで買った図録ですが、東京芸大で販売されていたものとは異なるようです。
東京会場販売版を先程確認したら、ページ数、表紙絵、執筆者等も違っていました。
この図録、2300円とは思えない素晴らしい出来栄えで、由一の作品27点全て掲載されています。
私はこれを知らずに、由一館で由一作品だけの図録(800円)を買ってしまいました。
展覧会図録等は、書院と由一館で販売されていますが、由一の絵葉書は由一館だけだったような記憶がありますが不確かです。。。

お守りは本宮だけでなく書院横でも販売されていたので、買い忘れた方などはこちらで買っても良いかもしれません。1つ800円です。


これから行かれる皆様が、本展を心ゆくまで楽しまれますように願っております。

金刀比羅宮への旅(2) 高橋由一館

本日(1/14)になっても、図録類一式到着せず。これは失敗でした。50円を惜しんで、書籍小包にしましたが、エクスプレス便にすればよかった。。。

気を取り直して前回の続きです。
高橋由一の作品と言えば有名な「鮭」、これは日本史の教科書もしくは美術の教科書に必ず掲載されている作品。私と由一作品との出会いは、この教科書図版が最初だが、それから数十年経過し愛知県美の常設展で本物と遭遇した。タイトルは「不忍池」。冒頭の「鮭」と異なり風景画だが、大変心地良い作品で、優しい風が流れているような雰囲気が漂う。先日ロートレック展のため県美に赴いた際にも、常設にかかっていた。
そして、昨夏もう1枚衝撃的な作品と出会う。これが「花魁」であった。こちらは、文字通り花魁を描いた肖像画なのだが、美人画とは程遠い、はっきり言ってしまうと不美人な花魁がずっしりと描かれていた。しかし、美しさを微塵も感じられないこの作品はなぜか非常に強く印象に残った。今にして思えば、花魁から想起されることのない「おどろおどろしさ」を痛切に感じたからかもしれない。
これを境に、痛切な由一ファンとなった私はこの金刀比羅宮行きで、由一作品をまとめて鑑賞する絶好の機会と鼻息荒く(実際は坂のため息も絶え絶え)入口をくぐった。

さて、入口のある1階だと思った場所が実際は3階であることを係の方に説明され、3階展示から鑑賞を始める。
ここでは、現在白書院で製作中の田窪恭治「神椿展」が開催中。金刀比羅宮内に新設された資生堂パーラー運営の茶所「神椿」作成のための下絵・習作等が展示されている。
私は作品よりも田窪恭治作成の金刀比羅宮模型が気になった。既に自分が歩いてきた道のりが、模型によりよ~く分かったからだが、これはあまりに失礼な感想かもしれない。

さっと流して、お目当ての由一作品が待つ1階へ降りる。
小さな展示室に全27点の作品が静かに佇んでいた。私が行った際は来客も数名でゆっくり、のんびり鑑賞できた。まずはガラスケースに入っている4作品。この4点だけをガラス越しに見て、残りは柵もないため、近づいて鑑賞可能、額装されているがガラスがはめ込まれていないので、絵の具の状態がよく分かる。

全ての作品について私のようなド素人が感想を述べることは難しいし冗長になるため、ここでは特に印象に残ったもののみを挙げていく。

・「豆腐」
以前TB「新日曜美術館」で由一の特集があった際に、クローズアップされていた作品で、今回私がもっとも見たかった作品(他にどんな作品があるのか全く知らずに行った)。
実際の作品は思っていたよりサイズが小さかったのが軽い驚き。TVはサイズまで表現してくれない。
描かれているのは豆腐と言えば豆腐なのだが、かなり硬そうな感じ。見ていて面白いし、描き手の一生懸命さが伝わってくる。写実とはちょっと遠いだけど、惹かれる、そんな所は花魁も豆腐も同じだ。

・「州崎」
他の風景画とはどこか違った感じを受ける。重厚感というより、油彩なのに透明感がある。
船の帆がその透明感を出しているのか、それとも背景の静かな海辺なのか、とにかく静かで落ち着く大好きな1枚となった。

・「鱈梅花」
豆腐同様、身近なものを題材にした作品だが豆腐と比較すると、ぐっと写実性が高まっているように思った。荒縄が描かれているが、これは「鮭」と同じ描写法だそうで、描き方など分からないが、じっくりと拝見。

・「貝図」
思わず若冲の貝図を思い出したが、由一も貝だけを描いていた。これは金刀比羅宮の袋戸棚に使用するために描いた小襖仕立てとなっている。
戸棚の襖に由一の絵とは、さすが金刀比羅。他にも小襖仕立ての作品がもう1点あるが、こちらも必見。

・「琴平山遠望図」
HPには修復中のため、展示されていないと出ているが修復は完了し、しっかりと展示されていた!由一が琴平滞在中に制作した琴平の風景画。由一の風景画はどれも皆、見ていると優しい気持ちになる。


・・・と由一27点と束の間の出会いを楽しみ、もう、これを見ただけで来た甲斐があったと大満足。しかし、お楽しみはまだまだ続く。後ろ髪ひかれつつ、更に上を目指すのであった。

*高橋由一館展示作品は以下金刀比羅宮公式HPで全て見ることができます。
http://www.konpira.or.jp/museum/yuichi/yuichi.html

つづく。

金刀比羅宮への旅(1)プロローグ編

琴平郵便局から発送した図録や資料一式が届かないので、まずは琴平駅から金刀比羅宮の高橋由一館まで行程についてご紹介します。

琴平駅に到着したその時から、この金刀比羅の美は始まっている。JR琴平駅は、大正12年(1923年)に現在の場所に新築移転した洋風木造建築で、西欧ゴシック寺院風の懐かしい風情をしており、どこかノスタルジックな雰囲気が漂っているこの街は、駅舎までもその演出に一役買っているのだ。

駅を出て、まっすぐ進んでいくとすぐに右手に小さなお城のような古い建物が目に入ってくる。これは、万延元年(1860年)建立の「高燈籠」。高さ28mの日本一高い燈籠で、かつては瀬戸内海を航行する船舶からも見え、船人がこんぴらさんを拝む目標灯にもなっていたという。なるほど、これだけの高さがあれば、当時はさぞや目立ったことだろう。

この川を渡り大通りに突き当たると、賑やかな通りに出る。讃岐の地だけあって、やたらうどん店を多く見かける。そのまま進むと参道入口へ。見るもの全て新鮮でここまではあっという間であった。
ここから785段が始まる。上りきれるだろうかという微かな不安とこれから見られるであろう作品の数々を想像すると、知らず知らず歩みは早まってしまう。
見上げると、石段沿いの両側には所狭しと土産物店などが軒を連ねる。
まっすぐ上を目指そうと思うのだが、釣灯篭があったりで好奇心が抑えられず、視線は右に左に忙しい。こんぴらさんの階段は大変上手く作られていて長さを感じさせない。
10段くらい上ると、少し平らな箇所が続きほっとする、その繰り返し。
がて大門が見えて来たがその手前に非常に大きな古そうな鼓楼があった。どこもかしこも歴史を感じさせ、自分がタイムスリップしたように思えた。

大門をくぐると、飴(加美代飴/かみよあめ)を売る女性が数名。
この記事を書くために調べたら、「五人百姓」と言って、古来より特別に境内で商いを許可されている方々であった。

更に階段は続く。だんだん息が上がって苦しくなってきた頃、右手に宝物館へ続く道とその案内が見えて来たが誘惑にめげず進む。
そろそろ休みたい~と限界に達したその時、高橋由一館の看板が。。。
参拝前であったが、休憩がてら先にお目当ての1つである由一作品を見ることにした。

つづく。

金刀比羅宮へ 1泊2日<旅程>

ついに憧れの金刀比羅宮へ行ってきました。
詳細は後日アップしますが、まずは今回の旅程のみ記録として留めておきます。

1月11日(金)
6:26 名古屋発 こだま号新大阪行
新大阪にて博多行きののぞみに乗継。
8:16 岡山着
ここからは青春18きっぷでJR在来線を使用し琴平へ入る。

10:00 琴平着 
駅より徒歩で金刀比羅宮へ。
大門までは順調であったが、その後案の定、階段が辛く参拝前に休憩を兼ねて「高橋由一館」に入場。
初めて目にする由一の27点を見て、既に気分は高揚、浮き足立つ。

再び階段を上って、本宮を目指す。
「金刀比羅宮 書院の美」を開催中の表書院入口を横目にひたすら上る。
途中、資生堂パーラー「神椿」の誘惑にもめげず、旭社を通り過ぎ、本宮参拝。
無事たどりつけたことで、一安心。

朝が早かったため、神椿にて軽食を取る。
レストランはランチも3日前までに予約必要(2人以上)。カフェのみセルフサービスで営業していた。

いよいよ表書院へ向かう。
この日は曇り午後からは雨の予報だったせいか、お客さんは思ったより少なかった。

そこから先は、もう夢のような世界。。。
言葉で表現するのは難しい。

「書院の美」は東京芸大で開催された展覧会で既に見ていたのだが、ここに来てやっとその素晴らしさ、凄さを身体中に感じることができた。

陶然としたまま宝物館へ。
これがまた凄いの何の。。。絶句。

14:06 琴平発 JR在来線にて大阪へ

岡山→姫路間のみ新幹線利用。ひかりレールスターに初めて乗車。姫路にて在来線乗換。
国立国際美術館へ行きたかったが、時間に間に合わず、堂島ホテルで大好きなカマンベールチーズケーキをいただきつつ休息。

19:00 京都着。
JR伊勢丹内美術館「えき」KYOTOにて開催中の「鏑木清方展」を見る。
新都ホテルにて宿泊。

1月12日(土)

8:50 JRにて奈良へ向かう。この日も青春18きっぷ使用。

9:55 奈良国立博物館に入る。
特別陳列、平常展を見る。やはり奈良博は素晴らしい。予想外に時間を取られる。
13:20頃 近鉄にて大和文華館へ。
「宋元、高麗-東洋古典美の誕生」を見る。2時~の学芸員さんの解説があったため、ここでも予想外に時間を取られる。

結局この2つで日程終了。
学園前駅→鶴橋乗換で再びJR在来線を使用し名古屋へ。
19:40 名古屋着


金刀比羅宮へ行かれたことのない方は、是非この機会に足を運ばれることを最大限にお薦めいたします。
現地現物。百聞は一見に如かず。
金刀比羅宮が一大文化ゾーンであることは間違いありません。
必ず、訪れる者全てを満足させると思います。

愛知県美術館 所蔵作品展

ロートレック展を見た後、いつもの通り常設へ向かいました。
愛知県美の常設は展示構成が毎回変わっているので、飽きることがありません。「日経5つ星の美術館」で公立美術館第2位に選ばれただけのことはあります。

今回、印象的だったのは展示室5の近・現代の日本画です。こんなに沢山の日本画コレクションがあったとは・・・・・。何度も県美に足を運んでいるのに、知りませんでした。普段は国内外の近・現代洋画の展示が多いのです。

いつもは20世紀洋画に使用されている壁一面に日本画がしっかりおさまっていました。しかも絵を正面にしてソファがずらりと一列。
ゆったりとソファに腰掛けて正面に日本画を眺めるというシチュエーションは、大変リラックスできます。

日本画の中でも目玉は、安田靫彦の全長15mの絵巻《月の兎》でしょう。
一場面だけでなく、全図15m(詞書)は難と1993年の「安田靫彦展」以来だそうです。

物語は・・・・昔、あるところに、猿と狐と兎が棲んでいた。三匹はとても仲が良くて、昼間は野原で遊び、夜になると林にある小屋に帰って楽しく暮らしていた。この事を月の王様が聞いて、確かめようと、ボロボロの服を着て乞食のような姿で三匹の棲む林にやってきて云った。『お前達は種類が違うのに喧嘩もしないで仲良く暮らしていると聞いたが、それが本当なら、この爺さんにも、なにか食べさせて呉れないか』
 おやすい事だと、猿は山へ登って木の実を拾ってきた。狐は川から魚を捕まえて来た。でも兎は辺りをピョンピョン跳ね回るだけで、なにも採ることが出来なかった。しばらく考えて兎が云った。『お猿さん、貴方は薪を拾って来て下さい。狐さんは、それに火を付けて頂戴』
 薪が火で燃え始めると、兎は、その燃える炎のなかに飛び込んで、自分の身体を焼いてお爺さんに御馳走した。
 泣きながらお爺さんは云った。『お前達は、みんな、心の優しい者達だが、とりわけ、兎は、悲しい位に愛おしい。』
 そう云ってお爺さんは火の中から兎を助け出し月の都へ連れて行った。。。

優しさとは何か問いかけられたような気がします。1934年の作品ですが、後年までずっと残しておきたい絵巻です。


安田靫彦と言えば、昨年11月に東博常設で見た「御産の祷」が大変印象的です。
浮世絵を楽しみに入った展示室の入口すぐにこの作品がかかっていて、あまりの大きさと迫力そして絵の中にある白屏風に足をとめ、しばし見入りました。
ちょうど「BIOMBO」展で白屏風そのものを見たところだったので、実際に使われている場面の作品は興味深いものがあったのです。

話を県美に戻します。
安田靫彦以外にも小松均の大作「富士山」、山元春挙、川合玉堂など名作ぞろいです。

展示室8では毎回「木村定三コレクション」の中からテーマに沿った展示が行われています。
今回は「現代の人間像:異相の中のユーモア」。
いつもの木村定三のコレクション(古美術系、日本画、熊谷守一)とは、かなり違った作品が並んでいました。
浜田知明などは納得感?があったのですが、ルフィーノ・タマヨの4点にはびっくり。
木村定三の審美眼、幅広さは素晴らしいと思いました。分野を問わず心惹かれる作品を集めた様子が伺われます。ロートレック展の後は、「木村定三コレクション」の特別展が開催されます。これまで少しずつ紹介されていた作品をまとめて見られるチャンス!見逃せません。

*今回ご紹介した作品は1月14日までの展示です。

2008年 ヨガ始め

2008年のヨガ始めは、Laurent先生が新築のご自宅でオープンしたYOGA atelier*。スタジオオープン初日となった1月5日に早速行って来ました。

パインの無垢材を床材に、壁は珪藻土塗り、スリット窓からは日光が程よく射し込んで来ます。先生ご自身で壁の珪藻土塗り+自宅キッチン+自宅・スタジオ内の棚を作られたそうで、キッチンの完成写真を拝見しましたが、素人が作ったとは思えない。
「自分でもできるとは思わなかったよ」・・・などとおっしゃっておられましたが、国立パリ美術学校卒の経歴がなせる業でしょうか。素晴らしいです。壁もむらはほとんど見られません。

さて、ピカピカのスタジオでの初ヨガですが、11月以来スタジオから遠ざかっていた私には案の定ちょっときつかったです。自宅でボチボチやってはいましたが、やはりレッスンは違います。
先生はそんな私に配慮され、チャトランガを省略するアレンジ版でレッスンして下さいました。
やっぱり、ねじり三角のポーズが一番きつかった。
相変わらず硬い身体は、一層硬い。
前屈嫌いと言っていないで、ちゃんと毎日続けようと思った次第です。

レッスン料金は大変お手頃で、ドロップイン2000円。
継続するならこの程度の料金だと行きやすいです。詳細は以下。
<料金>
入会金 \3000 → 今月中?なら半額のようです。

1レッスン \2000
月3レッスン \5000
月4レッスン \6000
月5レッスン \7000

体験レッスン \1500(初回のみ) 
レッスンは予約制。

YOGA atelier* ヨガ アトリエ 〒485-0012 愛知県小牧市小牧原新田745-48
TEL 0568-27-5552 不在時 090-8469-8091
名鉄小牧線 小牧原駅より徒歩5分 駐車場有 ※事前にお問い合わせください。
メールお問い合わせ info@yoga-atelier.jp
HPアドレスhttp://www.yoga-atelier.jp/index.html

先生は、日本語堪能。奥様も日本人ですのでご安心くださいませ。

「ガンダーラ美術とバーミヤン遺跡展」 静岡県立美術館

メイン

青春18きっぷの残り3回券を首尾良く手に入れ、1月3日JR在来線にて静岡県草薙まで足を伸ばしました。
昨夏、静岡県美で開催された「石田哲也展」&「NHK日曜美術館30年展」のために初訪問して以来となります。その時から本展の告知があり、是非観に行こうと思っていました。

概要は以下の通り(美術館HPより抜粋)。

ガンダーラは、かつて世界に冠たる都であった。その繁栄はローマに並ぶほどだった。そこに咲き誇ったガンダーラ美術。
今回の展覧会は、日本国内の未公開のガンダーラ美術の至宝を、初めて集大成するものです。言わば“秘蔵のガンダーラコレクション展”。石やストゥッコ(漆喰)でできたガンダーラ仏およそ110点をご堪能下さい。
また、破壊されてしまったバーミヤン大仏と石窟壁画のかつての雄姿も写真でご紹介します。最新の修復研究の成果が、バーミヤンの謎に迫ります。さらに中国新彊(しんきょう)や敦煌(とんこう)からの大谷探検隊の収集品も展覧し、シルクロード美術の魅力をあますところなくご紹介します。


・・・とここまで書いたところで、はたと手が止まりました。
展覧会の構成をメモするのを忘れ、図録も購入しなかったため内容を順序よくご紹介できない・・・。ということで、感想を。

まず、ガンダーラとは一体どこなのか?
私はてっきり孫悟空の影響で中国かな~などと思っていましたが、現在のパキスタン北西部とアフガニスタン東部周辺が正解。ここに古代ガンダーラという古代王国がありました。
展示されている仏像、チラシ写真の仏像はどこかで目にした様式です。

東博特別5室で開催中の「仏像の道」で仏像のはじまりとして陳列されていた一連の仏像やレリーフが、まさにこのガンダーラ王国で生み出されたものだったとは。。。いかに、展示解説を理解していないことか!
仏像が最初に制作されたのは、ガンダーラのクシャーナ朝時代(紀元後2世紀頃)。インドという説もあるようですが、このガンダーラでは仏教美術が隆盛であり、次々に素晴らしい仏教美術を展開。

最大の特徴は、ギリシャ・ローマ、シリアなどからの影響を多分に受けた様式であること。
仏像のお顔がどこかエキゾチックで、現在日本で目にする仏像とはかなり違っています。
この影響を一番感じたのは、仏像でなく「レスリング」像を見た時です。
レスリングの発祥はエジプト時代にさかのぼり、古代オリンピックの種目にもなっていますが、ガンダーラでもレスリングは行われていました。

シルクロードを通じた東西文化を融合し繁栄を誇った様子が見えてきます。

また本展では、2001年3月に破壊されたバーミヤン遺跡の大仏及び石窟壁画と修復作業についても展観しています。
特に印象的だったのは、破壊されたバーミヤン大仏と静岡県立美術館との大きさ比較のために作成されたジオラマ。
バーミヤン大仏の高さは何と55メートル!
ちなみに奈良東大寺の慮舎那仏坐像は14.86メートル。こちらは座っており、バーミヤン大仏は立像なので単純比較はできませんが、55メートルは凄い。想像できなかったのですが、ジオラマを見たらその大きさがよく分かりました。この目で実際に55メートルの立像を前にしたら、呆然とするか、ひれ伏すかどちらかだろうと思います。
が、残念ながらもうその機会はありません。


大仏だけでなく、今もなお残る貴重な石窟壁画は日本を含め世界各国によって修復作業が進められている様子が展示されていました。


さて、ガンダーラ美術が隆盛した3~5世紀に、日本はいかなる状況であったか。
この時代は弥生時代後期~古墳時代。卑弥呼や蘇我氏が生きた時代と書いた方が分かりやすい。日本に仏教が伝来したのは、538年ですから、ガンダーラで発祥した仏像がシルクロードを通り、現在の中国、韓国に伝わり、日本へと伝わるという壮大な流れが、漸く私にも見えてきました。
繰り返しって大切ですね。

この記事を書くにあたり、昨年購入したMIHO MUSEUMの「いにしえのほほえみ」展図録が大変参考になりました。改めて、図録って役に立つものだなと思ったことも追記しておきます。その時分からなくても、こうして後日見た展覧会の後で読み返すと理解が深まりました。
こうやって、1つ1つの展覧会がつながっていくのが美術の面白さだと思います。

*3月30日(日)まで開催中。
 福岡アジア美術館(4/10~5/18)、福井市美術館(5/28~7/6)に巡回します。

「ロートレック展」 愛知県美術館

気が付けば、はや6日。
4日、5日の「のだめスペシャル」が原因でブログ更新も怠ってしまいました。

さて、年明け3つ目の展覧会はロートレック。こちらも、気が付けば会期終了が14日と迫っており、慌てて行って来ました。

ロートレックのポスター、素描、油彩をはじめ彼が生きた時代に関する写真・映像を加え約300点で構成されています。作品は年代順でなく、テーマ別に展示されていました。

私が注目したのは「ロートレックと日本文化」についての展示です。
ここでは、当時のジャポニズム隆盛と浮世絵がロートレック作品に与えた影響を考えさせる試みでしたが、一見するだけでは分かりにくかったと思います。会場を出た後、図録を読んで「なるほど~」と思いました。
ここでは、関連作品として浮世絵も数点展示されています。展示会場によって、使用される浮世絵は違うようで、愛知県美では展示がありませんでしたが、他会場では歌麿の名品も出た?出る?ようです。今回は、写楽、勝川春亭、歌川国安の作品が出ていました。

<浮世絵からの影響>

1.「影」の使い方。
浮世絵では人物群を黒く影にして背景に使用することがありますが、ロートレックのポスターにも同じ手法が使用されています。言われてみれば、かの有名な「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」にも黒い人影が見えます。
ムーラン


2.大首絵方式
ロートレックは演劇やショーのポスターを手がけることが多かったのですが、ここにも歌舞伎役者を主題にした役者絵の影響を見ることができます。
例えばアリステッド・ブリュアンを描いたポスターに見られる役者の個性、特徴を誇張するような強烈さは、確かに浮世絵にヒントを得たのかもしれません。

3.娼婦→主題が似ているという結びつき
ロートレックは娼婦を多く描いています。浮世絵もご存知の通り、遊女をモデルとした美人絵が山ほどあります。ロートレックは娼婦と生活をともにすることで、彼女達の華やかな表の姿だけでなく、裏の姿をリアルに捉えました。
今回私が良いなと思った作品は、ほぼ全て娼婦を描いた作品でした。

・「赤毛の女<身づくろい>」1889年 オルセー美術館
赤毛

舞台の出番前なのか後なのか、細い女の背中からは気だるさ、しどけなさを感じますが、それでも彼女の背中は美しい。
ロートレックは赤毛の女性を好んで、モデルにしたそうですが、本作も髪の色が赤であるために、背中の白さが強調されているような感じを受けました。

・連作「彼女たち」
このリトグラフシリーズ最高です。髪を梳るポーズ、鏡を覗き込むポーズ、眠る姿等、娼婦達の日常である様々な場面を素晴らしい線で描ききっています。
このシリーズは100部限定で販売されたのですが、作品の出来とは対照的にほとんど売れなかったと解説にありました。
確かに地味な作品ですが、ロートレックの娼婦に対する視線、気持ちが伝わってきます。

・「ひとり」
「疲労」の下絵として描かれた作品ですが、この下絵の方が断然良かったです。
ベッドに疲れ果てて、仰向けになり足をだらんとさせた様子からは虚脱感、孤独だけの世界。
こんなポーズをとっている日が自分もあるような。。。思わず共感してしまいました。


他には、雑誌「ミルリトン」に提供していた挿絵、表紙絵も素晴らしかったです。

全体的に、油彩よりリトグラフ・ポスターが中心であるため、油彩を期待して行くとがっかりするかもしれません。
会場の半ば頃から、華やかなパリの歓楽街に自分がすっぽり包まれたような気がしてきました。ロートレック作品を通じて、当時のパリを回顧する展覧会であったと思います。

*1月14日(月・祝)まで開催中。この後サントリー美術館に巡回します。

「ボストン美術館 浮世絵名品展」 名古屋ボストン美術館

清長

新年初訪問は、やはりボストンの浮世絵名品展です。
前回の記事で県内の美術館で2日に開館しているのは、2館のみと書きましたがあれは誤り。新年早々大変失礼いたしました。
公立美術館はクローズですが、メナード美術館・古川美術館等は今日から開館しています。

さて、ボストン浮世絵展における私の目から見たポイントは約5つかと。何分浮世絵初心者であるため、至らないレポートであることは何卒ご容赦賜りたく。

<みどころ>
1.非常に保存状態が良く、発色の美しい作品がそろっている。

2.2枚、3枚、中には5枚の続きもの作品が多く出展されている。大判多数。

3.肉筆浮世絵の逸品も展示あり。

4.幻の「スポルディングコレクション」版本(菱川師宣、北尾政演、歌麿)は大注目。

5.現存しているのが世界で1枚だけという珍品や北斎・広重の初摺りも数点あり。


作品総数137点!名古屋ボストン美術館では4月6日まで展示替えなしのロングランです。版本の頁替えの有無は、後日美術館に問い合わせようと思いますが、作品リストを見る限り記載はありませんでした。また、展示作品は巡回会場によって一部異なるようです。

名古屋のみ展示される作品は下記8品。
・二代鳥居清倍 「二代目大谷広次の酢うり本名磯貝実右衛門」細版紅摺絵
・鈴木春信 「子供の獅子舞」中版錦絵
・鈴木春信 「浮世美人寄花 笠森の婦人 卯花 ☆
・磯田湖龍斎 「風流略五節句 孟春」 ☆
・磯田湖龍斎 「雛形若菜の初模様 中近江屋内 半田夫」
・鳥居清長 「仲の町の桜」(大判錦絵三枚続) ☆☆☆
・喜多川歌麿 「柿もぎ」(大判錦絵三枚続) ☆☆
・喜多川歌麿「近代七才女詩歌」長版錦絵
*☆は私が感動した作品。☆の数は感動の度合いを表す。

個人的には展覧会ポスターに使用されていますが、歌川国政の作品全て(肉筆1点含み計4点)が大変良かったです。
比較対象がミネアポリス所蔵展とヴィクトリア&アルバート展しかないのですが、特に湖龍斎作品の色艶やかさは驚嘆モノ。
大作ぞろいの中で、司馬江漢の銅版筆彩が2点ありましたが、西洋絵画のようで異彩を放っていました。もう少し観たかったです。
江漢

残念だったのは、広重・北斎の花鳥画が1点しかなかったこと。風景画より花鳥画の方が好きな私にとってはちょっと寂しいものがありました。これは、後日名古屋市美に巡回する「北斎展」に期待します。

名古屋での混雑度は予想通りいつもと変わらず。少なくとも初日はゆっくり鑑賞できました。

詳細は展覧会HPにてご覧くださいませ。

2008年 謹賀新年 元旦

北斎

あけおめ


画像はご存知、北斎の「凱風快晴」です。昨年私がもっとも多く目にした作品であり、今年の寄付金付年賀状にも採用されています。今年も素晴らしい浮世絵Yearになるように祈念して冒頭に掲げることにしました。

さて、1年の計は元旦にあり。

1.展覧会ログブックの作成。
ケガをするまでやっていたスキューバダイビングでは、潜水の都度ログブックに潜水時間、深度、ポイント、エア残量、見た魚達の記録をつけます。リゾートによっては、このログブックの呈示を求められることがあります(過去の潜水経験を重視するため)。

昨年は沢山の展覧会に出向きましたが、このブログで記事できたのはごくわずか。記事にできずお蔵入りとなってしまった展覧会も数知れず。
この反省をもとに、展覧会ログブックを作成しようと思った次第。デジタル全盛時代ですが、やはり手軽なメモという紙媒体の重要性は侮れません。

ロルバーンのメモ帳など、候補はいろいろありましたが結局、超整理法の野口悠紀夫先生考案の「超整理手帳」付属のメモに決めました。超整理手帳共々新調。モノだけ揃えるのは悪い癖ですが。。。

2.東西古美術の周辺知識を学ぶ。
こちらは、3日坊主になるのではないかと今から心配。あせらず、気長にやろうと思います。


さて、新年初展覧会は、名古屋ボストン美術館で明日から開催の「浮世絵名品展」を予定。
1月2日に開館しているのは、ここと松坂屋美術館しかないというやむにやまれぬ事情もありますが、それはさておき2008年の最初を飾るにふさわしい展覧会だとワクワクです。

ではでは皆様、拙い内容ではございますが、本年も何卒よろしくお願いいたします。
素晴らしい1年となりますように!
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