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「釈迦追慕」 神奈川県立金沢文庫

syaka

称名寺釈迦如来像造立700年記念の特別展「釈迦追慕」に行って来ました。

展覧会概要です。以下金沢文庫HPより引用。
清凉寺式として知られる称名寺の釈迦如来立像の造立七〇〇年を記念して、その造像背景を関連する仏像や仏画、古書・古文書から明らかにする展示です。
 展示は三部構成となり、第一部では、南都(奈良)やその影響を受けた鎌倉の舎利・釈迦信仰について、清凉寺式釈迦如来像への信仰を中心に検討します。第二部では、実時、顕時、貞顕の金沢北条氏三代に縁のある、称名寺釈迦如来立像の造像背景を、関連作品から探ります。第三部では、釈迦・舎利信仰が、未来仏である弥勒菩薩への信仰へと展開することを、新発見の光明院所蔵・弥勒菩薩坐像を中心に展示します。
 また昨春に約50年ぶりの仏師運慶の真作発見として話題になった、称名寺光明院所蔵の大威徳明王像が、今年7月に重要文化財となりました。これを記念して特別展期間中に、大威徳明王像を特別公開いたします。


ここでの私的な見どころをご紹介すると。。。

・「釈迦如来立像」 覚円作 岐阜・即心院蔵 1260年
この仏像は、近年まで阿弥陀如来としてまつられていたそうだ。しかし、専門家の鑑定で明らかに阿弥陀ではなく釈迦如来だと分かり、今日に至ったという経緯を持つ。
仏像の着衣には、非常に細かく美しい錐金による紋様が施されており、背中から足もとにいたるまで本当に美しい細工である。
錐金は、当時でも高度で手間のかかる細工であり、経年により紋様がはがれることが通例であるが、こちらは、非常によく保存されている。

・「十大弟子立象」 奈良時代 個人所蔵
この乾漆像は、なんと興福寺国宝館が所蔵している阿修羅像をはじめとする十大弟子立像の仲間のひとつ。現在10大弟子のうち、6体は興福寺に残るが他の4体のうち、1体は大倉集古館が、そして残る2体は行方不明、最後の一つがこちらの個人蔵のもの。
なるほど、言われてみれば身体の作り方など、興福寺のものとよく似ている。
顔が小さく表情は乏しいので、派手さはないが、見れば見るほど気になる存在というのがぴったり。

・「釈迦如来立象」 院保作 1308年 称名寺所蔵 重要文化財 (チラシ左上)
院派の作とされる清涼寺様式。
その特徴は如来の頭髪と着衣である。まず頭髪は、よく見かける螺髪(らはつ)ではなく、縄状に結わえられている。更に、着衣は同心円状に下向きに広がっている。
「見仏記」を読んですぐ、どうしても見たくて京都まで清涼寺本尊の釈迦如来像を見に行ったことがある。その釈迦如来を今でも私は忘れることができない。
明らかにそれまで見た仏像とは異風なお顔立ちと着衣だった。
その様式を受け継ぐこちらの釈迦如来は、お顔は全く異なるが、特徴は共有している。

1308年作とは思えないほど、一見傷みが少なく美しく見えるが、もとは金箔が施されていたのに、落ちてしまったらしい。

・「大威徳明王像」 運慶作 1216年 称名寺光明院蔵 重要文化財 (チラシ右下)
これが一番驚いた。理由はあまりにも小さかったから。
何しろ「大威」などというから、大きな像を想像していたのだ。しかもチラシからだと全体の大きさまで想定できなかった。
全体としては、手のひらぐらいの大きさで、思わず目の前にあるにも関わらず、それと気づかず、ガラスケースの中をどこにあるのか探し求めたほど。

やはり、目の前の小さなものがそれと分かり、改めてじっと眺めて見た。
憤怒の表情、頭の飾りなど見るべきものはある。残念ながら三面の明王なのだが、向かって左のお顔は欠損している。
こちらの明王像は、もともと象牙にまたがっていたらしいが、ちょっと想像がつかない。
本年7月、重要文化財に指定されたということで、今回特別公開となった。


以上仏像ばかりご紹介となったが、これ以外に「十六羅漢図」(元時代)<重要文化財>や舎利信仰を表す弥勒菩薩坐像内にあった舎利など、少数精鋭(?)の展示品でとても楽しめた。

チケットをいただいたお礼をこの場を借りて申し上げます。

*12月7日(日)まで開催中です。
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「横浜アート&ホームコレクション展」 横浜ホームコレクション(住宅展示場)

横浜美術館のすぐ裏手にある住宅展示場を使用してアートフェアが開催された。
横浜ア-ト&ホームコレクション」へ行って来た。

住宅展示場のモデルハウス1戸ずつを各ギャラリーで使用し、住宅という生活空間で現代アートを体験し、かつその場で購入可能という初の試み。
近年の現代アートフェアはホテルであったり、旧小学校であったり様々であるが、住宅でのアートフェアというのは身近な感じで良いかなと思った、最初は。

入場料千円で受付を済ますと、布袋を1つもらえる。この袋に各モデルハウスで1つずつスタンプを押してバッグを完成させる試み。モデルハウスは合計17。
しかし、先程「徒然と(美術と本と映画が好き...)」さんで、横浜美術館で「セザンヌ主義」展を見てからなら無料になるという衝撃的な情報を知った。

さて、一応一通りまわってみたのだが、17全てには入らなかった。
理由はロングブーツを履いていたから。
最初から行くと分かっていたのに、なぜ脱着が面倒なよりにもよってブーツなんぞ履いて行ったのか。
己の阿呆さに嫌気がさした。
案の定ブーツを1回1回脱いだり、履いたりというのは予想外に疲れる。
最後はだんだんどうでもよくなってしまった。

肝心な展示で、印象に残った画廊は

・児玉画廊&山本現代
ここは、富谷悦子のエッチングがお手頃価格で出ていたし、何よりいろんな作家の作品全部が、お家に合った展示がされていた。
ディスプレイで行けば、今回のベスト1だと思う。

・東京画廊 BTAP&南天子画廊
北川宏人の新作フィギュアを大量に発見。いいなぁ、やっぱり。
金色のせみがあったのは確かこちらだったはず。キッチンに稲荷寿司の如く金色の蝉がつまれていたのが忘れられない。

・ヴォイスギャラリーpfs/w & galerie16
束芋さんは、てっきりギャラリー小柳だけかと思っていたけど、むしろこちらの方が元祖なんだろうな。
京都のギャラリーさん。
普段行けないので、面白い。こちらも、展示が上手かった。

・Takuro Someya Contenporary Art
まず、本城直季さんの大きなプリント写真作品が目につく。本城さんの作品は、住宅に置いても違和感なく、いやむしろぴったり合うような気がした。ただ、サイズ自体が大きいので、置く場所を選ぶだろうな。
ここでの注目株は飯田竜太の本を使用した彫刻(?)作品。
褐色した本のページを切り取ってオブジェにし、額装されてものなど、何点か展示されていたが、いずれも良い感じ。切り取られたページはやっぱりゴミになってしまうんだろうか?
飯田竜太は、「TSCA 柏」ギャラリーで「ewiges equivalent-永遠なる同等物-」と題して個展を12/13まで開催中。

・Gallery Countach
初めて知ったギャラリーさん。こちらも住宅が高級なせいもあって、なかなか良い雰囲気。
近藤健介さんのニュー日本画が良い。白い壁に映える。

・hpgrp GALLERY TOKYO
どのアーティストがというのは、特にないのだけれど皆質が揃っていたように思う。
見ごたえはあった。


後半集中力が途切れて来たので、後の方にまわったギャラリーの印象は薄くなってしまった。
身近な感じと最初は思っていたが、さすがモデルハウスだけあって、高級住宅、広さも十分というお宅がほとんどなので、全然身近にならなかった。
ただし、家に飾るという方法については、参考になったかなという感じ。

このイベント、なかなか面白いのになぜか昨日28日(金)と29日(土)の2日間だけの開催。
お客の入りも予想していたより少なかったのではないかな?
場内には、関係者と思しき人の姿ばかりが目立ったのは残念。

*このアートフェアは終了しています。

はじめての美術館2 鎌倉大谷記念美術館

美術館に関心を持ち始めた約10年前に買った雑誌「クロワッサン」の美術館特集に、鎌倉大谷記念美術館が紹介されていた。
紹介記事に出ていたのは、ラウル・デュフィの黄色の絵画「黄色いコンソール」1949年。バイオリンが描かれていた。

そして、昨年ブログ「はろるど・わーど」さんの記事で紹介され、再びこの美術館のことを思い出した。
あれから1年。
やっと、鎌倉大谷記念美術館へ行った。

鎌倉駅を神奈川近美や鶴岡八幡宮とは反対方向に歩いて、徒歩10分。
閑静な鎌倉の高級住宅街の中、ちょっと小高い岡の途中に見つけた。

行って初めて分かったのだけれど、本当に個人宅にお邪魔して絵を見せていただくという感じ。
違うのは、玄関すぐに受付があって、チケットを購入するところだけ。

元々ホテルニューオータニの創業者一族である故大谷米一氏が長く住んでいたお屋敷を美術館にしたのだから、当然と言えば当然。
このお屋敷で絵画を見るというコンセプトが、ここでの楽しみ方なのである。

現在開催しているのは「秋の彩り」と題した展示で、大観、デュフィ、ヴラマンクを中心としたコレクション展である。
ちゃんと作品リストや作家解説を兼ねた資料も渡していただける。

1階には展示室1~3が、2階には展示室4・5のと邸内で計5室あるが、いずれも住居の中の1室であるため、広さはあまりない。
極めてこじんまりとした個人コレクションである。

ポイントは1階にあるサンルームや2階へ続く階段から見た景色。
ことにサンルームは眼下に鎌倉市内を見下ろすナイスビューで、美術品+景色まで楽しめる趣向。
恐らく、天気の良い日、大谷氏はこのサンルームでお茶など飲みつつ好きな美術品に囲まれ優雅な時間を過ごされたのではないだろうか。。。と想像してしまうのだった。

さて、デュフィも良いけれど、個人的に一番良かったのはヴラマンクだった。
・「赤い木の風景」 1953年
・「マーガレット」 1920年
・「ポプラ並木」 1950年
・「秋の風景」 1950年
・「花瓶の花」 1945年

こんなにヴラマンクって良かったっけ?と我ながら改めてその良さを認識。


入館料800円は観光地価格なのか、作品数を考えるとちと高い。
観光地にありながら、日曜が休館日なのは不思議。
そうは、言いつつ一度は行っておきたい美術館だと思う。

*「秋の彩り」は12月6日(土)まで開催中です。

はじめての美術館シリーズ1 「松岡美術館」 

初めて行った美術館をシリーズ形式でご紹介して行こうと思います。

第1回目は白金にある松岡美術館。

地下鉄南北線から徒歩で向かったのは良いのだが、ひとつ手前で左折してしまって、なかなかたどりつけない。何とか、正しい道に戻って到着したら、結構な門構えの思っていたより大きな美術館だった。

何の予習もせずに行ったので、扉を開けて目に入って来たのがギリシャ彫刻をはじめとした彫刻群。
およよ。
こちらは、彫刻メインの美術館だったのか?と予想外の展開。

ぐるっとパスを使用して無料入場。
早速1階の展示室から鑑賞開始。

展示室1 <古代オリエント美術>
私が過去訪れた日本の私立美術館でオリエント美術の所蔵品を有していたのは、滋賀県のMIHO MUSEUMとブリヂストン美術館と根津美術館(これは不確か)くらい。
なかなかお目にかかれないブロンズ像やミイラの棺に、心躍った。

展示室2 <現代彫刻>
創立者の松岡翁は、ニューヨークのオークションで一挙にここにあるヘンリー・ムアやグレコの彫刻を購入したそうだ。そもそも野外彫刻園の構想があったのだが、志が頓挫し、何とこれらの彫刻達は文字通りお蔵入りのまま時を過ごす。
ようやく、この美術館ができてお披露目となった。
やれやれ良かった。ヘンリー・ムアの彫刻良いです。こんなに沢山一気に見たのは初めて。

展示室3 <ガンダーラ・インド彫刻>
実は、一番私の血が騒いだのはこのお部屋。
何しろガンダーラ仏大好きなので、うほほ~んと叫びたくなった。
しかも、この部屋には当ブログ名である「Yogini」像があるのだ。
そう言えば、写真撮影可能だったかもしれない。あぁ、再訪の際、可能であれば写真を撮ろう。

ガンダーラ・インド彫刻と言いつつ、中国の仏像もあり、その数はかなりなもの。
1点1点御顔を拝見しつつ愛でる。

東博の東洋館でも、もちろんこれらのガンダーラ仏を鑑賞することはできるのだが、いかんせんあそこは暗いのが難点。
その点、こちらは室内も新しく雰囲気は明るいので居心地が良い。

さて、ここで2階へと向かう。
途中の階段踊り場にジャコモ・マンズーの彫刻があったが、これがまた良い。
この美術館、彫刻に良いものをお持ちだ。

展示室4 <東洋陶磁>
訪問時には特集展示として「古伊万里」展を行っていた。
その前に、出光美術館で同様の展示を見ていたので、感動は薄い。
割合にさらっと流したが、美術館の解説によれば、松岡コレクションの東洋陶磁は有名らしい。

展示室5 <日本画>
今回は、丸山応挙の特集展示を開催中。
これは良かった。
こちらに、これほどの円山応挙作品があるとは露知らず。六曲一双屏風から三幅対の作品まで8点を楽しんだ。
中でも良かったのは「鶏・狗子図」 1787年 双幅。
私の中で応挙と言えば、美しい水の流れ(例:保津川図屏風とか)を表現した作品ともうひとつ、子犬の作品。
今年の東博対決展でも応挙のピンバッチには子犬がセットされていた。

ここ松岡の狗子図は、わんこが4匹くらい描かれており、かなりわんこ度は高い。
そして、どの子もとってもかわいい。癒されるな~。
もしや、応挙も自身の癒しのためもあって、子犬の姿を何枚も描いたのかもしれない。

もちろん「山水図」(六曲一双)や「鷹猿図」(六曲一双)あり。
でも、「人物に竹図」や「趙飛燕」を描いた美人画も印象に残った。

この部屋には床の間があり、応挙の「菊図」を中心に色絵の大壺(柿右衛門)やら青花獅子香炉などとしつらえてあり、一度にガラスケース内でずらりと見るより、しつらいの中の1点として陶磁器を愛でる方が身近な感じがして良い。

<展示室6> 
普段は西洋絵画のコレクションがあるようだが、この日は「京都の日本画展」をやっていた。
知っていたのは、堂本印象と今尾景年、菊池契月、橋本関雪の4名で残りは名前を聞いたことがない作家ばかり。
一番好きだったのは、堂本印象。
この人の作風は様々に変遷したというが、一度京都あたりでまとめて見てみたい。


時期を改めて、今回見られなかった西洋絵画など、こちらのコレクションを楽しみたいと思う。
見ごたえ十分な内容です。

*応挙や伊万里の特集展示は12月23日まで開催中です。

小林孝亘 「Far Light 遠い光」 西村画廊

先週から始まった小林孝亘の個展「遠い光」に行って来た。
作品画像は、西村画廊HPをご参照ください。
西村画廊で、約1年半ぶりの個展である。まさに、待ちに待ったという感じで、わくわくしていた。
何しろ、今回の新作は今月号の美術手帳に差し込みされている小冊子「PREVIEWS」の表紙絵に取り上げられており、これが小林孝亘らしくて良いのである。

今回は油彩11点、ドローイング5点のラインアップとなったが、見どころは何と言っても油彩画11点。
一番大きな「River bank」 2008年 197 x 291cmは、東京現代美術館あたりにありそうな作品。
これが、既に売約済みであった。
印象的なのは、光のとらえ方。
そして、これまでの作品と変わったなと思ったのが「木」や「葉」が単純化されて来たこと。

冒頭に挙げた「PREVIEWS」の表紙を飾っていたのは、「Root」2008年 210 x 183cm。
11点中唯一の人物入り。
最近の人物は、皆ちゃんと両目がぱっちりと開いている。

画廊入口正面にあったのは「Cat」タイトル通り猫が1匹。
そして、次々に現れる風景は、森であったり、どこかの通りであったり、街角、石段などなど。
若干のストーリー性を持たせたということで、猫を追って街をめぐると・・・的なお話が見えてくる。
これらの風景は作家自身の自宅近辺を参考にされたとか。

そう言えば、目黒区美術館での小林孝亘展覧会イベントで新小岩近辺をご本人と歩くウォーキングツアーに参加した時も、そんなお話をされていた。

日常のありふれた風景も、小林の手にかかると光の気配、光の存在が一瞬でなく永遠に目の前に現れる。

個人的に一番気になったのは「Suspencioned Bridge」。
対象の単純化と併せて、奥行き感が以前にも増して出て来たように思う。
その最たる作品がこちら。
見ていると、吊り橋の向こうに吸い込まれそう。

入口手前には、小さな小さなひきがえるの作品「Frog」が。
小林さんは、蛙がお好きなそうだ。
先日のそごう美術館に出ていた三沢厚彦の「Animals」に出展されていた蛙の作品を覚えておられるだろうか?
何と、その作品をお買い上げになったのは、小林孝亘さん。
画廊の中では、「小林蛙」と言われていた。

私は同じくちっちゃな「リンゴ」の絵も好きだった。

冬でも光あふれる展覧会、楽しめます。

*12月20日まで開催中。

<小林孝亘情報>
文芸春秋社から今月発売された田中慎弥「神様のいない日本シリーズ」の表紙装画を手がけています。作品名は「The man on his bavk」です。
tanaka

あおひー写真展 「いつかのどこか」 GALLERY613

aohi

あおひー写真展「いつかのどこか」のオープニングへ行って来た。
会場の様子は、ご本人のブログをご参照ください。

あおひー プロフィール
某年某月 日大芸術学部放送学科卒業
その後、サラリーマン生活に入る。
2007年秋   モノクロで対象をぼかした写真の撮影を開始。
2008年9月  GEISAI 初出展
2008年11月 麻布十番GALLERY613にて初個展「いつかのどこか」を開催。

というわけで、元麻布(麻布十番徒歩7分)のGALLERY613には、今回初訪問。
まっ白い壁(漆喰?)と低めの天井、無垢板の床が居心地の良さを醸し出している。
ちょっと外国に来たような気分になった。

そんな白い空間にあおひーのモノクロ写真はぴったり。
白と黒というモノトーンで決めたのも良いのだけれど、作品自体の大きさが部屋の広さに合っていた。
単に対象をぼかしただけではないことが一目で分かる。
彼の中で、計算された結果の構図であり、ぼかしなのだ。

モノクロ写真のフレームもお手製で白。
こちらも幅と言い、サイズと言い作品にマッチしていたのは言うまでもない。

室内に置かれた木製の椅子(これがまた手作?なのかおしゃれ!)に腰かけて、作品を眺めていると、過去に失われた時間が戻ってくるような気がした。
展覧会タイトル「いつかのどこか」も、ぴたりとはまる。

いくつか「おっ」と思った作品があったのだが、タイトルをメモするのを忘れてしまった。

オープニングということで、アーティストご本人ともお話することができたのだが、制作の上でのご苦労とかお伺いすれば良かったかな。。。

GEISAI出品から、あっと言う間の個展開催。
これからもこのモノクローム路線で行くのか、趣向を変えていくのか、今後も要チェックである。

あおひーさん、個展開催おめでとうございます!!!

*11月30日(日)まで開催中です。 開廊時間:12:00~19:00 

「朝鮮王朝の絵画と日本 宗達、大雅、若沖も学んだ隣国の美」 栃木県立美術館

tochigi

最近、中国絵画にはまっている。
その中国絵画との関連浅からぬ「朝鮮王朝の絵画と日本 宗達、大雅、若沖も学んだ隣国の美」を見に栃木県宇都宮市まで行って来た。
本当は併せて、足利市立美術館の「牧島如鳩」展にも行こうと目論んだが、寝坊して宇都宮駅に着いたのは12時。結局、足利は次回持ち越しとなった。

まずは、展覧会作品リストをご参照ください。
漸く、栃木県美のHPにアップされたのですが、本展は静岡県美、仙台市博物館、岡山県美へ巡回する予定になっていて、各会場で展示作品が異なるという曲者状態。
栃木県美でも展示替えは週単位(計6週)にリストに掲載されているため、お目当ての作品、例えば伊藤若冲の「白象群獣図」「奈蟲譜」などは、いつ展示されるのかをチェックしてからお出かけしないと、「あれれ?作品はいずこ」ということになりかねないので、要注意。

当日の展示数はリスト掲載作品数(○印を数えた)は156点。いつもは、常設で使用している1階最奥の展示室も企画展で使用し、最後のこの部屋が一番見ごたえがあったりする。

展覧会構成順に簡単な感想を。
第1部 朝鮮絵画の精華
第1章 朝鮮絵画の流れ:山水画を中心に
1前期 (章立てだけで3行も費やしている・・・。)

山水画は、先週大和文華館でお勉強したばかり。そこで学んだ北宋山水画技法「蟹爪樹」(かいそうじゅ)「雲頭皴」(うんとうしゅん)などを使用した山水画をここでも見ることができる。
中国山水は、日本のみならず当然朝鮮へも伝わっている証。

作品番号12「雪景山水図」は、その技法を極端に使用していて驚いた。大和文華館で見た作品中、蟹爪樹の使用は自分でもよく理解できたが、雲の頭のように山を描いている箇所というのが、判然としなかった。
この「雪景山水図」はとても面白い。山はみんな雲のようにふわふわと丸っこい。山ではないような浮遊感が漂っていた。
さすがに、ここまで極端に使用されると私にも判る。

中国山水画のとても良い復習となった。

この後、中期・後期と続くが朝鮮絵画らしいと思う作品に目が行く。
作品番号:34 「喜慶楼榜会図」 (東国大学校博物館)
は第一印象が明らかに朝鮮らしさを感じる。

全体的な感想としては、中国絵画の模倣から始まったせいか、上手いというより一生懸命お手本を見つつ描いている的な感じを受ける。
洗練されたというより素朴な感じ。

第2章 仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ
作品番号94 「阿弥陀八大菩薩図」 延暦寺 はとても状態が良く美しい。
また、華厳経がいくつか展示されていたが、日本の経文とは異なる金色の装飾が施されており、お国柄での違いを感じた。

第3章 絵画と工芸、越境する花鳥の美
ここで、絵画ばかり続いていた内容が変わり、陶磁器が現れる。
染付やら鉄砂やら良いものがぞろぞろと。
葡萄紋と栗鼠の図柄が好まれたようで、たくさん展示されていた。

第4章 「民画」誕生
ここで一番驚いたのは「紙織法」を使用した絵画。
朝鮮版ロイ・リキテンスタイン?と思わせるスクリーン模様で、絵を浮かび上がらせる。
作品番号196:「紙織魁星点斗図(北斗七星図)」 中でも一番かっこいい。

紙織技法は手間暇かかる高度な技であったそうだ。この後若冲作品と一緒に展示されていた。

作品番号164「虎図」 はこれぞ民画という作品。虎が可愛いのなんの。今でもキャラとして十分に使用できると思う。
この他にも虎は様々に描かれていて、どれもキュートでちっとも怖くない。
想像上の生き物、伝承だけで描いたのだろうか。まるでリアルではない。


第2部 日本人のまなざし
第5章 交流のかたち-朝鮮通信使の果たした役割
作品番号226 「金鶏図屏風」 8曲1隻 三星美術館
明らかに目立っていた。何しろ背景色が赤なのである。この作品は栃木県美でしか見られない。
見られて良かった~。

この展覧会、各章だけで、十分ひとつの展覧会ができそうなテーマであり作品群。もったいない。

第6章 日本画家のまなざし-日本絵画に与えた影響
ここまでたどりつく頃には大量の作品で、かなり疲弊。
しかし、ここからがまた凄い。
印象に残った作品を列挙。
作品番号254 伝蛇足 「山水図」 重要文化財 群馬県立近代美術館
作品番号261 啓孫 「虎渓三笑・山水図」 3幅 栃木県立博物館
作品番号273 制光 「瀟湘八景図」 栃木県立博物館
作品番号277 雪村周継 「瀟湘八景図屏風」 6曲1隻

最後の最後で若冲登場
思いがけず
作品番号308 「白象群獣図」に出会う。初めての鑑賞。
jyakucyu

私が見ていない最後のます目技法の作品。想像していたのより、状態が良かった。
やはり描かれている象や動物、構図が良い。思わず見とれる。
その影響で、頭の中が白象群獣図でいっぱいになり、次の目玉「菜蟲譜」になかなか切り替わらない。
作品番号「菜蟲譜」も、ここ栃木県美だけの展示である。11/18より展示最終日まで見ることができる。
今のところ、前半部分だけを展示していた。場面替えするのかは不明。

また「白象群獣図」は、11/18~11/30のみの期間限定展示なので要注意。静岡・仙台・岡山でも展示される予定だが、展示期間は不明。

ということで、相当端折った記事になってしまった。とても全部をご紹介しきれなかった。

作品リストは、「Art&Bell by Tora」のとら様の進言で準備されていたが、リストと展示順序がバラバラになっていたりで、全体としての印象がまとまらなかったのも一因。
何しろ大風呂敷な内容なので、とても1度見ただけでは把握できない。

静岡県美での展覧会に再訪しようと思う。何度見ても楽しい展覧会であることは間違いない。

*栃木県立美術館での展覧会は12月14日まで開催中。

「生誕100年 夢と記憶の画家 茂田井武」展 ちひろ美術館・東京

東京のちひろ美術館に初めて行って来ました。
安曇野ちひろ美術館には以前行ったことがあり、その時アップした記事「安曇野美術館めぐり」はコチラ。
http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-119.html

東京のちひろ美術館も安曇野と同じく内藤廣さんの設計です。
入った途端、居心地の良さそうな雰囲気でほっとします。安曇野より手狭ですが、あたたかい感じはしており、気付いたら長居していた、そんな美術館です。

さて、今回は企画展「生誕100年 夢と記憶の画家 茂田井武」がお目当てです。
茂田井武って誰?そんな方のために美術館HPからプロフィールを引用です。↓

茂田井 武 Motai Takeshi(1908~1956)
東京・日本橋の大きな旅館に生まれるが、23年関東大震災で崩壊。中学卒業後、太平洋画会研究所、川端画学校などで絵を学び、アテネ・フランセに通う。30年シベリア鉄道で渡欧、33年に帰国。職を転々とした後、成人雑誌の挿し絵を描く。46年日本童画会入会。戦後日本の復興期に絵本、絵雑誌の仕事で活躍。54年小学館児童出版文化賞受賞。48歳で亡くなるまで病床で絵を描き続けた。


鑑賞順序を私は間違えてしまったのですが、企画展は2階の展示室から始まり、1階のもうひとつの企画展示室へと続いていました。ちょっと分かりにくい。

10代に描いた自画像から、最晩年の絵本「セロひきのゴーシュ」原画まで、貴重な原画と資料約130点が展示されています。

茂田井の作品は大きく分けると、戦前と戦中戦後で大きく変化しています。
渡欧し、帰国してから数年間は大人向けの作品を描いていたのですが、特に戦後からは童画作家としてがらりと作風が変化。
この変化がものすごい。

ただ、渡欧していた頃の画集「白い十字架」など、味のあるスケッチ、おしゃれな雰囲気のデッサンは思わず手に取ってしまいたくなるような愛らしさがありました。愛らしいといっても、やはり子供向けというのではなく、パリのエスプリ漂う愛らしさなのです。

茂田井が結婚し、子どもが生まれたことをきっかけに変化が始まります。
自身の子供のために作った絵本は、文章も茂田井が考えたのだと思いますが、とてもよくできています。

戦後すぐに創刊された児童雑誌の挿絵は、とても1年前まで戦争をしていた国とは思えないような楽しい絵で、今でも通用するような作品ばかり。

やはり画集が茂田井の良さを存分に表しているような気がしましたが、「幼年画集」「退屈画帖」など茂田井の小さい頃の記憶や幼い頃の夢などを作品化した作品は、見ているとじ~んとして来て、懐かしさなど入り混じった熱い気持ちがこみあげてきます。

宮沢賢治の「セロひきのゴーシュ」は、茂田井が「この本の挿絵ができるなら死んでも本望」というほと熱望していたものです。
病をおして、病床で描いた挿絵はさながら茂田井の魂が宿っているといっても過言ではないでしょう。

気が付けば1時間はゆうに超えていました。
こんなにも素晴らしい作家がいたとは。。。もっと大きく取り上げるべき貴重な才能だったと思います。
48歳の早逝が惜しまれてなりません。

原画の雰囲気は印刷物とは、また違った味わいがあります。
ぜひぜひ、足を運んで茂田井武の世界に浸ってみてください。

展覧会を記念して図録「茂田井武美術館 記憶ノカケラ」が講談社より出版されています。もちろん会場(美術館)でも販売していますが、通常書店でも購入可能。
motai

「茂田井武びじゅつかん」というホームページも見つけました。見ているだけでなごみます。↓
http://poche.with.mepage.jp/motai/top.html


*11月30日(日)まで開催中。展覧会はこの後、次の通り巡回予定です。
12月20日から2月1日まで 喜多方市美術館(福島県)
2009年3月1日から5月12日まで 安曇野ちひろ美術館(長野県)
8月8日から9月27日まで 神奈川近代文学館

「皇室侍医ベルツ博士の眼 江戸と明治の華」 大阪歴史博物館

ベルツ

明治9年に来日し、ドイツ人医師として東京大学医学部で教鞭を取り、医学教育に努めるかたわら、皇室侍医を勤めたベルツ博士の日本滞在中に集めたコレクション展に行って来ました。

この展覧会は日本各地を巡回しており、最初の巡回地は愛知県のお隣岐阜県だったと記憶しています。本当はその時に行くつもりだったのに、行けずじまい。もう無理かなと諦めていた矢先、大阪歴史博物館での開催を知り、馳せ参じた次第です。
旅の記事で書いた通り、閉館45分前に、文字通り駆け込みました。

さて、展覧会は
序章 いにしえの江戸の美を求めて -17世紀から19世紀にかけての日本絵画
Ⅰ章 同時代絵画蒐集家 ベルツの眼
Ⅱ章 工芸国・ニッポン -ドイツを魅了した江戸、明治の手わざ
Ⅲ章 麗しの国うるし -江戸、明治の漆器さまざま
終章 懐かしき日本の思い出 -愛し続けた河鍋暁斎。そして皇室への敬愛

個人コレクションというのは本当にその人の人となり、癖が出るようで面白い。
ベルツ博士は、今回の展示作品を見る限り作家の名前にこだわらず、広く自分の好きなもの、目にとまったものを集めていたように思う。
唯一の例外は、河鍋暁斎だろうか。

ここでは作家へのこだわり、愛情が感じられるが、展示作品は他と違って、リンデン民族博物館でなく、同じドイツのビーティハイム=ビッシンゲン市立博物館蔵であったため、もしかすると参考作品だったのかもしれない。図録を見る間もなく、閉館になってしまったので結局展示作品全てがベルツ博士が集めたものなのか、参考出品なのか分からなかった。

暁斎コレクションは終章で、14作品展示されていた。
今春に京博で行われた「暁斎」展にも出展されていなかった作品もあったので、ご紹介したい。

・「死骸の衰頽図」  
この翌日に松井冬子展でもグロテスクな内臓関係をいくつも見たけれど、この死骸のリアルさは忘れられない。何しろ死体はしっかり浮腫しており、目玉はカラスが食いちぎるという残酷な描写が画面一杯に描かれているのだ。
あまりにも浮腫具合がリアル(実際見たことないから分からないが多分こうだろうという感じ)で、暁斎は間違いなくどこかでこんな腐乱死体を見たに違いないと思った。

・「「夫婦喧嘩図」 
暁斎お得意の戯画。前述の死骸図で見せた緻密な線は消え、人物の顔や身体も丸っこく、全く対照的な作品。

・「インディアン襲撃図」
こちらは、浮世絵的な作品。なぜ、インディアンが明治時代に出て来たのか、見当もつかない。
浮世絵で言えば、三枚続きものくらいの大きさ。
これまた、先に挙げた2作品とは趣を異にする。

以上3点が横並びしていたのが一番印象的で、他の作品はあまり記憶にない。
「美人の袖を引く骸骨図」があったのは覚えている。
暁斎作品は、死骸とか骸骨がモチーフとしてよく登場するが、その理由は何だろう?その一方戯画も多いし、むしろ席画ではこちらの方が主役だ。

再度暁斎展の図録をひもといてみたくなった。

暁斎以外の作品では、根付、陶磁器、工芸、日本画など分野の異なる様々な作品が出ていて、楽しませてくれます。

*12月8日(月)まで開催中。大阪歴史博物館は、火曜日が休館日です。ご注意ください。

「崇高なる山水-中国・朝鮮、李郭系山水画の系譜―」 大和文華館

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全てはここから始まった。まさに、そんな感じがする展覧会でした。
金銭的に厳しくても、東京から出かけた甲斐がありました。

展覧会の概要です(大和文華館HPからの引用)
約千年前、華北の雄大な自然に根ざした新しい山水表現が生まれました。五代・北宋の画家、李成と郭煕によって大成されたその画風は、李郭派と呼ばれ、東洋山水画の古典として、現代に至るまで、強い影響力を持っています。
本展では、宋・元時代を経て清代にいたるまでの中国山水の名品と、特にその影響を強く受けた朝鮮山水を展示いたします。国内所蔵の李郭系山水画のほぼすべてが一堂に会する、二度とない貴重な機会となります。李郭派は東アジア山水の主流でありながらも、今まであまり紹介されてきませんでした。

李郭派山水、日本初の展観です。

ピンクで着色した部分で分かるように、過去例のない展覧会であったようです。
惜しむらくは、目玉作品の何点かが10/28~11/9の展示期間に集まっていたため、私が行った11/15には見られなかったこと。
でも、こんなに凄い展覧会に気付かなかったので、仕方ないです。。。図録で我慢。

時代を追って作品展示されていました。
<李郭派山水の誕生 -宋から元へ->

・許道寧 「秋山蕭寺図」 北宋時代 藤井斉成会有鄰館 <重文>
全期間を通じての展示作品。学芸員塚本麿充氏によれば、本展最重要作品のひとつ。
好みではないが、これは好き嫌いの問題ではなく、李郭派山水を語る上で重要なのだろう。
横長の巻物風の作品。

・「秋景冬景山水図」 <国宝> 二幅 南宋時代   金地院
サイズは各128.0×55.0センチと作品は徐々に大きくなる。
国宝とはキャプションを見るまで知らなかったが、見た瞬間「あっ、すごい」と思った作品。
もとは、四季山水図として他に春、夏、冬の三幅あったらしい。
南宋絵画の傑作と解説にあったが、ごもっともと言う感じ。他の山水はどうしても時代が古いため茶色に変色し、墨線も判然としないものもあったが、この作品は非常に状態が良く、しかも線が美しい。

・「明皇避暑宮図」   郭忠恕(款) 元時代  161.5×105.6  大阪市立美術館
これぞ、中国の技!山中にそびえる楼閣を緻密な線で描いた作品。
解説によれば「界画」という定規を使用した線の技法を使用しているため、これだけ真っすぐで細かい線が引けたのだった。定規で絵を描くことが既に許されていたことに驚く。

<李郭派山水の展開 -高麗から朝鮮王朝へ->
日本に残る宋時代の李郭派山水画は数少ない。あっという間に展開として高麗・朝鮮絵画にうつる。
ちょうど栃木県美で朝鮮絵画の企画展が始まったところで、予習としてタイミングは最適。

ここでは、前期に作品展示が集中しており、この日の目玉は
・「瀟湘八景図屏風 <重文> 八曲一隻  天文8年(1539) 尊海賛   大願寺
李郭派山水が目指した空気感を表現した作品。雄大な風景を八曲一隻で描ききる。

<李郭派山水の受容と復興 -明清時代-
時代はどんどん下って行く。ここからの作品数がもっとも多い。
1mを超える大画面山水画が続々と連なる中、私の注目は以下の作品に。

・「雪景山水図扇面」  蒋こう 金箋墨画 京都国立博物館
金箋を下地に使用しているため、余白でさえも鈍く光り美しい。

・「山水楼閣図冊」 玉雲筆 清時代 東京国立博物館
ページ替えがあるため、私は全12図あるうちの第11図を見た。
こちらは着色されている、特徴的なのは、夕日の沈む方向へ円になって鳥たちが飛んで行く様子である。渦になっている。
画面手前では放牧された牛と牛飼いのが描かれている。のどかな夕景。


最後の最後に複製であるが、郭煕筆の「早春図」 台湾故宮博物院 が展示されていました。
現存する郭煕唯一の真筆作品であり、傑作中の傑作と言われています。
複製であっても、十分に迫力があったのはさすが元祖です。

全作品を見終わったら、自分が中国の美術館にいるような錯覚がありました。それほどまでに濃密な山水画の空間と化していたのです。


今回の企画展でひとつ覚えたのは「蟹爪樹」(かにそうじゅ)という言葉と技法。
古い樹木の枝を蟹の爪のように描くことから付けられた技法です。確かに今回集められた作品の大半に「蟹爪樹」が使用されていますが、日本の絵画では見た記憶がありません。
以後、日本でも「蟹爪樹」が使われていないか、要チェックです。

この他、画面に吸い込まれるような構図、雲のように描かれた山と解説にありましたが、最後の雲のような山と言うのが、作品を目の前にしてもピンと来なかったのは残念。

鑑賞最後になって、今回の展覧会を担当されている学芸員塚本氏のギャラリートークが始まり、大勢の観客に囲まれていらっしゃいました。この日は大和文華館は大勢の来場者がいたのです。相変わらずの楽しそうな話しっぷりで、本当に作品が、美術がお好きなんだなと毎回感心してしまいます。

*この展覧会は11月16日に終了しています。

「国宝 三井寺」展 大阪市立美術館

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半年前からチラシが手元にあった「国宝 三井寺展」へ行って来ました。
行く前からの最大の懸案事項は「日本三不動」の一つとして名高い仏教絵画の至宝(国宝)「不動明王像(黄不動尊)」の公開。秘仏中の秘仏としてチラシに写真を掲載することすら憚られるというから、その秘仏ぶりがお分かりでしょう。

その秘仏絵画は、11月26日(水)~12月14日(日)までの展示であったため、当初大阪行きはこの期間に合わせようと思っていました。が、その計画を変更させたのが大和文華館の展覧会。
「国宝三井寺展」の作品リストを見ると、5期に分けて展示替えがありますが、大きく分けると11月16日までが前期、それ以後を後期(後期の方が1週長いです)になったため、まずは前期の展示を見ることにしたのでした。

申し遅れましたが、この展覧会は2009年 2月 7日〜 3月15日 サントリー美術館(東京) ・2009年 4月 1日〜 5 月10日 福岡市博物館に巡回予定ですが、何をどこに出すのか、各会場での出品リストがわからない!結局展覧会の図録最後の作品リストに会場別に展示されるかどうかが分かるようになっていました。
一番のお目当ての秘仏黄不動は、もちろん全会場にお出まし!されますので、どうぞご安心ください。
懸念されるのは、会場の手狭なサントリーで全作品をどうやって展示していくのかということ。
大阪市美の展示替えの比ではないような気がします。。。

大阪展での見どころです。

1.1階展示は目玉ぞろい!

作品リストの順序と展示順序が一致していないため、分かりにくいのですが、目玉作品と言える、仏像群や狩野派の障壁画は、ほぼ全て1階の第二会場に展示されています。
恐らく混雑を見越してのことだと思いますが、天井が4m近くある大展示空間に障壁画もどっか~んと疑似三井寺観学院客殿空間を創出しています。

時間がない方は、1階だけ見ても良いくらいです。

2.重要文化財の「不動明王像(黄不動尊)」鎌倉時代 はすごい!

智証大師円珍の夢に現れた不動明王を作成したと言われています。秘仏であったがゆえ、日の光にさらされることが少なかったのでしょう。往時をしのばせる着色が鮮やかに残っています。
こんなにも色が残っている鎌倉仏を見たのは初めてのこと。
黄不動と言われていますが、黄色というより金色に近い。
鈍く金色に光不動明王像の着衣の色に大注目です。昔は仏像って全てこんなに鮮やかな色だったのではないかとイメージが浮かんできます。

3.観学院客殿 一之間二之間を再現!

「金毘羅宮書院の美」展を思い出させるかのような再現展示です。本物を持ってこれない箇所は複製画ですが、照明を落としていることが幸いし、より本物らしく見えます。
また、東博のおはこをいただく形で、ろうそくの灯りと普通の照明(蛍光灯)の2種類の照明による見え方の違いを楽しめます。
問題は間隔で、3分(ろうそく)・6分(通常照明)で設定されていますが、6分の長さに耐えきれず、ろうそくの灯りを見ないうちに、その場を去って行ってしまうお客さんが多いとか。
係の方によれば、今週から6分を短縮するとのことです。

このコーナーは本当にさながら観学院にいるような気持がして来ます。
もちろん、狩野光信の「四季花木図」の壮大さは、ぜひ足を運ぶ価値があると思います。


作品単位で印象に残ったものたちです。

・国宝 「五部心観」 唐時代 9世紀

円珍が唐より持ち帰った密教図像ですが、こんなにも美しいとは思いませんでした。
美しいといっても色がある訳ではありません。図像の線や紙そのものが美しい。2階の第1会場で見た模本を見た時には「美しい」という感覚はなかったのに、オリジナルの迫力でしょうか。

注意:大阪では完本が展示されていましたが、東京での展示はありません。東京では前欠本が展示されます。

・重要文化財 「如意輪観音坐像」 平安時代

三井寺観音堂のご本尊です。行く前にもっとも楽しみにしていた仏像のひとつ。
穏やかで、ぽっちゃり系の愛らしい観音像です。頭の飾りにご注目ください。折れそうなくらい細かく頭高になっていますが、欠けることなく美しさを存分に発揮です。法輪を持つ指先が何とも言えず良い感じで惹かれます。

・国宝 新羅明神坐像[しんらみょうじんざぞう] 平安時代)

円珍が唐から帰国する際の船中に現れ、三井寺に導いた異国の神の彫像。
神像なのですが、一目拝見したら忘れられないような造形です。ある種デザイン化されていると申しましょうか。こちらも秘仏中の秘仏であるため、チラシ掲載されていません。

・国宝 智証大師坐像(御骨大師) 平安時代
像内に智証大師その人の遺骨を納めてあると言われています。この坐像もかなり状態が良いです。

・不動明王坐像 平安時代本最古級の不動明王坐像。
特徴はよだれをたらしたかのような口許。この真っ白な色は最初から付いていたのだろうか?後に補色された???怖いです。

・梵鐘 重要文化財
三井寺と言えば、「三井晩鐘」を浮かべる方も多いはず。しっかり梵鐘の展示もありました。アート系ブログ「Art & Bell by Tora」のとら様を思い出しつつ眺めました。


最後に展覧会HPより概要です(一部抜粋)。

今年は、密教の神髄を伝えた円珍が唐から帰朝して1150年目にあたり、これを記念して特別展を開催します。
本展では、普段は拝観できない秘仏中の秘仏をそろって公開するとともに、狩野永徳の長男で没後400年を迎える御用絵師・光信が子院の勧学院に描いた桃山時代の華麗な障壁画の数々、最新の調査で日本最古級と確認された不動明王坐像[初公開]など、国宝・重要文化財約60件を含むおよそ190件をご覧いただきます。


*大阪展は12月14日まで開催中です。

「松井冬子」展 平野美術館

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怖いもの見たさ+ミーハー心で浜松市内の平野美術館で開催中の「松井冬子」展へ行って来ました。

正直なところ、松井冬子の作品は苦手である。
が、つい行ってしまうのはやはり作品が上手い、対象はグロいが技巧的には素晴らしいからだと思う。

今回は成山画廊ではなく美術館での個展ということで、出身校の東京芸大の協力のもと32点もの作品を集めている。
平野美術館は、松井の展覧会があるまでその存在を知らなかったが、浜松駅からタクシーだと5分程度で割合に近い。ビルの2階、同じ経営のギャラリーと隣接している居心地の良い空間であった。

さて、最初は過去の作品のドローイングやら下絵などでウォーミングアップ。
そして、いよいよご対面である。

う~ん、重い、不気味。
一番困ったのは、恐らく作家自身の言葉を使ったであろう作品解説。
松井冬子は自作を語る時、いつもやたらと難しい言葉を使う。特に今回はどの作品解説でも精神病理に関するワードがこれでもかと繰り返し出て来た。

松井さんは、その類まれなる美貌でも女性誌のグラビアを飾るなど、方々でご活躍であることは今更申し上げるまでもない。
でも、この方外見とは裏腹に、精神的に非常に脆いというか危ないものを抱えていらっしゃるような気がしてならない。

もっとも「うっ」と来たのは、展覧会の後半にポツンとあった小さなドローイング作品(タイトルなし)2001年成山明光氏蔵。そこに描かれていたものを私はここでご紹介しようとは思わない。
それほどまでに衝撃的だった。
こんなものを描くって一体どういう神経ナンダロウ???と思ったことだけは確かだ。

その前日、ベルツ展で河鍋暁斎の腑わけ図も見たが、松井作品が持つ暗く病的な雰囲気はなかった。むしろ、没故作家では月岡芳年に近いかもしれない。

作品を語るのに、あれほど過剰な説明は不要なのに、読んでも意味が頭に入ってこないのは彼女の思考・嗜好にこちらが付いていけないからだ。
襖4面の大作「この疾患を治療させるために破壊する」「ただちに穏やかになって眠りにおち」(いずれも成山画廊蔵)は初見だが、4面襖の大作であるが、制作背景を読むとぞっとして、鑑賞どころではない。夜桜もどす黒い闇に染まっていくようだ。

印象的だったのは会場最後に、松井の発売されたばかりのDVDが流されていて、皆作品鑑賞よりそちらに写っている松井冬子自身に釘付けになっていた。

私にはそんな松井が妖婦のように見えた(失礼ご容赦ください)。
素顔の方がかわいい顔なのに、上野千鶴子さんとの対談を読んだら、自分の中で疑惑が解決した。

*12月14日(日)まで開催中です。

「風景ルルル-わたしのソトガワとのかかわり方-」 静岡県立美術館

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昨日アップした旅程の中で、どの展覧会から書こうか迷ったが、やはりこの静岡県美の展覧会からご紹介したいと思う。

現在、私個人が公立美術館の中で一番注目している美術館、それは静岡県美である。その静岡県美が6年ぶり!に開催する現代アートの企画展、しかも巡回なしのオリジナル企画。
果たして、どんな内容なのか訪れる前からワクワクしていた。

まずは静岡県美のHPを引用させていただき展覧会の概要について。
この展覧会では、現代作家8人の表現を「風景」を切り口に読み解きご紹介します。
本展でとりあげる風景表現は、断片的で、どことなく軽く、ゆるい
ささやかで、流動的であるといった点が特徴といえます。
私たちはいま、共有できるコミュニティー、フィールド、理念、理想が成り立ちにくい時代に生きています。
個々に多様な背景と内面を持ったわたしと、そのわたしを取り巻く複雑な外界(ソトガワ)とのかかわり方を、この断片的でゆるい風景は、映し出しているようです。
絵画だけでなく、写真、映像、インスタレーション作品を交えてご紹介します。
「風景」をコレクションの柱とする美術館が選んだ、時代の感性との出会いをお楽しみください。


どうやら、キーワード「どことなく軽く、ゆるい」のようです。
そして、そんなイメージから学芸員の方が選出した出品作家さんはこちらの8名(敬省略)。
・高木紗恵子
・照屋勇賢
・柳澤 顕
・鈴木理策
・内海聖史
・ブライアン・アルフレッド
・佐々木加奈子
・小西真奈

名前すら知らないという作家さん(ゴメンナサイ)は柳澤顕と佐々木加奈子とブライアン。
パンフレットに記載されている作家のプロフィールを見ると、ブライアン、柳澤、鈴木の3名以外はみな「VOCA賞」に入選していることに気付いた。
なるほど、だからブライアンと柳澤は知らないんだ。

結局よくあるグループ展のような形式を取っているのだが、それでも見ごたえある内容だったのは、やはり作家一人一人の力量によるものが大きく、出品作品が良かったというのが最大の理由。
作品そのものに力があるのが第一だが、同じ作家の作品でも映像と絵画のコンビネーションや絵画でもドローイングや制作にあたってのメモの組み合わせ、写真など分野をバランス良く見せていた。

さて、作家ごとに感想を少し。

・高木紗恵子
絵画(でいいのかな)8点。最初見た時、大好きなゲルダ・シュタイナー&ユルツ・レンツリンガーのアートを平面化したのかと思った。受ける印象がそれほど近かったため。
冒頭にあった「業火」「ワイルドライフ」シリーズ、どれも系統は同じだがウレタン塗装のアクセントが効果的。

・照屋勇賢
大人気の照屋さん。今年の7月、原美で「アートスコープ」に出品されていた。
出品作は、おなじみトイレットペーパーの芯を使った「コーナーフォレスト」や「Dessert Pruject」シリーズなどと新作?「告知-森」シリーズ(2008年)が見られる。

さらに、イチオシなのが「天地創造のためのレシピ」2008年である。ペーパーナプキンに色鉛筆で構想メモと作品イメージが何枚も何枚も描かれている。殊に面白いのは、時折添えられた作家の言葉。
例えば、「青い宇宙ゼリーの上に、コンペイトウ時代がやってくるように」とか「溶岩ゼリー」「シリアル朝」とか言った具合。
こんなこと考えながら制作したら、楽しそう~☆

・柳澤 顕
京都市芸術大学油画専攻を卒業された1980年生まれ、若い!ちなみに高木も京都市芸卒の1980年生まれ。
初めて作品を見たが、コンピューターを使用して半自動的に作画されたもの。これに人を仲介として組み合わせを変えて作品を作り出していくらしい。
ちょっと苦手。

・鈴木理策
故郷熊野を撮影した「海と山のあいだ」シリーズが9点。
このコーナーはもっと仕切って、照明を落として欲しかった。漫然と写真を並べただけでは、東京都写真美術館の展覧会を見ただけに、ちょっとつまらないかな。

・内海聖史
内海もつい先ごろ東京都現代美術館の「屋上庭園」に出展していたのが、記憶に新しい。
が、今回は大ヒット。
照屋と内海が8名の中では、一番インパクトがあった。
内海の作品は美術館のエントランスホールの天井付近壁面に文字通りの大作「色彩に入る」2007年、「色葉を踏む」2006年が展示されている。これ、必見です。

更に展示室には「十方視野」2008年がある。基本的に作風に変化はないが、静岡バージョンは見せ方がとても良かった。部屋に入った瞬間、「おっ」という感覚を味わえる。

更に、お楽しみは常設であったが、これは最後にご紹介。

・ブライアン・アルフレッド
SCAI THE BATH HOUSEの扱い作家さん。
絵画、ペーパーコラージュ、アニメーションとバラエティに富んだ展示。
一番良かったのはアニメ「There is Light That Will Never Go Out」2006~2008年。
3分34秒と程良い長さ。映像は、この作家の個性を一番うまく表現する手段なのではないだろうか。

・佐々木加奈子
「アンネ森に入る」シリーズ、「放課後シリーズ」など、自身を圧倒来な存在感をもった風景(歴史的に有名な場所など)に写し込み、作家のイマジネーションを写真化する手法。

驚いたのは「アンネとの会話2」2008年というビデオインスタレーション。3分40秒。
床にあるスクリーンを下を見下ろす状態で鑑賞するのだが、映像にあるのはトロッコと架線。
ここからは見てのお楽しみ!

・小西真奈
2006年のVOCA賞受賞から2年。
受賞作の「キンカザン1」「キンカザン2」に久々の再会。他新作2点を含め計8点の絵画を展示。
風景の中に、背を向けた人物が描かれている。
新作も大して変化はなく、鮮やかに風景と人物が描かれている。どこか懐かしい感じ。


展覧会のテーマであるゆるく軽い風景との関連性は、作品リスト兼作家プロフィールをご参照いただくとして、私が一番関連性を感じたのは常設展「Resonance(レゾナンス)-共振する感覚」での展示であった。
静岡県美所蔵の名品と「風景ルルル」出品作家の作品とのコラボレーションである。
同様の試みは、今年愛知県美術館「タイムスケープ」展で行われたと記憶しているが、静岡は見せ方が上手い。

・高木紗恵子×椿椿山
・小西真奈×岡鹿之助・長谷川潔・原勝郎
・鈴木理策×狩野探幽
・柳澤顕×浦上玉堂
・佐々木加奈子×アンぜルム・キーファ
・内海聖史×小松均

最後の小松均×内海聖史のジョイントは素晴らしかった。
巨大「赤富士 上下」と「三千世界」の共演であるが、必ず後ろのガラスケースを見ることをお忘れなく。

これらの組み合わせはもちろん、現代美術は専門外という静岡県美学芸員さんのイメージでのカップリングである。選抜理由もそれぞれ、解説されているので納得。
こちらの展示の方が、テーマ「風景」に合致していたと思った。

なお、会期中1階で草間弥生の「水上の蛍」も鑑賞可能です。

また、静岡市の「旧マッケンジー邸」と「中勘介文学記念館」を使用しての関連企画展も昨日まで開催されていましたが、こちらは残念ながら時間がなく見送ることに。。。

ワークショップやアーティストトークなど静岡市をあげてのイベント化をしようという努力が伺われます。

展覧会会場入口には展覧会のイメージ映像作品まで置いてあった。こちらもあの高木正勝さんが作成にかんでいるという代物。
展覧会イメージビデオって他ではあまり見ない。こちらの出来も言わずもがなGOOD。行かれた方は要チェックです。

なお、展覧会の詳細や旧マッケンジー邸などの展示についてはこちらのブログ「しぞーかでアートざんまい」さんで紹介されています。


*展覧会は、12月21日まで開催中。

大阪⇒奈良⇒浜松⇒静岡の美術館への旅(旅程編)

土曜日から1泊2日で大阪まで行って来ました。
宿泊は名古屋の我が家なので宿泊費は浮いたのですが、交通費はかかります。しかも、直前で決めたので、新幹線の早割りも効かず、かくなる上は得意のJR東海道在来一部利用でした。
以下コメントを交え大ざっぱな旅程です。

11/15(土)
6:00発 のぞみ1号で新大阪へ。
本当は始発など使う予定はなかったが、秋の行楽シーズンで6時台、7時台の新幹線禁煙指定席はほぼ満席。乗り継ぎの都合もあって、結局始発で東京駅から自由席を利用。
東京からなら、まず座れるのがよろしい。今回はエクスプレス+ICチケットレスを利用した。エクスプレスは以前から会員だったが、ICチケットレスは初利用。しかし、モバイルスイカだと何かと不便。
まぁ、こんな話は横においときましょう。

8:25 新大阪到着。
自宅を出る時は、真っ暗だったのに新幹線で寝ていて目覚めたらすっかり朝だった。
新大阪駅で、遊行七恵さんおすすめの1day斑鳩チケット(大阪市営地下鉄ヴァージョン)1600円を購入。この1枚で随分助かった。大阪市営地下鉄乗り放題、近鉄奈良・大阪線乗り放題、更に予定していた大和文華館入館料2割引である。
新大阪から御堂筋線で天王寺へ向かう。

9:30 大阪市立美術館で開催中の「国宝 三井寺」展へ。
感想は後日。後半1階の展示が目玉であったと思う。割と早めにまわったつもりだが、予想通り2時間かかってしまった。

11:50 天王寺地下街で昼食
昼食後、御堂筋線でなんばへ向かう。
難波地下街で帰りの近鉄アーバンライナーの格安チケットを買い、座席指定を受ける。これでひと安心。近鉄難波駅より奈良学園前へ向かう。

13:00 大和文華館「崇高なる山水-中国・朝鮮、李郭系山水画の系譜-」展を見る。
この展覧会のために関西まで急遽行くことになった。翌日の16日で会期終了。自分の中でブームになっている中国絵画、しかも日本初と言われる李郭系山水画の展覧会だというので、どうしても見ておきたかった。
やはり、2日間で一番感銘を受けたのがこの展覧会だった。

14:10 松柏美術館「革新者たちの挑戦 ~よき人よき友 松篁の見つめた人々~」展を見る。
全く予定していなかったが、大和文華館で企画展を知り、良さそうなので無理矢理予定に組み込んだ。鑑賞時間は15分弱。タクシーで学園前に引き返す。ここは、徒歩で行けないのが辛い。

15:10 近鉄けいはんな線吉田駅 徒歩3分の「レジェール・ソルティ」到着。
こちらも遊行七恵さんのオススメケーキ店。
しかし、ここで障害が発生。松柏美術館を組み込んだため、最後に残っている大阪歴史博物館の閉館時間が迫っており、ゆっくりしている時間があまりなかった。
で、店に入ったら喫茶コーナーのテーブルはいくつか空いていたので、座ろうとしたら、「お待ちのお客様がふた組いらっしゃって・・・」と店員さんがおっしゃる。
ふた組のうち、最初のひと組が問題だった。何と、6人の大阪のおばちゃん集団。狭い店なのに、6人席ってそもそも無理なんじゃ・・・と心の中で思ったが、おばちゃんたちはどこ吹く風、店内でおしゃべりに花を咲かせている。先に次の2人や1人の私を通せば良いのに、頑として店は6人が入らないと通せないと言う。
しばらく待ったが状況変わらず。ここまで来て手ぶらで帰るのは厭だったので、ケーキをテイクアウトするしかないかと思ったら、6人のおばちゃんのうち1人が先に帰ることになった。
ここで5人になったため、4人席に椅子ひとつ付けて、やっと中に入って行った。
漸く道が開けた!
外のテラス席で、はちみつ入りのロールケーキとコーヒーをわずか5分でたいらげ、駅に向かった。

ケーキは、甘さ控えめ、スポンジやわらかしっとりふんわり、しかも中からはちみつがとろっと出てくるというすこぶるつきの美味しさでした。これで280円はお値打ち。

16:10 大阪歴史博物館到着。「江戸と明治の華 -皇室侍医ベルツ博士の眼-」を見る。
思ったより、展示作品数が少なかったので50分もあれば十分だった。
やはり最後の暁斎作品が良かった。

17:00 谷町四丁目駅より地下鉄で鶴橋へ向かう。
地下鉄の鶴橋駅で列車を降りると、何やら焼肉の香が・・・。地下なのに焼肉?と思ったら、地上上がってすぐに、一大焼肉街があった。これがかの有名な鶴橋の焼肉。
帰りの近鉄特急まで時間があったので、あたりをぶらつく。奥の方にある「大吉」という店で「ピビンバ」をテイクアウトした。ここのテイクアウト(700円)はビニール袋入り。動物の餌のようだが、自宅に帰り、フライパンで石焼もどきにして食すと実に美味だった。感動~。一緒に付いてた鳥だしスープがとっても合う。次から大阪の帰りは鶴橋から近鉄利用にしようっと。

大吉とは逆方向にご夫婦二人でやっているたこ焼き屋があった。欲しくて並んだけど、電車の時間が迫り、購入に間に合わなかった。無念。

20:08 名古屋着

11月16日(日)
9:20 名古屋駅発JR東海道線にて浜松へ向かう。

10:38 浜松駅到着。
ここから遠鉄バスで元浜町の平野美術館を目指す。
バスは30分に1本だったが、運良くすぐに来てくれた。

11:00 平野美術館「松井冬子」展を見る。
松井冬子初の美術館での個展である。地元静岡森町近くの浜松での展覧会ということで、午前中から思ったよりお客さんが入っていた。

11:40 元目町のコーヒー屋ポンポン到着。
こちらのお店で私は長いことコーヒー豆を購入している。普段は通信販売だが、今日は平野美術館から徒歩5分程なので、お店に寄ることにした。豆専門になってから、お店に行くのは初めて。
ちょうどカップオブエクセレンスのコスタリカ第1位の豆が出ていたので、大奮発して250g購入。
他にパナマとカプチーノを試飲させていただいた。あのカプチーノって無料だったのかな?

マスターがコーヒー教室でご不在だったのだけれど、お店を出てすぐ戻って来られたようで、追っかけて来て下さった。おいしいコーヒーの淹れ方を教わり、早速今やってみたのを飲んでいる所。
コーヒーでなく、コーヒー豆のジュースのようです!!!マスターはじめ奥様、お店の方ありがとう☆

12:32 浜松発JR東海道線で草薙へ向かう。

13:50 草薙駅到着。
バスで静岡美術館へ向かう。

14:10 静岡県立美術館到着。「風景ルルル」展を見る。
到着後すぐに館内のレストラン「エスタ」で昼食。ここは、日本平ホテルが運営しており、食事のレベルが高い。風景ルルル特別ランチをいただく。美味也。

展覧会の方も大変良かった。静岡県美では久々の現代美術の展覧会ということで、新たな挑戦だったと思うが、大成功ではないだろうか。観客の入りもまずまず。
照屋勇賢、内海聖史、小西真菜、鈴木理策らなど、作家の選定も成功の秘訣ではなかろうか。
常設展とのジョイントも高く評価したいと思う。この展覧会オススメです。

16:13 静岡到着。駿府博物館へ向かい「ヤマタネコレクション「華麗なる日本の美展 ~大観・松園から現代作家まで~」を見る。
先日の町田市立博物館での日本画展覧会でその存在を知った美術館。
初訪問だが、意外や意外、普通のビルの2階を美術館としていた。
特別展ということで、入場料千円だったがちと高いような気がした。

17:18 新幹線こだま号に乗って、東京へ戻る。ここでもICサービス利用。

18:47 東京駅到着。

明日より、個々の展覧会感想をアップの予定です。お付き合いいただければ幸いです。

2008年11月14日 鑑賞記録

本日は、午前中に所用があって勤め先にお休みをいただきました。

午後からは早速鑑賞です。

1.太田記念美術館 『国貞・国芳・広重とその時代 -幕末歌川派の栄華-』後期展示
26日までといよいよ会期も迫って来たので、おっとり刀で駆け付けました。
後期は、前期にも増してパワーアップしてました。

国芳の三枚続がたっくさん。しかも未見のものばかり。
更に三代豊国(国貞)の役者大首絵がぞろぞろ。ボストンで見た国政も良いが、三代豊国も良い。

2.たばこと塩の博物館 
風俗図の続き。今日から新しい屏風絵が出ているのと、前回のベストだった桜下弾弦図が16日で展示終了なので、お別れを言って来た。
更に今日のお楽しみは「大阪冬の陣図」の両隻そろい踏み。屏風は2つ揃ってなんぼだよな~などと改めて思ってしまった。片方だと魅力も半減するような気がする。
「大阪冬の陣図」は片方だけ前回も見ているのに、ふたつ並ぶと壮観。とにかくサイズも大きくて展示ケースいっぱいいっぱい。
他の屏風とは趣が異なるので(合戦の屏風だから)、異質な雰囲気を漂わせていた。

もっと早く見終わるつもりだったのに、やはり1時間を経過していた。
しかし、細かな展示替えだと学芸員の方々も大変だろう。扱うものが大きいし。

3.東京国立博物館 平常展示
ここ最近、平常展示をじっくり見る機会がなかったので、今日はじっくり本館に腰を据えて、夜間拝観を利用し隈なく鑑賞。
大琳派展は4時半過ぎでも20分待ちだった。更に7時に帰る道すがら、ガンガン入場者が入って行くのも見かけた。大盛況。皆さん図録を買われているようだ。行き違う人の多くの手に図録がぶらさがっている。

さて、今日の平常展では1階の仏像が素晴らしかった。
興福寺ゆかりの仏師康円作の文殊菩薩及び脇を固める4体の善財童子含め4体。
まるで生きているかのような写実性あふれる彫刻作品(・・・と言ってしまってよいものか)。

もうひとつ、感動したのは2階の水墨画。
伝周文作の「四季山水図」。
一目見て、ひきこまれて山水に近寄ってしまう。そんな存在感があった。
「伝」とつくことから分かるように、周文の弟子など後継者の作という説が強いそうだ。

最後は、感動までは行かなかったけれど見られて嬉しかったもの。
岩佐又兵衛の扇子絵「風俗図」。
退色と損傷が激しくて、描かれているものが判然としないのが、感動にまで至らなかった理由。
浮世絵コーナーの入口にあったので、ちょっとびっくり。

おまけは、応挙館の杉戸絵で「朝顔狗子図杉戸」が、応挙キャラのわんこがいっぱい。
杉戸絵になるとサイズもそれなりに大きくなる。
でも、やっぱりかわいいなぁ。

浅井忠の水彩画をはじめとした個人コレクションも良かったし。

今日も満足させてくれる東博でありました。

「漆、新しき経験 池田巌 1960-2008」 菊池寛実記念 智美術館

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大倉集古館やホテルオークラのある通り沿いに瀟洒な外観をしたビルがある。前を通った時に、それが美術館であることが分かり、いつか入ってみたいと思っていた。
今回、さる方にチケットを頂戴したので、早速行って鑑賞と相成った次第。

展覧会は先週の日曜美術館アートシーンで放映されていた「漆、新しき経験 池田巌 1960-2008」
である。チケットを頂戴しなければ、まず自分で見に行こうとは思わない分野、すなわち私の苦手な工芸系である。

本当に、食わず嫌いは良くない。建物の魅力と相まって、良い展覧会であった。

美術館HPによる展覧会概要は以下。

漆と竹の作家、池田巖(1940~)は、花生や茶器などの茶の湯のための器物を主に制作し、素材の魅力を生かしたシャープで現代的な作風は高い評価を受けています。
本展覧会では、3メートル近い大きさの最新作から古典的な茶器まで、これまでの池田の仕事を作家自選の60点余の作品によりご紹介します。


智美術館HPへのリンクはこちら。
http://www.musee-tomo.or.jp/exhibition.html

何より驚いたのは、展示方法、展示デザインの良さである。
これが作品の良さを一層際立たせているのは間違いない。同じ作品を通常の美術館で展示しても、今回のような感動を得られなかったのは間違いない。

まず、玄関ホールから地下展示室へのアプローチ。
長くゆったりとしたらせん階段の壁面には銀の和紙がはられ、その上に書家の篠田桃紅氏の「いろは歌」の料紙が「真・行・草」の漢字をかたどったコラージュ作品としてほどこされている。最大の特徴はガラスの手摺り。これはガラス工芸家の横山尚人氏によるもので、このガラスの手摺りに導かれて下へ下へと誘われる。

このアプローチこそが、美術館創立者(菊池智)のアイディアであり美意識の発露である。

展示室に降り立つと、そこからはもう美の世界一色。作家が用意した世界に自分も溶け込んでいく。

展覧会の冒頭に、池田巌の漆塗りの竹オブジェが出迎えてくれる。家の玄関にある飾りのよう。

新作のオブジェも悪くはないが、池田作品と初めて触れた私には、これまでの作品である茶器が好ましかった。
茶筒と思しき小さな円筒は、種々様々な姿をしている。
これが竹でできているとは、言われなければとても分からない。
とにかく、形状がこの上なく美しいのだ。フォルムの重要性、次に配色。
思わず手に取って愛でたくなるように愛らしい。

「金地にレモン形」はタイトル通り、茶器の蓋を上から見るときれいなレモン型をしている。
ごくごくシンプルなのに、これほどまでに惹かれるのはなぜだろう。

照明は落としてあり、黒い空間の中に作品が浮かび上がってくるような、いや役者が舞台に立った時のように1点1点の作品が、緊張感を持って置かれている。

今回の目玉である3mの最新作は白い砂上にある。
作家曰く
「大作2点は智美術館に何度となく足を運んでイメージし、想を練りあげた作品。白砂の空間と黒砂の空間、ここにどんな作品を置くかが一番問題だった。何度も何度も立ち尽くして作品をイメージし、頭の中で鮮明に固めたが、後はそれをいかに近づけるか。」
自分自身との対話の中で生まれたのが今回の新作。

2005年、池田は漆を塗った竹をたたき割り、引き裂き、「用」をもたない作品を新たに生み出した。今回の最新作は更にそこから一歩進んだ。
作品の前にある長椅子に座り、しばし呆然とする。
宇宙的でもあり、神秘的でもあるオブジェが目の前にあった。

参考作品として、アルブレヒト・デューラーの「聖エウスタキウス」やドナルド・ジャッドの抽象作品が併せて展示されているが、池田作品とマッチしていた。

誰にも邪魔されず、静かな鑑賞を楽しめる。
また、足を運びたくなる美術館であった。

*11月24日(月・祝)まで開催中。

「三沢厚彦 アニマルズ’08 in YOKOHAMA」 そごう美術館

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三沢厚彦の「ANIMALS ’08 in YOKOHAMA」に行って来ました。
昨年の伊丹市美術館での展示から、横浜そごうと百貨店内の美術館に場所を移して、どんな変化を見せているかが見どころです。

変化その1:冒頭、大きなドローイングがお出迎え。
動物たちがフル出演している横長のドローイングが展示室入口で迎えてくれる。伊丹ではドローイングの記憶がさほどないけれど、今回は沢山のドローイングが展示されていた。
絵に描かれた動物たちが、彫刻になった時の変化が面白い。

変化その2:白くま
入口を抜けると、白くペイントされた木製の小屋が大小3つある。
中を覗くと、白クマが1頭ずつ。大きさも小屋に合わせて3種類。中でも一番小さな小屋にいる白くまは寝転がってポーズを取っている。
これまでの三沢作品では立っているか座っているかで、動きを表現している動物はあまり見られなかったが、今回白くまたちはかなり動きを見せている。
一番大きな白クマルームには背後にヤモリが壁にくっついていて、かわいい。

変化その3:ライオン
展覧会チラシにも使用されているライオンは2008年新作キャラ。
これまでの作品との大きな違いは目ではないだろうか。
三沢作品はどれもちょっと拗ねたような眼をしているのだが、このライオンの瞳はばっちり大きくつぶら。まさしく王者の貫録十分。
更に、凄いのは鬣の表現。よくぞここまで彫りこんだと感心する。いいなぁ、このライオン。マイベスト。

変化その4:ワニ
こちらも08年の新作Animal。
08年は巨大動物に取り組む年だったのか、ご本人に伺ってみたい。
このワニもライオンに負けず劣らず、頑張っている。特筆すべきは口の中。
よくぞ、ここまで作りこんだ。歯が痛そう。

変化その5:アトリエ再現
三沢のアトリエは茅ヶ崎市にあるそうだが、展示室内にアトリエを再現していた。この手法、目黒区美術館の丸山直文展でも取り入れられていたが、作品になる前の作品?群が沢山見られた。三沢の場合、木製でなく粘土?紙?で作られた人形やら動物やらがわんさと並んでいて楽しい。
元ネタになっている動物図鑑なども机上に置かれているのがリアル。

展示室には親子連れが多く見られたが、中に一人小さな女の子が「怖い。怖い。」と言っているのが気になった。その子が唯一怖がらなかったのが2匹の豚。
マイベストの2番目はこの豚。なんか愛敬がある。
ちなみにヤモリも好き。どれか買うならこのヤモリかな~。

忘れてはいけないのが「蛙」。
超リアルな蛙は木彫とは思えない出来だった。

やっぱり楽しい「Animals」。
子供ではなく、大人向けの動物園なのではなかろうか。

*11月16日まで開催中です。

「鎌倉の精華-鎌倉国宝館開館八十周年記念-」 鎌倉国宝館

鎌倉シリーズの続きです。
今年八十周年を迎える鎌倉国宝館の記念特別展に行って来ました。
展示替えが3回にわたって行われ、ことに絵画はほとんど入れ替えがあります。私が訪れたのは会期の第2ターム(11月9日まで)でした。
作品リストは国宝館HPをご覧ください。

全体としての見どころは仏像群です。
以下印象に残った作品をご紹介します。

・「地蔵菩薩立像」 寿福寺 鎌倉時代 重要文化財
厳しいお顔つきをされているが、すっくりと美しい立姿をした地蔵菩薩。

・「水月観音菩薩坐像」 東慶寺 鎌倉時代 神奈川県指定文化財
優美な観音様だが、斜めに傾いた珍しい姿をし坐像。仏様というより、人間に近い親しみを感じる。

・「愛染明王坐像」 五島美術館 鎌倉時代 重要文化財
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今回のマイベスト。この愛染明王は凄い。怒の表情、怒髪天を衝くというのはまさにこのことだろう。火炎も見事に彫像されており、眼が怖い。

・「観音菩薩坐像」 浄光明寺 鎌倉時代 重要文化財
こちらもやや斜めに傾いている観音坐像。髻が高く結いあげられており、手の仕草と表情が優美であるのと材が特徴的。 

・「舞楽面(稜王)」 鶴岡八幡宮 鎌倉時代 重要文化財
この時代のお面としては保存良好。リアルな表情が時代を象徴している。

・「北条時頼坐像」 建長寺
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・「上杉重房坐像」 明月院 いずれも重要文化財
両坐像とも、足の形がそっくりで特徴的。顔も実在の人物そっくりなのではないかと思うほど写実的で、現代に置き換えるとこんな顔の人がいそうで、親近感すら湧いてくる。
鎌倉ならではの坐像2体。

絵画部門では、つい先日名古屋の徳川美術館でぞろぞろ名品を見たばかりなので、目が肥えすぎてしまったのだろう。どうも感動は薄かった。

・「観音図」 建長寺 室町時代 重要文化財
なんと32幅のシリーズ作品だという。うち出品されていたのは4幅。
ここでも描かれた観音は人間のような仕草をしている。宗教画を離れた感じさえするけれど、観音様とはこんなにも人間に近い存在なのだろうか。
残りの28幅と一緒に一度にすべてを見てみたいもの。

・「浄土五祖絵伝」 光明寺 鎌倉時代 重要文化財
・「類焼阿弥陀縁起絵巻」上巻 光触寺 鎌倉時代 重要文化財
いずれも登場人物が素朴な表現で描かれ親しみやすい。話の内容も分かりやすく、退色もさほど進んでおらず、状態が良い。

この後、国宝「当麻曼荼羅縁起絵巻」下巻が出品予定となっているが、訪問時は未公開だったのが残念。


工芸部門では、沃懸地杏葉螺鈿太刀」「沃懸地杏葉螺鈿平胡籙」(いずれも国宝)が目をひいた。
太刀の持ち手になる所は、一見鮫皮を使用しているかと見せかけ、実は銀箔を張ってそれらしく見せているという渋い細工が施されている。華美に走りすぎないのがこの時代の特徴なのだろうか。

書については、詳しくないので省略するが、展示作品はほぼ全て重要文化財または国宝。

*11月24日まで開催中。
ご紹介した作品は展示期間が終了しているものもありますので、ご注意ください。

「琳派から日本画へ -宗達・抱一・御舟・観山-」 山種美術館

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速水御舟 「名樹散椿」 重要文化財 1929年

東京国立博物館で開催中の「大琳派展」もいよいよ会期あとわずか。
そんな中、11月8日から山種美術館で「琳派から日本画へ」と題した展覧会が始まった。
本展では琳派の「たらしこみ」などの技法を近代の日本画家達がどのように取り入れ、作品に活かして行ったかに焦点を当てている。

作品リストはこちらをご参照いただくことにして。
山種が所有する琳派作品が相当数出展されている。中でも数多かったのは抱一作品。
また目玉作品は昨年40周年記念展にも出品されていた
・伝宗達 「槇楓図」
・絵 俵屋宗達 書 本阿弥光悦 「四季草花下絵和歌短冊帖」
・鈴木其一 「四季花鳥図」
・速水御舟 「名樹散椿」
これらの作品だろうか。

私は40周年記念展を見逃したのでどれもこれも初見。
う~ん、良いものを持ってらっしゃると感動しきり。
しかも、当日は肌寒い天候だったせいか、いつも賑わっている山種美術館も観客がまばら。
短冊帖を除く3作品は最奥の展示室で展示されていたが、ほぼ貸切状態で心ゆくまで鑑賞できた。

この部屋には下村観山の大作「老松白藤」や本阿弥光甫の「白藤・紅白蓮・夕もみじ」の三幅対も展示されていたので、どこを向いて良いのか右を向いても前を向いても後ろを向いても、めったとお目にかかれないような作品ばかり。

伝宗達の「槇楓図」は東博に出品されていた屏風とよく似ている。山種の屏風は状態がイマイチで色も若干あせているのが残念。
特徴的なのは槇の幹のカーブだろうか。ほぼ半円を描くようなうねりを見せているが、実際にこんな姿をした木だったのだろうか。

その隣にあったのが昭和で初めて日本画の重文指定を受けた「名樹散椿」。

一見して気になったのが椿の幹。
写実を排除して、デフォルメし曲線を強調したかのような幹と枝ぶり。
次に注目したのは背景の金地。解説によると、御舟は金箔を使わず「撒散らし」といって金粉を捲いてすり潰し表面を滑らかにしていったという。
なるほど、金箔使用で見かける継ぎ目の全くない滑らかな金地は椿をより引き立てている。
椿に目を向けると、五色の椿の艶やかさもさることながら、花開く前の蕾が実に美しかった。葉に隠されて少しだけ顔を出している椿の花の描きっぷりも細やかで、さすが御舟と思わせる。

更に右横にあったのが鈴木其一の「四季花鳥図」。
これまた、色鮮やかで今描き上げたかと思うほど。ここでの注目はひよこと母鳥。
其一の描く鳥の顔は、今風で目がきょろっとしている。
通常の日本画に描かれる鳥の目はもっと細いような気がするのだが如何?

ここで、次の壁面に移ると本阿弥光甫の三幅対がある。
中でも「白藤」が気に入った。
藤の花房だけをこんなにもクローズアップした絵は初めて見た。垂れ下がる藤の白い花たちが可憐。
光悦の孫だというが、確実にDNAが受け継がれたものと見える。

散椿や四季花鳥図の対面にあるのが下村観山の「老松白藤」。
この作品は構図に注目。
大きな松の大木は上下すっぱり切れていることで、より松の大きさを見る者に感じさせる。
その松の枝に垂れ下がる白藤が松に生えた髭のようにも見え、老松のどっしりとした姿に花を添える。

抱一作品の中では、「飛雪白鷺」「菊小禽」などが優れていた。

個人的には宗達&光悦の最強コンビが織りなす「四季草花下絵和歌短冊帖」がお気に入り。
ただ、これは本来18点から成るにも関わらず、ケースが小さいため17点しか見られなかったのが残念。あと1点なのに。。。展示されていた17点はもう美の極致であった。

近代日本画では荒木十畝の「四季花鳥」をテーマにした四幅対が素晴らしい力作。画面一杯あふれんばかりに草花が鮮やかな色彩と共に描かれている。まさに琳派の向こうを張った感じ。

以上いずれも名品ぞろいなのだが、山種美術館の展示室は狭い。
せっかくの名品がこれではもったいないように思う。ことに、今回は東山魁夷の大きな作品も展示されていたが、大きすぎて十分に鑑賞するスペースがない。

来秋の移転オープンが待ち遠しい。

*12月25日まで開催中。

「第4回 東山魁夷記念 日経日本画大賞展」 ニューオータニ美術館

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ニューオータニ美術館へ初めて行って来ました。
昨日アップした岡村桂三郎が今回の大賞を受賞した「日経日本画大賞」に大賞含めた入選作14点(以下)を一堂に集めて展示しています。
画像は美術館HP上でご覧いただけます。

・岩田壮平 《花泥棒》
・岩永てるみ 《La vue d’Orsay》
・植田一穂 《夏の花》
・及川聡子 《視》
・岡村桂三郎 《獅子08-1》
・奥村美佳 《いざない》
・斉藤典彦 《彼の丘》
・園家誠二 《うつろい-1》
・瀧下和之 《龍虎図屏風》
・武田州左 《光の采・672》
・長沢明 《イエローエッジ》
・フジイフランソワ 《鶏頭蟷螂図》
・間島秀徳 《Kinesis No.316 hydrometeor》
・町田久美 《来客》

大賞選考にあたっては、最終候補として岡村、間島秀徳、斉藤典彦の3名が残ったそうです。
結果、岡村の受賞となった訳ですが、選考過程では岡村作品が日本画の範疇に該当するのかどうかも選考委員の間で問題になったようで、確かにこれまでの日本画イメージを大きく逸脱する作品であることは間違いのない所でしょう。
しかし、既存概念にとらわれることなく、大賞に選ばれたことで新たな日本画の一分野が切り開かれたように思います。

間島秀徳の作品は、岡村作品同様屏風仕立てで、しかも表裏両面が水のイメージで覆われている意欲作です。個人的にはこの作品もかなり好印象でした。

入選作の中でイチオシは、岩田壮平「花泥棒」。この作品に描かれている真っ赤な花のインパクトは強烈。しかも想像以上の大画面で、花を抱え込んだ泥棒が自転車に乗って自分の方に向ってくるような、必死ささえ感じます。
対象のとらえ方は実に若々しきく、新鮮な一方、技法的にはたらしこみが使用されていたりと、伝統的な日本画の良さも継承している所も魅力です。

作品の背景には雲母が使用されているようで、大胆な中にも丁寧な仕事が伺われます。今後も要注目の若手ですが、毎年日展に出品しているという経歴に少し違和感を感じました。

豊田市美で今年個展が開催されたフジイフランソワも同じく初入選組。
豊田市美での展覧会詳細は拙ブログ記事をご参照ください。

他の作品が派手なカラーで迫ってくる中、ひっそりと己を貫き良い味出しています。もっと面白い作品がたくさんあるので、1点だけではもの寂しい。

園家誠二の「うつろい-1」は、幻想的な横長の絵画。推薦文には現代の絵巻物とありましたが、なるほど虹色のグラデーションを見ていると絵の中に吸い込まれるような感じを受けます。

武田州左「光の采・672」も写真で見た時より、ぐっと実物作品の方が良かったです。
園家誠二同様、光をイメージしている作品のようですが、両者は大きく異なります。園家の作品が「静」ならば、武田の作品は「動」そのもの。
凍った花火というのが最初の印象。絵の具の質感が素敵でした。

植田一穂「夏の花」はアンディ・ウォーホルを思わせるような花の絵です。これが日本画?と思わせます。

大人気の町田久美はじめ新たな日本画の潮流を感じさせる入選作を楽しめます。

*12月14日まで開催中です。
注意:大賞受賞作の「獅子08-1」は「岡村桂三郎展」(神奈川県立近代美術館 鎌倉)へ出品中のため、11月26日(水)~12月14日(日)の展示となります。
11月24日(月・祝)までは新作が出品されています。

「岡村桂三郎」展 神奈川県立近代美術館 鎌倉

okamura

鎌倉まで行って来ました。
お目当ては鎌倉国宝館の特別展だったが、「第4回東山魁夷記念 日経日本画大賞」を受賞したばかりの「岡本桂三郎」展も気になる。
雑誌「アート・トップ」でも岡村桂三郎の今回の展覧会については紹介されていたが、写真で見る限りさほど興味をそそられることはなかった。
次に見たのは、先週だったかの新聞紙上。
「第4回 日経日本画大賞」を特集記事で採り上げていて、その中に岡村桂三郎の作品があり、この時初めて見に行こうと思った。

そして、実際作品と対面してみると、実に良かった。やはり、紙面では伝わらないものってあるんだなと当り前のことを今更痛感。

会場入ってすぐに、私たちは岡村の世界に取り込まれる。
両側に木製屏風仕立ての巨大パネル、天井までびっちり高さがある本当に大きな作品。目に飛び込んだのは、その作品の一部である鱗。鱗、しわ、しわ、しわ、鱗。象の背中のようだ。

これは、何なのだろう。異空間に紛れ込んだかのような不思議な感覚。
そう言えば、入った瞬間に木の香りがしたのだが、それは作品が醸し出す匂いだったのか。
もしかすると、木の屏風達は本当に生き物として展示室内に生息しているのではないか。岡村が作り出した生き物にすっかり取り囲まれて、おずおずと前に進む。
進めども進めども、鱗は続く。

作品に近づいてよ~く見ると、木の上にはしかと岩絵の具が塗られていて、更に上から手彫りをすることで、鱗模様が作り出されている。
絵画なのか工芸なのか。
二つの手法をうまくミックスして作り出された新しい日本画。

展示室内の最奥にたどりつくと、目がいくつもこちらを凝視している。この作品が日経日本画大賞の受賞作「獅子08-1」。これは、かなり怖い。
お化け屋敷のようなスリル感まで味わってしまった。

続く第2展示室では、もう少しこぶりの作品が並んでいる。
ここまで来て、描かれていたものが「象」であることが分かった。作品リストを見ると、第1展示室にあった作品は「泉」やら「鳥」やら「眼龍」はてはインドの伝説上の鳥「迦楼羅」だった。

一貫して黒い板の上に、鈍い銀と金が混ざり合ったような金属色の作品が並んでいたが、最後の1階半屋外展示室では、「碧象図05-1」「月の兎」など、同じ黒ベースでも対象を描く色が碧色、白だと趣も異なり、恐怖感は和らぐ。

しかし、圧倒的な岡村の世界観を堪能するなら、冒頭の第1展示室に入る必要がある。
作品に巻き込まれる感覚を味わって欲しい。

*11月24日まで開催中。

以下展覧会の概要。~神奈川県立近代美術館HPからの抜粋。
岡村桂三郎は現代日本画界を引っ張る若手世代の旗手として、その活動が近年つとに注目されております。日本画といっても、岡村桂三郎の作品は、板のパネルを一度焼いて、その上に、岩彩で描き、板の表面を削ったりして、イメージを作り上げていくという、従来の表現では思いもつかない、斬新なものになっております。途中省略。
屏風仕立ての大きな板のパネルには、うねるように、また、うごめくように表現されたこれら動物たちが、そのイメージの孕む生命感により見る者を圧倒します。現代の絵師岡村桂三郎の近作から最新作まで20点による展観により、新しい絵画の世界をご堪能下さい。

「大琳派展」 11月7日鑑賞記録

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金曜夜間拝観を狙って、二度目の大琳派展に行って来た。

ズバリ、筆者が決めた後期の大琳派展のテーマはうさぎ
今回はやたらと「うさぎ」モチーフの絵画作品が目についた。

・本阿弥光悦 「月に兎図扇面」 畠山記念館
・俵屋宗達 「兎図」 東京国立博物館
・酒井抱一 「兎に秋草図襖」 三井記念美術館
・「豆兎蒔絵螺鈿硯箱」 永田友治作 東京国立博物館 ⇒ 光琳意匠

こうして見ると、鈴木其一のみ兎作品が見られなかったのが非常に残念である。琳派を代表する4名の兎作品をぜひ比べてみたかったのに。。。
何と言っても上記作品の中では、光悦の扇面が群を抜いていた。この人は本当に「美」とは何かを知りつくし計算している。心憎いばかりである。

この扇面に描かれた兎は、身体をねじって上を向いているのに着目。敢えてこのようなポーズをさせるのに意味があるのだろう。緑色の部分のカットが大胆であり、兎のポーズにマッチしている。


では、兎を除いた見所はと言えば光琳、抱一の「波図」競演。
銀箔に薄い青の着色を施し、太く時に細く、抱一らしさを超越した荒々しい波を描ききっている。これほどに太い線を使えたのか・・・驚きを持って波図に見とれてしまった。優美な抱一しか知らなかったのに、こんな一面もあったのか。

これまで知っている抱一らしさは、ファインバーグコレクションの「十二か月花鳥図」「四季花鳥図巻」などで存分にお楽しみいただきたいと思う。

ここまで抱一を持ち上げておいて、気が引けるが個人的には後期も其一が気になった。
彼は常に新しいことを試みようとしている。特に後期にはその個性が発揮された作品が目立った。
・「群禽図」
・「蔬菜群虫図」
この2枚は若冲の影響でもあるのだろうか?

・「流水千鳥図」 島根県立美術館
着物の柄にしたくなるような意匠が凝らされた掛け軸。この作品はすっきりしていて気に入った。

・「夏秋渓流図屏風」 根津美術館
根津美術館が休館前に行っていた展覧会で見た記憶が甦った。濃厚な作品。
現実でなく空想の世界のよう。つまり写実でなく、ここでもデザイン化が行われている。

閉館時間5分前に最初の展示室に戻って、最後にもう1周した。さすがに、観客の数は減り誰にも邪魔されることなく、作品と向き合える数分間。
これで、当分風神雷神ともお別れ。名残を惜しみつつ、会場を後にした。

*11月16日まで開催中。会期終了間際は混雑するので、お早めに。 

京都国立博物館 平常展示

本来であれば、開催中特別展の「japan 蒔絵」でも見ようかと目論んでいたが、楽美術館の後に行った相国寺承天閣美術館で、めまいがして気分が悪くなり急遽予定を繰り上げて、東京へ戻ることにした。
それでも諦めきれずに、最後に立ち寄ったのが京博の平常展示。ご存知の通り、京博の平常展示館は間もなく建替工事に入るため閉館、絵画部門は今回を含めあと2回の展示で当分休止となる。

そのせいなのか、今回の平常展示はいつにも増して力が入っていたように思う。

まず、水墨画室では「あなたの知らない水墨画」を行っていた。今年になって新たに見つかった水墨画の名品の数々を一挙に展示。
狩野元信印「四季花鳥図屏風」など、目をみはるような作品ぞろい。
滋賀県の野洲市個人宅で発見されたと脚注にあったが、あれだけの屏風が見つかったお宅とは一体どんな方なのだろう。

近世絵画では、ご存知長沢芦雪特集~。
どれもこれも未見作ばかり。うはうはしてしまった。この時点でめまいは治る。
「茄子図」「月下桜図」「岩上猿図」さらには、「白梅図」と来た。芦雪の真面目に描いた作品ぞろい。

師である応挙の作品も並ぶ。
円山応挙 「唐子遊図襖」。応挙の描く犬や子供は愛らしい。この唐子図襖も沢山の子供が描かれているが、皆様子が違っていて、目の前の情景をスケッチしたかのよう。さすが、写実の鬼。以前は何とも思わなかったのに、金毘羅以来、自分の中での評価が高まった。

絵巻は京博お得意の分野。
4点のうち3点が「一遍聖絵」「法然上人絵伝」などの国宝、1点「桑実寺縁起」が重要文化財。しかもなが~く見せてくれいた。言わずもがな、素晴らしいに決まっている。

最後に仏画で1点。目が釘付けになった作品がある。
知恩院蔵「阿弥陀二十五菩薩来迎図」。
天女が舞い降りて来たjかのごとき作品。実に細かく美しい。当然のように状態も彩色も最良。
夢を見ているような仏画であった。

*ご紹介した作品は11月3日に展示終了していますので、ご注意ください。

「長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖  吉左衞門セレクション」展 楽美術館

3連休の最終日、名古屋から京都へ向かった。
京都へはもう何度も行っているけれど、楽美術館には一度も行ったことがない。
その楽美術館の開館30周年を記念して「長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション」特別展が開催されている。
長谷川等伯の作品が出ると聞けば、行かざるを得ない。ということで、ついに初訪問となった。

楽美術館は楽焼専門の美術館として、楽家に隣接している。入口で靴を脱いで鑑賞するスタイル。
館内のあちこちに生花が活けられているが、係の方がその全てに霧吹きでお水をかけていらっしゃる。花はどれも瑞々しい姿を保っていた。

1階展示室は、楽家歴代の作品が15代まで1点ずつ展示されている。中でも印象的なのはやはり初代長次郎作 黒樂筒茶碗 銘 杵ヲレ である。
この黒く渋い楽茶碗は形も細めですっきりしているのが良い。何より素敵なのはその焼き肌。ざらついているようで、荒々しくもあり、素朴さの中にもきりっとした表情。
う~ん、茶碗は奥が深い。

2階に今回の特別展による展示作品が並んでいた。
お目当ての等伯「山水松林図襖」はあまりにも、傷みが激しくほとんど描かれているものが肉眼では判別しにくい。かの国宝「松林図屏風」を思わせるような松林の筈が、やたらやせ細った松が数本見えているといった感じで、これにはちょっとがっかりした。

もう一つの目玉、山水花鳥図襖は残念ながら展示期間外であっため、見られなかったと思われる。
思われると書いたのは、それらしき襖を見たのだけれど、帰宅後HPで見ると展示は11月10日からとなっていたため。私が見た作品は一体なんだったのだろう。模本にも見えなかったが。

絵画はさておき、2階では茶碗ですこぶる良いものがあった。
本阿弥光悦作 「村雲」黒楽茶碗である。同じ黒楽茶碗でも長次郎と光悦の作品では全く感じが異なる。楽美術館で再び両者の対決が見られるとは!嬉しい驚きであった。
「村雲」は、鈍い光を帯びていて、飲み口がすぼまっておらず、すっぱり切り離されたような状態になっている。更に釉薬のかけ具合が絶妙。

好みは人それぞれ、長次郎、光悦いずれも良さがあるが、個人的には光悦が好み。
各作品の画像は、楽美術館HPでお楽しみください。

*12月21日まで開催中です。

「室町将軍家の至宝を探る」 徳川美術館

岡崎市美を後に、昼食も取らず向かったのは徳川美術館。
こちらも、名古屋市内にはあるが地下鉄でなく市バスを利用利用とやや不便。しかし市内の中心部であり、ドニチエコきっぷを購入しチケット売り場で提示すれば入場料が200円割引となるため、毎度の市バス利用。

さて、今回はこれまでになくビッグな企画展が開催されている。ことの始まりは新日曜美術館のアートシーン。10月19日の放送で紹介されるまで、この企画展のことはすっかり忘れていた。
前期を見逃したのはとても痛かったが、後期ならまだ間に合う。ということで、今回の帰名の最大の目的はこの展示。

感想はと言えば、もう圧巻の一言。本当に前期を逃したのは悔やまれる。2940円とお値段も特別な図録を見ると、前期にも相当な優品が出展されていた。
しかし、後期も素晴らしい作品の数々にただひたすら圧倒されて、めまいがするほどだった。
詳しい作品リストは徳川美術館HPに掲載されているので、ご参照ください。

室町時代、足利将軍家は京の都に培われた王朝文化を継承するとともに、積極的に中国の美術品を収集して「唐物」に彩られた新たな文化を先導しました。その収集は、中国当地の審美眼の受け売りでなく、また当時中国と交渉のあった禅宗の価値観とも一線を画し、独自の美意識に基づくものでした。そこで選ばれ、価値付けられた品々は、後世までも高く評価され、以後の日本における中国美術鑑賞の「眼」を形づくりました。近年、それら美術品の扱いや価値付けを専門として仕えた同朋と呼ばれる人々の活動が具体的に明らかになってきました。将軍家が所有した名品と同朋の仕事を伝える作品を中心に「和」における「漢」の美術の受容史を振り返ります。


展覧会の構成は
Ⅰ 室町殿の宝物と「東山御物」
Ⅱ 同朋衆の姿と仕事
Ⅲ 能阿弥・藝阿弥・相阿弥と室町水墨画
Ⅳ 「君台観左右帳記」の世界

あまりにも素晴らしい作品が多く、しかもめったにお目にかかれない中国絵画の優品がぞろぞろ出ているので、何から紹介して良いのやら、当方の力不足で途方に暮れてしまう。仕方ないので、私的な見どころと選びに選んだ絵画作品を少しだけピックアップ。

見どころは
1.宋~元時代の中国絵画 国宝、重文 牧谿、夏珪など多数
2.室町時代の同朋衆の作品 古筆、絵画多彩な内容
3.宋、元時代の茶碗の優品

茶碗では九州博物館から、現存する「油滴天目」の双璧(重要文化財)が来ていた。
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ちなみにもうひとつは、国宝の東洋陶磁美術館所蔵品。

もうひとつ、文化庁所蔵の「灰被天目 銘 虹」も忘れられない。名前通り「虹色」の光を本当に放っているのだ。

絵画では次の4点。大きいから目を引いたというのが一番の理由かも。
・「龍図」 陳容筆 南宋 徳川美術館
・「虎図」 伝牧谿筆  徳川美術館
この横並びは壮観。

・「宮女図」 伝銭選筆 個人蔵 元 (国宝)
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チラシにも使用されている作品。一件男性の姿をしているが、これは宮廷女性が男装しているとのこと。言われてみれば、表情が優美な気もしてくる。状態が良いので、線も色もはっきりしている。
指先の美しさも女性らしさを表現しているようにも思えるが、何をしている所なのだろう。

・「瀟湘八景図」 相阿弥筆 大仙院蔵 重要文化財
十六幅のうちの4幅が出展。余白の美、水墨による濃淡で海を見事に表現。隣で見ていた男性が、「この作品を見ながら感嘆し、良い時期に来た」とつぶやいていらっしゃったのが印象的。
離れて見ると、なおさらその良さが分かる。

東博の「中国絵画の精華」そして、本展と一気に中国絵画への関心が高まり、「中国の美術-見かた・考え方」なる本を古書で求めた。いかに傾倒しているかが分かろうというもの。
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日本絵画、朝鮮絵画、全ては中国絵画から伝わり広まった。絵画の歴史を考える上で、中国美術の知識は欠かせない。

この他茶碗の優品も多数あり、特に徳川美術館所蔵の茶道具類は奥深い。一体何点所蔵しているのだろうか。
絵画も含め、改めて尾張徳川家の実力を見せつけられた。

今回の展覧会は、昭和51年に根津美術館と協力して開催した内容を再度見直し開催している。

遠く東京からでも出かける価値は十分にあると感じた。

*11月9日まで開催中。お見逃しなく。

「石山寺の美-観音・紫式部・源氏物語」 岡崎市美術博物館

3連休を利用して、岡崎市美術博物館へ行って来ました。
こちらの美術館、景観は岡崎市街を一望にできる絶景ポイントになっていますが、反面交通の便が極めて悪い。最寄駅は名鉄の東岡崎駅で、バスはわずかに1時間に1本足らず。さらに、バスでも20~30分かかります。まして、タクシーで行こうものなら・・・3000円以上かかるのではないでしょうか。

今回はJRのレール&レンタカーを使用し、三河安城駅からレンタカーを利用しました。三河安生からの所要時間は約40分とやはり遠いです。
しかし、そんなアクセスの悪さがあっても通ってしまうのが、岡崎市美。学芸員さんの努力の賜物か、内容の濃い展示が行われるのが常。今回の「石山寺の美-観音・紫式部・源氏物語」もあちこちで源氏千年紀を記念しての展覧会が行われていますが、レベルの高い内容でした。

以下展覧会概要です。美術博物館HPより。
このたび岡崎市美術博物館では、石山寺に伝わる《石山寺縁起絵巻》をはじめ仏像、仏画や、聖教類の名品を一堂に集めて展示する機会に恵まれました。また今年は紫式部の『源氏物語』が誕生して一千年という記念の年となるため、同寺が所蔵する江戸から近代に至る作家たちによる源氏物語を主題にした絵画・工芸品を合わせて紹介いたします。この機会に、国宝・重要文化財を含む石山寺の至宝によりその歴史とともに時代を越えて人々を魅了してきた源氏絵の世界を是非御覧ください。

さて今回の展示、名品は数あれど、何と言っても一番素晴らしかったのは「石山寺縁起絵巻」でしょう。今回は七巻のうち第三巻、第四巻(室町時代)が出展示されていたのと、江戸時代に作成された模本のうち第一巻・第二巻がありました。
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石山寺縁起絵巻 第三巻(部分)/鎌倉時代   

室町時代の制作のものは、驚くほど色が残っていて、江戸時代のものと左程変わらない位です。むしろ、そこはかとなく風格が漂っているあたりが模本とは異なる所でしょうか。
一場面だけを見せるのではなく、絵巻ほぼ全部をなが~く開いて見せてくれているのも岡崎市美の心意気。この先は次の巻へとなりますが、一巻ほぼ全体を見られたのは嬉しかったです。

この展覧会、前半は石山寺に焦点を絞った展示。
所蔵している仏像や鬼面、仏画の良いものがたくさん出ていました。
中でも印象に残ったのは、

・維摩居士坐像 平安時代 重要文化財
長いひげと胴が一体化しているという珍しい坐像。他で類作を見かけたことがありません。

・鬼面 4つ 南北朝~室町時代
どれも、これも非常に怖くて立体的かつ迫力があります。

・観音菩薩立像 白鳳時代 1体、奈良時代1体
近頃、ご本尊である如意輪観音像内から発見されたという小さな仏像。法隆寺宝物館にずらりと並んでいる観音菩薩立像に大きさ、姿が似ています。

・大日如来坐像 快慶作 鎌倉時代 重要文化財
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ここで、快慶の仏像にお目にかかるとは予想外の嬉しい出会い。
しかし快慶作?と思わず首をひねりたくなるような微妙な出来。優美でもなく力強さもさほど感じず、写実的、躍動的でもない。強いて言えば、大日如来の目が鋭かったです。両肩に垂れ下がる髪のようなものは何なのでしょうか?

・仏涅槃図 鎌倉時代 重要文化財
状態が非常に良く、しかも大きい。また、出てくる動物や生き物、天女など表情や動きが豊かに描かれているのが特色。退色もひどくないので、多彩な色も楽しめます。かつて、この涅槃図を吊り下げて法要を営んでいた姿が浮かびます。


後半は、石山寺所蔵の源氏物語、紫式部ゆかりの作品展示です。
横浜美術館をはじめ、今年はあちこちで源氏物語がらみの展覧会が開催されているので、食傷気味でもありますが、件の横浜美術館にも出展してかつ、この岡崎にも相当数の作品を貸し出しているという事実に驚きます。一体全体、何点の所蔵品があるのやら。。。

ここでは、お馴染み住吉派、土佐派の色紙や画帖が繊細かつ鮮明で素晴らしかったです。

「紫式部観月図」は幾人もの画家の手によって描かれており、5作品も並んでいましたが、中でも清原雪信という画家に注目です。
彼女、清原雪信は江戸時代前期では珍しかった女流画家。
しかも出自はかの久隅守景の娘です。
作品そのものに目新しさなどは見られませんが、言われてみれば女性らしい細やかな筆づかい。
この作家の名前をしかと頭に刻みました。

岡崎市美では、掛け軸などは厚みの薄いケースで展示されているので、相当至近距離まで近づけます。通常50センチほど離れて見る所が、ほぼ眼前に絵を見ることができるのも魅力でした。

*11月16日まで開催中です。

「文晁・崋山の新感覚 江戸南画の潮流Ⅱ」 飯田市美術博物館

さる方に、招待券をいただいた。
飯田市美術博物館の開館20周年特別展チケットである。
飯田市って、確か長野県では?さすがに遠いと思って、行くのを止めようと思ったけれど、そのチケットをよく見たら大好きな崋山の名前が出ている。
そして、更に心ひきつけたのはチケットデザインと紙質。白地に黒の水墨画調デザインで、手許に光に当てるとキラキラ光る。
キラキラ光るチケットなんて初めてで、嬉しくなってしまった。関係者の方々の心意気がチケットに現れているように思って、何とか頑張って行ってみようと計画を立てる。

飯田市は長野県でも愛知県にほど近い。通常名古屋からは高速バスが2時間で結んでいるため、さほど遠い訳でもなかった。しかし、今回は計画を立てるのが遅かったのと、3連休、紅葉の時期と重なったため、1時間に1本しかない高速バスで、ちょうど良い時間帯のバスは全て満席。
これは無理かと諦めかかった時、豊橋から飯田線で飯田駅まで行けることが分かった。
というわけで、豊橋乗換飯田線での旅となった。やはり、鉄子なのかもしれない。
豊橋⇒飯田は特急ワイドビュー伊那路で約2時間半。往復5時間、飯田滞在はわずか1時間15分。
普通ならこんなことはしないだろう。

前置きが長くなったので、本題へ。
入口でチケットを提示し中に入ろうと思ったら、立派なチラシが何と4種類もあった。
表の水墨画が全て違う4種類、裏面は共通。とってもカッコ良いチラシなので、記念に4種類全て頂戴した。
期待高まる中、まずは第1展示室へ。
ここでは、中山高陽、宋紫石、林十江、立原杏所から地元長野ゆかりの作家佐竹蓬平、鈴木芙蓉を中心とした展示となっている。

以前板橋区立美術館へ行った際に、立原杏所、林十江が面白いと思って、いつか作品をまじかで見たいと思っていた所だった。今回もその板橋や世田谷区立郷土資料館など日本各地から作品が集まっている。

・林十江 「木の葉天狗図」 茨城県立歴史館蔵
大胆な水墨表現で天狗を描く。十江らしい一作。

・立原杏所 「那珂湊口晩望図」 個人蔵
現代的な遠近法を用いた革新的試みを感じさせる。スケッチ風で西洋画的な雰囲気を持つ。
こういった作品が杏所の魅力だと思う。

佐竹蓬平は、南画を学ぶも独自の境地を開き、むしろそれにとらわれることなく、自由奔放大らかな画風の作品が多い。「十八学士図」(個人蔵)などは、画面いっぱいを使って十八人の学士を楽しげに描いた作品。

・鈴木芙蓉 阿波藩のお抱え絵師であった鈴木芙蓉の作品は佐竹とは大きく異なり、畏まった感じを受ける。特に良かったのは「那智大瀑真景図」 飯田市美術博物館蔵。絹本墨画淡彩の大画面。
作品の前に立った時、風に揺れる滝の水が自分にもふりかかるような気がした。迫力の1枚である。

芙蓉の作品は徳島市立徳島城博物館から沢山出展されていて、「諸葛孔明像」「鳴門暁景図」「芳山春景図」等々、気に入った作品多数。

第2展示室は、いよいよお待ちかねの谷文晁、渡辺崋山らの作品が並ぶ。

・谷文晁 「山水図」 個人蔵
墨彩山水画の優品。

・谷文晁 「木村兼葭堂像」 大阪府所蔵
木村某の人物画は、いかに崋山が文晁の流れを組んできたかがよく分かる。
谷文晁もこうした写実的な人物画を描いていたとは、これまで意識したことがなかった。明らかに新感覚な作風である。

・金子金陵 「白梅双鴨図」 「芙蓉白鷺図」 佐野美術館蔵
この2枚は素晴らしい。崋山は金陵に絵を学んだという。師の面目躍如であるが、崋山の作風とはやはり異なる。

・渡辺崋山 「高氏愛虎図」 静嘉堂文庫美術館
静嘉堂は有名な崋山の「芸妓図」を所蔵しているが、こちらの作品も優品。

・渡辺崋山 「牡丹図」 田原市博物館蔵
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腹切り牡丹と言われる作品。蛮社の獄で蟄居処分となった崋山の生計を助けんがために、弟子たちが崋山の作品を市中に売りに出した。この牡丹図はそのひとつであるが、逆に蟄居中でありながら売るために絵を描くとはと反感を食らうこととなり、切腹のきっかけとなってしまった作品。

・渡辺崋山 「黄梁一炊図」 個人蔵
崋山の絶筆とされる作品に出会った。これが今回の最大の収穫か。無論私の好きな崋山らしい写実性は見られないが、死の覚悟を迎えた心情の一端が伺われるか。作品を見る限り、悟ったような落着きを感じる。

・椿椿山「吉村貞斎像」 田原市博物館蔵
崋山よりも、むしろ弟子の椿山の肖像画が多く出展されている。崋山ゆずりの写実作品。むしろ人物の目の描き方は、椿山の方が大人しい。

この他崋山の次男渡辺小崋の作品も3点出ていた。

これだけ見られれば大満足。飯田まではるばるやってきた甲斐があったというもの。
欲を言えば、もう少しじっくりゆっくり見たかった。

*11月9日まで開催中。
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