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2008年 私が観た展覧会ベスト10

何と、こんなにアップが遅くなってしまいました。
僭越ですが、2008年度私が観た展覧会ベスト10です。
今年の選考基準は、2つです。
・ひたすら熱く感動したこと
・新鮮な驚きと発見があったこと


第1位 「金刀比羅宮書院の美」 金刀毘羅宮
<関連記事> こんなに書いてた・・・今更ながら驚きました。
金刀比羅宮へ 1泊2日<旅程>
金刀比羅宮への旅(1) プロローグ編
金刀比羅宮への旅(2) 高橋由一館
金刀比羅宮への旅(3) これから金刀比羅宮へ行かれる方のために
金刀比羅宮への旅(5) 宝物館編
やはり2008年は金刀比羅から始まったように思います。
こちらで、応挙の素晴らしさが初めて実感できました。足の冷える中、本物の光に照らされて、あるべき姿で拝見する襖絵や障壁画は日本美術再発見!でした。

第2位 「対決 巨匠たちの日本美術」 東京国立博物館
見たかった作品をかなり見せていただきました。
応挙と芦雪、若冲と蕭白、永徳と等伯など素晴らしい対決でした。対決という分かりやすい切り口も私にとってはありがたかったし、何より切り口はどうでも良くて、ただただあれだけの名品をかき集めて下さったことに感謝したいです。

第3位 「Blooming:ブラジル-日本 きみのいるところ」 豊田市美術館
久々に現代アートの展覧会で最初から最後まで楽しめる展覧会でした。豊田市美では、後述しますが、この他フジイフランソワの「綯交」も良かったです。

第4位 「シャガール 色彩の詩人展」 静岡県立美術館
年初に拝見した時から、必ず今年のベスト10に入れようと誓いました。
シャガールってこんなに凄かったの?良かったの?的驚きの連続。大壁画から版画までシャガール作品の全容をうまく展示してあったのも高評価でした。

第5位 「室町将軍家の至宝を探る」 徳川美術館
前期を見られなかったのが悔やまれます。前期も見ていたら、3位に食い込んでいたのは間違いありません。
いづつやさん同様、私も頭から「宮女図」が今も離れません。怒涛の室町将軍の至宝に脱帽です。

第6位 「KAZARI 日本美の情熱」  サントリー美術館
この企画展で様々な美術品の見方見せ方を学んだような気がします。
普段気づかない着眼点で美術品を見る喜びを改めて感じました。又兵衛の絵巻が素晴らしかったです。千葉市美の岩佐又兵衛展図録がほし~い(年末いきなり煩悩噴出)。

第7位 「村田朋康 夢がしゃがんでいる」 平塚市美術館
目黒美術館での個展より、私はこちらの方がはまりました(KINさん、ごめんなさい)。展覧会に入場した時から、観客は村田さんのツアーに参加したのです。美術館全体を旅館のように仕立てた見せ方も良かった。
年齢を忘れ、ガチャガチャと2階のジュークボックスにははまりました。

第8位 「丸木スマ展 樹・花・生きものを謳う」 埼玉県立近代美術館
スマさんの作品を見て、思わず涙が・・・。感動の回顧展でした。しかも、須田悦弘さんら現代作家との競演も見事。丸木美術館には一度行かねばと思います。

第9位 「大正の鬼才 河野通勢」 松濤美術館
河野通勢の作品は何度か目にしていましたが、実はこんな作品を描いていたのか・・・目から鱗の展覧会。2度拝見しましたが、何度見ても発見がありました。

第10位 「クロード・モネの世界」 名古屋ボストン美術館
印象派の集い主宰者ミズシー様からも、熱き1票を頂戴しています。
後述しますが、10位は迷いに迷いました。最後の決め手は、選考基準により合致していたから。私の知らなかったモネを見せてくれました。新国立美術館のモネ展を見ていなかったので、もし見ていたら、これが10位にはならなかったでしょう。
 
ということで、何とか10個に絞りましたが、2008年に観た展覧会の数は300を超えたと思われますが、早くも2ヶ月足らずでカウントをさぼったので、正確な数字は分かりません。
来年こそ、確実にカウントしようと今は思っています。。。

さて、ベスト10に入れるか最後まで悩みに悩んだ展覧会を次に挙げます。上から残った順です。
つまり、11位ってことですね。

「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」 名古屋市博物館
最後の最後にモネと迷った展覧会。最終的に乙御前にモネが競り勝ったということでしょうか。新しいコレクターの発見と鈍翁との丁々発止のやりとりが良かったです。三井記念の展覧会を観て急速に、評価が小さくなったのが惜しまれます。あれとこれは別物のよう。

「觀海庵落成記念コレクション展 - まなざしはときをこえて -」  ハラミュージアムアーク
これまた、大変に素晴らしい展示でした。今年の「展示賞」を進呈したいほどです。コレクション展とあわせれば更に素晴らしい。単体では若干のパンチ不足かも。

「ライオネル・ファイニンガー展」 愛知県美術館
これまた、感動の内容でした。こんなバウハウスの画家がいたとは目から鱗。でも10位に入れなかったのは、これだ!という作品がなかったからです。全体の流れ、作品は非常に好印象でした。

で、この他の素晴らしかった展覧会(分野別、お気に入り順)
リンク貼りが間に合いません。関心がおありの方は、お手数ですがブログ内の検索をご利用いただければ幸いです。

<古美術>
・「崇高なる山水 中国、朝鮮、李郭系山水の系譜」 大和文華館
・「ボストン浮世絵名品展」 名古屋ボストン美術館、江戸東京博物館
・「八犬伝の世界」 千葉市美術館
・「国宝 大絵巻展」 九州国立博物館
・「大琳派展」 東京国立博物館
・「暁斎展」 京都国立博物館
・「国宝 法隆寺金堂展」 奈良国立博物館

<日本画>
・「速水御舟-新たなる魅力-」 平塚市美術館
・「杉本健吉展」 愛知県美術館

<西洋絵画>
・「コロー展」 国立西洋美術館
・「ロシア絵画の黄金時代」 東京富士美術館
・「レオナール・フジタ展」 上野の森美術館
・「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」 静かなる詩情 国立西洋美術館

<現代アート>
・「綯交 remix」 豊田市美術館
・「ジュリアン・オピー」 水戸芸術館
・「塩田千春 精神の呼吸」 国立国際美術館

<陶芸、彫刻など>
・「ハマヤキ故郷へ帰る 横浜-東京-明治の輸出陶磁器」 神奈川県立歴史博物館
・「生誕100年 夢と記憶の画家 茂田井武展」 ちひろ美術館東京
・「聖なる酒器 リュトン」 MIHO MUSEUM
・「岩崎家の古伊万里 -華麗なる色絵磁器の世界-」


最後に、勝手な賞を作ってみました。

・08年度美術館賞 静岡県立美術館
この1年、常にレベルの高い展覧会を行っていること。利用者の声からの改善提案が着実に実行され、実現できない場合も利用者へのフィードバックがなされていること。
更に、いつ行っても幅広い世代の観客が多く見られること。閑散としていたことがない。
以上の理由から公立美術館の理想形ではないかと本日現在思っています。


ということで、いよいよ本年も残すところ数時間となってまいりました。
今年1年、拙ブログをご高覧いただきありがとうございました。

それでは、皆様どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

(参考)2007年のベスト10はこちら↓
http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-221.html#comment_area
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「レオナール・フジタ展」 上野の森美術館

大晦日に展覧会などという人は少ないだろうと見計らって、「レオナール・フジタ展」へ行って来ました。これが、今年の展覧会納めです。

さて、私は2年前の藤田の大回顧展を見ていないというまぬけぶりです。
2年前の私は、藤田の作品が好みでなく、最初から好みではないと思ったら足を運ぶことはありませんでした。しかし、今ではたとえ、その時興味がなく好みでなくても、展覧会で新しい発見があり、好きになることが経験上沢山あることが分かり、何でも実際に見てみるを信条としています。

そして、今回の「レオナール・フジタ展」とても良かったです。思わず今年のベスト10に入れようか(まだ書いてなかったから)と思ったほど。しかし、藤田展を既にご覧になっていらっしゃる方にとっての新鮮味はあったのか?そして、興味はあるが、やはりそんなに好きではないという事情からベスト10入りならずで終わりました。

展覧会は、日本帰国前のフランスでの藤田と日本帰国後再度渡仏してからのレオナール・フジタの画業を振り返る内容となっています。

展覧会構成は次のとおりですが、本展最大の見所は第3章、第4章のレオナール・フジタ時代晩年の作品ではないでしょうか。幻の大作4点も無論、文字通り大作なのですが、個人的には最終章が、もっとも驚き惹かれました。

第1章 スタイルの確立 「素晴らしき乳白色の地」の誕生
第2章 群像表現への挑戦 幻の大作とその周辺
第3章 ラ・メゾン=アトリエ・フジタ エソンヌでの晩年
第4章 シャペル・フジタ キリスト教への改宗と宗教画

第1章では、顕かにモディリアニやピカソの影響が伺われる初期の作品が出ていた。これらも、私には目新しい。「藤田よお前もか・・・しかし、あなたはそれだけで終わる人ではなかったのね」であった。
この初期作品の後、日本で一番よくお目にかかる裸婦像など藤田の乳白色のマチエール作品が続く。これらの作品は国内各所の美術館の所蔵品である。
「自画像」2点、うち1点は藤田が1950年に売却し、1961年に自身の作品と交換で買い戻したという曰く付の作品である。この作品への藤田の思い入れはどこにあるのか。藤田は自画像をよく描いているだけに、この1点に執着を見せた理由が気になる。

「キキ・ド・モンパルナス」の鉛筆デッサンも線がしっかりしていて良かった。

第2章。ここでは、幻の大作で今回6年もの歳月をかけて修復が完了した大作「ライオンのいる構図」「犬のいる構図」「争闘Ⅰ」「争闘Ⅱ」がど~んと展示されている。
ただ、大きいことは大きいのだけれど描かれている人物達があまりにも肉肉しすぎて、どうなんだろうこれはと思ってしまった。
肉感も度を過ぎると、不気味ではないだろうか。
藤田はルネサンス期の画家やレオナルド・ダヴィンチなどの作品を模写し、崇拝していた筈。しかし、彼の画風でルネサンス風をやってしまったのがこの大作と言える。

しかし、圧巻な作品であることは間違いない。

最後に「猫」の作品が2点。岩彩、水彩でそれぞれ描かれているが、こちらもかなり大きい。うち水彩作品は過去にビュフェ美術館で見たことのあるもの。

第3章。エソンヌでのアトリエ生活は、彼自身の手によるお皿や木箱、裁縫箱、ワイングラスなど身の回り品にもフジタの絵が入っているのに驚いた。皿への絵付けなど、まるでピカソのようだ。
これらの中でも、衝立2点は良かった。向かって左にあったシンプルな衝立は、思わず欲しい~と思ったほど。
「ヴィリエ=ル=バクル 私たちの家」は小品ながら、とても味わいのある家の絵。

また、子どもたちを描いた「アージュ・メカニック」やフジタのパリへの思慕が伺われる「フランスの富」(48図)など、画面の濃密さにはこれまで知らなかったフジタ作品を見た。

第4章は、驚きの連続。
パリ市立近代美術館蔵の「花の洗礼」「聖母子」(個人蔵)、(ランス大聖堂蔵)などキリスト教を主題とした宗教画の数々。晩年のフジタ作品はどんどんその線が強くなってくるように思う。

彼の描く絵が苦手な理由は人物たちの顔。どこか漫画チックというか、冷たい表情に見える。
フジタの作品がステンドグラスになるなど、想像したこともないが、これを再現したものが最後のギャラリーに展示されていた。
思っていたより、しつこくない。これはこれで、素晴らしい。

フジタが制作に力を注いだチャペルの壁画下絵に囲まれた空間はなかなかのもの。
本物を持ってくることはできないので、これが展覧会の限界だろう。しかし、そこは映像で補うなど、うまく補足されていたため、雰囲気は十分味わうことができた。

会期は1月18日まで。明日元旦も開催しています。
お早めにどうぞ。

「japan 蒔絵」展 サントリー美術館

秋に京都へ行った際、京都国立博物館で開催されていた「japan 蒔絵」が東京サントリー美術館に巡回して来た。京都で見逃したので、早速出かけて来ました。

展覧会の構成は次の通り。第1章~第3章は前期、後期で展示替えによる展示品の入れ替えがありますので、ご注意ください。
第1章 中世までの日本の蒔絵
第2章 西洋人が出会った蒔絵 ~高台寺蒔絵~
第3章 大航海時代が生み出した蒔絵 -南蛮漆器-
第4章 絶対王政の宮殿を飾った蒔絵 -紅毛漆器-
第5章 蒔絵の流行と東洋趣味
第6章 王侯のコレクションと京の店先
第7章 そして万国博覧会

ご覧になってお分かりのように7章までの章立てというボリュームの大きな内容。
ことに、眩暈がするような作品群が登場するのは第6章。里帰り品の蒔絵作品が続々とこれでもかこれでもかと行く手に現れる。

印象に残った作品のうち、特別これだけは!というものだけをご紹介。

1.宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱 平安時代 919年 仁和寺 国宝
kokuhou

空海が唐から持ち帰った経典を入れるために、空海の死後、醍醐天皇が作らせたものだという。
冒頭でいきなり、こちらの作品と出会う。展覧会の一番最初に見る作品と言うのは非常に重要だ。
最初でノックアウトされた私は、この展覧会が凄いんじゃないかと最初に予感した。そして、その予想は当たった。
古びてはいるが、しっかりと経箱の姿を保ち、更に蒔絵もしっかりと残っている。逆に古びた感じが上品だったりする。鳥の絵柄が相当に細かい。

81.山水花鳥蒔絵螺鈿箱 ヴェルサイユ宮殿美術館
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作品名は立派だが、何を隠そうこちらは「おまる」なのだ。蒔絵のおまるって、それを使っていた当時のフランス貴族も凄いが、作った日本の職人の気持ちたるやいかばかりであっただろうか。
あほくさ~とか、誰が使うんや?(何故か関西弁)などと思わなかったのか職人さんは。
螺鈿の細工が、美しいのであった。

78.マゼラン公爵家の櫃 江戸時代 ヴィクトリア&アルバート美術館
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本展、ベスト作品。これは、もう素晴らしすぎます。この櫃を見た後、頭が呆然としてしまって、後半は使い物にならなくなってしまったほどの衝撃です。
残念だったのは、今回全ての展示に言えることでしたが、箱の上部が正面から見えないこと。
背の低い女性は、つま先立ちしても上からの箱が見えない!
横からだけでなく、上部の細工だって確かめたいではありませんか。それなのに、それなのに、見えないなんて・・・。
せめて、鏡で反射させるとか、もう少し展示の高さを下げるとか工夫していただきたかった。
ということで、こちらの超絶技巧の櫃も、上からの状態は確かめられず、側面からじっくり拝見。
着物姿の女性が何人も描かれていますが、その全ての着物の模様が違う。細かく細かく模様が付けられているのは感動もの。
4年がかりでの修復が終わり、初公開の作品。
正面には、源氏物語の「賢木」「蓬生」「胡蝶」などの絵物語の断片、左側面には、源氏物語の「野分」の留守模様、右側面は、曽我物語の「富士の巻狩」。
最後背面は、狩野派の竹虎図。
4方からじっくり堪能してください。

117.「漆の真野あるドールハウス」 ゴータ・フリーデンシュタイン城美術館
こちらは、タイミングが良かった。
ちょうどこの日は銀座のギャラリー小柳で「ハウス」を見て来た所。新作の束芋映像作品にドールハウスが使用されているのを見たのだが、同じ日に本物のドールハウスにお目にかかれるとは。
こちらのドールハウス、本当に壁が漆塗りのお部屋がある。

後半は香合、沈箱など小さな作品の逸品が目白押し。
後半の作品は展示替えがほとんどないので、次回行った時にゆっくり見なおして来ようと思います。

*前期は1月12日まで。後期は、1/14~1/26まで。
伝狩野山楽筆の「南蛮屏風」は1/7~1/12の期間限定で展示されます。

「年画で迎えるお正月 ベトナム民間版画展」 武蔵野市立吉祥寺美術館

こちらの展覧会チラシに惹かれて、武蔵野市立吉祥寺美術館に行って来ました。
betonam

ベトナムの旧正月に、厄除け、家内安全、招福の目的で家庭で飾られる民間伝承の木版画「年画」は中国から伝わり、17~18世紀に隆盛期を迎えたと言われています。
今回は、この年画のうち「ドンホー版画」と「ハンチョン版画」に分けて、作品を展示しています。
両者の特徴は以下の通りです。

<ドンホー版画 Dong Ho>
仏教伝播の地として栄えたハノイ近郊のドンホー村では、収穫後の農閑期になると、多くの農民が正月(テト)用の飾り絵として版画制作を行ってきた。それが農村派の年画「ドンホー版画」で、歴史故事、民話、風刺、時事など親しみやすい題材が多い。手漉きの紙に、地塗りを施した後、天然顔料で3~4の色版を重ね、最後に墨版刷りをする多色木版。線が太く平面的だが、素朴な風合いが楽しめる。

<ハンチョン版画 Hang Trong>
かつてハノイ市内のハンチョン通りで制作された都市派の年画を「ハンチョン版画」といい、題材も制作方法も中国の影響が色濃く、祭祀図や装飾的な花鳥図が多い。主に富裕層からの注文により制作され、多くの場合、墨版1版の上に手彩色が施される。ドンホー版画に比べ、線は繊細で、彩色が鮮やかで、より立体的、絵画的な趣向である。

まずは、ドンホー版画。
松濤美術館の素朴美の系譜に並べるべき!と思うような素朴味溢れる作品の数々。
一番の特色は色使いだと思います。天然顔料を使用しているという版画で使用されているオレンジ色、黄色はアジアのお土産屋さんでよく見かける色。東南アジア色は、色だけ見ても感じます。
さらに、描かれている人物の顔は、単純、はっきり言ってしまうと稚拙な表現だけれど、それがまた味わいのように思います。

一方ハンチョン版画の方は都市派だけに、ドンホー版画に比べると、技術水準もやや上がっているように思います。例えば、「鯉魚望月」(↓)などは、なかなかのもの。日本でもこんな鯉が滝のぼりしている日本画を見かけます。
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ベトナムでは、鯉が立身出世の象徴だそうです。下向いてるけど、大丈夫なんでしょうか?
これら木版画は、手漉きの紙に摺られており、手工芸的な味わいもあります。

ところで、アジアの文化、アートを最近見かけることは多いのですが、同じ中国から伝来した文化でもベトナムと日本ではその進化過程が大きく異なります。
私は国粋主義者ではありませんが、ベトナム版画と同じ木版画の日本浮世絵を見ていると、その版画技術の卓越さは、やはり日本ならではのものです。
ここに、つくづく国民性の違いを感じます。

*1月18日まで開催中です。

千葉市美術館所蔵作品展「カラーズ・色彩のよろこび」 千葉市美術館

企画展「雪舟と水墨画」展の続き。
前回の所蔵作品展「ナンバーズ」に続いて、今度は「カラーズ・色彩のよろこび」と上手いネーミング。
千葉市美は所蔵作品展の見せ方が上手い。
ちまちまっとした近代版画や浮世絵などは、ともすればマンネリ化しがちだけれど、そこをテーマを決めて、それに合った作品を選んで見せてくださる。

今回の所蔵作品展もじっくり見ていたら、かなりの時間を必要とした。
第1部「色彩のよろこび」
水墨画のモノトーン世界を堪能した後だったので、余計に色を使った作品は目に鮮やか。
川端実の赤を使った「門のイメージ 赤」は強烈だったが、個人的な好みは、『一木集』シリーズの中からの2点。牛島憲之「雲」と若山八十氏の「海」が特に良かった。

第2部「色いろいろ~近世・近代の版画より」
一番の見所は摺物(すりもの)と呼ばれる非売品の絵入り版画。
非売品ということで、相当贅沢な作りをこらしていて、しかも上品な出来栄え。
今回は美人画で著名な渓斎英泉の4点が出ていた。
雲母刷りは言うに及ばず、金摺、銀摺など下絵はもちろんだが、摺りの技術が格段に通常の浮世絵版画と一線を画しているように思った。
描かれているモチーフも縁起物であったり、作品全体に品がある。

4点だけでなく、他の作家の摺物もぜひ、見てみたいところ。

淡色を重ねる・原色を重ねる、藍摺という発想、色を着替える、背景:色とバレンの巧みと続く。

-黒の魅惑
第2部最後は色の中でも黒に着目しての作品紹介。
ここで紹介された3点はどれも良かった。
・春梅斎北英 知らない作家。「二代目嵐璃寛の団七九郎兵衛」
黒のグラデーションが効果的に使われている。
・月岡芳年 雪花月のうち月 「毛剃九右衛門」
構図が大胆。紙面のうち左上に大きく月をその下に頭がサボテン上の役者を配す。
黒の魅惑ってことは、サボテン頭の黒に着目ってことなのか?
・小村雪岱 「蛍」
大好きな雪岱の版画。中でも、「蛍」は本当に良い。
黒い闇の中、小さな蛍の光がぼんやりと。よくよく眼を凝らせば、蛍そのものも、きちんと描かれていることがよく分かる。

第3部「特別な色-たとえば赤」
輸入された化学染料を使用した浮世絵は、ちょっとどぎつい。
このコーナーでは梶原芳月「阿蘭陀土産」大正15年が素晴らしかった。

第4部「幕末明治の極彩色」
最後は月岡芳年の新撰東錦絵シリーズで血まみれ作品を堪能(血まみれを堪能って何だか変)。
やはり、芳年ファンとしては1点でも沢山見たい。

ほぼ同時代作家の豊原国周には全然惹かれない。
芳年の良さって何だろう。
他には三代豊国が2点。いずれも、人物の着物模様に着目です。

*1月25日まで開催中。

2008年12月27日 鑑賞記録 

何とも盛り沢山な1日となったため、久々に鑑賞記録形式でふりかえり。
過去最高、1日に3組のアート系ブロガーの皆様と遭遇いたしました。

スタートは、馬喰町の「ラディウム」と「CASHI」。
ラディウムは、展示スペースが狭いので常に物足りなさがつきまとう。カンノサカンの個展だったが関心はもてず。むしろ、CASHiの動物アートの方が強烈だったかな。

銀座に移動。
シャネルネクサスホールにて「モダンな白眉 パリセガン島 兵庫達弥写真展」を見る。
シャネルネクサスホールは初訪。想像していたのより、広い空間だった。
作品がすごいのか見せ方が上手すぎるのか、照明で見栄えがアップしていたのは間違いない。
また、パーテーションがわりに、薄い布で仕切りをしていたのが良かった。さすがシャネル。

少し歩いてギャラリー小柳の束芋「HOUSE」へ。
ここで、入口正面で振り返った人物があおひーさんであることを知り驚く。本当に今年1年あおひーさんとはいろんな所で遭遇させていただきました。
束芋の「HOUSE」展は、私の拙い感想でなく、あおひーさんの素晴らしい記事が早速アップされていますので、ぜひそちらをご参照されることをお勧めいたします。
個人的な感想は一言「やるな、束芋」。

銀座から銀座線にて渋谷へ移動。
松濤美術館で「素朴美の系譜」を見る。地下1階は、大津絵やら禅画やらジャンルも様々な盛り沢山の内容で、2階に上がって、ここでの大好物クロックムッシュと美味しい紅茶をいただいたら、ソファでうとうと、お昼寝を。。。
松濤はこのゆったりソファでのんびりできる所が良いのです。都内で一番くつろげる美術館です。
しかも、今回はソファに座ると目の前に斉藤与里の「柿」と「沼辺の朝」そして梅原龍三郎「カンヌ・月と雲」いずれも、私の好みの油彩で、最高でした。
梅原龍三郎の「カンヌ・月と空」は近くで見ると何てことない作品かもしれませんが、少し離れて見ると空が虹色になっていて、本当にきれい。

ひと休憩して、2階の作品を見始めたら、今度は「つまずく石も縁の端くれ」の一村雨様が。
半年ほどまえにMOTでも偶然お会いしましたが、久々の偶然です。

松濤を出て、次は東京ワンダーサイト渋谷ヴィック・ムニーズ「ビューティフル・アース」展へ。
ヴィック・ムニーズは先日見た、MOTno「ネオトロピカリア」展にも参加していたようだが、その時はほとんどノーマーク。ここ、渋谷で作品集を見て、MOTにドローイングがあったことを思い出した。
ワンダーサイト渋谷では、もっと大がかりな作品で勝負している。
「ピクチャー・オブ・ガベージ」(ごみで作る作品)、「ピクチャー・オブ・クラウド」「ピクチャー・オブアースワーク」など計30点が日本初公開。
特にごみで作った作品「ピクチャー・オブ・ガベージ」は制作過程を映像で流しているので、ぜひ併せて鑑賞していただきたい。
この展覧会イチオシです。

ワンダーサイト渋谷のすぐ近くたばこと塩の博物館で「おらんだの楽しみ方」を見る。たばこと塩の博物館らしい内容。浮世絵やら、たばこ関係資料やら、オランダをキーワードに様々な資料が展示されている。

渋谷から外苑前へ移動。
ワタリウム美術館で「島袋道浩展:美術の星の人へ」を見る。
ワタリウムは正直苦手。でも、島袋が好きなので、行ってみた。
悪くはない特に、映像作品はなかなか良かった。でも、豊田市美で見た「Blooming」展の方が良かったなぁ、やはり。

ここで完全に日が暮れた。
最後の目的地、ミッドタウンのサントリー美術館へ。
「Japon 蒔絵」展を見る。入口前で、アート系ブログ界の大御所「弐代目・青い日記帳」のTak様ご夫妻と遭遇。しかし、ちょっとでもタイミングがずれたら、会うことなどないだろうに。

さて、「蒔絵展」スーパーヘビー級の展示でした。6時頃入館し、出たのは閉館間際の8時前。
2時間の鑑賞、しかも後半は小さな作品が多かったので、やたら消耗しました。
とにかく、展示作品数が非常に多いので要注意。
内容も非常に濃いので、感想は別途。必見の展覧会です。

と言う訳で、サントリーで全エネルギーを使い果たし、本日の鑑賞は終了。
お疲れ様でした。

「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」 千葉市美術館

omote
千葉市美術館の「雪舟と水墨画」展を見て来ました。
雪舟の故郷岡山にある岡山県立美術館では、水墨画の展示を方針とし、収集してきました。今回は、その岡山県美の貴重な水墨画コレクションの中から、中国宋代の牧谿、室町時代の雪舟、江戸時代の宮本武蔵、浦上玉堂、明治の富岡鉄斎に至る66点より水墨画の世界を紹介しています。

展覧会の構成と共に印象に残った作品で振り返ります。

第一章 中国絵画-憧憬の中国-
・伝 夏珪 「山水図」 南宋時代
入って正面に、観客を迎えるように1点展示されている。それが、これから始まる水墨画の世界のまさにプロローグに相応しい印象を醸し出していた。
1点だけで、これだけオーラが出ているのはすごい。

・伝 馬遠 「高士探梅図」、「採芝図」 元-明時代
「伝」はついてしまうが、どちらも優美な筆遣いの美しく繊細な香りのする作品。ことに、梅の枝の様子はこれ以上ない程、細い。
「採芝図」の小さく小さくきのこが描かれている様子に注目。

・伝 月壺 「百衣観音図」 元時代 重要美術品
仏画であるから、モチーフはみな同じ。抱一など琳派も「百衣観音図」を描くが、これらの中国伝来の絵画がルーツなのだろうか。とても良く似ている。

第一章の最大の目玉は恐らく玉澗の「廬山図」<重要文化財>なのだろう。展覧会チラシ裏面にも掲載されていた。玉澗は、中国より日本で人気のあった作家とのこと。が、私には残念ながらその良さは感じられなかった。

・牧谿 「老子図」
roushi
鼻毛にわずかに残った頭髪もざんばらな老子の絵。着衣の濃墨が映える。

第二章 日本の水墨画たち-雪舟から武蔵まで-
サブタイトル通り、ここでは雪舟がまだ拙舟と名乗っていた頃の作品から始まり、宮本武蔵の作品中心での展開。

・「渡唐天神図」 雪舟等揚 室町時代
同様の作者不明の「渡唐天神図」も会場内に展示されていたが、雪舟のそれは、松と梅が同心円状に丸く樹に坐した天神を取り囲むように描かれているのが特徴的。この時代「渡唐天神図」は数多く描かれていたが、天神がやや横向きに座っている姿というのはないようだ。
気になって、2002年の東博・京博で開催された「雪舟」展図録を調べると、この作品も出展されていた。
なお、「雪舟」展では上図の他「神農図」、「山水図(倣玉澗)」の3点が岡山県美からは出ていた。
もちろん3点とも、本展で見ることができる。

・「出山釈迦図」 拙宗等揚
どこかなよっとした釈迦図。水墨画による人物図を見ると、必ず着衣表現に目が行く。墨の濃淡、線の太さ細さだけで、これだけの表現をする技術というものに感心してしまう。

拙宗時代の作品はこの他「雪景山水図」も出ている。
雪舟については、ぼんやりとしか知らず、結構名作はあちこちで見かけていたが、中国絵画がマイブームなだけに、かの地で絵を学んだ雪舟に俄然興味がわいてきた。
早速帰りに千葉市美のミュージアムショップで「日本の美をめぐる 雪舟」を購入しお勉強した。
千葉市美のミュージアムショップはいつも欲しい物が何かある。私にとって危険な場所だ。

それと「雪舟」の署名が気になった。あまりカッコ良い字体ではなく、しごく素朴で恰好をつけていない署名である。時代は全く異なるが、蕭白の飾り文字と比べると大変な違い。

・雪村周継 「瀟湘八景図屏風」 紙本墨画金泥六曲一双 
こちらは見事な八景図屏風。これ見られただけでも大満足。海を描く左隻がことのほか素晴らしい。

・雲谷等益 「楼閣山水図屏風」 紙本墨淡彩六曲一双 江戸時代
雪村の屏風とはかなり画風は異なる。どちらかと言えばかっちり、きっちりという印象を受ける。
こんな描き方の水墨画を栃木県美の「朝鮮絵画と日本」展でも見たような。。。

・宮本武蔵 「布袋竹雀枯木翡翠図」
この作品が一番武蔵のイメージに近い感じがした。雀や枯木はモチーフとしてよく彼の作品で見た記憶あり。武蔵の水墨画は有名だけれど、上手いのか下手なのか作品にばらつきがあるように感じる。

第三章 岡山出身の四条派画家-柴田義重と岡本豊彦-
サブタイトル通り、2名の岡山出身の作家に焦点を当てて紹介している。
特に気になったのは、柴田義重。「西園雅集図」は、近代日本画の走りではないだろうか。
既に明治の日本画の息吹がした。
人物の表情を見ていると、西洋画っぽい。

第四章 江戸時代の唐画と富岡鉄斎-中国愛好の系譜-
ここでの私的みどころは浦上玉堂、浦上春琴、富岡鉄斎の3名。
鉄斎は実のところ、あまり好みではないが、玉堂、春琴の作品は目から鱗的な感動があった。

・浦上玉堂 「山澗読易図」
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山の表現がまるで、きのこもしくは筍のようである。この技法は玉堂オリジナルなのか?

・浦上玉堂 「春山染雨図」
こちらは水の表現が特異。うずまきのような波。まるで鳴門のうずしおであった。

・浦上春琴 「名華鳥蟲図」
春琴の作品は緻密。蝶も虫も花も、きれいにきちんと丁寧に描いている。中国の花鳥画の影響か。

様々な墨の表現を楽しめます。

*1月25日まで開催中。

「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」展 東京都現代美術館

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今年はブラジルのアーティストを紹介する展覧会が多かったと思う。豊田市美に川崎市民ミュージアムなどなど。
そして、この東京都現代美術館の「ネオ・トロピカリア」展である。
ここのところ、MOTは外しの展覧会が多いので、今回も大きな期待はしていなかったが、これが案外楽しめた。

展覧会は、建設、デザインなど様々な分野で活躍中、活躍した27組のアーティストの作品を紹介している。豊田市美での「Blooming」でも出展していたアーティストもいた。

以下好印象の作家を挙げる。

・リジア・パペ
「Tteia、C」は、金色の糸をピンと張っただけの単純構造にもかかわらず、造形として優れていた。
見る角度によって、糸が見えたり見えなかったり。作品のまわりを2週したが、その都度見え方が変化して面白かった。

・イザベラ・カペト
「ルチャ・リブレ」は2.7m×4.5m布の前面をビーズやスパンコールで覆い尽くしたタペストリー。
見た瞬間、手芸版曼荼羅だと思った。
メリーゴーランドや観覧車など、おもちゃのようなクラフト作品が特徴。手芸・工作分野の作品で、一般的なアートの範疇に含まれるのか、いやアートという概念の定義づけすら明確ではないのだから、何でも良いのか、わずかながら考えさせられた。

・トミエ・オオタケ
名前からも分かるように、日系1世。39歳から絵画に本格的に取り組む。
赤い矩形の抽象画はロスコーぽい?と思ったり、ブルーのはザオ・ウーキー?とありがちなんだけど、印象的だった。

・アナ・マリア・タヴァレス
今回のマイベスト。豊田市美では、屋外の水盤に鏡面の睡蓮作品を並べていた。
MOTでは、映像作品で勝負。
これが、最高!
タイトル「通風孔(ピラネージ)」は、スチールやガラスなどのモダン建築素材からなる無限の迷宮がゆっくりと回転する映像。18世紀のイタリア画家、建築家のピラネージを参照している。
この作品建築の一部を拡大して見せているが、どの映像でも「水」が見えてくる。実際に水を使った撮影をしているのだろうか?
入って左右に巨大スクリーンがあるのだが、あの見せ方しかなかったのかな?
科学館のような360度シアターなんかで、映像流したら、とっても面白そう~。

・オスジェメオス
アーティイスト名「オスジェメオス」(ポルトガル語)=「双子」。
本当に双子のアーティスト。作品はグラフィックアート、落書きから始まっているが、塗る、描くだけでなく、貼ったり、デコレーションしたり、楽しければ手段を問わないといった風情。
画風は、できやよいに似ている。

・ミラ・シェンデル
他の作家による作品とはうって変わって、静謐さが感じられる。
展示作品は、ライスペーパーに油彩であったが、描かれていたものは、日本の書のようにわずかな線描だけ。それなのに、どこか訴えてくるものがあった。

・ルイ・オオタケ
先に挙げたトミエ・オオタケの子供。
独特の色使いと形状で知られる建築家。サンパウロのスラム街を色彩によってよみがえらせたプロジェクトを紹介している。Color brings happy.そんな単純ではないかもしれないが、色彩が街を変えた。

*1月12日まで開催中。

はじめての美術館6 八王子市夢美術館 「いとも美しき西洋版画の世界」

八王子まで遠征し、「いとも美しき西洋版画の世界」を八王子市夢美術館で見て来ました。
八王子には村内美術館や東京富士美術館に行くために何度か訪れましたが、いつもこの八王子市夢美術館は素通りしていました。でも、車窓から見えるこの美術館気になっていたことは確か。

そして、今回の展覧会。サブタイトルは15世紀の「デューラーから20世紀のピカソまで」と何やら期待高まる香がしますが、往々にして期待は外れる場合もあり。
ところが、この展覧会期待を大いに上回るボリュームで八王子まで行った甲斐がありました。

1時間では足りず、後半は少し駆け足になってしまったのが悔やまれます。じっくり見るなら1時間半は必要。
展示替えは一切なしで、総展示作品数は161点!
これだけの版画をじっくり見ようと思ったら1時間半でも足りないかも。
しかも、タイトルに違わず巨匠たちがひしめいています。出品作家一覧は以下。一体何人いるやら。

ションガウアー、メッケネム、マスターAG、デューラー、マスターMZ、クラーナハ、ホプファー、アルトドルファー、バルドゥング、S・ベーハム、B・ベーハム、アルデグレーファー、ルーカス・ファン・レイデン、ボス、ブリューゲル、ホルツィウス、サーンレダム、ミュラー、マタム、ヴェルデ、ルーベンス、レンブラント、ロベッタ、ライモンディ、ティツィアーノ、ギージ、カロ、デッラ・ベッラ、ピラネージ、ホガース、ゴヤ、ブレイク、ドラクロワ、ドーミエ、メリヨン、ブラックモン、ミレー、コロー、ブレスダン、ファンタン = ラトゥール、ロダン、ルドン、ゴーギャン、ロートレック、ホイッスラー、クリンガー、アンソール、ヴァロットン、ビアズリー、ムンク、コルヴィッツ、クレー、カンディンスキー、シャガール、シーレ、ブラック、ルオー、マイヨール、マティス、ピカソ、エッシャー、ニコルソン、ムア、エルンスト、マグリット、ミロ、ジャコメッティ、マリーニ、エミリオ・グレコ

今回初めて知った作家もいましたが、いずれも新たな版画世界を垣間見せてくれました。

印象に残った作品はあまりにも多すぎてとてもあげられないので、ざっと気になる作家別にご紹介します。

まずはデューラーは外せない。
元はと言えば、彼の作品見たさに出かけたようなもの。
わずが4点だったが「聖母子と王冠を捧げる2人の天使」などを見られて良かった。

・マルティン・ションガウアー
小さな「白鳥の盾を持つ貴婦人」は小さな宝石のような作品。
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・ルーカス・クラーナハ(父)
クラーナハ名前は聞いたことあるけど、作品を見たのは初めてではないか。宗教に題材を取る版画ばかりだったが、力量が伺われる。

・ハインリッヒ・アルデグレーファー
「ロトの物語」シリーズが面白かった。

・ピーテル・ブリューゲル(父)
ブリューゲルの人気がしのばれる。「七つの大罪」シリーズ全7点が全部見られたのは感動もの。
版画はブリューゲルの原画をもとに、版元が作成しているが、それでも良いものは良い。
このシリーズ凄いです。ブリューゲルの絵はやはり、他の画家達とは一線を画していることが、この展示でよく分かった。それまで見て来た作品のどれよりも、人間や動物の描写が生き生きとし、ある意味もっとも不気味で怖かった。
大罪シリーズだから怖いのは当たり前だが、教訓と言う点では、効果は大きいのではないか。少なくとも私は怖さのあまり「怠惰」「憤怒」「貪欲」「大食」「嫉妬」「傲慢」「淫欲」いずれも自制しようと心に誓った。

・ヘンドリック・ホルツィウス
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こちらも知らない作家。「羊飼いの礼拝」(上図)は特にすばらしい。線の美しさ、細かさは驚嘆もの。明暗表現も版画とは思えない。これは未完成のままだが、完成したらどんなになっていたのか。

・ヤン・サーンレダム
・ヤコブ・マダム
・ヤン・ファン・デ・ヴェルデ(子)
らこのあたりのオランダ、フランドル系?作家の作品は全てお気に入り。

・レンブラント・ファン・レイン
やはり、この人は天才でしょう。この方の作品も他とは一線を画しております。何と言うか線の描き方が独特。自由自在、線の操り方を心得ているとしか思えない。
去年のボストンレンブラント版画展は良かったよな~と懐かしい。
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「宝章のついたヴェルヴェット帽をかぶり口ひげをたくわえた男の肖像」1637年


・ウィリアム・ホガース
風刺の利いた作品。ピリリとからい。

・ジャック・カロ
カロの作品はたくさん出ていた。中では「聖アントニウスの誘惑」が一番。

・フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス
ゴヤの版画まで見られるとは・・・嬉しすぎる。ゴヤは版画も扱っていたのか。
当たり前と言えば当たり前だけれど、キャプション見なくてもゴヤと分かる人物作品。どれもこれも手や足が太短く、顔が特徴的。

・ジャン=バティスト=カミーユ・コロー
「イタリアの思い出」など、コローらしい色彩はなくとも、白黒の版画でもコローの世界観は十分感じられた。

・ウジェーヌ・ドラクロワ
「空を飛ぶメフィストフェレス」これ1点のみだけだったのが惜しい。もう少しドラクロワのリトグラフは見てみたい。

・ロドルフ・ブレスダン
驚異としか言いようのない細密版画。聞けば、ルドンの師であり、弱視であったとか。
わずか160点しか作品は残っていない(あれだけ細かければ、160でも凄いと思う)。その作品は妖しい魔法がもしあったなら、彼はその使い手になれただろう。
「死の喜劇」「善きサマリア人」2点とも、様々な生き物が登場し、隅々まで見逃せない。

・オーギュスト・ロダン
彼の版画も初めて見たが、ヘンリー・ムア、ジャコメッティ、マリノ・マリーニの3名の彫刻家による版画作品もあったが、いずれ劣らぬ出来栄えの良さ。
彫刻家であれ、何であれ基本はデッサンで、版画や彫刻はその延長線上にあるものなのだろう。

・ジェームス・アンソール
カラフルな油彩画からモノトーンの版画は想像つかなかったが、これがはっとするほど良かった。

・ケーテ・コルヴィッツ
もとより好きな作家。やはり彼の版画作品には力を感じる。

盛り沢山過ぎて、とても語り尽くせない。西洋版画の変遷を一望できる充実した内容だった。これが1人のコレクターによるコレクションだと言うから驚きだ。
なお、会場では日本の版画との比較ができる作品入り年表が置かれているが、とても分かりやすいのでオススメ。


1月27日まで開催中。もう1回見たいなぁ。。。

*この展覧会は埼玉県立近代美術館から巡回で、次の八戸市美術館が最終巡回です。

「丸紅コレクション展」 損保ジャパン東郷青児美術館

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新宿で開催中の「丸紅コレクション展」に行って来た。
総合商社丸紅は、江戸時代末期に創業した呉服商がルーツだと言う。呉服商がルーツの商社やデパートって多い。
丸紅コレクションは1970年代に日本市場に向けて、丸紅が商社として美術品の輸入販売に参入した時の収集品である。しかし、美術品の輸入販売業は成功せず、もしや売れ残ってしまっや作品なのか、丸紅コレクションとして自社の資産とした。

呉服の商品開発のために集められたという着物の数々が冒頭に展示されていたが、あまり関心をそそるものがなかったので、割愛する。

2.衣装図案(デザイン)下絵コレクション
ここでは、名だたる日本画家はじめ、意匠画家などの衣装図案が展示されている。
中でも、注目したのは彫刻家朝倉文夫「春雨」である。
朝倉文夫という人は、彫刻だけでなく建築、更に衣装デザインまでも手掛けていたのか。春雨も幾何学的なとらえ方をしている、一風変わった春雨。
これが衣装化された現物を見たかった。

他には、山口華揚など彼らしい可憐な「野葡萄」の意匠が良かった。

3.日本洋画コレクション
ここからが、お楽しみの絵画コレクションの始まり。あまり期待していなかったのだが、これがなかなか良い作品ぞろいで楽しかった。作者はバラバラだけれど、見ごたえがある。以下印象に残った作品。
・「沼のほとり」 1919年 岡田三郎助
・「彦根内湖」 1926年 和田英作
両者は、ラファエル・コランに師事。特に岡田の作品はその影響が強く現れている。
和田の「彦根内湖」は彼らしい風景画。静岡県美で見た和田栄作の風景画、そちらは富士山が描かれていたが、に似た雰囲気である。

・「泰山木」 1953年 椿貞雄
この作品はとても好み。画面の上半分が大きく真っ白な泰山木の花で埋められている。構図が良い。

・「横向裸婦」 1951年 小磯良平
小磯の作品はもう1点「バレリーナ」が出ていたが、この「横向裸婦」は小磯本人も気に入っていたという通り、葡萄模様をバックに豊満な横向きの裸婦が美しく上品に描かれている。

・「ラス・パルマス」 1973年 香月泰男
亡くなる1年前の作品。スペイン旅行の際に着想を得て描かれた闘牛場での一場面。何と言っても特色は構図と色彩。
剣を刺された牛は、画面上よりに、小さく描かれている。上部に描かれた客席と牛で何とか闘牛場と判断がつくが、絵の大半は闘牛場の砂場である。
そして、その砂場は香月お得意のざらっとした質感のマチエール。
牛と客席はそんな砂場と対照的に、クレヨンでも塗ったかのような赤・黄とカラフルな配色。
香月泰男がこんなに明るい色を使うとは知らなかった。どうもシベリアシリーズのイメージが強くていけない。

4.西洋絵画コレクション
・「立てる裸婦」 制作年不詳 ジャン・ジャック・エンネル
エンネルはやはり好きな作家だ。どこかで回顧展やってくれないものだろうか。
この小品も、美しい。小さな宝石みたい。

・「冬景色」 制作年不詳 モーリス・ド・ブラマンク
この作品、同じ損保ジャパン美術館で開催された「ブラマンク展」に出ていただろうか?
今回は衝撃的だった。暗く重く荒々しい冬空と奥に吸い込まれそうな雪道。
ブラマンクいいなと改めて思った作品。

・「ミモザの花」 1952年 モイーズ・キスリング
この作品、、前にどこかで見た。黄色のミモザの花が記憶に残っている。嬉しい再会。

5.「この1年=1969年 「ヨーロッパ巨匠名画展」

トマス・ゲインズバラの「木のある風景-乳搾りの娘に求愛する農夫」1755-59年も良いけれど、やはりクールベがマイベスト。
・「積雪の森」 ギュスタブ・クールベ 1862年
クールベは晩年、この絵のような故郷の風景画を多く描いたという。若かりし頃の斬新でアグレッシブな作品は影をひそめ、漸く彼も精神的な安定を求めるようになったのだろうか。
この「積雪の森」も、何と言うこともない風景画だけれど、とても美しい。

・「ヴィル・ダブレーのあずまや」 1847年 ジャン=バティスト=カミーユ・コロー
150sm×110cmの大きな作品。母親の誕生祝いにコローが描いた。
コロー自身も画面の下隅に描かれているほか、彼の家族が全て画面にいる。

・「美しきシモネッタ」 1480-85年頃 サンドロ・ボッティチェリ (上図)
先日松坂屋美術館で見た「聖母子と天使」よりも小さな女性の横向き半身像。
比較で言えば、「聖母子と天使」の方が見ごたえがあった。衣装の細かさやリボンなどに注目し、じっくり見る。

*12月28日まで開催中。結構混んでます。

「浮世絵の中の源氏絵 源氏物語誕生1000年記念」 太田記念美術館

東京に出てきて、いくつかの美術館の会員になったが、一番会員になって良かったなぁと思うのがここ太田記念美術館。
毎月展示替えがあり、更に年に数回特別展も開催される。

今月の展覧会は源氏物語にまつわる浮世絵を紹介する内容。実は、多忙ゆえ、今月はパスしようかと思っていたら、こちら「弐代目・青い日記帳」のTakさんが今回も素晴らしい記事を書かれていたを拝見し、やおら出かけて来ました。Takさん、ありがとうございます!

さて、展覧会は次の3部構成になっています。

①浮世絵師たちが描く王朝世界
②背後に隠された源氏物語
③これが源氏物語? 大ベストセラー小説『偐紫田舎源氏』の世界

今回の個人的な収穫は何と言っても1階の展示作品の数々でしょう。
畳スペースでは毎回肉筆浮世絵の良いものがとっかえひっかえ展示されていますが、今月は垂涎ものでした。

・葛飾北斎 「源氏物語図」
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北斎から「源氏物語」のイメージは全く浮かびませんでしたが、天才は古典も描いていたのですね。
しかも、北斎による源氏物語です。もう、さすが。もう肉筆浮世絵という枠組みは超えてますね、完全に。朧月夜も光源氏も表情が読み取れて、しかも豪華。美しいです。

・岩佐又兵衛 「伊勢物語図」
源氏物語特集なのに「伊勢物語」???何て固いことを言わず、楽しみましょう。
ここで、岩佐又兵衛の肉筆にお目にかかれるとは、嬉しくて小躍りしそうになりました。
東博の浮世絵コーナーで最近見た肉筆より、ずっと状態が良いです。ところで、又兵衛は自称「土佐派末流」なんですね。
血みどろ又兵衛からは想像できませんが、こちらの「伊勢物語図」における人物描写、都会の男と、田舎の女を見ていると、繊細な筆使いは土佐派かもと思わせるものがあります。

次に浮世絵ですが。
お気に入りの月岡芳年「月百姿 石山月」(下図)が出てました。礫川浮世絵美術館で見たものより、状態が良かったです。色が美しいって大事ですね。
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小林清親「古代模様 紫式部」などを横目に見つつ、なんといきなり酒井抱一「源氏物語図」の扇面画が!
浮世絵ではないのに、突如さらりと扇面画があるところがすごいです。

しかも、抱一の作品琳派らしさ溢れていて、金箔の扇子に源氏絵が彩られているのですが、一番気に入ったのは、図中の襖絵の水鳥の様子。扇子絵の中にある襖絵まで、しっかり琳派してました。
細かすぎる、美しすぎる~と後ろ髪ひかれつつ、次に進みます。

②背後に隠された源氏物語では、浮世絵お得意の見立てを使用した作品がずらり。
・鳥文斎栄之「女三之宮 衣通姫 小野小町」
古典に題材をとった美人画3点です。どういうわけか、女三之宮がかわいくて良かったです。

・歌川広重 「江戸むらさき名所源氏 見立」シリーズは源氏物語のどのお話のどの場面を表しているかを推理して当時遊んでいたのでしょうか。教養人いやもしくは庶民の典雅な遊び心がうかがわれます。

2階にあがると、一気に庶民の源氏物語へと転じます。
『偐紫田舎源氏』は江戸時代に源氏物語を下敷きに相当アレンジした別物作品として創作されましたが、これが江戸庶民に大人気。
これだけ沢山の小説を題材にした浮世絵が描かれているとは、その人気のほどが伺われます。
ここからは、典雅とか優雅な王朝世界とは全く別世界。

どろどろとした「ザ・人間模様」満載です。品はなし。
特に三代歌川豊国(国貞)の作品は凄かったです。この作家の人気ぶりが分かる気がしました。
壁ではなくて、平たいケースに展示ケースにあった三枚続きの連作は素晴らしかったです。
画面全てに、色が溢れてました。源氏物語と言いつつ、完全に国貞の世界。妙に登場人物たちが艶めかしいのでした。

個人的には地味ですが版本が良かったです。
・井原西鶴 「好色一代男」
日本史の教科書で習った「好色一代男」を初めて見た!

・菱川師宣 「やまと絵づくし」「団扇画様集」
初期浮世絵の素朴な図版が好きです。

そんなこんなで、年の瀬まで目一杯楽しませてくれました。

*この展覧会は本日で終了していますので、ご注意ください。

「山口薫展-都市と田園のはざまで-」 世田谷美術館

群馬県立近代美術館の常設展を訪れるたび、気になる作家がいた。
それが山口薫である。
もっとも、山口薫の名前はかなり以前から知っていた。
私が美術館めぐりをするようになるかならないかの頃、「クロワッサン」という女性誌で美術館特集が組まれており、京都の何必館・京都現代美術館が紹介されていた。そこで、展示されている作品として、雑誌に掲載されていたのが、山口薫の「おぼろ月に輪舞する子供達」1968年(下図)であった。
おぼろ月

雑誌に掲載されていた作品のインパクトが強烈だったのか、私の頭に何必館と山口薫の名前はしっかりインプットされる。そして、その後何必館でこの作品を見た。

前置きが長くなってしまった。
そして、今回ついに山口薫の回顧展を迎えることとなり、世田谷美術館で見ることができた。

世田谷美術館では作品リストは準備していないと言われがっかり。愛知県美と言い、世田谷美と言い、作品リストくらい希望者だけでも良いので配布してくだされば良いのに・・・。
詳細なメモを取るより作品鑑賞だけに没頭したかったので、メモも持たず、作品を見る。

今回は山口の画業を4期に分けて、ほぼ年代順に展示している。油彩小品や水彩作品関連資料など約140点で構成されている。

第1章:初期・滞欧期(1925-33年)
第2章:帰国直後・戦中(1934-45年)
第3章:戦後(1948-55年)
第4章:後記(1956-68年)

第1章から第4章で、作風が大きく変わっていく様子がよく分かる。
最初は西洋の模倣から始まり、具象絵画を描いているのだが、徐々に具象と言ってもその姿を変えていく。より単純に、線も形も単純化していくように感じた。

私が冒頭の群馬県近美で良いなと思う作品の多くは1956年以後の後期に描かれたものが多いのではないだろうか。
何を描いたと言うのではない、ただただキャンバスに置かれている色が線が幻想的でこちらに何かを訴えかけれくるようなものがあった。

馬や牛といったモチーフをよく描いていたんだなということも、今回の展覧会で気が付いた。
葬送曲というイメージがぴたりの「おぼろ月に輪舞する子供達」にも3頭の馬が描かれている。

子供達の踊りの輪以上に大きな月。
月が山口薫をお迎えに来てしまった。そんな印象の作品だ。

晩年、評価が高まるにつれ、逆に制作に苦悩し、アルコール量が増えて行く作家にとって「絵を描く」と言う行為は「辛い作業」だったのか「己に課された試練」だったのかはたまた「喜び」だったのだろうか?
最後の最後で、山口にとって絵を描くことが安らぎにつながっていて欲しいと切に願うばかり。

*12月23日(火・祝)まで開催中。

「所蔵 琳派展-装飾美の世界-」 MOA美術館

MOA美術館で開催中の「所蔵 琳派展-装飾美の世界-」に行って来ました。
MOAと言えば、かの尾形光琳の「紅白梅図屏風」があまりにも有名です。先頃まで開催されていた東博の「大琳派展」にも出展されず、もしや今回の展覧会ではと期待しましたが、残念ながらそちらの展示はありません。
どうやら、例年通り2月頃の公開を待つしかなさそうです。

そうは言っても、さすがはMOA美術館。しっかり琳派作品を揃えて来ました。
光悦、宗達、光琳、乾山、酒井抱一、鈴木其一ら全部で62点の琳派作品はお見事。

私的な見どころは、小さめの作品。
例えば、宗達の「伊勢物語図 西の対」「源氏物語 紅梅図」などなど。

中でも一推しは光琳の「草紙洗小町図」。
単眼鏡で覗いて見ると、小町の着物の紋様(錐金?)のあまりの細かさに感動します。
しかも、補修されているのか分かりませんが、退色もなく極めて美しい状態を保っていました。

光琳作品(伝も含む)は26点一番多く出展されていたかと思いますが、この他「佐野渡図」も優雅で色鮮やかな作品です。ただし、人物は男性ばかりなのでやや華やかさには欠けています。
同じく光琳「虎図屏風」、こちらは大きめの作品ですが、中国、朝鮮絵画を模倣したのか、栃木県美で開催していた「朝鮮絵画と日本」で見たようなお茶目な虎、これが全く怖くなく大きな猫のようでした。

そして、見どころのもうひとつは酒井抱一です。

抱一作品は後半に7点と光琳に比べ大変少ないのですが、少数精鋭。
中でも「雪月花図」(重文)「藤蓮楓図」はそれぞれ三幅対の優品でした。
いずれも、甲乙つけがたく、「雪月花図」の雪を描いている作品は松に積もった雪が、今まさに零れ落ちんとする瞬間を見事にとらえ、画面上に緊迫感をもたらしています。

また、「藤蓮楓図」では、藤の縦に長くぶら下がる花の房がクローズアップされていて、構図が素晴らしい。隣の「蓮図」はこれまた清楚で可憐でいかにも抱一らしい仕事がされています。
「楓図」はこれぞ琳派と言えるほど、色鮮やかな紅葉で、「雪月花図」とは違った華麗さがありました。
琳派らしさはこちらの三幅対の方があったように思います。

お気に入りの鈴木其一は2作品とちょっと物足りませんでしたが、このうち「乙御前図」は、ぷっくりしたお多福顔の女性図で、美しいというよりユーモラスな感じで面白かったです。


会場に作品リストは準備されておりませんので、事前に美術館HPからプリントするなど、ご自身で準備されることをオススメします。
美術館HP作品リストはこちら
万一忘れても、熱海駅構内の観光案内コンシェルジェのパソコンからプリントアウトは可能です。

*12月24日(水)まで開催中です。
<おまけ情報>
美術館入場料の割引券(300円)が、熱海駅出た通りの向かいにある伊豆東海バス熱海駅前案内所でもらえるようです。
バス乗り場まで行ってその事実を知ったため、私自身は戻るのが面倒で割引券はもらいませんでした。ということで、違っていたらご容赦くださいませ。

「棚田康司展 十一の少年、一の少女」 ヴァンジ彫刻庭園美術館

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冬の青春18きっぷ使用期間がいよいよ始まった。
18きっぷ愛好家として、早速名古屋⇒東京間を18きっぷで移動。途中下車で立ち寄ったのは、ヴァンジ彫刻庭園美術館(三島駅下車)とMOA美術館(熱海駅下車)である。

ということで、まずはヴァンジの「棚田康司展」のご報告です。

ヴァンジ彫刻庭園美術館を訪れるのは今回が2度目。三島駅から美術館までは、無料シャトルバスが12時を除くき1時間に1本運行しているが、私が利用した在来線との接続が悪く、45分後までバスがなかったので、仕方なくタクシーを使用した(前回もそうした)。タクシー代金2170円。ここで、18きっぷで浮いた電車代の多くを消費したのは悲しい。

当日は、生憎の雨模様しかもとっても寒い日だった。
ヴァンジ彫刻庭園美術館のある一帯を「クレマチスの丘」と称しているように、三島からどんどん登り坂で、丘の麓にあるため、駅より更に寒かった。

半分凍えつつ、エントランスから美術館に向かう。お天気が良い日であれば、ここからの眺めは最高。眼下に三島市内を見下ろせる絶好のスポットなのだが、今回は視界が悪く、それより何より、寒くて外にいるのが辛い。

建物に入ると、すぐ正面に胸までの胸像「星の少年」2007年が出迎えてくれた。なぜか。レース糸で編んだ敷物が像の下にひかれている。
地下階の展示室へ下りて行く階段吹き抜けの壁に「枝の少年」2008年がぶらさがっている。この少年像は結構好き。
中地下階展示室(階段踊り場)には、「蕾の少年」2007年、「萌木の少年」2007年がある。

こうして、地下の大展示室へ向かう途中、少しずつ、少年たちが出迎えてくれるのは嬉しい。彼らは、みなどこかで見たことのあるような顔をしているのが面白い。
作家曰く、実際のモデルがいて、逆の性別で彫像を作成しているとか。確かに、「蕾の少年」で似ていると思い浮かんだ人は女性だった。

もうひとつ、この表情が好き!と思った像は、踊り場から渡り廊下への正面に展示されていた「月の少年」2008年。
他の作品は徐々に記憶が薄れつつあるのに、この作品の表情は今も忘れられない。にっとしているというか、不思議な顔立ちなのである。もちろん、この少年も女性に似ている。

地下はイタリアの彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの大作が程良い感覚で展示されている。
企画展スペースはこの常設スペースに間借りしているような感じで、じつにひっそりと狭い。半々とは言わないまでも、もう少し企画展スペースが広くても良いのにと毎回思う。
せっかくの企画展なのに、いつも物足りない感じがあり、「なんだこれだけ?」と思ってしまうのは、私だけではないだろう。

今回は、その不可侵領域にただ1体だけ棚田の彫刻「木漏れ日の少年」2008年が展示されていた。
こちらは全身像で、今回の作品も過去の作品もそうなのか不明だが、少年像は全て全裸またはパンツ1枚のあられもない姿。
不健康そうな細い細い体つきで、どこか病的な印象を画像で見た時は持っていた。
しかし、実際作品と対峙してみると、立像は、つやつやとしあばらや血管まで浮き出ているのだけれど、病的な感じはせず、むしろ頬には赤みが射しているので、健康的な感じさえうけた。

もうひとつの着眼点は、立像の足先である。
靴下を履いている像もあったが、片方の親指の先っぽだけ靴下がやぶれ、指が顔を出している。

展示室お回り込んで企画展スペースには、「入道雲の少年」をはじめ残り6体の彫像がある。
真ん中の細いコーナーの壁にはドローイング10点もあった。
最後のスペースでは、パンフレット表紙にもなっている「父になった少女」「母になった少年」2008年(トップ画像)が、どこか遠くを見つめながら立っている。
両者の顔は似ていて、少年か少女かの性別は顔だけでは判別不能。

棚田の彫刻は最初に見たのは「美術手帳」か何かの雑誌だったと思う。
どこに惹かれたのかは自分でもよく分からないが、この彫刻をぜひ一度見てみたいと思っていた。
今回の展覧会は、棚田康司初の国内外美術館の個展である。

ヴァンジの彫刻に負けないくらい、十一の少年と一の少女は存在感があった。

*12月25日まで開催中。

<おまけ情報>
ランチは「バサラ茶屋」で天ぷら膳(1600円)をいただきましたが、とっても美味しくて、ご飯をお代わりしました。かの有名な日本料理店「青柳」の小山裕久プロデュース。同じく2階のレストランバサラでは2000円代でコースがいただけます。
イタリアンレストラン「マンジャペッシェ」は営業終了し、新しいレストランが来年の春にオープンするそうです。

「ライオネル・ファイニンガー展」 愛知県美術館

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愛知県美術館で開催中の「ライオネル・ファイニンガー展」に行って来た。
この夏、横須賀美術館で開催された展覧会の巡回である。愛知県美への巡回が分かっていたので、横須賀でなく、県美に来るのをじっと待っていたら、会期終了1週間前になっていた。

さて、ライオネルファイニンガーはかの「バウハウス」のマイスターとしてその名をしる人もいるかもしれない。ちなみに、私はこの展覧会があるまで知らなかった。。。
このファイニンガーの日本初の回顧展が本展覧会である。
ファイニンガーは、1871年NYのドイツ系移民の家庭に生まれ、16歳の時、ドイツに渡る。ハンブルクの美術学校で学んだ後、新聞の挿絵画家をして収入を得ていたが、35歳にして絵画に取り組み始める。そして、1911年キュビスムとの出会いをきっかけに、作風が変わり、独自のスタイルを確立する。

さて、愛知県美は今回も作品リストは準備していない。デパート系美術館ならいざ知らず、県立美術館たるもの作品リストくらいは、用意していただきたい。今年に入ってから作品リストのあった企画展は?と言うと思いだせない。少なくとも前回もなかった。

展覧会の概要
Ⅰ.新聞連載漫画 1906-1907
Ⅱ.初期人物象 1907-1909
Ⅲ.キュビスムの発見 1911-1918
Ⅳ.この世界の果てにある都市-おもちゃ 1910-1920
Ⅴ.バウハウスと建築 1919-1924/1937
Ⅵ.バルト海/風景 1923-1935
Ⅶ.ニューヨーク:新たな展望 1939-1955

冒頭苦言を呈してしまったが、結論から申し上げると、大変素晴らしい内容の展覧会だった。
展覧会の冒頭は、その構成に関係なく「自画像」1915年(サラ・キャンベル・ブラファー財団)で、幕を開ける。
ファイニンガーの自画像は、この作品を含め2点しかない。キュビスムとの出会いを果たした後描かれているため、その影響が強く見られる。ことに顔に注目。

初期作品では、新聞掲載漫画の名残のような人物描写もあるが、多数のエッチング作品を見ると、やはり線が生きている。更に、モノトーンでなく水彩などで着色されているのも、良い。
親交があったクレーやカンディンスキー、特にクレー的な子供の絵画のような作品「孤独な男」1921年
も見られる。

第3章の「キュビスム発見」以後は、版画作品も初期作品とは大いに異なり、個人的には対象を幾何学的にとらえるこの頃の作品はあまり好みではない。

全体を通してみると、1920年代頃から後のファイニンガー独特のスタイルが始まっているように思う。
本展は、年代順の作品展示となっていないため、分かりづらいが第6章「バルト海と風景」で展示されていた「海にかかる雲Ⅱ」1923年(個人蔵)は素晴らしい。
碧色から黄色に変わりゆく雲の様子と灰色の霧、暗い海、浜辺と水平線で分けられている構図が見事に成功している。

更にこの作品が暗く深くなっていくのが「砂丘と防波堤」1939年 個人蔵であろう。
海の遠近感が段々畑のような描写で表現されている水平線の連続と右端に斜めに切り取られた防波堤がより近くに迫って来る。

バウハウスの閉鎖、ナチ党の台頭により頽廃芸術家の烙印を押され、2番目の妻ユリアがユダヤ人であったこともあり、1937年生地NYへ戻る。
NY帰還後のファイニンガーの作品はNYの息吹をその作品に伝えている。
ドイツ時代のものより、「マンハッタンⅡ」1940年(フォート・ワース現代美術館蔵)など都市や建物がクローズアップされているように思う。

最終章でもっとも印象的なのは、「魔狼フェンリル」1954年個人蔵。
fenriru

まず、作品の色。青の濃淡だけで表現されている。描かれているのは、中央に白っぽい方形、そのすぐ下にはオオカミの瞳を思わせる黒い三角形。後は複数の直線のみで構成されている。
亡くなる2年前に描かれた油彩画であるが、作品はいよいよキュビスムを超越し、抽象とも違うファイニンガー独自の神聖な表現へと変換を遂げた。

最後のアメリカ時代の作品がもう少しみたかったけれど、ファイニンガーのアーティストとしての回顧展としては、充実した内容だった。
また、油彩だけでなくバウハウス時代に制作していた木製のおもちゃも併せて展示されている。普段はバラバラに所蔵されている、これらのおもちゃを組み合わせて都市、村の風景を作り出していたことも見逃せない。

*12月23日まで開催中。
展覧会は、2009年1月10日~3月1日まで宮城県美術館へ巡回します。オススメです。

テーマ展 松藤孝一「湛(たた)える宙(そら)」  愛知県美術館

こちらは、企画展でなく年に1度、東海地方を中心に活躍する若手作家をテーマ展と題し、紹介している。ちなみに、過去のテーマ展の内容はこちら
私は、2004年度(平成16年度)以降はほぼ見ていると思うけれど、今回の松藤孝一作品は、これまでで一番インパクトがあり、とっても気に入った。

松藤孝一プロフィール
1973年長崎に生まれ、高校まで佐賀で育つ。1995年愛知教育大学卒業後、財団法人ポーラ美術振興財団の在外研修助成により渡米。2001年イリノイ州立大学美術学部修士課程を修了。現在、名古屋を拠点に活動。ガラスを素材に制作を行っている。

主な展覧会
2003 「Cutting Edge: Contemporary Art in the Permanent Collection」ロックフォード美術館 (アメリカ)
2003 「アートが水を語る」武家屋敷旧内山家 (福井県)
2004 「イメージの新様態XIV 切り取られた かたち/とき」ギャラリーすずき (京都)
2005 「The Fires Burn On」アメリカン・ガラス美術館 (アメリカ)
2006 「第一音楽室」個展 ギャラリープランネット (名古屋)
2007 「Young Glass」エベルトフト・ガラス美術館 (デンマーク)

愛知教育大学ご出身で、扱っている素材がガラスというのが意外。


「湛える宙」では、ガラスでできた赤ちゃんが沢山展示室の中にいる。
どの子も、陳列台の上にあるのではなく、ある子は床に横たわり、両手を差しのべていたり、ある子は、正坐状態で床に突っ伏していたりと、こちらが手を出して、ひっくり返すなり、抱きあげたくなるような風情である。

どの赤子も着色はされておらず、ほぼ透明なガラスは光を通す。
赤子に添えられているのは、銀の蝶々。
赤子の頭に銀蝶が1羽とまっていたり、壁にも3つ、4つと飾られている。

確かに、ちょっとした宇宙空間ぽさがある。
赤子の半透明感は、蛹から孵化したばかりの蝶を思い出す。

赤子たちは表情も良い。
可愛いというか、妙に老けているというか、どこか気になる。
赤子と銀蝶だけの空間なのに、展示室の空気が変わっていた。
強いて言えば、もう少し壁面や天井なんかにも銀蝶を飾って欲しかったな。

展示作品画像は、松藤孝一氏のHPから見ることができます。
http://www.koichimatsufuji.com/
「WORKS」⇒「New」です。HPにアクセスすると、効果音がしますが、クリックすると止まります。
お好きな映像をクリックすると拡大、再度画像をクリックすると元のサイズに戻ります。

*12月23日(祝日)まで開催中。

「イタリア美術とナポレオン」 松坂屋美術館

聖母子

日本で今見られるボッティチェリの作品は、丸紅コレクションの「美しきシモネッタ」だけではない。
ここ、愛知県名古屋市の松坂屋美術館で開催中の「イタリア美術とナポレオン展」では、ボッティチェリの真作「聖母子と天使」(上図)が日本初公開されている。

事前準備もないまま、展覧会タイトルに惹かれ行ってみたら、これは当りだった。
今回の展覧会は、ナポレオン生誕の地で有名なコルシカ島にあるフェッシュ美術館のコレクションを日本で初めて紹介するという企画。特にフェッシュ美術館収蔵品の中でも、最も充実した内容を誇る17世紀、18世紀のイタリア宗教画や世俗画に加え、ナポレオン一族を表した肖像作品等をメインに、バロックからロココまで約80点の作品でたどる。

「松坂屋美術館では過去作品リストを作成したことがない」と受付の女性に言われ、仕方なく、作品名だけをメモし、後は記憶にて振り返ってみる。

見所は、何と言っても前半に集中している。
冒頭に揚げたボッティチェリ「聖母子と天使」は大画家20代の若き日の作品であるが、やはり聖母子の表情や聖母の頭髪を覆うヴェールのこまやかさなど、美しい。しかも、かなりの大画面である。
気になったのは傍らに控える天使の両足。
手を抜いてしまったのか、足のような形をした何かという具合で、聖母子や天使の顔や衣服など頑張っている所に比べると、何だかおおざっぱな形になっているのは何故なんだろう。

・「聖母子」 ジョヴァンニ・ベッリーニ
同じ聖母子でもボッティチェリ作に比べると、やや表情が硬く、平面的である。
金の輪には細工が施されている。燦然と光り輝いていた。

・「聖女ヴェロニカ」マッティア・プレーティ(工房)17世紀後期
ベロニカ

工房作だろうが何だろうが、この作品はとても良かった。ヴェロニカの瞳からは涙が一滴零れ落ちていた。ヴェールの質感といいヴェロニカの表情と言い、ドラマチックな表現が良い。

・「聖ペテロの殉教」ルカ・ジョルダーノ 1659年-60年
カラヴァッジョの影響が濃く出ていると解説にあったが、私はこの時代の西洋絵画にとても疎いので、ルカ・ジョルダーノの作品として鑑賞するしかない。
何も知らなくても、圧倒的に迫力がある。

・「聖セバスティアヌスの殉教」 ルカ・ジョルダーノ 1660年
sebasuchan
こちらは、白黒のみの画面で、より危機迫る感じである。ジョルダーノ作の2点では、こちらの方が好み。
聖人(?)なのに、こんなにカッコいいのか?

・「子供時代」 サンティ・ディ・ティート 1570年
kodomojidai

人生を4つの時代に分けて描くシリーズ第1作。子供時代の危うさを描く。
世俗画コーナーの最初に出て来た本作は、「危うさ」というより、「あどけなさ」をまずは感じる。
でも、添え物として少女の手に握られているのは小鳥、近くを舞っている蝶。どれも生命としてははかない。
唐突だっただけではない、何か惹かれるものを感じた。

宗教絵画、世俗画と続いて、お馴染みの静物画、風景画と続く。
後半はナポレオン一族にまつわる品々と彫刻作品、肖像画が紹介されている。
ここでは、「エリザ・ナポレオーネ像」バルトリーネがとても美しかった。大理石の彫刻なのに、カールをした巻き毛が愛らしい。

順序が逆であるが、このフェッシュ美術館は、ナポレオン1世の母方の叔父であるジョゼフ・フェッシュ枢機卿(1763-1839)個人のコレクションを基礎として設立された。元々16000点と言われるほどの質・量ともに最大級のコレクションだったが、一族の崩壊とともに散逸。残されたイタリア絵画コレクションだけでも、フランス国内ではルーブルに次ぐ規模。

*12月24日まで開催中。会期中は無休。
展覧会はこの後、北九州、京都、鹿児島に巡回します。

「ミシャ・クバル 都市のポートレイト」 豊田市美術館

昨日5時退社して、のぞみに飛び乗り名古屋入り。
今日は、愛知県内の美術館巡りをしたが、予定していた中京大学「Cスクエア」は、5時閉館で間に合わなかった。
事前準備不足である。無念・・・。

さて、気を取り直して豊田市美術館で開催中の「ミシャ・クバル 都市のポートレイト」展が良かったのでご紹介です。
ミシャ・クバルは、1959年生まれ、ドイツ・デュッセルドルフを拠点に活動するアーティスト。
私は名前を初めて聞いたが、これまで六本木やなぜか東京国立博物館(なぜ、近美でなく東博なのか?)で作品が紹介されたという。もちろん、私は見ていない。

クバルは、1980年代半ばから照明器具やプロジェクターなどが発する人工の光を使ったプロジェクトを発表してきた。
今回の展覧会では、クバルの代表作品の中から、「都市」をテーマに制作された11点が紹介されている。

どれも、斬新な視点で「都市」というテーマを捕らえている作品ばかり、表現方法としては「写真」「ヴィデオ」「スライド」と多様だが、決してテーマは外していない。

・「プライベートライト/パブリックライト」1998年 写真72点
72の家庭を訪問し、それぞれの家庭の居間にあった照明器具をサンパウロビエンナーレ出品作として借り受け、国際展会期中はモダンな円筒形の照明器具を代わりに使ってもらうように依頼。
ビエンナーレでは72の家庭から集めた照明器具と照明を替える前と後の室内をクバルが記録した写真72点が展示された。

この作品を見て思ったのは、照明器具一つとっても、個々の家庭の個性がもろに表れているということだ。ナショナリティ、アイデンティティーの多様性が72の写真を見ていると見事に浮き彫りにされている。
そして、円筒形の同一照明を使用している室内写真は没個性で、どの家庭も同じように見えてくるから不思議。非常におもしろい作品だった。

・「ダブル・スタンダード」1993年 スライド、プロジェクター
円、正方形、三角形など16種の幾何学図形の光と、方位を変えた世界地図の光が両壁に投射されている。
クバル曰く「地図を縦長に配置することで、世界地図が呼吸しているように見せようとした」と述べている。
個人的には、地図が呼吸しているようには見えなかったけれど、幾何学模様の展開と世界地図との連写が妙にマッチしていて、しばらく見飽きなかった。
認知心理学効果をねらっているのか、興味深い。

・「ステージⅢ プラトンの影」2008年 ヴィデオ、プロジェクター、銀の幕、アルミ製パイプ
この作品は今展覧会のマイベスト。
絶対おすすめの作品。
オラファー・エリアソンと比較するのは、いかがなものかと思うが、光を使用したアートとして秀逸。
ゆらゆらと揺れる光やもう一つの壁に写される映像?を楽しむ趣向。
様々に色が変わり、水紋のような動きを見せる影が非常に美しい。その中に、鑑賞者自身の影も映し込むことが可能。

ちょっとした浮遊感さえ味わえる。

・「グラスを通した都市/豊田」2008年 ヴィデオ
ヴィデオカメラの前に透明な丸いコップを取り付け、市内を走る自動車の助手席からクバルが撮影した映像。
豊田市美の高い天井と広い空間を利用し、眼鏡のように映像を左右2つ並べている。

日頃見ている豊田市の情景とはもちろん全く違う情景が眼前に展開されるのだが、万華鏡のようでもある。
私の隣で、おばあさんが付き添いの方に肩もみしてもらっていた。
現代アートの前で肩もみ・・・豊田市美ならではの光景かもしれない。

展覧会の図録はなく、代わりに展覧会記録とアーティストインタビューなどなど盛り込まれた展覧会DVDが図録代わりに制作されている。
お値段1200円。
ぐっと惹かれたが、振り切って帰ってきた。
SO COOLな展覧会である。おすすめです。

*12月25日まで開催中。

はじめての美術館5 弥生美術館・竹久夢二美術館

朝倉彫塑館を後に、向かったのは根津。
途中谷中の商店街のにぎわいに感動し、絶対また来る!と誓いつつ千駄木駅からは地下鉄に乗車。
ひとつ先の根津で下車し、東京大学工学部方面へ向かう。
それにしても東大の本郷校舎は広い。いったいどこからどこまでが大学構内なのやら。。。
私は赤門方面から過去1度入ったことがあるのだけれど、工学部や農学部までは行ったことがない。

東大のすぐ横に、静かに建っていたのが目指す弥生美術館
建物は、かつて竹久夢二が利用していた宿を模して建てられたとか。
狭い玄関をくぐると、キッチュな世界が広がっていた。う~ん、こういう雰囲気何て言うんだろう。
上手い言葉が見つからない。
内藤ルネや高畠華宵の作品や雑誌やグッズがぎっしり並んでいる。

現在、弥生美術館では「樺島勝一展」を開催している。
残念ながら、私は樺島の死後に生まれているので、リアルタイムで彼の作品を目にしたことはない。
ただ「正チャン帽」は聞いたことがあった。
shochan

正チャン帽の名前の由来となっている「正ちゃん」キャラを描いたのが樺島勝一であった。

「ペン画と言えば樺島の前に人はなく後ろにも人はない」と言わせしめるペン画の神様であった。
本人は絵画を誰かに師事した経歴はなく、全て独学、更にその膨大な知識の源は読書からだというから驚いた。
特に、語学に力を注ぎ、自身の子供への外国語教育については厳しかったと言う。実際樺島の長女は大学卒業後アメリカへ留学。「生涯外国に憧れつつも、日本を離れることのなかった父樺島の夢を果たすことができほっとした」と言っている。

挿絵画家を貫いた樺島の描いた原画や出版物が、これでもかという程ぎっしりと展示されていた。
特に「船のカバシマ」と言われる通り、大海原を曳航する船舶の作品は、これがペン画なのかと信じられないほどリアル。超絶技巧の極致。
写真よりもリアルと言われただけのことはある。波、さざ波から白い飛沫まで、ここまでやるかという程の表現力である。

この人は本当に船や海が好きだったのではないだろうかと思う。

船以外では、動物の作品も良かった。
トラ、ライオン、ひょうが3つ並んだコーナーがあって、どれも本物そっくり。
見ているだけでこちらまで、楽しくなってくる。

反対にあれれ?と思ったのは人物の手の表現。
手を描くのは苦手だったのだろうか。体や顔に比べると手が大きく描かれていることが多いように思った。

お客さんは樺島の挿絵を見て少年時代を過ごしたのではないかと思われる年配の男性が多かった。

かわいい子供キャラの正ちゃんとリアル帆船、戦艦+動物、いずれをも描き分けられた樺島は画力も間違いなくあったに違いない。


こちらの美術館は2階で竹久夢二美術館とつながっている。
現在は「竹久夢二 舞台芸術の世界展Ⅱ」を開催しているが、樺島のスーパーペン画で集中力を使い果たし、こちらはさらっと流し見させていただいた。

*いずれの企画展も12月23日まで開催中。

はじめての美術館4 朝倉彫塑館

書道博物館を後に向かったのは同じ台東区の「朝倉彫塑館」。
徒歩でそのまま向かえると書道博物館の方にお聞きし、地図もいただいて出発する。
天気の良い冬晴れだったので、気持ち良い。

日暮里駅付近まで来たら「羽二重団子」の看板を見つけた。こちらのお店、何と創業は文政二年で、正岡子規も食したとか。
休憩がてら、早速中に入って煎茶とのセット(462円)を注文する。
中庭が以外にも広く立派で、池には錦鯉が優雅に泳ぎ、隣との境界には竹藪がある。
お味は素朴なしょうゆ味とあまり甘くないあんこのお団子2種。
おやつに丁度良い。

更に歩くと、日暮里駅を超えて徒歩数分。目指す朝倉彫塑館に到着。
こちらは、彫塑家朝倉文夫(1883~1964) が住居兼アトリエとして自ら設計・監督をし、8回におよぶ増改築の後、昭和3年から7年の歳月をかけて新築。昭和10年、現在の形となったもの。

本館は、西洋建築(鉄筋コンクリート造り)のアトリエ棟と、竹をモチーフとした日本建築(数奇屋造り)の住居棟で構成されている。

外観は黒塗りで、聞けばコールタールを塗布したものだそうだが、コンクリート外壁にコールタールとは斬新。
靴を脱いで早速見学。
まずはアトリエ棟。
入ってあっと驚く。何と気持ちの良い空間なんだろう。
天井は高く(8.5m)、3階までの吹き抜け。ハイサイドの窓と片側の大きな窓から燦燦と太陽の光が降り注ぐ。
アトリエ棟の内壁は真綿であった。なんだかモコモコしていると思った。
彫刻作品が壁に当たっても傷つかないようにという配慮らしい。

この空間に朝倉の彫刻作品がそこかしこ展示されている。
こんな場所に置かれたら、幸せだろうな。

そして、奥に進むと書斎への入口などがあるが、窓の向こうにあるのは、巨大な中庭。
「五典の水庭」と呼ばれる中庭は、朝倉が自己反省の場として構成したもので、地下の湧水を利用し、儒教の五常の教えを造形化した「仁」「義」「礼「智」「信」の五つの巨石が配されている。
この時点で、ここに住みたくなった。

残念ながら数寄屋造りの住居部分は耐震上の理由で9月から見学禁止となっていたが、外から眺めるだけで、照明器具と言い、アトリエに負けず劣らず工夫されているようだった。

再度玄関ポーチに戻り、2階へと上がる。
蘭の間と称する東洋蘭の温室として、かつて使用されていた空間は、今現在朝倉が大好きだった猫の彫刻がたくさん展示されている。

そのまま3階へと上がるとここで再びの驚きが。
「朝陽の間」と言われる来客用の応接室として使用されていた日本間。
ここでも、次のような様々な工夫が凝らされている。
・瑪瑙(めのう)の壁
・松の一枚板の床
・屋久杉の根の床柱
・神代杉の天井と障子の腰板
・落とし掛けの真竹
・面皮仕上げの障子の桟

個人的には瑪瑙入りの壁に驚いた。そこまでするかという感じ。
松の一枚板の床も、今ならそう簡単に入手できない気がする。

また、ここからの庭の眺めもまた良い。

最後のとっておきが屋上庭園。
驚いたことに、立派なオリーブの木が植樹されている。
屋上で、よくぞこれだけ育ったなと感心してしまった。樹木の下には、オリーブの実が沢山落ちていた。


ここでは、朝倉文夫の彫刻作品よりもこの建物(登録有形文化財)に目が行ってしまう。
お天気の良い日には最適。

朝倉彫塑館は来年4月1日から平成25年3月まで保存修復工事のため、長期休館に入る。
まだ、行かれたことのない方は、ぜひ1度足をお運びください。
ぐるっとパスには無料入場券が付いています。


見学の後、すぐ近くの「一力」にてラーメンをいただく。
懐かしい醤油味のラーメン、しかも麺は細めのややちぢれで、私の大好きなお味であった。
東京で初めて「また食べたい!」と思えるラーメンに出会って大満足。
こちらは餃子も美味しいそうで、上野のついでに次回は是非餃子とラーメンをいただこう。

気分良く、次なる目的地へ向かった。

はじめての美術館3 書道博物館

文字色台東区立書道博物館で開催中の秋季特別展「中村不折コレクション 宋・元時代の書画」に行って来た。

鶯谷駅北口を出て、道案内の看板に従って徒歩5分程度。なんだかあやしげなラブホテル街の一角に突如現れる。斜め向かいは子規庵(かの正岡子規居住の庵)であるが、このあたりはやたらと細い道が入り組んでいて、ちょっと分かりづらい。

今現在、興味の対象が「宋・元時代の中国絵画」であるため、企画展にちなんだギャラリートークに参加した。こちらは、事前申し込み制となっており、定員20名なのだが、結局ずるずる申し込んでいないお客さんも聞いていたように思う。
往復はがきで申し込みする程のことでもないように思うので、先着順にするとか、もっと簡単に参加できるようにして欲しい。

・・・と苦言を呈してしまったが、ギャラリートークはとっても面白かったし参考になった。
講師は30代と思しき男性学芸員の中村氏。
書道博物館は中村不折(なかむらふせつ)により昭和11年(戦前に開館!)と歴史は古く、不折のコレクションが中心になっている。
開設者と同じ苗字ということで、「何代目でいらっしゃいますか?」としばしば聞かれるそうだが、血縁関係はないそうだ。

さて、中村氏の滑らかなトークに従って、今回の企画展の作品解説を拝聴した。
書道博物館ということで、圧倒的に書の名品が多いので、何から何まで知らないことだらけ。
しかし、こんな度素人にも分かりやすく見どころを教えて下さるので実にありがたい。
以下私的な本展の見所。

・「顔真卿自書告身帖跋」
顔真卿「自書告身帖」に添えられた、北宋の四大家の一人・蔡襄と、同じく米の子・米友仁による跋(奥書)。
見事な楷書。楷書はごまかしがきかないとのことだが、なるほどさもありなんという印象。
跋にどんな人の署名があるかによって、作品の値打ちも変わってくるそう。

・「謝賜御書詩表巻」
蔡襄が仁宗皇帝への忠誠を誓う上奏文と七言古詩を書いた作品。自身の字"君謨"と書かれた仁宗直筆の軸を賜り、感激と共に微力ながらも力を尽くすという決意がつづられている。後半には米や鮮于枢、解縉ら諸名家の跋がある。
書というのは、実際有名な書家が書いた部分はごく最初の一部で、後はひたすら跋が続くということが、漸く分かった。
すると今年見た「蘭亭序」も書聖:王義之が書いたのはごく一部だったのか・・・とやっと分かった。
蘭亭序を見た時、筆跡が違うしおかしいなぁと思っていたのだった。

そもそも、書の見方が全く分かっていないことが明らかになり、更に少しだけ見方が分かって嬉しくなった。
意味は分からなくても、最初は字体から感じる雰囲気を味わえば良いのだ。
そう思ってみると、質実剛健あり、優美なものありと受ける印象は様々である。


・「宮女之図軸」
元時代初期に活躍した画家・銭選の筆と伝えられる作品。宮廷内で笛の音を聴いている様子が描かれている。
宮女と言えば、徳川美術館で見た室町御物の「宮女図」を思い出す。
さらに、こちらの「宮女」も笛を吹いている所も同じ!
残念ながら劣化が激しく、宮女の姿は識別しづらいが、よく見れば間違いなく笛を吹いている様子を描いている。
ここでは、宮女含め4名の人物がいる。


・「墨竹譜巻」
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詩、書、画に優れた呉鎮の作品。彼が得意とした竹の画に、ゆったりとした味わいのある見事な書が添えられている。
呉鎮という人は、大量生産派ではなく、自分で選んで作品を受けていたそうだ。
今回の作品は自作の詩、自書、さらに竹の図と書と図が一体となった作品。
しかも、書も絵も上手い。


書道博物館では、書を少しでも分かりやすくするため、作品解説に加え、用語の解説や作家の年表なども準備している。
これから、少しでも書を見てみようかなと思われる方の入門には最適。
そして、ギャラリートークはイチオシである。
ぜひ、来年以後の展示でもギャラリートークに参加して、面白く書を見るコツなど学んでみたい。

企画展は新館建物にて開催されているが、旧館では常設展示として、不折の仏像から石の墓碑銘など様々な品物が所狭しと並んでいる。

*秋季特別展は12月23日まで開催中。


「ジャナイナ・チェッペ Moon Blossom」展 nichido contemporary art

jyanaina

今月号の「Previwes」の巻頭で紹介されていたジャナイナ・チェッペの個展に行って来た。
何と言っても、黒をベースとして繰り出された色彩の構成が見事な抽象画を実際に見てみたかった。

京橋と八丁堀のちょうど中間地点あたり、行ったのは土曜日の6時過ぎであたりは真っ暗だったので、こんな寂しいオフィス街にギャラリーなどあるのか?とまずは辿りつけるかという心配が先に立ったけれど、ちゃんと見つかった。地下1階にNCA(ギャラリーの略称)はあった。

ジャナイナ・チェッペは、ドイツ人の父とブラジル人の母を持ち、ふたつの異なる風土で育った。画家として創作活動を開始したが、以後彫刻、写真、ビデオ・インスタレーションと絵画ではない手法での活動を主体として活躍。
2005年あたりから、ペインティングやドローイングに精力的に取り組み始めた。

今回の展覧会では、今年の夏にアイルランド近代美術館での個展で発表したペインティング4点と日本での本展のために制作したドローイング2点で構成されている。
*アイルランドでの個展の内容は、ギャラリーに展覧会図録あり。

やはり見所は幅6メートルの大作「Event Horizon」だろうか。
無数の円の連なりから、イメージされるのは水面、水中の泡沫か。

「Moon Blossom」(上画像、2007年)はどことなく日本画-私は杜若図屏風を思い出した-を感じさせる。

彼女の持ち味はその色彩だと思う。
ただ、単なる抽象画で終わっていない所が、作家の力量の証。
絵に力がある。

新作ドローイングも油彩に比べてしまうと、軽いけれど、単独で見れば非常に美しい作品。

ジャナイナは今秋、川崎市市民ミュージアムで開催された「日本×ブラジル交流展」の出品作家でもあった。残念ながら、私はこの展覧会を見逃してしまったが、今回作品を見られて満足できた。
今年は、ブラジル人作家の作品を目にすることの多い年で、しかも好印象なものが多かった。

今後も要注目の作家である。

*12/20まで開催中。

「岩崎家の古伊万里-華麗なる色絵磁器の世界-」 静嘉堂文庫美術館

あまりにも艶やかな世界を垣間見てしまった。

静嘉堂文庫美術館で開催中の「岩崎家の古伊万里-華麗なる色絵磁器の世界-」に行って来た。
今回は、小田急で成城学園前からバスにて「吉沢」で下車。
危うく道に迷うところだったが、地図を見つけて何とかたどりつく。

さて、岩崎彌之助、小彌太父子のコレクションとのことだし、展覧会のチラシからして豪華絢爛。
これを見ずして何とするという雰囲気に満ち満ちたチラシは久しぶりだ。
さらに「いづつや文化記号」様での紹介記事で絶賛されていたのを見て、必ず行こうと思っていた。

そして、チラシから受けた予想をはるかに超えた色絵磁器ばかりであった。
こんなつまらないブログなど読んでいる時間があったら、とっとと見に行かれた方が良い。
百聞は一見に如かず。

いつもなら印象に残った作品は・・・などと言って感想を書いているが、今回は無理。
何しろどれもこれも、素晴らしいので、選べと言っても難しい、全部良いのだから。
強いて言えば、明治時代のお雇い外国人ブリンクリー旧蔵品には殊更良いものが多かった。
単に私と趣味が一致していただけかもしれないが。。。

名品の中で、今も忘れられない大皿がある。
・「色絵山水唐子唐草文大皿」 金欄手様式 18世紀前半
縁の模様絵に大注目。こちらのお皿は作品名からも分かるように唐子が描かれているのだが、この唐子が何と雲(?)と戯れつつ泳いでいる姿を描いているのである。

空飛ぶ唐子。

かなりショックだった。更に一番上の唐子(この子は飛んでない)はなぜか子供なのに髭が生えているではないか!
ぜひ、この珍妙で美しい(実際見込みの絵は素晴らしい)大皿を一人でも多くの方にみていただきたい。

唐子と言えばもうひとつ。
参考出品とのことで、作品リストには掲載されていないが、伊万里ではなく、「五彩百子図鉢」。
若冲の「百犬図」に対抗するかのごとく、百人の唐子が描かれた大鉢があった。
ただし、数えていないので本当に百人あったかは不明。

こんなものを参考出品などと、さらりと出す所が恐ろしい。
小さな唐子がそこかしこに描かれている。参考出品だから恐らく図録にもでていなかっただろう。
掲載されていたら、危うく買ってしまったかもしれない。

上記唐子の大鉢以外に、参考出品で良いものが相当あった。

とにもかくにも、ものすごいコレクションである。

明日まで開催中。こちらは4時半で閉館、4時までに入場が必要です。

「かたちのエッセンス ―平松保城のジュエリー」 東京国立近代美術館工芸館

冬晴れと太陽の日差しがあたたかな午後に、東京近美工芸館周辺のお散歩はとても楽しい。
皇居や北の丸公園の紅葉を愛でつつ、工芸館に行って来た。

「かたちのエッセンス-平松保城のジュエリー」展チラシに掲載されているいろんな形のペーパーウェイトやジュエリーの甘い響きに誘われた。
工芸館では2階が展示室になっていて、今回は次の3つの展示コーナーがあった(私の鑑賞順)。
・「人間国宝・巨匠コーナー」
・「かたちのエッセンス-平松保城のジュエリー」
・「近代工芸の名品-陶芸」

ということで、最初は「人間国宝・巨匠コーナー」の作品を見たのだが、さすが人間国宝。
心ひきつけられるものが、ほとんど。
陶磁、漆工、染色、金工と主要4分野+その他1点で、作品が展示されている。
・江崎一生  灰釉花器
・松井康成  練上嘯列烈文平鉢
・三浦小平二  青磁豆彩大皿
・音丸耕堂 彫漆色紙箱
がお気に入りの作品たち。

古伊万里などの古い陶磁も良いけれど、現代の巨匠たちの作品も素晴らしい。

企画展「平松保城のジュエリー」は、金属という素材の「冷たい」「かたい」というイメージを如何に壊すか「あたたかい」「柔らかい」ものに見せるかの探究であった。
こうした素材のイメージの転覆は、平松に限らず他の作家、たとえば先にあげた人間国宝の作品でも探究されているように感じた。
そんな視点で作品を見て行くと面白い。

ジュエリーでは、金属を毛糸玉のように見せてわっかを作ったり、金を薄く薄くのばして、紙のように見せたり。
hiramatsu
「ブレスレット」1990年

銀製のお皿「しろがねのうつわ」は、ひらひらと飛んで行きそうな風情である。
真鍮、アクリル、鉄を使用した間仕切りなども、こんな雰囲気を出せるのかと新鮮な発見があった。

最後は「近代工芸の名品-陶芸」。
最初に初代宮川香山の「鳩桜花図高浮彫花瓶」で、久々の香山焼きを拝見する。
いつ見ても「どうやったら、こんな花瓶ができるのか?」と不思議で仕方がない。

更に、私の好きな田嶋悦子の「Cprnucopia 02-XI」陶器とガラスで作られたオブジェがあった。
ガラス部分の透き通るようなグリーンと陶器部分の白の対比が美しい。
こちらも立体感、陶磁やガラスの膨らませ方が彫刻のようで、こんな形が自由自在に作家の意図したよううにできてくるのかと不思議になる。


企画展だけでなく、所蔵作品も十分楽しめる内容だった。

*いずれの展示も12月7日まで開催中。

東京国立近代美術館  特集展示「新宿中村屋につどった人々―大正時代の芸術サロン」

企画展の「沖縄プリズム」を見に出かけたのだが、4階常設展の特集「「新宿中村屋につどった人々―大正時代の芸術サロン」が、大変良かったのでご紹介。

新宿中村屋ってどこかで、聞いたけど何のお店だっけ?と思ったらしっかり解説にありました。
新宿で1901年に創業したパン屋さんで、もちろん現在は株式会社中村屋として、営業しています。

さて、そんなパン屋さん創業者夫婦(相馬夫妻)が芸術家達を支援し、裏手にあったアトリエが中村屋サロンとして文化人の交流の場であったとは知りませんでした。
詳細は新宿中村屋の「中村屋サロン」のコーナーをご参照ください。
今回の特集展示では、近美の所蔵作品と新宿中村屋の所蔵作品を特別にお借りしての展示です。

見所は、ふたつ。まずは、中村彜の作品。
これまで、近美を訪れる度、目にしていた「エロシェンコ氏の像」。
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かのエロシェンコとは何者かという疑問にようやく終止符を打つことができた。
もっと早く調べれば分かったのに、深追いしないから。。。
さて、エロシェンコは盲目のロシア人で、中村同様、新宿中村屋、特に相馬黒光(創業者夫人でキーマン)の世話になっていたという。

このエロシェンコの肖像画と同時期に描かれたもう1枚が、現在見られる。
鶴田吾郎の「盲目のエロシェンコ」(1920年)。
tsuruta

中村彜の肖像画と比べ、こちらは盲目であることが明らかに分かる。
人物の表情も暗い。

そして、とても見たかった1枚が。中村彜「少女」(1914年)である。
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相馬夫妻の長女を描いたこの作品、素晴らしいの一語に尽きる。
中村彜の俊子への思いが伝わって来る。
2人は、愛し合っていたが、相馬夫妻から結婚の賛同を得られず、結局離れ離れになり、生涯結ばれることはなかった。
その後、モデルの俊子は、革命家ラス・ビハリ・ボースに嫁ぐ。


もうひとつの見どころは、荻原守衛の彫刻である。
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「女」1910年 東京国立近代美術館蔵
こちらも、近美ではお馴染みの「文覚」と「女」(今回は4階常設エレベーター降りてすぐに展示)だが、実はドラマがあったとは。

荻原守衛が芸術を志すきっかけを作ったのが、前述の相馬黒光。
アメリカやフランスでの留学後、中村屋のアトリエで制作を始める。

その最初の作品が「文覚」(もんがく)。
文覚は、遠藤盛遠と名乗っていた青年の武士の頃、袈裟御前という人妻に懸想して 夫を殺すつもりが彼女を殺してしまい出家した僧侶。袈裟午前を相馬黒光に、文覚を荻原自身を投影していると言われている。
あんなに筋肉隆々の彫像が人妻に恋したあげく、その夫を殺した人物とは、今日の今日まで知らなかった。

そして、喀血してわずか30歳で突然の死に見舞われ、アトリエに残されていたのが「女」。
この「女」はどうやら相馬黒光をイメージし、黒光への思いを彫刻に模したものと言われている。
そんなドラマがあると分かれば、「文覚」「女」を見る目も変わってくる。
実際、2007年に「碌山の恋」というTVドラマが放映されていたらしい(今調べて知った)。

新宿中村屋には様々なドラマが展開され、そこから後世に残る名作が生まれました。
相馬黒光という女性は当時としては類まれなる才気煥発な女性であったのでしょう。
今回の特集展示は少数ながら考えさせられ、また深く感動しました。

*来年1月12日まで開催中。おすすめです!

「セザンヌ主義 -父と呼ばれる画家への礼賛」 横浜美術館

混雑する前にと思い、横浜美術館の「セザンヌ主義-父と呼ばれる画家への礼賛」を見て来た。
公式HPはこちら

展覧会構成順に以下振り返ってみる。

プロローグ
展覧会を通じてもっとも印象に残った作品エミール・ベルナールのセザンヌ肖像画「セザンヌ礼賛」で幕を開ける。
この肖像画横向きのセザンヌを描いているのだが、画面の大半はその頭部で占められている。
国立西洋美術館にあるラトゥールの「聖トマス」の頭部を思い出した私はかなり失礼なやつかもしれない。
セザンヌ頭部を描いたのは、その頭部が尊敬すべき源であるからとか。

Ⅰ.人物画
ここでは、セザンヌ夫人を描いた一連の作品群が見ものである。
ところで、セザンヌ夫人はかなりボーイッシュな方だったのだろうか。婦人像というより、少年像のような趣をたたえていた。
ヒューストン美術館蔵の「青い衣装のセザンヌ夫人」も良いけれど、私はブリヂストン美術館の「帽子をかぶった自画像」の方が、頑固そうなセザンヌ自身がよく表現されていて好きだ。

これらセザンヌ作品に影響を受けた後世の様々な画家の人物画が続く。

Ⅱ.風景画
人物画より、風景画が与えた影響の方が多大なのではないだろうか。
何しろ、ここからキュビスムやフォービスムに展開して行くというのだから、セザンヌ恐るべしである。

残念だったのは、セザンヌ風景画と言えば「サン・ヴィクトワール山」なのに、このモチーフでこれ!という名品が出ていなかったこと。
「ガルダンヌ」メトロポリタン美術館蔵は、セザンヌらしさが現れ、キュビスムへ影響を与えたという解説も納得できるような作品。四角く描かれた家々がキュビスム的と言われてみれば、そんな風に見えてくる。

Ⅲ.静物画
個人的には、小学校時代の教科書でセザンヌを最初に見たのは静物画だったため、もっともセザンヌを意識するモチーフである。
ポーラ美術館の「ラム酒瓶のある静物」など、良いなぁ。」
岸田劉生「静物」1920年島根県立石見美術館蔵、この作品もセザンヌ影響下にあった。劉生よお前もか・・・である。
もはや、ここまで来ると、セザンヌの影響を受けなかった画家などセザンヌ以後いないのではないかという程、誰も彼もセザンヌ主義が見て取れる。

エピローグ
セザンヌ自身が礼賛していた「ドラクロワ礼賛」で幕を閉じる。


古来、絵画は巨匠の模倣、受容から始まり、自流への消化、オリジナル表現へと移り、変化を遂げて来たのかなとごくごく当たり前のことを今更ながら気づかされた。
それと共に、セザンヌというのは絵画の変革にあたり、キーマンとなる重要人物、音楽で言えばバッハのような画家だったのだろうか。
おかげで展覧会の後、どの作品を見てもセザンヌの影響を受けているように見えてしまったほどだ。

それにしても、日本にこれだけセザンヌ作品があったとは驚いた。まだまだ集めきれなかった作品も多いと思うが、十二分に見ごたえのある内容だった。

*1月25日まで開催中。
開 館 時 間 10:00-18:00 (金曜、土曜、祝祭日の前日、11月23日、12月24~31日は20時まで)
休  館   日 毎週木曜日(12/25(木)は開館)、2009年1月1日
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