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はじめての美術館8 「空は晴れているけど」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション

ぐるっとパスを使って、水天宮のミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションに行って来た。
開館10周年記念展として新人作家による版画展を先月から開催している。

半蔵門線・水天宮駅の3番出口を出たら右手すぐに目指す美術館は見えてくる。ガラス張りのファサードが目立つので分かりやすい。
入口手前が小さなカフェになっていて、出品作家の資料(作品集)などお茶を飲みつつ眺めることができる。

1階は、浜口陽三の作品がメイン。初期のモノトーンのものから多色刷りのカラーメゾチントまで、浜口陽三の作品を愛でる。私は彼の作品が好きなので、かなり時間をかけてじっくり見た。
アスパラガスの作品は先端部分が人間の顔に見えてくる。
今回一番のお気に入りは「うさぎ(ピンク)」(1954年)。初期の作品だが、ピンクが使っているように思えない程、うっすらピンクが出ている。

地下の展示室にはらせん階段を使って下りて行く。
今回は杢谷圭章、小野耕石、元田久治の3名の若手作家による版画展。実はお目当てはこちら。

小野耕石は、3名の中で最若手の1979年生まれ。
3月には資生堂アートギャラリーでも個展が予定されている。
彼の作品は版画を超越し、立体作品と進化を遂げた。ピンのような粒粒の集合体が、実は100回もインクを重ねた集積体だなどと言われても「へっ?」としか思えない。
一体全体どうやったら、あんなきれいなピンが出来上がるのだろう。。。

・「徒花」 2008年
虫の抜けがらのように壁にくっついている。単純に平面にピンの粒が並んでいるより、こちらの方が面白い。
「タイトルなし」の正方形の積み重ねと三角形を六角形に見立てて並べてあるオブジェも良かった。
崩れそうで崩れていない。重ね方にも工夫がある。

元田久治は、身近な都市を廃墟に見立てた版画作品を手がけている。
・「Indication Tokyo Station 」 2007年
・「Indication National Stadium」 2008年
東京駅や国立競技場?を廃墟に仕立てた作品。いずれも共通しているのが無人。
人気のない廃墟は遠いようで近い未来だったりして、どこか不安になる。その一方廃墟特有の美しさがあるのが怖い。
後者は、蓮池が広がっていた。

元田の場合は、リトグラフだけでなく、絵画ミクストメディアも数点あり、こちらの方が私は良かった。
実に緻密な線を描く人。

杢谷圭章は、前述の2人と比較するとどうしてもインパクトが薄くなってしまう。
ただ、3人のコンビネーションは絶妙で、立体系、緻密系と来たら、抽象系でしょうということで、抽象的な作品をアクアチント、ドライポイントを使用して描いている。
特徴的なのは、カラーと単純な線だけのドライポント2点を1点としてセットで見せているところ。
これはこれで面白いと思う。

*2月22日(日)まで開催中。おすすめです。
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2009年1月18日 鑑賞記録

記事のアップが、書いても書いても全然間に合わないので、今日はまとめてしまおう。
イチオシのものだけは、この後別途記事にしますが。

ということで、本日見に行った展覧会。ちょっとした感想を加えて。

・新人作家による版画展「空は晴れているけど」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション

⇒これが本日の一推し。次の記事に続く。

・加藤唐九郎・重高・高宏 「窯ぐれ三代展」 菊池寛実記念 智美術館 前期は2月8日まで開催

智美術館の展示は毎度のことながらレベルが高い。何しろあの空間、あの展示方法ならどんな作品でも、美しく見えてしまうのではないか。今回は唐九郎から始まって孫までの三代の陶芸展。高レベルな作品が更に美しく映えていた。
何と言っても志野である。志野焼は、あまり好みではないのだが、彼らの手にかかると志野のもっさりした感じが消えている。高宏の志野焼に至っては、これが志野?と驚くような斬新さ。
黄瀬戸も良かった。
唐九郎は茶碗をはじめ花器など、古陶磁の研究をされただけあり、基本から外れない桃山陶芸を追求する姿勢が作品に現れていた。
重高は、大きな花器などに個性が出ていたと思う。
もっとも楽しみなのは高宏の今後の作品。冒頭の新しい志野など、枠に捕らわれない作品を作っていって欲しいと思う。

・「追憶の羅馬 ローマ展 館蔵日本近代絵画の精華」 大倉集古館 前期は2月8日まで開催

昨年の日本橋三越での展覧会を思い出す。同じ趣旨の展覧会だが、今回は大倉集古館の所蔵品のでローマ展に出展されていたものを前期・後期に分けて展示。
よって、昨年三越で見た作品が多かったが、何しろ大きな作品が多いので見ごたえがある。
大観、古径、玉堂らの大作に再会。

・「近代の屏風絵-煌めきの空間」 泉屋博古館分館 前期は2月8日まで開催

やはり展示数が少ないこともあってか、いまひとつ。一番良かったのは、海北友雪の「日吉山王祭礼図屏風」(江戸時代)。こちらは見ごたえある六曲一双の屏風絵。細かい人物描写が面白い。

・「新春展」 ニューオータニ美術館 1月25日まで開催

Takさん、一村雨さんらが続々とご報告されているニューオータニ美術館の新春展。展示数はさほどないものの質は高い。
印象に残った作品は次の通り。

*ビュフェ 「二羽の鳥(つる)」
こんなに大きい作品とは思わなかった。ビュフェが鶴を描くとこうなるのか。水色のバックが効果的。

*ポールギアマン 「チューリップ」
ギアマンの作品は初めてかもしれない。赤・黄・白の3色チューリップが思い思いの方向に向いている。こちらはパステル調の背景。

*モイズ・キスリング 「ハンモックの婦人」
キスリング?と思わずキャプションを見てしまった。意外に小さい。ちょっと私の見たことのあるキスリングぽくなくて、逆に印象に残った。

*ジャン=フランソワ・ミレー 「田園に沈む夕陽」
これ、とっても好き。パステル画だけど、空と広大な大地のシンプルな画面が見ていて落ち着く。

*キース・ヴァン・ドンゲン 「腰掛ける婦人」
ミレーと一、二を争うほど良かった。キース・ヴァン・ドンゲンをまとめて見たい!
この婦人像のか細さ、なのにどこか色香漂う。首と腕が長い。白磁のような肌だった。

*岩佐又兵衛 「本間孫四郎遠矢図」
こんなに作品と観る側の距離って開いていたっけ?と思わせるほど、作品が遠く見えた。単眼鏡なしでは、ほとんど作品の詳細を知るのは困難だと思う。
よくよく眺めると、さすが又兵衛。人物の表情がきちんと描き分けられている。

*喜多川歌麿 「美人と若衆図」
ブロマイド写真のようなちょっと変わった構図の肉筆。歌麿の肉筆ってなかなかお目にかかれないので、こちらもしかと目に焼き付ける。

*葛飾北斎 「ほととぎす虹図」
北斎の死の前年に描かれた作品。89歳にしてなお、ほととぎすを細部まで描いているのはさすが。
ただ、北斎にしてはパンチのない作品。やはり年には勝てない?

*小林古径 「上宮太子」
聖徳太子16歳の図。眼もと涼やかな太子像は好感が持てる。

*祥瑞振出形香合 景徳鎮窯
蓋が付け替えられる交合なんて、初めて見た。とても愛らしく美しい。
こんなのが、手許にあったら楽しいだろうな。

ところで、奥の部屋には平櫛田中の大谷翁の木彫がドンと鎮座していた。あの存在感はすごい。
作品リストには掲載されていないので、尚のこと驚く。

・「東京藝術大学退官記念 田渕俊夫展」 日本橋三越

昨日に続いて再訪。今日で終了の展覧会だけれど、見ることができて本当に良かった。
とら様に感謝申し上げます。
田渕俊夫は私の大好きな日本画であった。名前がピンと来なかったのだけれど、自分のブログで「田渕俊夫」と検索したら、2件も記事が出て来た。いずれも好印象の作品に挙げられていた。
かつて地元愛知県芸術大学で教鞭を取られていたとのことで、県内のメナード美術館で何度か作品を拝見していたのであった。

昨日はものすごく混んでいて、ゆっくり見られなかったのと図録が欲しくての再訪。
しかし、既に図録は完売だった。。。幸いなことに東京展のあと、名古屋と福岡に巡回するため、急遽増刷されるとのこと。
しっかり、予約して来た。

日本橋高島屋の展示とは異なり、こちらでは初期の作品から最新作まで幅広く網羅されている。
刻シリーズや翠色や赤・黄色と多彩に色を使用した作品もあれば、現代アートぽい日本画もある。更に、永平寺に奉納した襖絵など見ごたえ十分。
本当に素晴らしい内容だった。
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