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「ツェ・スーメイ」 水戸芸術館現代美術ギャラリー 

sumei

2月も早くも終わろうとしている。
今月の茨城ツアーでひとつ記事にしていない展覧会があった。それが水戸芸で開催中の「ツェ・スーメイ」展。

ツェ・スーメイは、ルクセンブルグ出身で、イギリス人ピアニストの母と中国人バイオリニストの父との間に生まれ、自身もチェロ奏者である。
両親が音楽家なら、チェロ奏者というのもなるほど頷ける帰結だ。
が、単なるチェロ奏者では終わらず、音楽、音、東西文化やアイデンティティをテーマとした作品を作るアーティストとしても活躍中で、2003年のベニス・ビエンナーレでルクセンブルク館に金獅子賞をもたらして以来、世界各地からひっぱりだこ状態らしい。

そんなことを展覧会のチラシで拝見し、これは見ておかねばと水戸芸まで向かった。

で、感想なのですが「う~ん・・・・・」。
一番分かりやすく面白いと思ったのは、「ヤドリギ楽譜」という作品。
これはヤドリギの巣を音符に見立てた映像作品で、音楽と共に♪が進んで行くところがポイント。
音楽と視覚イメージがうまくミックスされた面白い作品だったが、他は意図することは理解できるもののそれが面白いかと問われれば私にはどうもその良さが分からなかった。

本展チラシ表面に採用されている「エコー」2003年も、映像作品でアルプス?の広大な景色の中、チェロを弾いているのは恐らく作家本人だろう。
こだまを利用したこちらも映像と音を使った作品で、その美しい景色には癒されるが、アートとしての魅力は疑問だった。


音を使ったアーティストと言って私が思い浮かべるのは藤本由紀夫で、同じ音をテーマにしていても、その表現方法は異なり、特にツェの場合、東西文化やアイデンティティを絡めている所が彼女らしい。
が、逆に私にはそのらしさのない「ヤドリギ楽譜」のような作品の方が好ましく、観る人によって受け取り方は様々だと改めてアートの難しさを感じた。

*5月10日まで開催中。
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「蔵出し!文京ゆかりの絵画」 文京ふるさと歴史館 はじめての美術館17

bunkyo

「蔵出し!文京ゆかりの絵画」という何とも扇情的なタイトルに惹かれ、文京ふるさと歴史館へ行って来ました。
展覧会のサブタイトルも-逸品・珍品・勢ぞろい-とかゆい所をくすぐられるような感覚を呼び起こします。

さて、文京ふるさと歴史館はその名の通り、東京都文京区の本郷にあります。
最寄駅は東京メトロ・都営大江戸線「本郷三丁目」、都営三田線・大江戸線「春日」両駅どちらからでも徒歩5分とアクセスは良いです。

さて、入館料100円を払って、まずは地下1階の企画展示室へ。
早速、どんな逸品珍品があるのかワクワクしつつ向かいます。

展示作品は主に次のテーマに沿った形で展示されています。
面白いなと思ったのは、作品解説が簡潔なんだけれど、読みやすく分かりやすかったこと。
おかげで、内容がどんどん頭に入ってきました。

・川端画学校
創設者は日本画家・川端玉章で、小石川に大正3年(1914)洋画部が新設され、昭和20年(1945)に空襲で焼失する30年あまりの間に、美術界で活躍する多くの画家が育ちました。本展では画学校で使用された手本が展示されています。

・大名庭園の美 2つの絵巻
木村源太郎(齋)の手による小石川後楽園を描いた2つの絵巻。

・逸品!区指定文化財の絵画
文京区指定文化財(絵画)の6件のうち、高崎屋(酒屋)資料から、長谷川雪旦・雪堤父子による絵画「昇竜図」「酒造図」など4点、また太田道灌の子孫・太田資宗の屋敷からの眺望を描いた「太田備牧駒籠別荘八景十境詩画巻」のうち画巻を展示。
無指定ですが、高崎屋資料より酒井抱一画「秋七艸之図」が公開されている。


・地域画家・伊藤晴雨
地域の風景を描いた絵画など、地域のゆかりある作品。

・名優・花柳章太郎と交友した人々
新派劇の名優・女形で人間国宝の花柳章太郎本人のスケッチ帳はじめ肉筆画と彼と交流があった伊東深水や、洋画家・木村荘八の絵画もあわせて展示。


これら展示作品はどれも個性的で面白かったのですが、とりわけ良いなと思ったのは長谷川雪旦の「昇龍図」(文京区指定文化財)、花柳章太郎関連の一連作品です。

花柳章太郎の絵の上手さは昨年早稲田大学演劇博物館での展示で初めて知り、非常に感嘆したのですが、今回もまた彼の作品に接することができ、それだけで来た甲斐がありました。
花柳は名優として人間国宝に指定されていますが、もし俳優という道を歩んでいなければ画家としても大成したのではないでしょうか。
私が彼の描いたものでもっとも好きなのは「いたずら帖」などの絵日記風作品です。
これが出版されたら、買うだろうな多分と思います。

俳優業で忙しいさ中も、巡業先などこまめに絵筆をとる花柳章太郎。余程絵が好きだったのでしょう。

また、彼が師と仰いだ画家の中では木村荘八の作品が良かったです。

ご当地作家の伊藤晴雨はこの展覧会で初めて知りましたが、彼の作品もおどろおどろしいような不思議な味わいがありました。

忘れてならないのは、文化財指定もされていない酒井抱一の「秋七艸之図」。
これが実に抱一らしく良い作品で驚きました。
抱一と言っても、ピンからきりまで様々にありますが、これはなかなかのものです。

1階、2階は常設展示室ですが、2階の「文人たちのまち文京」のコーナーは文学作品の装丁などこれまた楽しめます。
丁寧な展示と解説で、歴史館の学芸員さんの気持ちが伝わってくる内容でした。

*3月22日(日)まで開催中。
文京ふるさと歴史館
所在地
〒113-0033 東京都文京区本郷4-9-29
TEL 03-3818-7221
交通
電車:丸ノ内線・大江戸線 本郷三丁目駅または三田線・大江戸線 春日駅から徒歩5分
バス:「都02」「上69」真砂坂上から徒歩1分
開館時間
午前10時~午後5時
休館日
毎週月曜日、第4火曜日(祝日にあたるときは開館し翌日休館)、定期燻蒸期間、年末年始

樋口佳絵 「エンシンリョク」 西村画廊

日本橋の西村画廊で開催中の樋口佳絵「エンシンリョク」に行って来た。
2年ぶりの個展となるそうだが、実際に作品に接するのは今回が初めて。
以前画廊から個展の案内状が届いて、気には留めていたけれど当時名古屋に住む身としては、そうやすやすと日本橋にあるギャラリーに足を運べないのであった。

さて、作品はごく小さいものから、割と大きめのものまでバラエティに富んでいる。
実際に見ると、思った以上に手の込んだ作品であるように感じた。

第1の特徴は白い背景色とその質感ではないだろうか。
とにかく一番アンテナにピンと来た色が背景に使われている、白色だった。
白磁の質感に似ている。
逆に白以外の背景色は、その質感が上手くあらわれていないように思え、魅力を感じなかった。

第2の特徴としては人物のとらえ方。
これは形態的なものをさしている。手や足の先端が顔に比べると極端に細く、小さくデフォルメされている。
顔のパーツも目・鼻・口、見た瞬間樋口作品だと分かるオリジナリティがある。

私の好きな作品は、「ちょうどよい浮力」2008年。画像は下記画廊HPご参照ください。
http://www.nishimura-gallery.com/exhibition/2009/higuchi09.html
ユーモラスな感じもあり、ちょっと不気味でもあり。

この方の作品は、絵本や本の挿絵に向いている気がする。

人物以外でいちごを描いた作品もあったが、人物画で見せた特徴が静物画では消えておりインパクトは薄かった。こちらは樋口作品の良さを表現させるまで、もう少し時間がかかるかもしれない。

*2月28日(土)まで開催中。

生誕100年記念「土門拳の昭和」 日本橋三越新館

domon

昨日から始まった「土門拳の昭和」展へ行って来た。
何しろ、土門拳は私の大好きな写真家なのだ。どうしても彼の作品を見たくなって、そのためだけに山形の土門拳記念館まで行ったことさえある。
でも、なかなか回顧展をやらないなと思っていたら、今回の生誕100年記念展が漸く開催された。

冒頭は、土門の名作「室生寺」シリーズの大判から始まる。続く仏像写真。

そこで、観客をぐっと引きつけておいて、後は年代順+テーマ順での展示が続く。
最初期の伊豆シリーズや戦前の彼の作品は全く見たことがなかったので、とても新鮮だった。

しかし、やはり彼の才能が光り始めるのはアメリカのグラフ誌「LIFE」に掲載された当時の外務大臣宇垣一成の写真「日曜日の宇垣さん」からではないだろうか。
無論それまでの写真でも被写体のとらえ方、特に感心したのは早稲田大や東京高等女子師範の卒業アルバムの写真など、に才能を感じるけれど、やはりこれこそ土門拳の写真!と思ったのは宇垣さんの写真であるように思った。

戦中(1941年)から撮影を開始した「文楽」シリーズは土門本人の思い入れとは裏腹に、個人的にはあまり好感が持てない。

戦後の彼が撮り始めた写真こそ、私にとっての土門拳の写真。
夜の銀座、戦後の日本の街角をとらえた写真も、悪くない。
でも、子供たちを被写体にした作品群にはかなわない。
なぜ、あんなにも生き生きとした表情をその一瞬をカメラでとらえられるのか。神業だ。

江東区の子供達を中心として、日本全国でこどもたちの様々な様子をカメラにおさめている。
子供ばかりを集めたコーナーは見ているだけで、顔が微笑んでしまう。
すごくいい!

そして彼の代表作としてこれまた有名な「筑豊のこどもたち」に続く。
廃坑となった『筑豊の街のこどもたち』を撮影した写真集を1部100円で刊行。1000部を売り上げる。
そして、その続編『るみえちゃんはお父さんが死んだ』を完成後脳血症で倒れる。

この病気回復後、35ミリカメラの使用が肉体的に無理となったため、大型カメラを使用し、古寺、仏像、古美術作品などを撮り始めることになる。

様々な写真家の撮影した仏像写真を見るが、私の一番好きな仏像写真は土門拳撮影のもの。
会場内の最後に土門拳関連の映像コーナー(14分)があり、そこで彼の助手を務めていた藤森武氏のコメントがあり、彼の仏像写真の凄さの秘密は全て「ライティング」にあるとおっしゃっていた。
「ライティング」だけは必ず自分が決めて調整していたそうだ。

土門の写真に惹かれて中宮寺の弥勒菩薩像を見に行ったことがある。
実際に菩薩像と対面し驚いた。
写真の方が美しかったのだ・・・。
あれ、写真の方が奇麗だった?
実際以上に美しく気品に満ちた写真だったのである。

私の土門拳好きはこの体験から更に拍車をかけることになった。

今回も仏像シリーズの出展もあるが、デパート会場なのでちょっと雑然感は否めなかった。
大きな写真は天井が低く、会場が狭いこともあり、写真が映えない。

むしろ、こういった会場では4ツ判?写真というのだろうか、小さめの写真の方が見やすい。
土門が撮影した各界の著名人の人物写真がもっとも多く展示されていたように思う。

印象的なのは志賀直哉、川端康成、富本憲吉、奈良岡朋子らの写真。

想像していたより展示数が多かったので、初期の作品から「ヒロシマ」はじめ有名シリーズ作品まで、彼の回顧展に相応しい内容だったと思う。
平日の夜だった割に、観客が多かったので土日は混雑必至かもしれない。

*3月8日まで開催中。

コートルードギャラリー ロンドンの美術館その3(最終回)

ロンドン関係の記事は今日でおしまい。
最後は、コートルードギャラリー(コートルード美術館)です。

展示室は1階から3階までありますが、特に1階の展示室は1部屋だけ、ゴシック+初期ルネッサンス関係の宗教絵画が展示されています。印象派のコレクションで有名ですが、行ってみたら、もちろん印象派コレクションは素晴らしいのですが、それ以外にもペルジーノ、カラヴァッジョ、ボッティチェリ、ベリーニ、ブリューゲルからマティス、表現主義まで幅広い分野かつ錚々たる画家の作品がそろうバランス良いコレクションでした。
コートルード氏のコレクションはあくまで印象派中心でしたが、後に各所より寄贈があり、上記のような多分野の収蔵品を持つ美術館となったようです。

全体の作品数としては、絵画以外のコレクションを持つウォレス・コレクションの方が多いかなと思いましたが、逆にあちらには印象派作品はなかったように思います。

ここでは、印象に残った作品ベスト5を挙げます。

・スーラ 「化粧をする若い女」
ナショナルギャラリーの「アニエールの水浴」を見る前にこちらの作品と対面したけれど、衝撃的だった。何より、スーラの点描技法による肖像画をこれまで想像したことがなかった。
そして、この作品縦長の画面で割合に大きいので、迫って来るものがある。
女性が美しい訳ではないけれど、画面が美しいので忘れられなくなってしまった。
以下アクオス美術館HPによれば、この作品はスーラが点描で試みた生涯唯一の肖像画だそう。
http://w3.bs-i.co.jp/meiga/p03_4.html

この作品のおかげで、すっかりスーラのファンになってしまった。

・セザンヌ 「石膏像のある静物」
セザンヌの静物画の中でも、私が見た中ではベストかもしれません。それほどまでに、印象深かったです。ただ、それがなぜなのかが自分でもよく分からない。
セザンヌはこの作品以外にも沢山あって、同一作家の作品として一番多かったかもしれない。

・モディリアーニ 「裸婦」
部屋の正面に飾ってあったので目立ったのも理由のひとつだけれど、やはりこの絵が好き。
モディリアニ展に出ていただろうか?記憶がないのだけれど。

・キース・ヴァン・ドン・ゲン 「ドロシーの肖像」
まさか、ここでヴァン・ドン・ゲンにお目にかかれるとは予想だにしなかった。昨年オランダ行った時から好きになった画家。なかなか脚光を浴びないのが悲しい。
この作品もヴァン・ドン・ゲンらしい明るい色使い。

・マネ 「フォリー・ベルジェールのバー」
この作品、とっても有名らしい。らしいと書いたのは本で読んだだけで、私はちっとも知らなかったから。実は、そんなに好きでもないし、印象的というのともちょっと違う。
同じマネの「草上の昼食(習作)」も展示されていて、習作だというのに、そちらの方が「あれ?何でここに草上の昼食」がと思ったほど。
でも、やはり注文を待つ女性の表情がもの問いたげなこの作品を最後の1枚にした。

これ以外では、ゴーギャンを忘れてはならない。「テ・レリオア(夢)」など秀作ぞろいです。

ということで、ロンドンシリーズを終わります。最後は短くて尻切れトンボみたいになってしまいましたが、ご容赦くださいませ。

ウォレス・コレクション ロンドンの美術館その2

ロンドン美術館シリーズ2回目はウォレス・コレクション。
テートブリテンよりもコートルードよりも記憶が薄れないうちにウォーレスをアップしておきたかったのです。

こちらのコレクションの由来は、日程編でご紹介した「ロンドンの美術館」という著書に詳しいのですが、一言で言えばハートフォード侯爵家三代にわたる収集の賜物です。
では、なぜウォレスの名が付いているのか?
三代目、四代目侯爵が築き上げた美術コレクションでしたが、四代目ハートフォード侯爵は生涯独身で、ただ1人非嫡出子を残して死亡。
その嫡出子の名はリチャード、正式に侯爵位を継承することを許されなかったため、母方の姓であるウォレスを名乗ることになったそうです。
このリチャードも更にコレクションを上積みし、やがて妻を残しパリで亡くなります。その遺言であったロンドンの館にあるコレクション全てと建物をイギリス国家に寄贈し、これが現在のウォレスコレクションになったとか。

この館は中庭をはさんでロの字形をしています。中庭には素敵なガラス張りのレストランになっていて、のどかにランチもいただけます(私は食べてませんが)。
1階の展示メインは武具(これが一番多い)とマヨルカ陶器、これらに絵画も混じっています。
マヨルカ陶器のブルーに心惹かれつつ、2階へと続く階段を上ると、その踊り場にかけられていたのロココ画家ブーシェの「日の出」「日没」2つの大作です。
ブーシェとはこんな絵を描くのか、半ばお口ポカン状態で呆然と眺めてしまう素晴らしい作品。

2階はほぼ絵画ギャラリーとなっており、壁、天井と至る所に絵が飾ってあります。上の方にある絵は見えなくてつくづく双眼鏡を持参しなかったことを悔やみました。
数あるお部屋の中でも、殊に素晴らしいのはロココ絵画の集まる一連のお部屋です。ここには、絵画だけでなくマリーアントワネットのコレクションだったというセーブル陶磁器や蒔絵の優品が沢山。
絵も見たいし、蒔絵やセーブルの器には気が取られるしと、誘惑満載。

印象に残った作品は以下の通りです。

・フラゴナール 「ぶらんこ」
burannko
誰もが一度は見たか聞いたかしたことがあるかも。その本物はここに鎮座してました。
でも、あんなロココ調のお部屋にあるのだから、この作品は幸せもの。

・グルーズ 「無垢(子羊を抱いた少女)」
hituji
日本ではとんと見かけませんが、グルーズ作品はここウォレスにとても沢山あります。しかも、そのレベルが非常に高い。一度見たら忘れられない作風です。特に子供を描かせたらピカイチ。

・ブーシェ 「ポンパドゥール夫人像」
ponpa
こちらのポンパドゥール夫人の愛らしく優しそうな表情、そしてピンクのひらひらドレスが見事です。同じくナショナルギャラリーにドルーエ作の夫人像がありましたが、私はブーシェのこの肖像画が好き。
ルイ15世の公妾というと、ベルバラ世代の私としてはデュバリー夫人を浮かべますが、デュバリー夫人こそ、このポンパドゥール夫人亡き後、その後釜となった人。なぜか、ちょっと感慨深かったです。


メインのグランドギャラリーに行く途中にあったのが、
・ネッツェール 「レースを編む女」
レース
どう見てもフェルメール風ですが、出来栄えは秀逸。やはりオランダの画家です。フェルメールと言えばこの方Tak様が既にホームページで採り上げておられます。そう「レースを編む女」と言えば、間もなく国立西洋美術館で開催されるルーブル美術館展でフェルメール作品が来るのでした。

グランドギャラリーは、かつてお客様を呼んでの宴を催していた場所。
それに相応しい大作がずらずらぞろぞろ。しかもベラスケス、レンブラント、ムリーリョ、ルーベンス、ハルス、など錚々たるメンバーの作品ばかり。
それにしても、フランス、スペイン、オランダ、イタリアなど各国の主要どころをおさえてるのが凄い。

・ハルス 「笑う兵士」
harusu
この作品、ウォレスコレクションの顔にもなっています。外観にポスターが貼ってありました。

・ヴァン・ダイク 「The Shepherd Paris」(羊飼いパリスとしての自画像) 1628年
Paris

ヴァン・ダイクは普通の肖像画より、こんな作品の方が素敵。それにしてもマッチョなハンサムガイです。あまりに筋肉質すぎるので、顔だけ好き。

・ムリーリョ 「羊飼いの礼拝」
ムリーリョ
ムリーリョっていいなと思ったのはここでのこと。ナショナルギャラリーのムリーリョはイマイチで、こちらのムリーリョの方が断然良かった。

ここには、ルーベンスの「虹のある風景」という風景画の名作も展示されています。そして、この作品と対になる「早朝、ステーン城の見える秋の風景」が昨日アップした同じロンドンのナショナルギャラリーにあり、もちろん両方拝見しました。
が、私どうもルーベンス好みではありません。弟子のヴァン・ダイクの方が好きです。
もちろん、ルーベンスも素晴らしいとは思うのですが、心惹かれないのです。あまりにごちゃごちゃしすぎてるのが気になるのかもしれません。


現在、正面玄関を改修中で来月の完了以後は、元の素晴らしい佇まいを見せてくれるに違いありません。こちらは、ナショナルギャラリーやコートルードほど混んでいないので、ゆっくり楽しめると思われます。

ナショナルギャラリー・ロンドン ロンドンの美術館その1

ロンドン美術館めぐり追加記事です。今回はナショナルギャラリー、ロンドン編。しばらく、お付き合いくだされば幸いです。

ナショナルギャラリーでは、展示作品を大きく以下の4つに区分し、それらが全部同一階!にある65もの部屋で展示されている。1フロアでこれだけ展示するって、いかに1階あたりの延床面積が広いか想像できるかと思います。実際の広さ以上に広く感じたのは私だけでしょうか。

①13~15世紀の絵画 
ドッチョ、ウッチェロ、ファン・エイク、リッピ、マンティーニャ、ボッティチェリ、デューラー、メムリンク、ベリーニらの作品
②16世紀の絵画
レオナルド・ダビンチ、クラナッハ、ミケランジェロ、ラファエロ、ホルバイン、ブリューゲル、ブロンズィーノ、ティツィアーノ、ベロネーゼらの作品
③17世紀の絵画
カラヴァッジョ、ルーベンス、ニコラ・ブッサン、バン・ダイク、ベラスケス、クロード・ロラン、レンブラント、
フェルメールらの作品
④18世紀~20世紀の絵画
カナレット、ゴヤ、ターナー、コンスタブル、アングル、ドガ、ゴッホ、スーラらの作品

どの部屋を観たのか分からなくなるので、入口で館内地図をもらい、ひとつひとつ部屋番号をチェックしていかないと、必ず見忘れが出ること間違いありません。

この膨大なコレクションの中から選ばれた約25作品について、日本語音声ガイドで解説が聞けますが、この解説がやたら長い。もう少し短くまとめられると良いのですがど、英語直訳の日本語なので、日本語として聞きづらいのも問題です。
余談ですが、音声ガイドはクイーズコレクションで無料で貸出があり(こちらは英語だけ)、英語なので意味はほとんど不明でしたが、音楽付きでこっちの方が私には好感持てました。

さて唐突ですが、今回観た作品群の中で印象深かった作品を敢えて10点絞り込んでみました。
印象に残ったというだけで、好きとはまた別もの。あくまで、一個人の感想ですので、ご了承いただければと存じます。

・ヤン・ファン・エイク 「アルノフィニ夫妻の像」 
arunofini

同じくエイクの「赤いターバンの男」も捨てがたい。この作品のディテールの細かさ、当時の他の作品と圧倒的に違うし、当時のアヴァンギャルドだったのか。

・ダビンチ 「聖母子と聖アンナと洗礼者聖ヨハネ」
annna

ダビンチの素描というのは美しいです。あ、失言!素描も美しいですね。これは単純にやられます。

・ラファエロ 「ピンクの聖母」 
rafaero

ラファエロは「アレクサンドリアの聖カタリナ」の方が著名かもしれず、もちろんこちらも拝見したけれど、私はピンクの聖母がとても気に入った。小品なのだが、聖母の優しげな表情と色合いにKOされた。

・ブロンズィーノ 「ヴィーナスとキューピッドのいるアレゴリー」(愛の寓意)
愛の寓意

ぱっと見てとにかく目にまぶしい作品。ウルトラマリンブルーの色もそうだが、描かれている内容もよくよく見ると不思議で寓意的。

・アクセリ・ガレン=カレラ 「ケイテレ湖」 1905年
ケイテレ湖

フィンランドの画家の作品。北欧の作家というのは、独特な表現をする。湖に走った波?の描き方が特有。普通はこの作品をベスト10に入れないと思うけど、あくまで個人の嗜好なので。

・レンブラント 「アンナと盲目のトビト」 1630年頃
レンブラント作品は相当数あったけれど、私はこれが一番気に入った。レンブラント24歳の作品。既に天才性を感じる。

・ニコラス・マース 「眠るメイドとその女主人」 1655年
女主人の「ほら、ごらん」と言った仕草がどうにも印象的で何度も見てしまう。マースは風俗画家でレンブラント工房にいたというが、レンブラントよりフェルメール風の風俗画である

・モロー 「聖ジョージとドラゴン」 1989~1990年
モローのこんなに大きな作品を観たのが初めてだったのでついつい。日本で観るのはいつも小さな作品ばかりだったので、てっきり小さな絵しか描かないかと思ってしまった。
大きくなると、さすがに迫力が違う。

・スーラ 「アニエールの水浴」
sura

絵画史上でも重要な作品。しかし、こんなにも大きいとは・・・。
モローもそうだけれど、日本にある作品はどうして皆小さいのか。コートルードで観たスーラも大きな作品があったし、今回の旅でもっとも印象が変わったのはスーラだ。

・ホルバイン 「大使たち」
horubain
好きではないけど、この作品がやたらと目に入って来て、最後1枚に選出。背景の緑色のカーテンと2人の人物、そして真ん中にあるゆがんだ頭蓋骨とあらゆる全てが目立つ要素になっている。

上記10点以外にもフィリッポリッピ「受胎告知」、アングルの「坐るモワテシエ夫人」、ベラスケスの「ビーナスの化粧」、デューラー、フェルメール2点など名品多数であることは言うまでもなし。
格別に有名で今回展示されていなかった作品はダビンチの「岩窟の聖母」、カラヴァッジョの「エマオの晩餐」、ゴヤの「ドーニャ・イザベル・デ・ボルセール」などだと思いますが、他にもあるかもしれません。

ところで、このナショナルギャラリーには数字の付いた展示室だけでなくA~Gまでのアルファベットの付された部屋があります。
B~Gは通常も拝観できますが、一番大きな展示室Aは毎週水曜午後2時~5時半しか開いていません。
そこで、再訪時は水曜午後を狙って展示室Aに。
中は収蔵庫のようになっていて、パネルが列をなし全部で32の壁面にこれまた隙間なくびっしりと絵画がおさまっていた。その数たるや、う~ん500枚近く?
大半が、有名作家の後継者やその工房作品なのだが中に有名作家作品も混在しているので、そのお宝を見つけるのが楽しい。

コローなどは本人の作品がおよそ15点以上あって、小品だけどここでほこりをかぶっているなら、日本においでよと言いたかったです。
興味のある方はぜひ水曜午後にどうぞ。展示室Aは分かりづらく、ルーム15からしかたどり着けないので、迷ったら係の方に聞くのが鉄則です。

ロンドン美術館・博物館への旅(日程編)

2/14~20までロンドンの美術館・博物館めぐりをしました。
以下旅程と共に、訪問先についての感想です。

2009年2月14日(土)
AM9:00 成田発 今回はアシアナ航空でソウル乗継でロンドンへ。
アシアナを選んだ理由は、①スターアライアンス加盟、②航空運賃がお値打ち、③乗継の時間ロスが少ない④ロンドン発着時間が最適⑤地球の歩き方・航空会社ランキングで評価上昇中でベスト5などなどである。

PM16:45 ロンドン・ヒースロー着 同日夕刻ロンドン着。ソウルの乗り継ぎは2時間弱。

空港到着後、地下鉄で今回の宿Twenty Nevern Square Hotel & Restaurant へ向かう。

この宿を選んだ理由は①地下鉄駅EARL'S COURTから徒歩3~5分②予約サイトでの評価がまずまず③部屋数20とこじんまりしている④朝食付き4つ星でお値段まずまず1泊ダブルで100ポンドなどなど。
実際は泊ってみたら、良い点悪い点あって評価が難しい。
(良い点)
・朝食がすこぶる美味しい。特に焼き立てクロワッサンとパンオドショコラは最高。
・24時間コーヒー、紅茶などは無料で飲める。
・最寄駅のアールズコートは車いす対応されている駅なのでスーツケースがあっても楽。
・ヒースロー空港から地下鉄で35分、中心部にも20分程度で行ける立地の良さ。

(悪い点)
・隣室、上階の部屋の音が響く。
・バスルームの照明と換気扇がセットで点灯後7分程度で一度必ず切れる。

18:00 宿にチェックイン後、時間があったので早速金曜夜間開館しているテートモダンへ向かう。

19:00 テートモダン到着
テムズ川にかかる橋を渡り、リバーサイド側の入口より入館。その堂々とした外観は写真通り。
中に入ると、元発電所だけにがら~んとしていてだだっ広い。
企画展はロシアアヴァンギャルド関連のものだったのでパスし、常設を見る。
ここの常設は年代順でなく、テーマ別になっているのが特色。日本と違って、作品が壁のすごく上にあったりして双眼鏡でもないとよく見えない。基本的な作品の展示位置もやや高いので、これまた見づらい。
マルグリットで見たことのない作品が数点あり、これが一番印象に残った。あとはマルレーネ・デュマスの部屋があったので、驚いた。テートモダンで一部屋いただけるのって、すごいんじゃないか。
他は期待した程でもなかった。こちらの体調が時差ボケで良くなかったのも影響したかも。
入口入ってすぐのDominique Gonzales-Foersterの巨大インスタレーションもなんだかなぁとぼんやりする。

2階のNicholas Hlobo の展覧会を見逃したことに、今気がついた。この刺繍系工芸アートが一番面白そう。
しかし、今となっては後の祭り。画像で我慢する。下調べして行かないからこういう羽目になる。

館内を回っていると、めまいがして来たので、1時間半程で早々に退散。再訪しようと思っていたが、最寄駅からちょっと歩くのが難で、結局この訪問1回限りとなった。
ちなみにテートモダンは金曜・土曜は夜10時まで開館している。

2月15日(日)
朝から時差ボケで目覚めは早いが夜には滅法弱くて、20時ですごく眠い。この日は二つで、ウォレスコレクションとお馴染みビクトリア&アルバート博物館へ。
ウォレスへは地下鉄で行く予定が、この日予定の路線が全面運休で途中からタクシーで向かう。ロンドンは週末土日によく地下鉄がストップするようで、駅構内の立て看板に注意が必要。

・ウォレス・コレクション
これは別途記事にしますが、今回の一推し。ここのコレクションは武具、陶磁器、絵画と実にバラエティに富んでおり、しかもそれぞれが高いレベル。
ロココ絵画なら、ナショナルギャラリーよりこちらのコレクションの方が私は楽しめた。

・V&A博物館
おもちゃ箱をひっくり返したような博物館。迷路のような建物で、あちこち行きどまりになっていたりで、混乱する上、土曜日だったせいかものすごい人。
ここでは、ラファエロルームと版画、日本の浮世絵に2部屋も割かれている!と少しだが絵画ギャラリーは必見。後はお好みに応じてどうぞ。
最終日に再訪したが、この時は写真ギャラリーを覗いた。これもなかなか面白い。

ラファエロルームではヴァチカンのシスティーナ礼拝堂を飾るタピストリーのために描いた下絵10点のうち、7点をここで見ることができる。
広大な空間で観るラファエロは、下絵といえども圧巻の一言。祭壇画も良かった。
浮世絵は、春信から暁斎まで幅広くおよその作家の物が展示されていたので、面白い。

2月16日(月)
この日は、コートルードギャラリーとナショナルギャラリーへ。

・コートルードギャラリー
月曜だけは14時まで通常5ポンドの入館料が無料。印象派のコレクションでつとに著名な美術館であるが、印象派だけでなく、ペルジーノやブロンズィーノ、ベリーニ、カラヴァッジョ、ルーベンスにピーテル・ブリューゲルらの絵画もあり見所は多い。ここも別途記事にする予定。

・ナショナルギャラリー
午後はずっとここにいた。ものすごい数の作品群で、日本語の音声ガイド(3.5ポンド?)を借りて一応全部観る。もちろん、別記事にします。

2月17日(火)
この日はちょっと遠出。朝一番で女王陛下のコレクションクイーンズギャラリーへ。その後ハムステッドのケンウッドハウスへ行く。

・クイーンズギャラリーは、期待以上。割と厳重な荷物検査とセキュリティーチェックを行い、ギャラリーへ。
今回は「Brueghel to  Rubens」と題した展示を行っていたが、ルーベンスやブリューゲル以外の作家の作品もいくつかあった。中でもジョルジュラトゥールの「手紙を読む聖ヒエロニムス」とレンブラントの「画家の母」に感動。
ラトゥールは2005年の西洋美術館でのラトゥール展にも出品されていた作品だが、私はこれを観ていないので、初見。レンブラントのこの母の絵も秀作で、ロイヤルコレクションでは他にもレンブラントの有名な作品をいくつか所有しているが、今回は展示されていなかった。

・ケンウッドハウス
フェルメール作品を所有していることで有名。ハムステッドの地下鉄駅から途方もなく歩かされた。目的地が見えないので、このままたどり着けないのではないかと不安にかられるが、30分歩いて何とかケンウッドハウスに行き、最後にテート・ブリテンへ。
公園の中の美術館で、野生のリスや見たこともない野鳥がいる自然豊かな美術館。
ここで食べた屋外でのランチが旅行期間中で一番のんびりできた。
さて、フェルメールの「ギターを弾く女」より、私はレンブラントの「自画像」の方が印象深い。あの背景の円は一体いかなる効果を期待して描かれたのか謎めいていて面白い。

もう1枚、フェルディナンド・ボルの「婦人の肖像」も素晴らしかった。

帰りは通りがかったバスで少し楽できたので、駅まで徒歩10分で済んだ。往復1時間歩きとなれば、きつすぎる。

・テート・ブリテン
この日はターナー以外のコレクションを拝見。ミレイのオフィーリアやマリアナが戻っていた。
別記事予定。

2月18日(水)
サー・ション・ソーンズ美術館と大英博物館へ行った後、最後に水曜夜間開館のあるナショナルギャラリーを再訪。

・サー・ジョン・ソーンズ美術館
知らない人は多いはず。サー・ジョン・ソーンはイギリスの1800年代を生きた建築家。その個人コレクションを実際に彼が住んでいた館で公開している。
これがまたキッチュな世界で、狭い空間にぎっちりみっちり、エジプト・ギリシャ・ローマ時代の遺跡の破片や彫刻が詰まっている。
見所は、エジプトのセティ1世の石棺。これはすごかった。エジプト国外にあるものでは世界最大だそう。
絵画では、W・ホガースの「放蕩のなりゆき」シリーズを所蔵している。

ここは一度に入館できる人数に限りがあるので、大抵入口前に入場待ちの列ができている。しかも入館すると、全員名前と国籍をノートに書く。

・大英博物館
大学の卒業旅行で行ってから早10数年。相当変わってました。
目当てはアジアギャラリーと版画。
ミケランジェロの素描の大きな物があったのが印象深い。あとは、インド東南部の遺跡群を再現しているコーナーが良かった。
日本ギャラリーは期待はずれ。中国の陶磁器は良い物を持っている。

2月19日(木)
最終日はロイヤル・アカデミー・オブ・アーツとテート・ブリテンを再訪。

・ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ
企画展メインの美術館で、訪問時は建築の中規模展と私が観た「Bizantium」の大規模展を開催していた。後者は総展示作品数315点とヨーロッパ各国の主要美術館から借り出された至宝に圧倒される。イメージとしては東博の特別展に近いけど、規模が違うか。

午後2時から常設コーナーの拝観が可能。こちらでは、ロイヤルアカデミーの会員の作品を鑑賞できる。

・テートブリテン(再訪)
前回観ていないターナーのコレクションと企画展「テート・トリエンナーレ」(現代アート)を観る。
ターナーの油彩はナショナルギャラリーなど他の場所でもお目にかかったが、水彩作品はここだけだったかも。いやV&Aにあったかもしれないが、量はここが一番。
現代アートの方はイマイチだったが、無料ゾーンに展示されていた作品は良かった。

21:00 ヒースロー発のアシアナ便でソウルへ。

2月20日(金)
21:00 成田到着 帰国。

今回訪問して有料だったのは、クイーズギャラリー入館料(8.5ポンド)と企画展2つ(2つで約20ポンド)のみ。他はすべて無料という芸術に寛大な国なのでした。
そして、今回の旅の参考書としてこちらの本「ロンドンの美術館―王室コレクションから現代アートまで (平凡社新書) 桜井武・著」をご紹介して終わりにします。今回訪問した全ての美術館・博物館は同書にて紹介されており、各美術館の成り立ちから見所まで簡潔に記され、作品図も若干ですが掲載されています。
london

長くなってしまいました。前半部分は不要だったかもしれません。
読んでいただいた方、ありがとうございます。

ご連絡

本日21時に成田到着。
今日のお昼頃ノースウェスト便が、乱気流にまきこまれてケガ人が出たと先程TVのニュースで知りました。
こちらは、無事で何よりです。

ロンドンより日本の方が寒い~。
北風が冷たくて、そう言えばロンドンって風が吹いてなかったし、何より滞在中、青空を一度も見ることがありませんでした。
やはりロンドンの冬は曇天続きです。

前半は時差ボケに苦しみましたが、予定していた美術館、博物館は回れたので満足。

ロンドンで見た一番印象に残った作品を挙げるとすれば、ヤン・ファン・エイクの「アルノフィニ夫妻の像」でしょうか。
本や画像で見るのと本物って違いますね、やはり。
気のせいだと思いますが、この作品からはオーラが出てたように思います。

明日にでも手短にまとめ記事にいたします。

ご連絡

今日から7日間休暇をとって旅に出ます。行く先はロンドン。
ブログはこの間お休みしますので、ご容赦くださいませ。

黒田記念館 常設展示を観る はじめての美術館16

いつも、東博や東京藝大美術館へ向かう道すがら、瀟洒な建物~と気になっていた建築がありました。それが、黒田記念館です。
ここは、夜間ライトアップされると更に引き立ち目立ちます。

開館は、毎週木曜と土曜の13:00~16:00のみ。
入場は無料です。

同記念館のHPによれば、「黒田清輝は、大正13(1924)年に没する際、遺産の一部を美術の奨励事業に役立てるよう遺言し、これをうけ昭和3(1928)年に竣工したのが黒田記念館です。昭和5(1930)年には、同館に美術に関する学術的調査研究と研究資料の収集を目的として、現在の東京文化財研究所の前身である美術研究所が設置されました。平成12(2000)年、新庁舎が竣工。そのため、同記念館を再利用することになり、昭和初期における美術館建築(岡田信一郎設計)として貴重なものであることから、創建当初の姿に復することとし、2階部分を中心とする改修の後、平成13(2001)年9月にリニューアルオープンした。」


名古屋にいる頃から、この記念館のことは知っていて木曜と土曜の午後開館という壁が厚く立ちふさがり、これまで中に入る機会を得られませんでした。
漸く、今回その内部に入ることができました。

美術館というより、洋館に絵を見るためにお邪魔しま~すという感覚でドアを開けると、吹き抜けのポーチがあります。
この感覚は、設計者の意図通り。設計者の岡田は記念館を中世ヨーロッパの貴族の館をイメージして設計したそうです。日本にいながらにして、中世の貴族の館を味わえるという貴重な建物。

イメージとしては東近美の工芸館をもっと広くした感じです。大きさは黒田記念館の方がかなり広いと思われます。

昭和初期の建築ということですが、階段の手すり、ドアの上にあるレリーフ、照明などなど至る所に異国の香が漂いますが、階段などはアールヌーボー風だそうで、いるだけで、気持ちが高揚してくるので不思議です。

展示室も思っていたよりも広く、椅子も置かれているので、ゆったりと作品を楽しめます。
欲を言えば、かの有名な「智感情」のある展示室がちょっと狭い気がしました。この大作があまりに大きく迫力があるため、部屋が狭く見えてしまうのでしょう。
名画「湖畔」も併せて展示されているので、尚更かもしれません。

今回の展示作品の中では「赤髪の少女」1892年が気に入った。
滞仏中にグレーで描いた作品。少女の後ろ姿は少女というよりもう大人の女性のよう。

また、黒田作品とは思えぬ一作品が「昼寝」1894年。
最初見た時、萬鉄五郎の作品かと思った。ゴッホに似たタッチの印象派風の作品。
この時期、黒田はもっとも印象派風の作品を残した。

作品も無論良いけれど、何よりここは過去にタイムスリップしたような感覚を味わえることが最大の魅力だと思います。

なお、3月3日~4月12日まで東京国立博物館本館18室で「黒田清輝のフランス留学」という特集展示が組まれます。

東京にはなかなか行けず、黒田記念館は行きたいけど無理!という皆様へ。
同記念館ホームページhttp://www.tobunken.go.jp/kuroda/は、大変充実しています。バーチャル館内ツアーが楽しめる上に、所蔵作品の全画像を見ることも可能です。
ぜひ、クリックを!

<黒田記念館>
東京都台東区上野公園13-43
交通:
JR上野駅、鶯谷駅より徒歩10分
京成電鉄上野駅より20分
地下鉄銀座線・日比谷線上野駅より15分
地下鉄千代田線根津駅より15分

2009年2月11日 鑑賞記録

昨日の記録です。
昨夜は、氏家コレクションの記事を完成目前にして、ESCキーを押し、全て消え去り、修復するだけで精魂尽き果てました。

1.「清方美の誕生-下絵等との比較」 鏑木清方記念美術館 ~3/25 
鎌倉へ行く際には、必ず立ち寄る。国宝館や神奈川近美に行く途中だし、入館料が200円とお安いので気軽に入れるのも魅力。
今回は下絵を展示し、制作の過程を探ろうという試み。完成作品(本物)と併せて展示されているものはわずかだったけれど、どの作品にも共通していたのは、人物の顔より下、特に肩の線や着物の線を入念に選択していることがよく分かった。

この展示は来月第Ⅱ期ということで後期展示に入る。

2.「肉筆浮世絵の美」 鎌倉国宝館 ~2/15
昨日アップした通り、感動の肉筆浮世絵の名品との出会いだった。
鶴岡八幡宮の牡丹園は、今が見ごろということで、賑わっていたが私は入らずしまい。
感心おありの方は、鑑賞と併せて楽しめることと思う。

3.「アジアとヨーロッパの肖像」 神奈川県立歴史博物館 ~3/29
横浜に戻って、神奈川歴史博物館へ。今回の「アジアとヨーロッパの肖像」は大阪からの巡回展。神奈川県では、この歴史博物館と近代美術館葉山館との同時共催。

が、予想した通り全体としては、バラバラとした印象だけが残った。
アジアとヨーロッパの肖像画をめぐる比較が中心。民俗学的視野での展示と言える。インド、朝鮮、中国、ネパールなどのアジア各国とヨーロッパにおける作品が少しずつ並んでいる。

一番記憶に残ったのは、ヘレン・ハイドの版画作品。この後訪れた横浜美術館所蔵の作品で、横浜美術館での展覧会にも出展されていた。この女性の版画は、他の外国人作家による日本の版画と違い、彼女自身のオリジナル性が出ていて、優しい視点が感じられる。
もっと、まとめて観たいものだ。

変わったものとしては、福岡市博物館所蔵の「唐蘭風俗図屏風」(下画像はその一部) 谷鵬紫溟<こくほうしめい>(3月1日までの展示)が忘れられない。
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谷鵬紫溟の名前を初めて知ったが、江戸後期の長崎派の画家だった。
この屏風右隻左隻の六曲一双にぎっちり様々なものが描かれている。これが摩訶不思議で、作者の想像力たるや、いかばかりかと思い知る。
この絵は、谷鵬にとっての異国の姿だったに違いない。
屏風の蝶番や端にも絵があるようなので、行かれる方はお見逃しなく。

トーマス・マレーの「ウィリアム3世像」や狩野探幽の「東照大権現霊夢像」(3月1日以後はレプリカになる)の大君対決もなかなか。
後者は霊夢像とあるせいか、探幽にしては妙な絵だ。

4.「ひびきあう東西の美術 開港から現代まで」 横浜美術館 ~3/1
横浜美術館の所蔵品による企画展。
展覧会構成は以下の通り。
(1)日本のすがた
(2)歴史
(3)生命のかたち
(4)静物
(5)空間をあらわす
(6)絵画をこえる

最初は横浜美ならではの明治期の洋画や版画の東西対決で日本を見つめ直す趣旨で良かった。
特に、ワーグマン、五姓田作品や、バーサ・ラムと小林清親の版画対決、前述のヘレン・ハイドやモーティマー・メンペスの日本の職人にスポットを当てた版画シリーズなど楽しませてくれた。
昨年感動の渡辺幽香の「幼児図」とも再会を果たす。

しかし楽しめたのはこの第1章だけで、後半になるにつれ、失速したように思う。
「東西の美術のひびきあい」というテーマがどんどん薄れて行ったのが原因ではないか。
観る側の私の嗜好というのが一番大きな理由だと思うけれど。。。

5.「ウェッジウッド-ヨーロッパ陶磁器デザインの歴史」 そごう美術館 ~3/1
いづつやの文化記号さんでご紹介されていたので、寄ってみた。
この日観た中では、氏家コレクションの次点はこの展覧会。休憩で入ったそごうの紳士服売場にあるコーヒーバーで供されたコーヒーカップがウェッジウッドだったのは、単なる偶然か必然か。

展覧会は約200点でウェッジウッドの歴史と作品を展観するもの。
改めて眺めてみると、ウェッジウッドは宝石やカメオのように美しい。
ウェッジウッドと言えば一番に思い浮かべるジャスパー(という名前らしい)は、お馴染みのペールブルーよりも濃茶や薄いグリーンやイエローのものが良い。
黒のシリーズなども惹かれる。
また、大丸ミュージアムで最近見たトラキア文明の赤絵式、黒絵式壺によく似た古典主義的シリーズなどもあり、知らないウェッジウッドの世界を知った。

しかし、こんな栄華を誇る同社が2009年1月5日に経営破綻するなど、名門もそれだけでは生き残れない時代が到来したというのはやるせない。

「肉筆浮世絵の美-氏家浮世絵コレクション-」 鎌倉国宝館

鎌倉国宝館で開催中の「肉筆浮世絵の美-氏家浮世絵コレクション-」に行って来ました。

氏家浮世絵コレクションは、昭和49年10月1日、長年にわたり肉筆浮世絵画の蒐集につとめてた故氏家 武雄氏と鎌倉市が協力し、鎌倉国宝館内に設置された財団法人です。
氏家浮世絵コレクションの浮世絵はその全作品が肉筆画であることが大きな特徴です。
かつては、毎年1度5月に公開されていましたが、数年前から浮世絵らしく新春の展示にということで、例年1月から約1か月公開されています。

今回の展示数はコレクションの全作品(恐らく全部で60点程)のうち約40点。前後期と分けて展示されていたこともあったようですが、今年は展示替えなしで40点です。
東博の浮世絵コーナーには、毎回2点肉筆浮世絵の名品が展示されますが、これを20回分まとめて見た計算となります。

昨年拝聴した小林忠先生の講演の中で「氏家コレクションという肉筆浮世絵の名品が揃っているものがありまして・・・」と紹介されただけのことはあります。
次々と繰り出される、質の良い肉筆画に、完全ノックアウト状態です。

国宝館には、鎌倉周辺の古刹が所蔵する仏像の名品も展示されており、こちらも毎回見逃せません。今回も「おっ!」と思ったものも何点もありました。おまけに鶴岡八幡宮の「弁財天坐像」まで特別公開されています。

しかし、それらの印象さえ、霞んでしまうような肉筆の名品たち。
印象に残った作品をと言われても、全部と言いたくなりますが、敢えてそのうちの何点かをご紹介します。
また、ご参考までに、過去に同様の展覧会をご覧になった先輩ブロガーの皆様の記事も併せてご案内いたします。この感動が私だけのものでないことがお分かりいただけるかと。
Art & Bell by Tora
つまずく縁も石の端くれ

・「当流遊色絵巻」  奥村政信
この華麗さは圧巻です。奥村政信1人の手によるものではなく、奥村工房の作品と言われていますが、誰の作品であるかは問題ではありません。
様々な遊興場面が登場し、登場人物の着物の色柄の美しいことと言ったら。
これが1巻だけでなく、2巻まるっと公開されているから堪りません。

・「美人愛猫図」  懐月堂安度
懐月堂は肉筆美人画のプロトタイプを構築した作家だそうですが、本作はそれらの典型と異なります。大きな違いは2つ。背景に柳が描かれていること、美人の足もとに猫がじゃれついていること。
柳の効果は判然としませんが、これを描くことで浮世絵版画では出せない味を作品に付加しているのは間違いないでしょう。

日本美術史家の同コレクションベスト3の一つに挙げておられます。

・「美人観菊図」 西川祐信
土佐派、狩野派の両派を学んだ西川ならではの肉筆画。その力量は他の作家による作品と比較すると歴然です。背景に描かれている衝立の絵や構図法などなど技術が見え隠れ。

・「かくれんぼ図」
・「万才図額」
いずれも喜多川歌麿の作品ですが、全く違うタイプの作品。かくれんぼは美人画で、万才は注文されて描いたのでしょう。めでたいモチーフが横4面につながり一幅となっています。

・「柳下二美人図」  鳥文斎栄之
国宝館HP作品リストでは細田の姓が使用されており、馴染みませんでしたが、鳥文斎の二美人図。
後半同じタイトルで歌川豊広の作品があり、こちらも素晴らしいのですが私は鳥文斎の方が好き。
暑いのか、左側の女性が袖をまくる様子が風情あるな~と思って。
なお、河野先生ベスト3残りの2つのうち一つは歌川豊広の二美人図でした。

葛飾北斎の肉筆画もぞろぞろ名品が並んでいます。

・「酔余美人図」
・「鶴図屏風」
・「小雀を狙う山かかし図」
・「見立児島高徳図」
などなど他多数。酔余美人図はどこかで見た記憶がありますが、どれもこれも、皆違った良さがあり離れられません。
山かかしなど写実性とその迫力のあまり、今夜の夢に出て来そうです。

変わり種では、かの岩佐又兵衛の息子・岩佐勝重の「職人尽図屏風」なる作品までも。
又兵衛以上に詳細不明の画家だそうです。


氏家コレクションの魅力はとてもこれだけで、ご紹介仕切れるものではありません。
ぜひ、また来年も再会したいなと思います。

*2月15日まで開催中です。
鎌倉国宝館HPはこちら。作品リストは会場に用意されていないので、事前にここからプリントし持参されることをオススメします。

「文字の力・書のチカラ-古典と現代の対話」 出光美術館

moji

出光美術館で開催中の「文字の力・書のチカラ」に行って来ました。
こちらの展覧会の報告は、日頃お世話になっているブロガーの方々が素晴らしい記事を既にアップされています(以下)。
弐代目・青い日記帳
アトリエ・リュス

う~ん、それらの諸先輩を前にして今更記事が書けない~と思ったのですが、やはり良い展覧会だったので、記録に残しておこうと奮い立つことに。

今回の展覧会では、古代から現代まで、しかも日本だけでなく海外の優れた書作品を比較展示し、書における伝統と創造のあり方を探るというもの。

展覧会チラシによれば、静かにブームを迎えている書の世界だとか。
確かに上記でご紹介したブログでも「とめはねっ!鈴里高校書道部」なるマンガまで連載されているなどと拝見すると、確かにそうなのかなという気にもなってきます。

出光美術館らしさ溢れる書の展覧会でしたが、一番のポイントは初心者に分かりやすく書との接し方ポイントがいくつかパネルで案内されていたことでしょう。
個々の作品解説も、見方についてうまくまとめてあるので、参考になります。

<展覧会構成>
1.書を説く・書で説く
2.書との語らい-響きと表現
3.古典との対話-移ろう時と書のカタチ
4.文字の世界

以下、個人的に印象に残った作品です。
・平櫛田中 「不老」 1971年
不老は筆者田中の願望か。彫刻家の書というのもみもの。

・池大雅 「般若心経観音図」 江戸時代
これ以外にも般若心経作品はいくつかあって、私でも書いてあることが分かった。お経というのも、書く人の一文字一文字が、書き手にとっての仏のようにも見えてくる。
大雅の絵はよく見かけるが、こうして「書」の分野でスポットを当ててみても、味のある書風だと思った。

白隠、仙らの書は、東博の「妙心寺」展でも接したばかり。もとより、彼らの書も絵も好きなので、見ていて楽しい。自由でのびのびとした感じが大好き。

・本阿弥光悦 「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」
光悦が書の名手というのは周知の事実。彼の書は、当時のアヴァンギャルドだったらしい。
天才は常に新しい時代を切り開くのねと再認識。

後半、かな文字の名筆が出て来ます。
やはり、外せないのは「石山切」。今回は、伝藤原公任のものが出展されています。
名古屋にいた頃、徳川美術館で「石山切」の全てを集めた展覧会を見て度肝を抜かれたのが今も忘れられません。思えば、書の魅力にはまったのは、あれがきっかけだったかも。
料紙やかな文字の散らし書きは芸術以外の何物でもありません。

藤原行成 「久松切」(倭漢朗詠抄巻下)
伝小野道風 「継色紙」

行成は、私の好きな書き手です。ちょっと気取った感じの書なのですが、妖しげな美しさが感じられます。それに比べると、小野道風は妖しさのない優等生な優美の書。

不思議なのは、これだけの書を集めながら良寛和尚のものがなかったこと。
年明けに東博で良寛筆による書の屏風を拝見しましたが、個性的でこれも印象深かったのです。
更に昨日アップした安田靫彦も良寛の書を好んだとのこと。

個人的には、良寛が1点は欲しかったかなと。

最後は、イラク、エジプト、シリア、中国など世界の古代文明文字の紹介があります。
文字の多様さ、始まりをわずかでも感じられれば良いのではないでしょうか。


最後に都内で書の展示を見られる私の好きな博物館をご紹介。

・東京国立博物館。
言わずと知れた基本中の基本。
本館では、日本の書が時代ごとにずらりと並んでいます。
忘れてならないのは、東洋館。中国の書の名筆は東洋館に展示されています。
これらは、数か月単位で展示替えがあるので博物館HPなどをこまめにチェックすれば、展示替え有無を把握できます。

・台東区書道博物館
こちらも展示替えがあり、その都度展示作品は変わります。中国の書が中心。
2月22日まで「みんなが見たい優品展 パート6―中村不折コレクションから―」が開催されています。


書を見ていると、気持ちが落ち着いて来ることが多いです。
そんな気持ちになった時、出かけてみると良いかもしれません。

*2月15日まで開催中です。

「没後30年 安田靫彦展」 茨城県近代美術館

「没後30年 安田靫彦展」を観に、茨城県立近代美術館に行って来ました。
没後30年と言っても、安田靫彦が亡くなったのは1978年。2008年の昨年がちょうど没後30年にあたるというわけ。
最初、没後30年?と聞いた時、意外な感じがしました。まだ私が生まれた時には、現役でいらっしゃったということで、昔の日本画家のイメージが急に近しい存在に変わります。
それもそのはず、安田靫彦は1884年生まれなので、肺病という持病を抱えつつ94歳と長寿を全うしたのです。

私が安田靫彦の名を知ったのは、随分と前になります。女流日本画家、小倉遊亀(彼女も長寿)が好きで、その師匠が安田靫彦であったのです。
滋賀県立近代美術館にはご当地作家の小倉遊亀のコレクションが大変充実していますが、その師であった安田靫彦の作品も相当良い物を持っているようです。

そして、今回の展覧会では何点かその素晴らしい滋賀県近美コレクションを見ることができました。

本展は安田靫彦が、岡倉天心に認められ、茨城県五浦の日本美術院研究所に招かれ、これを機に大きく飛躍します。この靭彦にとって飛躍のきっかけとなった茨城の地で、その芸術の魅力を約100点で展観します。

作品は、ほぼ年代順に章立てされています。以下印象に残った作品と共に振り返ります。

Ⅰ章 萌芽と胎動

・「遣唐使」 1900年 個人蔵
先月、佐野美で観た小林古径や昨年の平塚美開催速水御舟もそうでしたが、非凡さというのは既に10代前半から現れるのですね。この作品も16歳で描いたとは思えません。
御舟は13歳で画家になろうと志し、1898年に歴史画を得意とした小堀鞆音に師事。なお、「靫彦」という号は小堀鞆音の師であった川崎千虎が名づけたそう。

この後、18~20代前半の作品が続きますが、どれもこれも上手い。
中でも
・「静訣別の図」1906年滋賀県立近代美術館蔵
・「羅浮仙」 大正初期 個人蔵
の2点が良かったです。羅浮仙は海の妖精なのですが、靫彦描く羅浮仙は健康的で実在的でした。
この後、もう1枚同じ「羅浮仙」(1935年・茨城県近代美術館蔵)を描いた作品があるのですが、全く違います。
この2点で作風の変化を知るのもまた一興。

Ⅱ章 展開と開化

ここからは、少し時代が飛んで1925年41歳の作品から始まります。
40代の作品の特徴は、私が見るに「洗練と簡潔」と言えるのではないでしょうか。

・「西廂待月」1926年 滋賀県立近代美術館
・「風神雷神」 1929年 遠山記念館
風神雷神は、靭彦が敬愛していた俵屋宗達へのオマージュなのかも。琳派の作品を意識しつつ、光琳、抱一、其一らとは全く異なる若く清々しい、現代的な風神雷神を創出しています。古典を学び、更にその先、展開への創造力が、安田靫彦の真骨頂なのだと感じます。

・「菖蒲」 1931年 京都国立近代美術館
たらしこみを使った琳派風の作品。菖蒲だけが軸の中で大きくクローズアップされているのも、琳派の作品と似ています。

・「伊勢物語 あまのかは」 1931年 個人蔵
私にしては珍しく、タイトルを見る前にこれが伊勢物語の業平を描いたものだと分かりました。
砂子を使った天の川や秋草がとても好ましい、優しい作品です。

・「花づと」 1937年 宮本記念財団
161.6×76.0の大幅。日傘とお客様に差し上げる花束(花づと)を手にした女性像。
気品があって、女性の性格まで絵に表れているようです。傘の模様が細かい。

・「赤星母堂像」 1943年 平塚市美術館
この作品は数点の下絵も一緒に展示されているので、その制作過程を知ることができます。
最終的に、絵にした赤星母堂像は、下絵にはなかったきりっとした強い意志が感じられる人物象に仕上がっています。
安田靫彦の描く人物象は、作品にその人物の性格まで表出させているのが魅力です。

Ⅲ章 深花と円熟 

最終章では、60歳から晩年までの作品を紹介しています。ここでは、色彩の魅力を再認識した靫彦の円熟を増した筆使いと色彩感覚がポイントです。

・「木花之佐久夜毘売」 1953年 個人蔵
富士山を背景に、何とも華麗な女神を色彩豊かに描く。

・「卑弥呼」 1968年 滋賀県立近代美術館
得意の歴史画の大作に間違いなく含まれるのではないでしょうか。
卑弥呼など、誰も見たことがなくその実像は不明なのですが、もしや卑弥呼ってこんな女性ではなかったのか?と観る者に素直に信じこませる程の力があります。

・「森蘭丸」 1969年 ウッドワン美術館
背景に描かれた一枝の梅が何とも言えず印象深い。刹那的ですらある。

・「梅花定窯瓶」1963年 豊田市美術館
梅と言えば、靫彦と言うほど、梅を描いた作品は多い。地元豊田市美で何度か見ているこちらの作品は、展覧会の冒頭にあり、艶やかに観客を迎えてくれます。

この他、水彩画やデッサンなども併せて展示されているので、そちらも楽しめます。
平塚市美で拝見した「速水御舟展」の安田靫彦ヴァージョンのような構成と作品数で大満足でした。
これに、「御産の祷」(1914・東京国立博物館蔵)があればというのは贅沢ですね。

なお、展覧会チラシに使用されている「飛鳥の春の額田の王」1964年 滋賀県立近代美術館蔵は、2月23日~3月22日までが展示期間です。ご注意を!

*3月22日まで開催中です。本展は茨城県立近代美術館の単独企画展のため巡回はありません。

<関連情報>
「~青邨、靫彦、御舟~ 大正期、再興院展の若く青き日々」と題する展覧会がこの秋(9月12日~10月25日)滋賀県立近代美術館で予定されています。

「唐津・鍋島・柿右衛門 九州古陶磁の精華 田中丸コレクションのすべて」 茨城県陶芸美術館 はじめての美術館15

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「現川」「上野」「志賀」「小代」これらの名前に共通するものはな~んだ?
答えは九州古窯の名前です。分かった方は、やきもの通ですね、きっと。

さて、昨年から待望していた「田中丸コレクションのすべて」を観て来ました。
もう大満足、感動もの、垂涎ものです。
田中丸コレクションのことを知ったのは昨年5月の九州国立博物館。福岡市美でも数点見かけた記憶がありますが、はっきり意識したのは九博の平常展。
田中丸コレクションから数点のやきものが出展されていて、その質の高さと「田中丸」という変わった名前が頭に刻まれました。
*H17 より田中丸コレクションは、重文+磁器系207点が九博、陶器系203点が福岡市美に寄託されている。

田中丸コレクションとは、福岡玉屋百貨店(現在福岡からは撤退し、長崎と佐賀に店舗がある)の経営者・田中丸善八氏(1894-1973)の蒐集した九州古陶磁のコレクションです。
その特色は、唐津や鍋島に限らず、日本陶磁史に重要な位置を占める九州各地の主要な窯を幅広く網羅し、更に素晴らしいのは各窯の代表的名品を体系的に揃えていることにあります。
質・量、内容の網羅性等の観点から、世界屈指のコレクションとして有名とのこと。

本展は全410点のコレクションから、約150点を展観するものです。

見所は、鍋島、伊万里、柿右衛門と出光美術館、松岡美術館をはじめ他館でも紹介されている有名窯の作品だけでなく、九州全域に亘り、その古窯の作品を紹介していることでしょう。
冒頭に掲げた4窯以外にも、その名を知らなかった窯がいくつもあり、九州古陶磁の奥深さに感動です。

最初は唐津から。
入口正面には重文「絵唐津菖蒲文茶碗」(下画像)が、堂々と展示されています。
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更に隣には「絵唐津木賊文茶碗」が。
後者は、バーナード・リーチ、坂本繁二郎、東山魁夷など著名人が絵に描いているようで、コピーですがそれらの絵も一緒に展示されており、如何に愛された茶碗なのかが伺われます。
唐津焼きにも、いろいろあるようですがこの絵唐津は何と言ってもその素朴な絵柄が愛される所以。

「朝鮮唐津手付水指」のようにゆがみを大きくした大胆な作風の水指もあルかと思えば、「斑唐津丸壺茶入」など、色合いが何とも言えない丸みを帯びた美味しそうな茶壷もあったりと魅せられます。

薩摩焼は来月2/14から、江戸東京博物館で企画展が開催されますが、その予習といってはもったいないような名品を堪能。
「染付松竹梅図茶碗」(下画像)は薄い黄色の肌が、優しげで、染付の色とマッチしていました。これは姿も良いです。
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変わり所では、「色絵官女銚子」。
女官の全身像を模ったお銚子です。頭の髷の部分が蓋になっていて、それを外してお酒を入れる仕組み。
薩摩焼きは官窯、民窯とありましたが、田中丸では官窯の作品を蒐集しています。

現川焼(うつつがわやき)は、現在の長崎市現川町で焼かれた陶器で、別名を矢上焼とも言うそうです。1691年に諫早家の士官が窯を開き、1749年には早くも窯を閉じるという短い活動期間ですが、その作品は個性的です。
個人的には現川焼の意匠に強く惹かれました。
どの作品もデザイン性、また器としての形、色に優れています。
下の画像は「刷毛地色絵抱銀杏文輪花皿」(下画像)で、銀杏の葉を大胆にデザイン化した秀作。これ以外にも素晴らしい意匠の作品がぞろぞろあります。
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長与焼は長崎県の窯で、1667年開窯から約200年間営まれ、清朝の三彩の影響を受けて誕生しました。
しかし、その作品は参考にしたであろう清朝の三彩を凌駕するような魅惑的な色をしています。
特に素晴らしいのは青みを帯びた緑。
長与焼の色は、澄んでいるような気がしました。

・・・と作品の中からいくつかご紹介しましたが、伊万里、鍋島、柿右衛門は言うに及ばず名品揃い。
とても、ご紹介しきれるものではありません。

やはり、茨城県陶芸美術館まで足を運び、その目で確かめるのが一番でしょう。
東京からなら、特急フレッシュひたちで最寄駅の友部駅まで約70分。
そこからはタクシーまたはかさま周遊バス(100円)を利用して陶芸美術館まで約15分。
*かさま周遊バスは1時間に1本ですので、ご注意ください。
それにしても、この内容で観覧料600円は破格の安さ。

今回は時間がなくて回りきれませんでしたが、所蔵品展も人間国宝の作品があるようで、1日いても楽しめるかもしれません。
平成12年4月にオープンしたとのこですが、美術館の建物も新しく気持ち良いので、居心地抜群。笠間芸術の森自体が、焼き物を楽しめる施設が他にもあるせいか、大勢のお客さんが次々に来場していました。

*3月15日まで開催中です。この後以下に巡回します。関東では、茨城のみなので、お見逃しなく!
兵庫陶芸美術館    3/21~5/24
サンリツ服部美術館  6/9~8/30
富山市佐藤記念美術館 9/12~10/25

2009年2月7日 鑑賞記録

今日は明日の茨城行きを控えているので、かる~くしようと思っていたのに、勝手に身体が動いて結局いつものようにハードなメニュー(以下)になってしまった。
なぜ、まっすぐ家に帰れない?!

・「アーツ&クラフツ展」 東京都美術館
ウィリアム・モリスの提唱したアーツ&クラフツ運動の紹介とヨーロッパでの影響、そして日本の民藝運動の紹介と3部立て。
民藝運動についての紹介を「三國荘」の再現展示でうまくまとめていた。
聞きしに勝る濃い内容の展示だった。これは最低2時間は見ておいた方が良い。

・黒田記念館  *木曜・土曜のみ開館なので要注意。
初訪問なので、別途記事にする予定。

・「童画の世界-絵雑誌とその画家たち」 国際子ども図書館
別記事を書いたので、こちらをどうぞ。オススメです。

・イェッペ・ハイン 「Kuru Kuru」 SCAI THE BATHHOUSE
哲学的な感じのインスタレーション。ギャラリーという閉ざされた空間では、その良さが発揮できないような気がした。

・東京国立博物館 東洋館
お目当ては中国絵画コーナー。現在は特集陳列「梅花」を開催中。
「紅梅図」 金農筆 清時代をはじめ、梅を題材とした作品ばかり集めた展示で季節感漂う。
同じく特集展示の「インド細密画」もオススメ。
インドの神話にちなんだ題材やその技法、緻密さぶりは新鮮であった。こちらは前期・後期と展示替えがあるので、後期も見に行くつもり。

・「さわひらき展」 オオタファインアーツ
これも良かったので、別記事でご紹介。こちらをどうぞ。

・「佐々木加奈子展」 資生堂アートギャラリー
静岡県立美術館の「風景ルルル」の出展作家だったので、作品の記憶はまだ新しい。
今回も映像3作品&写真を組み合わせた展示。
同じく映像作品だったさわひらき展の後だったので、ちょっと組み合わせが悪かったかも。
私には馴染めない作風であることが、今回認識できたかな。

2/13~3/14まで恵比寿のMA2ギャラリーで個展「drifted」を同時開催。
両展に共通するモチーフは「ボート」?案内に掲載されている写真は美しいが、見に行くか迷う所。

「さわひらき展」 オオタファインアーツ

勝ちどきにあるオオタファインアーツで開催中の「さわひらき展」に行って来た。
さわひらきは、これまでどこでもない情景やこの世にありえない風景を映像化して表現する作家。

地元愛知県美術館所蔵の 「Going Places Sitting Down」を初めて見た時の衝撃は忘れられない。
その後、愛知県美の所蔵品展覧会で何かと出てくるので、何度か見るのだけど、その度にあの不思議な映像のとりこになる。

新しい作品を見たいと思っていたら、ついに待望の個展開催。日本では4年ぶり3回目だそう。
2つの新作が発表されている。

・「Silts」
siltの意味は何だろう?と思って調べたら「沈泥」の意味を持つ。
いったい何分の作品だったのだろう。私は前半途中から見始めたので、ほぼ2回通しで作品を見た。
映像だけでなく、振子時計やコップが重なりあうような音などの効果音と併せて作品を堪能して欲しい。
メルヘンというのでもなく、癒しでもなく、ゆらゆらとゆったりとした時間が流れていく。
これ以上書いてしまうと、これから見る方の楽しみを奪ってしまいそうなので、後は見てのお楽しみ。
10分くらいはありそうな映像作品なので、見ごたえ十分!

さらに、新しい試みとして映像スクリーンの隣に、映像に描かれている世界が実際に小屋として展示されている。
ギャラリーの解説によると、「仮想の部屋に棲む者のファンタジーが部屋の外に投影されているかのようです。」とある。残念ながら、私はそこまで深読みできなかったが、実際に映像で見た空間が急に現実となったようで、特に前述の振子時計はその小屋にあり、映像の世界、現実の世界が混在するという体験をさせたかったのではないだろうか。

・「Out of the blue」
ここでは、対峙する2面スクリーンに砂漠を歩く人(植田正治の砂漠シリーズを思い出した)の映像と観覧車、空っぽの鳥かごなどが順々に映し出される映像が同時に流れている。
この2つのスクリーンの間に立って、2つのスクリーンを眺めるのはなかなか難しい作業だった。
自然、動きの多い後者のスクリーンを眺めていることが多かった。

これらは共時性を強く意識したシリーズとのこと。

思いがけず新作が2点も鑑賞できて大満足。多分過去最高長く1つのギャラリーにいたと思う。
全部をしっかり見ると20~30分以上かかるはず。

さわファンは必見です。

会期:2009年1月31日(土)-3月6日(金)
11:00-19:00 (日・月・祝日 休)
会場:オオタファインアーツ
東京都中央区勝どき2-8-19-4B
大江戸線 勝どき駅より徒歩2分

「童画の世界-絵雑誌とその画家たち」 国際こども図書館

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コドモノクニ10巻6号 岡本帰一「ボクノオ室」

KINさんのブログでご紹介されているのを拝見し、国際子ども図書館で開催中の「童画の世界」展に行って来た。
こども図書館の1階にあるカフェを利用したことはあったが、3階の展示室に入るのは初めて。
それにしても、素晴らしい建物。中にいるだけで、ワクワクする。こんなに立派な図書館(かつてはこども用ではなく国立図書館であった。)を建設していたなんて驚いた。

約100年前の絵雑誌誕生から衰退までの流れを、時代を追ってたどると共に、子どものために描かれた芸術性の高い絵画を「童画」と称した童画家たちの活躍を紹介する展覧会。
会期中、前期・後期の展示替えを行い、何とのべ約400点の資料を展示する。
観終わった後、つくづく前期展示を逃したことが悔やまれた。

展覧会構成は次の通り。ご覧の通りの盛り沢山な内容。

導入:子どもの本と童画
第1部 絵雑誌の歩み
1.草創期ー児童雑誌の誕生とカラー絵雑誌の萌芽
2.絵雑誌黄金時代の到来と幼児文化の確立
「子供之友」「コドモノクニ」「コドモアサヒ」「キンダーブック」
3.衰退期-絵雑誌の東郷と衰退
第2部童画家たちの世界
武山武雄はじめ17名の紹介。
日本画家・洋画家の童画
第3部 特別コーナー
1.童話・童謡
2.付録

第1部は、様々な子供向け雑誌が次々に創刊され、紙文化が多様であったことを知った。
特に大正時代の童画雑誌、中でも「コドモノクニ」の童画作品の素晴らしさたるや、子供向けと断じてしまうのは惜しいほど。
これは、立派なアートだろうと感じる。

しかし、これ程までに盛んだった絵雑誌も日本が軍国主義に突き進むにつれ、紙不足やインク不足などにより、紙面は大幅縮小を余儀なくされる。
果ては、言論統制の結果、ついに廃刊、休刊を迫られることになり衰退したことが雑誌を見ていればおのずと理解できる。

個々の雑誌ごとに、特色ある紙面づくりをしていることも見逃せない。コドモアサヒは朝日新聞の学芸員が全て絵を手がけていたが、コドモノクニは絵雑誌の中心的存在で、童画家を生んだのもこの雑誌の創刊が大いに影響している。

第2部の童画家紹介の中で気に入ったのは、武井武雄と初山滋、村山知義の3人。

村山の作品はモダンの先端を行っている。むしろ海外の作家かとさえ思った。
初山滋も元々着物の絵付けや染めを仕込まれ、15歳で風俗画家に学び、やがてこども向け雑誌の表紙や挿絵を手がけるようになる。

武井武雄は、日本童画家協会の中心人物。子供のための絵画を「童画」と名付けたのはこの人。つまり「童画」という言葉の生みの親である。武井作品は水彩風の柔らかな感じが良い。
この3人の表紙絵などは、時代を感じさせない所が素晴らしいと思う。

最後に、東山魁夷の手がけた絵雑誌の表紙と共に大好きな古賀春江の「コドモニクニ」表紙を見ることができた。
元々、この展覧会を見に行こうと思ったのは、古賀春江の表紙が展示されていると知ったため。
わずか8回だけれど、コドモノクニの表紙を手がけたらしい。
後期出展作品より、前期に展示されていた「四月の散歩」(下画像)など、もう表紙の域を超えて立派な作品としか思えない。
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今回は原画出展がごくわずかだったけれど、童画家の原画だけを集めた展覧会って開催されないものだろうか。
昨年感動した茂田井武は今回紹介されていなかったけれど、童画家の作品をもっともっと評価して欲しいと思った。

会場には絵雑誌の付録を実際に作った見本なども置いてあり、当時の様子がうかがわれる。
とにかく盛り沢山で面白い内容です。東京藝大のすぐそばなので、上野にお越しの際は是非お出かけください。

*2月15日(日)まで開催中(月曜休館)。入場無料です。

「上條花梨展 -There...,that Station-」 MEGUMI OGITA GALLERY

今日オープニングを迎えた上條花梨の個展に行って来た。
MEGUMI OGITA GALLERYから案内状が届いた時から、どうも気になる絵でぜひ見に行こうと決めていた。

上條さんのプロフィールは以下の通り。ご本人のHPはこちらからどうぞ。
1980    東京都生まれ
2000    東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻入学 
2004    東京芸術大学大学院美術研究科入学   
2006    東京芸術大学大学院美術研究科修了
2008   “Atelje Stundars” KulturÖsterbotten / フィンランド

何と、1980年生まれのお若い作家さん。
でも、その作品はとても良かった。
ハガキなどの印刷物や画像で見るより、やはり実際に足を運んで観ていただきたい作品である。
今回は、全部で6点の作品が展示されているが、どれもこれも味がある。

一番の魅力は色彩感覚だろうか。
彼女特有の色使いで、何と表現したらいいのか淡い色調の作品と、赤や黄色などのはっきりした色調の作品と2つに大別されるように思う。

マチエールは厚塗りと言ったわけでもなく、単に油彩なのだが、あの質感は一体どこから表出しているのか。見ているだけではまるで分からない。

描かれている対象は、花の柄のついた室内に椅子立ちしている金髪の幼児、お人形、果実、羊などメルヘンチックではあるが、甘ったるさは感じない。
ありそうでなかった油彩というのを強く感じた。

それにしても、まだお若い作家さんなのに作品の値段が高額だったのに驚いた。私はゼロを一つ見間違えたのだろうか?いや、間違っていないはず。

好きな作家さんに仲間入りしそうです。

MEGUMI OGITA GALLERY エルメスビルの裏手にあります。入口が分かりにくいのでご注意ください。
期間 2月6日 (金) ~ 2月28日 (土) 12:00 - 19:00
休廊日 日月

「よみがえる黄金文明展」 大丸ミュージアム・東京

大丸ミュージアム・東京で開催中の「よみがえる黄金文明展」に行って来ました。
そう言えば、始まるなぁと思っていたら、尊敬すべき大先輩Takさんの「弐代目・青い日記帳」にて紹介され、混雑する前にといそいそ向かった。

作品リストはありませんが、A2サイズの4つ折り公式?チラシが置いてあります。
この展覧会は全国7会場を巡回中で、東京はちょうど折り返しの4か所目。この後、広島県美、静岡県美、最後に福岡市博に巡回します。

さて、ブルガリアが黄金の国というイメージは私もありませんでした。
むしろ黄金の国はかつてジパングと言われた日本ではなかったのか。
しかし、この展覧会を見れば黄金の国=ブルガリアのイメージが植え付けられるかもしれません。

最初の方の展示は、それほどでもと思っていましたが、今回の目玉「トラキア王の黄金のマスク」や「黄金の花冠」そして最終コーナーの怒涛の金製品は圧巻です。

トラキア人、トラキアの歴史などのパネル解説を横目にしつつ、目の前の出土品の数々に気を取られ歴史的理解はおざなりに。

金製品はただ単に使用されている金の量が多いだけではなく、その細工が見ものです。
前述の花冠はオリーブの葉と実を模して作成されていますが、葉っぱの主脈、葉脈までしっかと刻まれているのが肉眼で分かりました。

フィアラ杯という饗宴用の皿には、ロゼッタ文、ドングリ文、あげくに黒人の頭部像が円を描くように三重に金刻されていて、その細かさたるや紀元前4世紀でこの技術!と驚かざるを得ません。

昨年Miho Museumの「リュトン展」で沢山拝見したリュトンですが、今回展示の金製の鹿形リュトンはそこでも見ていない素晴らしい細工です。
2人が同時に飲めるような細工のリュトンもあり、第2のリュトン展かと思わせるほど優品中の優品が揃っています。

金製品ではないのですが、忘れることができないのは「すね当て」でしょう。
その立体感写実感、更には装飾品としての優美さ三拍子そろっています。しかし、ここまでかっちり銅で作られていると、ちょっとでも太ろうものなら、サイズが合わなくなることは間違いなし。
足に合わないすね当てって痛そうです。

赤絵式の陶器製品も沢山ありましたが、これらを見るといつも思うのはピカソの絵。
古典主義時代のピカソの人物は、この赤絵に描かれているのとそっくり。
例えば、ブリヂストンの「腕をくんで座るサルタンバンク」の顔を浮かべていただけると分かりやすいです。

花冠と黄金のマスクの展示コーナーでは、そこだけバラの香が漂います。
カネボウ化粧品の協力で、これらが出土した「バラの谷」で栽培された非常に珍しい白いバラ「ローズ・アルバ」とピンクのバラ「ローズ・ダマセナ」の精油に、独自のバラ香気成分「トップローズアロマ」を加えて調香した「バラの香り」。
気持ちまで優雅になってくるので不思議です。


大丸ミュージアム・東京パスカードの期限が2月16日と迫っていて、継続についてお尋ねしましたが、発行の予定は、現在のところないそうです。
本展がパスカードで鑑賞できる最後の展覧会となりました。残念。

*2月15日まで開催中です。

「冬の夏 三瀬夏之介展」 佐藤美術館 はじめての美術館14

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「三瀬夏之介展」を見に佐藤美術館(初訪問)に行って来た。
佐藤美術館は、主に新人作家の展覧会を行っている美術館というイメージがあったが、三瀬さんは1973年生まれとまだお若いが、新人作家というくくりより、まさに成長過程にある作家さんというイメージ。

何人かのブロガーの方が書かれているが、私も三瀬さんを知ったのは東京現代美術館で2006年に開催されたMOTマニュアル2006 No Border「日本画から日本画へ」展であった。
この時の出品作家は今をときめく町田久美さん、松井冬子さん、天明屋尚さんら錚々たる顔ぶれだった。中でも私の心を一番とらえたのが、三瀬さんだった。

その後、フィレンツェに研修留学されたとか何かで拝見したが、作品を見る機会はなかった。
約2年ぶりとなる三瀬作品やいかに!と出かけたのだった。

さて、展覧会は3階、4階の2フロアに展示されている。大作「奇景」は3階にある。
しかし、この展覧会「奇景」など1点1点にこだわる必要はないように思う。
受付で渡されたビラにも記載されている通り、小さいものまで含めると出品総数は130点以上、更に作家は展示室全体を1つのインスタレーション作品として見立てているからである。

という訳で、1つの作品として見た時の感想を。

印象に残ったのは緑青色。
最初にあった「rust work」シリーズの小さい額から始まって、あちこちにこの緑青が見られた。
緑青は錆びからも生まれる。
実際錆びから生まれ出た緑青もあった。
この緑青は岩絵の具特有の色ではないか。
墨や和紙、金箔も多様されていたが、私にはこの緑青こそ三瀬作品が日本画たる主張をしているように思えてならない。

次のイメージは「混沌、カオス」。
作家の言葉を引用すれば「矛盾とノイズを含んだ言葉」をキーとした展覧会らしい。
矛盾+ノイズ≒混沌 という算式は悪くない。
とすれば、作家の意図は私に伝わったようだ。

作品とは別に三瀬のアトリエ展示が気になった。
バロック音楽が流れ、机上にあった本は岸田劉生のものが2冊含まれていた。私は劉生が好きなので、親近感がわく。
小さな鉱石たち、あれは何とい名前の石なのだろう?緑青色のものが特別目をひいた。

今度の土日、7日、8日の各午後1時~2時半まで作家が展示会場にて制作しながら作品について語るアーティストトークが開催されます。
三瀬作品の秘密が明かされるかもしれません。

*2月22日(日)まで開催中です。

「ライト・[イン]サイト 拡張する光、変容する知覚」 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

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先週TV「日曜美術館」のアートシーンで紹介されていた「ライト・[イン]サイト」に行ってみた。
お目当ては、ミシャ・クバル。
昨年12月に豊田市美術館でクバルの「都市のポートレート」展を見たばかりである。この展覧会はなかなか面白かったので、クバルを追っかけようと思いつく。

展覧会チラシによれば、
自明すぎてあらためて振り返られる機会の少ない「光」という存在のもつ過去、現在そして未来への可能性を、「知覚」という切り口を通して、アートと科学を超えた視点から新たに照射することを企図しているらしい。

光というテーマで思い浮かぶのは、オラファー・エリアソンが一番で、レアンドロ・エルリッヒなんかも光の使い方が上手いアーティストとして浮かぶ。が、両者とも本展出品作家ではない。残念。

全部で12の作品、体験型の作品が多いのがこの展覧会の特徴で、「カメラ・ルシーダ:三次元音響観察室」という作品は当日会場で予約が必要だ。予約必須ということは分かっていたが、4時半に行った時には既に当日予約可能数は全て終了していた。係の方にお聞きしたところ、土日は3時半頃には予約受付が終了してしまうそう。
面白そうな内容なので、再訪しようか悩ましい。今回のチケットでもう1度入場できるのです。

12の作品の中で印象的だったもの。

・「キャンドル・テレビ」 ナムジュン・パイク 1980年
空っぽの四角い箱の中でろうそくが点灯しているだけ。ただそれだけなのに、こんなにも視覚に訴える作品はあるだろうか。揺らめくろうそくの光、ずっと見ていたくなる。
ろうそくが点灯するのは、会期中の土日祝日の午後2時からのみ!

・「サンキュウ-インストゥルメント」 インゴ・ギュンター 1995年
暗い空間の中で発されるストロボ光を浴びることで、体験者のシルエットが壁面に一時的に焼きつけられる作品。
私は配布された解説資料を読まずにまわったので、ogawamaさんのブログ記事を拝見して、はじめてこの作品が広島の原爆投下を疑似体験することを意図したものだと知った。
ストロボ光があまり好きではないので、ここにはそそくさと出て来たのだが、原爆投下をこんなものと一緒にされてはとやや憤慨。

・「思考プロジェクター」 2007年 エイリアン・プロダクションズ
この部屋に入ったら、観客の列ができており、何か分からないけどとりあえず並んだ。
眼底測定装置-これがカールツァイス製、で自身の眼の表面(正面)と眼底の高解像度画像(左)が壁に拡大されたものを見ることになる。
自分の眼の巨大画像に直面すると、客観視できるものなんだなぁと他人事のように眺めていた。
眼の表面は強烈だが、不思議な映像になっていたのが眼底の高解像度画像。
これは、ある種模様のようで不思議だった。
この画像とアーティストが予め制作したアーカイヴとオーヴァーラップしたものが右側の壁に映るという三段階構成。
画像が、眼底の高解像度画像の方。
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なお、この画像は以下のURLより自身のものを探し出して後で見ることができる。チケット番号を書いた紙を係の方からいただけます。私のもこの中にありました。
http://alien.mur.at/gedankenprojektor/archive.php

この作品でも撮影時にフラッシュがたかれるため、次にあった藤本由紀夫さんの「PRINTED EYE(LIGHT)はパスした。これもフラッシュ系の体験インスタレーション。

・「You and I,Horizontal」 アンソニー・マッコール 2006年 
私の本展ベストはこれ。
暗幕をくぐったら、いきなり平衡感覚がなくなるような不思議な体験をした。
観たものは、距離感のない灯台のあかりのようなもの。解説によれば、光でできた被膜のような立方体。一体どこまでこの光は続いているのか。
先が見えない。行きつく先はどのくらいの距離間があるのか、まるで分からなくなった。

この立方体は微細なミストにプロジェクターからの光をあてることで実現されている。三次元の非物質的彫刻とされていたが、あれは彫刻だったのだろうか。

ミストをくぐり抜ける度、皮膜が揺れて輪郭がゆらゆらと形を変える様が生き物のようで、私には彫刻とは思えなかった。自分とミストの光が一体になったら、もっと面白いのに。

「space-speech-speed」 ミシャ・クバル 1998年
暗闇の中で回転する3つのミラーボールから反射される光が、空間全体を攪拌。光は、プロジェクターから発されるアルファベットの文字で、ミラーボールを介すことで、空間へと散らばって行く。
タイトルは空間(space)の中で、光としての文字がコミュニケーションを誘発しつつ(speech)、空間のダイナミックな動き(speed)をともなって循環するということを示す。

そんな難しいことを考えずとも、この空間にいるだけで日常からの脱出になること請け合い。

*2月28日まで開催中。

「未来をひらく 福澤諭吉展」 第7部ピックアップ 東京国立博物館

前回の続き。
第7部は福澤門下生による美術コレクションの紹介となっている。

まずは、表慶館での展示。
こちらは陶芸や茶道具をメインにした作品を紹介している。そして、コレクションをした人物紹介のパネルもあり、過去目にしてきたコレクションの幾つかが福澤門下生だと知った。
中でも電力王、松永耳庵は慶応出身だったとは。そしてもう一人、高橋誠一郎コレクション。慶応義塾図書館には私が一番見たい作品が一つある。月岡芳年の「幽霊之図」だが、これも高橋コレクションに関係あるのか?この高橋コレクションである浮世絵は第2会場にお目見えする。

以下印象に残った作品。

<第1会場>表慶館
・「利休丸壺茶入 大名物」 重要美術品 南宋-元時代 香雪美術館
釉の黄褐色が珍しい。この色に惹かれた。

・「黒楽茶碗 銘 七里」 本阿弥光悦作 五島美術館
ラッキーと思わず言いそうに。またしても追っかけしている光悦の茶碗に出会えた。よくあるパターンのお茶碗ではあるが、光沢ある黒釉とやきものの地のバランスが絶妙。

・「色絵金銀菱文茶碗」 野々村仁清作 重要文化財 MOA美術館
一度見たことがあるので感動はやや薄いが、何度見てもモダンなデザインである。

・「井戸茶碗 銘 常盤」 朝鮮時代 MOA美術館
井戸茶碗は理由なく好き。何でだろう。これ以外にあと2つ井戸茶碗が出ていた。
・「大井戸茶碗 銘 有楽」 重要美術品 東京国立博物館
織田有楽斎が所持していたことから、銘が付いた。もう、ここまで来ると恐れ多い感じがする。

・「黒楽茶碗 銘 次郎坊」 長次郎佐久 安土桃山時代 福岡市美術館
松永コレクションからの出品。松永コレクションには本当に素晴らしいやきものが揃っている。
光悦、仁清とあればやはり長次郎は外せない。小ぶりだが長次郎らしい逸品。

・「志野筒茶碗 銘 橋姫」 東京国立博物館
好みではないが、茶碗にしては大きいので印象的。水指のようであった。

・「銅王子形水瓶」 奈良時代 福岡市美術館
この水瓶、形が良い。さらに銅の滑らかな質感と色合いがたまらない。

・「秋草文壺」 平安時代 国宝 慶応義塾
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日吉の校舎構内から出土したもの。それにしても、なぜ敢えて日吉からこんな立派なものが出土するのだろうか?一番の不思議はそのこと。風格と秋草の紋様が忘れられない。日本の陶芸で国宝第1号がこの壺であったとは。

<第2会場(本館2階 特別2室)*こちらは、平常展のチケットのみで鑑賞可能。
注:1/31の展示内容となります。

・「彩箋法華経薬王本事品断簡」 平安時代 北村美術館
欄外に蓮華が可愛らしく描かれているのが洒落ている。

・「海棠白頭翁図」 祐周筆 室町時代 常盤山文庫
・「叭々鳥図」 雪村周継筆 恵蒙賛 室町時代 重要文化財 常盤山文庫
以上2点の名品を所蔵する常盤山文庫とはいかなるものか調べたら、もとは鎌倉で開館していたが現在長期休館中とのこと。もったいない。
2/10からは「雪景山水図」など室町時代の至宝をコレクションしている。

・月百姿 「南屏山昇月 曹操」 月岡芳年 慶応義塾
前回記事でご紹介した慶応の経済学者であった高橋誠一郎コレクションからの出展。
状態が良い。やはり、月百姿は良い。この後2/10から月百姿「四条納涼」、2/24から「稲むらか崎の明ほのゝ月」が登場する。
東海道五拾三次シリーズも同時に出展されているが、月百姿をもっと見たいという我儘な私であった。

現在福沢諭吉展は慶応義塾あげての応援サイトが開設されている。その中に「福澤展のツボ」というブログがあり、記事中に担当キュレーターの美術品コレクションみどころ紹介が掲載されています。
画像も併せて御覧いただけます。
http://tokura.fukuzawa2009.net/2009/01/post-7ac6.html

*3月8日まで開催中。特に第2会場の展示は頻繁に展示替えがありますのでご注意ください。
また、この展覧会は次の2会場に巡回します。
福岡展:2009年5月2日(土)〜6月14日(日)、福岡市美術館
大阪展:2009年8月4日(火)〜9月6日(日)、大阪市立美術館

「未来をひらく 福澤諭吉展」 東京国立博物館表慶館

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妙心寺展の後、本館で平常展を観て表慶館で開催中の「未来をひらく福澤諭吉展」を訪れた。
中に入ると、どうした訳かとても混雑している。
元々狭い室内のため、展示品ケースもあったりで身動きが取れない。
う~ん、これは違う日にすれば良かったかもと思ったが、既にチケットをもぎられていたため、後の祭り。

観客の多くは慶応関係者と思われる。
それが顕著になったのは、展覧会の終盤。美術愛好家であれば最後の「第7部 たしかめる共感-福澤門下生による美術コレクション」は待ってましたという感じなのだが、あれだけ沢山いたお客さんは皆すいすい流して行く、もしくは素通りの方までいらっしゃった。
なので、この最後のコーナーだけはゆっくり見ることができた。

そして、この第7部の一部が第2会場として、本館2階の特別2室で諭吉展チケットなしでも見ることができる。
ここの展示はほぼ2週間単位で展示替えがあるので要注意。私もそんなこととは露知らず、1/10~1/25まで展示されていた国宝「釈迦金棺出現図」(京都国立博物館)は見逃した。

展覧会は前述の第7部「門下生によるコレクション」を含め、以下の7部構成になっている。寸評とともに振り返ります。
第1部 あゆみだす身体
福澤愛用の品々や着衣が展示されていた。福沢諭吉は当時の日本人としては非常に大柄で背が高かったことを知る。彼のはいてた股引まで出ていたのは笑った。
先生もまさか後年股引が展示されると思っていただろうか?

第1部の私的見所は諭吉の写真である。
とても写真の被写体になることが好きだったらしく、多数の写真が現存。中でも、面白かったのはパリ滞在中に「日本人類の典型的な顔立ちとして、パリ人類学博物館に標本モデルとして写真が保存されている。
典型的な顔立ちかどうか、否定はできないかなと思った。でも、若かりし頃の福沢諭吉はふっくらしている。

肖像写真をもとにして描かれた川村清雄の「福沢諭吉肖像」(油彩)も印象深い。本当に写真そっくり。川村清雄の作品は、この日本館1階の展示室(明治期の洋画コーナー)で「形見の直垂」が展示され見たばかりだったので、尚更印象深かった。

第2部 かたりあう人間
ここでは、諭吉が婦人の地位向上に向けた数々の著作や文章が紹介されている。

第3部 ふかめゆく智徳
福澤の学問系譜と一線の場としての慶応義塾の展開を紹介。
ここでは、「慶応義塾時間表」に注目した。明治時代から今と変わらないような時間割はあった。
慶応義塾では幾何学など理数系種目に重きを置いた教育が展開されていたらしい。
そう言えば、体育の授業を重視していたと第1部に紹介されていた。

慶応義塾の建物を飾るステンドグラスは和田英作によるもので、原画習作を見ると和洋折衷とも言い難い何とも妙な図柄である。

谷口吉郎設計の幼稚舎、万来舎は有名であるが、寄宿舎のモダンさには驚いた。
昭和13年竣工で寄宿舎のテラスらしき所にプールがあるのだ。
寄宿舎というより、まるでホテルのよう。

第4部 きりひらく実業
福澤門下生の中から多数生まれた実業人「福澤山脈」、殊に地方で活躍した門下生や福澤が実業に求めたモラルについて焦点をあてる。

第5部 わかちあう公
福澤は、個人と「公」がどのような関係を築くことを望み、何を実践したか、その模索を紹介。

木戸孝允とは親しく、勝海舟とは好敵手というかお互い舌鋒鋭いやりとりがあったようだ。
交友関係や政府官僚についての諭吉の思いがおぼろげながら理解できた。

第6部 ひろげゆく世界
福澤の海外体験とその後の変化についてを紹介。

「木村摂津守英文名刺」(万延元年1860)は日本で初の名刺とのこと。
この当時、ローマ字はまだできておらず発音をアルファベットに置き換え、発音を表記したものになっていた。
なぜか、福澤のアメリカ土産として「乳母車」が展示されていたが、唐突感がある。

第7部については、長くなるので次の記事で紹介する。

「2009年 私の気になる美術展(「美術の窓」最新号より) 

日頃リスペクトしている「はろるど・わーど」さんで、掲題タイトルの記事を拝見し、私もはろるど氏に続けとばかり追い記事を書かせていただきます。

以下、はろるど先生が掲載されている展覧会(これは私も気になる)は除いた私の気になる美術展一覧です。

「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア」 Bunkamuraザ・ミュージアム 4/4~6/7 
*岩手、広島、郡山に巡回。
ロシアのモナリザ?と言われる人気の「忘れえぬ女」が来日。これは必見中の必見。
他にもレーピンやらシーシキンらの絵画も楽しみ。

「あら、尖端的ね」 岡崎市美術博物館 2/14~3/29
都市文化と商業美術のありようを紹介。この手の内容は岡崎市美の得意とする分野なので、必ずや素晴らしい展示だと期待。

「フランス絵画の19世紀」 横浜美術館 6/12~8/31
*島根県立美術館 3/6~5/31(こちらが先)
これは当たり、ハズレが大きそうだが、アングルを見たい。

「ヤノベケンジ-ウルトラ」展 豊田市美術館 3/7~6/28
ジャイアントとらやんのファイアー炸裂の「キンダガルテン」展から早3年半。帰って来たヤノベケンジ。
今度はどんなもの見せてくれるのか。

「色彩の詩人-脇田和展」 猪熊弦一郎現代美術館 4/11~6/28
*呉市立美術館 10/3~11/15
脇田和、気になる。でも丸亀も呉も遠すぎる~っ。

「ラウル・デュフィ展」 三鷹市美術ギャラリー 4/18~6/28
*足利市立美術館 7/4~8/16
南仏ロデヴ美術館館長の監修で約80点により展観。その多くが日本初公開というから見逃せない。
3月末まで三鷹市美術ギャラリーは休館。リニューアルオープンを飾るに相応しい内容を期待。

「仏たちの物語」 MIHO MUSEUM 7/11~8/16
仏像や経典などの多彩な作品をエピソードを交えながら、分かりやすくひもとく。
MIHOはいまだハズレたことがない。仏教系はお得意分野のはず。見逃せない。

「道教の美術」 三井記念美術館 7/11~9/6
*大阪市立美術館 9/15~10/25
道教の美術を紹介する日本初の展覧会。本当に今までやってなかったの?
三井記念はスペースが手狭なので、展示替えが予想される。見るなら広い大阪市美の方がオススメだろう。

「憧憬の中国仏教-聖地寧波をめぐる人と美術-」 奈良国立博物館 7/18~8/30
中国仏教の聖地・寧波から日本にもたらされたと考えられる仏像、仏画等名品の数々を展示。
Mihoと併せて見れば、理解は深まるに違いない。

「一蝶リターンズ~元禄風流子英一蝶の画業~」 板橋区立美術館 9/5~10/12
同館の江戸文化シリーズはレベルの高さ証明付き。今回は近年発見された作品などを一堂に集めて一蝶の画業を振り返る。

「ヨーロッパNo.1王家 THEハプスブルク(仮)」 国立新美術館 9/25~12/14
*京都国立博物館 2010年1/5~3/14へ巡回
ウィーン美術史美術館とブダペスト国立西洋美術館所蔵のルーベンスにラファエロにゴヤの名品80点が日本上陸する。
古典的西洋絵画は苦手なので、もっと見る機会を増やしたいところ。

「久隅守景展」 石川県立美術館 9/26~10/25
久隅守景と言えば国宝「納涼図屏風」。これをはじめ約40点での展観。
なかなかスポットの当たらない画家の展覧会ゆえ、金沢まで行く価値ありとみた。

「清方/Kiyokataノスタルジア(仮)」 サントリー美術館 11/18~2010年1/11
大好きな清方の展覧会と来れば、必見。そう言えば清方の大型企画展ってない。

「小村雪岱とその時代」 埼玉県立近代美術館 12/15~2010年2/14
もう、これはとても楽しみ。やっとまとまった数の作品を一度に見られる。
絶対図録買っちゃうだろうな。

その他、まだまだ面白そうな展覧会が予定されています。
詳細は、美術の窓2月号をご覧ください。
mado

転記ミス等があるやもしれません。その場合は、ご容赦賜わりますようお願い申し上げます。

「第4回府中ビエンナーレ トゥルー・カラーズ 色をめぐる冒険」 府中市美術館

hucyuu

会期末の駆け込みで、府中市美術館の「トゥルー・カラーズ」を見て来た。
多摩地域にゆかりのある作家を中心に、40歳以下の将来性ある若手作家を紹介する府中美のシリーズ企画で、今回が4回目で、テーマは「色」。毎回テーマは変わると思われる。
私は過去3回は見ていないので、今回が初。

出展作家は次の7名。
・村山留里子
・武藤努
・渡辺豊
・横内賢太郎
・原高史
・今澤正
・雨宮庸介

色をテーマとして集めたにしては、首をかしげたくなるような作家もあったけれど、これはと思える方が1人あった。
その名は横内賢太郎。お名前は拝見したことがあったが、作品に記憶がない。
調べてみたら、ケンジタキギャラリーの扱作家としてHPに掲載されていた。
今回の彼の作品は全て新作。この展覧会のために制作したのではないだろうか。
キャンバスに張られているのは、サテンの布地で様々な色絵の具がにじんだように広がっている。
オークションブックから題材を得て、画面に映し出されているのだと思われるが、その良さはうまく言葉で説明できないし、図録で見てもわからない。

光の加減や鑑賞者が動いて見る方向により、透明の線が変化するイリュージョン絵画。
サテンのキラキラした感じと時折現れる絵が、とても美しい。
美術館側も心得ていて、数分単位に照明が暗くなったり明るくなったり、変化を感じられる照明の工夫をされている。
ただ、照明の変化時間が早すぎたので、もっとゆっくり暗くして欲しかった。

武藤努はコンピューターのプログラミングを使い、色彩生成を表現するメディアアーティスト。
お気に入りは「Optical Tone」という照明作品。
下方に錘がついていて、頭の丸い部分を押すと、起き上がりこぼしのようにゆらゆら動いて、元の位置に戻って来る。
ポイントはこの起き上がりこぼしの頭部分に触れると、様々に色が変化して行くところ。
揺れながら色が変わり、触る度にまた変化する。
お部屋にあったら、絶対楽しい。

原高史は、色というより言葉にこだわりをもっている作家だと思う。
もちろん、作品を見る限り印象に残るのは言葉の方。
色はおのずと作品が教えてくれると音声ガイドで言っていたのが印象的。

府中市美術館では台数はわずかだが、無料で出品アーティスト自らが語る作品解説を貸出していて、私も利用させていただいた。
皆さん、緊張されている様子で声が硬かったけど、ご本人の解説だから面白い。

今澤正は、理解するのに難解な抽象画。
雨宮庸介は、ご本人曰く「色にはこだわりがない」そうで、えっそんなこと言っちゃって良いの?と聞いてる私が心配になった。
彼のインスタレーションは6つの部屋からなっている、かなり大がかりなもの。
それでも、色による違いを出そうとされた工夫はあったが、もとより、作家さん本人はそれを問題視していないだろう。不思議な空間アート。

渡辺豊は、色彩豊かに、東京でよく見かける風景を四角を使って絵画化している。
村山留里子は7000枚もの小さな絹布の巨大パッチワーク。


企画展の後、常設にまわったが戦後の主要な洋画家作品が展示されていた。
小特集は小山田二郎。
彼の名前も作品も初めて見たが、初期の「顔」は忘れられない良い作品だった。

この美術館には牛島憲之記念館があり、いつもここに来ると癒される。
今回も「春昼」「残夏」「冬」「花曇り」「昼の月」など、温かな作品が迎えてくれた。

また、府中お馴染みの公開制作では、アクリル板を使った彫刻作品を行っている袴田京太朗の作品が3つ展示されていた。制作過程も見られて、小規模ながらこれもなかなか良かった。

*「トゥルー・カラーズ」は本日(2/1)で終了しています。
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