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池田亮司 +/- [the infinite between 0 and 1] 東京都現代美術館

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東京都現代美術館で開催中の「池田亮司 +/- [the infinite between 0 and 1] 」を見て来た。

池田亮司さんのことを私は全く知らない。
既にこの展覧会をご覧になった皆さんのブログ記事を拝見していると、著名な作曲家であり、アーティストだそうで、作曲家によるアートって一体どんなものなの?
サウンドインスタレーションとやらを体験することにした。

展示は1階と地下1階に分かれているが、個人的には1階展示が全てだった。
圧巻、壮観、素晴らしいインスタレーション。
宇宙空間に自分が迷い込んだかのような錯覚を覚えた。

入ってすぐにステンレスらしき鋼板に無数の数字が並んでいるエッチング作品があって、その奥に巨大空間が展開している。

左壁面には10のスクリーンがあり、絵ではない、記号、数字、数式、粒?などある時は10個全部が同じ映像、そして一定時間が経つとデジタル音と共にそれぞれが別の映像を流し始める。
更に奥に進むと天井までの超巨大スクリーンが3つ切れ目なく続き大スクリーン壁面と化していた。
ここで、一斉に最初見た数字の羅列が映し出される。
デジタル数字を使う所だけは宮島作品ぽいけど、作品の質も意図も全然違う。

これを壁に寄り掛かってじ~っと見ているのは気持ち良かった。
数字が模様のようになっている。

こればっかりは、行って体験してみないとその素晴らしさは分からないでしょう。

地下1階の展示は靴を脱いで、床にはられた白いフェルトの上を進む。
最初に1階と同じエッチング作品の色違いがあり、後はこれをプリントしたと思われる平面作品。
奥には6つの巨大スピーカーが高周波音を流していたけれど、こっちはイマイチ。

ということで、私にとっては1階が全てだった。

3月末のリニューアルオープンの時に、1階突き当りにジャイアントトラやんはいたかしら?
久々に再会できた。

*6月21日まで開催中。
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「ヴィデオを待ちながら 映像,60年代から今日へ」 東京国立近代美術館

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東京国立近代美術館で開催中の「ヴィデオを待ちながら 映像,60年代から今日へ」へ行って来た。
かねてより、この展覧会は絶対に時間がかかると予想し、雨模様の日に1日東近美に籠るのも良いななどと考えていたが、気がついたら会期終了まであと1週間。慌てて行ってきたが、案の定時間が足りず2時間半で切り上げ、常設にまわったら、相変わらずこちらも見ごたえがあって、どうにも時間が足りず。

何しろこの展覧会、作品リストがふるっている。
特殊なセロハンぽい紙質で、A32つ折りとサイズが特大。広げるとポスターになりそう。
そして、この展覧会のためだけに作られたTVを置くための台や間仕切り、小さな椅子達、展覧会にはまっていて、ちょっと日本じゃないみたいだった。

作品を「鏡と反映」、「芸術と非物質化」、「身体/物体/媒体」、「フレームの拡張」、「サイト(場)」と5つのテーマ別に何と約50点のヴィデオ・アートを紹介している。

解説が高尚なのだが「なるほど、そういう意図があるのですか~」と思って見ると、いつもなら意味が分からず通り過ぎてしまうような内容でも、思わず手作り椅子に腰かけて見入ってしまうのだった。
あの椅子に誘われたのか、私は。

第1章 鏡と反映
もう、出るわ出るわ大御所のアンディ・ウォーホルの≪アウター・アンド・インナー・スペース≫1965年のビデオ・アート史の魁となった記念碑的作品もしっかと見た。
この作品は上映時間が1時間半ごとなので要注意。
内容は面白くも何ともないのだけれど、気が付くと35分。
二重性絵画、複数化といった彼の平面作品を映像化して表現している。

・ヴィト・アコンチの≪こじ開け≫1971年
これはインパクト大きかった。女性がしっかとつぶった目を、ヴィト・アコンチが無理やりこじ開けようとする、抵抗する女。まるで愛の交歓のようにも見える。アコンチの作品は他にも数本あったが、どれも斬新で視覚など人間の感覚に対してヴィデオで挑んでいるかのよう。

・村岡三郎+河口龍夫+植松奎ニ≪映像の映像-見ること≫1973年
番組放映中のテレビに対しての物理的行為を6つのパターンで見せて行く。
最後にハンマーでテレビを粉々に破壊。これも衝撃的な作品だった。

第2章 芸術の物質化
・マーサ・ロスラー ≪キッチンの記号論≫1975年
これは作者の意図が分かりやすい。普段は料理道具として認識しているキッチンにある様々なものたち、フライパンやフォーク、アイスピック等々をアルファベット順に紹介する。紹介する際、ロスラーが激しい動作を行うことで、途端に料理道具が暴力性を帯びてくるのが不思議。
普段は何気なく見ているものが全て凶器に見える様が面白い。

デニス・オッペンハイムは息子のエリックと共演し、エネルギーや遺伝子の関連性を見せる。
これも考えさせられた。

・泉太郎 ≪裏の手 手の裏≫2009年
彼の作品はいくつかまとめて展示されていた。過去に見たものも含まれていたが、新作もあり。
やはりどれを見ても面白い。ただ、どこが面白いのか作者の意図はと問われると答えられない。ただ、ひとえに泉の映像への愛情を感じるのみ。

第3章 身体/物体/媒体
ここでは、ブルース・ナウマンのパフォーマンス映像が何本も紹介されている。
1本あたりどれも1時間。これを最初から最後まで見る人などいないと思うが、触りだけでも彼が何をしたいのか、しようとしているのかは理解できるだろう。

・リチャード・セラ≪カラー・エイド≫1970-71
220枚の色の髪を1枚1枚引き抜いて行く過程を映像化。それだけなのに、引きぬく際の音と色が美しい。時間があったら、もっと見ていたかった。

第4章 フレームの拡張
・リチャード・セラ ≪鉄道旋回橋≫ 1976年
旋回しながら撮影することで、見る側と見られる側どちらが動いているのかを曖昧にさせる。

・タラ・バーンバウム≪ワンダーウーマン≫1978-1979年
TVドラマを再構成、再構築して5:50で見せる。制作意図は解説を読んでも理解不能だが、理屈抜きで楽しめた。変身シーンと爆破シーンが強烈。

・ポール・ファイファー≪洪水の後の朝≫2003年
このあたりから、時間がなくて走り始めたが、文句なく美しい映像。ループなのだが全てを見切りたい。水平線と太陽がモチーフ。

フランシス・アリス≪ロハーサル1≫ 
小林耕平≪2-6-1≫2007年が気になったが、チラ見。

第5章サイトの作品は観たい作品がいくつもあったのに、諦めた。
・ロバート・スミッソン≪スパイラル・ジェッティ≫1970年
・フランシス・アリス≪信念が山を動かすとき≫2000-02年
はどうしても最初から最後まで見たいので、といってもこの2作品だけで70分以上かかる! 

ところで、この展覧会の図録が実に素晴らしい。
マニアックな内容の展覧会にも関わらず、お客の入りはまずまず。図録もほぼ完売間近で在庫僅少。
全く買うつもりはなかったのだが、1400円という値段の安さに対して中身の出来栄えのあまりの良さに思わず買ったが後悔はなし。
印刷がすこぶる良くて、写真集としても、文献としても楽しめる三重丸な内容。
大きさもポストカードよりちょい大きいくらいのハンディ版。
綴じも糸とじで、今どき珍しい。ちなみに印刷会社は八絞美術。

同時開催の常設も良くて、来週で会期終了だけど再訪する。
お世話になっているogawamaさんの記事でもご紹介されています。

*6月7日(日)まで開催中。

「三井家伝来 茶の湯の名品」後期展示 三井記念美術館

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三井記念美術館で開催中の「三井家伝来 茶の湯の名品」後期展示を見て来ました。

「さすが三井様、良い物をお持ちで・・・」などと数寄者の間で会話が弾みそうな品々ばかり。
いつもは小出ししている茶の湯の名品をど~んと出して来ました。
日本橋の三井タワー移転後、館蔵の茶道具を一堂に公開するのは今回初とのこと。
確かにどれもこれも、目移りしてしまうようなお道具ばかりです。

美術館の館蔵品は、北三井家(惣領家)、新町三井家、室町三井家の寄贈品が中心ですが、各三井家所蔵の茶道具にはそれぞれ特色があるとのこと。
展覧会チラシを見るまでちっとも分かりませんでした。
どうせなら、各家所蔵品による違いをもっと明確化した展示にできなかったのかなと思いました。

雑誌で読んだ担当学芸員さんのコメントによれば、本展でひとつの冒険をされたそうです。
国宝志野茶碗「銘卯花墻」を展示室3(茶室如庵を模した空間)にひっそりと置いたこと。
お供に展示されているのは、一山一寧筆「一山一寧墨蹟」のみ。

国宝というキャプションは遠く離れた所にあるので、気付かない人は気付かないで終わったりして。
かくいう私も志野茶碗はあまり好みではないので「ふぅん」と通り過ぎ、後であれがかの有名な国宝茶碗だと気付いた次第。

国宝茶碗より、やはり好みは光悦黒楽茶碗「銘雨雲」。
何度も見ているのに、何度見ても良い。
東博の「対決展」を彷彿とさせるように同じく黒楽茶碗の名品、長次郎作「銘俊寛」が出ています。
他に「大名物 粉引茶碗 三好粉引」の白色がとろけそう。
この大名物粉引は大ぶりで、たっぷりしている。こんなお茶碗で一服頂戴できたらどんない素敵だろう・・・と妄想してしまいます。

展示室4では茶室にかける軸ものや花入れが中心の展示。
前期、後期と絵画は入れ替わりがあったようで、前期を見逃したのが残念。展示替えがあるなんて知らなかった~。
「六祖破経図」梁楷筆は、南宋絵画で人物画の最高作だとか。
「祇園祭礼図」(桃山~江戸時代)は作者不明ですが、描写は細かく見どころ多し。

「古銅桃底花入」はまるで鶴のように細首で枯れた味わいがあります。
粉引(私は粉引が好きらしい)、備前、青磁、黄瀬戸と様々な窯で作られた花入れの名品が続きます。これほど素敵な花入れが並んでいる光景はかつて見たことがない。
垂涎ものでした。

明治20年の明治天皇献茶会茶道具の展示は、これぞ!というものばかり。
冒頭、藤原定家筆「小倉色紙」鎌倉時代が飾り、野々村仁清「色絵鶏香合」、長次郎作黒楽茶碗「銘面取」、千利休作茶杓、与次郎作「日の丸釜」と三井北家が誇る茶道具の優品の数々。
あまりにメジャーブランドばかりで、遊びがないのが難点。さすがに、明治天皇茶会で遊びは禁物か。

展示室5では、各家所蔵の茶入、茶碗、茶杓、棗がぎっしりと展示されています。
これだけ見ればもうおなかいっぱい。

茶道具というのは取り合せが面白いのであって、ひとつひとつ見るだけだとどこかもの足りません。
茶の湯と言えばお気に入りは畠山記念館ですが、こちらは展示室全体が茶室のように感じられる展示で、作品数は少なくても毎回のお道具や軸もの屏風の取り合わせが楽しいのと対照的。

三井でも、取り合わせで見せてくれるような展示をして欲しかったですが、それは贅沢というものでしょうか。これだけの名品ですからね~。どれだけでも取り合わせが考えられます。

展示室6では、茶入用の仕覆、名物裂が少しだけ。
展示室7で、これでどうだ~って感じで、三井家と関わりの深い表千家関連中心の展示がされています。ここでは、やはり長次郎作「黒楽口寄香炉」が大変印象的でした。
長次郎作の香炉とは目がパッチリ覚めるほどの驚きです。

香炉であっても長次郎は長次郎。小ぶりで締まった感じのやきものです。

最後は過去にも拝見したことのある三井北家高福ら当主愛用の茶箱が5点展示されていました。
この小さな茶箱に茶の湯の魅力が凝縮しているようで、本当に素敵です。
愛らしい茶道具の数々を持ち歩いて茶を楽しむ。風流風流。

*6月28日(日)まで開催中です。

佐藤 雅晴 「ピンクのサイ」 Gallery Jin Projects

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Gallery Jin Projectsで開催中の佐藤 雅晴「ピンクのサイ」展に行って来ました。

佐藤さんの作品は、今年の春に川崎市の岡本太郎記念美術館で「第12回岡本太郎現代芸術賞展」でアニメーション作品「アパター11」を初めて拝見し感銘を受けました。日本の続く「101TOKYO Contemporary Art Fair」のGallery Jin Projectsで映像ではなく、平面作品を発見。

今回の個展では、101で見た平面作品を含む新作10点が展示されています。
彼の平面作品は実写からトレースされ、切り取られた現実世界をデジタルで記号化し実写とはまた違う雰囲気を持つ情景を作品化。写真でもなく絵画でもない不思議なデジタルアートです。

路上に捨てられたカツラ、監視カメラにとまる蝶など現実的なようで非現実感を醸し出す。
≪Coffee≫ 2009年 (上図)
≪Clearman≫ 2009年
この2点が一番佐藤さんらしくて良かったです。

でも、やはり平面作品より最初に見たアニメーション作品の新作をぜひ見たい。
次回の個展でアニメを期待したいと思います。

アニメーションと言えば、表参道のルイ・ヴィトンの前を通りがかったら、ウィンドウディスプレイが村上隆キャラでデコレートされ、とても賑やかだったので覗いてみました。
中には巨大パンダのぬいぐるみ、もちろん村上隆デザイン作品がどっかと1階中央に鎮座しています。このパンダキャラについつい誘われるように奥へ進んで行くと、アニメーション作品が流れているではないですか。
このアニメ『SUPERFLAT FIRST LOVE』も村上隆プロデュースだそうですが、大変よくできています。
思わず最初から最後まで2回通しで見てしまいました。
村上作品は苦手でしたが、このアニメは別格。パンダと中学生?高校生の少女が時空を旅するファンタジーでキャラがとっても可愛いのです。
携帯で配信されていますので、ご興味おありの方は一度ご覧になってみてください。詳細は以下です。
http://www.kaikaikiki.co.jp/news/list/superflat_first_love1/
 
<関連記事>
第12回岡本太郎現代芸術賞展」 岡本太郎記念美術館

*Gallery Jin
2009 年5月9日(土)~6月6日(土)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
休廊日:月・火曜日 

「水墨画の輝き-雪舟・等伯から鉄斎まで」 出光美術館

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出光美術館で開催中の「水墨画の輝き-雪舟・等伯から鉄斎まで」に行って来ました。

室町時代の水墨画から始まり、日本の水墨画に影響を与えた南宋の牧谿や玉澗らの作品を紹介しつつ、桃山、江戸、大正に至る日本水墨画の名品を紹介する内容となっています。

展覧会の構成は次の通り。
第一章 水墨山水画の幕開け
第二章 阿弥派の作画と東山御物
第三章 初期狩野派と長谷川等伯
第四章 新しい個性の開花 - 近世から近代へ

同時期に開催されていた静嘉堂文庫美術館の水墨画展では中国水墨画が出展数の約半分を占めてていましたが、出光では第二章で牧谿2枚、玉澗1枚と少ないかったのが一番大きな違い。

それでも、大いに満足できたのはこの方のおかげ。
長谷川等伯!
≪竹虎図屏風≫≪竹鶴図屏風≫の2作品に出会えたこと。これは嬉しかった。
何しろ虎がかわいい。≪竹鶴図屏風≫の方は、どことなく国宝≪松林図屏風≫を思い出させる風情がある。あの奥行感がたまりません。

もちろん出光美術館たるもの等伯の2作品にとどまるはずがない。
作品リストにお気に入りマークを付けた作品は全41作品中19点、ってほぼ半分ではないですか。
19点のうち、更にお気に入りにつける☆印作品は等伯2点の他に3点。

・≪破墨山水図≫ 画・雪舟 賛・彦龍周興
雪舟に弱すぎる、私。何気ない筆さばき、いかにも簡単に描いたように見えるのだけれど、しっかり山水図になっている。最初見た時は「ふ~ん」という感じだったが、1周した後、最初に戻って再度見に行った。日本水墨画の原点はここにあるのか。

・≪四季花鳥図屏風≫ 能阿弥 1469年 重文
能阿弥と言えば、昨年の徳川美術館「室町将軍家の至宝を探る」展で見た作品を思い出す。ちょうどこの作品は展示替えで前期展示のみだったため、見逃した。今回観ることができて感動。
能阿弥作の現存唯一の大画面作品として貴重。蓮の花や鳥たちが上品に描かれている。

・≪籠煙惹滋図≫ 浦上玉堂 江戸時代
浦上玉堂は見れば見るほど好きになる、私の中では不思議な画家。文人画と言えば与謝蕪村、池大雅がまず浮かぶが、浦上玉堂はもっと脚光を浴びても良いのにと思う。本作はたちこめる靄がまさに煙っている様が見事。

最後の方に仙の≪狗子画賛≫や鉄斎の≪高士弾琴図≫とひねり技を繰り出すところはさすが。

江戸期の水墨画が多かったので、個人的にはもう少し室町時代の水墨画を見たかったなぁ。
たった、これだけの記事を書くのに相当手こずってしまった。見に行ってから時間が経過し過ぎたのが原因かしら。

*5月31日まで開催中。

「現代の水墨画2009 水墨表現の現在地点」 練馬区立美術館 

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練馬区立美術館で開催中の「現代の水墨画2009 水墨表現の現在地点」を見て来た。

この展覧会は富山県水墨美術館で平成12年に開催された「現代の水墨画Ⅰ」の第3弾となるもの。2回目までは水墨美術館の単独開催だったが、今回から練馬区立美術館との共催となり、東京でこの現代の水墨表現を探る展覧会を見ることができるようになった。

結論から申し上げると、この展覧会とても素晴らしい内容で感心と感動の両方が味わえる。
我慢に我慢を重ねていた図録(1300円)を迷わず購入したことからも、私自身の感動の深さが改めて思い出される。

展覧会の趣旨は冒頭に記載した通り、水墨による様々な表現の可能性を追求している現代の作家の中から、特に優れた業績を残し、今日さらに目ざましい活動を展開している11名の作家を選抜し、各作家の近作、新作約30点を紹介するものです。探究心と実験的精神に満ちた作品を通して、水墨の新たな可能性と現代における水墨画の意義を探ります。
~展覧会チラシより抜粋。

出品作家は以下11名の方々。
伊藤 彬、中野嘉之、箱崎睦昌、正木康子、八木幾朗、呉 一騏、尾長良範、浅見貴子、
マツダジュンイチ、三瀬夏之介、田中みぎわ

11名の方々の水墨画を拝見して、画材は墨だけという至極シンプルなものなのに、これだけ多様な表現ができうるのかという感動が強くわき起こった。
元々、中国絵画や日本古美術の水墨画が好きで、では現代の水墨画ってどんなものなの?という気持ちから見に行ったのだが、いいなぁと思う作品がいくつもあった。

個人的に特に気に入った作家さんと作品は次の通り。
・八木幾朗 ≪Le Raisin≫ 2008年
2階の企画展会場入口右手すぐにある大作。支持体が通常ある四角ではないことがまず気になる。
描かれているのは葡萄の木と枝、そして鈴なりの果実。一瞬相国寺にある若冲の「葡萄図」を思い出した。
こちらは、もう少し柔らかな線で描かれている。カーブを描いた支持体もこの葡萄の作品にはマッチしているように感じた。この形をとることで葡萄の枝の広がりを増す効果を生じている。
じっと見ていると葡萄にふわりと包まれているような気持ちよさがある。

1階の常設展示コーナーでは「コレクション特集展示 現代水墨への誘い」が開催されており、こちらでは八木さんの更なる超大作≪海のはじまり≫1997年が展示されている。こちらは≪Le Raisin≫とは違った技法だけれど、どことなく柔らかな印象は共通している。この作品もとても好き。

・正木康子 ≪たまゆら≫ 2006年
蓮を描いた作品は数あれど、これほどまでに不穏な印象を受ける作品はかつてなかった。
黒と白だけでこんなにあやしげな雰囲気が出せるのだという驚きがある。一見すると、描かれているのが蓮の花だとは分からないほど。
キャプションにある作者アンケートによれば「非日常を表現したかった」とのこと。
不安、不気味さを伝える作品として記憶に残った。

・田中みぎわ
≪優しい雨≫ 2007年
≪大地がゆっくりと呼吸している≫ 2007年
≪さんざめく野≫ 2007年

出品作家中、もっとも若い1974年生まれ。一番欲しいと思ったのはこの方の作品である。
3点とも良いのだけれど、≪大地がゆっくりと呼吸している≫が一番欲しい。≪優しい雨≫は一番大きめの作品で、他の2点とはタッチが若干違って、にじみやぼかしといった技法が特徴。
好きな理由は何だろう。
技法的には基本(古典)に忠実で奇をてらう所はないように感じるが、空気感やにおいのようなものは一番強く五感に訴えられたからではないか。

根津にあるギャラリーginで過去に個展をされているようなので、今後も要チェック。

・マツダジュンイチ ≪風形≫ 2006年
これも新しい試みを感じる。描かれているのは何だろう?竹?
何かは分からないけれど、全体を通して見ると風を表現しているのだと分かる。面白いと思う。

・三瀬夏之介≪ハヨピラ≫1~3 2008年
お馴染み三瀬さんの作品。佐藤美術館の個展ではあくの強さを感じたけれど、こうして他の作家さんの作品と一緒に並べて拝見すると、あくの強さがむしろ強い個性となって好印象。
展示作品は過去に見た記憶がない。個展にもなかった筈。

なお、三瀬さんのアーティスト・トークが5月30日(土)午後2時より開催されるのでファンの方は是非。

・浅見貴子 ≪梅に楓図≫ 2009年
浅見さんの作品も画法が特徴的なので、すぐにそれと分かる。
濃墨を使用して、水墨による大きな点描画とでもいうのだろうか。≪梅に楓図≫は少し離れて見ると、確かにタイトル通りだと分かる。新しさを感じる。

こちらも三瀬さん同様、5月31日(日)の展覧会最終日に同じく午後2時からアーティスト・トークあり。
会期終了間際でのアーティスト・トークって珍しい。


また、今回の出品作家には選ばれていなかったが、1階常設にあった菅原健彦の作品も見ごたえがある。「菅原健彦展」が本年11月15日~12月27日に同館で開催されるようなので、必ず足を運びたいと思う。

4月、5月は静嘉堂文庫美術館、出光美術館など水墨画作品の傑作を多くみることができたが、現代の水墨作品も素晴らしい。ぜひ、足をお運びください。お薦めいたします。

*5月31日(日)まで開催中。

秋山さやか「あるくゆく 日暮里-ヒグレ-谷中」 HIGURE 17-15 cas

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谷中ぎんざから程近いHIGURE 17-15 casで開催中の秋山さやか「あるくゆく 日暮里-ヒグレ-谷中」に行って来ました。

HIGURE 17-15 casはその存在をこの展覧会で初めて知りました。
雑誌「美術手帖」6月号にはさみこみの「ART NAVI」で本展開催を知り、早速お邪魔した次第。
このスタジオ?は日曜もオープン、12時~20時までやっているので嬉しい限り。

秋山さやかさんを知ったのは2007年の東京現代美術館開催MOTマニュアルでの展示。
<関連記事>
「MOTマニュアル2007 等身大の約束」展
ドイツ留学から帰国したばかり。大きな布?に描かれた都市地図にステッチやリボンなどが縫い付けられている。更に周囲にあった留学滞在記スケッチも良かった。

そんな秋山さんの個展開催と知りすわ駆け付けた。
今回の展覧会は普段と一味違う。

HIGURE17-15casのある日暮里の街で生活し、公開制作を行っています。
レジデンス中、作家が街や人とのコミュニケーションを通じて、積み重ねた思いが、この場所でしか生まれ得ない作品となります。
6月7日の完成まで作家は毎日HIGURE17-15casに足を運び、
徐々に作品が進行していきます。
 
HIGURE17-15casのHPより。

1階はがらんとしていて空っぽ。右手にチラシや芳名録が置いてあるテーブルがあるだけ。
奥に進むと白い布がふんわりと垂れ下がっている。
「2階にも展示があります。」の案内が。
1階から2階へ続く階段は白い布で覆われている。
よく見ると下の方に色とりどりのステッチが。

2階へ上がったら小柄な女性がおひとり、黙々と布団並にでかい谷中近辺の地図にリボン状のものをチクチク縫い付けていらっしゃった。
まさか秋山さんご本人では?

展覧会の趣旨をよく理解せずに向かったので、まさかご本人が制作されているとは露知らず。
後で6/7まで制作過程も公開する展覧会だと知ったのだった。
普段の展覧会では制作過程を公開することはないけれど、制作過程を観たい!という要望が強かったそうで、今回の企画に至ったとか。貴重な機会です。

運良くお客は私だけ。
秋山さんご本人から、とっくりと今回の作品や現在の生活などについて様々なお話を伺うことができた。ラッキー☆☆☆

MOTでの展示同様、地図上のステッチは毎日秋山さんがたどった道。多くステッチが入っている所ほど何度も歩いている所。ボタンなどが所どころにあるが、それは建物の目印。
向かって中心から左のやや上方に黄色のラクダが縫い付けられていた。
「このラクダは?」と伺ったら、
「ラクダはこのスタジオを表してます。建物の屋上にラクダがいて、この建物の目印になってるんです。」とのこと。
屋上にラクダ?来る時には全く気付かなかった。帰りに確かめたけれど、暗くてそれがラクダなのかは判別できず。次回に持ち越す。

今はウィークリーマンションを寝床に、毎日このスタジオまで徒歩で通われているそうなので、黄色のラクダと寝床との往復路に必然的にステッチが沢山入っている。
なるほど。そうやって、よく見て行くと地図上で秋山さんがどこを行動半径にして動かれているかがよく分かる。

今日は上野の森美術館で開催中の「ネオテニージャパン高橋コレクション展」のアーティスト・トークにご出演されたとのことで、スタジオから上野の道のりをリボンで目印制作中。

リボンも同じものなどまずない。エルメスの包装用リボンだったり多種多様、材料は制作現場で現地調達。手芸屋さんは欠かせない。

秋山さんは油彩画を専攻されていたそうなのだが、当時自身の表現したいものが油彩ではなかなか実現せず、ある日自身が歩いた箇所を点で置いて行くドローイング制作を思いつく。これが、思っていたものリアリティーある作品として出来上がった。
これが、今の秋山さんの作品の第一歩となった訳だが、ご自身は手芸などされたことはなく最初の頃は針で指を刺しまくったとか、今では右手でも左手でも縫い上げることができるようになったとか、制作苦労話がいろいろと。

階段を覆っている白い布にあるステッチは朝と帰宅時に2時間かけて左と右で縫い分けて日課とされているのだそう。
ご本人から聞かなかったら、まさかそんなことだとは気付かないのではないか。

「よくよく見ると朝来る時と帰りでは全然違うの~。」と詳細な解説をお聞きしました。
例えば、金曜の夜は夕食に頼んだパスタの出前で第1希望のシラスとオクラのパスタが売り切れで結局第4希望の明太子スパになった。
その出前のメニューを細長く切って、もちろん紙!なのに、糸で縫い込んである。
更にそのそばにあった小さな丸い染みみたいなもの、これは野良ネコが布にじゃれついて「かぷっ」と咬みついた跡なんだそう。

う~ん深い。まさに生活の痕跡そのもの。

制作は5/20(水)から始まったばかり、私が訪問したのは24日日曜の夜。
6/7(日)まであと2週間。
必ず再訪して変化を見届けねば!

ワークショップ:5月31日(日) 14:00~
アーティストトーク&パーティ:6月7日(日) 16:00~
も開催されます。

これは、絶対面白い。必見です。
上野の森美術館「ネオテニー・ジャパン高橋コレクション展」にも秋山さんの作品が出展されています。併せて行けば2倍楽しい。

*秋山さやか "あるくゆく 日暮里ーヒグレー谷中"
日時:2009年5月20日(水) 〜 6月28日(日) 12:00〜20:00 *月曜休廊
注意:公開制作は6/7(日)で終了です。
会場:HIGURE17-15cas(〒116-0013 東京都荒川区西日暮里3-17-15)

「視界の魔術 だまし絵」展 名古屋市美術館

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まもなく渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで開催予定の「だまし絵」展を名古屋市美術館で見て来ました。
特別展HPはこちら(作品画像や作品リストがご覧いただけます。)

我が母曰く、「オランダで見たゴッホより面白かった!」とのことで最高評価を得たこの展覧会。
そこまで言うならと気になって、やっぱり名古屋で先に見ることにしたのです。
行きつけの名古屋にある『まねき寿司』ご主人によれば、開幕当初から物凄い人気でチケット買うのに40分待ちだったとか。

私が行ったのは金曜だったのでチケットは待ちなしで購入できましたが、会場はやはり大勢お客様が入ってました。
拝見してみれば、この人気ぶりも分かるなぁとだってとっても面白いし、見ごたえあるし、素晴らしい内容です。花丸マークの展覧会でした。

展覧会の構成は
第1章 イメージ詐術(トリック)の古典
第2章 トロンプルイユの伝統
第3章 アメリカン・トロンプルイユ
第4章 日本のだまし絵
第5章 20世紀の巨匠-マグリット・ダリ・エッシャー
第6章 多様なイリュージョニズム -現代美術におけるイメージの策謀

だまし絵と言われる錯視芸術を古典から現代まで洋の東西を問わずたどる盛沢山な内容。特に大英博物館、メトロポリタン、マルモッタン、プラハ国立美術館など海外から集めた作品が多く、よくぞこりだけ借りだしたと拍手したくなります。
これを見れば、誰でも皆驚き楽しめること間違いなし!

第4章の日本のだまし絵は会期中展示替えが何点もあり、GW期間中(4/28~5/10)まで長澤芦雪の「幽霊・髑髏子犬・白蔵主図」藤田美術館蔵が展示されていたようで、この3幅対は名古屋市美だけの限定展示だっただけに、逃したのは痛かった。

名古屋市美では会場の都合もあってか作品リストや章だて順の展示順になっていなかったので、多少見づらい点はありましたが、作品リストにチェックマークを付けた作品多数。
西洋のだまし絵、特に古典的な作品は普段目にする機会がないので衝撃的でした。以下特に印象に残った作品。

日本初公開!かの有名なアルチンボルドの≪ウェルトゥムヌス≫ スコークロステル城は、やはり凄かった。
「ダブル・イメージ、ひとつの画像の中に、別の画像に見えるよう潜ませたものの姿があなたには見えるか?」と挑まれているかのよう。しかも、この作品想像していたのより大きく、背景が黒で顔になっている野菜や果物は非常にカラフルなので見栄えします。

63もの野菜・果物・花で人間の顔を形づくるなど、何を思ったのでしょうか?場内に顔を構成しているそれらのものの名前入りで図解解説がありますが、よくこれだけ入れられたと感心します。

同じくダブルイメージの作品でもう1点。
・アルチンボルドの流派 ≪水の寓意≫ ベルギー王立美術館
水、火、大気、大地の4元素のうちの水を表現した作品。魚類で顔を形作っている。

図録には記載されていたのかもしれませんが、展覧会を通じてなぜだまし絵を描くに至ったかは場内にある解説には記載されていなかったように思い、それが残念。もう少し突っ込んだ解説が欲しかったです。

・パウルス・ロイ作 ≪ルドルフ2世・マクシミリアン2世、フェルディナント1世の三重肖像画≫ プラハ城 1603年
右から見るとマクシミリアン、フェルディナント2人の肖像、左から見るとルドルフ2世1人だけ。
どうなってるの?
見る方も驚きますが、描いた方もそこまで計算して描く訳ですから、う~んどうやって描いたのと疑問が渦巻く。

・ドメニコ・ピオラ ≪ルーベンスの十字架昇架の場面のあるアナモルフォーズ≫
アナモルフォーズ=歪像画で、ゆがみ絵の類。円筒を中央に置いて、そこに映った像を見るときちんとした絵になる。
この絵も、普通に見たら抽象画かと思うような訳の分からない円になっているが、そこに円筒を置いて見るとあら、不思議。ルーベンスの十字架昇架の一場面になるのだった。
だったら、最初からちゃんと見えるように描けば良いのに、敢えてゆがませる意味はどこにあるのか?
う~ん、もっと知りたくなってきた。

・コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツ ≪食器棚≫ フレズノ市博物館 1663年
トロンプルイユとはフランス語で「目だまし」の意だそうだが、トロンプルイユの名手ヘイスブレヒツの作品が多く展示されていた。
彼の作品は画中画、作品の中にはがれかけたキャンバスがあったり、本物そっくりに静物画を描く。
中でも一番リアルだなと感じたのがこの作品。

・ロラン・ダボ ≪フランス・スペイン最終和平条約のトロンプルイユ≫ 1801年頃 マルモッタン美術館
普通なら見過ごしてしまいそうな作品だが、割れたガラスがナポレオン没落を暗示しているとなると、思わずじっと見てしまう。

額からはみ出して絵を描いている系統の作品もある。
・聖血の画家(工房)作 ≪ルクレティアの自害≫ 16世紀 プラハ国立美術館
工房で多数こういった作品を描いていたのか?自身の胸を短剣でつく姿がリアル。


日本の古典的だまし絵に目を向ける。
こちらはお馴染み国芳に勝る作家はいない。やはり彼の作品はだますだけでなく、そこに特有のユーモア精神があるから好き。
・鈴木其一 ≪正月飾図≫ 個人蔵
描き表装の見本のような逸品。其一はこんな描表装の作品が割とある。

・柴田是真 ≪滝登鯉図≫ 野村美術館
こちらも描表装。構図が変わっている。

・呉春、松村景文 ≪柳下幽霊図≫ エツコ&ジョープレイスコレクション
異母兄弟の合作。この幽霊図はすごかった。絹のにじみで霊界と現実界との境界を描きだす。

後半は近代現代。
中でもマグリットの作品で未見なものがいくつかあって、嬉しい。
・≪望遠鏡≫1963年 メニル・コレクション
・≪落日≫ 1964年 メニル・コレクション
デルヴォーも、あまり彼らしくない作品が1点。
・≪窓≫ 1936年 イクセル美術館

最終章の現代美術では1点強烈な作品があった。
・パトリック・ヒューズ ≪水の都≫ 2008年 作家蔵
鑑賞者が動くと絵も動いて見える。近づいて見ると実は・・・。
詳細は会場でぜひ確かめてみてください。体験しないと面白さは分かりません。

パトリック・ヒューズの名は知らなかったけれど、こんな面白い作品ばかり描いているのだろうか?

本城直季のsmall planetシリーズで和んで会場を出た。現代アートはヒューズを除いて、ほとんど過去に見たことのある作家のものだったが、「だまし絵」の観点でまとめて見ると楽しい。

*6月7日まで開催中。
下記に巡回します。
●Bunkamura ザ・ミュージアム
2009年6月13日(土)~8月16日(日)
●兵庫県立美術館
2009年8月26日(水)~11月3日(火・祝)

「染谷亜里可 新作展 モンスター」 ケンジタキギャラリー名古屋

豚インフルエンザ騒ぎで来週に予定していた兵庫大阪ツアーを中止し、急遽ヤボ用もあり名古屋に帰って、軽く美術館とギャラリーを見る。
毎回必ずチェックするケンジタキギャラリー名古屋では「染谷亜里可 新作展」が開催されていた。
染谷さんの名前は知っているし、多分作品も一度は拝見したことがあると思う。
しかし、私にとってはそれ程印象に残るアーティストさんではなかった。

ところがである。

今回、入口入ってすぐの右側にかかっていた青色ベースの作品にはっとする。
「あれ?染谷さんって、こういう作品だったっけ?」的な驚きが襲う。
ベルベットの生地を脱色して、独特の世界を作り上げる。
キャンバス?に張られたベルベットの生地は、不思議な質感をたたえている。
夏にはちょっと不向き?
ベルベット自体のイメージが私には冬服の生地なのである。
someya

にもかかわらず、それらの濃赤、濃紫のベルベット作品に取り囲まれると、気持ちがぐっと落ち着いてくる。浮ついた自分の足が少しだけ地に着く感じ。

小さな作品で油彩?かドローイングもあったけれど、やはりベルベット作品が真骨頂。

染谷さんの作品はまとめて見ると良さが引き立つ。

*6月20日まで開催中。
ケンジタキギャラリー・名古屋
名古屋市中区栄3-20-25 TEL 052-264-7747 FAX 052-264-7744
開廊時間 11:00-13:00, 14:00-18:00 (日・月・祝 休廊)

「書の名品をたずねて」 徳川美術館&蓬左文庫

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徳川美術館春季特別展「書の名品をたずねて」に行って来ました。
主要作品、展覧会の概要は美術館HPをご覧ください。

元々、全く興味もご縁もなかった「書」というものに開眼し始めたのは、何年か前の東博開催「書の至宝展」、更に本格的に好きになってきたきっかけを作ったのが平成19年秋の徳川美術館「王朝美の精華・石山切-かなと料紙の美-」であった。
ここで目もくらむような雅な料紙装飾やかな文字の魅せられて、徐々に「書」への関心が育ち始めた。
近頃では、台東区の書道博物館や東博アジア館がお気に入りで、中国の書にも目が向いている。

平成19年の再来のような今回の「書の名品をたずねて」展。いったいどんな書の名品が出るのか、緊張しつつ拝見した。
何と総展示作品数は併設の蓬左文庫と併せて約190点。うっひょ~と叫びたくなった。
しかも、ほとんど全て徳川美術館蔵、それ以外は個人蔵で一体どれだけ持ってるの?、しかも新発見、初公開の作品も10点ほど出ているではないですか。
天平の写経から、平安、鎌倉、室町時代の名筆、桃山・江戸期の武将の手紙、宋・元時代、室町時代の禅僧の墨蹟と幅広く見せてくれます。

この日に備えて、書の知識をもう少し付けようと書店に足を運び見つけた本が『マンガ 「日本」書の歴史』。日本の書の歴史や名品をマンガと文章で紹介。
難解な書の歴史もマンガなら取っ付きやすい上に、本物の作品の画像も併せて掲載されているのも良いです。画像がカラーでないのが残念ですが、入門編には持ってこいの1冊です。
この本はシリーズで中国の書の歴史もあり、そちらも関心あれば是非。

さて、さすがに190点もあれば印象に残った書も数々あります。そう言えば、これだけあっても良寛の書は1点もなかった。

一番良かったのは、池大雅筆「唐詩屏風」。
池大雅は7歳にして神童と呼ばれていたそうだが、絵も上手いが書も個性的で素晴らしい。
今回の屏風は、まさに天衣無縫と言う言葉がぴったり。冒頭の「天馬」の文字に魅了されました。
欲しい。

元々、藤原行成の書風が優美で好きだったのだけれど、今回伏見天皇の書も好みだと知る。
更に、前日の「マンガ日本の書の歴史」学習の成果か、いくつも実際の書を見ていたら、藤原定家の書風「定家風」が何となくつかめて来た。明らかに定家の書は個性的。優美のではなく、角角していて、読みやすいのはこちらだろう。

最後の最後に「紫紙金字金光明最勝王経」(重文)やら「法華経 普門品」(重文)、「満願寺文殊堂勧進文」 伝尊道親王筆などが経文の名品がずらずらと。
いずれも、前日の予習で紹介、または簡単に触れられていたもので、まさか翌日本物に巡り合えるとは思わなかった。

これで、石山切や手鑑に書いてある和歌も理解できたら、最高なんだろうけれど、判読さえできないのだから和歌まで到達するなど夢の夢。
今はただ、美しさ、個性ある書を楽しむのみだけれど、それで充分楽しかった。

<関連記事>
2007年10月27日 「王朝美の精華・石山切-かなと料紙の美-」

*5月24日(日)まで開催中。

「東恩納裕一 展」 日本橋高島屋 美術画廊X

日本橋高島屋にて「片岡球子展」を鑑賞後、6階にある美術画廊Xで開催中の「東恩納裕一 展」」を見た。

東恩納裕一は、私にとって微妙な位置にあるアーティスト。
微妙というのは、「好きじゃないのだけど、ちょっと気になる⇒まぁ見ておこう」という図式なのだ。
まぁ見ておこうなんて、失礼な言い草だと思うけれどご容赦を。

そして、今回はお馴染み蛍光灯を組み合わせたシャンデリアとカラースプレーで描いた絵画、アクアチントの版画作品など多様な構成で、かなり見ごたえがある。

やっぱり見ていて欲しいと思う作品には出会わなかったが、アクアチントが良い。
お値段から考えると、スプレー絵画の方がお得感はあるけれど、お得感で買うのではなく、もし部屋に飾るならアクアチントかな。

私は蛍光灯が好きではない。
自身の部屋も最初から付いてる蛍光灯は別として、自分で買ったのは白熱球だったかハロゲンだったか。そもそも素材が好きじゃないから、作品にも共感できないんだろうなぁ。
鏡を使ったオブジェもあったけれど、これもう~ん。。。

作品ひとつひとつ、特段印象に残ったものはないが、全体として見ると量、バランス、質とそろった内容で東恩納の世界を味わえると思う。

*5月25日(月)まで開催中。

「人間国宝 鹿児島寿蔵展」 旧新橋停車場 鉄道歴史展示室  はじめての美術館30

kagoshima

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で、開催中の「人間国宝 鹿児島寿蔵展」に行って来ました。
鹿児島寿蔵さんのことを知ったのは、碧南市藤井達吉現代美術館で今年の1月に見た「人形展」でのこと。数多く展示されていた人形たちの中で、鹿児島さんの紙塑人形はとても印象に残った。

*碧南市藤井達吉現代美術館「人形展」の感想はこちら

*紙塑人形の説明は展覧会HPをご覧ください。

<プロフィール>
鹿児島寿蔵(1898-1982)は福岡市に生まれ、15歳で人形制作と短歌の道に入る。以後生涯をかけて人形と短歌の両立、想像力豊かで格調高い世界を作り出す。
人形作家としては、当初テラコッタ人形から入りましたが、その後紙塑人形の技法を自ら創始し、塑像の材料を自作、貼りつける和紙も自染めし、その芸術性の高さと独創性で1961年に人間国宝に認定される。 
歌人としては、24歳で「アララギ」同人となる、リアリズム短歌を基調に繊細で抒情的な歌を遺し、昭和の短歌界を代表する歌人だった。


今回の展覧会では紙塑人形35点をはじめ、短歌など関連資料を展示し、寿蔵の美的世界を展観するものです。

私個人としては、短歌より紙塑人形見たさに出かけ、結果としてやはり人形ばかりに目が行って短歌との響き合いまで感じるには至らなかった。
それにしても紙塑人形は素晴らしいものばかりで、嬉しくなってしまった。

お気に入りのもの。
・「オアシス」
・「麻耶夫人」
・「獅子かつぎ」
・「佐保比賣」
・「月下の童子」
・「草原の地母神」
・「東天紅」
・「地久」

どれも特徴的なのは寿蔵自ら染めたという和紙の色。
どんなに細かい着物の模様も少しずつ貼っていったのかと思うと、気が遠くなるような細かい作業。
今回は「古き時代に」「幼きものを」「異国へ」と作品をテーマ別に分けて展示していた。
子供をかたどった人形は特に愛らしい。
碧南で見た「いもうと・おとうと」や「さぬのちがみのをとめ」にも再会できた。

人形に馴染みのない人も、一度は見ていただきたい作品。
造形美、色、表情どれをとっても惹かれるものがあります。

*7月20日まで開催中です。入館無料!

旧新橋停車場「鉄道歴史展示室」
JR新橋駅 徒歩5分、、都営大江戸線汐留駅 徒歩3分
〒105-0021 東京都港区東新橋1-5-3
開館時間 11:00~18:00(入館は閉館の15分前まで)
休館日 月曜日(但し、祝日の場合は開館、翌日は休館)

「没後80年 岸田劉生 肖像画をこえて」 損保ジャパン東郷青児美術館

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損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「没後80年 岸田劉生 肖像画をこえて」に行って来ました。
劉生は私にとって近代日本洋画に関心を持てるきっかけを作ってくれた大切な画家のひとり。ちなみにもう一人は古賀春江。
なので、劉生の作品は割と見ているつもりだった。
でも、この展覧会を見たら私が見たことのある作品などまだまだ僅かだと知る。

肖像画だけでもこんなに見たことのない作品があったのか!という驚き。
これがこの展覧会の一番の感想。
特に岸田劉生本人の自画像。最初の展示室は、劉生だらけ。
豊田市美にも劉生自画像は何点かあって見ていたし、他でも見ていた筈なのに、作品リストでチェックしていったら、記憶のない自画像がどんどん増えて行く。
全体を見渡してみると、顔の向きも左だったり右だったり、真正面だったり皆それぞれ違っている。
タッチは最初期のものはゴッホ風、印象派風で、これもやがて変化して行く。

7月5日まで開催している展覧会にも関わらず、早めに訪問したのは5月31日までの期間限定展示作品「黒き帽子の自画像」(個人蔵)をぜひ見たかったから。
他にも5月31日までの展示作品として「自画像」1917年6月23日(平塚市美術館)のコンテで描いたものも良かった。
劉生の肖像画は、どれも年代だけでなく月日までしっかり残っていて、まるで絵日記、彼の生きた証に見えた。

それにしても、こんなに自画像を描いた理由というのは何だったのか。
館内の解説パネルに書いてあったようななかったような。
とどのつまり、自己への関心、自己探求といって良いのか。

次の展示室では劉生の友人・知人の肖像画が集められている。
ここでの作品は見たことのある作品が多かった。
・「真田久吉氏像」1913年4月5日 宮城県美術館
これは、何と1日で完成させた油彩。
しかし、その後デューラーや北方ルネサンス絵画の影響を受け、画風が一気に変わる。
写実?と言って良いのか、血管、陰影、首のしわまで描きだす。
肖像画の何点かは小さな花を片手に持っているポーズが多かった。あのお花は、敢えてモデルに持たせていると思うのだが、それも影響の一端?

・「高須光治君之肖像」豊橋美術博物館、「男の像」個人蔵
いずれも劉生門下に入った高須光治を描いたが、やはり何度見てもかっこいい。下絵であろうと言われる「男の像」は油彩と違って、更にワイルド。

最後は家族・親族の肖像画。
ここで、有名麗子像が登場。
私は麗子像より、妻のしげるを描いた作品。
娘の麗子を含め家族の写真も展示されていたが、写真の妻しげるは美人だった。
描かれた「画家の妻」大原美術館、豊橋美術博物館などの作品より写真の方が美人。

同じく劉生の妹「支那服着たる妹照子之像」は劉生実妹の照子を描いているが、こちらも美人。

しかし、娘の麗子は実に様々に描かれている。今回展示はなかったが日本画の麗子も2007年の劉生展覧会で見て、そちらはもっとおどろおどろしかった。
一見醜く卑しい姿を描き、そこに神秘性、静粛を表す美を見出すという劉生の思考を具現化したデロリ。これも岩佐又兵衛作品からの影響とは知らず。

劉生の言葉、著作から引用して作品解説がされていたのは良かった。
劉生が作品の解説をしてくれてるような感じを受ける。

「装飾の美」「写実の美」「想像の美」が劉生の内なる美だという。
彼の考えていたことは「劉生日記」など著作が残されている。思考の画家、岸田劉生。
日本洋画界に残した足跡はあまりに大きい。

<過去関連記事>
「画家岸田劉生の軌跡」 2007年9月

*7月5日(日)まで開催中。途中5月31日まで、6月2日から何点か展示替えがあります。

「上野伊三郎+リチコレクション展」 目黒区美術館

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目黒区美術館で開催中の「上野伊三郎+リチコレクション展」に行って来ました。
この展覧会は今年の1月6日(火)~2月8日(日)まで京都国立博物館で開催されていた内容の巡回展で、東京への巡回を楽しみにしていました。

何しろ展覧会のチラシがとても可愛いくて素敵なのです。京都展と目黒のものはほぼ同じ。美術館名や開催日や裏面の色などが違うくらい。縦長のA4二つ折ですが、横開きでなく縦開きなのも変わってます。

展覧会の概要は次の通り。*目黒区美術館HPより引用。
わが国のモダニズム建築の揺籃期、関西初の建築運動となった「日本インターナショナル建築会」を組織した上野伊三郎(1892-1972)は、ブルーノ・タウトを日本へ招聘した人物として、伊三郎と1925年に結婚して日本に渡った上野リチ(Felice "Lizzi" Ueno-Rix, 1893-1967)は、 ヨーゼフ・ホフマン率いるウィーン工房で培った創作理念をわが国へもたらした人物として、それぞれ日本の近代建築史やデザイン史に名前が刻まれつつも、ふたりの活動の全容はこれまでほとんど知られてきませんでした。本展「上野伊三郎+リチ コレクション展」では、こうした上野夫妻の知られざる足跡に光をあてます。

第1章から簡単に印象に残った作品群を振り返ってみようと思いますが、私にとってこの展覧会は上野リチに対する感動が圧倒的でした。上野伊三郎はちょっと影が薄かった。無論彼の設計者としての功績、インターナショナル建築会の設立など特筆すべき内容は多いのですが、リチ作品が愛らし過ぎるのです。

Ⅰ.上野伊三郎・リチのウィーン
リチが制作した水彩画をはじめ、1920年代のウィーン工房時代に制作されたテキスタイル・デザインの原画、そして「リックス文様」と呼ばれたプリント地の原画や、代表作のひとつでもあるドイツのザルブラ社で製作・販売された壁紙のシリーズなどのほか、復活祭で使用される珍しい砂糖菓子のデザインや装飾品の水彩原画などが紹介されています。

のっけから目は釘付け。
クリスマスオーナメントの原画は、リチの提唱する「ファンタジー」そのもの。
こんな可愛いオーナメントでもみの木を飾り付けできたら、想像するだけでワクワクします。最初から想像、いや妄想が様々に頭によぎる内容なのです。
「ウィーンのクリスマス市」(1955年)(下)は日本の絵巻物風の水彩・墨・色鉛筆を使用した作品。
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表装が日本の絵巻そのもので、とてもウィーンの方によるものとは思えない。考えてみたらこの作品は1955年作すっかり日本の生活に馴染んだ後半期のものだからか。
展示は制作順ではないので、ちょっと混乱する。

2階では、展覧会チラシにも使用されている壁紙「そらまめ」シリーズが。
「芥子」や「花園」「夏の平原」と他にも壁紙作品はありましたが、私はこの「そらまめ」が好き。
ここでまた、自身の部屋にこの「そらまめ」の緑ヴァージョン(他に色違い3種あり)が張ったらどうだろうと想像が膨らむ。

他には豊田市美術館所蔵のリチデザインのテキスタイルが何パターンも出ていた。過去豊田市美では、これらを一度も見たことはない。いろんなもの持ってるなぁ豊田市美。
プリント服地では「キャンディー」下絵が魚モチーフでカラフルで、この生地で洋服?パジャマなら似合いそう。

Ⅱ.上野伊三郎と「日本インターナショナル建築会」
次は伊三郎にスポットを当てた展示。
ここでは伊三郎設計の住宅設計図などあり。
日本インターナショナル建築会発行の雑誌『インターナショナル建築』第2巻8号1930年掲載の「スターバー」挿絵に足が止まる。
このスターバーは第4章で詳しく紹介されていたので、ここでは省略。

Ⅲ.上野伊三郎・リチの京都
京都時代の伊三郎とリチの足跡をたどる内容。ここでもリチ大活躍!
もう、欲しい物がわんさか出ていた。ご贔屓にさせていただいているブログ「遊行七恵の日々是遊行」さんが京近美展のご感想を既にアップされていますが、そちらでも紹介されている上野リチデザイン飾箱。
これがミュージアムショップに出ていたら、値段によるけど買ってたかも。七宝の飾箱(下)ですが、色・デザインとも本当に素敵。
私のお気に入りは「草叢の虫」「馬のサーカス」「結婚式」「中国-紙の龍」「中国芝居」。
どれか一つと言われたら最後の「中国芝居」(下)を選びます。
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同じく七宝の飾りプレートも良いですが、その後更に欲しい作品が。

マッチ箱カバー。
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もうこれは全部欲しいです。集めたい。
「マッチ棒」「紳士」「淑女Ⅰ」「淑女Ⅱ」1950年頃制作されたものですが、古さは感じさせない、むしろそのちょっとレトロ感が良い。

ブレスレットやクリップどれもこれもリチらしいファンタジー感、色彩感が溢れています。
どうして、こんな素敵なデザイナーがこれまで脚光を浴びなかったのか不思議。
群馬工芸所時代の二又フォーク、三又フォークはチーズフォンデュに似合いそう。竹製品も手がけていたのですね。

Ⅳ.建築から工芸へ
最終章では、伊三郎とリチの2人が協力して作り上げた建築作品を振り返ります。
ここで、Ⅱ章でご紹介したスターバー(下)再登場。
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内装デザインは伊三郎とリチで手がけ、リチの壁面装飾「果物」「秋の実り」、伊三郎設計の家具類がぴたりとはまっています。
こんな京都のバーでお酒を・・・またも妄想が膨らむ。

リチは都ホテル京都(現在のウェスティン都ホテル京都)貴賓室壁用クロスや日生劇場レストラン(アクトレス)壁画も手掛けました。
アクトレス壁画はその様子を5面に亘って再現、さらに映像で全体を紹介しています。
日生劇場と言えば、つい先日こちらも愛読させていただいているブログ「中年とオブジェ~魅惑のモノを求めて~」の下記記事で美しい画像と共にご紹介されていたばかり。
村野藤吾の日生劇場
日生劇場アルバム
何と言うタイミングの良さ。
日生劇場は昨年村野藤吾展で、写真パネルで拝見しましたが、今回はレストランの壁画を見て一度実際の建物を拝見したい!と強く強く思いました。やっぱり建物はその場に行ってみないと何とも。
日生劇場見学を早速問い合わせてみると心に決める。

目黒区美術館が今回ほど広く感じたことはありませんでした。
空間を有効に活かして、恐らく京都展に決してひけをとらない中身の濃い展示をしています。
本展は、建築・デザインに関心がある方は必見。
そうでない方でも楽しめます。
やっぱり図録(2000円)買っておくべきだったか。迷ってやめたんだけど、悩ましい。
煩悩に惑わされる展覧会でした。

*5月31日まで開催中。ぐるっとパス使えます。

「資生堂・サントリーの商品デザイン展」 東京藝術大学美術館 陳列館

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東京藝術大学美術館 陳列館で開催中の「資生堂・サントリーの商品デザイン展」に行って来ました。

冒頭で申し上げておきますが、この展覧会入場無料です。
そして、東京藝術大学美術館の他の展覧会とは違って2009年5月13日(水)~6月1日(月)の期間は月曜日も休みなし!会期中無休で、19:00(入館時間は18:30まで)終了ですから、お仕事の後でも大丈夫。
私も行ってから、月曜もやっていてしかも19時までと知り愕然。何しろ、日曜(17日)に行ったら混んでて、自分のペースで見ることができませんでした。

さて、この展覧会のコンセプトは次の通り(チラシより引用)。
手を伸ばすとそこにある生活商品の持つ顔つきや印象はそれ自体がひとつの価値となって私たちの日常生活や消費ともっともダイレクトに関わっています。それらをメーカー自らの手で連綿と制御し続けて来た資生堂、サントリーの営みは商品と日常生活のリレーションを語るうえで見逃せない特別な存在を放っています。この二大メーカーの商品をデザインの側から光を当て俯瞰できることは、メーカーがいかにしなやかに商品の価値をデザインを通じ蘇生してきたかを知ることであり、同時に、日本が進む道を知る手がかりを得ることでもあります。

何やら小難しいことが書いてありますが、要は資生堂とサントリーの商品ひとつひとつをデザイン面にスポットを当てて紹介し、日常生活とデザインとの密接な結び付き、時代反映を見つめてみようという試み。

1階では、資生堂とサントリーの商品が年代順(古い順)にガラスケースに入れられ、作品としてかなり詳細な解説付きで案内されています。
解説がわりと細かいので、皆さんこれを読んでいるため列が進みません。しかも1点1点は化粧品や飲料なので小さいのも、混雑の原因。

両企業の商品はどれもこれも懐かしいものばかりです。
特に資生堂の化粧品は母が鏡台に置いていたり、化粧ポーチに入れていたのを記憶していて、いろんなことを思い出しました。

でもこの展覧会は思い出を語るものではありません。
ひとつひとつの商品コンセプトに従って、パッケージデザインはどこに工夫を凝らしたか、デザインコンセプトは何かということに焦点を当てています。

インパクトがあったのは、サントリーのアメリカ輸出向け日本茶ボトル。ペットボトルでなく、ガラス瓶を使用。高級感があります。
さらに、「Tea」ではなく「Cha」であることを強調するため、ボトル中央あたりに「Cha」のロゴをしっかり入れる。
展覧会を通じ「ボトル」や「容器」「パッケージデザイン」は果たして商品の購入動機になるかということを考えていました。私の場合は、複数の似たような商品があった場合、パッケージデザインは購入動機になりえます。
が、器欲しさに購入する程強い動機にはなりません。このあたりは人それぞれでしょうね。

最近の資生堂ものでは「マジョリカ・マジョルカ」シリーズの容器はお洒落で、女心をくすぐるなぁと思いました。
アナ・スイに似ているのですが、もう少しカジュアルな感じで、容器に比べお値段はお手頃。チープコスメに見えない所が良いです。

資生堂商品は、掛川市にある資生堂企業資料館で見たことのあるものばかりでしたが、何度見ても楽しい。今回は解説がそれぞれあるので、単に懐かしいだけでなく、デザインコンセプトなどいろいろ考えさせられます。

2階は、テーマ別に各企業の商品を展示。
ここでは、サントリーの特注品や様々なラベルを集めた展示が面白かったです。
ハワイアンカップやらゴルフトーナメントの記念ボトルは、どれも相当練りに練っていて、単なるお酒の容器という概念を超え、もはやインテリア。

ところで、サントリーの天然水(ミネラルウォーター)は3種類もあるのをご存知でしょうか。私は今回初めて知りました。南アルプスしか見たことも買ったこともないのですが、他に「奥大山」「阿蘇」があります。スーパーで見たことないと思ったら、「奥大山」は近畿・中国・四国地方、「阿蘇」は九州が販売地域でした。
詳細はサントリー天然水HPをご覧ください。
今度関西方面に行ったら要チェック。

デザインを標榜する展覧会ゆえ、展示デザインやチラシデザイン(上図)もいつもの雰囲気とは違います。特に1階の床照明は青色LEDだと思われますが、これまでの列館とは思えないモダンな感じになっていました。
図録は千円。

*6月1日(月)まで開催中です。

「動物画の奇才・薮内正幸の世界展」 武蔵野市立吉祥寺美術館

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武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の「動物画の奇才・薮内正幸の世界展」に行って来ました。
この展覧会始まったのは4/4。
定期購読している『展覧会ガイド』で「広辞苑のの挿絵を担当した画家」として紹介されており、大変気になっていました。
そうこうするうち時は流れGWが過ぎずるずると。mixyのトピでも皆さん高評価の意見ばかり。
それでも行こうか迷っていたら、ジム・ランビー展でもご紹介したこちらの2つのブログで絶賛の記事がアップされているではありませんか。
今日の献立ev.
弐代目・青い日記帳

完全に背中押されました。それにしても、ジム・ランビーと薮内さんの動物絵画って、対局にあるような気がしますが、お二人とも守備範囲がお広い!
ということで体調悪くても、二日酔いによる頭痛でも向いました、吉祥寺。

結果、はまりました。完全に。
松屋のミハエル・ゾーヴァ展でも大丸東京のムーミン展でも、ミュージアムショップでは何も買わず我慢の子。しかし、そんな私も財布のひもがついに緩んだ。
だって、裏ヤブ作品POST CARDどうしても欲しかったんです。可愛くてユーモラスで、ムサ美?キチ美?オリジナルグッズです。
ミュージアムショップの店頭でこのポストカードを紙製のカラーアルバムに貼っていて、私も真似っこすることに。美篶堂という御茶ノ水にあるお店で販売している特製アルバムだそうです。帰宅後、美篶堂HPを見つけました。
album


本当はサントリーの愛鳥キャンペーンポスターとか売ってたら買ってたと思う。
愛鳥キャンペーンポスターの中で「これも自然なのか」というコピーと共に、ライチョウをくわえたキツネの絵があって、キツネのまなざしに♡♡♡

薮内正幸さんは、それはもう動物、鳥類、恐竜と生きとし生けるもの全てを愛していたに違いありません。
既に高校時代から国立科学博物館の動物学者今泉吉典博士と文通していたというから凄い。
博士の指導のもと、動物の骨格標本やはく製をスケッチし、基礎を習得。その後「世界哺乳類図説」のイラストを描き始めたのが動物画家としてのスタートとなりました。

お名前はこの展覧会によって初めて知ったのですが、みな知らず知らずのうちに薮内作品を見かけているのではないでしょうか。
そんな作品たちが沢山展示されています。
構成は、次の四部構成です。さほど広くない展示室にぎっしり約100点もの作品が!
Ⅰ挿絵
Ⅱ絵本
Ⅲ鳥・動物・自然
Ⅳさまざまな仕事
今回は気付いたら1時間いました。置いてあった絵本も全て読破してきましたが、さすがに「冒険者たち」は挿絵だけチェックし文章までは読み通せず。

私はこの日東京藝術大学美術館陳列館で「資生堂・サントリーの商品デザイン展」を見て来た所でしたが、奇しくもこの資生堂(花椿広告原画)とサントリー(愛鳥キャンペーンと四季の野鳥カレンダー)が薮内さんの作品を使用した広告が本展に展示されていて、びっくり。
う~ん、広告界の雄である2企業から仕事の依頼を受けるのだから、その才能と作品の素晴らしさは申し上げるまでもありませんね。

この方は絵が上手いだけではないのです。
動物たちへの愛情を強く強く感じます。薮内さんご自身が動物たちを描くことで癒されていたようにも思います。
『くちばし』福音館書店
『しっぽのはたらき』福音館書店
とかは特に好きな絵本。

サントリー愛鳥キャンペーン大型ポスター原画、これは縦長の1メートル超?ありそうな高さの作品でしたが、「タンチョウ」やら「トキ」はカッコいい~。垂涎ものでした。
「オオタカ」や「シロハヤブサ」の原画も良かったなぁ。。。

感動はまだまだ続く。
日本切手自然保護シリーズの「アホウドリ」切手はほのぼのとした雰囲気だし、旧国鉄の特急ポスター原画は鉄子も鳥類オタクも満足させる内容。この特急ポスター欲しいっ!再版してくれないものか。

最後に冒頭でご紹介した裏ヤブ作品として、出版社に作品をおさめる袋の後ろに毎回描かれていたイラストが展示されていました。
urayabu

関西ご出身の薮内さんらしいダジャレと愛らしいイラストで笑いを誘います。

見終わった後、ほんわかしてくる展覧会。
絵本マニアでも鳥類マニアでなくても楽しめること請け合います。
山梨県の小淵沢方面に薮内正幸美術館があるそうなので、こちらにも行ってみるつもり。

この他常設の浜口陽三と荻原英雄の版画作品も訪れる度に楽しみにしています。こちらもお見逃しなく。

さて、吉祥寺美術館のある伊勢丹吉祥寺が、来年3月をもって閉店するというニュースが先日流れたばかり。美術館の方に「この美術館はどうなるのですか?」とお尋ねしたら、「そのまま存続しますよ。」とのこと。とりあえず美術館は継続されるそうで、ほっとしました。

*5月24日まで開催中です。

入谷葉子展 「お山の家」 neutron tokyo

neutron tokyoメインギャラリー(1階)と2階で開催されているのは、入谷葉子展 「お山の家」。
3階の櫻井智子は水墨画を手法としていたが、入谷は色鉛筆を画材とした平面絵画とコラージュ作品が数点展示されている。
作品画像、作家プロフィール等はこちら

展覧会タイトルは「お山の家」なのであるが、入谷特有の色の選択と使い方で、お山の家っぽい感じは受けなかった。
むしろ、空想上の世界、非現実的な感じ。

個人的には家やそれに関するモチーフを描いた作品よりも、植物「ツバキ」や「ツツジ」などを描いた小品が良かった。
色鉛筆で描いたとは思えない重厚な印象を受ける。
色鉛筆と言うと、どうしても薄い軽いといったイメージがあるが、その先入観を裏切られるのが心地よい。

一番好きだったのは五重塔を描いた作品。
正面右寄りに五重塔を描いて、ちょっと構図も工夫されている。

今回のneutron tokyoは櫻井智子の個展といずれも満足感があった。京都のneutronにも機会を見てぜひ、一度行ってみたい。

*5月31日(日)まで開催中。日曜日も開廊しています。

櫻井智子展 「わらべの目」 neutron tokyo

南青山のneutron tokyoで5/13(水)から始まった櫻井智子展 「わらべの目」を見て来た。
作品と展覧会の紹介はギャラリーHPをご覧ください。

3階のミニギャラリーを使用しての展示(メインの1階2階の展示は別途記事予定)だが、これは楽しめた。
櫻井の作品は、水墨画による動物絵画である。
しかし、モチーフとしている動物の選択がちょっと変わっている。
一番多かったのは蛙。
実に様々なポーズをしていた。歌舞伎の見得を切ってる風のや、体操の大開脚ポーズを後ろからとらえていたりとか、ちょっとユーモラスでかわいい。

問題は蛙以外である。
一番驚いたのはアリクイ。
アリクイを描いた作品はこれまで目にしたことがない。
そう言えば吉祥寺伊勢丹にある美術館で「動物画の奇才・薮内正幸の世界展」を開催しているが、こちらではアリクイとかあるのかしらん?この展覧会にも行かねば。

あと、怖いのではワニと黒豹。これは怖かった。

出目金は真正面からの構図が大胆だし、オラウータンはようこそポーズをしていて、動物たちは私がイメージしているのと違う状態で描かれているので、最初それが何の動物なのかが分からない。
櫻井智子というフィルターを通した動物たちがそこにいる。

作者は動物を尊敬しているのだとギャラリーの方から伺った。
そして、一番美しいと思った状態を描いているのだと。

私が一番欲しいと思ったのは「ハリセンボン」。
やっぱり売約済みだったけど、これは可愛かった。
目の動きが特徴で、ポイントになる箇所だけ金彩を使用している。

neutron tokyoは、割とお手頃なお値段でアートを販売している。
ギャラリーでアートを買ってみたいなという方や自宅で作品を身近に感じてみたいなどと思っておられる方があれば、手を出しやすい価格。しかも、価格の割に作品の出来は良い。

2度目の訪問となった今回、今後も要チェックのギャラリーだと感じた。

*5月31日まで開催中。最終日は18時で終了となるため、ご注意ください。

誕生日プレゼント

昨日、5月15日無事に42回目の誕生日を迎えた。

昨夜は大変お世話になった前上司の東京勤務歓迎会の宴が催され、わずか1杯のビールとコップ半分の焼酎水割り飲んだだけなのに、今朝目覚めたら頭が割れそうに痛かった。
お酒は好きだし美味しいと思うのに、年を経るにつれ益々体質的に受け付けなくなってきているのが悲しい。

ブログに誕生日について書こうと思ったのは、思いがけず一緒に仕事をしている別部署の先輩と同じ職場の後輩から誕生日プレゼントをいただいたから!
誕生日プレゼントなんて何年ぶりだろう?
10年ぶり、いやもっと?
しかも、全く想定外だったので本当に驚いた。

うれしかったなぁ。。。

観音様のような美しい先輩からはタカラトミーの「のほほん族」。
首がゆらゆらしている癒し系おもちゃ(ピンク)。
ちびまるこちゃんのような愛らしい後輩からは、ライオンをかたどった底がモップになったスリッパ。
「このスリッパで掃除に励んでください」と言われる。
私が出社前に部屋の掃除をしている話を覚えていたらしい。

今年の誕生日、きっと一生忘れないと思う。それほど、嬉しかった。
そんな風に人さまに喜んでいただけるようなご恩返しができるだろうか。

「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ 恵みの居場所をつくる」 パナソニック電工汐留ミュージアム

pana

「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ 恵みの居場所をつくる」展を汐留ミュージアムで見て来ました。

ウィリアム・メレル・ヴォーリズの名は山の上ホテルの設計者として、以前から知っていました。東京へ着任した際、記念に宿泊したのがこの山の上ホテル。
ヴォーリズの設計、かつ文豪に愛されたホテルとして著名であったため、予約しました。

そんなこんなでヴォーリズの存在は知っていたもののまさか設計者としては全く素人だったとは!
この展覧会を見て初めて知って驚きました。
建築家を夢見て、建築を大学で専攻かと思いきや、夢見た後、MITの入学許可を得ていたにも関わらず一般教養を身につけるためコロラド大学に進み、その後キリスト教の海外伝道へと志を変化させます。
その結果、伝動先として日本の滋賀県に英語教師として派遣される。
そこから日本との縁が始まります。

しかし、生徒への宗教的影響力があまりに強いため、英語教師を解雇されヴォーリズの運命は変化。日本での布教活動を続ける中、支援者から京都YWCA会館建設工事で建築設計の依頼を受けます。技術的支援者と自らの建築設計を独学することで、彼は建築設計監督事務所を開設。
それが建築への足がかりになり、次々に彼の設計事務所が携わる建築物が日本国内に作られる始めました。

展覧会では、ヴォーリズの携わった建築の数々が写真パネルや設計図面、模型、映像などで紹介されています。
いつも感じるのですが、汐留ミュージアムの解説はとても分かりやすい。
建築素人でも読みやすいので、知らず知らず引きこまれて行きます。

さらに今回一番良かったのは「九尺二間」と称された軽井沢の旧ヴォーリズ山荘(浮田山荘)のウォークインの原寸大模型で紹介。
これは面白かった。
リアルにヴォーリズ建築のひとつを感じることができます。
「九尺二間」はヴォーリズ夫妻が暮らすのに必要な最小限の設備と空間を実現させたもの。
案外、これで十分暮らせそうだなと感じました。
狭くてもキッチンは使いやすそうだし、室内の動線もよく考えられています。

もうひとつ、ヴォーリズの建築で特徴的な幅広かつ段差のやや小さい階段の原寸モデルも、自分で登って降りて大感できます。

本展パンフレットがまたよくできていて、全国、琵琶湖畔、近江八幡市、東京、軽井沢のヴォーリズ建築が地図つきで紹介されていて、とても分かりやすい。
A4二つ折のカラーパンフはとても捨てられないので、永久保存決定。

今年の10/3~11/3まで「ヴォーリズ展 in 近江八幡」も開催されます。
久々に近江八幡で建築めぐりも楽しそうです。

*6/21まで開催中。

「ジム ランビー:アンノウン プレジャーズ」 原美術館

HARA

原美術館で「ジム ランビー:アンノウン プレジャーズ」を最終日に見て来ました。
実は、GW中の6日(水)に夜間開館を狙って、原美術館に行ったのですが門前までたどりついたら、真っ暗で門は固く閉ざされていました。
水曜日は夜間開館のはずなのになぜ閉まってるの?
祝日は水曜日でも夜間開館はされないと、門横の看板に書いてあった。ふぅ。
真っ暗な夜道をきびすを返し、てくてく戻りました。

「もういいや。」とくじけそうになりましたが、やっぱり最終日出直すことに。
でも、徒歩15分はきついなぁと思って、都バスのバス停を横目で見つつ歩いていたら、小さなワゴンバスが止まっているのが目に入りました。
バスにはhara museumとあります。

もしや、これが噂の「BloomBUS!ブルンバッ!」では?
「BloomBUS!ブルンバッ!」は、原美術館と品川駅を結ぶ無料シャトルバス。マルチメディア企業のブルームバーグとのコラボでスタートしたプロジェクト。

予感的中。
11時45分 品川駅発でした。発車時間まであと6分。早速乗り込みました。
やはり、直行バスは楽チン。約3分で到着。
ちなみに、中は全然普通でイラストも何もありません。ポケットに時刻表とバスの案内チラシが入っていただけです。話題?の田尾創樹の車体イラストもあまり目立たず。
私ちゃんと見なかったのかな。

本題。
ジムランビー展ですが、入って10分で出ました。
10分で入館料千円。空しかった。

あ、ジムランビーがどうこう語るつもりはないのです。
しかし、あの内容だとじっくり味わうとかっていうのとも違うような。
私は1階の展示は割と好きでした。

床が全面白黒ビニールテープ張り。これは森美の展覧会作品でも同じ。
ランビー得意の手法。

特に鏡のかけらで作られたバッグはキラキラしていて、実用品としては危険ですが、こういうバッグはありなんじゃないかと思った。
そう言えば、杉本博司展でも壁が割れてたなと思い出しつつ。
今は全く見かけなくなったLPジャケットの背の部分だけ切り取ってコンクリートに張り付けたり。

しかし、2階や階段横の展示は何だったのだろう?
インパクトは薄かったです。

帰宅後、日頃愛読させていただいている次の2つブログ様で本展の記事があったのを思い出し、読み返してみました。
今日の献立ev.」様
弐代目・青い日記帳」様

どうやら、音楽に関係する内容だったようです。
だから、LPジャケットだったのか。
解説もないから、普通に行って見ただけでは分からないんじゃないか。
まぁ、分かったとしてもそれを面白いと思うかどうかはまた別の話ですが。

と、いろいろ考えたのも足を運んで見て来たからこそ。
自己満足ですね。

原美術館の照明って、改修工事で新しくなったんですね。星座みたいで、照明も美術品みたいになっていて、ビックリ。

*本展は既に終了しています。

「畠山記念館名品展 -季節の書画と茶道具-」 畠山記念館

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本年度からぐるっとパスに畠山記念館の入館無料券がセットされた。
最近、畠山記念館がお気に入りの美術館のひとつになっている私としてはとても嬉しい。

今回の45周年記念の春季展に遅ればせながら行って来たが、やはり良い。
畠山記念館では濃茶、薄茶、懐石と茶の湯のお道具が一通りまるで、自身が茶会席に招かれているかのごとく作品を味わえるところが好き。

ちょっとおままごとを思い出す。
今日のお道具は、このお茶碗に、棗はこれで茶杓とお釜は・・・などと数ある中から選んでお客様をおもてなしする。
私などは茶席より、「季節やお客様に合わせてお道具を選ぶ」ことがまず一番楽しいのではないかと思う。畠山翁のように名品を沢山お持ちなら尚のこと。
この記念館の学芸員さんはさぞかし楽しいだろうなぁなどと羨ましくなってしまう。

こちらとしては選ばれたお道具や掛軸などをひたすら拝見するのみ。
畠山記念館では、実際に掛軸を目の前にしてお抹茶(400円)をいただくこともできる、疑似茶席体験もなかなか楽しいので、ぜひ。

今回は又、ウキウキするようなお道具の数々が並んでいた。
特に注目は尾形乾山の焼き物。
・「色絵福寿文手鉢」
・「色絵藤透鉢」
・「色絵絵替り土器皿」
この3点に完全にKOされた。殊に最後の土器皿5客を見た時、参りましたと思わず頭を垂れそうになる。それほどまでに愛らしいお皿たちで、とりわけ「菊」「八重葎」などはもう垂涎もの。

同じく琳派の作家では兄の光琳作の茶杓と共筒「銘 寿」が。
光琳の茶杓と茶筒とはまた珍しい。他に「八橋図・秋草図団扇」も良かった。

茶道具では
・「砂張建水」 明時代
・「青磁夜学蓋置」 明時代
・「藤扇面散蒔絵棗」 江戸時代17世紀
・「芦屋梅花文筒釜」 室町時代
最後の梅の釜はとても愛らしい。蓋のつまみは梅のつぼみ?がかたどられていた。
藤は季節のお花で、この絵棗は江戸期のものとは思えないほどモダン。扇面には青海波も描かれ、下方には市松模様。こういうのに弱い。

懐石の器も凄かった。
・「絵唐津四方向付」
・「鉄四方銚子」
・「粉引-一文字盃」
・「瀬戸椿手丸形酒呑」
こんなお銚子と盃向付に盛られた酒の肴があったら、どんどんお酒が進みそう。
畠山記念館の器たちを見ていると、無性に美味しいものが食べたくなる。器を見ているだけで空想が弾む。
粉引はどちらかというと苦手なのに、これは薄手ではねるような一文字がアクセントになっている。

絵画も素晴らしかった。
・「春景山水図」 伝 岳翁蔵丘筆 横川景三賛 室町時代 重要文化財 注:5/14までの展示
この1枚が圧倒的。室町時代の淡彩水墨画の名品。
もう惚れ惚れする。青墨、木の描き方、近景、遠景と見ていて飽きない。
光琳や抱一の絵画も出ていたが、こればかりに見入る。

・「四季花木図屏風」 渡辺始興筆 江戸時代
ド派手。「春景山水図」の対局にあるようなあでやかさ。特に秋の左隻は胡粉てんこもりを見る。
5/16からは展示替えで雪村の「竹林七賢図屏風」が出る。また足を運ばねば!

*6月21日まで開催中。絵画作品、書などは展示替えがありますのでご注意ください。

「金氏徹平 溶け出す都市 空白の森」 横浜美術館

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横浜美術館で開催中の「金氏徹平 溶け出す都市 空白の森」展へ行って来ました。
若手現代美術家による初の個展ということで注目されています。金氏徹平さんは1978年の京都生まれで、彫刻科専攻。

私自身は金氏徹平さんのお名前も作品も知らず、本当にこの展覧会で初めて接した次第です。
訪問時は、たまたま運良く金氏さんご本人が会場で制作を行っておられ、そのお姿をじ~っと見守っていました。
まるで、積木で工作してるみたい。
みたいというのは正確ではないですね。
積木で工作そのものです。
様々な形の木製部材を木工用ボンドか瞬間接着剤の2種類とで次々に積み上げ、作品を形作っていらっしゃいました。
作品制作されていたのは、エスカレーターを上がってすぐの広い空間。
コーヒーのシミシリーズが展示されています。

今回の出展数は作品リストによれば124を超えていました。
あれだけの広い展示室を膨大な作品で埋め尽くしたのは圧巻です。
その創作エネルギーは凄い!
積木に夢中になっていた少年時代のままなのかも。
好きでないと、こんなに作れない。

最初の展示室では本展のために制作された最新作≪White Discharge≫シリーズによって、室内は冬景色になっていました。
既存の製品を再構築して、新たな形を作り出すのが金氏の手法。
本当に様々なものが白い樹脂でくっつけられ、雪が降り注いだのか、それとも白い液体が噴出したのか。
dischargeの意味は、この場合「放電」「放出」「流出」で良いのか。
「空間にいろんなものが流れこんでは出て行くのが面白い」「形の面白さの追求」作家自身の言葉です。

初めて手がけたというアニメーション映像≪Tower≫。
こちらは、効果音もセットされている。しばらく眺めていたが、どこが最初で終わりなのかが分からない。30分程度の映像がループで流れている。
こちらは、もう少しひねって欲しいかな。

最後の展示室では過去の作品が勢ぞろい。
最近見たムーミン人形が使用されていたのが印象的。

「見たことあるようでいて、何だか分からないものをつくりたい」という作家の意図通りの内容でした。


この後、コレクション展を拝見しましたが瀧口修三とアントニ・タピエスによる詩画集≪物質のまなざし≫や日本画コーナーでは下村観山の「春日野」「山村の朝」、鏑木清方の風景画「暮雲低迷」、御舟の「麦」など名作がぞろぞろ。更に小林清親や川瀬巴水、伊東深水の木版画を久々に拝見できたし今回の日本画コーナーはとても良かった。企画展だけでなくこちらもお見逃しなく。

*5月27日まで開催中。

「春の取り合せと赤膚焼展」後期 野村美術館 はじめての美術館29

京都で行ってない美術館はまだいくつかある。
先月、そのうち2つを初訪問した。ひとつは泉屋博古館、そしてもうひとつが野村美術館。
泉屋博古館の展覧会は会期最終日前日に見に行ったので、今回は現在開催中の野村美術館平成21年春季展「春の取り合せと赤膚焼展」をご紹介。

野村美術館はその名の通り、野村證券・野村銀行など金融財閥を一代にして築き上げた2代目野村徳七(のむらとくしち)〈1878-1945〉のコレクションをもとに、昭和59(1984)年に京都東山山麓南禅寺畔に開館。

さて私がこれまでなかなか訪れることが出来なかった理由は2つある。
まず、この野村美術館は春季(3月中旬から6月中旬)と秋季(9月中旬から12月中旬)の通算約半年間しか開館されていない。
真夏や真冬に行っても開いてないのである。私は空いてるからオフシーズンの京都が好きで、出かけていたためタイミングが合わなかった。
2つ目の理由は、「茶の湯」と「能楽」中心のコレクションだったということ。「茶の湯」ですら、関心を持ち始めてまだ数年、更に能楽に至ってはいまだ感心の及ばぬ分野であるため、どうしても訪問順位は後回しになってしまっていた。

初訪問の今回、永観堂(過去記事はこちら)を後にして、徒歩数分。すぐに目指す野村美術館に到着。門構えからして、京都らしい。
美術館というより、名家を訪問するといった趣。玄関を入ると、やはり靴を脱いでの鑑賞で、ますます豪華なお宅に訪問しているような錯覚を覚える。
最初の印象通り、受付も美術館というより旅館のロビーのような感じ。

一階展示室が「春の取り合せ展」、地階展示室が「赤膚焼名品展」の会場となっている。
両展示室とも、さほど広くはないけれど、ゆっくりとした空気が流れている。
春の取り合せ展では、掛物を中央に、左右に茶道具の優品が展示されていた。
・「栂尾切」 源 順筆
・「絵手鑑」 狩野一門
・「時鳥詠草」 藤原定家筆
・「鳳凰蒔絵香合」 狩野山楽下絵
・「尾長鳥蒔絵棗」
onaga

・「堅手鉢ノ子手茶碗 銘白妙」
sirotae

・「是害草紙巻子本」
などが良かった。
最後に挙げた是害草紙巻子本」は、天狗がお風呂に入っている絵巻、とてもユーモラスな内容と絵で、この作品がマイベスト。

これだけ良いと思える作品が見つかっただけでも、自分の嗜好の変化を感じた。以前の私であれば10分とかからず出て来たかもしれないのに、30分以上はいたと思う。

地階展示室の赤膚焼はこれだけ大規模な展示をされることはないとのことだった。貴重な機会ではあったが、私の嗜好は残念ながらこちらには付いていけず、置いて行かれた。
こればかりは、自身の関心と嗜好なのでいたしかたない。

それにしても、泉屋博古館とは徒歩10分もかからない距離とは思わなかった。
両館併せて、春秋にはかかさず訪れたい美術館である。

ところで、関西の美術館巡りに最適な1冊「完全保存版 京阪神アートブック」が阪神エルマガジン社から出版された。
artbook

内容(目次)はこちら
知ってる美術館の小ネタや建築見所だけでなく関西方面のギャラリー情報も掲載。2009年度の展覧会スケジュール一覧まで付いて780円はお買い得。
こういうのが欲しかったのよね~と早速購入し、次回の関西遠征の計画を練る。

*6月7日(日)まで開催中。
野村美術館
京都市左京区南禅寺下河原町61
開館時間: 10時~16時半
休館日
・夏期・冬期(上記開館時期以外の期間)
・開館期間中の月曜日(月曜日が祝日の場合は開館、翌火曜日休館。)

「鎌倉の至宝-国宝・重要文化財」 鎌倉国宝館

鎌倉国宝館で「鎌倉の至宝-国宝・重要文化財」を見て来ました。
この展覧会は、年に一度開催されています。

鎌倉国宝館には何度も訪れているのに、一時間弱いてしまうのは、鎌倉期の素晴らしい仏像群が展示されているから。常設で一番気に入っているのが、入口最初にある「地蔵菩薩立像」と五島美術館所蔵の「愛染明王像」の2体。
特に、地蔵菩薩の方はとても良いお顔をしていらっしゃる。睥睨されているようにも感じるが、その眼差しは決して我々を見下してはいないのです。
愛染明王像はその迫力にいつも圧倒されてしまいます。よくよく眺めていると明王の髪の毛が怒りのため浮かび上がっているのが怖い。

さて、今回の特別展の目玉は修理後初公開となる光触寺(こうそくじ)ご本尊「阿弥陀三尊像」。
画像はこちら

この「阿弥陀三尊像」のうち中央の阿弥陀如来は「頬焼阿弥陀」の通称で親しまれているそうです。
その由来を描いた同寺所蔵の「頬焼阿弥陀縁起絵巻」(光触寺蔵・重文)や江戸時代の模本など関連資料も併せて展示されていました。

まず、「阿弥陀三尊像」。
思ったほど大きさはありませんが、ぱっと見た時オーラがあるなぁとそれ程に崇高な感じを受けたのです。中央の阿弥陀如来像をはさんで脇侍として観音菩薩像と勢至菩薩像が控えめに寄り添う。
この阿弥陀如来は運慶、観音は快慶、勢至は湛慶作と伝えられています。

阿弥陀如来が頬焼阿弥陀と言われる所以は、次のようなもの。

町の局が、鎌倉に来た雲慶(運慶と言われる所以)に阿弥陀仏を彫るよう依頼した。
女は出来上がった阿弥陀仏を熱心に拝んでいた。しかし、ある日、女の家の物がなくなったことから、女に仕えていた法師(万歳法師)が盗んだとして、女は法師の頬に焼印を押すよう命じ、家人の源次郎は焼印を押す役目をおおせつかった。
その後、女の夢の中へ阿弥陀仏が現れ、「なぜ我が面に火印をさすか」と尋ねます。驚いた局が阿弥陀様を拝すると、仏の顔の左に焼印があるのを見つけました。まさしく、法師の身代わりになられたと恐れおののきます。
仏師を呼び寄せ修理しますが、跡を消すために金箔を張ろうと試みますが、これがいくらやっても張りつかない。隠そうと思ったことが間違いと気づきそのまま世間に知らせました。それからおまいりする人が絶えなかったとのことです。

この縁起を描いたのが前述の絵巻上下2巻。
場面替えはありますが、両巻とも一度に拝見できるのは嬉しかったです。素朴な絵が鎌倉時代の絵巻らしい。
江戸時代の模本の方は、さすがに色や線、人物描写も細かくお話の内容はこちらの方が理解しやすいです。

縁起通り阿弥陀如来の左頬に焼印跡があるとのことで、一生懸命探しましたが判然とせず。
見ようによっては両方に焼印のような跡があるように見えます。

私は阿弥陀如来より、両脇の2体の菩薩像が気に入りました。腰を少しひねる姿が美しい。
本当に慶派仏師の手による作かは分かりませんが、造形的に優れていることは確かです。

その他印象に残った作品です。過去に見たことのある作品が多かったけれど、新たな発見や近寄って見られたりと楽しい。

・「跋陀羅尊者像」宗淵筆(円覚寺・重文」
これは凄い。見たことあるのか記憶がないが、見てたら覚えてるような気がするくらいインパクトがある。とにかく尊者の顔貌が強烈なのだ。
この他仏画では「五百羅漢図」伝張思恭筆(円覚寺蔵・重文)も良かった。

・「西来庵修造勧進状」(浄智寺・重文)
書はどうしても見返しの装飾に目が行ってしまう。伸びやかな筆跡と上下に配された金銀の装飾によってとても見栄えがする。

・雛菊螺鈿蒔絵硯箱(鶴岡八幡宮・国宝)
こちらは以前見たと思うのだけれど、今回の注目は水滴。こんなに素晴らしい細工がされた工芸だったか?この水滴は蒔絵ではなく金工品。銅製品なのだろうか?金属の種類が分からないけれど表面の細かい細工は単眼鏡でないと分からないくらい。

*5月31日まで開催中。

2009年5月9日鑑賞記録

目覚めたら、天気予報通りの好天だったので思い切って葉山まで出かけることにした。
JR東日本のホリデーパス(2300円)を買ってまずは、逗子を目指し、鎌倉、恵比寿、千葉へ回って帰宅。
ボリュームの少ない展覧会が多かったのだけれど、さすがに帰宅してどっと疲れが出た。
手短に鑑賞記録でまとめます。

・「生誕100年 荘司福展」 神奈川県立近代美術館葉山館
チラシの作品を見た時から気になっていた。知らない作家さんだったので余計見てみたいという想いがあって今回の葉山行きとなる。
男性作家さんかと思いきや、女性でした。明治43年生まれで2002年に92歳で亡くなられるまで日本画の創作活動を行っていた。
一番印象に残った作品は≪刻≫。4つの苔むした岩を描いた作品だが、その苔に時間の経過を感じた。
描く対象が多様な作家さんだなという印象を受ける。

・「山口蓬春・絵の秘密-蓬春が語る「新日本画の世界」-」 山口蓬春記念館
葉山館から徒歩3分と近いので、併せて訪問。
私はこちらの作品の方がやはり好み。今回は牧谿の作品が出ていた。行けば何かサプライズあり。
新緑に彩られた庭が何よりの目の保養と癒しになった。

・「鎌倉の至宝-国宝・重要文化財-」 鎌倉国宝館
もうここには何度来たか分からなくなってきた。至宝というので、また出かけてしまったがさすがに、過去見たことのある作品が多かった。
と言いつつ、結局一時間弱いたということは、やはり見所は多く満足度は高かった。
よって別記事扱。特に今回の目玉は、修理後初公開となる光触寺のご本尊「阿弥陀三尊像」(重文)。

・「鏑木清方 ローマ展開催日本美術天と関西への旅」 鎌倉市鏑木清方記念美術館
大倉財閥の全面バックアップにより実現した昭和5年のローマ開催日本美術展覧会出品作品展は過去数回拝見している。
今回は鏑木清方がローマに出展した2作品が目玉。
この2作品所蔵していたのは鎌倉大谷記念美術館大谷コレクション。
≪道成寺・鷺娘≫の2作品は傑出していた。この2点は明日までの期間限定展示なので、関心ある方はぜひ。

・「聖地巡礼 野間地和嘉写真展」 東京都写真美術館
私が一番好きだったのは砂漠の写真≪家路を急ぐ少年≫カルザス アルジェリア。色のコントラストが素晴らしかった。
でも、この写真展は色のコントラストを鑑賞する内容ではなく、写されている対象に重きを置くべきなんだと思う。宗教、世界各国の文化をこの写真展で学べる。

・「大和し美し 川端康成と安田靫彦」 千葉市美術館
時間があったし夜間開館があるので、千葉を再訪。この時はまだ元気だった。
2度目でも見て良かったと思う。結局良い展覧会は何度見ても良いのだと知る。
遊行七恵さんが、私に似ていると書かれていた作品は多分これだろうと目星がついた。
自分で言うのもなんだけれど、確かに何だか似てる気もした。「箕を持つ宮人」と言うタイトルの作品ではないか。
良寛の書が気になるので、ここに一番時間をかける。特に屏風が気に入った。

新潟の良寛記念館に行ってみたいと思ったら、前回あった同館のパンフレットが見つからない。係の方にお伺いしたら、既に全部はけてしまったとのこと。
同じことを考える人は多いのだろうか。

「横山大観と木村武山」 野間記念館

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野間記念館で開催中の「横山大観と木村武山」に行って来ました。
「なぜ、横山大観の名前の方が展覧会タイトルの先にあるのか?」と言う疑問は、展覧会を見終えてから感じたこと。
何しろ、内容としては圧倒的に木村武山を中心としたもの。
私の個人的な印象としては、武山の作品の作品の方が大観のそれを凌駕していたように感じます。

木村武山は、茨城県笠間出身。最初、川端玉章に師事しました。
色彩感覚に優れ、写実的な描写力と古典に学んだ素養とを基礎とした花鳥画や歴史画を得意とし、晩年には仏画も多く手がけるようになりました。
大観創立の日本美術院には明治31年に参加しましたが、大観よりも東京美術学校で師事した下村観山との関係による所が大きかったと大観自身が語っています。

そうは言っても、再興した日本美術院にも参加した武山は、やはり大観と同じ時代に日本画を築いた重要な画家の一人であったと言えるでしょう。

日頃、美術館や展覧会でなかなかまとめて見ることのできない、大観や観山ほど知られていない木村武山の作品を一挙に堪能できる貴重な機会です。

印象に残った作品は以下。まずは木村武山から。
・「慈母観音」 
・「観音」 
いずれも観音を描いた作品。狩野芳崖の悲母観音に影響を受けたと考えられる2作品。武山の特徴である華麗な色彩、蕩けるような背景の描写が観音の優美さを引き立てている。
一方で主役の観音は精緻に描かれ、技術の粋を見せる。

・「錦魚」 
金泥と緑青との重ね合わせが絶妙な効果をあげている。この作品は構図が面白い。右側に水草が縦に長く描かれていて右上から左下へ視線が流れる。視線の先には、白い睡蓮の花が錦魚の赤白とのアクセントになっていた。

・「旭光双鶴」 
これ以上縁起の良さげな作品はあるだろうか。中央に真っ赤に燃える旭日がどんと構え、その傍らに立派な鶏が2羽。竹まで添えられていた。

・「金波」 
武山の作品としてはちょっと珍しい作風。尾形光琳の「波図屏風」を思い出した。

・「十二ヶ月図」全3種類×12枚
十二ヶ月図が全部で3シリーズもあって楽しかった。一点一点が武山の目線を感じる。特に秋草、金魚、雀などがお気に入りのよう。
「稲に虫」(10月)などは、虫が稲の反対側に描かれていて、変わった視点から描くなぁと感心した。
普通は正面から見た時、葉の上に虫が乗っているところを描くのではないか。

ここからは大観作品。
・「春雨」 
作品を見た時、雨の香を感じた気がした。それほどに、春の雨の様子が強く鑑賞者に訴えかけてくる作品。

・「夜梅」
妖気をまず感じた。夜に見る白くおぼろげに浮かんだ梅の花というのは、何と妖しい魅力にあふれているのか。画面から立ち上る気配が怖かった。

・「大正大震災大火災」
こちらは、『大正大震災大火災』という講談社から出版された本の表紙原画。文字通り、震災時に発生した火の手が、猛り狂ったように街を包んでいる。表紙だけで、迫力が伝わる。


同時開催で、先日弥生美術館で拝見した挿絵画家の樺島勝一の原画展も開催されています。
*弥生美術館での鑑賞記録はこちら
こちらでは、弥生美術館で拝見できなかった作品「太平洋魔城」などの原画もズラリと並んでいて、これまら凄い!併せて楽しめました。

それにしても、これだけ楽しめて入館料500円はお得。しかもスタンプカードがあって、2回行くと(スタンプ2つ)3回目は無料!今回は私もスタンプカード特典で無料でした。
次回の「近代日本の花鳥画~花と鳥の肖像~」も楽しみです。

*5月17日(日)まで開催中。

「新宿区歴史博物館名宝展」 新宿区歴史博物館 はじめての美術館28

開館20周年記念の所蔵資料展「新宿区歴史博物館名宝展」へ行って来ました。
本年2月に文京区ふるさと歴史館にて「蔵出し!文京ゆかりの絵画」を拝見しましたが、今度は新宿での名宝展。どんなお宝が飛び出すのか遅ればせながら馳せ参じました。

新宿区歴史博物館へは電車なら丸ノ内線四谷三丁目駅下車が一番近いのですが、私はJR四ツ谷から徒歩で約10分。四ツ谷は初めて降り立ちましたが、かの有名な四ツ谷怪談ゆかりの場所だよね~と恐る恐るあたりを見回しつつ、目的を発見。

これが失礼ながら予想外に立派な施設で驚きました。
企画展の名宝展は入場無料!ですが、常設展は300円入館料が必要ですがぐるっとパスに入館券が付いており、今回はそちらを使用しました。

さて、名宝展。

一番印象に残った作品は山雪の水墨画。
・狩野山雪 「竹雀」 野口家資料
えっ、山雪ってあの山雪?と思わずキャプションを注視。あの妙心寺展で見た「老梅図屏風」とは行きませんが、山雪は山雪。「伝」もなし。小さめの掛軸です。

・狩野一信 「羅漢図」 
・狩野常信 「松図屏風」
・伝狩野芳崖 「布袋唐子遊」
など江戸から昭和初期まで現・四谷一丁目に在住し、菓子商を営んでいた野口家の収集品にどうしても目が行ってしまいます。
野口家の二代目が、商売の傍ら野口睡雪と名乗り、絵を描き、画風を学ぶために江戸狩野派を中心とした絵画を収集したのだそう。

この野口家ゆかりの品で、すごい迷宝が・・・。なんと「人魚のミイラ」!
画像は博物館HPに掲載されていますので、関心ある方はこちらを。
気持ち悪いので、とても自分のブログにアップできません。
実態は、ネズミの頭部と鯰だったかの魚の胴体をくっつけたもの。
この「人魚のミイラ」と共に、六世代に及ぶ長寿家族の名前が書かれた古文書が一緒に収められていたことから、家族の長寿や繁栄をミイラに託したものと考えられているそうです。

他には国芳の浮世絵「三途の河老婆願びはなし」など浮世絵4点。

・「聖徳太子画像」 四谷左官組合太子講伝来 新宿区指定有形文化財
taishi

絵よりもむしろ伝来の方に興味がわきます。

・伝森高雅 画 「穴八幡流鏑馬絵巻」 江戸時代中期
なぜかこの絵巻とセットで展示されていた江戸千代紙張り込みコレクションが素晴らしかったです。

そして、一挙に時代は駆け上がり、明治・大正・昭和の新宿ゆかりの画家の作品が数点。
でも、どこかまとまりのない内容。

さらに、「新宿と文学」のコーナーでは夏目漱石のデスマスクや最近の寄贈資料として「国民精神総動員鉛筆」や「一億一心てぬぐい」など太平洋戦争中使用していた品々などが展示されています。

驚くほどバラエティに富んだ内容でここまでテーマがバラバラなのも珍しい。
なかなか愉快な博物館です。

この後、常設に回りましたが大がかりな展示が多くこちらも驚きます。新宿のかつての様が館内で感じられるのは保証します。
新宿中村屋のルパシカやカフェのマッチが拝見できて良かった。

*5月10日(日)まで開催中。
新宿区歴史博物館
住所:東京都新宿区三栄町22番地
開館時間:9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:第2・4月曜日(祝日の場合は翌日) 年末年始(12/29~1/3) 

「ムーミン展」 大丸ミュージアム東京

mumin

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン音楽祭2009の最終日、夜8時開始のバッハ・コレギウム・ジャパンの「ヨハネ受難曲」コンサートの待ち時間を利用して、大丸ミュージアム東京の「ムーミン展」へ行って来た。
話を戻すが、バッハ・コレギウム・ジャパンの「ヨハネ受難曲」は最高だった。LCJは他に2つ聞いたけれど、これ以外はかなりイマイチ。こんなことなら、ホールCのコンサートにだけ的を絞っても良かったかと振り返ってみたが、時すでに遅し。

さて、ムーミン展。
お世話になってるブログ「今日の献立ev.」KINさんのように、ムーミンへの強いこだわりがある訳ではない。
でも、私はムーミン世代なのだ(そんな世代があるのか?)。
「ねぇムーミン、こっち向いて、恥ずかしがらず~に~・・・」の歌で馴染んだムーミンアニメと共に育った。しかし、原作まで読んだかと言えば、そこはどうも記憶があやしい。
一作くらい読んだ気もするけれど、記憶がないってことは読んでないのか、印象に残らなかったか。

百貨店の展覧会には作品リストがない。
だから、ここからは記憶のみでのご紹介となることご承知おきください。
DVD付展覧会図録より今月の「芸術新潮」特集トーヴェ・ヤンソンの全ての方が、内容は充実しているように思う。ムーミンファンなら5月号「芸術新潮」(税込1500円)は買い!図版の度アップが特に気に入った(図録の方は図版が小さい)。
shincho

更に、お金をかけたくないという方にはムーミン公式HPをご覧ください。全作品、登場人物、歴史など情報満載。

展覧会の冒頭を飾るのは、ムーミントロールの立体像。
ところで、ムーミンはムーミントロールとトロールが付くのが正式名称だと知った。
「トロール」とは、元々北欧の神話などに出てくる醜い生き物のこと。
ムーミンのようにかわいい生き物ではないけれど、ムーミン作者のトーヴェ・ヤンソンはかくも愛らしいキャラクターとしてこの世に生み出した。

彼女のすごい所は、挿絵画家としてだけでなく物語の作者でもあったことだ。
通常、挿絵は画家、お話は作家と棲み分けされるのだがムーミンは違う。ヤンソンが、本作りの過程で、挿絵のサイズや向きを縦にしたり横にしたりと試行錯誤する様子を展示作品から知ることができる。展覧会出展作品画像はこちらをご覧ください。

また、当初からムーミントロールは私達が現状知っているようなふっくらした姿をしていた訳ではない。
ムーミントロールのお話を作る前から、元祖ムーミンキャラは生まれて、そこからムーミン物語が作られた。この元祖ムーミンキャラと1作目のムーミンの鼻は細くカンガルーぽい。
作品を重ねるにつれて、ムーミンがどんどん愛らしくなっていくのが、挿絵を通じてよく分かる。

アニメの時は、スナフキンとニョロニョロが気になっていて、特にニョロニョロはスキューバダイビングを始めたら、海中にチンアナゴ(garden eel)と言うニョロニョロそっくりの生物がいて驚いた。
ヤンソンは、チンアナゴからニョロニョロのヒントを得たのではなかろうか。
「ムーミンパパ海へ行く」ではムーミンが海に潜る挿絵があった。

本展ではムーミントロールシリーズの原画だけでなく、お話の中の一場面を立体模型とした作品がいくつか展示されているが、これがすごい。
ムーミンの原画は基本的に黒のインク画。
しかし、この立体模型(今回は建築家の方が作ったものが展示されている)は、カラフルに再現しているのだ。
人形たちが、とにかく可愛い。多少のサイズ感のズレなど何のその。

最終コーナーではムーミンのマンガや日本人粘土作家の谷口千代さんの作品も展示されていて、こちらも美しくムーミン世界が再現されている。

会場を出てすぐの物販コーナーが過去例を見ないほど、充実していた。
通常販売されているムーミンキャラグッズに加え、展覧会限定のTシャツやらトートバッグやら眼鏡ふきやら、ここぞとばかり財布を刺激する。
前述の谷口千代さんの作品も即売されています。

*5月18日(月)まで開催中。展覧会は次の会場に巡回します。
<巡回先>
8月5日(水)〜8月17日(月) 大丸札幌店 7階ホール
9月5日(土)〜10月25日(日) おかざき世界子ども美術博物館
12月12日(土)〜2010年1月11日(月) 長島美術館
1月16日(土)〜2月7日(日) みやざきアートセンター
2月16日(火)〜3月28日(日) 広島県立美術館

「大和し美し 川端康成と安田靫彦」 千葉市美術館

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千葉市美術館にて「大和し美し 川端康成と安田靫彦」を見て来ました。
今年の3月に名古屋の松坂屋美術館で「川端康成コレクション展」を拝見したのですが、千葉市美の「大和し美し 川端康成と安田靫彦」」は全く別の展覧会と思って良いほど、内容が濃いものでした。
*松坂屋美術館「川端康成コレクション展」の過去ログはこちら

常設展で使用する展示室もフルに使用し、全展示室でこの企画展の作品紹介がされています。
何しろ総展示作品数は、図版番号があるものだけでも238点、更に特別出品されているものが30点以上と物すごいボリュームです。

それでも、見終わった後にどこか温かいものを感じたのは、やはり川端康成と安田靫彦の交流やコレクションへの温かいまなざしが伝わってきたからではないでしょうか。

展覧会の構成は次の通り。ただし、展示順とは

第1章 文豪・川端康成の世界
ノーベル文学賞関連資料をはじめ、川端文学の装丁・挿絵などを紹介。こちらは、前述の松坂屋美で拝見したものが殆どでした。

第2章 日本画家・安田靫彦
今回の大きな見所のひとつで、名古屋展では端折られ川端康成だけに焦点を当てていて、安田作品はほとんど出ていなかった。
今回は、茨城県立近代美術館の「安田靫彦」展でちょうど展示替えのため見ることができなかった≪飛鳥の春の額田王≫に巡り合えて大満足。
館外初出品らしい≪唐傭≫愛知県立芸術大学蔵などのめったと見られない作品(この作品は安田が蒐集し気に入っていた傭に着想を得た)や最初期の≪遣唐使≫など安田作品を1コーナーではあっても十分堪能できる。

彼の描くモチーフには古美術品なども登場し、自身のコレクションを愛する様子が強く伺われた。

第3章 美との邂逅 川端康成と安田靫彦
ここでは、二人の間の美術に関する交流とコレクションの一部を展開。
ここでは安田コレクションのみ紹介する。
まず、安田靫彦が琳派の俵屋宗達、尾形光琳を好んでいたことを初めて知る。ただ、彼が集めた宗達の作品は≪枝豆図≫≪狗子図≫と線の柔らかい、優しい題材のものが特徴的。
そんなほのぼのとした作品を愛したという安田の人となりが感じられる。

第4章 良寛敬慕
個人的に、一番良かったのがこの第4章。
あくまで個人的と強調するのは、私が良寛の書に関心があり好きだから。
今回は、安田旧蔵の良寛の書の数々に魅せられました。あの一見なよなよっとした線が、実にしなやかに軽やかに踊る様が好きなのだ。私の中のイメージとしては良寛の書は柳の枝に近い。

良寛筆唯一の≪自画像≫(下図)や伝良寛作と言われる≪手毬≫まで出展されていた。この手毬とても素敵な色使いとデザインで愛らしい。
jigazou

図録掲載していないのではないかと思われる特別出品として≪一行書 一把の楊枝≫や漢詩≪清夜三更≫などこれほど良寛の書を鑑賞できる機会はなかなかないのではないかと思う。

第5章 二大コレクションとの対峙
安田と川端コレクションの特徴と対比を試みる内容。これはとても面白かった。
埴輪など同じようなものを集めていたり、テーマは同じでも集めた作品は微妙に異なる。

凄いと思ったのは安田旧蔵の≪ととや茶碗 銘玉川≫。これ、私の素人目で見ても相当の名碗のようにお見受けしました。

第6章 大和し美し
最後に再び安田作品の展示で終焉。
2人が追求した美の形跡をたどった後、安田作品がどのように鑑賞者に映るのかという主催者側の関心から設けられた展示室。
私にとって最後の展示室は、まさにエピローグ。
見事に余韻に浸らせてもらいました。

幾通りもの見せ方で、二人の美をめぐる内容。
素晴らしい構成と展示だったと思います。

大好きな千葉市美術館ですが、2009年9月初旬から2010年2月中旬まで千葉市美は空調設備工事のため休館となるそうです。展覧会は8月9日を最後にお休み。
とても寂しいので、早くリニューアルを心待ちにするばかりです。

*5月10日(日)まで開催中。お見逃しなく!
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