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「昭和12年のモダン都市へ」 大阪大学総合学術博物館 はじめての美術館36

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大阪大学総合美術博物館で開催中の「昭和12年のモダン都市へ」に行って来た。行ったというのは実際やや語弊があるかもしれない。行ったというよりも、駆け抜けたに近い。

6/20に京都へ出かけたおり、お世話になっている遊行七恵さんから本展開催を教えていただいた。
ちょうど、京都へは京都国立近代美術館での「京都学 前衛都市モダニズムの京都展」を見に行ったようなもので、阪大の方では大阪のモダンを語る展覧会をやっていて、それが面白いとおっしゃる。
時間的にとても厳しかったが、京都から阪急電車で大阪大学合美術博物館のある石橋駅へ向かった。
駅に到着したのは閉館17時の25分前。駅から徒歩で10分。博物館に到着したのは16時45分だったと思う。事前に遊行さんが博物館に電話を入れておいて下さったので、そのまま入場。
この展覧会、入館料は無料!

初めて行った美術博物館だったが、割と古い建物で企画展示室は2階にある。常設展示も同じく2階で行われていたが、さすがにこちらは時間がなく見ることが出来なかった。残念。

そして、15分で早歩きしつつ展示品を見て行く。
本展の趣旨は、昭和12年の大阪市電気局と産業部により制作された「大大阪観光」という観光映画で紹介されている大大阪の姿を回顧するもの。
映画で映し出される名所明晰、観光施設を当時のパンフレットや広告、出版物などの様々な媒体資料をもとにたどる。
また、華やかな都市大阪の裏に生まれた都市問題についても触れている。

今年に入って岡崎市美術博物館で開催された「あら、尖端的ね」や前述の「モダニズムの京都展」で同時代の風俗や出版物などは相当見ているので、中には過去に見たものもあったが、それでも大阪色が濃厚に出ている展示物もあり。
本展の詳細は本展2回目鑑賞となって私を誘導して下さった遊行七恵さんのブログをご参照ください。

展覧会構成は次の通り。図録は欲しかったけれど図版が少なく解説書、論文調の研究書に近く2520円もしたので購入せず。上記図録目次より抜粋~

Ⅰ「観光映画という迷宮‐『大大阪観光』の世界‐

Ⅱ「大大阪観光」を解読する
いざ大阪へ/大阪到着、第一歩を踏み出す前に/大阪市交通案内所/大阪市営高速鉄道/難波から新世界へ、通天閣へ/大阪市立美術館/大阪市立動物園/阿倍野橋から住吉大社へ/四天王寺/高津宮民の竈古代神話と商工業の融合大阪城天守閣/大阪府庁と日本放送協会大阪放送局/造幣局と明治天皇記念館/天神祭/美観地区・中之島/観光   艇「水都」/大阪市中央公会堂/中之島近代建築と橋梁工場地帯と煤煙問題/水上生活者/美しき逍遥道路/新聞社/新大阪ホテル/電気   普及館/電気科学館/文楽座/心斎橋筋/道頓堀/千日前/浪花おど り/フィナーレ

Ⅲ 語られぬ大阪‐近代大阪は観光都市だったのか

Ⅳ 汚い大大阪‐水面にうつるモダン都市大阪の衛生環境

Ⅴ「大大阪観光」とその音楽

私は15分で脳裏に刻まれたものだけをご紹介します。

・大丸の円柱形ペーパークラフト
・大阪名所遊覧ポスター⇒やはり通天閣はつきもの
・大阪と言えば水がまずい⇒このあたりの資料で愛知県の水は美味しいとご当地自慢をした記憶がある。
・大阪観光マンガシリーズ⇒時間があれば、もっとじっくり見たかった。
・マッチ箱デザイン⇒最後のマッチデザインに一番惹かれた。大阪らしい図柄もあったが、当時の風俗
がマッチ箱デザインにもあらわれていて興味深い。

一番拝見したかったのは、きっかけとなった「大大阪観光」という映画。さすがに15分では全くうかがうことさえできなかったのが残念。

作品リストはなかったので、完全に記憶だけで書いている。
4月27日から開催されている展覧会だが、好評なので、7/11(土)まで会期が延長となった。
ただし、日曜・祝日は休みなのでご注意ください。

私も再訪したいけれど、12日までは無理。
次回はゆっくり常設展示も併せて楽しみたい。

*7月11日まで開催中(日祝除く)
大阪大学総合学術博物館 10時半~17時
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「野村仁 変化する相-時・場・身体」 国立新美術館

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国立新美術館で開催中の「野村仁 変化する相-時・場・身体」を見て来ました。

野村仁さんの名前を意識するようになったのは、少し前の日本橋高島屋美術画廊Xでの個展記事にも書いたように、豊田市美での展覧会だったと思う。2001年に豊田市美では野村仁の企画展(個展)を開催。残念ながら私はこの展覧会を見ていないが、その関係もあって常設展その他で野村作品は何かと目にしていた。
つい最近では、東近美でのヴィデオを待ちながらでも複数の映像作品が出展されていたのだが、野村仁の制作活動は映像だったり、写真だったり、ガラスのオブジェだったり多様でちょっととらえどころがない。

野村仁は1945年兵庫県生まれの現代アーティスト。1960年代末から、写真を使った美術表現に取り組み始める。ことに初期の作品では「重力」「時間」を視覚化する作品で注目を集めた。
その後、写真だけでなく映像や音といった様々な媒体を使用し表現活動を現在に至るまで行っている。
本展は、野村仁の40年近くにおよぶ活動を振り返る東京初の大規模な回顧展です。

展覧会構成は以下6章から構成されている。展示は章の順序に市が従っているが、全11の展示室にのどこで章単位での切り替えがどこだったのか、分かりづらかった。
1章 「物質の相」
2章 「地上の相」
3章 「天上の相」
4章 「宇宙の相」
5章 「太古の相」
6章 「未来の相」

この章だてを見ているだけで、野村仁の目指してきたものが伺われる。
冒頭、「物質の相」では巨大な段ボールが展示されている。当時野村は、物質が時間と共に変化して行く様子に関心があった。ゆえに、「重力」「時間」を段ボールが倒れて行く様子、ドライアイスが溶けていく様子を撮影し表現した。

圧巻かつ美しいのは野村が1992年にオーストラリアで撮影した≪ストロマトライト≫太古より地球を酸素で満たし続けた藻類の化石。宇宙の運行と自然の動きについて、この時早くもも野村は企図していた。私が彼の作品を好きなのは、理論だけでなく美しさも一緒に付随してくる点である。
≪液体酸素-183度≫ですら、あやうい美しさを内に秘めているように感じた。時の経過により変化する液体酸素。あるものは霜がつき、あるものは沸き立つように泡立っていた。

「地上の相」
次に野村は自身が身を置く環境に注目する。彼自身の身体と外界との関わりを様々な方法で提示し記録することを試みた。

ここでは、「ヴィデオを待ちながら」で見た≪カメラを手に持ち腕を回す≫(映像)1972年が紹介されている。なるほど、ここで初めてあの映像作品の意義を理解できた。

私が気に入ったのは、豊田市美所蔵の≪Ten-Year photobook≫1972~1982の10年間で全120冊もある。1人につき1冊だけ中身を手に取って鑑賞することができる。何気ない風景を1秒間に4コマ写真で撮影しただけなのに、なぜ美しいのか。サブタイトル視覚のブラウン運動とは、水中に浮遊する微粒子が引き起こす不規則な運動を指すが、私たちの視覚もさまよい、移ろうことを想定した作品。

また「HEARING」という日常にある音を全て集め録音した壮大な記録作品も、こちらはCDで聞くことができるので、ぜひ、お試し。

「天上の相」
ここで、一挙に野村の関心は宇宙と自然に振り向けられる。≪moon score≫はフィルムに5本の線を写し込み、そこに月を撮影したものを音符に見立て、楽譜として演奏してみた。すると、不協和音でなく、自然な音楽に聞こえたのだ。
そこから野村は自然界にある秩序の存在を感じたという。

もう、私には彼の思考にまるで付いていけない。ただただ、すごいとしか言いようがない。古今東西、宇宙と自然をテーマにしたアーティストは彼以外にいるだろうか。思考のスケールの大きさが違う。
音楽にしても自然だが、この月の楽譜は視覚的にも美しい。月の動きが立派な芸術になっている。

そして、私にとって最初の衝撃とあったガラス製のオブジェも沢山鶴の写真がまた美しい。色相の変化が楽しめる。

≪午前のアナレンマ≫シリーズ。こちらも私の好きな作品。
1年間、同じ場所で定期的に太陽を撮影して得られた写真作品。空に現れた8の字は、日常に潜む通常感じることのできない現象を見事に視覚化して私たちに呈示してくれる。
≪3Dアナレンマ≫はこの太陽が描く8の字を彫刻として表現。一見するとブランクーシの作品かと見まごうような調和がある。
ブランクーシが求めていたのは、実はこの自然との調和だったのではなかろうか。

「宇宙の相」
月や太陽の次に野村が向かったのは、宇宙であった。
ここでは≪ハレー彗星の回帰≫などの天体の動きを撮影した写真やガラスの連作(宇宙の形に疑問を持ち、内部構造が見えるようガラスを使用した)が中心作品になっている。
また、≪軟着陸する隕石≫1991-97年の飛行機の翼に落下する隕石を表現したオブジェまで制作。
この3点セットはスケールが大きく圧巻である。

個人的には大理石で惑星をかたどったような彫刻≪ゆらぐ球体≫が好き。

「太古の相」
宇宙の果てしない広がりに思いをはせた結果、銀河と化石の関係に目を向ける。SFのような展開になっている。

しかし、とっかかりはどうあれ、やはり作品は美しさを失わない。
≪1000万年前の接ぎ木≫シリーズは地中深くで化石になった木を現在の楠木に接ぎ木した。
1000万年前と現在とで時間的な隔たりは驚くほど大きいが、作品としての違和感はない。


「「未来の相」
太古に目を向け、今野村は、未来に目を向けている。
未来の人類に対する提案を作品として制作。
色彩言語によるコミュニケーションを植物へと発展させた最新作≪植物を育む言語又は’反照している’を見る≫はそれぞれの植物たち照射された光線の色によりどんな変化があるのだろう。
最後の最後でケースから出してみたら、光線の色に葉の色が変わっていたら凄い。
美術館のガラスケースで植物を育てるのは苦労も多い。
毎日水やり、空気の循環を行って会期終了まで面倒を見ている。

壮大としかいいようのない野村仁の世界を十分に堪能できた。
展覧会図録はこの作りで2300円は破格のお値段。
また、入口で貰える小冊子「アートのとびら」は野村仁を知らなくても、その作品を楽しむ手助けになるガイドブック。難しいことは考えず、彼の意図したことは置いておいて、まずはその世界観を感じて欲しい。

回顧展に相応しい内容です。おススメします。

*7月27日(月)まで開催中。

「阪本 トクロウ展」 キドプレス

6月27日(土)は清澄白河のギャラリー全ての展覧会がオープニングという大変賑やかな状態だった。オープニングパーティが始まった18時頃に到着したが大盛況。
今日から少しずつ各ギャラリーの感想をご紹介します。

まず、1回目はキドプレスで始まった阪本トクロウの版画展。

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作品など、展覧会詳細はこちら(キドプレスHP)

彼の作品は筆跡を残さないアクリル画で既に人気作家の地位を気付いていると言って良い。
今回はアクリル画ではなく、初挑戦となる銅版画作品の展覧会。
普段とは違うニードルやインクが紙に押し付けられて出る微妙なニュアンスはアクリル画とは一味違う。
版画制作についての作家自身のコメントをギャラリーHPから引用。
 私の作品は版画作品に影響されて作られた作品も多く、そういったこともあり、版画の制作は必然的なものでもあったと思います。
技術的な問題もあるので、今回機会を与えられて作ることとなりました。
制約も多い技法であるので、ものの見方、作り方をシンプルに考えなくてはなりません。
そういう作り方と出来たイメージは参考にしていました。

当日来廊されていた阪本さんご本人によれば、ある種の水墨表現を試みたとのこと。
その意味で一番成功したなとご本人が思っていらっしゃるのは、≪山水≫(上図)横長の作品の方。同じ≪山水≫というタイトルで2作品あるけれど、こちらはモノトーンでぼかしが効いている。
このぼかしが墨のぼかしに似た感じを出せたとおっしゃっていた。

アクリル画でモチーフにされているぶらんこや横断歩道などの作品もあり、お値段はアクリル画に比べかなりお手頃。
やはり坂本さんの作品は、日常で見られる風景をごくシンプルに簡潔に表現されているのが魅力的。余白の美。

作品には関係ないが、坂本さんはとてもカッコイイ男性だった。いわゆるイケメン。足も長いし。
奥さまと小さなお子様もご一緒に上京されていらっしゃったが、美しい女性でした。
作品からその幸せがこぼれ出ている、そんな気もします。

*7月25日(土)まで開催中。

「動物を愛した陶芸家たち バーナード・リーチから形象土器へ」 ニューオータニ美術館

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ニューオータニ美術館で開催中の「動物を愛した陶芸家たち バーナード・リーチから形象土器へ」展へ行って来た。
本展は動物をモチーフとした陶芸作品を海外作家、日本人作家、そして各国の形象土器を通して展観するもの。
テーマとしては分かりやすく、陶芸初心者にも取っ付きやすい。

展覧会構成は次の通り。
Ⅰ 芸術と動物 -海外編
Ⅱ 芸術と動物 -日本編
Ⅲ 自然への祈りとともに

こうして、3つの方向から動物モチーフの陶芸作品を眺めると実に面白いことが分かる。他の方は分からないが、私の眼から見て、海外作家の動物陶芸作品の方が圧倒的に面白かった。
先に海外作家の作品を見てしまったから余計にそう感じたのかもしれないが、日本人作家のものは動物をモチーフにといっても絵付けされている程度でお上品過ぎて、遊び心が感じられない。
優等生的な作品と言ってしまうと分かりやすいかもしれない。

対して最後に登場した形象土器の力強いことと言ったら。
特にパプアニューギニアの棟飾りには、日本の土偶と同じような顔を発見。人類の文明は皆どこかでつながっている、そんな気がした。
煮たき用鍋も造形的に素晴らしい、何しろ鶏肉料理用鍋には、とってに鳥がくっついているし、ヘビ料理用には蛇が鍋の周囲を1周していて、使い途は一目瞭然。
ペルーのキャンドルスタンドや雄牛にも惹かれる。ことにキャンドルスタンドは欲しいと思った。これに蝋燭をともして飾ったらさぞかし楽しいことであろう。

日本作家で一番心をとらえたのは、大下勝弘のシーサーだった。これは外国作家のものに負けず、強烈な存在感を放っていた。まず、シーサーの顔、表情が良い。彼ならではのシーサーになっていた。

順序が逆になってしまったが、最初に展示されていた海外作家のもので印象的だった作品はほぼ全てと言って良い。中でも、好みだったのはキャロル・マックニコル(イギリス)の果物鉢2つ。
・鹿の池の果物鉢
・産業化以前の果物鉢
いずれも、これが果物鉢?というような形をしているのが驚き。鹿の方は、底面にふぐが一面に絵付けされている。ふぐと鹿の取り合わせって・・・。想像できない。

スーザン・ホールズ(イギリス)の動物たち、きりん、かもしか、しまうまは陶芸とは思えない出来栄え。しまうまのまつ毛が長くて愛らしい。

ケン・ファーガソン(アメリカ)の≪緑釉うさぎ大皿≫、≪うさぎのティーポット≫、彼はうさぎが好きなのか、たまたまうさぎモチーフが集まったのかは不明だが、どちらも同じうさぎもちーふではあるが、表現の仕方は全く異なる。造形的に面白いのはティーポットだが、大皿もうさぎが浮き上がってくるような迫力があった。また緑釉の濃淡が美しい。

リチャード・ノトキン(アメリカ)は、何気ないティーポットに見えて、実は自然破壊を行う愚かな人間への強烈なメッセージを秘めている作品。

ヴィクトル・、アヌエル・ファレス(ペルー)は、お国柄の表れか、≪鳥 宇宙(コスモス)の花≫と題した
鳥のオブジェだが、その尾はまるで金魚の尻尾のように広がっていて、こんな形を思いつくこと自体が凄いと感心した。

上記でご紹介した楽しい作品の数々はすべて滋賀県立陶芸の森陶芸館に所蔵されている。ここは滋賀でも非常に奥深くにあるため、なかなか簡単に行くことができない。このような面白い陶芸作品を見ることができるならば是非、一度行ってみたい。Miho museumとセットで行くのが良いだろうが車でないときつそう。

*7月5日(日)まで開催中。ぐるっとパスが使えます。ぜひ!

「Vintage Brown 市川孝典 展」 PLSMIS

フクヘン」と「徒然と(美術と本と映画好き..)」で拝見し気になったので、最終日に「Vintage Brown 市川孝典 展」に行って来ました。
会場は表参道にあるPLSMIS(初訪問)。

線香を画材に使用して作品制作をされる市川さん。
燃える線香の温度差を使用して、微妙な色調のニュアンスを付けるところがポイント。

ただ、画材が線香をたまたま選んだだけであって、他の手段を用いても面白い作品を作られたのでは?と思う作家さんだった。
今日は最終日ということもあってか、市川さんご本人もギャラリーにいらっしゃって直接お話を伺うことができた。

1つの作品を制作するのに、約1週間。使用するお線香の数はおよそ3千本!
制作期間は思ったより短い。が、その集中力たるや恐るべきものがあり、最初の3日間は飲まず食わず、ほぼ完全徹夜で制作されるのだそう。
ひとつ、間違えば作品に大きな穴があくだろうから、とてつもない集中力は必要だろう。

下書きなしに、自身の頭の中にあるイメージをそのまま紙に転写する感じなのか。

私は技法もだが、むしろ彼が取り扱うモチーフが好きだった。
一番入口近くにあったロシア貴族の上着、古いお屋敷のシャンデリア。
いずれも時の流れを感じさせるのは、焼けた感じが古ぼけた写真のようなセピア色だからかもしれない。
ロシア貴族の衣装は人の抜けがら、ちょっと位牌のような感じを受けた。

今回は洋紙を使用した作品だったが、次回作では和紙に挑戦されるそう。和紙は洋紙より強いし、また新しいニュアンスが生まれるに違いない。
新作も楽しみな作家さんだ。

*本展は既に終了していますので、ご注意ください。

「芳年 - 『風俗三十二相』と『月百姿』」 太田記念美術館

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こちらは、会期が今月26日で終了してしまった展覧会。
待ちに待った「芳年-『風俗三十二相』と『月百姿』」展である。都合、前期・後期併せて計3回見に行った。『風俗三十二相』と『月百姿』の全作品を展示するなど、この先いつあるか分からない貴重かつ稀有な展覧会。

私は血みどろと言われようと芳年ファンである。線が美しい。構図も大胆、デザインセンスがある。
風俗三十二相は過去にも千葉市美だったかで全点拝見したが、月百姿全作品展示が貴重だった。
画像は、「とらさんの美術散歩」様HPで「月百姿一覧表」がとら様コメント付きでまとめられています。

改めて、図録を振り返りつつそれぞれのシリーズでのマイベストを選んでみた。

<風俗三十二相>
「いたさう」
「あつさう」
「くらさう」
次点
「けむさう」
作品としての良さは別として気持ちが伝わってきたのは「かいたさう」。どっちにしようか迷う姿にわが身を重ねる。

<月百姿>
こっちは難関。何せ、100枚もある。私のベスト10。
「大物海上月 弁慶」
「卒塔婆の月」
「悟道の月」
「南海月」
「名月や来て見よがしのひたい際 深見自休」
「源氏夕顔巻」
「たのしみは夕顔だなのゆふ涼男はててら女はふたのして」
「雨中月 児嶋高徳」
「はかなしや波の下にも入ぬべしつきの都の人や見るとて」
「舵楼の月 平清経」

この2シリーズ以外のお楽しみとして、芳年の肉筆画、初期作品、縦大判なども併せて展示されていた。
特に肉筆画の「雪中常盤御前図」は最高。そのまま持ち帰りたいほどだった。
他に「袴垂保輔鬼童丸術競図」、「源牛若丸 熊坂長範」などの武者絵が好みだった。私は芳年作品でも武者絵が一番好み。次に美人、幽霊画が良いと思う。どうしても見たい慶応大学所蔵の幽霊画、三井記念での今年の展覧会に出てこないだろうか。

*本展は終了していますのでご注意ください。

「イ・スーキョン展」/「見附正康」 オオタファインアーツ

勝ちどきにあるオオタファインアーツでは現在韓国人アーティスト「イ・スーキョン展」と見附正康の展覧会が同時開催されている。

イ・スーキョンに興味があったため行って来た。
彼女は1963年ソウル生まれ、現在もソウルで活動中。今回が多分初めて作品に接する機会になったと思う。
今回は陶磁器によるミクストメディア1点と韓紙に辰砂(しんしゃ)で描いた平面絵画が2点の計3点が展示されている。

まず、伝統的な陶磁器工房から集めた陶磁器の破片を金つぎ技法でついで、新たな形に再生し、立体化。まばゆいばかりの蛍光灯に陶磁器破片による芋虫のような状態で作品は照らされていた。
見ようによっては、孵化する前の幼虫にも見える。
展示作品画像はこちら(ギャラリーHP)や詳細なアップ画像、展示風景が掲載されているこちらをご覧ください。

絵画に目を移す。韓紙特有の質感が、土壁のように見える。そして辰砂、これはギャラリーの方の説明によれば赤い水銀なのだそうだが、辰砂を画材として描いた赤い線は古代の壁画のようだった。
よく見ると女神のようなモチーフも見られる。

いずれも大変印象深い作品だった。
イ・スーキョンは7月12日より丸亀の猪熊弦一郎現代美術館で開催される「Double Fantasy 韓国現代美術展」に参加する。こちらも必見。

同時に作品が展示されている見附正康は1975年石川県加賀市生まれ。現在も加賀市に在住し制作している陶芸家。
伝統的な九谷の赤絵技術を習得後、彼独特の繊細な線描で描かれる文様やパターンを生み出す。
以下画廊HPより抜粋~
超絶的な技術はもちろんのこと、瓔珞(ようらく)や七宝文と呼ばれる古くから伝わる文様を部分部分で用いながら、これまでなかったような全体イメージを獲得することに成功しています。

今回は新作の大皿4点を展示されていたが、伝統技術を見事に昇華していて、こちらも見ごたえがあった。辰砂によるイ・スーキョンの絵画と見附の赤絵が絶妙な取り合わせだった。

*7月4日(土)まで開催中。
会場:オオタファインアーツ
東京都中央区勝どき2-8-19-4B
大江戸線 勝どき駅より徒歩2分

「日本の美術館名品展」 東京都美術館

MEIHIN

久々に展覧会の感想。実は、展覧会に行きすぎて全く記事が追い付かないのが現状。ギャラリー訪問記事の方が短時間で書けるため、ここ最近仕事で帰りが遅い平日はどうしてもギャラリー記事に偏りがち。
前置きはここまで。

東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」には前期・後期と各1回ずつ行っている。後期は本日行ったのだけれど、前期に出かけた時に比べて、明らかに観客が増えていた。6/30(火)~7/5(日)の会期最終週は開館時間を午後8時まで延長決定。もう1回行っておきたい方、まだ行ってない方、8時までなら仕事を早く切り上げれば間に合うかも。

本展については、既に大勢のブロガーの皆様がご紹介されているので、今更内容について語るのは憚られる。簡単に言えば、美連協25周年を記念して、加盟している公立美術館から名品の数々をお借りし一同に展示するというもの。

私は作品を見るというのももちろんだが、むしろその作品を所蔵している美術館はどこなのかということに非常に興味があった。
美術館めぐりを趣味と標榜しているからには、それなりに沢山の美術館に出かけていると思っていたが、まだまだ甘い!ということを今回の展覧会で痛感した。
作品リストでまだ一度も行ったことのない美術館は以下の通り。
郡山市立美術館2009年10月初訪、ふくやま美術館2013年12月初訪、福島県立美術館、宮崎県立美術館、新潟市立美術館2012年11月初訪、島根県立美術館2013年10月初訪、宮城県美術館2013年3月初訪、徳島県立近代美術館2009年8月初訪、香川県立ミュージアム2010年9月初訪、高知県立美術館2011年11月初訪、北海道立近代美術館、北九州市立美術館、広島県立美術館2013年2月、三重県立美術館2009年7月初訪、姫路市立美術館2010年2月現在、いわき市立美術館、札幌芸術の森美術館、鹿児島県霧島アートの森、鹿児島市立美術館、島根県立石見美術館2011年11月、千葉県立美術館、岩手県立美術館、新潟県立近代美術館2012年11月初訪・万代島美術館、浜松市美術館2012年10月初訪、芦屋市立美術博物館2009年8月初訪、岡山県立美術館2010年9月初訪、下関市立美術館、鳥取県立博物館、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館、北海道立三岸好太郎美術館熊本県立美術館2011年5月初訪、神戸市立小磯記念美術館2009年8月初訪、大分市美術館、足利市立美術館2012年12月、広島市現代美術館2010年初訪、長崎県美術館2011年初訪、高崎市美術館、天童市美術館、秋田市立千秋美術館、山口県立美術館北海道立旭川美術館高松市美術館2010年9月初訪、倉敷市立美術館2013年7月初訪、福井県立美術館2009年7月初訪、奈良県立美術館2009年7月初訪、大分県立芸術会館、川崎市市民ミュージアム、秋田県立近代美術館、豊橋市美術博物館2009年7月初訪北海道立釧路芸術館、青森県立美術館、呉市立美術館、福井市美術館2009年7月初訪。

青字の美術館は地元名古屋近辺で、行っていないことを恥ずかしいと思った。
ここに、列挙したのはもちろん理由があって、これから未訪問の美術館を少しずつ訪れることを目標に決めた。美術鑑賞に目標設定するのはどうかと思うが、これも道楽のうち。
しかし、書きながら思ったけれど、北海道は広大なだけに美術館も多い(緑字)。北と南が最難関。
一番行ってみたいのは、郡山市立美術館、福島県立美術館、いわき市美術館の福島県勢。名古屋からは遠かったけれど、東京からなら日帰り圏内なので、夏あたり行ってみようと思っている。

ようやく、ここから出展作品について。
以下各部門別感想。
1.西洋絵画、彫刻
西洋絵画は過去に見た作品が多かった。よって、印象に残った作品は未見の作品が中心である。
・≪フローラ≫ エドワード・バーン・ジョーンズ 郡山市立美術館
ジョーンズの作品は日本でめったとお目にかからない。これがあるから、郡山に行きたいと思った。

・≪婦人像≫ セガンティーニ ふくやま美術館
セガンティーニは一度まとめて拝見してみたい。展覧会企画してくれないだろうか。

・≪ペガサスにのるミューズ≫ 群馬県立近代美術館
これは過去見たことがあると思う。破格のお値段で群馬が買い入れた、群馬の至宝ゆえ、光輝いていた。

・≪アンドレ・ボナール嬢の肖像、画家の妹≫ ぴえーる・ぼなーる 愛媛県美術館
ボナールの大作。この作品が展示されている一角が狭くて混雑しがちだったのが残念。ゆったりと鑑賞したい作品なのに。

・≪カーニバル・冬≫(習作) カンディンスキー 宮城県美術館
これは習作だが、この本作を見た記憶がある。カンディンスキーらしい1枚。

・≪三人の裸婦≫ ジュール・パスキン 北海道立近代美術館
パスキン好きなのでやはり気になる。

・≪オランダの娘≫ モイーズ・キスリング 北海道立近代美術館
同館にはエコパリ作家の作品が多数所蔵されている。パスキンコレクションだけでなくキスリングもあるとなれば、やはり1度は行ってみたい。

・≪アンフィトリテ≫ フランシス・ピカビア 広島県立美術館
本日再訪してじっくりと眺めた。だまし絵のような不思議な作品。ピカビアも日本ではまずお目にかかれない。

・≪パッラーディオのイタリア柱廊≫ サルバドール・ダリ 三重県立美術館
真っ先に行かねばならない美術館のひとつ。ダリの中でも名品だと思う。

・≪ダイヤモンド・ダスト・シューズ≫ アンディーウォーホル 金沢21世紀美術館
ウォーホルの単なるシルクスクリーン技法だけでなく、ガラスの埋め込みにより画面がキラキラと輝いて華やか。過去に見たウォーホルの中でも一番好き。

2.日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
・≪宮城県庁門前図≫ 高橋由一 宮城県美術館

・≪裸婦≫ 山本芳翠 岐阜県美術館
岐阜にこんな芳翠の大作があったとは知らなかった。灯台もと暗し。

・≪女の顔≫(ボアの女) 萬鐵五郎 岩手県立美術館
これは日本画洋画のマイベスト3の1枚。すごく見たかった。萬の代表作のひとつ。この垢ぬけないけど、圧倒的な存在感がたまらない。

・≪自画像≫ 関根正二 福島県立美術館
関根ファンとしては1枚でも多く作品を観たい。夭折の画家であるため作品数が少ないので、1点でも貴重。これも関根らしい1枚。

・≪蝋燭≫ 高島野十郎 福岡県立美術館
これは1度見たことがあるかもしれない。小品なのに、とても惹きつけられる。蝋燭の催眠効果?

・≪着物の女≫ 小磯良平 神戸市立小磯記念美術館
この女性モデルはブロガーのpandaさんにとても似ている。絵を見る度にpandaさんを思い出す。

・≪蝸牛のいる田舎≫ 古賀春江 郡山市立美術館
またも郡山にある1枚。私の好きな作家の作品ばかり。これは古賀春江のクレー風の1枚。

・≪牛乳ワゴン≫ 野田英夫 福島県立美術館
・≪鳥に話す≫ 脇田和 高崎市美術館
・≪田園B≫ 瑛九 宮崎県立美術館
・≪ながれ-たそがれ≫ 瑛九 うらわ美術館
野田英夫、瑛九、脇田和、それぞれまとめて観たい作家達。脇田和は来年川越に脇田和展が巡回するので今から楽しみ。

・狩野芳崖 ≪懸崖山水図≫下関市立美術館 ≪柳下放牛図≫≪伏籠羅漢図≫福井県立美術館
芳崖の名品が沢山出ていた。本日拝見した≪柳下放牛図≫はとても好きな1枚。海なのか山なのか
見ようによってはどのようにも見える広大な背景に柳が1本。ディテールは芳崖らしく細かい。

・菱田春草 ≪鹿≫ 飯田市美術博物館
飯田に行った際、自慢の春草コレクションは企画展のため見ることができなかった。さすが地元良い作品が出ていた。

・竹内栖鳳 ≪散華≫ 京都市美術館
天女が空を舞っている。そよいでいるといった方が近い。

・下村観山 ≪馬郎婦観音像≫ 福井県立美術館
またも福井からの出展。ここは岩佐又兵衛も所蔵しているのではなかったか。日本画の良い作品を沢山所蔵していると知る。次回金沢訪問の帰りに立ち寄るつもり。

・小茂田青樹 ≪秋意≫ 川越市立美術館
ほんわかとした円い月とぶどうの絵。なぜか、どこかに狐が隠れているような気がした。
取り合わせが素敵だった。

・北野恒富 ≪現代美人之図≫ 足利市立美術館
ポスター原画だけに、インパクトが強い。他に鷺娘や宵宮の雨も出ていたがいずれも印象深かった。

・岩橋英遠 ≪彩雲≫ 北海道立釧路芸術館
釧路からはるばる運んでいただいた甲斐がある。洞爺湖で見た一瞬の風景、雲の様子を描いた1枚。名品に相応しい。

・橋本平八 ≪老子≫≪猫A≫ 三重県立美術館
橋本平八は先日東京藝大コレクション展でもっとも気になった彫刻家。平櫛田中は正統派中の正統だが、橋本の場合、正統でも遊びがあるのが良い。
この老子の表情がたまらない。

特に日本画で楽しませていただいた。
図録(付録付き2500円)は丸善6店舗(丸の内本店、日本橋店、津田沼店、舞浜イクスピアリ店、ラゾーナ川崎店、岡山シンフォニービル店)で購入可能。

*7月5日(日)まで開催中。

「Seven 西村画廊35周年記念展」 西村画廊

西村画廊35周年記念展のオープニングに馳せ参じた。
私が行ったのは19時15分前で、画廊内は既に日本人だけでなく海外の方も含め、大勢のお客様でにぎわっており、ある種セレブ感漂う状況を呈していた。

一介のOLに過ぎない私など、場違いであることを察し、展示作品を拝見しつつ、オーナーに目礼し、すぐに会場を後にした。
賑わう前の会場の様子は、ご存知「弐代目・青い日記帳」さんが画像やアーティストのお話も交え詳しくご紹介されているので、ぜひご覧ください。

初日に出かけたのは、西村画廊の35周年記念オープニングパーティを体験してみたかったから。
元々、私が現代アートに関心をもつきっかけとなったのは、西村画廊の扱作家である小林孝亘さんの作品だ。
7年前、当時の私は「I'm home」という住宅関連雑誌を毎月講読していて、ある時記事中でインテリアデザイナー橋本夕紀夫氏の自宅が紹介されていて、そこに飾られていた1枚の絵に大変な興味を持った。
この絵を観たい!!!
その作品が小林孝亘さんの眠る人を描いた「small death」シリーズだった。
即、作家さんの名前で検索したところ当時銀座2丁目にあった(現在は日本橋に移転)西村画廊が取り扱っていることを知り、上京の折、画廊とはどんな所であるかも知らず飛び込んだ。

小林さんの作品を見せて欲しいとお願いしたら、いろいろと出してくれ沢山お話を聞かせていただいた。当時はオーナーをはじめ、現在銀座エルメス裏にあるMEGUMI OGITAギャラリー・オーナーの荻田さんに大変お世話になった。

こうして小林さんの作品を皮切りに、三沢厚彦さん、町田久美さん、押江千絵子さん、曽谷朝絵さん、御大舟越桂さんを知ることとなる。樋口佳絵さんは私にとって一番馴染みが浅く、実際の作品を拝見したのは、昨年東京へ移って来てから。
この7名(SEVEN)の方の最新作が今回の記念展では展示されている。

小林さんのこもれびが描かれた「テント」(上図)を見るとほっとした。懐かしい感じさえする。

ただ、今回一番印象に残ったのは、三沢厚彦さんの「うさぎ」。
ポーズが良いのだ。こちらに語りかけてくるような、いつもの三沢さんの動物作品で見られる目も気になる。

そして、曽谷朝絵さんの最新シリーズ「air」には驚いた。
曽谷さんはバスタブシリーズで2002年VOCA賞受賞。その後どんな風に作品が展開されていくのかなかなか見えて来なかったけれど、久々に拝見した曽谷さんの作品には明るい色彩と光が溢れていた。光のプリズムというのがぴったり。

町田久美さんの「手紙」もぐっと来る。
う~ん、こういう表現しましたか~と感心する。この1枚はこれまで見た中で個人的には一番好きかも。

奥の小部屋も必見。
ここには、西村画廊が日本には馴染みの薄かったイギリス現代作家、デビッドホックニーらを紹介してきた実績を伺うことができる。
ブリジット・ライリー、ルシアン・フロイドなど名だたる作家の作品の中で、私が大注目したのはアニッシュ・カプーア。
カプーアの作品はなかなか国内美術館でもお目にかかれないので、非常に嬉しい。
もちろん未見。小品のオブジェだが、私がこれまで見たどの作品にも似ていなかった。

西村画廊の皆様 この場を借りて謹んでお祝いを。
現代アートへの道しるべを作私に作っていただいたことを深く感謝いたします。
35周年を迎えられましことを心よりお祝い申し上げると共に、今後の益々のご発展を祈念しております。

*7月25日(土)まで開催中。
西村画廊 東京都中央区日本橋2-10-8 日本橋日光ビル3F
10:30 am - 18:30 pm

風能奈々展 「誰がその物語を知る」「草上の想像」 小山登美夫ギャラリー・TKGエディションズ京都

今回は京都のギャラリーに絶対行くぞ!と決めていた。
最近、東京にある老舗ギャラリーも続々と関西に進出、またニュートロンのように関西から東京へ進出という東西交流が行われつつある。

結局、時間がなくなり、数あるギャラリーの中から選択したのは小山登美夫ギャラリー京都
同じビルにはタカ・イシイギャラリー京都も入っている。
こちらを選んだ理由はネームバリューもだけれど立地条件も大きい。東本願寺に近く、分かりやすかったのだ。
新花屋町通と西洞院通の交差点(信号あり)4ツ角に出ているので、迷わずに済んだ。京都は通りの名前さえ分かれば、場所を探しやすいのが町の魅力。

風能奈々の名前は、自分の中に記憶があったが彼女の個展だからと足を運んだ訳ではなかった。
しかし、この展覧会1階はTKGエディションズ京都主催の「草上の想像」展。
こちらではなんと、20㎝×20㎝のペインティングがずらり壁3面に108点展示されていた。また、よくありがちなNo Titledでなく、全点に素敵な作品名が付されている。

108と言えば煩悩の数を思い出すが、特に煩悩の絵画表現ということではないと思う。
これだけ並ぶと壮観、圧巻。
思わずどれか買ってしまおうかと思ったが、気に入った作品はホールドもしくは売却済み。私はオープニング翌日の夕方に行ったのに、かなり良い出足。
他にも、作品を購入しようと迷われている年配の男性がいらっしゃった。
結局、決められず2階の展示へ移動。

2階が小山登美夫ギャラリーになっており、同じく風能の「誰がその物語を知る」を同時開催。
こちらでは、2009年VOCA展入選の「花の瘡蓋」(以下)を含め、新作約10点を展開。
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展示の様子は同ギャラリーブログをご参照ください。

広々とした白い空間に風能奈々の絵画作品が映えていた。
やはりどこかで聞いた名前と思ったら、今年のVOCA展で気になる作家としてこのブログ記事に記載していることを帰宅後知る。
VOCAで拝見した時より、同じ作品なのに美しく見えた。
こちらの会場の方が、背景色が明るい白で照明もやや明るかったからだろうか。
技法としては、アクリル絵具、染料のペン、ジェッソ、再びアクリルの順に重ね塗り。この重ね塗りが微妙に感じが違っているが、過去は白基調にグレー、黒などでモチーフを描いた作品が多かった。
が、特注の円形キャンバスの中に1点グリーンと白のミックスされた作品があり、この組み合わせが素敵だった。
1階作品では、ピンクとの組み合わせがあったり、更に組み合わせ方が多様になっていて比較すると楽しい。

作品には非常に細かくディテールを描きこんだものと「花の瘡蓋」タイプの作品とは別に非常に細かくディテールを描きこんだものとに分かれる。
私は前者のタイプの作品の方が好みだったが、これは個人差があると思う。作家さんご本人は、後者タイプの作品がお気に入りらしい。
風能さんの作品は北欧ぽいイメージとどなたかがおっしゃっていた。

いずれにせよ、来て良かったと思わせる展示内容だったことは間違いない。

風能奈々 : Nana Funo
1983 静岡生まれ
2006 大阪芸術大学 美術学科絵画コース 卒業
2008 京都市立芸術大学大学院絵画専攻油画 修了

*7月25日(土)まで開催中。(日月祝休み) 11:00~19:00

福島沙由美 「鏡游掬~きょうりさらい~」 TWS本郷

トーキョーワンダーサイト(TWS)本郷では、東京都主催の公募展「トーキョーワンダーウォール」入選者100名の中から、TWSでの展示希望者を募り、審査を経て選出された作家19名の作品を約3名ずつ3週間交代で展示する「TWS-EMERGING2009」を開催中。
1104名の公募展応募者の中からの19名と狭き門を突破した精鋭アーティストのお披露目である。

今回の第1回目は、福島沙由美、塚本紀恵、諏訪奈都美の3名が出展。
3名の中では、ダントツで福島の作品が光っていた。
福島は1982 東京生まれで東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻。
2008年今年、上野の森美術館大賞と前述のワンダーウォール大賞を受賞。その実力は伊達ではない。

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1室に、かなり大型の作品が並んでいるが、作品全ては上図のように水をイメージさせる薄い水色が主体。モチーフに描かれているのは蓮の花など植物たち。
水に浮かぶ?沈む植物たちに囲まれていると自分も水中花のひとつになったかのような気持ちにさせられる。

画面には透明感があり、更に光も感じる。

何かに似ていると思ったら、蓮の花が金魚に見えて、金魚鉢のようでもある。
展覧会タイトルから察するに、鏡にうつされた水の情景なのだろうか?

室内にいると気分が高揚してしまった。

作品集が入口に置かれていたが、年を経るにつれ作品の質も向上しているように思われる。
また、過去の研究成果として温度を視覚化する試みをされていて、視覚化した作品が掲載されたレポートも興味深く拝見した。
今後も目が離せない要注目の作家である。

3階には、福島以外の2名の作品が展示されていたが、私の好みではなかった。

*6月28日(日)まで開催中。

野村 仁展「コスモ・クロノグラフィー」 日本橋高島屋美術画廊X

日本橋高島屋美術画廊Xで開催中の野村 仁展「コスモ・クロノグラフィー」に行って来た。
今回の展示は太陽や月の運行、銀河の光などをモチーフにした写真作品約15点を展覧している。
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野村作品と言えば、先日、東近美の「ヴィデオを待ちながら」展で映像作品を3点ほど拝見したばかり。それ以前は、豊田市美などで今回の個展同様、天体の写真作品を拝見していた。豊田市美での展覧会名は「宇宙御絵図」だったが、宇宙というイメージに彼の作品はしっくりくる。

それにしても、野村仁の写真は美しい。
撮影の仕方を魚眼レンズを使用したりと工夫が凝らされているが、太陽や月、地平線の動きをここまで芸術的に美化させるのは彼ならではと思う。
自然に撮影して、これほど美しい色が出せるのだろうか?
実際以上に光の色が美しく見える。

写真作品をして物理的な印象を与える。彼の制作意図には何があるのか気になる。

野村仁は現在国立新美術館でも「変化する相-時・場・身体」展を開催中。
今回の個展を拝見して、やはりこの回顧展は外せないと感じた。個人的には、映像より写真作品の方が好きだ。
写真だけではない、多様なメディアを使用した彼の表現を国立新美術館で堪能したいと思う。

*7月6日(月)まで開催中。最終日は午後8時閉場。

「没後50年 魯山人の宇宙」 岐阜市歴史博物館 はじめての美術館35

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岐阜市歴史博物館で開催中の「没後50年 魯山人の宇宙」展へ行って来た。
岐阜市歴史博物館の前回の企画展「日本のパロディー―古典にまなぶ、古典であそぶ―」も行きたかったのに、どうしても都合が合わず諦めた。

しかし、今回も冒頭の展覧会チラシが、あまりにも「魯山人の宇宙」というタイトルにピタリとはまっていて、これだけは見に行こうと決意を固めた。
展覧会チラシは、その展覧会に向かせるだけの重要なfactorになることは間違いない。
先日、ブログでお世話になっている遊行さんも「1枚のチラシがきっかけで、どれだけ展覧会に行ったか・・・」と溜息混じりにおっしゃっていたのが印象的だった。
かくいう私も最近だと、BankARTの「原口典之展」など完全にチラシでやられた。

さて、岐阜市歴史博物館はJRまたは名鉄岐阜駅からバスで約15分。金崋山のふもと岐阜公園内にある。
想像していた以上に立派な建物であった。
早速、1階の企画展示室に向かう。
展覧会構成は次の通り。

<多彩な魯山人の陶芸>
<魯山人と美濃のやきもの>
<魯山人のいた風景>
アメリカからカワシマ・コレクションが里帰りし、笠間日動美術館所蔵品と併せて約80件で、昭和34年に没した魯山人没後50年を記念して彼の陶芸作品を中心にその芸術を展観するもの。

カワシマ・コレクションは、窯から出して未使用のままコレクションされたのが特徴。今回は笠間日動所蔵作品と並んで展示されていたが、やはりその差は歴然としていた。
陶肌の輝きが違う。
やはり、使用感があるものはくすんでしまっていて、瑞々しい色合いがやや損なわれているように感じた。したがって、良いなと思う作品の大半はカワシマ・コレクションだった。
笠間市には日動系列の魯山人の居宅を公開している「春風萬里荘」があり、昨年5月に初めて訪れたが、魯山人の精神がそのまま建物に息づいていた。
そこで見た作品、笠間日動美術館で目にした作品も出展されていた。

気に入った作品は数あれど中でもというのは次のもの。
そめつけ竹鉢
そめつけ烏絵花入
九谷風鉢(チラシ掲載)
九谷風龍安寺平向
備前緋襷四方皿
小代風台鉢
於里篇分銅鉢
織部土瓶
織部菊文蓋付碗
この葉平向
紅葉平向
色絵糸巻皿
などなど。

本展は全国巡回で恐らく岐阜展が最後の巡回先ではなかろうか。
岐阜展ならではの試みとして、岐阜歴博所蔵の桃山時代の織部、志野などの名陶と一緒に魯山人の器が展示されていたこと。

また、ご当地出身、人間国宝の荒川豊蔵と魯山人との交流などについて、2階の常設展示室で特集展示「岐阜市に残る魯山人」が同時開催されていた。この特集展示が企画展に勝るとも劣らぬ面白さで、展示作品は岐阜歴博近隣でお借りして来た作品で、ほとんどが本邦初公開
本当に良いものが沢山あった。
残念なことに、特集展示の方には作品リストが用意されておらず、メモを取る時間もなかったが、充実した内容だったことは記憶に深く刻まれた。リストがなかった理由は、以下上総介様のコメントによれば、徐々に展示作品を増やしたためとのこと。
いずれにせよ、ここ岐阜歴史博物館でなければ見られない逸品の数々である。

荒川豊蔵は、豊蔵得意の志野焼などの焼き物を手助けしていたとか、焼き物の町ならではの解説もああり楽しめた。

魯山人の器など特にそうだが、焼き物を見る時には、この器にどんな料理を盛ったらよいだろうと想像しながら見ると実に面白い。
「器は料理のきもの」と言った魯山人手製の料理を彼のものした器で食すなどなんという贅沢であろうか。

注)6月27日特集展示部分を加筆、修正。

*7月12日(日)まで開催中。
岐阜市歴史博物館
開館時間:9時~17時 月曜休館

「釜師 大西清右衛門の目」 大西清右衛門美術館 はじめての美術館34

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茶道具の中でも茶杓いやそれ以上にその良さがよく分からないのが茶釜である。
あるのが当然、しかし茶杓に比してその重厚な存在感は圧倒的。
が、名品であるとか名物であるとかはどこをどう見ればよいのだろう?いつも茶釜を見る度にそんなことを思っていた。

京都で千家出入りの釜師として、約400年もの長きにわたり代々京釜を作り続けて来たのが大西家。
千家十職の釜師のご用を勤めている。
そんな大西家の美術館である大西清右衛門美術館に行って来た。清右衛門は当代16代目当主の名前であり、1999年に開館、本年はちょうど十周年にあたる。

その記念すべき年の展覧会として、大阪の国立民族博物館所蔵の膨大な民俗資料の中から当代が選んだ様々なオブジェを、館蔵品と併せて展示する内容。
まるで無関係に見えるものでも、並べてみると意外にどこか共通点があったり、「かたちの面白さ」そのものに目を向けることができる。そんなものに込められた思いを感じとってもらおうという趣向が面白い。

ジョイントしていた民俗資料の中ではアフリカ地方のものが目立っていた。
たこやき器を思わせるコンゴのゲーム盤や弦楽器などが面白い。
そんな民俗資料にまじって、大西家の歴代作の茶釜が並んでいるのは、珍しい光景だろう。
やはり、私の関心は茶釜に向けられる。

これが茶釜!?と思ったのが、西村道仁作≪蓬莱山釜≫。形そのものに蓬莱山をかたどっている。
いくらなんでもこれはやりすぎでは?と思うほど珍しい形状。

私のお気に入りは≪二口釜≫十代大西浄雪作。
太陽と月を釜蓋にデザインしているが、上から眺めると人面のようにも見える。
二つに内部が分かれているため、水の飲み比べ(きき水)などにも使用していたらしい。
実用的であり、デザイン性もある素晴らしい茶釜なのだった。

展示室は3階、7階には茶室があって茶道具のしつらえがされている。
茶室の中に入ることができれば申し分ないのだが、通常中に入ることはできない。そのかわりと言っては何だが、1階の和室にも茶の準備がされており、お抹茶をいただくことができる。
この1階で使用されていた茶釜も小ぶりで愛らしく気に入ってしまった。

茶釜と言っても実にいろいろな形、意匠があるものだと改めて感じ入った。
美術館がある通りは釜座町という地名。
平安時代初期の頃より、伝統ある鋳物町であり、嵯峨天皇の頃に「釜座」を名乗り始めた。
明治維新によって座は崩壊したが、大西家は釜座の伝統を継承する貴重な家となっている。
京都らしい、京都ならではの美術館だった。

*6月28日まで開催中。

「山口英紀 展」 新生堂

この週末は、土曜に京都で名古屋の自宅に戻って1泊、日曜は名古屋でぶらぶら美術館巡りと思っていたが、金曜日の夜に「はろるど・わーど」さんの記事でご紹介されていた「山口英紀展」が、どうにも気になった。運良く本日(21日)まで開催されているが、最終日は17時で終了。

悩んだ末、ギャラリーに電話をかけ再度17時までであることを確認、しかも作品は初日で完売していること、今日は作家さんご本人がいらっしゃっていることを知る。
予定を繰り上げ、2時には名古屋から東京へ、目指すは表参道の新生堂。名前は聞いたことがあるが、伺うのは今回が初めて。

さて、中地階のこじんまりした黒い壁の室内に9点ほどの作品があった。
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そして、一目見ただけで、ぎりぎりでも来て良かった~!はろるどさんに感謝感謝と思わず合掌したくなった。
画材は紙本と絹本の2種類を使い分け。
モチーフは犬、人物、風景、観覧車、工場、クローバー、上図のように本城直季さんの写真のような都市俯瞰図と様々。
しかし、これが墨で描かれているというのだから驚く。驚異的。ぱっと見は写真のよう。
細密画家は先日上野のネオテニーで拝見した池田学さんをはじめ、何人もいらっしゃるが、その作品の多くはペン画、鉛筆画であることがほとんど。
絹本の細密墨絵って初めて見ました。衝撃的。
中に2枚いや3枚?彩色画があり、こちらは水彩とのこと。これが水彩?
墨でも水彩でも、全くそれとは見えないのだった。

この凄い作品の中、白のワイシャツにネクタイ姿のお若い男性が1人、ひきりなしに訪れるお客のお相手をされていた。作品解説を皆さんに丁寧になさって、とてもお忙しそう。この方が作家さん。
クローバーの作品には1つだけ4つ葉のクローバーが隠されていて、皆、この絵の前で数分にらめっこ。見つけると嬉しそうなのが微笑ましい。

山口英紀さんご本人のHPはこちら
プロフィールや過去の作品も掲載されています。
元々、書の道を選んで筑波大学に入学、その後杭州に留学。
書、篆刻を学ぶ傍ら絵も始められたそうだ。祖父にあたられる方が日本画家だとのことで、DNAは確実に受け継がれていた。

画材の絹は中国留学時代にとあるお店で見つけたもの。これを見つけるまでのご苦労についても教えていただいた。絹にもいろいろあるが、山口さんが使われているのはかなり目が細かいもの。
一方、紙の方は、日本で入手した作品の修復に使用するための薄い和紙(名前忘れました)。

当然と言えば当然だけれど、絹本と紙本では作品が醸す印象、雰囲気は異なる。
それぞれ、持ち味があるので描くモチーフに併せて画材も選ばれている。
また、「絵肌」は画像では伝わらない。油彩やアクリルも同様だが、絹本、紙本、日本画などは特にその傾向が強い。

制作の過程も教えていただいたがここでは省略。
紙本のぼかしたような感じを出すために、ものすごく手がこんだ作業が行われている。
絹本たるやひとつ誤って塗ろうものなら、一からやり直しだそう。
よって、2年で9点。この細かさを考えると、それもむべなるかな。

会場に過去の作品リストがなかったので、帰宅後山口さんのHPを早速拝見した。
私はここ最近中国書画がマイブームになっているのだが、山口さんの書も素敵だった。
自身の悪筆コンプレックスを刺激されるせいか、元々私は字の上手な男性に弱い。
できることなら、山口さんの書道の授業に参加して一から書の勉強をしたいと切に願うほど。
しかし、哀しいかな会社勤めの身では無理(涙)。

前回の個展では書の作品もあったようなので、次回は書も拝見したい。

*本展は終了していますので、ご注意ください。
次回の個展は来年1月です。大作の出展が予定されているので、乞うご期待。

「見いだされた日本 クリスチャン・ポラック・コレクション」 明治大学博物館 

明治大学博物館で開催中の「見いだされた日本 クリスチャン・ポラック・コレクション」に行って来た。
クリスチャン・ポラック氏は1950年フランス生まれ。日仏外交・交流史研究家であるが、環境関連分野コンサルタント会社、株式会社セリクの代表取締役社長としてビジネス界でも活躍されている。

本展は、日仏交流150周年を記念して、同氏のコレクションと明治大学所蔵品により、日仏交流の黎明期にフランス人が抱いていた日本及び日本人に対するイメージを明らかにしていくもの。

展示構成は以下の通り。
1.ビゴーが見た日本の風景
2.ビゴーが描いた世相と事件
3.好奇のまなざし
4.海と空のかけはし
5.欧文和装本・ちりめん本の世界
●キュスターヴ・ボワソナード
●ボワソナードと明治大学
●フランス市場向けの日本産生糸につけられた商標
●品書き(ビゴー画)

まず、注目すべきはビゴー。
ビゴーと言えば、この後7月11日から東京都写真美術館で「ジョルジュ・ビゴー展」の開催も予定されていて、今年注目のフランス人画家である。
本展開催前から、写美での展覧会は期待していたが、思いもよらぬ場所で一足早くビゴーの作品を拝見することができた。

ポラックコレクションは状態が非常に良く、写美のHPを見る限りポラック氏の名前やそのコレクションについては言及されていない。となると、本展はポラックコレクションを見ることができる貴重な機会かもしれない。

ビゴーは文明開化の明治期1882年、22歳で横浜に日本の伝統美術研究を目的に来日。以後1899年の外国人居留地廃止により帰国するまでの間、日本の生活をデッサン、スケッチ、水彩、油彩などに残した、
その集大成とも言えるのが版画とエッチングの4冊の画集「A-SA」「O-Ha-Yo」「MA-TA」「Croguis Japonais」。

冒頭ビゴーの油彩が4点並んでいた。いずれも江戸時代の趣が残る風景画で当時の様子がしのばれる。
≪日本の芸者≫≪茶屋の戸口にいる日本の女歌手≫は日本人浮世絵師とはまた違った視点での芸者、女歌手でフランス人から見た当時の日本人のイメージが体現されている。
滑稽にも思えるその姿は、別の角度から見た真実なんだろう。

作品を見て行くと、よく誤解されがちな日本人と中国人がごちゃまぜになっている東洋人ひとくくり的作品に出くわした。
ジャポニスムというより、シノワズリ風の≪日本人曲芸師アンドウゲンジロウの興行を知らせるポスター≫や≪フォリ・ベルジェールでの「江戸日本座」の興行とその軽業集団「レ・ジャポネ」を紹介するポスター≫などがその典型的作品。

風刺画もいかにもフランス人が描いた~という漫画調の作品で、日本史の教科書で見たことがあるような気がして来た。
ポスターは特大なものも含め、非常に充実した内容。

ビゴーは単なる画家ではなく、時代の目撃者でもあった。そのため、火山活動、地震、戦争などを題材にした作品も多く手がけている。濃尾地震は1891年に私の地元で起きた大地震であるゆえ、その被害の様子を描いた作品はとりわけ興味深かった。

ビゴー以外にも面白いものがいくつか出ている。
≪フロリアン寓話選≫は3つあったが、外箱の豪華さ、表紙は装飾的で美しい。
≪ちりめん本≫は文章はフランス語で描かれ、浮世絵版画の挿絵がついた欧文和装本。ちりめん本は長谷川竹次郎が考案、揉んだり伸ばしたりすることで縮緬布のような質感に仕上がった和紙で作られている。私は本当に布でできているのだと思ったくらい、そっくり。紙には見えない。
これらは、日本に滞在した外国人の土産物として人気を博していたらしい。

展示作品数は全部で85点。
前回の早稲田大学同様、丁寧な解説付きの作品リストを受付で頂戴したが、入場料無料!
前に同じく明治大学博物館で見た「福建」は入館料500円?だったかが必要だったのに、今回の無料は嬉しい。今回は時間がなかったので、さらっと一通り見て終わったけれど、もう1度じっくり見たい。

*6月25日まで開催中。会期中無休!(日曜も開館しているのが嬉しい)
明治大学博物館(駿河台校舎アカデミーコモン地下1階) 10:00~17:00(入館は30分前まで)

「夢二グラフィック」 竹久夢二美術館

やなせたかし展の後、棟続きの竹久夢二美術館へまわる。
今回は「夢二グラフィック~夢二の手がけた明治・大正・昭和の雑誌型録」と題した内容の展示を行っている。いつも夢二の作品を展示している美術館だが、今回はグラフィック作品が多数展示されており、夢二の作品の中で私がもっとも好きな分野だけに、大変興味深く拝見した。

時間があまりなかったので、急ぎ足になってし<まったのが残念。できることなら、再訪してじっくり見たいが、今回の展覧会関連書籍として「夢二グラフィック~抒情カット・図案集~」(下図)も2009年2月に出版されたので、こちらを購入しようかとまたも物欲に悩む。

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今回驚いたのは、実に様々な雑誌の表紙を手がけていたということ。
約20年の間に180タイトル2200冊以上の雑誌を手がけたとか。単純に考えて2200のカットを考えているってことだ。
溢れんばかりの才能を当時の出版界と民衆は放ってはおかなかった。

何しろ、どの表紙絵を見ても「はふぅ~」と思わず嘆息するほど素敵。センスが良いっていう安直な表現が許されない気がする。
先日そごうで拝見した川上澄生も良いが、夢二は更にロマンティック。乙女ちっく満載。
あまりに乙女的なものは、私の場合腰がひけるが、夢二の場合はギリギリで許せる乙女ちっく度なのだ。

「民謡音楽」、「文芸」、「小学少年」、「女学生」、「新少女」、「少女世界」、「若草」などなど雑誌タイトルを挙げるときりがない。
特に「若草」(下図)は大正モダン溢れるデザインで、少女向けの絵とはかなり違う。グラフィックデザインそのもの。私はこの「若草」のデザインなど大人向けシンプルな作品に惹かれた。
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デザイナーとしての夢二の素晴らしさと才能が見る側にひしひしと伝わる。狭い空間にびっしりと作品が並んでいたが、まだまだ見ていない作品が沢山あるに違いない。

雑誌表紙絵だけでなく、雑誌の付録として作られた夢二デザインの双六など付録類の展示もあって、こちらも見ているだけで楽しい。実際にあの双六で遊んでみたいものだ。

*6月28日(日)まで開催中。

「やなせたかし展 ~『詩とメルヘン』からアンパンマンまで~」 弥生美術館

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アンパンマンのアニメを見たことはないが、やなせたかしの名前は知っている。
アンパンマン作者以外のやなせたかしを知りたいと弥生美術館の「やなせたかし展」へ行った。

弥生美術館には初訪以来、企画展のたびに訪問している。ここは、展示解説が親切で丁寧で分かりやすいので、すっかり気に入ってしまっている。
遊行七恵さんがかねてより通われているのをブログで拝見していたが、なるほど遊行さんが会員になられるのも納得できる。

今回も涙なしではやり過ごせない内容。
何しろ、展示を見るまですっかり忘れていたが、やなせたかしは私が小学生だった頃、夢中でグッズを集めていたサンリオ社から編集、イラスト全てを手がけた月刊誌『詩とメルヘン』を出版していたのだ。小学生の私はサンリオショップに行くのが楽しみで、こづかいを全てサンリオ製品につぎこんでいたと言っても過言ではない。
そして、詩に関心も無い癖に、店頭にあった『詩とメルヘン』を購入したことを思い出した。
展示されていた表紙のイラストに見覚えがあった。
でも、肝心の中身はあまり思い出せないのは、買ったはいいが中をあまり読まなかったのではないかと推察。

本展の遊行七恵さんの記事を拝見していたら、更に懐かしい『いちご新聞』の名前を見つける。
いちご新聞は『詩とメルヘン』以上に愛読していたもの。同じくサンリオが出版していた。

やなせ氏のイラストは変幻自在。大人向けの漫画も手掛けており、硬軟使い分けできる才能をお持ちだったようだ。
手塚治虫が手がけた虫プロの千夜一夜物語ではキャラクターデザインを初めて任される。
キャラクターを生み出す作業がやなせにとって天職であると、本人もこれを機に知ることとなる。

曰くストーリーがある場合、キャラクターを生み出すのにさほど時間はかからなかったと語っているが、その後ストーリーがないキャンペーンや企業のマスコットなどの仕事もキャラクターを作る時にストーリーも一緒に考えることで、仕事の幅を更に広げていく。

私が泣けたのは、やなせたかし作のお話「杉の木と野菊」の切ない恋の物語。
最後に雷で杉の木が野菊をかばって倒れてしまう所で、涙が浮かんできた。
くぅ~、泣ける~。
泣かせのやなせ。

正義のアンパンマンには、正義感よりむしろ人類愛を感じてしまった。

90歳を超えてもなお、現役作家として制作活動をされているやなせたかしを尊敬してやまない。

*6月28日(日)まで開催中。

「原口典之展 社会と物質」 BankARTStudio NYK  はじめての美術館33

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展覧会は既に先週日曜に終了してしまったが、印象深い内容だったので記録にとどめておこうと思う。
BankARTは名前こそ聞いていたが、横浜市内の赤レンガ倉庫近辺にあるとおぼろげに知っていただけで、一度も訪れたことがなかった。しかし、本展「原口典之展 社会と物質」の展覧会パンフレットの写真を見た瞬間、そのあまりのかっこ良さにしびれた。
原口典之の名前は大変失礼ながら存知上げず、パンフレットによれば1946年生まれの「もの派」作家と分かり、途端に展示を見に行く気持ちが萎えていく。
私にとって、もの派作家の作品は難解で、とっつきにくい。

しかし、はろるどさんなでしこさんのブログを拝見し、やはり行こうと思い立つ。
結果、諸々の事情で最終日の閉場30分前に駆け込んだ。

そして、これが素晴らしかった・・・。
曰く、美しいというよりとにかくカッコいいのだ。
日本でなく、NYかどこか海外のような展示空間。
更に展示室から窓外を眺めると海に注ぎこむ川の情景が見える。
日本にもこんなハイセンスな空間があったのか!という驚きと感動。さすが、横浜。

BankARTNYKは、旧日本郵船倉庫を設計集団みかんぐみによる改修で、巨大なギャラリー+ホール+ショップ+カフェ&パブに生まれかわった。2005年1月にオープンしたらしい。
詳細はこちらをご覧ください。
コンクリートむき出しの天井や壁はかなりハードな空間だが、原口の作品は決して負けていない。
負けるどころか、見事に空間と調和を果たしていた。

展示作品は、驚きの実物大戦闘機の再現「A-4E Skyhawk」、廃油を利用した巨大なオイルプール、
カラーレリーフやRubber、ポリウレタンなど既存の物質で硬質な作品を展開。
もの言わぬ物たちが、強く迫る。

3階展示も好きだったけれど、2階奥にあった平面作品コンクリートとキャンバスのはさみうちみたいなものが気に入った。

とにかく、強くて渋くて原口典之その人を表している気がした。

入場料は900円、図録セット付き入場券は2200円とぶっとくて写真も良い図録がたったの1300円。もちろん買いです。最後だったせいかおまけで、次回の展覧会招待券までいただいた。

BankARTの最寄駅は馬車道。駅と反対側の歴史博物館には数度訪れているのに、こんなに近くにあったBankARTに立ち寄らなかったなんて、何と間抜けな。
今度はふらっと外のテラスで海風に吹かれてみたい。

*展覧会は6月14日(日)に終了しています。

「富岡重憲の蒐めたもの」 會津八一記念博物館 はじめての美術館32

tomioka

早稲田大学會津八一記念博物館で開催中の「富岡重憲の蒐めたもの」に行って来た。

富岡重憲(1896-1979)は日本重化学工業株式会社創業者であったが、重要文化財・重要美術品を含む日本東洋古美術品を中心とするコレクターでもあった。大田区山王に嘗てあった富岡美術館が閉館、2004年に蒐集品約900点が全て早稲田大学に寄贈された。ちなみに富岡重憲は早稲田大出身というわけではないので、関係者が早稲田関係の方なのかもしれない。

今回は、會津八一記念博物館内に、富岡コレクション展示室が新たに開設され、継続的に蒐集品を展示していくというその記念すべき第1回展覧会。
初回ということで、富岡コレクションを総覧するような分野を限らない名品24点が展示されていた。作品数は少ないながらも良いものが多く見ごたえがあったので、ほくほくえびす顔になったのは申し上げるまでもない。

以下印象に残った作品。

・埴輪女子象 重文
埼玉で出土されたもの。東博で埴輪は沢山見るけれど、これも損傷が少なくかわいい。

・朝鮮唐津茶入 銘玉渕 江戸時代
富岡コレクションの3分の1はやきもの。今回は全6点陶磁器が出展されていたが、リストを見ると5点に○印が付いた。これもそのひとつ。釉薬の垂れ具合が絶妙。

・黒楽茶碗 銘 破れ窓 長次郎
何と、ここで長次郎作を拝見できるとは嬉しい驚き。長次郎の黒楽の中では一番黒が黒でない。つまり、黒っぽい褐色で土の色が濃く出ていた。真っ黒ではないので、最初長次郎の黒楽と分からなかったが、形や質感はまさしく長次郎作の特色を示す。

・竹茶杓 銘 松露 烏丸光廣 江戸時代
茶杓に○を付けるなど、あまりないがこれは好き。飴色に変わった竹の色が非常に美しく品があった。

・法華経絵(Ⅰ)(Ⅱ) 室町時代 重要美術品
二幅の仏画。状態は良い。見るべきは仏の着衣に施された錐金紋の美しさ。状態が良いので、美しさが際立つ。

・白河切 伝西行 平安時代 重要美術品
・古今集切 平安時代
・手鑑 銘 ちり蓮
書にも名品が続々。これを茶室に飾って、茶を愉しまれたのだろうか。古今集切の茜色の料紙が目を引く。こんな赤も良い。
手鑑は表紙の刺繍が素晴らしかった。手鑑故、書の短冊などがずらずらと貼り付けられていた。

・蛤蜊観音図 白隠慧鶴 江戸時代
禅画も富岡コレクションの特色のひとつ。この白隠の絵もどこかで見たようなという名品、いや間違いなく過去見た記憶がある。人物たちが、頭に銘々、魚や貝殻のかぶりものをしているユーモラスな内容。

・達磨図 仙義梵 江戸時代
白隠と来たら、次は仙。達磨図はかなり大きなもの。法華経絵と共に、今回のマイベスト。線の太さの微妙な変化、迷いない流れ、更に達磨の上に書かれた自筆の書も見ごたえがある。

・七福神之図 富岡鉄斎
・堂上有仏二尊図 東嶺圓慈
いずれも水墨画の逸品。

次回は7月4日から中国陶磁のコレクションを特集。これから通うのが楽しみ。
昨日アップした貴重書展同様、この博物館も無料公開されている。早稲田さまさまなのであった。

*6月29日(月)まで開催中。10:00~17:00日曜休館なのでご注意ください。

「近世文藝の輝き-早稲田大学所蔵近世貴重書展-」 早稲田大学大隈記念タワー はじめての美術館31

waseda

愛読させていただいているブログ「見もの・読みもの日記」さんでご紹介されていたのを機に、予定を繰り上げて早稲田大学大隈記念タワーで開催されている「近世文藝の輝き-早稲田大学所蔵近世貴重書展-」に行って来た。

大隈記念タワーはまだ新しく他の構内にある博物館とはかなり趣を異にしている。
10階の125記念室では、毎回様々な企画展が開催されているようで、ガラスケースの設備もある。入ると、一見展示空間はさほど広くないように思えるが、実は左右奥にも展示室が広がっていて、むしろこの両翼部分が展示のメインであった。

まず驚いたのは、受付でいただいた手製の小冊子。作品リストは言うに及ばず、展示作品のキャプションまで記載されているので、非常に助かった。キャプションをリストに掲載して下さる博物館は私の知る限り台東区書道博物館とここで2つめ。

展示内容は1600年代~1800年代江戸期に出版された本が中心。「本」と一口に言っても、江戸期には版本が多く出回り、浮世絵作家たちの手による絵中心のものも多い。従って、文学はちょっとな~と思われる方でも楽しめる内容。

早大には、坪内博士記念演劇博物館もある通り、坪内逍遥、市島謙吉らの努力により、数百万点!の内外資料が蔵されることになった。今回は特に文学、演劇、俳諧中心の貴重書が多く展示されている。

中でも目立っていたのは、近松門左衛門、井原西鶴の西軍と南総里見八犬伝と言えばこの方、曲亭馬琴関連著作群である。
井原西鶴は、文章だけでなく自身の本に絵も描いていたとは知らなかった。他の絵師が描いたものとばかり思ったが、解説を読むと西鶴画とあるので、私の勘違いではないと思う。絵師といっても良いほど素人絵には見えない。

≪好色一代男≫には菱川師宣の挿絵もあり。同じ話でも江戸版と大阪版で、挿絵が若干違っていて、これを見比べるのが楽しい。江戸版の方がすっきりしていて、登場人物も少なめだった。
≪男色図巻≫は初版!初印の10冊本。何とレアな。本書には西鶴自身も登場し、挿絵にも坊主頭の西鶴と思しき人物がいた。西鶴って男色だったってことですかね、やはり。

版本、草紙系ばかりかと思いきや、絵画も沢山出ていた。
一番のヒット、いやホームランは渡辺崋山の≪秋江残照図≫1837年一幅(わりと大きい)。なぜ、ここにある。崋山の風景画であるが、自賛付き。1837年ということは死の4年前の作。崋山の作品はこの他に、≪俳諧摺物貼込帖≫も出ていた。

・≪山水図≫司馬江漢筆
・≪地球儀図並讃≫ 司馬江漢画賛
特に地球儀の方は、江漢自筆の哲学観がめんめんと綴られているのが興味深い。この人はやはり傑出した多才ぶり、絵も文も思想家でもある。

・≪柳縁≫
これは珍品。川柳が縁でむすばれた文人たちの寄せ書きだが、そのメンバーが凄い。谷文晁、馬琴、式亭三馬、宿屋飯盛、酒井抱一、大西椿年が狂歌や絵を一幅に描く。
左端の縦長スペースは抱一描く雀。それ以外の部分を3×5=15マスに仕切って、各位が腕をふるう。

・≪子日遊図≫ 窪俊満画
俊満の絵に、蜀山人らが賛を寄せているが、散し書きのような賛の入れ方が気に入った。

・≪杉田玄白先生自画自賛肖像≫1811年
杉田玄白は、漢詩、和歌、絵画などの嗜みもあったそうだ。教養人の誉れ。この絵は左足をあげて酔っぱらっているのか踊っている。自賛も面白い。

・≪勅宣養老水≫
青本。色摺を使用した最初期のものだそうだが、信じられない程、状態が美しく残されている。絵も初期のものらしく素朴で好き。

この他珍本、稀少本多数で全部で142もの展示を全て入館無料で一般公開して下さる早大に深く感謝したい。
*6月18日(木)まで開催中。ただし、日曜日はお休みなので要注意。10::00~18:00

2009年6月13日 鑑賞記録

日々頭痛との戦い。ノーシンホワイトって毎日飲んでいても大丈夫何だろうか・・・?
動き回って疲れたので手短に。明日はゆっくりしようと自分に言い聞かせる。

・「富岡重憲の蒐めたもの」 早稲田大学會津八一記念博物館 
・「近世文藝の輝き-早稲田大学所蔵近世貴重書展-」 早稲田大学大隈記念タワー125記念室
この2つの展覧会、特に貴重書展は大変面白かった。後日アップ予定。
よって、この2つで予定外に時間を取り午前中はこれで終わり、昼食も大隈記念タワーでとる。

・「松浦家とオランダ残照」 五島美術館
平戸・オランダ通商400周年記念展。松浦家に伝わる茶道具が良かった。鎖国関連資料はお勉強にはなったが、美術というより歴史研究資料としての価値が高い。

・「魔法のクレパス」 桐蔭学園メモリアルアカデミウム ソフォスホール
日本近代以後のクレパス名品画を100点集めた展覧会。冒頭は熊谷守一で始まっていた。期待してはるばる青葉台まで足を伸ばしたが、何かが不足していた。作品リストも全て揃っていたのに。やはり作品が小品だったから?でもクレパス画が見たくて行ったのだから、それは分かっていた筈。

・「芳年 ≪風俗三十二相≫≪月百姿≫」 後期展 太田記念美術館
芳年の肉筆画、一番最初にあった1枚(牛若丸が背負われていて姿は見えない)素晴らしかった。これで、月百姿すべてを見ることができたが、三十ニ相、それぞれ面白みがあって、芳年の才能の豊さが推し量られる。

ここからはギャラリー。

・窪田美樹 「かげとりと、はれもの」 hpgrp GALLERY
はろるどさんの「おすすめです。」に弱い私は、やはり行かずにはおれず覗いて来た。ちょうど作家さんがギャラリーにいらっしゃってお話を伺うこともできてラッキー。説明を伺わなければ、もっと滞在時間が短くすぐ出てしまったかもしれない。私は「かげとり」より[はれもの」派かなぁ。
窪田さんは、削っていて楽しくなるような家具を選ばれているそうです。

・「ロバート・ハインデル展」 代官山ヒルサイドフォーラム
代官山、全くご縁がないので、ヒルサイドまでの道のりを迷ってしまった。ロバート・ハインデル展は先週、珍しくTV東京の「美の巨人」で紹介されていて気になったので行って来た。ogawamaさんは既にご覧になられていて、そちらの記事も拝見しやはりこの目で見ようと、閉館ぎりぎりセーフ。
予想以上に沢山の作品数が並んでいた。作品リストがあったのかなかったのか、少なくとも受付では渡していただいていない。メモを取る時間もなく、ただ作品を鑑賞するが、それで充分ではないか。
死の前まで、作品と試行錯誤されていた様子がよく分かった。良いなと思った作品も数点ある。歌舞伎や能役者を描いた作品は興味深い。バレエとは全く違うとらえ方をされていた。

・「青木良太展」 TKG代官山
TKG代官山最初で最後の訪問となった。
これはとても良かったので別途、この後すぐ書きます。 

「青木良太展」 TKG代官山

また、青木さんか~と、ちらとでも思われた方、今回の個展は違います。
TKG代官山最後の展覧会となる「青木良太展」へ行って来ました。
実は同じ代官山ヒルサイドテラス内のフォーラムで開催されている「ロバート・ハインデル展」とセットで楽しめると、どちらかと言えば「ついで」的な感もあったのですが、とても楽しめました。

狭いスペースなのに窮屈感なく作品が展示されています。クリアなアクリル?のカーブした仕切りが効果的。この仕切りが迷路みたいで面白い。

今回の青木さんは器でなくオブジェ、立体造形作品で勝負しています。
彼の作る器はあまりにも薄いため、私のような粗雑な人間は触っただけで割ってしまうのではないかと恐怖にかられます。そのため、どうしても器として美しいとは思うものの、欲しいとは思えない(割りそうで、怖くて使えない)。

しかし、新作オブジェの数々は見事に骨太で、器の造形的な繊細さは感じられません。しかし、青木良太らしさは釉薬、陶肌に現れています。
この陶肌や色合いの微妙さは、やはり現物を見ないと味わえません。
銀無垢としか言いようのないほどシルバーな銀の剣は素敵だったなぁ。
最初に作ったのは、通りに面した窓に置かれている黒っぽいオブジェ。角の間からにょっきり剣が飛び出したような形をしているものだそうです。
そして、次回シリーズへと続く作品は出入口近くにあった非売品の王冠状の作品。ブロンズ色がぴたりと決まっていて、中世の美術品のよう。

元々密教法具からヒントを得て、そこからイメージを膨らませていったとギャラリーの方に伺いました。なるほど言われてみれば密教法具ぽいです。
マイベストは、出入口から見ると左奥にあったピンクぽい赤土色の薄くなった陶肌の作品。よく見ると焼成時にできたと思われる気泡?のような穴が無数にあって穴の色はグリーンと青が混ざったような色。これと同じ陶肌の器があったら、欲しい!

釉薬というのは魔法ですね。
先日工芸館で見たルーシー・リーの器も釉薬の配合の妙で出来上がった色の数々に魅せられたばかりです。
青木さんは、黒、白、銀、ブロンズ、金といった明確な色の作品が多かったと思いますが、このピンク色がかったものや、土器っぽい陶肌の作品も今後は増やして行って欲しいと切にお願いしたいです。
受付の背後の棚にあった小さな壺(作品名失念)はすぐに完売して、再度同じ数を送っていただいたにも関わらず、残っているのはあと3つのみだそうです。
恐るべき人気。
陶板作品も数点ありましたが、立体に比べるとインパクトはやや薄かったです。

これからも大きな立体作品にどんどんチャレンジして、新作を観せていただきたいと強く思いました。

*6月20日(土)まで開催中。日・祝・月は休み。11:00~19:00
TKG代官山渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟1

「neoteny japan ネオテニー・ジャパン-高橋コレクション」 上野の森美術館

neoteny

遅ればせながら、と言ってもまだ会期終了まで一ヶ月もある!、上野の森美術館で開催中の「neoteny japan」へ今夜行って来た。
仕事帰りに寄ったので、入館は18時40分頃だったと思うが、予想外に時間がかかり結局最後はやや駆け足鑑賞になってしまった。これから行かれる方は鑑賞に1時間半はみておかれた方が良いと思う。展覧会テーマは「ネオテニー(幼形成熟)」となっているが、内容とテーマの関連性については判然としなかったし、敢えてテーマをこしらえなくても良かった気がする。

出品作家33名のうち、作品は見たことがなくても名前も知らないという方は一人もいないという驚異のラインナップ。全作家中、1959年生まれの奈良美智さん、小川信治さんが最ベテランで、逆に最若手は、1978年生まれの工藤麻紀子さん。
意外や意外、鴻池朋子さんは1960年生まれ(女性の生年を語るなんて失礼かもしれないが)だったとは知らなかった。2000年にアーティストとしてデビューしたそうなので、誤解していた。

さて、未見の作家さんを中心に印象に残った作品を振り返ってみる。
<未見作家さん編>
・池田学
この人の作品はずっとずっと見たかった。ミヅマアートギャラリーにはいまだに行ったことのない私。必然的にミヅマ扱いの作家さんによる作品は未見が多い。
ついに、この上野で対面したが噂に違わぬ驚異の描写力と構成力と想像(創造)力に目を見張る。この方の作品に私は10分以上張り付いていたと思う。
≪興亡史≫2006年
本展マイベスト☆
これを完成するのにいったいどのくらいの歳月をかけたのか。1年いや2年はかかってるのでは?
塗り残す方が、塗りつぶすより困難なのではないだろうかと思った。それほどまでに細いペンで描いた線で画面は覆い尽くされている。ペン画と言うと、通常黒インクをイメージするが、池田学作品はカラーインクを使用しているので、色とりどり。紅葉から桃、桜?に至るまで多色で空想の世界を描ききっている、まさに池田風九龍城であった。
細かに見て行くと、サーフィンしてる人がいたり、滝に、ゼロ戦、モチーフは大きさや筆法は全く異なるが三瀬さんぽい。ただ、三瀬さんのようなカオス感はなく、これだけ沢山のモチーフを1枚におさめきった所が凄い。下描きなしで書き進めるとプロフィールにあったが、一つとして迷いがないのか。迷った所は線で潰されているのか、それさえ鑑賞者には分からない。

≪領域≫2004年
ダイビングで見た海中風景そのもの。海が懐かしくなってしまった。しばらく潜ってないなぁ。。。

・鴻池朋子
この方もミヅマ扱の作家さん。そして、来月から新宿の東京オペラシティアートギャラリーで個展が予定されている。今年話題の作家さん。
立体、平面、映像と表現手法が異なる3作品が展示されていた。立体が一番良かった。
≪惑星はしばらく雪に覆われる≫2006年
ガラスの破片とジルコニア?らしきもので制作された狼。ちょっと期待していたのとは違った。尻尾の先についていた小さな赤のてんとうむしに気付いて、面白くなった。

映像≪mimio-Odyssey≫は、悪くはないけれど、面白いかと言われると・・・かな。

・池田光弘
この方の絵画は見たことがあるかもしれない。でも強く残っていないので未見扱いにする。
何だか後に残る不思議な世界観を油彩で展開。2点出品されていたが、いずれもタイトルなし。SHUGOARTS扱いの作家さん。ギャラリーには何度か行っているのでやはり1度は見ているか?
ちょっと追っかけてみたい。

・村山留里子
現在、山本現代で個展開催中。そして、こちらも来月開催予定の東京都庭園美術館の次回展覧会「ステッチ・バイ・ステッチ -針と糸で描くわたし-」に参加予定。
作品は本当に今回初めて拝見した。服飾系アートである。
最初はド派手~と思って眺めていたが、≪ガラス亡霊夫人≫2006年でうっと来た。気持ち悪くなったのではなく、「あ、良いかも~」的感動です。前述の鴻池作品とは違うガラス使用の作品。
新作が楽しみである。

・工藤麻紀子
もわもわっとした線。お絵描き風といったら失礼かな。好みではない。

・三宅信太郎
この方も見たことあるような、ないような。
≪夢工場の逆襲への新たなる挑戦≫2002年
巨大な等身大人形4体他。しかし、これはあまり感心しなかったので、また忘れてしまうかもしれない。

・Mr.
どうも村上隆のもとで修業したというカイカイキキ所属作家。名前だけは何度かという典型。やはり、この手の作品は苦手。

<既に作品を何度か拝見している作家編>
・青山悟
赤坂以来2度目の出会い。
≪校庭(西)≫≪校庭(東)≫いずれも2004年≪Ring≫2005年、以上3点出展。刺繍が上手い人は大勢いるかもしれない。でもこの作品は手芸って言わないよね、やはり。手芸とアートの境界って何だろう?と考えてしまった。

・秋山さやか
やっぱり好きです、秋山さんの作品。現在Higureで開催されている個展の作品は大きいものですが、こちらの展示作品はちんまりしていた。その分展示作品数は多い。
ベルリンのあるくシリーズと近作の上野恩賜公園編を比較すると、やはり変化の足跡がよく分かる。
この後、Higureに完成品を見に行きたかったけれど8時を過ぎたので、今夜は断念。

・伊藤存
≪よだれのきらめき≫2001年
こんなに大きい作品もあるのね~。先日タカ・イシイ・ギャラリーで個展「四月バカ」を見たばかり。
こっちの方が良い。布のピンク色とステッチの色合いがマッチしていて、遠くから見るとだまし絵なの?と思えてくる。

・できやよい
できやよい作品の中でも、珠玉の出来栄えと思われる作品が3つ。何度も見ているのに、過去これら3作は見た記憶がない。今まで見たでき作品の中で、一番良いかも。

・小林孝亘
≪Dog≫1998年
作品集にこの≪Dog≫は掲載されていただろうか?こんなに、鼻の頭が大きいのは見た覚えがない。

・山口晃
山口さんの出品作品はどれも見ごたえがあった。
≪頼朝像図版写し≫1999年*頼朝の朝は作品リストと違う変換になってます。
今回の山口さんの作品中、一番古く10年前のもの。
日本画を油彩で巧妙に写す、ただそれだけなのに、面白いと思った。どうして頼朝像を写そうと思ったのだろう?

≪今様遊楽圖≫2000年
いつもの山口作品らしさ満載。卓球しているおじさんの髪型がリアル。

・高嶺格
≪MUTED SPACE≫2000年
高嶺さんの作品は、平面や立体より、この作品のように場を提供するものが一番良いと思う。私の中では高嶺さんは≪鹿児島エスペラント≫が最高で、今回の15枚の鏡面を使用した≪MUTED SPACE≫はそれに次ぐ。こちらも室内に一人でかなり長い時間いることができたので、作品世界に浸れた。
草間弥生さんの鏡面作品とはまた違った感覚を味わえるのが魅力。
鏡に描かれた文字?絵?が影絵風で楽しめる。

・町田久美
≪マルキ・ド・サド原作/澁澤龍彦訳『淫蕩学校』挿絵≫2003-2005年 21点
これは全く未見。テーマがテーマだけに貸出依頼がないのかも。もしかしたら、二度と見られないかもしれない。町田さんの作品はやはりあの黒々とした線が特徴。線が生きている。

・小川信治
≪WITHOUT YOU-Lady Srated at a Virginal≫2000年
鉛筆画には目黒美でお目にかかっているが、油彩は初めてかも。1枚だけでは、もの足りない。かっぱえびせんみたいに後をひく。

・さわひらき
≪elsewhere≫2003年
懐かしい。久々に見た。それにしても展示スペースがあんまりではないか。通路だもの。
もっと大きな画面で椅子に座ってぼ~っとしつつ鑑賞したかった。残念。

・束芋
≪にっぽんのちっちゃい台所≫2003年
こんなに小さい、本当にちっちゃい台所。ゴキブリまで小さかったが、画面も小さい。おもちゃみたい。
一度に見ることができる人数は2名が限界。映像は前にも見ているけど、台所の中が見たくて、最後まで粘って、引き返して全部観た。満足。

*7月15日まで開催中。

東京国立博物館 6月7日鑑賞記録

前回東洋館に続いて、本館へ向かう。
その前に東洋館第8室では「仏教絵画」でも数点好きな作品が見つかったので、先にそちらを記録しておく。
・四睡図 平石如砥、華国子文・夢堂曇あ賛 元時代 重文
何とものどかな水墨画。虎が寝そべってまどろんでいる。その虎を枕にして男?牧童?も一緒にお昼寝中。良いなぁ。人物も虎もしごくかわいい。朝鮮の民画を思い出す。

・観音図冊 明時代
観音の様々な様子を28もの図画で描いたひとつの巻物。紺地に金泥で描かれた線が美しい。観音も申し分なく美しい。欲しい。

・五百羅漢図巻 明~清時代
今回は十六羅漢図<第六尊者>北宋時代(国宝)や南宋時代の十六羅漢図4点(重文)がメインだったと思う。もちろん古きものの価値は認めるが好きかどうかは別。北宋時代の国宝羅漢図はやはり相当傷みが激しく、描かれているものが判然としない。
ところが、この五百羅漢図は下絵なのか黒単色で描かれているが、マンガチックでもある、煙から龍が飛び出していたり、五百羅漢の姿は神々しいというより、むしろ庶民的で親しみやすい。


さて、本題に戻る。
今回の本館平常展示の様子は「はろるど・わーど」さんが素晴らしい画像と共に案内されているので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
後追いになりますが、ここではマイセレクションでお気に入りを数点ご紹介。

展示室単位で考えると今回のベストは7室の屏風と襖絵 ―安土桃山・江戸が全部当たりだった。
この7室は今回と同じく3点ほどの屏風や襖絵が展示されているが、その全てが素晴らしい!好き!というようなことはめったとない。1点、2点目玉があればという印象を持っていたが今回は違う。

・雨宿り図屏風  英一蝶筆  江戸時代
この一蝶の屏風は6月に相応しい画題。雨の様子や人物描写が情緒あり、じっと見ていたくなる。

・ 厳島遊楽図屏風 筆者不詳  江戸時代 17世紀
舟木本洛中洛外図屏風に似る所があると解説にあったが、これは面白い。もうことこまかに見ていたら軽く15分以上経過して、閉館近くなっていたので慌てた。
鴨や人々の遊びの様子、鹿も登場。見どころ満載なうえに、絵もなかなか。

・歌舞伎図屏風 菱川師宣筆  江戸時代 17世紀
最後を飾るのは菱川師宣。この前日に千葉市美で菱川師宣の浮世絵に魅せられていた所だったので、桃山最後の雰囲気を屏風絵で堪能。
毎度気になるのは、女性陣の髪型や着物のあでやかさ。この粋な感じが桃山なんだよな~とやはり桃山から江戸に入る頃の屏風絵は昨年のたばこと塩の博物館「近世初期風俗画 躍動と快楽」以来すっかり気に入っている。

他には、
・宇治蛍狩図  酒井抱一筆
この作品、琳派展にも出ていなかったはず。こんな隠し玉を出すあたりが心憎い。青々とした背景と小さな蛍が映える。

・竹図 池大雅筆
大雅の小さめの水墨作品。さりげないけれど、上手い。

探幽の山水図も出ていたようだが、どういうわけかあまり記憶にに残っていないのは、その前に見た7室の屏風絵で頭が朦朧としていたせいかもしれない。

最後1階に戻り近代美術コーナーへ。
・焔(ほのお)  上村松園筆 大正時代
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遠くからでもその妖気がガラスケースからはみ出している!
怖いけど美しい。源氏物語六条御息所の生霊を描く。着物に描かれた蜘蛛の巣が怨念を象徴している。愛情が強すぎるとクモの巣になっちゃうの?
怖いけど美しいというのもなんだか悲しい。
下絵しか見たことがなかったけど、本作を見られて大満足。
「焔」は今週日曜6/14までの展示です。18室をお見逃しなく!

*東洋館の展示は終了しています。特に記載のない作品は7/12まで展示。

「特集陳列 顔真卿(がんしんけい)とその周辺」 東京国立博物館 東洋館

こちらのブログでも大きく取り上げられましたが、6/7(日)を最後に、東博の東洋館は耐震工事のため長期休館に入りました。何でも約3年もの期間、休館するそうで場合によっては延長もあり?!
京博の平常展示館も建て替え閉鎖中だし、これ以上楽しみを奪わないで~と叫びたい気分。

というわけで、日曜には東洋館にしばしのお別れを告げて来た。
そして、このところもっとも楽しみにしている中国書画が展示されている第8室にたどり着いた時、感無量となった。
理由は「特集陳列 顔真卿(がんしんけい)とその周辺」が休館の餞のように壮大な展示がされていたから。
以前自身の記事でもご紹介させていただが、「マンガ書の歴史【殷~唐】編」を読み終えたばかり。最後の方に登場した顔真卿の書の名品は、近頃一層物忘れが激しくなった私ですら記憶に残っていた。

展示されていたのは、本で紹介されていたものばかり。
作品リストはこちら

しかし、本と違ってサイズは縮小されていない!これか~という感じで、どんどん見て行く。
全部良かったけれど、中でも印象に残ったのは以下。
・千福寺多宝塔碑 顔真卿筆 唐時代・天宝11年(752) 高島菊次郎氏寄贈
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・祭姪文稿 顔真卿筆 唐時代・乾元元年(758) 高島菊次郎氏寄贈
・争坐位稿 顔真卿筆 唐時代・広徳2年(764) 高島菊次郎氏寄贈
・魯公三表 顔真卿筆 唐時代・至徳2年(757) 
・郭氏家廟碑 顔真卿筆 唐時代・広徳2年(764) 市河三鼎氏寄贈
・顔氏家廟碑 顔真卿筆 唐時代・建中元年(780)
・戯鴻堂法帖(鶺鴒こう) 玄宗筆 唐時代・開元14年 安藤太郎氏

特に、争坐位稿は、元々宦官にへつらい、公式行事の席次をまげたことに対し激しく抗議した内容。怒りが目に見えるような筆の乱れがあり、当時の顔真卿の心持が伺われて大変興味深かった。

顔氏家廟碑は、顔家一族の官歴と業績を記したものだが、その大きさに目を見張った。
天井から床まであろうかという碑である。
彫る方も大変だったろう。筆法がまだまだ良く分からないのが残念だけれど、書の歴史によれば「蚕頭燕尾」などの特徴が表れているのだそう。
蚕頭燕尾(さんとうえんび)とは、横画の起筆、収筆、あるいは縦画の起筆の形の丸さが蚕(芋虫状)の頭のようであること、はねやはらいが燕の尾のように二つに裂けた形状になっていることによるらしい。

私が通っていた高校では音楽や美術は1クラスずつしかなく、後の残り8クラスは全て書道が必修科目となっていた。そこで習ったものとして、唯一覚えているのが顔真卿その人の書。
彼の楷書は現在も手本として学ばれているそうだが、だから高校の授業で教えられたのか~と20年以上も経過して知った次第。

これだけ集めて見られるなんて、本家本元の中国、台湾でも難しいと思う。
東洋館さまさまでした。再開を心待ちにしています。

*展示は終了しています。

西野達 「バレたらどうする」 アラタニウラノ

新富町のARATANIURANOで開催中の西野達 「バレたらどうする」に行って来た。
この展覧会方々のブログで話題になっている。

西野達(にしのたつ)はドイツを拠点に、世界中の公共空間で大型プロジェクトを行っている。
案内ハガキによれば、「笑い・暴力・セクシー」がコンセプトだそうだが、過去の作品からそのいずれも感じたことがないのは、私の感性が低いせいだろうか?
西野達という名前以外に西野達郎、西野竜郎、Tatzu Nishi, Tazro Niscino, Tatsurou Bashiなどと様々な別名があるのでご用心。全部1人のアーティスト。

この方、1960年名古屋市生まれ。同郷ですな。
ちょっと古いですが、ご本人のインタビュー記事とこれまでの作品はこちら<log osakawebmagazine> に詳しいのでご参照ください。

私自身が、彼の作品を見たのは愛知県美で開催された2006年8月の「愉しき家」展だった。
ダイニングキッチンを展覧会場内に再現。その雑然とした台所の壁を飾っていたのが、愛知県美術館の誇る所蔵作品ピカソ作≪青い肩掛けの女≫であった。
普段常設展の最初の方に堂々と飾られているのだが、この時は注意しないとピカソの絵か、本物がコピーか様々な思惑を呼び起こす所がポイントだった。

それ以後も東京で見かけたと思うが、特段印象に残っていない。
私の好みではないからというのが一番の理由。

前置きが長過ぎ。
さて、今回のアラタニウラノ個展では狭いスペースを有効かつ、目一杯使った意欲作が展示されている。壁から街路灯が突き刺さっていたり(これは本当に壁に穴をあけて通したらしい)、この個展が終わったら、あの街路灯はどうするのだ?そして壁の穴はふさぐのか?

また、驚きかつ理解できなかったのは、部屋の中心にあった天井が落下したかのようなオブジェ。
意味は不明でも大きさと空間を占めている割合は過去のどの作品にも劣らない。

まずは一見の価値ありかと。
アラタニウラノから銀座1丁目はすぐだった。この後ギャラリー小柳とはしごするのも良し。

*6月13日(土)まで開催中。11:00~19:00

「ヨーロッパの工芸とデザイン アール・ヌーヴォーから現代まで」 東京国立近代美術館工芸館

今日は、前回観ることのできなかった東近美の「ヴィデオを待ちながら」展の作品のために再訪。最終日だったが、前回と左程変わらぬ人の入り。
観たかった作品、「事の次第」(これは本当に傑作!)、フランシス・アリスの2本、ロバート・スミッソンの「スパイラル・ジェッティ」を全部通して観たら、それだけで2時間を経過していた。
恐ろしい展覧会である。

本題に戻る。午前中にヴィデオ展を観て、アクアでランチ。その後工芸館へ向かう。
本日は東近美の常設は無料観覧日。よって工芸館も無料だった。
「ヨーロッパの工芸とデザイン」と題した所蔵作品展が行われている。いつもながら丁寧な作品リストが準備されていて、解説も分かりやすく好感が持てる。

以下、展覧会構成と簡単な感想です。
Ⅰ.クリストファー・ドレッサー
これは作家の名前。この人が工業化デザイナーの魁として19世紀後半のイギリスで活躍。
≪植物・虫模様線刻ティーセット≫1879年など、アール・ヌーヴォーのはしりを思わせる。
≪小花模様のティーカップセット≫も愛らしい。ぐっとシャープなクラレット・ジャグなどどこかで見たようなデザインで、これはこのドレッサーのデザインだったのかと学習する。
陶器も手掛けているが、こちらは感心せず。

Ⅱ.アール・ヌーヴォー、アール・デコ、バウハウス
3つまとめて紹介しちゃうというすごい構成。ミュシャのポスターやアアルトの椅子、ピエール・シャローの名は初めて知ったが、この人の家具(チラシ表紙)は好感が持てる。ホテルに置いても良さそう。
ジャン・デュナンの≪栗の木≫1922年の色漆パネルがとても美しかった。デュナンはアール・デコ?
作品が混在していたため、素人には分かりづらかった。
後半はバウハウスからロシア・アヴァンギャルドにつながるようなクローディウ・リノシェ≪飾り皿≫1920年、≪渦巻文飾皿≫1925年、チャーシニクの皿などが展示されていた。

Ⅲ.イギリスの近代陶芸
このコーナーが私にとって今回のハイライトであった。イギリスの近代陶芸と言えば、バーナード・リーチ⇒ルーシー・リー、ハンス・コパーらの作品が展示されていた。
あの21_21デザインサイトでの消化不良なルーシー・リーの展覧会後、やっとま近で作品をじっと見ることができた。感無量。来年の国立新美術館でのルーシー・リーの展覧会チラシが早くも用意されていたが、ハンス・コパー展も今年の9月兵庫陶芸美術館を皮切りに全国を巡回する。

バーナード・リーチでは、≪蛸図大皿≫1925年。
tako

この皿にゆでだこを一匹まるっと置いてみたい。
ハンス・コパーは、土器のような陶器の質感がたまらない。この人は色というより造形と質感で勝負してくるが、ルーシーとはまた違う魅力があって素晴らしい。ぜひ、回顧展も拝見したい。
今回の作品では≪卵形花瓶≫1966年、≪長首扁壺≫1966年、≪キクラデス・フォーム≫1972年など晩年近くの作品が気になった。

ルーシー・リーはガラス製のボタンあり、コーヒーセット、鉢、花瓶と約10点で堪能させてもらった。どれもこれも連れて帰りたくなる器である。
≪ピンク象嵌小鉢≫などの鉢類に特に魅せられた。どれも一つとして同じものはなく、色合いが美しい釉薬研究成果の見事な結実。

Ⅳ.ヨーロッパの現代工芸
ここからは現存するヨーロッパの作家による工芸作品。何だか訳が分からないオブジェが多かったようにも思うが、中でサーラ・カローネの≪花器≫1987年≪皿≫1990年が良かった。
また、ここでは碧南市藤井達吉美術館の人形展で見たアクセル・ルーカスやシルヴィア・ヴァンケの人形に再会。工芸館でも人形展をぜひ開催していただきたいものだ。まだ見ていないお人形が収蔵庫に沢山眠っていそう。
ウヴェホイケンフレルスとユルゲン・ペペルの≪バレリーナ2≫がピンクで愛らしい人形だった。
2人組で人形作り、珍しいのではないか。

*6月28日(日)まで開催中。

「三瀬夏之介 - シナプスの小人」 新宿高島屋美術画廊

mise

新宿高島屋美術画廊で開催中の「三瀬夏之介 - シナプスの小人」を見て来た。
三瀬さんと言えば、佐藤美術館での個展、VOCA展2009、つい先日の練馬区美術館での現代水墨画展と近頃、非常に作品に接する機会が多い。

「もういいかな。」と思ったのだが、やはり気になるので行ってしまった。新宿高島屋美術画廊には今回初めて行ったけど、ギャラリー空間としてはシックで、今回は日本橋高島屋の美術画廊Xより照明はかなり落とし目。

やはり美術館で拝見するのと画廊で拝見する場合の一番の違いは今そこで買うことができる!という誘惑の有無。
美術館ではいくら欲しくてもその場で買うことはできない。

三瀬さんの作品のお値段は見当もつかなかったが、手が出ないほど高いという訳でもなく、むしろ小品やミクストメディアは作家の知名度を考えるとお手頃な気がした。
しかし、この展覧会明後日の8日で終了のせいか、いいなと思う作品には売却済の赤や青の丸いシールが貼られていた。
それでも最後まで悩んだのは≪Landscape≫2004年の作品。
板に釘があちこちから飛び出していて、その上に描画、更にその上にドローイングが描かれた布が貼ってある。デコパージュのようなもの。
まぁ、迷う時はやめた方が良い。

私は三瀬さんの≪J≫シリーズが好きで、今回のベストは二曲一隻?の屏風絵。
これは良かったなぁ。
あと、佐藤美術館でもなかった古美術風表具で表装された水墨画2点。
こんな感じで三瀬さんの水墨画を置くのも面白そう。

≪シナプスの小人≫の小屋、木製作品も各所で良い味を出していた。
他に気になったのは、和紙の使い方。切れ端が毛羽立っているのを上手くいかしている。


三瀬ワールド全開だが、今回はカオスでなく秩序だった小世界。
お財布のひもを緩めて行くと買っちゃうかも。

*6月8日(月)まで開催中。

「日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-」 日本橋高島屋

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日本橋高島屋で開催中の細見美術館開館10周年記念展「日本の美と出会う-琳派・若冲・数寄の心-」を見て来た。

毎度のことながら、会社帰り平日夜に行ったのだけれど、いつもと違っていたのは入場料半額のトワイライトサービスが今回はないこと。これは、誤りでした。18時以後入場ならいつも通りトワイライトサービスあり!再訪予定の方はご利用ください。(09年6月11日修正。謹んでお詫び申し上げます。)しかし、私は幸いにもチケットをさる方に頂戴していたのでそちらを有り難く使わせていただいた。

予想していたより場内は空いていて、これは毎度のことながらゆったりじっくり作品を鑑賞できる。
出品作品は約90点。デパートでやる展覧会、ことに高島屋さんの展覧会は侮ってはいけない。
リストは当然準備されていないが、アートブログ界の大御所「弐代目・青い日記帳」様が全作品タイトルと作家をメモしてアップするという偉業をされていらっしゃるので、そちらをご高覧いただければと存じます。

さて、細見美術館は名古屋に住んでいた時から何度も何度も通っている。細見美術館と言えば、やはり琳派と若冲、そして根来塗コレクションが真っ先に浮かぶ。今回はその琳派や若冲などを中心とした所蔵品展。細見は仏教美術の分野でも素晴らしいものを持っているけれど、今回仏教美術系の作品はひとつもなかった。
元々細見に行くきっかけになったのは若冲で、そのため若冲や琳派がらみの作品は結構見ていたつもりだったけれど、記憶にないものも結構あった。

印象に残った作品は以下。

・俵屋宗達・本阿弥光悦「萩薄下絵和歌書扇面」
・俵屋宗達・本阿弥光悦「忍草下絵和歌色紙『郭公』」
冒頭でいきなり琳派の祖を持って来ました。
宗達・光悦のゴールデンコンビの作品。殊に扇面にはほれぼれします。光悦の書と宗達の絵の絶妙なマッチング。

・渡辺始興「白象図屏風」
今回のマイベストはこの白象図屏風。ん?始興ってこんな絵も描いていたの的な驚きで一杯になった。寸詰まりの白象が妙に可愛い。宗達の杉戸絵を思い出す。真似ちゃったのかな?

・伊藤若冲「踏歌図」
この1枚だけは見た記憶が全くなかった。でも、また忘れてしまうかもしれない。

・池大雅「児島湾真景図」
・中村芳中「初夏山水図」
大雅と次にブレイクしそうな琳派の芳中の風景画。どちらも個性的で面白い。

・「江戸風俗図巻」
1996年の千葉市美開催「珠玉の日本美術-細見コレクションの全貌とボストン、クリーブランド、サックラーの話題作」展図録によれば、同展で山東京伝≪人物図巻≫とされているものと同じ作品。
箱入娘から深川女郎、芸者などなど様々な江戸の男女を描いた風俗図巻である。
肉筆浮世絵風の絵巻。

・「四条河原図巻」
江戸風俗図の向いにあったガラスケースの絵巻はこれだったか?作品名を勘違いしていたらごめんなさい。
あちこちで行われている余興や出し物を絵で見せる。鷲が人間と同じ大きさで描かれていたのには笑った。サイズ無視。

・浮田一「やすらい祭・牛祭図扉風」
何とも味のある作品で、妙に印象に残って何度も見直した。この画家はもう少し追っかけてみたい。

・単庵智伝「梅花小禽図」
・仲安真康「虎渓三笑図」
ここで室町時代の水墨画優品に出会えるとは嬉しい。いずれも重要美術品で、前述の千葉市美図録にも掲載されている。本物を見たのは初めて。眼福。

焼物や根来塗も名品がお出ましになっていた。

・志野茶碗 銘「弁慶」
・志野宝珠形香合
・志野幾何学文銚子
志野焼はあまり私の好みではないのだが、志野の名品!と思わせたものが上記3点。
特に香合はハマグリのような愛らしい形。

タイトルが不明だが、釘隠しと木製の温器が工芸としては素晴らしかった。釘隠しを活かすために外側の木製入れ物を特注している所が泣かせる。

・根来亀甲文瓶子
・根来蓬莱文?瓶子*作品名はきっと違う
根来塗の中でもこの2つがとりわけ好き。室町時代の根来塗は時代を経てここまで枯れた美を醸し出すのか。タイトル不明の瓶子は鶴の絵柄が素敵だった。

細見家三代に亘るコレクション。しかと堪能させていただいた。

*6月15日まで開催中、19時半まで入場必要。最終日のみ5時半までの入場となります。
<巡回先>
JR名古屋タカシマヤ 12/28~2010年1/11
名古屋展も行ったりして・・・。
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