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名和晃平ワークショップ「素材をひらく」作品公開展 京都精華大学情報館

nawa

京都精華大学情報館で開催中の名和晃平ワークショップ「素材をひらく」作品公開展に行って来ました。
そもそも、私がなぜこの作品公開展を知ったのかが、情報ソースがまるで思い出せないのだが、なぜか今回の関西遠征の目的先の一つにノミネートされていた。
私の場合、スケジュールをあまり綿密に立てず、行き当たりばったりなのだが、今回は京都に土曜の10時到着、14時に中之島で待ち合わせがあり、奈良に行くには時間が足りず、さりとて他のギャラリーは早くて11時オープン。
結果、この京都精華大学情報館の名和晃平作品公開展がノミネートされた。

京都精華大学には、地下鉄烏丸線「国際会館駅」で下車し、大学のスクールバスを利用したが、夏休み中の土曜日でスクールバスの本数が少なくちょっと時間をロス。結果的に京都駅から1時間くらい到着に要してしまった。

情報館の1階スタジオには正面玄関とは別に左横の階段を下って、入っていく。段差の激しい土地に立っているので、1階が地下のような感じになっている建物だった。
目指す名和作品は入ってすぐ、左横にあった。
むむ、あの白い塊が今回の作品。

今回の作品の最大のポイントは鑑賞空間にある。
作品が展示されている部屋は防音設備のある部屋で、ドアをしっかりロックすると、それまで聞こえてきたコンピューター音、人々の話し声、ざわめきから全て切り離され、無音空間に自分と名和さんの彫刻(オブジェ)が対峙することになる。

明らかにドアを閉めた後とその前では、作品に対する自身の感度が変化するのが分かった。
より作品との関係が密になる。
否が応でも向き合わざるを得ない状況というのが面白い。

この状態になると、作品を様々な角度から見てみようと思い始める。
今回のオブジェの素材は「発砲スチロール」と「蝋」。

受付されていた学生さん?にお伺いしたら、作品の形態については思うがまま、感じるままに作られていったとのこと。

「蝋」が使われていることなど、外から見ただけではよく分からなかった。近づいて匂いも嗅いでみても良かったかもしれない。
作品表面を蝋で塗っているらしい。

さんざん、作品の形状について「あぁでもない、こうでもない」と自分の中で思考を繰り返し、やがて息苦しさを感じて、部屋を出た。
すると、それまでの日常に戻っていた。

*9月5日(土)まで開催中。
■開館時間:10:00~17:00
■休館日:日、祝日
■会場:京都精華大学情報館1階スタジオ
■入場料:無料
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「堂島リバービエンナーレ2009」 堂島リバーフォーラム 

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大阪・堂島リバーフォーラムを会場に隔年で開催する現代アート祭典第1回「堂島リバービエンナーレ2009」を見て来ました。
いつ来ても感心する大阪の川の流れ。まさに水都大阪の名に相応しい都市だと思っています。

堂島川の川沿いの道もお散歩にもってこいな感じ。何度も堂島近辺には来ていますが、堂島リバーフォーラムという建物を意識したことはありませんでした。

第1回「堂島リバービエンナーレ」のテーマは「リフレクション:アートに見る世界の今」。
今になって、このテーマに納得しました。
本展では南條史生(森美術館館長)がアートディレクターを務めた「シンガポールビエンナーレ」(第1回展2006年、第2回展2008年)の出品作品の中から、政治的、社会的、文化的な問題提起を行う選りすぐった作品26点を紹介します。
「世界の今」をリフレクトする現代アートを基軸に、アートを通して、私たちの生き方について改めて考える機会となればというのが主催者側の意図した所です。

参加アーティストは以下の面々。
会田 誠(日本)、アルフレド&イサベル・アキリザン(フィリピン)、アクタン・アブディカリコフ(キルギス)、ジェーン・アレキサンダー(南アフリカ)、イーラン・イー(マレーシア)、トマス・オチョア(エクアドル)、ホセイン・ゴルバ(イラン)、シュー・ビン(中国)、スーハ・ショーマン(パレスチナ)、ツェ・スーメイ(ルクセンブルグ)、レオニド・ティシコフ(ロシア)、ドリック・ピクチャー・ライブラリー(バングラディッシュ)、チャーリー・ニジンソン(アルゼンチン)、福田 龍郎(日本)、セルジオ・プレゴ(スペイン)、イサック・ベルビック(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、ツーニェン・ホー(シンガポール)、松蔭 浩之(日本)、ファハド・モシリ&シリン・アリアバディ(イラン)、フリオ・セサール・モラレス(メキシコ)、アイザック・モントーヤ(スペイン)、クレア・ランガン(アイルランド)、ディン・Q・リー(ベトナム)、リー・キーボン(韓国)、クリスティナ・ルーカス(スペイン)、ジョシュア・ヤン(シンガポール) (順不同、五十音順)

映像作品が3分の1以上、特に社会問題、宗教、政治的問題を取り扱った作品が目立ち、これらは個人的にはかなり苦手。
長時間見続けることは厳しかった。
アートで政治的、社会的、文化的問題を問うというのも、無論あっても良いと思うが、あまりにも直接的表現、特に映像や写真作品になると重すぎる。

以下好印象作品です。

・リー・キーボン 「バチェラー 二重の理論」(韓国)
本展マイベスト。至極単純な作品なのに美しく完成されている。思想を忘れてただただ真っ青な水槽に浮遊する1冊の本を眺める。白く羽ばたく鳥のようにも見える、まるで生物のようだ。
この作品をどこかの待ち合わせ場所に置いたら、楽しいと思う。待っている間の時間を飽きさせない。
作品映像はこちらのブログにアップされています。

・レオニド・ディシコフ 「プライベート・ムーン」 (ロシア)
屋外に本物?のプライベート・ムーン(三日月)のオブジェがあり、窓から降りてきた月と男性が暮らす物語を写真にした作品が室内に展示されている。
作家のディシコフはロシアの作家。現実逃避のようにも思えるが、そこまで考えずとも見ているだけでロマンティックでファンタジックな作品だった。

・チャーリー・ニジンソン 「漂流する人々」(アルゼンチン)
映像作品の中ではマイベスト。
3面大型スクリーンで見る広大な氷河(かと最初思った)に立つ人々の姿が様々なシーンで映し出されていく。
氷河かと思いきや背景は塩原であるそうだ。塩原と空の境目のあいまいな世界。地球にこんな風景画あったのか。
スケールの大きさ、映像の美しさは抜群。何か社会問題を反映しているのかもしれないが、鑑賞者に直接的に働きかけないのが良かった。単純に感動できる。
こちらのブログで映像の一部を見ることが出来ます。

・クレア・ランガン 「メタモルフォシス」(アイルランド)
風景中心の映像作品。水墨画を映像化したらこうなるのかなと感じる。アイルランドの風景なのだろうが次の展開が見えない不思議な映像世界だった。

・ジェーン・アレキサンダー 「真理と信義、そして正義」(南アフリカ)
インスタレーションであるが、その言いようのない不穏さと不安さが忘れられない。

・スーハ・ショーマン 「神の御名において止めよ」(パレスチナ)
BGMは大好きなバッハ。しかしそこに流れている映像はあまりに凄まじかった。

全体の印象としては、どこか物足りなかった。映像が多かったという理由だけでなく、強烈にインパクトを残した作品がなかったというのが最大の理由。
敢えて比較すると、映像の展覧会では今年の東近美「ヴィデオを待ちながら」の方が面白かったし、飽きなかった。

*9月6日まで開催中。

「亀高文子とその周辺」 神戸市立小磯記念美術館 はじめての美術館45

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神戸市立小磯記念美術館で開催中の「亀高文子とその周辺」展に行って来ました。

小磯記念美術館に行くのは今回初。するっとKANSAIの2日間パスを購入し奈良から神戸へ向かった。
近鉄線と阪神線が相互乗り入れするようになったので、乗り換えなしで奈良から神戸方面へ向かえるのはとても便利。
目指す美術館は阪神線魚津駅よりポートライナーで2つ目のアイランド北駅からすぐであった。

ここでは小磯良平のアトリエをそのまま移築し、館内から外に出ずアトリエというか自宅に入ることがきる。
ちょうど建物がこの小磯邸を囲む形で円形に作られているようだ。
常設展示室では小磯の初期作品から晩年までの作品が並んでいる。
やはり地元の画家の作品は地元で見るに限るのか、未見作品が多かった。晩年の小磯作品は作風バラつきがあり、絵に対して迷いがあるように感じた。

さて、企画展「亀高文子とその周辺」である。
チラシに掲載されていた作品が、今回この美術館に訪れるきっかけとなってくれた。
展覧会のチラシというのは非常に重要だと思う。
チラシにある作品に惹かれて、過去どれだけの展覧会に行ったことだろう。

本展の概要は以下の通り。美術館HPより引用。
亀高文子(1886~1977)は明治末期の日本洋画界の草創期から活躍し続けた女性画家の先駆者です。
兵庫県美術家連盟の創立に関わり、赤艸社(セキソウシャ)女子絵画研究所開設などの功績によって兵庫県文化賞を受賞しています。
今回の展覧会では、34年ぶりに亀高の作品(39点)を振り返りながら、その家族や関連の深かった画家達の作品も含め、合計98点の作品を紹介します。亀高文子の作品の魅力に触れていただくとともに周辺で彼女に影響を与え、支えた人々の作品に、時代の雰囲気と彼らの優れた人柄を偲んでいただければと考えます。



展覧会は大きく2部構成になっており、展示室2では亀高作品、展示室3では彼女をとりまく画家の作品を展示。
最初の展示室では亀高文子の初期作品から晩年までの作品、関連資料として子供向け雑誌の挿絵なども含め、年代順に展示されていた。人生の転換点となるような大きな出来事については、キャプションに詳しく説明されているので、彼女の数奇な人生が作品に与えた影響や当時の女性画家が如何に成長していったのかを理解することができる。

彼女の作品は戦中戦後でがらりと変わる。
戦前までの作品は子供とりわけ「少女」を描いた作品が非常に多い。ところが、戦後になると「花」を中心とした作品に変わり、子供の絵は全く出てこなくなる。
本人曰く、「描く時、そのときに熱中しているものをモチーフとしているだけ」とのことだが、戦前の少女を描いた作品は、最初の夫であった渡辺与平の影響が大きいのではないかと思うのだがどうだろう。
最初の夫である渡辺与平は、竹久夢二と並ぶ人気挿絵画家であった。3歳下のこの夫と結婚してわずか3年後2人の子供を残して、与平は病死。時に、渡辺与平22歳!

文子の父は商業画家で、芸術家として成功することはなかった。この自身が果たせなかった望みを文子に託し前年4月に開校したばかりの女子美術学校に入学。
その後、渡辺家に出入りしていた小杉未醒の助言を得て、満谷国四郎に師事し、デッサンなどの基礎を中村不折に学ぶことになる。

そして、漸く画家として出発したところで与平と結婚、夫の病死し、2人の子供を抱えて平尾商店広告部に就職、広告や雑誌挿絵の仕事の傍ら、文展等にも出品し続けた。
東洋汽船の船長であった亀高氏と再婚後は、経済的な安定を得、自宅で画塾赤艸社を開設する。
戦中は戦争画を描くことで戦争協力を求められるが、断固断り続け、兵士慰問のための絵を描く。戦後は前述の通り、画風も変化し流れるような線を使った作品《青ぶどう》1956年、色が面となって対象を描くような画法に変わって行く。
この画風の変化こそ、移りゆく女心の現われのようで大変興味深かった。

以下亀高文子の印象に残った作品。
・《食後》 1916年
・《鸚鵡と少女》1920年
・《読書》 1925年
・《童女像》 1934年
・《少女と伝書鳩》 1941年 *モデルは安宅栄一のお手伝いさん。安宅家と亀高家は交流があったらしい。
・《青ぶどう》1956年
・《花》1971年
面白いのは、戦後の花の絵で、同じアネモネやバラの作品でも年代を経るに連れ、どんどん色彩は明るく、線が面に変わっていくこと。
個人的には、戦前の少女を描いた作品群の方が好みだった。

・中山岩太 ポートレイト(亀高文子)
岩太の写真がこんな所で出てくるとは!とても美しい横顔。 

第3展示室
ここからへ文子をとりまく周辺作家の作品を紹介。以下同様に印象に残ったもの。
・渡辺豊洲 《月光》 明治後期
文子の父、豊洲の作品の中で、これが一番良かった。外国人向けの土産として日本の風景を作品としていた。

小杉未醒の作品は、出光美術館、栃木県美所蔵作品のみで、今年の出光美術館開催「小杉放菴」展で見た作品ばかりだったように思うので省略。

・中村不折 《桂樹の井》 1926年 東京国立近代美術館蔵
デッサンなどが多く出ている中、本作だけ突出していた。サブタイトルは「龍宮の婚約」。

満谷国四郎の作品をこれだけ一度に見たのは初めてだろう。彼の回顧展とか開催されないものだろうか。
今回私は満谷作品が結構自分の好みだと知る。
・《鷲羽山》1917年 財団法人両備文化振興財団蔵
・《若草》1922年 個人蔵
・《罌粟の花畑》 けしの花畑と読む。1928年 山陽放送株式会社所蔵
・《朝の身仕舞》 1931年 高子の《梳る少女》の着想になった作品ではないかと言われている。
元々横長の大作だったものを3つに分割し額装した。切らないで欲しかった。

渡辺与平作品。いよいよ最初の夫の作品が登場。亀高の展示になぜ出てこないのか不思議だったが、こっちにあった。彼の作品だけは、文子の作品と一緒に並べて欲しかった。
・《習作》 1910年 個人蔵
・《帯》 1911年 長崎県美術館 文子を描いた作品。温かい色使いが特徴で、どこか文子が描く作品と似ている。
・《自画像》 1911年 個人蔵
この最後の自画像は衝撃的だった。あんまり衝撃的で与平関連資料を見落とした。
何しろその前に展示されていた温かい色使いの作品とうってかわった暗い色で覆われた顔面が強烈。
どう見ても、自身の死期を察知していたとしか考えられない。まさに死顔なのだ。

亀高文子の子供2人も画業に携わり、亀高みよ子と渡辺一郎の作品の展示で終了。

明治から昭和を生き抜いた女性画家の人生をたどった展覧会だった。

*10月18日まで開催中。前期:~9月13日、後期:9/15~ 
展示作品が若干入れ替わり、後期には泉屋博古館分館所蔵の名作が出展されます。

「生誕120年記念 河目悌二展」 刈谷市美術館

刈谷市美術館で開催中の「生誕120年記念 河目悌二展」に行って来ました。

河目悌二は、1889年現在の愛知県刈谷市に生まれ、愛知県二中(現在の県立岡崎高校)を卒業後、1908年に東京美術学校(現東京芸大)西洋学科に入学し、藤島武二、和田三造、黒田清輝らに師事しました。
同校卒業後、軍隊に入るなどしましたが負傷し、絵雑誌『トモダチ』で挿絵の仕事に携わる一方、1920年小林商店(現ライオン株式会社)に入社し広告部図案係に配属されます。
子供向けの口腔衛生普及事業を展開するライオンの広告を精力的に手がける傍ら、絵雑誌『良友』『子供之友』『観察絵本キンダーブック』などに挿絵や表紙絵を発表。二足のわらじで出勤前後に雑誌の仕事をするという多忙な生活を続け活躍。

1937年に小林商店を退社後は、童画家としての活動に集中し戦中、戦後も子供の本の世界に留まり、温かで生活感あふれる画風を展開しました。

本展では、貴重な原画をはじめ初版の雑誌、書籍、写真や資料を含め約200点を展示します。
本邦初公開の学生時代のスケッチ、広告デザイナーとしての仕事を含めた画業をたどり、河目芸術の世界を紹介します。

~展覧会チラシより

私が河目作品を意識したのは今年の春の岡崎市美開催展覧会「あら!先端的ね」であった。
ここで注目した展示作品のひとつに、小林商店(ライオン株式会社)の子供向け口腔衛生広告の数々だった。
本展チラシを見た時、すぐにライオン広告の挿絵!と分かり、この広告を手がけていたのが河目悌二であることを知る。
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展覧会の構成とあわせて感想など。

第1章 東京美術学校に学んで
ここで一番に展示されていたのは、東京美術学校の卒業制作である《自画像》(油彩)1913年。
図録では色などが分かるが、実際の作品はかなり劣化?しているのか黒ずんでしまっていて背景に赤の部分があることなどは分からない。
自画像の顔の目や鼻は茫洋とし、形状がないに等しい。この当時の河目は自身の将来が見えなかったのではなかろうか。そんな印象を受ける。

・《スケッチブック》1910年
現存する河目の最古作品。東京美校時代3年に秋田の男鹿半島へ行った際の水彩スケッチ。
スケッチブックの表紙絵が後の河目を予感させる。

・《眠る少女》 1916年
姪が昼寝をしている間に完成させてしまったという。少女が眠る様子が愛らしい。

・《松図屏風》 1921年
これが驚きの日本画作品。自身の結婚式のため、直前に制作されたもの。油彩画も日本画も上手い人は上手いのだった。

第Ⅱ章 絵雑誌の黄金時代を駆け抜けて
ここからは『良友』『トモダチ』『童話』などの絵雑誌と河目の原画が両方一緒に展示されている。

河目の描く挿絵に登場する子供たちはどの子もみな健康優良児に見える。どこか懐かしい日本の子供向け雑誌の挿絵の象徴のような感じ。
個人的に好きなのは《ちひさな汽車》や《トモチャントフジコサン》(子供之友)の挿絵。
なぜか、河目は先日横須賀美術館で見た、同時期に発刊されていた『コドモノクニ』にはたった1度しか挿絵を提供していない。

こうした絵雑誌以外にも本の装丁も手がけている。
特に現在の講談社との関わりが深かったようで、同社出版の本装丁などが展示されていた。線がシンプルですっきりしているのが、特徴的。

第Ⅲ章 会社員として手がけた広告の仕事
この章ではお目当ての小林商店広告部時代の仕事が各種紹介されている。

・『窓陳列』
小林商店では、販売店の店頭装飾を重視し、各地で「店頭装飾競技会」を開催していた。河目はこの競技会の審査員として優秀作品を選出した。
ここで、当時の優秀作品と思われる店頭装飾の写真が展示されていたが、どれも個性的で非常に興味深い資料。

大正から昭和初期の商業美術は本当に良いもの、見るべきものが多い。
当時の新聞広告、展覧会ブースのデザインなどの河目が手がけた仕事が紹介されている。
そのセンスは童画家だけに留まらないことがよく分かる。

第Ⅳ章 子どもの本の世界に留まって
本章では、特に戦後の河目の童画家としての作品が多く紹介されている。

戦後の作品に共通しているのは色彩の明るさ。
例えば、『観察絵本キンダーブック』の挿絵《たのしいおしょうがつ》では土の色がピンクで、背景の家々の屋根はすみれ色。近い家の屋根は赤や緑や青と多彩な色使いを展開。

どの挿絵を見ても色がきれいだなぁと感心する。

・『講談社の絵本 ニルスの冒険』1954年
この本は学校の図書館で見たような気がする。無論再販本であろうが、挿絵に見覚えがあった。

戦前から戦後まで童画家としての画業を貫き通した河目の作品は常に子どもや動物を見守る優しい視線が感じられた。

本展覧会は入場無料!
この内容で無料ってすばらしい。図録(以下)も1,000円ですが、センスあるデザインで入館料なしを考えれば安いものです。
kawame

通信販売もしています。詳細はこちら

隣接の「佐喜知庵」では生菓子とお抹茶がたった300円。もちろん一服いただきましたが、夏休み期間だったせいか、7歳くらいの愛らしい女の子が、お菓子を運んで来てくれて和みました。

*9月6日(日)まで開催中。

「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち」展 愛知県美術館

先日以下記事でご案内した通り、本日から愛知県美術館で開催されている「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち」展に行って来ました。
http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-761.html何しろ、今日(8月28日)18時半から出展作家全員が集合するという大座談会があり、それを聞きたい一心で会社を午後からお休みさせていただいた(この休みを得るにあたって1週間早朝出勤+残業に励む)。

座談会は先着150名となっていたので、自分としては早目の県美17:15到着。
しかし、EVで座談会会場に向かう人と同乗し、何やら嫌な予感が・・・。案の定、受付で確認したら座談会会場前で整理券を急遽配布することになったとのこと。
うっ、まずい!
早速12階のアートスペースAに向かい、整理券を受け取った。番号は72番。
1時間15分前に来て、ちょうど半分か、良かった~と思いきや、何と何と72番ではなく、172番だというではないか!
えっ、172番!!!それって定員150名を既に超えているってことでは。焦る私。
はるばる東京から会社を休んでまで駆け付けたというのに、まさか聞けないってことはないよね。
すると「係の方から座席数を200に増やしたので大丈夫ですよ。」と言われ、胸をなでおろす。

しかし、整理券番号順に入場するため、17:50に再度会場に戻るよう伝えられた。ってことは鑑賞時間が30分しかないってこと!
再び、11階の愛知県美にとって返してすぐに会場に入る。
詳細は、再訪予定なので今回は割愛するが、見所は以下の通り。

1.櫃田伸也の回顧展にふさわしく、初期作品から本展のために新たに制作された新作および、作品制作にあたっての構想メモなどなどが作品と資料とが一緒展示されていること。

2.櫃田作品と出品作家の作品が並置されている。
これによって、両者の関係や影響などがよく分かる。作家の学生時代を回顧するコメントキャプションもお見逃しなく。

3.展示は全て、奈良美智、杉戸洋、森北伸の3名(特に杉戸洋が中心になったようだ)が考え、通常の学芸員による展示とは一味もふた味も違う空間に仕上がっている。
展示そのものがひとつのインスタレーションと言える。
草などひとつも生えていないのに、原っぱにいるような印象を受けたのは私だけではないだろう。

4.出品作家の愛知県芸術大学時代の作品と新作が展示されていること。
学生時代の作品など、本展を逃すとなかなか見る機会はない筈。
奈良さんの学生時代の男性ヌード&女性ヌード習作などファン必見ではなかろうか。
個人的には小林孝亘の学生時代の作品で潜水艦シリーズでない作品や加藤美佳の「カナリヤ」のエスキス。
渡辺豪の映像作品、設楽知昭の透明壁画などが印象的。

5.企画者3名の作家により、出品者に与えられた課題「櫃田伸也のポートレート」
各作家による櫃田先生像は、本当に面白い。作家たちの個性や先生への思いがよく表れている。


30分で会場を駆け抜けたのだが、時間はとても足りない。常設と併せると1時間半は鑑賞時間を予定した方が良いだろう。

座談会に話を戻す。会場は立ち見客が出るほどの盛況ぶり。学生と思しき人が多く、愛知県芸をはじめとする近隣の芸大学生の聴講姿が目立った。
座談会には木村みちかのみ都合が悪く欠席だっただけ。
愛知県芸准教授の小西信之の司会で座談会は開始された。
以下4セッション+質疑応答による構成。

セッション1:設楽知昭と櫃田伸也の対談

セッション2:第3世代座談会
佐藤克久、安藤正子、加藤美佳、城戸保、小林耕平、渡辺豪

セッション3:第2世代座談会
額田宣彦、古草敦史、杉戸洋、森北伸、登山博文

セッション4:第1世代座談会
奈良美智、加藤英人、小林孝亘、長谷川繁、村瀬恭子

話題は学生時代の思い出や先生との交流が中心で、まさに公開同窓会。
とても楽しいこぼれ話の数々。
全てをご披露できないが、一部印象に残った話を箇条書き。

・加藤美佳の作品を見た時、櫃田は「レオナルド美佳」と名づけた程、そのテクニックに感心した。

・櫃田は特に第1世代作家とは寝食を共にするような深い関わりをもっていた。

・企画者である奈良、杉戸、森北との関係は、杉戸と森北が高校時代に芸大受験のための予備校で一緒で、その時予備校講師をしていたのが奈良であった。
合格発表を3名で一緒に見に行き、2人は見事現役合格。その足で日本画科合格の杉戸と彫刻科の森北はなぜか奈良に連れられ、油絵科の櫃田家へ連れられて行った。
それをきっかけとして以後関係は続く。

・奈良、長谷川、小林、杉戸のラグビー部時代の話題。

・登山の飲むと先生の絵までも批判してしまう癖。

・櫃田クラスは生徒に人気で、希望しても入れない者もいた。

・奈良は直接櫃田が担任であったわけではないが、気付けば一番櫃田家への滞在時間が長い人物になっていた。先生が大好きな様子が傍から見ていてよく分かった。

などなど、まとめるには困難なだけど、面白いこぼれ話が満載だった。
また、各世代によって大学周囲の環境や当時の状況が変化し、先生との関係も微妙に濃淡があるのを感じた。

追記!
関西のmori様のブログで早速鑑賞記事の詳細がアップされています。ぜひご覧ください。


*10月25日まで開催中。名古屋市美の展示と併せてご鑑賞ください。もちろんお薦めです!

「香川県立東山魁夷せとうち美術館 2009年度 第2期テーマ作品展」 はじめての美術館45

今頃思い出したように四国遠征時に訪れた香川県立東山魁夷せとうち美術館についてのご紹介をしようと思う。
美術館画像は、効果音とともに美術館HP⇒こちらで見ることができます。

その前に、いきなり話題は東山魁夷という日本画科ではなく、建築家の谷口吉生に移る。
谷口吉生の代表的な美術館建築と言えば、東京国立博物館にある「法隆寺宝物館」やニューヨーク近代美術館(MOMA)新館を手がけ、一躍世界にその名を轟かせた。
谷口吉生の父も同じく建築家の谷口吉郎で、現在耐震工事に入った東博の東洋館や東京国立近代美術館の設計を行っている。

まさに日本建築界のサラブレッドなのだった。

この谷口吉生の手がけた美術館のひとつに、私の地元である愛知県の豊田市美術館がある。
豊田市美に一度でも行かれた方はお分かりだと思うが、ここは大変素晴らしい建物&ランドスケープで、私が谷口建築にはまったルーツになった。
その後、「彼の手がけた美術館に全て行ってみようプロジェクト」を自分で勝手に掲げ、各地を回って数年が経過。
残り2館のうちひとつが「香川県立東山魁夷せとうち美術館」なのだった。
ここは過去に一度、琴平へ行った際、立ち寄ろうとしたが、最寄駅からのアクセスが悪く断念。
今回は従兄の車を頼りに、やっとリベンジを果たすことができた。

漸く訪れた東山魁夷せとうち美術館は、他の美術館同様、きりりと整然とし品がある。建築史家の藤森照信氏曰く、「背筋を正さないといけないような感じ」はいつも通りだった。

こちらの美術館の最大の特色は、何といっても瀬戸内の海が臨める抜群の景観だろう。
同じく谷口作品の山形県酒田市にある土門拳記念館などは湖にせり出すような形で建物が作られていたが、あちらは湖。こちらは内海といえど、海である。スケールが違う。

この美術館のラウンジからは、瀬戸内海に浮かぶ東山魁夷の祖父が生まれ育った櫃石島を眺望することができ、カフェが併設されている。
抜群の景色を眺めつつ、最高の建築空間の中でお茶するのは格別だろう(お茶したかったのに、今回はパス)。

さて、肝心の展示作品であるが、こちらは正直ちとさびしかった。
元々、この美術館の所蔵品は平成8年から13年にかけて東山家から寄贈いただいたおよそ270点におよぶ版画作品と香川県が購入した本画作品4点。
ということで、1階展示室では「かいいを読む/絵のなかのものがたり」、2階展示室「小さな扉/夢をつづる、季を唄う」と題して版画作品(リトグラフ・エッチング)中心に展示されていたが、あっという間に見終えてしまった。

展示品の中で一番私の心を捉えたのは、東山の祖父「新吉」の肖像画であった。
東山魁夷の本名は、東山新吉。この祖父である新吉の名にあやかって命名されたもの。

祖父の思い出が詰まった地に、ふさわしい美術館だと思う。
東山魁夷の美術館と言えば、長野県信濃美術館・東山魁夷館も谷口吉生建築であった。

たまには、建物を目的に美術館に訪れるというのも楽しいもの。
空間そのものを楽しめるような美術館こそ、居心地が良い美術館。ここもその一つだと感じた。

なお、こちらで建築専門家による訪問記事が紹介されています。

*第2期テーマ作品展は9月13日まで開催中。
香川県立東山魁夷せとうち美術館
開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜休館。それ以外に展示替えで臨時休館もあるため、HPでご確認ください。

「ブラティスラヴァ世界絵本原画展-歴代グランプリ作家とその仕事」 うらわ美術館

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うらわ美術館で開催中の「ブラティスラヴァ世界絵本原画展-歴代グランプリ作家とその仕事」展へ行って来ました。
この夏は絵本原画展に数多く足を運び、こちらも絵本原画の真打ち的存在の展覧会。

「ブラスティスラヴァ世界絵本原画展」(略称BIB)は2年に一度、スロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで開催される世界最大規模の絵本原画展である。
同種の展覧会にイタリア・ボローニャ国際絵本原画展とともに、世界2大絵本原画展の一つと言われている。

本展では、一昨年に開催された第21回展より、グランプリをはじめとする受賞者11名と、国内審査を経て同展に参加した日本人作家18名の作品と第1回展(1967年)から第20回展(2005年)までの歴代グランプリ作家とその仕事を併せて紹介する。

見どころは、過去40年間のグランプリ受賞作品が一同に会するめったとない機会であること。
プラスティスラヴァ絵本原画展の内容を日本でまとまって見られるようになったのは、わずか10年前第の17回展(1999年)からと、日本での紹介されるようになった歴史は浅い。構成は次の通り。

<展覧会構成>
第1部   BIB2007受賞作品(11作家、原画39点)
第2部   BIB2007日本作家の作品(18作家、原画56点)
第3部   歴代グランプリ受賞作家(20作家、原画56点)

こんなに展示されていたっけと、今振り返ると意外な感じがするのはなぜだろう。

それにしても、世界各国様々な絵本があるものだというのが、見終わって一番の感想。
原画だけでなく、実際の絵本も一緒に展示されているので、観賞者は原画を見た後、逆でも良いが、その絵本を読むことができる。絵本の中の全ての原画を出展している訳ではないので、ストーリーを追いかけるなら、絶対絵本を読んだ方が良い。

気になった作家は、イワン・アレクサンドロフなどのロシア勢、そしてスロヴァキア勢、最後にイラン勢の作品。イランというのは、宗教戒律の厳しい国だと思っているが、絵本は存外自由な発想にあふれていて、文字の意味は分からなくても、絵だけである程度ストーリーは理解できる。
アリ・レザ・ゴルドゥジャンの「穴のあいた靴下」よりは、非常にカラフルで原色使いで目を引いた。

今回もまた、むか~し読んだ絵本と遭遇。
瀬川康男の「ふしぎなたけのこ」(下図)である。この絵本原画は1967年にグランプリを受賞している。
この絵本の絵に記憶がある。そして、やっぱりストーリーの方は思い出せないのであった。
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どちらかと言えば、日本人作家のものより、海外作家の作品の方が個性的、かつお国柄が出ていて面白かった。

*8月30日まで開催中。

「仏教絵画の魅力」 茨城県立歴史館 はじめての美術館43

歴史館を「はじめての美術館」シリーズに加えて良いものか悩ましいが、今更「はじめての美術館・博物館」とするわけにもいかないので、そこはお目こぼしいただきたいと思う。

さて、茨城ツアーの最初に行った天心記念五浦美術館にて、茨城県立歴史館のテーマ展「仏教絵画の魅力」チラシを発見。
じみ~な赤白二色刷りのチラシだったが、紹介されていた図版の一つが雪村筆「欠伸布袋紅白梅図」で目が釘付けに。
裏を返すと、本展の概要が以下の通り書いてあった。
「信仰の対象として仏を描いた狭義の仏画のほか、高僧画、寺院縁起絵巻など、仏教にかかわる絵画を収蔵作品により紹介します。密教絵画を代表する両界曼荼羅や浄土信仰に基づく来迎図を展示するほか、禅宗絵画では本県出身である雪村の作品を紹介します。」

雪村は茨城県出身だったのか!
全く知らなかった。元より仏画は好きだし、雪村と聞けば、すぐに飛んで行きたくる程関心がある画家、はっきり言えば、かなり好き。

しかし、昨日アップした近美の冨田渓仙、そして書いてないが近美は常設展も素晴らしいので、気が付けば16時を過ぎたところだった。
歴史館は閉館17時、入場は16時半まで。仕方がないので、タクシーで駆けつけ、16時25分にたどり着いた。
行ってみたら、これまたびっくり。
何とも広大な敷地で(これは公園なのか?)目指す歴史館がどの建物なのか一瞬迷った。
ちょうどこの日は、歴史館祭りが開催されていて、お祭りが終わりお片づけをされていたので、そこをめがけて走る。
歴史館祭りだったので、入館料大人150円は無料だった。

さて、目指す「仏教絵画の魅力」展は本館1階展示室で開催されている。
展示の様子はこちら(歴史館HP)をご覧ください。
始まって2日目ということで、作品リストがまだできていないとのこと。気になる作品だけ急ぎメモをとった。展示作品数は33点。

・≪両界曼荼羅≫絹本著色  二幅 室町時代後期
室町時代の見事な曼荼羅。状態も良いのに、なぜ重要美術品にも何も指定されていないのだろう?

・≪普賢菩薩・文殊菩薩≫ 紙本墨画

・≪阿弥陀二十五菩薩来迎図≫ 鎌倉時代

・≪弁財天画像≫紙本著色  室町時代 茨城県指定文化財
こちらも錐金紋様がはっきりと残っている、室町時代の仏画優品。同じく状態も良いので県指定だけではもったいない。

・≪大威徳明王図≫ 江戸時代
時代が江戸まで下るが、迫力一杯の大威徳明王で怖い。

・≪星曼荼羅≫ 江戸時代
これって、三井記念の道教の美術で似たようなものが出展されていなかったっけ。明らかに道教の影響を受けた曼荼羅だろう。

さて、いよいよ雪村のおでまし。
・≪釈迦羅漢像≫ 善慶寺 三幅対
左右に普賢と文殊、中央に釈迦を描く。左幅の龍が雪村らしい。

・≪白衣観音図≫
・≪布袋童子図≫
いずれも小品だが、見ているだけで楽しい。

・≪欠伸布袋紅白梅図≫ 三幅対
これと最初の釈迦羅漢像が、やっぱり一番でした。特に、欠伸布袋は必見。

・≪芦葉達磨図≫ 東皐心越筆
禅僧の水墨画。東皐心越は1639年生まれ、1695年没。江戸時代初期に活躍。
太い輪郭線が特徴的。

・≪達磨図≫ 林十江筆
水戸と言えば、林十江を忘れてはならない。まさか出ているとは思っていなかったので、嬉しいサプライズ。しかもこの≪達磨図≫十江らしく、全く達磨に見えないのだった。
いいなぁ、林十江。考えてみれば、私の好きな十江だけでなく立原杏所も水戸の画家だった。


本展は十江で締めくくられるが、この後、更に嬉しい驚きがあった。
歴史館には、一橋徳川家記念室が併設されている。
本館と棟続きで別館になるのか、廊下を進むとやがて一橋徳川家記念室の入口が見えた。
ちょうど、私が行った8月23日まで「狩野派の絵画」を展示していた(クリックすると一部作品の画像を見ることができます)。
何とラッキーな。しかも、水戸徳川家さすがのラインナップ。
狩野探幽が何点も出展されているではないか。

私の好みは≪探幽縮図≫、≪七福神図≫、≪「牟礼(むれ)高松図≫の探幽作品。
他に、狩野安信、狩野常信らの作品もそろっている。
狩野探幽・尚信・安信の三兄弟共作の「三福神図」 一幅も見ごたえあり。

更に、狩野派一派の画家として、来月板橋区美術館で展覧会が始まる英一蝶≪風俗画絵鑑≫まであった。

もう、大満足。

この敷地内には、愛知県の明治村のように野外施設として「旧水海道小学校本館」(県指定文化財)明治14年に建築された洋風校舎、旧水戸農業高等学校本館、旧茂木家住宅(県指定文化財)などが移築されている。

また、水戸に何度も足を運びながらも一度も行っていない偕楽園がすぐそば。
時間をとってゆっくり楽しめたらと思った。水戸市内はレンタサイクルとかあると便利かもしれない。次回探してみよう。

*「仏教絵画の魅力」展は9月27日(日)まで開催中。狩野派絵画は終了しています。

「京都画壇の風雲児-生誕130年記念 冨田渓仙展」 茨城県近代美術館

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茨城県は、関東地方の中でもとりわけ文化力が高い土地柄ではないだろうか。
私見ながら、今回の茨城訪問でいよいよその意を強くした。昨日記事を書いた天心記念五浦美術館のあまりの素晴らしさに驚嘆し、更にここ茨城県近代美術館も毎回充実した企画展で楽しませてくれる。

茨城県近代美術館へは今回が4回目の訪問。前回の安田靫彦展」も良かったが、今回の「冨田渓仙展」は、更にそれを上回る内容であった。

<展覧会の概要> チラシ&美術館HPより
本展では、富田渓仙(1879-1936)の初期から晩 年までの代表作を網羅し,約120点によりその画業と多彩な個性の発露を紹介します。
また、溪仙と交流のあったフランスの詩人で駐日大使も務めたポール・クローデル(1868-1955)の依頼によって描かれ、現在はパリのジョルジュ・ポンピドゥー・センターに所蔵されている「神庫」がこのたび83年ぶりに里帰りするのも、大きなみどころのひとつ。関東では約30年ぶりの開催です。

冨田渓仙は、福岡県に生まれ、京都で四条派の都路華香に師事。写生などを学ぶ一方で、中国などへの旅行により才能が開花。禅僧:仙に系統しつつ、ヨーロッパの新しい美術の影響を受けながら独自の画風を気付いた画家です。

さて、私にとって渓仙作品の印象は薄く、自身のブログでその名前を検索したら、「冨田」は正しいのに、ウ冠の「富田」で作家名を書いていた上、2件しかヒットしないという存在だった。
それが、この展覧会によって、漸く自分の中に渓仙の画風、作品のイメージが形となった気がする。

展覧会構成と印象に残った作品は以下の通り。
なお、前期と後期で場面替え、展示作品の入れ替えが一定数あり。
展示作品リストはこちら。前期のみ、後期のみ展示作品が色分けされているので、とても分かりやすい。こんなところにも美術館の良心が感じられる。

第1章 模索の時代-明治44年(1911)年頃まで-
・≪伎芸天≫ 1906年 清水寺 前期のみ
初期の大作。四条派らしい作風と仏画研究の成果の現れ。

・≪春郊外牧童≫1910年 個人蔵
水に入る牛、緑、構図がとても渓仙らしい。早くも個性を出し始めているのが分かる。

・≪樊籠帖≫1911年頃 宮城県美術館
いわゆる画帖だが、これは楽しい。どんどん次のページをめくりたくなる感じ。南画風。

・≪若菜摘≫ 京都国立近代美術館
中国人女性3人が船に乗っている。先月富山で見た関雪展でも、こんな唐人を描いた作品があったが流行だったのだろうか?

第2章 画風の確立-明治45(1912)年頃から大正9(1920)年頃まで-
 
・≪蘭亭曲水≫ 宮城県美術館

・≪深草石峰寺≫
石峰寺といえば、若冲。小さな羅漢が愛らしい。渓仙風になっている。

・≪沖縄三題≫ 福岡市美術館
四幅対。沖縄に行った際の作品が他にも何点か出展されている。見ていると、東博で特集陳列されている趙之謙を思い出した。

・≪十二か月≫1917年 福岡県立美術館
にじみやぼかし、技術が活かされ、各月それぞれ見どころあり。十二幅のうち、五幅と六幅で入れ替え。

・≪愛宕暮雪・浜町夕照≫ 1919年 京都国立近代美術館 前期のみ
六曲一双屏風。右が愛宕、左が夕暮れの浜町。いずれも良いが、個人的には右隻好み。

・≪長江鵜船≫ 1919年頃 茨城県近代美術館
同じく六曲一双屏風。こちらはガラスケースなしで近くで見られるのが素晴らしい。スペースの問題?それともファンサービス?

他にチラシに採用されている高島屋史料館蔵の≪風神・雷神≫も展示されていた。

第3章 詩情の酵化 -大正10(1921)年頃から昭和5(1930)年頃まで-

・≪前赤壁図≫1921頃 滋賀県立近代美術館 前期のみ

・≪春日野≫ 1923年 個人蔵
奈良の鹿を渓仙風にするとこうなるんだな。工夫された構図。

・≪麒麟・鳳凰≫ 1924年 櫛田神社
必見の大作。ダイナミックで圧倒される。

・≪蘭亭曲水≫1926年 個人蔵 前期のみ
京近美の≪蓬莱仙境図≫と隣り合わせで権を競っている。色彩のあでやかさがとにかく美しい。
小品だが、私はこちらの方が好み。

・≪神庫≫1926年 ポンピドゥーセンター
見どころにあった83年ぶり里帰り作品。次はもう見られないかもしれない。

・≪奈良の藤≫ 個人蔵
日本画とフランス語の詩が一つの画面で融合しているが、ちっとも違和感を感じさせないところが凄い。日本画とフラ語って合うのかもしれない。
ポール・クローデルの詩との共作は他に数点あり、いずれも良かった。

・≪紙漉き≫ 1928年 東京国立近代美術館 前期のみ
・≪淀城≫ 1931年 西宮市大谷記念美術館 前期のみ

第4章 さらなる洗練 -昭和6年(1931)年頃から昭和11年(1936)年まで-

・≪枝の鶯≫1931年 個人蔵 前期のみ

・≪万葉春秋≫ 1936年 京都国立近代美術館
二曲二双の見事な屏風。ひたすらに美しい。

・≪伝書鳩≫ 京都市美術館 前期のみ
二曲一双屏風。こちらは余白の美。シンプルな画面構成によって、却って想像力が膨らむ。

絶筆作≪嵐峡雨罷≫も出展されていたが、なぜか最後ではなく途中にあった。
会場は十分広いと思うが、作品がそれ以上に大きく数多いため、作品リスト通りに展示されていなかた。恐らくメイン会場は次の巡回先である福岡市美なのだと思う。

後期も続々と名品が出てくるので、これは再訪決定。他の作品もどうしてもこの目で見たい。

*前期:8月30日(日)まで
 後期:9月1日(火)~9月23日(水・祝)まで開催中。
 本展は、茨城県美術館の後、福岡市美術館にのみ巡回します。

「大正ロマン 昭和モダン 大衆芸術の時代展~武久夢二から中原淳一まで」 茨城県天心記念五浦美術館 はじめての美術館42

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久しぶりの「はじめての美術館」シリーズ。本当は相当先月行っているのですが、全く記事が追いつかない。
今回は、この企画展のために「ついに行くぞ!」と決心した茨城県天心記念五浦(いづら)美術館へ行った。
どうやら、こちらの美術館では過去にも高畠華宵の企画展を行っていたり、大正・昭和の大衆芸術について紹介されている様子。

そして、今回の企画展は凄かった。
大正、昭和の大衆芸術の様々ん担い手による挿絵や原画、肉筆画、版画、雑誌、楽譜、双六絵、羽子板絵、装丁本など、多種多様な作品を何と248点!一堂に展示している。展示品は浮世絵コレクター・研究者として名高い中右瑛氏の所蔵品。同氏は浮世絵だけでなく、こういった大衆芸術作品の数々もコレクションされていらっしゃるとは恐れ入る。
どれもコレクターのフィルターを通しているせいか、上質なものが多い。

展覧会の構成は以下の通り。
Ⅰ.大衆芸術のパイオニア、竹久夢二
このコーナーの夢二作品だけでも、68点。
夢二は弥生美術館隣の竹久夢二美術館でも毎回作品を拝見しているが、広々とした美しい空間で見ると作品も映える。
何度見ても、『セノオ楽譜』表紙シリーズは最高だ。アールヌーヴォー風で、こんな楽譜があってよいのだろうか。譜面より表紙目的で買ってしまいそう。
『婦人グラフ』の挿絵や表紙絵もまたたまりませんね。
私は夢二の装丁や挿絵に魅力を一番感じるので、『東京九段つるや画房出版の絵葉書」(20枚)、木版画『港屋絵草紙展』『治兵衛』など版画作品にも才能が随所に表れていた。
なんというか、モダンで描く女性のはかなげな様子がたまらないのですね。

Ⅱ.大正ロマン・昭和モダンの旗手たち
・高畠華宵 35点
やはり、この人が出てくる。なんとも妖艶な女性像、人物像、何度見ても三輪明宏を思い出すのは私だけだろうか。
その中に『シューベルト』絹本がちょっと異質な感じで、これだけは別格な感じだった。

・橘 小夢
この方は初めて知った。遊行七恵さんは、大変お詳しいのできっとご存知に違いない。この小夢は版画が素晴らしかった。『刺青』1923年、『水魔』1932年などのあの妖しい魅力は何だろう。
ビアズリーの影響を受けていると解説にあったが、なるほど頷ける。
しかし、『唐人お吉』などちょっと作風の違う木版もあり、私は前者の作品が好き。9点しかなかったので、もう少しまとめて見てみたい作家だ。

・蕗谷虹児 18点
『震災画報』1923年が一番印象的。震災の様子を絵葉書16枚で制作している。

・松本かつぢ 5点

・中原淳一 27点
今年、銀座松屋の展覧会を見たばかりだが、なぜかこちらの展示の方が良かった。
読売新聞の連載小説北条誠著「緑はるかに」の挿絵原画は珍品。
インクの挿絵は線の美しさが出ている。版画『娘十二ヶ月』1月~12月の木版シリーズが気に入っていたのに、なぜか図録に掲載されていないと今知って茫然とする。
なぜ、掲載されていないのか?

Ⅲ.抒情絵画の諸相
-風俗画の流れ
ここでは、鏑木清方、伊藤小坡、など大正昭和期の美人画を展示。
ベストは、伊藤晴雨『浴後の涼み』。島成園『夏の女』、小早川清『水谷八重子像』『唐人お吉』。
特に伊藤晴雨の作品はなかなかお目にかかれないので貴重。

-新版画
間もなく江戸東京博物館で新版画の企画展が開催されるが、その予習ができた。
・高橋弘明 「ヌード」 1928年
・北野恒富 「鷺娘」 1925年 同じタイトルで前章に肉筆画あり。怖いです。
・瀧秋方 「近代麗人画譜・港街の日本娘」1936年
瀧については、今回初めて知った。江戸東京でも登場するだろうか。1枚だけだったのが残念。

-創作版画
戸張狐雁、山本鼎、音地孝四郎が各1点。しかし、これを私は見落としたようだ。狐雁は好きなのに。

-様々な現れ
こっちに目が吸い寄せられたのが、見落としの理由。
何しろ青木繁(画)山本鼎(木口木版)のレアもの「鏽斧」(さびおの)が出ていたのだ。
更に続く、今回のベストと言って良いだろう。
川西英の一連の肉筆画作品。
川西の木版は千葉市美の展覧会でかつて何点か見ているが紙本彩色は初めて。
特にすごいのは「サロメ」布に金彩で描いている。ウィーン派かと思った。
こんなすごい作品を昭和初期に作るのだから恐れ入る。
団扇絵の美人画の数々も色鮮やかでこちらも、お気に入り。

Ⅳ挿絵画家の活躍
ここで、大好きな小村雪岱登場!僅か5点でも見られるだけで嬉しい。多分前に見たことがあるような作品もあったが「夜雨」(木版)1938年や「忠臣蔵」の挿絵が良かった。

・岩田専太郎 11点
弥生美術館の樺島勝一か誰かの展覧会でこの人の名を見た記憶がある。
挿絵画家として当代きっての人気だった。
司馬遼太郎の「竜馬がいく」の産経新聞連載時の挿絵原画が泣かせる。

・伊藤幾久造
このあたりになると、もはや分からず。
「曼荼羅富士」という名古屋新聞の連載小説の挿絵を手がけていたらしい。

・志村立美
丹下左善の装丁が良かった。

Ⅴ 楽譜、絵葉書など
ここで、岡本一平、宇崎純一、小林かいちなどが登場。
やはり、かいちの絵葉書(私はこれが一番好き)を再び見ることができた。
他にひろしという作家の楽譜絵、夢二のパクリ?と思う程似ていたなど珍品も出ていた。
太宰敦夫の「近代女性美」1932年絵葉書16枚のモダンさが光っていた。

これだけ広い分野を一気に見せていただいて、弥生美術館の過去に見ていない展覧会の総括ができたような気がする。
図録はオールカラーで1800円。年表付き、作家紹介付きでこの時代の大衆芸術を網羅している1冊として愛蔵したい。


この後、岡倉天心記念室でゆかりの品や、下村観山、大観の書状、絵画など史料を拝見。
それにしてもこの美術館の立派さには驚いた。
わずか10年前に建てられたそうだが、シックな木目調の広々した空間は大変落ち着ける。先日行った六本木の某美術館とはえらい違いだ。
しかも、目の前は太平洋という絶景。ここなら1日いても飽きそうにない。
大観、春草、武山、観山らはこの海を見ながら日々日本画に取り組んでいたのかと思いを馳せた。

ぜひ、再訪したいお気に入りの美術館になった。

*8月30日(日)まで開催中。本展の巡回はありません。

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」 その2

7月に続いて、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」に日帰りで行って来た。
前回の記事もろくすっぽ書いていないのに、その2とはおこがましいが見た作品と感想を。
参考:初回訪問記録http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-727.html

今日もツーデーパスを購入(明日は茨城へ行く)し、越後湯沢で1日:2000円駅レンタカーを借りて出発。事前にいろいろ考えたが、一番見たいものと最後は温泉(妻有に行くと無性に温泉に入りたくなる!)と考えて、どのルートを取るか決めた。

ルートは十日町エリア最北からスタートすることに。越後湯沢から関越の六日町ICで降りたら、あっという間に十日町だった。ほくほく線より、越後湯沢から車の方が早いような気がする。
で、最北から十日町エリアを南下し、最後は中里エリアの清津峡小出温泉湯処「よーへり」でしめくくり高速使わず、そのまま越後湯沢に戻った。基本的には、廃校プロジェクト中心に見て回った。

以下作品見た順。数字は作品番号(大地の芸術祭の作品には全て番号が振られている)。

<十日町エリア>
・9 「旧東下組小学校」
ここに到着したのは、9:40頃。10時から開始なので、手前の神明水辺公園作品を散策すれば良かったが車を止めるのが面倒でスルー。
計7名のアーティストの作品が展開されている。山崎龍一の陶人形と小沢敦志の鉄製品彫刻が良い。観賞者参加型の「地球と握手」にも参加して、しっかり土を握って来た。

・8 古郡弘 「胞衣 みしゃぐち」
これは今日見た中ではベストだった。やはり、この人の作品、作品という言葉は相応しくないが、神々しさがある。時間があれば、中でこもっていたい。
土壁の中に入った時のひんやり感を忘れられない。

・7 「うぶすなの家」
やきものの「美」と「食」を楽しめる古民家。混雑しているとmixy情報で知り、11時のランチ開始前には到着するようにした。「山菜ぎょうざ定食」(1000円)を頼んだが、やっぱりお米が美味しいしお漬物もお野菜も美味しかった。
やきもの作品は主に2階に展示されているが、1階にあるお風呂の風呂釜も作品なのでお見逃しなく。鈴木五郎氏の絵付け抹茶椀は斬新で、素晴らしかった。
市川良夫の「練玉のルイーズ」は圧巻。恵美加子の「ふくろ姦し」も面白い。

・10 「旧上新田公民館」
カン・アイランの「天の光、知の光-Ⅱ」が予想以上に良かった。田中文男(木造民家研究の第一人者)文庫の書棚にある本を発光ダイオードで七色に変化させる。
こんな図書館で本を読みたい。

・13 「旧枯木又分校」
今まで行った中で最高に遠く、しかも道がうねうねで、到着した時には激しい頭痛。「枯木又プロジェクト」作品も・・・。もう少しインパクトがないと。
ここを後にして、近くの木陰に車を止めて40分程仮眠し復活した。しかし、これほどの山奥にもかつて学校はあったのだという驚きが一番。現在この集落には10軒程しか居住していないとか。

・12 「旧飛渡第二小学校」 向井山朋子 「Wasted」
これは凄い。体育館に1万枚もの絹のキャミソールと思しきものがぶら下がっている。ネト作品ではないが、白い絹に覆われて囲まれている。その中心には果たして何があったか。
最後はちょっと怖かったけれど、彼女の気持ちは分かる気がした。

・17 「旧赤倉小学校」
体調が悪いのでやめようかと思ったが、戻るルートに遠からずであったので結局行くことに。
一番のお目当ては松澤有子の「enishi」。こちらの小学校の体育館は小さいように感じたが、その空間を目いっぱいに使用して、巨大な蜘蛛の巣、自転車などなど待ち針でオブジェを作成。闇にキラリと輝く針の光はなかなかのもの。

・16 浅見和司 「あかくらん」
17番に行く途中、車から見える。赤倉集落の案内サイン。

・38 「福武ハウス2009」 旧名ケ山小学校
清澄白川や銀座など東京のメジャーなギャラリーなどが妻有に移動。
良かったのは、クムサンギャラリーのゴ・ギョンホ「反射-窓」、ケンジタキギャラリーの渡辺英司「蝶瞰図」。
ギャラリー小柳のヘレン・ファン・ミーネの写真は新鮮だった。展示方法も考えてある。

・36 倉谷拓朴 「名ケ山写真館」
3階の展示が面白かった。実際に希望すれば写真を撮影してもらえるが、フィルムは残りわずかとなっていた。

<中里エリア>
・127 クリス・マシューズ 「中里かかしの庭」
かわいいらしい、かかしだなと思ったら、やはり作品だった。デザイン性が高いので遠くからでも目立つ。

・130 富山妙子 「アジアを抱いて-富山妙子の全仕事展1950~2009」 旧清津峡小学校
これは、非常に良かった。都内の美術館で回顧展として開催して良いほどの内容。しかも版画、油彩はじめ作品の質は高い。もっとゆっくり観賞したかったが、それでも満足度は本日のベスト2。
1人でも多くの方に見ていただきたい。
会場となっている旧清津峡小学校の新しさに、驚いた。今年の3月31日に廃校したばかりとのこと。
元々、開校してそれほど経過していないそうで、この建物の行く末が気になる。

・131 「うつすいえ」
東京電機大学山本空間デザイン研究室+共立女子大学堀ゼミ
天井から降り注ぐ光ファイバー光が天の川のような美しさ。でもちょっと物足りなかった。

・132 山本浩二 「清津峡トンネル美術館」
清津峡は、その自然そのものが既に作品と言って良いような景観を生み出している。
ここの気持ちよさと言ったらもう。夕暮れ時に到着したが、渓谷の音、風、全てが気持ち良かった。
その清津峡トンネル美術館には、越後妻有の樹木で彫刻を作り炭化させた作品が並んでいる。

以上で終了。

トンネル美術館すぐの公営温泉「湯処よーへり」の温泉は源泉かけ流し。先日松代でお会いした市川在住のお嬢さんの方にオススメ温泉を教えていただいたが、そこの温泉が掲載されていたサイトで★4つ付いていた上に、作品近く、帰り道ということで今回はここに決定。
泉質は本格的。ちょっといおうの匂いがしますが、お肌がすべすべに、湯加減もちょうど良く、気持ち良かった~♡
ただし、こちらは貸しタオル、石鹸・シャンプー類など有りませんのでご注意ください。
ドライヤーは一つだけありました。
小さな温泉なので、混雑してなかったです。

行くたびに思うのだけれど、妻有の自然、里山に癒されます。また行きたくなるのは、アートを見たいという気持ちも無論ありますが、むしろ温泉や新鮮な野菜料理、自然が恋しくなるから。

10月3日~11月23日まで大地の芸術祭秋版も開催され、今回のパスポートも有効です。
秋に向けて、しっかり保存しておかねば。
明日9時からはNHK「日曜美術館」は「大地の芸術祭2009」特集が放映されますので、これから行かれる方も行った方もお見逃しなく。

*9月13日まで開催中。 

「メキシコ20世紀絵画展」 世田谷美術館

メキシコ

世田谷美術館で開催中の「メキシコ20世紀絵画展」に行って来ました。

今年が日本とメキシコ交流400周年だとは知らなかった。
なぜか、本展覧会のチラシには詳細が記載されていないが、「メキシコ20世紀絵画展」ジュニアガイドに最初の交流きっかけが書かれていたので以下に引用する。
江戸時代が始まったばかりの頃、フィリピンからメキシコへ向かう船が嵐で遭難し、千葉県に漂着。
地元の海女や漁師たちの活躍により、乗組員317名が救助される。それから1年後、彼らは日本人が用意した船で帰国した。今年はこのできごとから数えて400年となる。

「このできごと」というのは漂着したことでなく、日本人が用意した船で帰国した事実を指しているのだろうと思う。

そんな江戸時代からのおつきあいのメキシコであるが、絵画交流となるといささかあやしくなる。
しかし、わが地元愛知県の名古屋市美術館は国内でも珍しい(唯一か?)メキシコ・ルネサンス絵画コレクションが充実している。
きっかけは名古屋市とメキシコ市の姉妹都市提携、そして本展出品作家でもある愛知県瀬戸市出身の北川民次が、メキシコで活躍していたことによる。

何度も訪れている名古屋市美の常設コーナーに行けば、必ずメキシコ絵画に出会うことができる。
個人的にはメキシコ・ルネサンス作家の中では、以前からルフィーノ・タマヨが好きだった。

今回の展覧会では、メキシコ国内各地の美術館、個人が所蔵している約70点の作品で、「近代化への道のり」をテーマに、メキシコの近代絵画の展開を紹介する。

展覧会の構成は次の通り。 章単位の内容は世田谷美術館HPをご覧ください。
第1章 文明の受容-1-1.歴史的事件や当事者など;1-2.愛国心の寓意
第2章 文化の発信-2-1.国内に向けての発信;2-2.国外に向けての発信
第3章 進歩-3-1.社会的側面;3-2.美的/様式的側面

作品リストもいただいたが、このリストは作家単位ごとに作品名が並べられ、展示順になっていない。更に作家の並び順の根拠が分からないので、非常に作品名を探しづらかった。
展覧会構成も伝えたいことが展示にそのまま反映していたかと言えば、素人目にはよく分からなかったのが正直なところ。

ということで、構成は無視して印象に残った作品と感想を。

・ホアキン・クラウセル 
作家の本業は弁護士。アマチュア画家ながら、「水の精と対話できる画家」としてメキシコでは著名だった。水のある風景は実に美しく、黄色が特に印象深い。
水難死したというのも、水がらみで因縁深い。

・サトゥルニノ・エラン 
何と、31歳で夭逝。≪三つの世代≫1916年、≪サン・ミゲル信心会の信者≫1917年≪サン・ルイの男≫1918年などが特に良かった。

・村田簣史雄
クレー風の抽象絵画が2点。いずれも1959年作。こんな画家がいたのかという驚き。

・ディエゴ・リベラ
メキシコ絵画と言えば、リベラは真っ先に浮かんでくる。もちろん、名古屋市美にも彼の作品はいくつかあるが、今回展示の作品は、印象派風のものあり、シュルレアリスムを揶揄したものあり、その時々で作風が変わっている。
こんなに作風を変えていたとは知らなかった。名古屋にある作品はかなり重々しい壁画風の作品で、そのイメージが強すぎた。実際はこれだけ作風を変えられるのだから、器用な人だったのだと思う。
≪使者の日≫1947年、≪字を書く子供≫1944年、≪夜の風景≫1947年。

ディエゴ・リベラと言えば、フリーダ・カーロ。
日本ではリベラよりフリーダ・カーロの知名度の方が高いだろう。これって世界共通なのか?
今回も展覧会冒頭で≪メダリオンをつけた自画像≫(上記チラシ画像)が別格扱いで花のように飾られていた。
でも、私は彼女の作品は苦手。

好きなタマヨの作品は、3点中≪自画像≫1946/1947年が一番良かった。メキシコ国立近代美術館所蔵作品など、なかなか見られる機会もないので、ありがたい。


これら企画展とは別に収蔵品展では利根山光人の展覧会が開催されている。こちらが題して「利根山光人とマヤ・アステカの拓本」。
もう一つのメキシコ展と言ってもよい内容だった。
マヤ・アステカの古代遺跡の拓本群は圧巻の一言に尽きる。
先日京博で拝見したシルクロード文字ではないが、こちらはマヤ・アステカ文明の文字展覧会のようで、神聖文字はまるで絵かデザインかというような印象を受けた。
歴史の一こまに思いを馳せることができる。

*「メキシコ20世紀絵画展」は8月30日(日)まで開催中。
*「利根山j光人とマヤ・アステカの拓本」は9月11日(金)まで開催中。

告知! 愛知県美術館開催 「放課後のはらっぱ」展 大座談会がすごい!

nagoya

来る今月8月28日(金)~10月25日まで愛知県美術館で開催される「放課後のはらっぱ 櫃田伸也(ひつだ・のぶや)とその教え子たち」という企画展が開催されます。

オープニング当日8月28日(金)の18:30~20:30まで『放課後のはらっぱ大座談会』というイベントが同美術館のある愛知芸術文化センター12階/アートスペースAにて行われるのですが、これがすごい!

「展覧会チラシには教え子のアーティスト(出展作家20名)全員が集合するかもしれません!!」と書いてあります。
そうは言っても、全員っていくらなんでも無理でしょうと思いました。
何しろ今回の企画展出展作家のメンバーが素晴らしい!

愛知県立芸術大学絵画科の先生であった櫃田伸也氏はじめ以下の面々。
★アイウエオ順
・安藤正子
・加藤英人
・加藤美佳
・木村みちか
・城戸保
・小林耕平
・小林孝亘
・佐藤克久
・設楽知昭
・杉戸 洋
・登山博文
・奈良美智
・額田宣彦
・長谷川繁
・櫃田珠美
・古草敦史
・村瀬恭子
・森北 伸
・渡辺 豪

愛知県美術館に念のため問い合わせましたが、現在の所チラシ歌い文句の通り、全員参加の予定だそうです。

本展の企画協力に名前が挙がっているのは、奈良美智/杉戸洋/森北 伸の3名。これで、期待しない方が無理というもの。

20名もの座談会が成り立つのか気になる所ですが、とりあえず見たい!!!

なお本展は来年のあいちトリエンナーレのプレ企画として、名古屋市美術館とも共催しています。
名古屋市美では8月22日~10月18日(日)開催。

どんな内容になっているやら、ワクワクします。
愛知県美は巡回展ばかりで、単独企画展は久しぶり。

これまで名古屋を通り過ぎて来られた方もこの期間中であれば、名古屋訪問の価値はあるかもしれません!

まずは、このオープニングの座談会に期待しましょう。

山中俊治ディレクション 「骨」展 21_21DESIGN SIGHT

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5月から始まっていたのに、ぐずぐず行くのを迷っていた「骨」展を見に、21_21DESIGN SIGHTに行って来た。
昨日も乃木坂、今日も乃木坂。しかし昨日はこちらは休館日。
しかも、本日19日18時半より、本展ディレクター山中俊治氏によるギャラリーツアーが開催されると知り、行くなら今日と決めた。

仕事が押して、18時半をちょっと過ぎたけれど、何とか会場に滑り込み。
最初の方は恐らくこの展覧会を開催するにあたってのお話があったのだろうけれど、聞けなかった。
いよいよ山中氏を先頭に作品の解説をお聞きしながら、観賞するという贅沢な状態。
観客は割といて30名強と言ったところだろうか。

今回は標本室と実験室と2つの展示コンセプトで作品が展示されている。
最初に訪れたのは標本室。

湯沢英治氏撮影の動物たちの骨の写真がずらりと並ぶ。
骨というのは、こんなにも美しいものだったか。
山中氏のお話で、「だちょうの足の皆さんが膝だと思っているところが、実はダチョウの踵なんです。だちょうはハイヒールなんですね。」というのが印象的だった。
かかとだから、鳥の膝は反対に曲がっていると思うのだろうが、曲がっているのは踵であって、膝は身体近くにあるのだそうです。

「ダチョウはハイヒール」が頭から離れない。

続いて、椅子の骨組やアーロンチェアの全部品バラバラ展示などがあって、再び写真が。
こちらは、ニック・ヴィーシーの写真。写真は写真でもこちらはX線写真。X線は実物大でしか写せないのだとか。
ダイソンの掃除機、照明器具トロメオなどのX線写真を見るのは不思議。
それにしても、ボーイング777の写真、あれは一体どうやって撮ったの?実物大ではなかったけれど。
何でも何百ものパーツ(写真)を組み合わせていると、山中先生はお話されていたと思うが、よく理解できなかった。恥ずかしくて質問もできず。。。

標本室の最後は時計や義肢、ドラム式洗濯機の部品を展示していた。微細な部品の数々が妙に美しく見えたりする。

次にお楽しみの実験室。
今回は10名の作家によって「骨」をテーマに作品制作を依頼した。

興味深かったのは、山中研究室デザインによるロボット「せんもう」?。
硬質な素材からできているにも関わらず、曲線を描いた触手、そしてくねくねとした動きが特徴的。
手の部分にはたった3つしかモーターを使用していないのだそう。
3つのモーターだけで、どうやったらあの不思議な動きができるのか?非常に面白い。

・前田幸太郎の「骨蜘蛛」。
こちらは、あまりに動かしすぎたせいかギャラリーツアーでなければ実際に動かしてもらえなかった。
「調整中」になっていたのをツアーのために2回動かしてくれた。
やはり、映像で動いているのを見るのより、実際眼の前で動いているのを見る方が臨場感がある。
足の動きの速さは相当なもの。
「骨蜘蛛」は動かすとものすごい速さで走ってしまうので、展示室では4方から糸で固定されている。
宙を走る骨蜘蛛はちょっとかわいそう。
ロボットなのに、動きは本当にリアルだ。

・明和電機 「WAHHA GO GO」 
表情もいいけれど、忘れられないのは「わっはっはっは~」というあの声。機械音とはどこか違う感じ。
歯のむき出し部分がだんだん広がっていく。それにしても全体の形は人間にアコーディオンが挟まったみたいな面白いデザインだ。

・緒方壽人+五十嵐健夫 
動く影を作り出し、モデルに骨を与える映像。
似たような作品が前回の森美術館の展覧会でもあった。
森美術館の作品はどんどん影が増殖していく映像作品だったけれど、こちらは勝手に違う動きを始めたり、骨映像が追加されたりする。
自分で好き勝手動いて、スクリーンに映し出された映像を思う存分楽しむ。

・エルネスト・ネト 「Mientras estamos aqui」
ネトの「骨」をテーマにした作品。いつもと違って、より骨組を明確化して制作されている。
真中にぶらさがる袋には小麦粉。周囲にはお米が入っている。

・THA/中村勇吾 「CRASH」
最初見た時は、時計だって気付かなかった。山中先生の解説でやっと気付いた。
これは面白い。家に小さいヴァージョンのが欲しい。ぜひ、小型化して商品化されないだろうか?
降りてくる4つの数字、その落ち方のスピード、底面に着地した時の破壊の様子。どれをとってもアートである。
山中先生曰く「どれだけ見てても飽きませんね」。同感。

・玉屋庄兵衛+山中俊二 「骨からくり『弓曳き小早船』」
これは素晴らしかった。山中氏のデザイン画が壁に展示されていたが、美しい。
しかし、それにも増して美しかったのは骨からくりの顔である。
からくり人形師の玉屋庄兵衛さんは、何と名古屋在住のからくり師9代目だとか。
そんな伝統工芸家が名古屋にいらっしゃったとは、全く知らず。

このからくり、普段は土曜・日曜の14:00~、16:00~の1日2回のみ動かすのだが、今回はツアーということで特別に山中先生自らからくりを操作し、実際に射的をする様子を実演して下さった。
からくり人形は、湿度、温度など環境の微妙な変化により糸がゆるんだり、木製部分に微妙なズレ等が発生する繊細なもの。
今回も何度か実演してようやく4回目(?)に山中先生の「当ててくれよ」の言葉で見事に的を射た。
思わず全員安堵と感動の拍手が起こる。
当たった瞬間の山中先生の嬉しそうなお顔が忘れられない。

眼のない人形の顔。鼻部分だけ少し高くなっているが、それだけで十分表情を出していた。
首の動き、顔の動き、手の動き、何度見ても実によくできていて、なめらかに動く。

最後に本展の目的「デザイナーとエンジニアの視点を持って活躍する山中俊治からのメッセージ」が映像で流されていた。

山中先生は、本当に熱心に参加者全てに解説をして下さった。お人柄がそれだけで伝わって来た。
心から御礼申し上げます。

「骨」展は、生き物の骨から始まり、身の回りにあるものの仕組みや構造について考えるデザインの展覧会。普段見ることができない車や家具の骨や様々なジャンルの作家による「骨」「骨格」をキーワードにした体験できる作品を展示し、工業製品の機能とかたちとの関係に眼を向け、「未来の骨格」を探ります。~展覧会チラシより抜粋。

●今後のギャラリーツアーの予定
8月22日(土)12:00-13:00  檜垣万里子(LEADING EDGE DESIGN)/展覧会アシスタントディレクター 
8月22日(土)15:00-16:00  畑中元秀(takram design engineering)/参加作家 
8月26日(水)18:30-19:30  山中俊治 /展覧会ディレクター
8月27日(木)18:30-19:30  トラフ建築設計事務所 /会場構成デザイナー 
8月28日(金)18:30-19:30  田中みゆき(21_21 DESIGN SIGHT)/展覧会コーディネーター

*8月30日まで開催中。
どうせ行かれるのであれば、上記ツアーに参加されるとより楽しめること間違いなし!

会場を出たら、ミッドランドスクエアの水花火イベントを見ることができた。こちらも夏にふさわしい水花火。楽しめました。

「光 松本陽子/野口里佳」 国立新美術館

明日(8月19日水曜日)から10月19日まで国立新美術館で開催される「光 松本陽子/野口里佳」展の内覧会に行って来ました。
と言っても、16時開始時間には到底間に合わず、退社時間に即勤務先を出て、新美術館に到着したのは17時半。間に合って良かった。

早速、ご報告をと行きたいところだが、出品作家の松本陽子(絵画)、野口里佳(写真)のことをご存知ない方のためにプロフィールと本展概略をご案内。

<概要>
松本陽子(1936年生まれ)は、1960年頃より抽象絵画の制作を始め、1960年代末に滞在したアメリカ合衆国でアクリリック(アクリル絵具)に出会い、新しい絵画の可能性を認識する。これを機に1980年代から1990年代に、ピンクを主調とした独自の抽象絵画のスタイルを完成させた。近年では、緑の油彩画連作により、新しい境地を開いている。
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松本陽子 《光は荒野のなかに拡散しているⅡ》 1993年、アクリリック/カンヴァス 愛知県美術館蔵

一方、1990年代初めより写真による制作活動を開始した野口里佳(1971生まれ)は、《フジヤマ》(1997-)などの完成度の高い連作により、早くから注目を集める。卓抜なテーマの選択と特有の距離感をたたえた画面は、国際的にも高い評価を受け、活躍を続けている。
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野口里佳 《太陽#23》 2008年、Cプリント

本展では、光をタイトルとして松本作品、約50点、野口作品約90点の近作を中心に、それぞれの個展形式で展示することにより、現代芸術の一つの達成を紹介する。

見どころや更なるプロフィール詳細は、国立新美術館HPに掲載されています⇒こちら。
・野口里佳公式HPはこちら

本展は「光」をタイトルとしているが、、「光」というテーマに重きを置いている訳ではない。むしろ、松本、野口という表現媒体も世代も異なる現代作家の2人を紹介するために、敢えて「光」というテーマとしたようだ。本展監修は国立新美術館学芸課長の南雄介氏が、展覧会図録序文に寄せた内容から、開催主旨が読み取れる。
したがって、展覧会を観賞する上で、あまり「光」にこだわらず、相対する2人の作家の個展を見るというフラットな気持ちで作品を楽しむと良いと思う。そこにこだわってしまうと、せっかくの作品が楽しめないと私は感じた。

展覧会会場を受付を抜けると、観賞者は松本展示室、野口展示室どちらを先に見ても良い構成になっている。つまり、入口が2つあり、長方形の展示空間を縦に2分割して各人に割り当てている。

私はもちろん野口さんの展示室から入る。2004年の原美術館での個展「飛ぶ夢を見た」は、自宅でたまたま真っ青な空を白いロケットが飛んで行く写真画像をネットで見つけ、どうしてもその写真を見たくなり、わざわざ東京まで向かったのだった。
あまりにも素晴らしい展覧会で、あの日の感動を忘れることができない。それ以来、私は野口さんの大ファンなのだった。

最初にあるのは≪フジヤマ≫シリーズ。
このシリーズも大好きだが、原美術館での展覧会の時はサイズが小さかったが、本展では、95.6×66.9㎝サイズ(縦横の違いあり)で見せてくれた。
やはり、写真から醸し出す色の雰囲気がたまらなく良い。雄大な風景の中の小さな人物、大きな空に少しだけ富士山の大地が顔を出している構図。

懐かしさに浸りつつ、次に進むとこれも原美で見た≪星の色≫シリーズ。与那国の海底遺跡を野口自らがダイビングライセンスを取得し、水中撮影したもの。
原美術館の展覧会を見た当時、私もダイバーでよく潜っていたので、この写真はダイバーとして惹かれた記憶がある。与那国には潜ったことがないけれど、一度遺跡を見てみたいと思ったのだ。

ここまでは、国立新美術館の真っ白な壁と高く白い天井のためか、作品が小さく見えた。普段写真の展覧会はもっと天井高の低い展示室(例えば、東京都写真美術館など)で見ることが多いので、とても違和感があった。どんな写真もあの白の空間では作品が飲み込まれてしまうと言ったらよいのだろうか。負けてしまうのである。

箱が厭だな。。。と思いつつ次の空間へ入る。作品シリーズによって仕切りがある。
ここで、一挙に白の世界から黒の世界へ移行した。
天井の明かりとりを閉じ、照明を落として写真1点1点にスポットが当たっている。
断然、こちらの展示の方が落ち着く。
この空間にあるのは、2007年ギャラリー小柳での個展『マラブ・太陽』出品作品の≪太陽≫シリーズ、続いて次に≪マラブ≫シリーズがある。
ギャラリーでの個展では空間に制限もあるため、個展で拝見していない作品も沢山出ていた。
個人的には≪太陽≫シリーズがとても好き。
個展でも気に入っていた作品、格子窓越しに太陽を撮影した1枚#31が、格別気に入っている。

≪マラブ≫シリーズはマラブという鳥をモチーフにしている。鳥なのだけれど、ギャラリーでこの写真を最初に見た時、女の子(人間)かと思った。
そして、この勘違いを肯定するかのように、最奥に1枚≪無題(アニカ)≫が展示されている。
こちらは人間だがマラブの姿に似ているのだ。

突き当りまで行ったので戻って、次の空間に移ると、≪白い紙≫2005年オフセット印刷が平台に置かれている。
写真とは違う魅力が白い1枚の紙にあった。思い出の中の1ページが眼前に現れたといった感じだろうか。

ここを抜けると、再び明るい世界に戻る。
≪砂漠で≫シリーズ2006年~2007年。このシリーズは他のものとかなり異なる。正直私の好みではない、というか野口里佳さんらしさがあまり感じられなかった。

しかし、次に待ち受けていたのが私が一番好きな≪水をつかむ≫シリーズが3点も!
原美術館で2階に上がる階段横に飾られていた写真と言えば思い出される方も多いのではないか。
過去に見ていない2点もあって、とても嬉しかった。
≪水をつかむ≫というタイトル通りの一場面。液体は写真の中ならば、つかめるのだ。

そして、暗幕の向こうには新たな試み映像(ビデオ)作品≪星≫2009年が。これは島袋道浩との共同制作。

いよいよ、フィナーレに近づく。
最後のコーナーでは懐かしの≪飛ぶ夢を見た≫2003年シリーズとその続編となる最新作≪飛ぶ夢を見た2≫が一同に展示されている。
しかし、最後の最後にビッグサプライズが。
展示室出口横にある150×100㎝の大作は、何と先月の日食時の写真である。タイトルはそのものズバリ≪日食(武漢)≫2009年。会期ぎりぎりまで新作を狙う、野口のプロ精神に脱帽した。
この作品に、一挙に心奪われた。そして、残る2点小品ながら、新境地を見せているのが、同じ最終コーナーにあった≪虫と光≫2009年2点。
版画のような写真というべきか。すごく私の好みだった。これ、どうやって撮影しているのだろう?

上記超最新作の3点は、図録作成時点で完成しておらず掲載されていない。
本展の一推しはこの最終コーナーかもしれない。一番印象深かった。


もうひとつ。松本陽子の展示は、以下の構成。
・ピンクの絵画
・水彩
・緑の絵画とドローイング
・グレーの絵画
・緑の絵画
・黒の絵画

色調やタッチは違うが、同じ抽象画。
こちらは、全展示室、白の壁、白天井だったため、更に作品が呑みこまれていた。
相当強い個性がないと、あの空間に負けてしまう。
そういう意味で、国立新美術館の展示室は作家泣かせだなと感じた。

「光」を直接的にとらえているのが野口作品、内包的にとらえているのが、松本作品だと思う。
両者の比較も見どころのひとつ。

ぜひ、お出かけください。

なお、次の日程でアーティストトークが開催されます。
●野口里佳
日時:2009年8月22日(土) 14:00~16:00
会場:国立新美術館3階講堂
定員:先着250名

●松本陽子
日時:2009年8月30日(日) 14:00~16:00
会場:国立新美術館3階講堂
定員:先着250名

※いずれも聴講は無料ですが、本展の観覧券(半券可)が必要。

*10月19日(月)まで開催中。

「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」 世田谷文学館

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世田谷文学館で開催中の「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」に行って来た。

堀内誠一については、昨年5月に渋谷松濤のギャラリーTOMで開催されていた「旅の仲間 澁澤龍彦と堀内誠一による航空書簡より」で初めて名前と作品、画業が頭の中で一致した。
しかも、この展覧会今でも記憶しているが面白かったのだ。
その時の感想はこちら

前回は澁澤龍彦との関係を中心に構成されていた展覧会であったが、今回の世田谷文学館での展覧会は、堀内誠一回顧展と言ってよいだろう。

堀内誠一にはいくつもの顔がある。
雑誌のアートディレクター、絵本作家、デザイン等々多岐に亘る仕事を生涯で手がけた。

本展では、幼少期から晩年に至るまでの足跡をたどり、「旅」・「絵本」・「デザイン」の3領域にわたり、その活動の全容を約200点の作品と関連資料によって紹介するもの。

まずは生い立ちから。
幼少期の堀内の作品!既に6歳や8歳にして作成されたスクラップブックのデッサンは既に才能をあきらかに示しており、単なるいたずら書き、お絵かきの領域を逸脱していた。元々堀内の父が図案家であったことが彼のその後に与えた影響は非常に大きいと思う。
環境的に常に、絵本やポスターに囲まれていた、毎日美術鑑賞しているようなものではないか。

わずか14歳(1947年)にして新宿伊勢丹百貨店宣伝課に入社し、小冊子、ディスプレイ展示などを手がける。その当時に作られた冊子、ディスプレイの写真も多数あり。1947年にしては、相当にモダンで斬新な発想でデザインを手がけている。

注目すべきはミノルタのPR誌『ロッコール』。
伊勢丹を退社し、1957年アド・センター設立に参加してからの仕事のひとつ。
写真誌の編集デザインも手掛け、当時まだ珍しかった写真誌をアート雑誌風に見せるコマ割など、阿tらしい試みが沢山。

ここからどんどん活躍が始まる。
『平凡パンチ』、女性誌の草分け『アンアン』、『血と薔薇』、『ブルータス』などのアート・ディレクションとロゴデザインを担当した。
まさに、現在の雑誌アート面での創始者ではないか。
ティーンエージャ女子向けの雑誌『OLIVE』が出た時の衝撃を私は今でも忘れられない。
こんな雑誌を待っていたよ、と思ったものだ。これも堀内さんのお仕事による。
なんだか、堀内さんにとってもお世話になって育ったんだな私。

デザインだけではない。これら雑誌の仕事と同時並行で絵本原画にも取り組んでいる。
ここでも、お世話になってることが判明。
『ぐるんぱのようちえん』1965年。
チラシには掲載されていたが、展示替えで原画は違う作品になっていた気がする。この絵本は間違いなく読んだ記憶がある。鮮やかな色彩とかわいい象のイラストが忘れられない。
『マザー・グースのうた』原画も、絶対本で見たことがある。こちらはモノトーンだから堀内さんのカラフルな作品と様子がかなり違う。

最後に旅。
1974年~1981年に、家族(奥様とお子様)とともにパリ郊外アントニーに移住。パリを拠点に各地を旅した。
イラストとエッセイで綴られた名著『パリからの旅』『パリの名所絵地図』(アンアン掲載)など原画がたっぷり出展されている。
パリへ行ったことがある人なら、堀内さんの本を買って持参された方も多いのではなかろうか。

カメラ、画在、カバンなど愛用の品々も並ぶ。
展示数が非常に多いので、じっくり見ていると30分ではとても足りない。

展示作品についてはブルータス副編集長のブログ「フクヘン」に沢山紹介されているので、ご参照ください。
また、遊行七恵さんのブログでも本展の紹介記事が書かれています。

世田谷文学館では常設コーナーにからくり人形師ムットーニの作品が見られる「ムットーニのからくり劇場」が1回展示室にあった。
以一村雨様がおっしゃっていたのはこれなのか。
30分単位で作品を3つ~4つずつ動かしてくれます。しっかり、全作品を見て、併設カフェでお茶もして
企画展も見てと2時間以上の長居をしていた。

*9月6日まで開催中。

「赤黒金銀緑青 前田正博の色絵」 菊池寛実記念 智美術館

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菊池寛実記念 智美術館で開催中の「赤黒金銀緑青 前田正博の色絵」展を見て来た。
この展覧会、チラシで損をしているのではないだろうか?

チラシを最初見た時、大変失礼ながらパッとしないやきものだなと正直思った。
ところが、実際の作品を見てびっくり!!!
チラシと全然違うではないか。
もっと、色は美しく輝いているし、何より前田正博作品は素地にも特色があるのに、チラシからその質感までは伝わってこないのだ。
実際に触れるものなら、触って確かめたいほどだったが、表面は細かく格子状に削られいているように見え、触ったらザラザラするのではないかと、大変気になった。

展示風景は「とんとん・にっき」さんに詳しくご紹介されています。

彼の作品のたとえとして「赤黒金銀緑青」は、まさにズバリそのものの表現だが、やはりこれも実際の作品を見たからこそ納得できた。

私が一番惹かれた色は「青」。
前田正博の創り出す「青」はちょっと他では見ない色合い。紫がかっているような青もあれば、澄んだ青もあり。
この色の秘密は、西洋から伝わる洋絵具を用いて、多くの色を一色づつ重ね、何度も何度も焼成を繰り返すことによって生まれるのだそう。

また、色の美しさに加えてもう一つの特徴は、グラフィカルな模様にある。
私が一番好きだったのは鳥。
モダンで美しい金、銀、緑、青など様々に彩られた器に描かれているモチーフの鳥は、とても愛らしい。
気に入った作品は以下。
≪色絵銀彩面取鉢≫ 2009年 一番入口最初にあった作品。
≪色絵金銀彩長皿≫ 1992年
≪色絵金銀彩水指≫ 水指はどれも全てお気に入り。形が好きだったのと、蓋のつまみの色が素敵。
≪無題≫ 墨・和紙 2006年 これだけは、やきものでなく墨絵。やしの木が描かれている。
これが飾られている一角は、本当に完成されていた。
≪色絵金銀彩輪花大鉢≫ 1998年
≪色絵金銀彩面取花器≫ 
面取花器も何種類も出ていたが、これも形が好きで、どの色合いのものも良かった。
≪色絵香炉≫ 2009年

作品名をあげても、どれも金銀彩とつくから、違いが分からないけれど、実際1点、1点色合いが全て違う。
やっぱり、今回は本当に実際に触ってみたかった。

ところで、智美術館は本展終了後、展示室を改修するそうだ。リニューアルされた展示室での次回「藤本能道展」を楽しみに待ちたい。

*9月23日まで開催中。

「ビュフェとアナベル-愛の奇蹟展」 そごう美術館

そごう

横浜そごう美術館で開催中の「ビュフェとアナベル-愛の奇蹟展」に行って来ました。

フランスの画家ベルナール・ビュフェ(1928-1999)が、自ら命を絶ち今年で10年を経過した。
ビュフェは19歳でアンデパンダン展に出品し、若くして才能を評価され、20代で一躍パリ画壇のスターへと登りつめる。
そして、30歳の夏、当時モデルとして活躍していた美しいアナベルと南仏で出会い、その半年後に二人は結婚。以来ビュフェの死まで、仲睦まじく生涯を過ごし、ビュフェはアナベルをテーマにした作品を数多く制作している。

本展では、ビュフェとアナベルをテーマに、デビュー間もない頃の風景画や静物画、≪サーカス≫シリーズまで、静岡県三島市のベルナール・ビュフェ美術館の所蔵品から約60点を2人の写真とともに天覧するもの。

ビュフェ美術館には一度行ったことがあり、同館の所蔵品ということで行こうか迷っていたが、今回は行って正解。
残念ながらデパート美術館ゆえ、作品リストはないので、印象に残った作品だけメモしてきた。

作品は基本的に制作年代順に並んでいる。
初期の≪アトリエ≫1947年や≪波≫1946年の繊細な線が、アナベルとの出会い、結婚を機にどんどん力強く太い線に変化していくのがよく分かる。

二人が出会った時に居合わせた、というより引き合わせたカメラマンが撮影した写真が何枚か展示されていて、私が想像していたより、ビュフェははるかにかっこいい男性だった。もっと、神経質な外見を予想していたが、少なくとも外見上はそんな風に見えず、アナベルの隣で優しく微笑んでいる。

前半に、≪パレットのある自画像≫1948年が展示されていたが、そこに描かれているのは到底20代の青年とは思えないやせ衰えた病んだような男性なので、余計実際のビュフェを見て驚いた。
他人からではなく、自分自身を見つめた時、ビュフェにとっての自分の姿があの病んだ男性であるのなら、心の中にかなりの不安、恐怖、闇があったのかもしれない。

対するアナベルは、モデルで活躍というのが頷ける、ショートカットの似合う美人で、絵に描かれている通りの容姿だった。
二人は、家庭に恵まれなかったという生い立ちを共通点としており、すぐに意気投合したと思われる。

≪アナベル夫人≫1959年(チラシ表)、≪アナベル≫1959年、≪青い闘牛士≫1960年などアナベルを描いた作品は数多い。
展覧会中盤から、アナベルから見たビュフェについてのコメントが、要所要所に案内されていて、アナベルがいかに、ビュフェの制作活動を見守り、理解していたのか伝わって来た。
アナベル曰く、「作品が一見、アナベルと違うモチーフであったとしても、それが自分(アナベル)を描いたと分かる。」のだとか。

大作、≪大運河≫1962年や≪マンハッタン≫1958年は、前半で見た風景画とはまるで趣を異にしている。

しかし、晩年近くなるとビュフェの絵は、暗く更に黒い部分が多くなり、骸骨が絵のどこかしらに現れる。この頃から、常に死を意識し始めていることが伝わって来た。

ビュフェは、「絵を描くことこそ、自分にとっての生である。」と言っている。
パーキンソン病を患い、いよいよ絵筆を取れなくなり、死を選んだのは彼の人生にとって必然であったのだろう。残念ながら、アナベルといえども、彼の絵を描く行為の代わりにはなれなかった。
彼女は、ビュフェの死を作品から早く予感していたが、彼女の中でも彼の死を容認していたのかもしれない。あくまで私の想像だけれど。

*8月31日まで開催中。
本展覧会は、この後いわき市立美術館 2009年9月12日(土)~11月3日(火・祝)に巡回します。

「牧島如鳩展 ~神と仏の場所~」 三鷹市美術ギャラリー

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三鷹市美術ギャラリーで開催中の「牧島如鳩展」に行って来た。
足利市立美術館から始まった同展の待ちに待った巡回で、チラシ(同上)を見るだけで、一体どんな画家なのか、どんな作品が待ち受けているのか怖いような気持ちで中に入った。
会場には正教会の聖歌が、低く流れている。聖歌の流れる環境での観賞もよいもの。

牧島如鳩(まきしま・にょきゅう・1892-1975)の略歴、作品画像は同館HPに詳しいのでこちらをご覧ください。

神学校に入学し、日本人初のイコン画家山下りんにイコンのてほどきを受けたことから彼の画業が始まる。
*イコンについての説明はこちら
冒頭に、足利市美での展覧会後に発見されたという、最初期の作品≪天使図≫1910年6月の油彩があった。
この展覧会を開催したことで、日本美術史から取り残されてきた如鳩の画業が見直された成果であろう。新発見作品が出てきたことに、まず喜びを感じ、如鳩もあの世で喜んでいるのではないかと思いを馳せた。

≪天使図≫に続き、展覧会は以下の5部構成。前回のデュフィ展ではなかった作品リストが、今回は作成されている。
Ⅰ.イコンと仏画
Ⅱ 足利での共同生活
Ⅲ 小名浜時代およびイコンと仏画の融合
Ⅳ 足利・東京放浪
Ⅴ 願行寺に庵を結ぶ

全体を通して感じたことをまとめてみたい。
如鳩は、1892年日清戦争の2年前に生まれ、日露戦争、第一次世界大戦、太平洋戦争を生き抜き、亡くなったのは1975年。つまり、私が生まれた時には彼はまだ生きていた、恐らく文京区の願行寺で禅僧・中川宋淵と神と仏に仕える日々を送り、中川より「一打を受け」、名前の鳩にあった『鳥』が飛び去り、以後「如九」と名乗り始めた頃だと思われる。
この一打を受けて描いた作品≪極楽鳥≫は衝立の片面に描かれており、澄み切った青い空に色鮮やかな鳥が羽ばたいている。
その裏面には≪ぶっぽうそう≫と題した墨画が対照的に墨一色で描かれている。

一人の宗教者、伝道者としてハリストス正教会のイコンや天井画などを描いていたが、ロシア革命により正教会の力が弱まり、生活の糧を得るため職業画家として活動の幅を広げ始めた如鳩。
いくたびもの戦争を経て、やがてキリストも仏もない、あるのは唯一の神のみといった思想が絵にあらわれるのは、早かった。
1929年(昭和4年)には、≪達磨図≫、翌年には≪観音図≫を手掛けている。
しかし、そのきっかけとなったのは妻の結核入院に接して描いた≪医術≫だろうか。この作品は、出品作の中でもとりわけ特異な画面を構成している。
中央にキリスト、右下にはレントゲンの結果説明を受ける作家自身、妻と子。左下には帝王切開をしている妻の担当医、更には麻酔を象徴するけしの花。
想像力の限りを尽くした感がある。

この後、晩年までイコンと仏画が融合した牧島独自の世界観、宗教観を表現した作品の数々が生まれる。
中でも、忘れられないのは福島県の小名浜漁業協同組合に今でも豊漁を願って飾られているという≪魚籃観音像≫(1952年)。
霊感を受けて描いた作品というのは確かこれではなかったか。
大漁を祈願して描き、実際この絵の完成後豊漁が続いたという、まさしく神がかり的な作品。
恐ろしい程の迫力と構図、そして観音というにはあまりにも人間的な像が神々しく中央に描かれ、周囲には天女が舞い、小名浜海岸と思われる海景色が背景となっている。
牧島はこの作品を天啓として描いたに違いない、まさに頭に浮かんだそのままをキャンバスに載せたそんな気がする。

もう1点、チラシ表に採用されている≪大自在千手観世音菩薩≫1964年は彼の傑作と言ってよいだろう。
観音の波打つ黒髪、千手が手にする持物は果たして経典にのっとっているか?否恐らく、そこにも牧島の想像が重ねられていると思う。

絵画的に好き嫌いを述べるのであれば、濃厚な油彩より、晩年近くに手がけた席画≪観音像≫や墨画、≪日為不忘録≫1975年など、心穏やかな様子を感じた。

また、興味をひかれたのは透明フィルムに着色された巻物≪奇蹟者聖ニコライのおはなし≫1934年頃、≪郷土の義人 今村仁平≫1951年、≪紙芝居正教座≫1950年代など教義に使用されたと思しき一連の作品群。
ここにも牧島の相違工夫の跡を見る。

展示室最後にあった「牧島如鳩」印、牧島自身が1940年代後半に刻んだものだが、この印こそ彼の志向していた絵画、宗教観の象徴であり、彼の魂のようだった。
印刻に画業の全てが表現されている、あの印鑑を自身の作品に押すたび、牧島は何を思っていたのだろうか。

牧島如鳩は500年後の世界に生きる人々に見てもらいたいと話していたそうだ。
500年も経たずして、彼の画業を回顧する機会を得、またそれに接することができ、日本の歴史、日本人の宗教観にまで考えが及んだ。
約120点の作品を一堂に集め展観して下さった本展主催者の皆さまに心より感謝を申し上げたい。

*8月23日まで開催中。
三鷹市美術ギャラリーは三鷹駅南口すぐのCORAL5階。
月曜の休館日を除き毎日20時(入館は19時半まで)開館しています。貴重な機会をお見逃しなく!

2009年8月16日 観賞記録

名古屋に比べれば、東京の夏はしのぎやすい。
それでも、さすがに遊びすぎのせいか、遠出の連続で結局予定を切り上げて早めに戻って来た。
立川の国文学研究資料館へ行こうとしていたのだが、途中で日曜休館に気付いて茫然。
8月末まで土曜の予定は既に決まっているので、もう行けなくなってしまった(涙)。

ということで、今日の鑑賞記録。

1.「ビュフェとアナベル-愛と美の軌跡展」 そごう美術館 8/30まで
NHK日曜美術館でも以前特集されていた内容。この展覧会は良かった。期待以上。
そごう美術館は、前回の川上澄生と言い、良い展示をしてくださる。デパート系では一番充実している。よって別記事で頑張ってみる。

2.「わたしがえらんだ いわさきちひろ展」 「山本直彰展」 平塚市美術館
さる方にチケットを頂戴したので、行って来た。いわさきちひろの原画を単に並べるだけでなく、その横にその絵を見た様々な人たちの感想が貼られているのがポイント。

更に、本展のパンフレットが素晴らしい出来栄え。いわさきちひろの絵のひみつをA3二つ折りパンフの中面でポイントをまとめ紹介していて、分かりやすい。
今日は紫が気になるなぁと思っていたら、「ちひろの紫」として秘密の中に採用されていた。
たらしこみ、にじみ、白抜き、潤筆法など水墨画技法を上手く取り入れた水彩が特徴。

でも、感想はあまり読まないようにして、原画に集中した。
まぁ、何度拝見しても、良いものはよいのですね。展示作品数120点で代表作が並んでいるので楽しめる。
私は、いわさきちひろの描く「少年」が一番好き。きりっとした感じのやちょっとはにかんだ感じのや。
でも、いわさきちひろの絵本でこれ!というのはなぜか浮かばない。
読んでないってことはないはずだけれど。
絵本の場合、話の内容よりその絵の方に記憶が残っていることが私の場合は多い。先日損保ジャパン東郷青児美術館で思い出した「てぶくろ」然り。
大変盛況で、ちひろ人気の健在ぶりを目の当たりにした。

同時開催の「山本直彰」展、初期の作風の方が好き。途中抽象的日本画「イカロス」シリーズなどになってきたあたりからが、本領発揮なのだろうが、私の好みではなかった。

美術館とは関係ないが、平塚美術館行きのバス乗り場が都まんじゅう店の前に変わっていた。
この都まんじゅう、私の好物でいまどき10個350円、一口サイズの甘さ控えめのおまんじゅう。
もちろん、今日のお土産。

3.「大河原邦男のメカデザイン」 八王子夢美術館 9/6まで
前述の通り、立川へ行く予定が休館と分かり、八王子に予定変更。大河原邦男氏はガッチャマンの敵メカデザインで高い評価を得、その後アニメメカデザイナーとしての地位を確立していく。
出世作は、『機動戦士ガンダム』。
ガッチャマン、ガンダム、タイムボカンで育った世代としては、やはり気になる。
この方のメカデザインを日々TVで見て育ってきたのだなぁと懐かしかった。

やはり私が一番好きなのは、ガンダムの赤い彗星シャア・アズナブル。そして彼が乗る赤いザグも今回しっかと原画を拝見した。
ガンダムだって、戦う相手がいてこそでしょう。赤くない普通のザグも今見るとよくできてるなぁと思う。
会場には若い男子多し。しかも、相当熱心に複数人で話し込んだりして見ている人も多かった。単独男子も多く、女一人は私だけ。
メカデザイナーの展示だから仕方ないか。

4.「牧島如鳩展」 三鷹市民ギャラリー 8/23まで足利市立美術館で開催され、その後北海道から三鷹に巡回。最終巡回地。足利へ行こうかと思ったくらい気になっていた。記憶が新しいうちに、この後別記事にとりかかる。

この後、うらわ美術館のプラティスラヴァ世界絵本原画展に行こうとしていたのだが、さすがに疲れていたので、そのまま帰宅した。これも、今月末までなので厳しいかなぁ。

「高島屋史料館所蔵名品展」(前期) 泉屋博古館分館

takashimaya

現在、東京神谷町近辺の美術館の展覧会が面白い。
本日、泉屋博古館分館、大倉集古館、菊池寛実記念・智美術館と3館巡ったが、中でも一推しは泉屋博古館分館だろう。

帰宅後「はろるど・わーど」さんの記事を拝見したら、私がチェックした作品がほぼ一致していたので、印象に残った作品はこちらをご参照くださいませ。

で、私はその中で飛び切り印象に残った3点について感想を記しておこうと思う。

・竹内栖鳳 「ベニスの月」 1904年 222.0×174.0
サイズをご覧になってお分かりのように、たて2mを超す大作。そこに描かれているのは水墨画風ベニスの風景。
これが美しいのなんの。少し離れたところに長椅子があったので、ず~っとそこに座って眺めていた。
私が今まで見た栖鳳作品の中で一番気に入った。

・山元春挙 「ロッキーの雪」 1905年頃 221.1×174.5
ロッキーと春挙のイメージがどうも一致しないのだが、これも素晴らしい墨画。
栖鳳のベニスと春挙のロッキー山脈?の雪景色が並んでいるのだから、こんな豪華なことはない。

栖鳳を中心に左にロッキー、右には都路華香「吉野桜」(1903年)218.5×174.0が入って最奥の壁に陣取っている・
都路の桜も良いのだが、左2つがあまりにも素晴らしいため、どうしても視線は左方向に流れていく。
もう少し、照明を落としてくれたら、なおのことこの3枚が引き立つような気がした。

で、最後の1点は春挙の次にあった(壁面は左壁)川端龍子の「潮騒」1937年。
前の3作は技巧が超越しているが、川端の作品は技巧というより、構図力に秀でている。更にもうひとつ色彩に優れていた。

私は「潮騒」を見て、実際の海が見えた気がする。
海鳥の様子、左側の海の青、右側の浅瀬の海の碧。
思わず感動して涙が出そうになった。

人を感動させる絵があるとすれば、久々に感動する3枚の絵に出会った。名残惜しくて、出口まで一旦向かったが、もう1度戻って3枚を、そして最後に川端の海を見て会場を後にした。

(注)上記3点、路香も入れると4点いずれも前期のみ展示作品。
前期展示は、8月23日(日)で終了します。未見の方はお早めに。オススメします。
後期展示は、8月26日(水)~9月27日(日)。こちらも楽しみです。

「ミリオンセラーの絵本原画と世界の絵本画家たち」 損保ジャパン東郷青児美術館

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損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ミリオンセラーの絵本原画と世界の絵本画家たち」に行って来た。
絵本画家の作品が侮れない、いや立派な芸術だと認められるようになって、まだ日は浅いそうだ。
かくいう私も絵本画家の展覧会に足を向け始めたのは昨年あたりから。
しかし、一度はまってしまうともう抜けられない。
それほどまでに、魅力ある画家が沢山いるということは本展でもよく分かった。

この展覧会では、ちひろ美術館コレクションよりミリオンセラーの絵本原画をはじめ、国際アンデルセン賞画家賞ヤプラティスラヴァ世界絵本原画展などの国際的評価の高い受賞画家を含む世界の約18カ国70名120点の絵本原画を紹介するもの。

印刷物として絵本で見る絵と原画はやはり違う。原画の迫力、美しさは圧倒的なものがある。それを思うと、いくら印刷技術が高度になってきても、やはり実際足を運び、この目で原画を見なければと思うのだ。

展示は基本的に作家の国別順になっている。私は安曇野のちひろ美術館にも東京のちひろ美術館にも行ったが、安曇野ちひろ美術館に行った際、世界の絵本画家を紹介している展示室があり、やっぱり国別順になっていたことを記憶している。
国別に展示されると、その作家のお国柄が作品によく現れていて、国別比較も楽しみの一つになる。

今回、私が一番感動したのは絵本『てぶくろ』の原画に出会えたこと。
原画を見た瞬間『てぶくろ』を読んでいた幼い日の自分を思い出した。この本、読んだことがある。
話の内容より絵を記憶していた。
ちなみにこの作品はロシアのエフゲーニー・ラチョフのもの。絵本の出版年代もちょうど私の幼少期にぴたりと一致していたが、今も読み継がれているかもしれない。
手袋に動物たちが入り込むストーリーで、最後はおじいさんが手袋を落としたことに気づいて、無事持ち主に戻る所で終わる。

以下それ以外に気になった作家。作品タイトルは省略する。

・タチヤーナ・マーヴリナ (ロシア)

・ドゥシャン・カーライ (スロヴァキア)
色が美しく、線も細かくてきれいだった。

・クラウス・エンヅィカート (ドイツ)

・ケイト・グリーナウェイ (イギリス)
いかにも、イギリス水彩画!といった作品。

・アーサー・ラッカム (イギリス)
絵本で見るとイマイチなのに、原画はとても美しい。ちょっともったいない。

・ビンバ・ランドマン (イタリア) 『ジョットという名の少年 羊がかなえてくれた夢』
これは、今回『てぶくろ』に次いで、ひっかかった絵本。読んだことはないが、会場内に絵本が置いてあったので、読んでみたが面白い。
かのジョットの自伝的絵本。しかも原画が祭壇画のようになっているから凄い。
更に絵も素晴らしい。かつ、印刷物としての絵本の出来も良かった。これには本当に感心させられた。

・ローベルト・ブルン (スロヴァキア)
スロヴァキアの絵本画家は3名紹介されていたが、どの作家も私の好みだった。中でもこのローベルトは布にテンペラ+インクで描いている。色彩と細かさ、とにかく密度の濃い作品。

・ユーリー・ノルシュテイン&フランチェスカ・ヤールブソワ (ロシア)

・八島太郎 (アメリカ)
日本人だが、アメリカに移住し定住したらしい。作品はパステル、コンテによるものでとても印象的だった。

・クラウディア・レニャッツィ (アルゼンチン)
コラージュ&混合技法。この人もかなり私の好み。

・フィオナ・ムーディ (南アフリカ)
一瞬ムーミンかと思った。ちょっとだけトーヴェ・ヤンソンに似ているかも。線の繊細さが好き。

スリランカ、モンゴル、中国、韓国は特にお国柄が強くあらわれている。
中国は中国顔料や砂金宣紙、韓国は韓紙とその国で使われている画材を使用しているのが気になった。その点日本で和紙を使用している作品はあっただろうか?
韓紙や中国顔料は独特の風合いを出しているので、やはり原画を見た方がその良さが分かる。

日本ではお馴染初山滋と今回は茂田井武の作品も1点ずつ出展されていて嬉しい。
1点でも見られると嬉しいのだから、かなりコアなファンだ。
他に、先日妻有の廃校を絵本の舞台そのものに甦らせた田島征三の泥絵具使用作品と大好きな和田誠の絵本原画があって驚いた。
和田誠はイラストレーター、挿絵だけでなく、絵本の原画も描いていたのか。知らなかった~。
和田誠らしからぬ作風だったけれど、これはこれですごくかわいらしかった。

金曜の夜間開館を利用したが、かなりお客さんが入っていた。会期末が近付くと更に混んでくるかもしれない。絵本原画だが、圧倒的に大人のお客さんばかり。夜だからかな。

*8月30日まで開催中。

「日本芸術院 所蔵作品展」 東京芸術大学美術館

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東京藝術大学美術館で開催中の「日本芸術院 所蔵作品展」に行って来た。同時に開催している東京藝術大学コレクション展の展示替えと併せて、計2回見た。

今回は天皇陛下御在位20年を記念し、恩賜賞並びに日本藝術院賞を受賞した所蔵作品展を開催し、祝意を表するもの。今回は、恩賜賞受賞作品26点、日本藝術院賞受賞作品を含む計60点を展示している。

この展覧会は無料で観賞できる上に、展示作品が掲載された立派なカラーパンフレットまで入口で配布される、こちらも無料。

さて、会期は明日(16日)までなので、手短に印象に残った作品を挙げる。
(日本画)
・川合玉堂 「宿雪」 
私って本当に玉堂が好きだなぁ。これも滝の流れと雪の取り合わせが絶妙。凛とした景色が素晴らしい1枚だった。

・高山辰雄 「沼」
沼に映りこむ町の影と月影。3色しか使用していないのに、この惹きつける力は何だろう?

・清水達三 「翠響」
またも山水風景もの。結局山水画が好きってことでししょうね。これも深い濃緑と霧が幻想的。

・稗田一穂 「月影の道」
遠く遠くどこまでも続いていきそうな道に自分が吸い込まれそうになった。絵の中の一部になれそうな気がした。

(洋画)
・清原啓一 「花園の遊鶏」 
恥ずかしながらお名前を知ったのは初めて。洋画ではこの作品が一番好きだった。色鮮やかな花園に目を奪われた。

・織田廣喜 「夕やけ空の風景」
以前から気になっているが、なかなかまとまって見る機会のない作家さん。

・野村守夫 「丘にある街」
こちらも今回初めて知ったお名前。既に故人であられるが、紫色の空、高い塔。全体的に青紫色のトーンの町並みが、ちょうどその時の私の気分に合っていた。

書も何点も並んでいて、どれも見ごたえがあったが、敢えてこれ!というものをあげるほど、書に詳しくないので記載せず。彫刻は、ちょっと面白みに欠けた。

(注意)会期は8月16日(日)までです。

「小林かいちの世界」 ニューオータニ美術館

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ニューオータニ美術館で開催中の「小林かいちの世界」に行って来ました。

小林かいちについては、弥生美術館で2008年1月3日(木)~3月30日(日)で開催されていた「夢二と謎の画家・小林かいち展  ~大正ロマンから昭和モダンへ、花開く絵葉書・絵封筒の美~」の告知と遊行七恵さんの記事を拝見した時からずっと気になって、行きたかったのに、結局行けなかった。

この弥生美術館での展覧会が東京での初の小林かいちを紹介する記念すべき展覧会であった。

しかし、それから約1年半。ついにチャンスが巡ってきた。
ニューオータニ美術館でのかいち展。
本展は伊香保の保科美術館の全面協力を得て、かいち芸術を紹介する内容。東京で大大的に紹介する初の展覧会とチラシにはあるが、弥生美術館が先にやってるではないか。

としょうもない苦言を呈していないで、早速初かいち展の感想を。
京都の図案家らしいといってしまえばそれまでですが、色遣い、デザイン、細身の女性、ちょっと色っぽい女性の表情、どれをとっても心がくすぐられます。

赤と黒、ピンクに紫、赤、黒、色の組み合わせが絶妙。
月や星、♥、植物などを巧みに活かしたデザイン力には目をみはります。
資生堂広告部にいそうな感じ。
路線は違うが、小村雪帒が和製なら、こちらはアールデコ風。

封筒も無論素敵だが、私ははがきの方が気に入った。
よりかいちの世界観が表れているように思えた。

もうひとつ、独自のセンスが発揮されていたのがトランプ。これなど復刻すれば売れるだろう。
既に売られていたか?
ミュージアムショップのグッズは時間がなかったので、ノーチェック。

300点の展示作品があったらしいが、そんなにあったのだろうか?むしろ、物足りない感じを受けたのだが。

今回関係者の皆さまの力が入ってるなぁと感じたのは、展覧会のために作られた小冊子である。
これ、無料で配布されていたが、内容は研究成果、かいちの一連の絵葉書シリーズ(白黒)で掲載されているすぐれもの。
もちろん、保存版間違いなし。
いずれ、伊香保の温泉ついでに保科美術館に行けば、また小林かいちの作品に巡り合えるだろう。
本展によって、更にかいちの人気は高まるに違いない。
まだまだ分からないことが多い人物なので、今後の研究成果を待ちたい。

*8月23日まで開催中。お早めに。

「百鬼夜行の世界」 国立歴史民俗博物館

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「妖怪天国ニッポン」から「百鬼夜行の世界」と妖怪ものネタが続きます。

国立歴史民俗博物館で開催中の「百鬼夜行の世界」を見ました。行ったのは先月のこと。
この展覧会は、人間文化研究機構が主催するものです。
機構を構成している国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)と国文学研究資料館(東京都立川市)の2会場童子開催で百鬼夜行の系譜と江戸時代に花開く多様な百鬼の文化を紹介するもの。

展覧会に先立ちこちらで告知の案内を拝見した私は、迷っていたが結局展覧会に先立ち行われ同機構第10回公開講演会・シンポジウム「百鬼夜行の世界」に申し込みし、聴講までしているのであった。
この夏はまさに妖怪一色。いや童画展も沢山見ているので、妖怪と童画の2色状態か。

佐倉市にある民博の展示は、だだっ広い博物館の第3展示室のほんの一角。
スペースにするとごくわずか。何しろミニ企画展示扱いであるところに一抹の寂しさを覚える。
展示作品は、最大8点。本当は9点展示されるが展示替えでいつ行っても全部は見ることができない。
私は7月に行ったので、以下8点を観賞した。
≪百鬼夜行絵巻≫ 大徳寺真珠庵蔵 (重文) 室町時代 8月20日までの展示
≪百器夜行絵巻≫ 国立歴史民俗博物館蔵 8/21~8/30まで展示。真珠庵のものと交代。
≪百鬼夜行図≫ 国立歴史民俗博物館蔵
≪百鬼夜行絵巻(百鬼ノ図≫ 国際日本文化研究センター蔵 
≪百鬼夜行絵巻≫ 京都市立芸術大学芸術資料館蔵
≪百器夜行絵巻≫ 兵庫県歴史博物館蔵
≪百鬼夜行図≫ 東京大学総合図書館蔵
≪百鬼夜行図(異本)≫ 東京国立博物館蔵
大徳寺本以外は全て江戸時代。

全部、百鬼または百器の夜行図、絵巻なのだが、実際に見てみると、明らかに一番上にある大徳寺真珠庵本の出来が良い。
出来が良いというのは、絵巻としての状態、色の鮮やかさ、絵の上手さである。作者は土佐光信と伝わるが、確定していない。更にこれは室町時代に描かれた唯一の百鬼夜行絵巻として大変貴重なものとされている。
ここに描かれている妖怪は古道具が擬人化されたお化け「付喪神」(つくもがみ)で、この絵巻以後百鬼夜行とは、道具の妖怪たちの行列、「百器夜行」とイメージされる傾向が強くなっていく。
上記リストも百鬼と百器が混在していることで、おわかりいただけることだろう。

一方、「百鬼夜行」という言葉は、平安末期から鎌倉初期の説話集「今昔物語集」に先に登場しており、必ずしも道具の妖怪とはされておらず、妖怪研究第一人者の小松和彦氏によれば、複数のタイプの「百鬼夜行」の説話があったという。

これまで、美術界では真珠庵本を絶対視する傾向があったが、そこに新たなメスを入れた研究成果が前述のシンポジウムで発表されていた。

シンポジウムでは
基調講演 「百鬼夜行絵巻誕生の謎を解く」 
       小松和彦 (国際日本文化研究センター教授)

報告1   「美術史の立場から『異形異類』と『行列』をキーワードに」
       若杉準治 (京都国立博物館列品管理室長)

報告2   「妖怪の行進」 
       徳田和夫 (学習院女子大学教授)

報告3   「百鬼夜行の世界・情報学の立場から」
       山田 奨治 (国際日本文化研究センター准教授)

その後休憩をはさんで専門家による報告についてのコメントとパネルディスカッションが行われた。
私は報告3まで聞いて退出したので、その後の質疑応答ディスカッションについては聞いていないが、もっとも興味深かったのが最後の山田准教授による報告だった。

彼は真珠庵本の位置づけを見直すために、新たな情報学的アプローチを試みた。
簡単に言えば、図像配列を記号化し、「百鬼夜行絵巻」に描かれた個々の図像を記号とみなせば、伝本間の編集距離を求めることができる。
この方法で編集距離の数値を割り出し、系統樹を作成した。
検討対象になったのは、真珠庵本と比べて図像の増減のない9本の絵巻(日文研B本(新たに発見された)、京都総合資料館A本、伊藤家本、クラクフ本、歴博A、日文研C、立教大本、スペンサーB本)。

この結果、日文研B本が祖本の形態を比較的よく留めている一方、それ以外の真珠庵本含む8本は「鍋蓋取手」が脱落した摸本を転写したものであることを示した。
日文研B本には鍋蓋取手が唯一描かれている。

つまり、真珠庵本は摸本の摸本という可能性が強まり、日文研B本がもっとも祖本に近いと価値急上昇かという発表だったのである。

休憩時に、会場内で着流し姿の京極夏彦氏とすれ違った、氏曰く「山田さんの発表が面白かったなぁ~」とどなたかとお話されているのを耳にした私です。

・・・とこのような研究成果を聞いて改めて絵巻を見るのもまた一興。
何も知らずに、妖怪たちの行進を見るのもまた一興。

立川の国文学研究資料館に行く予定はなかったが、今日の日経新聞朝刊にこの展覧会の記事が掲載されていた。
何か妖怪に呼ばれている気がするので、やはり行ってみようか。

小松和彦氏の発表は下記出版済みの「百鬼夜行の謎」(集英社ビジュアル新書)と同じ内容なので、未読の方は読まれてみてはいかがでしょう?

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*8月30日まで開催中。真珠庵本は8/20までの展示となるため要注意。

「妖怪天国ニッポン 絵巻からマンガまで」 京都国際マンガミュージアム

「今、関西方面で一番面白い展覧会を1つあげて」と言われたら、私は迷わず京都国際マンガミュージアムで開催中の「妖怪天国ニッポン 絵巻からマンガまで」をあげるだろう。

奈良博で行われている「寧波」も本年度ベスト入り間違いなしの素晴らしさだが、あれは「面白い」とはちと違う。面白さもあるが、むしろ「凄い」とか「強烈」といった内容。

「妖怪天国ニッポン」は見てるだけで楽しく愉快な気持ちにさせられる。
本展では、江戸期の貴重な歴史的資料から、現代における紙芝居、マンガに至るまで「フィクション」として「キャラクター」として楽しまれてきた「妖怪画」の系譜をたどりながら、日本人と妖怪の関係について改めて考えてみようというもの。

チラシに記載されている「日本中の妖怪資料を集めました」は伊達ではない。この展覧会は兵庫県歴史博物館と京都国際マンガミュージアムとの共催。先に兵庫で開催し、京都に巡回してきたが他への巡回はなし!秋のMIHOでの若冲ワンダーランド他、関西で楽しみな展覧会が続く。

展覧会構成は以下の通り。
第1部 戯画としての妖怪画
1-1 妖怪マンガの源流
1-2 妖怪図鑑の誕生
1-3 マンガとしての妖怪浮世絵
1-4 草双紙は妖怪マンガ
1-5 江戸のポケットモンスター
1-6 文明開化の妖怪マンガ

第2部 <妖怪マンガ>の誕生
2-1 妖怪画の収集と研究
2-2 「妖怪マンガ」誕生前夜
2-3 水木しげると第1次妖怪ブーム
2-4 妖怪マンガと妖怪研究

詳細は京都国際マンガミュージアムHPをご覧ください。→ こちら

そして、特設コーナーが全部で3か所。
うち1か所には、あの京極夏彦の小説表紙に使用されている荒井良・作の妖怪張り子たちが待っている。全部で4体≪塗仏≫、≪瓶長≫、≪五徳猫≫、≪魍魎≫。
京極堂シリーズが好きな私にとって、この張り子の実物は嬉しかった。表紙が自分の前に現れた、しかもサイズは大きい。
これ、ぜひ本物を見ていただきたい、特に京極ファンの皆さまにはお薦めです。
作品リストを見たら所蔵先は京極夏彦氏になっていた。作家自らの所蔵品にしていたとは!


気に入った作品はありすぎて、とても全てはご紹介しきれないがこれぞ!というものだけ。何しろ古典ものだけでも100点近い展示作品。

・≪神農絵巻≫ 兵庫県立歴史博物館蔵 江戸時代
・≪百鬼夜行絵巻≫ 兵庫県立歴史博物館蔵 江戸時代
・≪画図百鬼夜行≫ 鳥山石燕画 川崎市民ミュージアム 1776年

浮世絵では
・≪源頼光公館土蜘作妖怪図≫ 歌川国芳 1843年 大阪城天守閣
・≪羅城門渡邉綱鬼腕斬之図≫ 月岡芳年  国際日本文化研究センター
芳年の浮世絵はこれ以外にも何点か出ていた。
・≪皿屋敷化粧姿鏡≫ 豊原国周 中右瑛氏蔵

このほか、江戸時代の妖怪グッズ、例えばかるた、うつし絵、「おばけはなび」に至るまで実に様々なものが集められていた。江戸期の人気キャラクターグッズであったのだろう。
妖怪グッズとは言い難いが、以前新宿歴史博物館で見た人魚のミイラのべつものがあった。こっちは、更に人魚でなくなっていた。本当に人魚ミイラって流行ってたのかもしれない。こんなにあちこちで見かけるくらいだから。

更に江戸から明治へ時代が移り、妖怪マンガが誕生する。

で、第2部以後、水木しげるが登場するわけだ。
妖怪人間ベム(これを知ってる人はほぼ私と同年代のはず)を見たときは懐かしさのあまり感動した。
遊行七恵さんはご存知だろうが、諸星大二郎のマンガになってくると私にはもう分からない。
しかし、彼のマンガ作品は多数出展されていた。

図録はふくろうの本として河出書房新社 より発売されている。amazonでももちろん購入可能。
一旦我慢したが、やっぱりこれは欲しい。
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百聞は一見に如かず。ぜひお運びください。オススメです。

*8月31日まで開催中。期間中無休。
午前10時~午後8時(入館は7時半まで)
☆午後5時以後チケットを買う場合、ナイトミュージアムチケットが購入できます。
通常企画展1000円→600円(大人入館料)400円もお得。8/31まで限定です。

「かたちは、うつる-国立西洋美術館所蔵版画展-」 国立西洋美術館

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国立西洋美術館で開催中の国立西洋美術館所蔵版画展「かたちは、うつる」に行って来た。

実は2回見に行って、1回目は解説など読みつつじっくり眺め、2回目はデジカメ(ついに中古で買った)を持参してバシバシ好きな版画作品を撮りつつ見ることだけに専念した。

西美らしく所蔵版画展と言っても単に年代順、作家順に並べるのでなく、高度な学術的アプローチで見せています。
しかし、私にはあまりにもレベルが高すぎて、解説に書いてあることの意味がいまひとつ頭に入って来ず、むしろ年代順に見せていただいた方が良かったなぁなどと素人として思ってしまいました。
美術館HPによると、本展の内容は以下の通りですが、長いので続きが知りたい方はこちらへ。

本展は、大きくは二部構成をとります。二つのパートを繋ぐのは、「うつる」ないし「うつし」という語です。この言葉には、「映」、「写」、「移」・・・といった、複数の意味合いがあります。本展では、この多義的で曖昧な日本語を、あえて西洋美術へのアプローチに用いてみたいと考えます。
具体的には、まず第一部の『うつり、現出するイメージ』において、芸術家たちがいかに「うつし(映し/写し)」や「うつろい(移ろい)」といった現象に魅せられ、さまざまに肖像や風景の「イメージ」を生み出していったか、あるいは、神のような超越的で把握しがたい存在を、どのようにして具体的な姿、いわば現世的な肉体を持った「うつせみ(現せみ)」として描こうとしてきたかということを、個別のテーマごとに見ていきます。次に、『うつり、回帰するイメージ』と題された第二部では、とくに人間身体や情念的な身振りの「イメージ」が、しばしば定型的な「かたち」を与えられ、時代や地域の制約を超えてさまざまに反復・変奏されていく事例を示します。


<展示構成> 全127点を各セクション単位で展示。
序 うつろ――憂鬱、思惟、夢想
第一部 うつり、現出するイメージ
『うつしの誘惑』、』、『うつしだす顔-肖像と性格』『うつる世界』、『うつせみ』

第二部 うつり、回帰するイメージ
『落ちる肉体』、『受苦の肢体』、『暴力の身振り』、『人間≒動物の情念』、『踊る身体』、『輪舞』

せっかく、テーマ別展示になっているというのに、結局何も考えずに見てしまう私。
結果、目に留まるのは好きな作家の作品。

・マックス・クリンガー ≪舞踏の準備≫他多数
・パブロ・ピカソ ≪貧しき食事≫ 1点だけだったけど、これが見たかった!
・モーリス・ドニ ≪泉に映る影≫ ドニも1点。版画は初めて見たかもしれない。
・ウジェーヌ・カリエール ≪ポール・ヴェルレーヌ≫
・アルブレヒト・デューラー 今回デューラーはかなり沢山出ていて嬉しい。
・レンブラント・ファン・レイン ≪三本の木≫他。
名古屋ボストン美術館でレンブラントの版画を見なかったら、今のように西洋版画に興味をもてなかったかもしれない。
・ロドルフ・ブレダン ≪死の喜劇≫ 以前にも見た作品。これ1枚だけはさびしい。
・シャルル・メリヨン ≪吸血鬼≫ 
・ドミニク・アングル ≪ジェニー・トラヴァレット(?)の肖像≫ アングルの版画って見たことなかった。
・ウジェーヌ・ドラクロワ ≪ゲーテの肖像≫
・アゴスティーノ・カラッチ ≪侮俊する聖ヒエロニムス≫ カラッチもこれ1枚。

とずらずらと挙げたが、この中で今回一番気になったのは、マックス・クリンガー。

点在していたので、頭の中で作風がぼけた記憶しかないが、作家別に並べて見たかった。

しかし、さすが国立西洋美術館。
この127枚も3747枚というコレクションのほんの一部でしかない。
聞いたことのない作家のものも含め、非常に多様なコレクションであると分かる。

今回上に挙げなかったがゴヤの作品も沢山出ていた。ゴヤは秋に姫路市美のゴヤ版画コレクションを岐阜県美で展示する。これは見ておきたいと思っている。

*8月16日まで開催中。まだの方は必見です。

東京都以外で開催される気になる展覧会 

自分のためのメモとして。

<福島県>
・「大下藤次郎展」 郡山市立美術館 9/12~10/18
神奈川近美葉山で見た明治・大正時代の水彩画家。これは絶対見たい。

・「開館25周年 アートの遠近 福島県立美術館のすべて」 7/18~9/27
郡山とからめて初訪問したいところ。

・諸橋近代美術館 「新収蔵作品ピカソ初公開―印象派と20世紀の巨匠たち」 7/4~11/30

<茨城県>
・「生誕130年記念 富田渓仙展」 茨城県立近代美術館 8/8~9/23

・「現代美術も楽勝よ」 水戸芸術館 8/29~10/12

・「大正ロマン・昭和モダン 大衆芸術の時代展 ~竹久夢二から中原淳一まで」
 茨城県天心記念五浦美術館  7/11~8/30
北野恒富から創作版画、雪帒、話題の小林かいちまで幅広く大正、昭和のモダンを見せる。
これも必見、絶対行く。

・「ひみつ基地 木津文哉の不思議な時間」 笠間日動美術館 8/23まで

<埼玉県>
・「所沢ビエンナーレ 引込線」 西武鉄道旧所沢車両工場 8/28~9/23
これも外せない。

・「長澤英俊展」 埼玉県立近代美術館、川越市立美術館、遠山記念館 
埼玉県内の3つの美術館あげての展覧会。特に遠山の展示は気になる。
川越市美から遠くて交通不便だから悩んでいたが、何と無料シャトルバスあり。今気付いた。
これで、3館行くことに決定!

<遠山記念館-川越市立美術館シャトルバスのご案内>
(運行日)
7月19日(日)、7月20日(月・祝)、8月2日(日)、8月8日(土)、8月15日(土)、8月30日(日)、9月5日(土)、9月6日(日)、9月12日(土)、9月13日(日)、9月19日(土)

川越駅    川越市立美術館前   遠山記念館前
12:00発 →  12:30着 12:35発   →  13:00着
14:05着 ←  13:35発 13:30着  ←  13:05発
14:10発 →  14:40着 14:45発   →  15:10着
16:15着 ←  15:45発 15:40着  ←  15:15発

※川越駅発着場 川越駅西口 足利銀行向かい


<長野県>
・「絵画と写真の交差」 松本市美術館 8/1~9/27

・「池田学展」 おぶせミュージアム・中島千波館 7/31~10/6

<石川県>
・「久隅守景展」 石川県立美術館 9/26~10/25
会期が短い。でも、これ巡回しないし、行けるかなぁ。。。。

<愛知県>
・「河目悌二展」 刈谷市美術館 7/18~9/6
先日名古屋に帰ってチラシに気づいた。まったくノーチェックであせる。何と入場無料。
なのに、200点も展示する生誕120年記念。愛知二中の出身だったとは全く知らなかった。
これも、絶対行く。

・「放課後のはらっぱ―櫃田伸也とその教え子たち」 愛知県美術館 8/28~10/25
あいちトリエンナーレプレイベント 名古屋市美と共催の現代アート展

<滋賀県>
・「大正期院展の輝き -大観・観山・靫彦・古径・御舟- 滋賀県立近代美術館 9/12~10/25

・「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM 9/1~12/13
さて、いよいよです。

<大阪府>
・「道教の美術」 大阪市立美術館 9/15~10/25
三井記念でやってますが、出品数はこちらが圧倒的。やはりあの大空間で見たい。

<和歌山県>
・「熊野三山の至宝―熊野信仰の祈りのかたち」 和歌山県立博物館 9/8~10/18
これも絶対行きたい。

・「第30回高野山大宝蔵展 高野山の名宝」 高野山霊宝館 7/18~9/27

今後も適宜更新予定。

「都市的知覚」 トーキョーワンダーサイト本郷

tikaku

お盆でギャラリーは皆お休み、と思いきや通常通り頑張って開いているギャラリーがあります。
トーキョーワンダーサイト本郷で開催中の「都市的知覚」を見て来ました。

国際的に活躍する卒業生、教授陣、学生8人によって「都市」を題材に「都市的知覚」を表出する試みです。様々に都市を生きるわたしたちの知覚に働きかける。
TWS本郷とともに岐阜県大垣市の情報科学芸術大学院大学が共催しています。

8名の作品中、個人的に気に入った作品(作家)は2つ。

・石原次郎 ≪interMetro≫ 2003年 上記画像は作品の一部で香港にある都市の地下鉄ホーム。
こちらは映像作品。
観賞者は台上に置かれたマウス1つを動かしてクリックする。
すると、スクリーンに世界各国の都市にある地下鉄ホームの映像が映し出される仕組み。
東京なら、赤坂見附、神谷町、銀座などなど。
NY、香港、ペキン、ソウル、パリ、メキシコなど一体全部で何本の映像が用意されているのだろうか?
カーソルを動かす場所によって、選択できる都市が国単位で違うのもポイント。
この仕組みに気づくのに時間がかかり、最初何度か同じ映像を見てしまった。
観賞要領が分かってからは、楽しくて、しかも映像が美しいのでこれだけで、20分以上遊んでいたと思う。

・前林明次 ≪Dreaming on the desktop ♯1≫ 2009年
メトロノームのカチカチ音が2階へ向かう途中から聞こえてくる。この作品は2階の最初の部屋にある。
観賞者は椅子に腰かけ、ヘッドホンを装着すると、5分間の作品が始まる。
机の上にはメトロノームと小さなラジオ。
ヘッドホンから聞こえてくるのは・・・。
ここから先は、お楽しみ。次は何が起こるか分からない楽しさあり。
聴覚ってこんなに敏感だったのかな。

*8月30日まで開催中。

「伊勢神宮と神々の美術」 東京国立博物館 平成館

ise

東京国立博物館・平成館で開催中の「伊勢神宮と神々の美術」に行って来ました。
展覧会公式HPはこちら

伊勢神宮と言えば、天照大御神を祀る内宮と豊受大御神を祀る外宮があることで著名です。
元々地元愛知県からは伊勢まで近鉄で約1時間半、いやもう少しかかるかな。
地元では結婚前のカップルは行かない方が良い(天照大御神は女神なので嫉妬されるから)とか様々な伝承があったりする。そもそも神様が嫉妬などするのだろうか???

さて、そんなことはさておき、伊勢神宮は約2000年前に鎮座されたと伝えられ、飛鳥時代から20年に一度、正殿はじめ、御装束、神宝を作り替え、御神体を新宮に遷す遷宮行事が行われている。私も過去1度遷宮の年に伊勢神宮に赴いた。
その様子は『古事記』『日本書紀』にも記載されている。

本展覧会は平成25年(2013年)の第62回式年遷宮を記念し、伊勢神宮の神宝と古文書、考古遺物、絵画、彫刻、工芸品などから、伊勢神宮の歴史と信仰、式年遷宮の様子、遷宮による工芸の伝統技術の継承などをたどるもの。併せて、神像彫刻や神宮以外の神社の古神宝などを紹介する。

展覧会構成は次の通り。
第1章 神宮の歴史と信仰
第2章 遷宮と古神宝
第3章 今に伝える神宝
第4章 神々の姿

個人的には、展覧会チラシに「近年注目されている神像彫刻」と記載されているように、私も神像彫刻に関心が高まっているので、第4章の神像彫刻群が一番楽しめた。

以下印象に残った作品です。

第1章
・≪伊勢両宮曼荼羅≫ 南北朝時代 正暦寺
・≪伊勢参詣曼荼羅≫ 江戸時代 三井文庫
この掛軸を見比べるのも楽しいと思う。
伊勢に行ったことがある人なら分かるだろうが、二見ケ浦、五十鈴川がちゃんと描かれている。今も昔も変わらない自然。天の岩戸が右上に小さくある。
こまかく見ていくととても面白い。でも、これって私がいつも見てる曼荼羅とかなり違う。

・≪雨天童子立像≫ 平安時代 金剛証寺
頭上に五輪塔を抱いているのは珍しい。空海が作った、作らせた?と言われている。

・≪大神宮御正体≫ 鎌倉時代 西大寺
美しい曼荼羅。

・≪東大寺大仏縁起絵巻≫ 上巻 室町時代 東大寺
後奈良天皇筆の詞書が優雅、さすが名筆。状態がとても良い。

第2章
古神宝の数々。やはり出土した刀がすごかった。ボロボロでも当時の美しさがしのばれる。
・≪須恵器器台≫ 奈良時代 宗像大社
沖ノ島の祭祀遺跡から出土。前面に人らしき顔があるのが祭祀に使用していた象徴のようだ。

・≪金銅高機≫  奈良時代 宗像大社
上記同様、沖ノ島より出土。

・≪桐蒔絵手箱及び内容品≫ 南北朝時代 熊野速玉大社
手箱の中の布張りの保存状態が非常に良い。蒔絵ももちろん美しい。

第3章
昭和以後の工芸の粋を集めた神宝の数々。
・≪鶴斑毛御彫馬≫ 昭和49年 神宮司庁
豪華な馬の置物。馬というのは昨年だったか奈良博で馬についての展覧会があったが、古より神々しい存在なのだろう。

第4章
・≪熊野速玉大神坐像・夫須美大神坐像≫ 平安時代 熊野速玉大社 注:8/30までの展示
国宝の神像。片膝を立て、両手を置く姿は珍しい。

・≪八幡三神坐像≫ 平安時代 奈多宮

・≪男神坐像≫ 平安時代 大将軍八神社
袍に花紋あり。まだ紋様が残っている状態なのは珍しい。

曼荼羅や古書を中心に展示替えが何度かあります。上記に記載した作品は8/10(月)のものとなりますので、ご注意ください。

それにしても、驚いたのは会場外のショップ。
赤福は販売してるし、伊勢のおかげ横丁が移転したかと思うほど、グッズが沢山販売されていた。
グッズを見ているだけでも楽しいかもしれない。何しろ、どこかで見た土鍋だなと思ったら、私が愛用している伊賀焼の「かまどさん」まで販売されていた。
伊勢も伊賀もいっしょくたになってる。三重県物産展のごとし。

*9月6日まで開催中。
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