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「石山寺」秘仏 勅封如意輪観世音菩薩 秋季特別公開

滋賀県のMIHO MUSEUMの帰路、石山寺のご本尊が特別に御開帳されているということで、急遽立ち寄ることにした。

ご本尊は、如意輪観世音菩薩(重要文化財)で平安時代後期の作と言われる。
高さ5.3メートルで思っていた以上にまずはその大きさに驚く。中まで入って近づかないと、せっかくのお顔を拝見することはできない。岩上の蓮華に座り、左足を下げる珍しい姿勢であった。
めったと開扉されないせいか、仏像の特に身体(下半身)の着彩はまだかなり残っていて、非常に見ごたえのある如意輪観世音菩薩であった。
なお、次回の公開は2016年の予定。

このご本尊以外にも奥の間には重要文化財の仏像群が多数展示されていて、そちらも併せて拝観させていただく。

石山寺の本尊如意輪観世音菩薩は、古来より、 安産・福徳・縁結びの観音さまとして広く信仰を集めてきたそうだ。
石山寺に入るのに500円、ご本尊を拝するのに更に500円となかなかお会いするのも大変である。

石山寺には今回初めて訪れたが、さすが花の寺と言われるだけのことはある。
広い境内のあちこちに美しい花々を見ることができた。
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「伊藤公象 WORKS 1974-2009」 東京都現代美術館

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東京都現代美術館で開催中の「伊藤公象 WORKS 1974-2009」を見て来ました。

美術館に到着したのは、日曜閉館前の17時ちょっと前。
美術館方面から来る人の数がやけに多いなぁ、何かあるのかしらと思っていたら、忘れてました。
同館で「伊藤公象 WORKS 1974-2009」と同時開催されている「メアリー・ブレア展」を見て来たお客さんだったのです。

幸いチケットは待ちなしで購入できました。
まず、先に向かったのは、「伊藤公象 WORKS 1974-2009」。
伊藤公象の作品は、あちこちで見かけていますが、本展のように初期作品から現在の作品まで網羅する内容の展覧会は初めて。

伊藤公象は、現在77歳、土を素材にした陶造形で知られる作家です。本展では、全17点の作品で、伊藤公象の世界「秩序とカオス」を紹介します。

まずは、お馴染の「多軟面体」シリーズ。
今回強く感じたのは、陶作品が布のように見えたこと。
陶芸と言えば、かたいものというイメージがあるが、彼の作品を構成する粘土を手で丸めたものは、固さなど全くないように見える。
触ってみたら、ぐんにゃりするのでは?と感じさせる。

そして、どの作品にも共通して言えることだが、可変性があるという魅力は大きい。
「多何面体」は置き方や数を変えれば、どんな場所でも展示でき、その場所に応じた表情・形を見せる。

東京都現代美術館という箱の中に展示された今回の作品は、どれも見事に会場にマッチしていたと思う。
展示方法も良かったので、作品が一層映えた。相乗効果。

屋外にあった「長石による襞No.2」2000年は、舟形の中にあるピンクの顔料入り長石が柔らかい印象を醸し出していて、ちょっと宇宙的なもの、サンゴのような海中生物を思わせた。

今回一番の大作は「アルミナのエロス(白い固形は・・・)」1984/2009年。
真っ白な無数の固形。1984年に制作したものに今回新たに作成したものを追加しての展示。

同じような白さを持つ「木の肉・土の刃」1991年は、文字通り刃のように先端がとがっている。
この細さが、作品に緊張感と純白が持つ厳しさが混ぜ合わさった、どこか怖いような作品。

総じて、どの作品も見ていてとても楽しめた。
単体で見るより、こうしてまとめて見せていただいたことで、改めて伊藤公象の作り出す別の世界を見たような気がした。

なお、同時開催の「メアリー・ブレア展」は閉館1時間前を切った時間に展示室に入ったが、途中で全く進まない状態(観客芋虫状態)に出会い、そこからはざっと見て出て来た。
グッズの販売を1階展示室を使用して行っていたが、そこは更なる大混雑。レジの数が不足していて、閉館時間になってもレジ待ちの長蛇の列には驚いた。
あれだけ広い回廊があるのだから、もう少し分散させればよいものを。

常設展は「MOTコレクション 夏の遊び場ーしりとり、ままごと、なぞなぞ、ぶらんこ」で、思いがけずエルネスト・ネトの巨大作品に出会えて嬉しかった。入った途端、スパイスの香りが強く漂って、あれだけの大きさの作品であれば、相当沢山の香辛料が中に入っているに違いない。

同時企画として:伊藤存+金氏徹平「10=指、超ただ住まいな子羊勘ぐり寝ずに食む」が開催されていて、通りで伊藤存と金氏徹平の作品が多かったわけだと、このブログを書いていて分かった。
こちらも、ファンの方なら楽しめると思う。

*伊藤公象展は、10月4日まで開催中。
注1:メアリー・ブレア展とMOTコレクションは10月5日(月)まで会期延長となりました。
注2:下記日程は「メアリー・ブレア展」「MOTコレクション 夏の遊び場」の2つの展覧会に限り20時まで展覧会観賞可能(チケット販売は19:30まで)。
9月25日(金)、9月26日(土)、10月2日(金)、10月3日(土)、10月4日(日)
*「伊藤公象展」および美術図書室・カフェは通常どおり18時まで。

「第五十六回 日本伝統工芸展」 日本橋三越

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日本橋三越で開催中の「-父子 友禅人間国宝-森口華弘・彦展」を見に行ったら、会場に行きつく前に本館の同じ7階で「第五十六回 日本伝統工芸展」が開催されていた。

私は見逃したのだけれど、先週の日曜(9/27)午前中にNHKの「日曜美術館」の特集でとりあげられ、放送されていた筈。毎年恒例の陶芸、金工、染織、漆芸、木竹工など7部門で、現代の匠たちが、最高の素材で、もてる技の限りを尽くして競う“工芸界の日本一決定戦”である。
日曜美術館HPはこちら

元々、この工芸展は存続の危機にさらされた日本の伝統工芸の各地に伝わる工芸技術の保護・育成のために、昭和29年、重要無形文化財(人間国宝)の指定制度とともに誕生したのだそう。
今回で第56回を迎えるが、私は過去に三越名古屋栄店で拝見した記憶があるが、今日の日本橋三越には驚いた。
名古屋と東京展は同じ数の作品が展示されているのだろうか?
私の記憶では名古屋展は会場がそれ程広くなかった筈。
今日は、入選作品及びその中から選ばれた受賞作品が全て展示されていた。

並んでいる作品それぞれを見ていると、この出品作品を作るのに、作家がどれだけの時間と労力と思いを費やしたのか、想像するだけで気が遠くなる思いがした。

今回の受賞作品一覧はこちら(全作品画像あり)。
入選作品一覧はこちら(一部作品画像あり)。

「日本工芸会総裁賞」(大賞の位置づけ)は、先に菊池寛実記念智美術館で個展を拝見した前田正博氏の「色絵銀彩角鉢」であった。
受賞作品は 、やや大ぶりでシンプルな銀彩の角鉢。展覧会で見た作品と比較すると、極めてシンプルな作品であった。

それにしても、タイムリーな。思わずおめでとうございます!と呟いてしまう。

受賞作品の中で、もう1点心をとらえた作品があった。
・中田博士『真珠光彩壺』(日本工芸会新人賞)
形が蕾のようで、その真珠光彩と名付けられた色がそのまま表現された陶芸。

ちょっと変わったものでは
・堀尾信夫 「横置楕円研 」 (日本工芸会長賞)
良い石が取れないと、このような作品は作れないそうだ。まさに素材との出会いから作品制作が始まるものもある。

・小椋範彦 「割貝蒔絵桜花文飾箱 」(東京都知事賞)
これは貝を使った蒔絵が実に美しく、江戸から明治時代にかけての貝と蒔絵を使用した工芸品を彷彿とさせる。ここに伝統工芸は見事に息づいていると確信できるような作品だった。

受賞作品にはならなかったが、人形のコーナーや七宝作品は興味があるので、特に念入りに拝見した。閉館まで時間がなかったのが残念。受賞しておらずとも、時にはっとする作品は、やはり人間国宝に指定されておられる方のものが多かったように思う。
陶芸などはもう少しじっくり見たかった。

入場は無料です。ぜひ、伝統工芸の美を味わってみてはいかがでしょう。

*10月4日まで開催中。
全国11か所に巡回します。巡回先とスケジュールはこちら

「世界をめぐる吉田家4代の画家たち」 三鷹市美術ギャラリー

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三鷹市美術ギャラリーで開催中の「世界をめぐる吉田家4代の画家たち」に行って来ました。
今ほど、吉田博の作品をあちこちで見かけることってあるのでしょうか。

ukiyoeーTOKYOの「吉田博と川瀬巴水」展を皮切りに、東博で大作の油彩画が1点、そして今、江戸東京の新版画展、神奈川近美葉山での「アンリ・リヴィエール展」、そして今日ご紹介する「世界をめぐる吉田家4代の画家たち」展。

本展の概要です。まず、本展で作品紹介される吉田家の画家7名をご紹介。
家族として集いそれぞれが〈旅〉を通じて自らの表現を追求した〈吉田家〉の人々とその作品を日本国内では初めて一堂に集め、紹介するもの。

近代風景画の巨匠・吉田博(1876-1950)。
吉田博(1876-1950)の義父・嘉三郎(かさぶろう・1861-1894)は、中津や福岡の学校で図画を教えたが、明治27(1894)年に33才で亡くなっている。博は、嘉三郎にその絵の才能を認められ、吉田家の養子となった。

博にとって義妹であり後に妻となったふじを(1887-1987)は、幼少の頃から画技を学び晩年に到るまで絵と旅に生きた時代の最先端をゆく女性でした。二人は1903年から4年間、絵を売りながらアメリカ、欧州からアフリカへと写生旅行をし作品制作に励む。

長男・遠志(とおし・1911-1995)⇒全米をキャンピングカーでまわりながら、父から受け継いだ伝統木版画の技法を広く世界に普及させる一方で、野生動物を求めて南極やアフリカへ旅をし、動物を主題に優れた作品を生み出す。

次男・穂高(ほだか・1926-1995)⇒中南米へ旅行するなかで自らの創作のモティーフを獲得し、従来の木版画に写真製版など新しい技法を用いる独自の手法により、戦後の版画芸術において新しい境地を切り拓いた。

穂高の妻・千鶴子(1924-)⇒岡本太郎主宰の前衛美術活動に参加した画家であり、結婚後は版画を主体にした活動に移行。

穂高の長女・亜世美⇒木版画制作のプロセスに関心を寄せ、制作過程で生じるチップス(木屑)を用いた作品を発表する他、現在はインスタレーションやプロダクトデザインにまで活動の幅を広げている。

という華麗なる一族。

嘉三郎の作品。どうやら、現存する唯一の嘉三郎作の油彩画≪海魚図≫大分県立芸術館蔵(下)から始まる。
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私の好きな高橋由一の作品にどこか似ている。やはり、江戸から明治にかけての洋画はみなどこか同じ雰囲気をまとう。

そして、この後華麗なる吉田博の洋画世界が登場する。
吉田博については、版画家、水彩画家として最初に知ったので、彼の油彩画については未知な世界。
で、これが抜群に上手い。
さすが、義父の嘉三郎に見込まれただけのことはある。
ふじをと一緒に世界を旅行した際に描かれた作品が並んでいるが、やはり明らかに吉田博の作品にインパクトがあった。
無論、これは個人的な好みの問題もあって、ふじをの作品の方が繊細で良いという方もおられるかもしれない。
・「雲井桜」 1899年
・「朝」 1901~1903年
・「ヴェニスの運河」 1906年
・「穂高山」 1913年~1926年
などなど、残念ながら今回作品リストがなかったので良かった作品名をせっせとメモしたが、書ききれなくなって途中でやめた。

中でも「穂高山」は印象深い。
吉田博は自身も大の山好きで、自身の登山哲学を持つ程である。数ある山の中でも彼がもっとも愛した山が穂高であった。それゆえ、次男には「穂高」の名を付ける。
折しも、この展覧会を見に行った日、ブログ「徒然と(美術と本と映画好き...)」のLysander様が穂高山を目指されている真っ最中。目の前に描かれている山に登られていらっしゃるのかと感慨深かった。

ふじをの作品は水彩画が中心。
長男・次男は父の影響を受けてか、版画芸術に傾倒。
しかし、その作風は兄弟なれどかなり違いがある。

私は長男の遠志の「夜の東京 新橋」が好きだった。この版画は彼の他の版画、海外旅行の際に制作した動物や風景とは違っているが、情緒が感じられたから。

総じて、吉田家の皆さんは世界中を旅している。
展覧会タイトルが「世界をめぐる・・・」から始まるので、余計その点を強調した展示内容となったのかもしれないが、明治、大正、昭和とこれだけ海外に出かけられる家柄というのはやはり庶民とは別格だったのだ。

吉田博の油彩画を多数見られたことが大きな収穫であった。

*10月12日(日・祝)まで開催中。

村田朋泰 展 「2」 GALLERY MoMo Ryogoku

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GALLERY MoMo Ryogokuで開催中の村田朋泰 展 「2」 を見て来た。
中に入る前に驚く。
momo両国は道に面したガラス張りのギャラリーだが、外からウィンドウを見て息を飲む。
これは凄いゾ。

アトリエ風の展示とはいえ、アトリエではない。
小さな小部屋風の展示空間は完全に村田朋泰の新しい世界が展開されているのだ。
中に入って更に驚く。

完全にいつものmomoがmomoでなくなってしまっていた。
白い箱をこんなにも1人のアーティストが変えてしまえるものなのか。
やはり、村田さんはただものではない。いつものゆる~い世界とは全く別の作品群。
この方は単なる映像作家ではないのだ。
ギャラリーは見事なひとつのインスタレーション空間になっていた。

壁に展示されているのは、土を使用したミクスメディア。
床に置かれているのは映像とオブジェがMIXした作品。この映像が雪の結晶みたいで美しい。

導入部だけで、ハートは鷲掴みされた。
奥へ進む狭い通路は前面に本物の枯葉で覆われている。

あぁ、この先を書いてしまってよいものだろうか。
ここから先も素晴らしいのだ。

今回の個展はこれまでと作風をがらっと変えている。
ギャラリーHPによれば、
今年のGEISAI #12 では、全く内容の異なる2つのブースを設営、1ヶ所は今までと同様ジュークボックスなどを配し、もう1ヶ所は名前を変えて新たな映像作品に挑戦し、村田朋泰の展示と気付かなかった方もたくさんいました。
 作品は、ご自身の双子の兄弟の心臓手術をテーマにした、シリアスな映像とインスタレーション、まるで作家自身のパラレルワールドを提示するかのような、新境地を示す作品となり、同じ村田作品とは気付かずに、多くの方から高い評価をいただきました。
 今展ではそうした新たな展開をさらに進化させ、両国のスペースをフルに活用したインスタレーションを構築し、新作映像と共に展示します。


GEISAI#12に出展されていたとは、全く知らなかった。
ここまで、読んでこの個展に行ってみようかなと思われた方、ぜひ、こちらの作家コメント(両国⇒現在の展覧会)をご一読ください。私は知らずに見に行ったのですが、このコメントを拝見して、内容が腑に落ちた感じ。

さて、続きが読みたくない方はここまでにして、すぐに両国へ向かってください。
ちょうど上手い具合に、ギャラリーのすぐ目の前に江戸東京博物館があり「新版画展」開催されていますので、併せて楽しめます(ただし、日曜・祝日・はギャラリーお休み)。

村田朋泰 展 「2」 gallrey momo 両国
東京都墨田区亀沢1-7-15 ⇒ 大江戸線両国駅が便利です。
TEL 03-3621-6813 FAX 03-3621-6814
2009 年9 月19 日(土) - 10月17 日(土)
火-土 11:00 - 19:00 日曜・月曜・祝日休み

六本木のmomoでも「村田朋泰2003-2008」展が開催中。
2009年9月26日(土)- 10月24日(土)
※最終日は17:00まで
火-土 12:00 - 19:00 日曜・月曜・祝日休

更に、続いて日本橋高島屋美術画廊Xでも10 月21 日から11 月9 日まで「ゆるゆる☆ズ」が開催予定。もう、全部行きます!
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この先も知りたい~という方は「続きを読みたい」をぽちっとクリックお願いします。

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「アンリ・リヴィエール展」 神奈川県立近代美術館 葉山

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神奈川県立近代美術館 葉山にて開催中のフランスの浮世絵師「アンリ・リヴィエール展」に行って来た。
さすがに、今日は遠出はやめようと昨夜まで思っていたのに、目覚めたら勝手に身体が動き出して駅に向かっていた。習慣って怖い。

そして、やはり行って良かったこの展覧会。昨土曜日の夜間開館で江戸東京博物館で開催中の「新版画展」も見たのだが、今日の「アンリ・リヴィエール展」の方がインパクトは大きかった。何しろ、初めて見る作品ばかり。しかも影絵という素晴らしい映像作品まであるではないか。
ここ葉山での開催メリットは、計り知れない。
なぜなら、展覧会のチラシに使用されている≪海の夜≫と全く同じ風景が美術館から臨めるのだ。
版画と現実がないまぜになる不思議さ。
今日の葉山は天気が良く、ヨットの白い帆が青い海に映えていた。まぶしいくらいの海景。

<展覧会概要とリヴィエールについて>美術館HPより。
アンリ・リヴィエール(1864-1951)は、19世紀末フランス美術界でブームになったジャポニスムに深い影響を受けた画家・版画か。北斎、広重らの浮世絵に心酔し、その影響を受けつつリヴィエールは、フランスの自然や都市の光景を見つめ、木版やリトグラフを中心に、多くの作品を生み出しました。

これまで日本では、リヴィエールと言えば、北斎の「富嶽三十六景」にちなんで作られた「エッフェル塔三十六景」シリーズがよく紹介されてきましたが、それ以外の作品はあまり知られていません。実際、リヴィエールの作品の全貌は、本国フランスでもなかなか見ることができないでいたのです。

2006年にリヴィエールの遺産を管理するヌフラール家が、フランス国家に多くのリヴィエールの作品と、リヴィエールが集めた日本の浮世絵版画などのコレクションを、遺産相続の物納という形で納めたことをきっかけに、その全貌を研究・公開することができるようになりました。そしてその浮世絵版画コレクションの研究に日本側が協力したことがきっかけで、この展覧会の企画が実現したのです。今回の展覧会は、リヴィエールの初めての本格的な回顧展です。


エッフェル塔シリーズも見たような見てないような私なので、それはそれはリヴィエールの版画は新鮮だった。日本に来ることが一度もなかったからこそ、独自の世界観を作り上げることができたのかなと
感じる。それが同じフランス人で浮世絵を手がけたヌエット氏との違いかもしれない。

<展覧会の構成>
第一部 カフェ「シャ・ノワール」 初期作品と影絵劇
第二部 ブルターニュ 自然の風景
第三部 世紀末パリ 近代化する都市の風景
第四部 リヴィエールと日本
第五部 近代日本絵画とリヴィエール

第一部
冒頭、リヴィエールの木版画が並ぶ。素朴だけど、日本の版画家では見られないような色使いと彫り。一目で気に入る。
そして、この第一部の目玉は影絵の再現。
展覧会の最後の部屋で実際にオルセー美術館でリヴィエールの影絵劇の再現とメイキングの映像(約29分)を流していたが、そちらと合わせて見ると尚良し。
カラフルなライトに照らされて、彼が作った影絵の切り抜き亜鉛盤が影として浮かび上がる様は、まさに1890年前後のパリ。
上映されたカフェ・シャノワールのポスターは、どこかロートレック調でもある。

彼が手がけた版画のモチーフには、波・海が非常に多い。波の表現と色に要注目。浮世絵の模倣というより、浮世絵に影響を受けて自身の世界観を最初から出していることに感心する。
見ていると和んでくるような版画作品ばかりだった。

第二部 ブルターニュ 自然の風景
リヴィエールは、木版画からリトグラフへ制作方法を移行していく。これによって、大量生産が可能になり、分業制作も始まる。
彼はブルターニュの地を愛し、別荘を建て、ブルターニュの風景画シリーズを開始する。
ここでも、目を引くのは日本の浮世絵では見られないような色づかいである。
また、影の表現が非常に上手い。

第三部 世紀末パリ 近代化する都市の風景
第三部ではのどかなブルターニュや海の風景から離れ、エッフェル塔を中心としたパリの街を描いた作品群が紹介されている。
「エッフェル塔三十六景」の扉絵は木蓮?大胆なデザインは広重それとも北斎譲りだろうか。

日本の浮世絵との対比と写真の版画化を試みた実証として、元ネタになっている両者が作品と揃いで展示されている。

≪塔の配管工≫≪セーヌ川のパリ祭、7月14日≫など、ここでも気になる作品がいくつもあった。

第四部では、リヴィエールと日本を結びつけた画商の林忠正との交流資料および、リヴィエールがコレクションしていた日本の浮世絵が出展されている。
公開されることがないのか、非常に美しい発色であった。
広重の「名所江戸百景 堀切の花菖蒲」は象徴的作品。リヴィエールは菖蒲が大好きで自身の印にも菖蒲をモチーフとしイニシャル「HR」を刻んだものがある。
刻印は上記菖蒲入り以外にも何点か作成しており、使用印も実物が何点も出展されている。

第五部では、リヴィエール作品に触れた日本人画家、作家への影響について紹介している。
ここで、杉浦悲水が登場する。私は非水のデザイン画が大好きだが、彼はリヴィエールに影響を受けていたのか、通りでリヴィエールが気に入ったわけだ。自身で納得する。

富本憲吉の≪雲≫木版も良い。
富本はイギリスのV&A博物館でリヴィエールの木版画を見て、帰国後自身で彫って刷るまで行った。
確かにリヴィエール作品にどこか似ている。
この他、昨日見たばかりの川瀬巴水、石井柏亭、伊東深水、吉田博などの新版画作家による風景画が展観される。
こちらの方が、なぜか昨日よりしっくり来る。
漆原木虫の木版が紹介されていた。彼は1910年に木版画の摺り師としてロンドンに渡った。そしてロンドンでブラングィン、パリではジャポニスム作家たちと共同で仕事を行ったが、自身作の版画も制作していた。ストーンヘンジの昼と夜を描いた木版画を1910年代に日本人が行っていたなんて、驚いた。しかも、完成度は高い。

驚きの連続、柔らかな色彩と陰影の魅力に溢れるリヴィエール展、非常に良い内容だった。
残念なのは作品リストの用意がないこと。

神奈川県立近代美術館には友の会やパスポート制度もないので、これも不満。
これだけ規模の大きい公立美術館なのだから、友の会制度をいち早く創設して欲しい。

なお、すぐ目の前の山口蓬春記念館では「琳派に魅せられたモダニスト」展を開催中。リヴィエール展チケットとの相互割引があります。
蓬春記念館では今回、尾形光琳≪飛鴨図≫、俵屋宗達≪伊勢物語色紙≫「梓弓」、≪狗子図≫などの琳派作品と蓬春の作品両方を楽しめます。
素敵なお庭もセットになっているので、のんびりくつろげます。

*10月12日(月・祝)まで開催中。オススメの展覧会です。

「大正期、再興院展の輝き-大観・観山・靫彦・古径・御舟-」 滋賀県立近代美術館

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MIHO MUSEUMの「若冲ワンダーランド」と併せてお薦めしたい展覧会。
滋賀県立近代美術館で開催中の「大正期、再興院展の輝き-大観・観山・靫彦・古径・御舟-」に行って来た。
しかし、アップがすぐそこという所で、記事が全部消えた。
FC2は本当に使いづらい。自動保存される時とされない時があるのはなぜ!?
気を取り直して書き直す気力がないので、大幅にはしょる。

展覧会の概要は以下の通り。~同美術館HPより~
1898(明治31)年、日本美術院は岡倉天心により創設されました。横山大観・菱田春草ら中心メンバーは朦朧体によって新画体を追求。日本画の近代化に邁進したのです。その後1907(明治40)年には文部省美術展覧会が開設され、さまざまな紆余曲折を経て、1913(大正2)年天心の死を迎えるに至ります。天心没後は横山大観、下村観山が中心となって、翌大正3年に日本美術院が再興されました。
本展では、芸術創造の段階ではいまだ青春といえる大正期の再興院展出品作を中心に展観し、近代日本絵画史上きらめく光彩を放った唯一無二の時代を名作でたどります。
  なおこの展覧会は、日本美術院を中心とする近代日本画の作品収集を方針に掲げた滋賀県立近代美術館(1984年開館)の開館25周年記念展です。平成元年に開催した「近代日本画の黎明・日本美術院」、平成4年に開催した「日本美術院 文展苦闘編」の後をうけ、日本美術院の歴史を段階的に展望しようとするシリーズ展の第3弾となります。


まさに、25周年を飾るのに相応しい内容だった。
全国の美術館博物館、個人、法人から名品を多数借りている。
東博や東近美、京近美で見たことのある名品や宮内庁三の丸尚三館所蔵の画帖「景雲余彩」(滋賀のみ)まで出展されていたことは大きい。

なお、会期中多くの作品に展示替えがあるのでご注意ください。
作品リストと展示替え予定表はこちら
なお、本展はこの後、栃木県立美術館に巡回するが、私としては滋賀で見ることをお薦めしたい。
理由は後述する。

今回の出展作家の中で、個人的には小茂田青樹が非常に気になった。
同時代の速水御舟はあんなにもてはやされているのに、なぜ小茂田青樹は大きく取り上げられないのだろう。
今回彼の作品で良かったのは
・「横浜海岸通り」
・「双鳩図」
・「ポンポンダリヤ」
・「村道」
・「四季草花図 夏・冬」
などなど。美しい色、緻密な描写は充分楽しませてくれる。

何しろ、再興院展の展覧会なので、大観、観山、武山から始まって、川端龍子、冨田渓仙、北野恒富、荒井寛方、堅山南風、近藤浩一路、小林柯白まで幅広い。

小林柯白の名は聞き覚えがなかったが、「道頓堀の夜」は非常に良かった。

滋賀で見ることをお薦めする理由は、同館の収集方針に近代日本画となっているため。
よって、常設コーナーにご当地女流日本画科で著名な小倉遊亀コーナーが別に設けられている。
今回も「姉妹」「憩う」「受洗を謳う」「観世音菩薩」などなど約14点が展示されていた。
更に、先に茨城で見た安田靫彦の「飛鳥の春の額田王」「卑弥呼」「静訣別の図」、下村観山「鵜鴎図」、青邨「浴女群像」、渓仙「梅林帰鶴図」「保津鮎釣」、御舟「鴨柿実」、小茂田青樹「母子鹿」、菱田春草「落葉」「雪の山」を見ることができる。
特に春草は夭折の画家であるため、作品数も他作家に比べると少ないので、ここで見ることができたのは大収穫。

現在湖南4館で「第4回ミュージアムスタンプラリー」を開催中(11月29日まで)。
MIHO MUSEUM
滋賀県立近代美術館
滋賀県陶芸の森
佐川美術館
以上4つの美術館が参画している。
特典として、スタンプを集めると2館目、3館目は観覧料が割引に、4館目は観覧料無料!
各美術館の受付で用紙をもらって、スタンプを押してもらって、2館目にLet’s Go~。

本当は企画展で印象に残った作品を列挙していたのに、2回同じことはできなかった。無念。

*10月25日まで開催中。

「THE ハプスブルク」 国立新美術館

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今年の西洋美術で最大の目玉展覧会と言って間違いなし。
展覧会公式HPはこちら
展覧会の見どころが動画で紹介されています。もちろん、以下で紹介している作品画像も多数。

「THE ハプスブルク」の初日に行って来ました。本日の金曜夜間開館は、かなり空いていましたが、係の方にお尋ねしたら午前中、午後はもっと混んでいたとのこと。

さて、今回初めて国立新美術館の広い空間に感謝しました。さすがハプスブルク家ゆかりの名品は会場負けなどしないのです。
むしろ、手狭な会場ではその濃厚さに窒息するやもしれません。
更に、私の嫌いな国立新美の白い壁が、国別に色分けされ壁面を色布で覆っています。やはり、重厚な西洋絵画には白い壁よりも今回のような深い緑、赤などの方がしっくり来ます。

私は2つの映像も(9分+5分)見て、約2時間弱会場にいました。今夜のように空いていて1周するだけなら、1時間ちょっとですが混雑状況如何で変わって来ます。本当に大作揃い+工芸品+140年ぶりに里帰りの日本古美術画帖もあるので、時間には余裕を持ってお出かけください。

展覧会会場は次の順で構成されています。
・ハプスブルク家の肖像画
・イタリア絵画
・ドイツ絵画
・特別出品
・工芸と武具
・スペイン絵画
・フランドル・オランダ絵画

ドイツ絵画とスペイン絵画の間に里帰り品や工芸と武具、そして映像コーナーがあるのが上手い配置。ちょっと休憩しつつ、分野の違う工芸など見て、スペイン絵画、フランドル・オランダ絵画に向き合えます。

しかし、よくこれだけ持ってこれたものと感心しきり。16~18世紀の巨匠たちの作品が終結しています。パンフの謳い文句に偽りなしでした。

順番に印象に残った作品と若干の感想を。

<ハプスブルク家の肖像画>
ここでは全8点のハプスブルク家の皇帝や皇妃の肖像画が展示されています。
・「オーストリア皇妃エリザベート」フランツ・クサファー・ヴィンターハルター
当代きっての美女だったというのも頷けます。今でも生産されている☆型の髪飾り、ドレスも印象深いですが、エリザベートの肩のラインの美しさに惚れました。
等身大?と思われるほど、大きな肖像画です。

<イタリア絵画>
・「若い男の肖像」 ラファエロ・サンティ
かの有名なラファエロに間違いないか、図録で確認しました。若い頃の作品。本人の自画像かと思いましたが、図録によれば、どうやらそうではないようです。

・「聖母子と聖カタリナ、聖トマス」 ロレンツォ・ロット
物語性を感じる描写。水色のドレスの色と天使の動きに注目。

・「聖母子とパウロ」 ティツィアーノ
イタリア絵画の中でベスト。聖母のまなざしが何とも言えない。更に透き通るようなベールの描写、深紅のドレス。この絵は良かった~。

他にはカニャッチ「クレオパトラの自害」、ティエポロ「聖母と6人の聖人」、ジョルジョーネ「矢を持った少年」などなど。イタリア絵画は上記を含めて全35点展示されています。

<ドイツ絵画> 全9点
今回もっとも感銘を受けたコーナー。

デューラー真作の油彩画が3点。
・「青年の肖像」
・「若いヴェネツィア女性の肖像」
・「ヨハンネス・クレーベルガーの肖像」
国内ではめったと見られないデューラーの肖像画は最高でした。「青年の肖像」は明らかに岸田劉生が彼の影響を受けたことが明確になる作品です。
一瞬、劉生の作品かと思いました。ちょっと東洋風の顔立ちの青年肖像画です。
また、「ヨハンネス・クレーベルガーの肖像」では絵の角3つにエンブレムやワンポイントがあって、これも劉生が真似ていたと、劉生のデューラーに対する傾倒ぶりを目の当たりにしました。
それにしてもデューラーの緻密な描写は凄かった。

もう一人の凄い画家、ルーカス・クラナッハ(父)の作品も2点。
・「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」
本展マイベスト。これはもう言葉を失います。3回位戻ってこの作品の前に立ちました。
まずサロメの顔。透き通るような肌にも着目ですが、薄笑いを浮かべたような表情が怖い。怖いんですね、この絵は。何しろ、サロメですから、聖ヨハネの生首、この首も血が滴りそうでリアル、持って薄笑いですから。
サロメの着衣、ターバンのような頭に巻いた赤布、帽子飾?や首飾の細かいこと!しかも絵具がキラキラと輝いていて、修復しているのか分かりませんが、全く色あせのない今描き上げたばかりかと思うような状態でした。
気になるのは、サロメの背後にある窓から見える風景。
この風景描写がまた細かい。湖にはその背景になっている山や木が映っています。

・アルブレヒト・アルトドルファー 「聖家族と聖アガピトゥス」
小品なれど、見ごたえあり。唯一のアルトドルファーの作品。非常に細かい。

<特別出品>
1869年日本とオーストリア・ハンガリー二重帝国間で修好通商条約が締結された記念に、明治天皇が皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に友好のしるしとして贈った画帖(絹本着色)が140年ぶり里帰り、初公開されています。

パンフレットをほとんど見ずに、展覧会を見に来たのでこれにはびっくり。西洋絵画の展示なのに、いきなり明治の浮世絵画家豊原国周、三代歌川広重、狩野派、住吉派絵師、松本楓湖、服部雪斎の肉筆画が現れたのですから。
恐らく、通常公開されることなどなかったのでしょう。発色が恐ろしい程良かったです。
このコーナーは混雑必至。単眼鏡もあった方が良いです。
ガラスケースに縦二列で展示されているので、奥にある画帖はやや見づらいのが難。

<工芸と武具>
てっきり絵画の展覧会と思っていたので、この工芸品にも驚きました。しかも、その上質かつ美しさはハプスブルク家のまさしく栄華の象徴でしょう。
解説パネルに町田市版画美術館で見たヴンダーカマー(驚異の部屋)について触れられていて、ちょっと嬉しくなりました。

・「シャーベット用センタービース」 1736-40年頃
皇帝や皇妃など家族の肖像を貝殻製のカメオに仕立ててあるもの。薄いピンク色が可憐でとてもかわいい。こんな器で家族皆でシャーベットを食べていたのかと想像するだけで、めまいがした。
特にセンターピースを下からも覗いて見ていただきたい。
下にも模様が彩られていて。上から見ても横から見ても下から見ても美しい。

・「ヒキガエル」 1600年頃
超リアルな置物?なぜ、ここにカエルがいるのかは不明。

この他「ココナッツ脚杯」「オウムガイ脚杯」「褐色瑪瑙の鉢」「ネプチューン像のある巻貝鉢」、玉石でできた浮き彫り象嵌の「置時計」などなど、これまで見たことのない工芸品の数々に目を奪われます。

<スペイン絵画> 全10点
本展パンフレットに表紙に使用されているベラスケスの「白衣の王女マルガリータ・テレサ」「皇太子フェリペ・プロスペロ」などこのコーナーも名品多数。

個人的には私の好きなムリーリョが3点(うち1点は工房との共作)出ていたのが嬉しい。
・「悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル」
・「聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ」
ことに、前者の大天使ミカエルは、めったと見られないようなドラマチックな作品。背景の黄色と赤のショー^ル、神々しさが画面全体から溢れています。

<フランドル・オランダ絵画> 全21点

個人的にはルーベンスがあまり好きではないが、今回出ているルーベンスは非常に良い。

・「悔悛のマグダラのマリアと姉マルタ」
これは大作。背景にあるのはカーテン?あの赤さと更にその後ろの暗雲、後ろで何やら怪しげな様子のマルタ。人物の表情と描写力が冴えわたっている。
・「キリスト哀悼」⇒小品ながら、ルーベンスらしさが満載。

私の好きなレンブラントは1点だけ。
「読書する画家の息子ティトゥス・ファン・レイン」 1665年頃

・「森の風景」 ヤン・ブリューゲル(父)
小品なれど、ブリューゲル(父)らしい一作。

・「女と子供と使用人」 ピーテル・デ・ホーホ
構図が面白い。ホーホの風俗画と言ってよいのだろうか。

忘れてならないのは、アンソニーヴァン・ダイク。イギリスで何点も見たけれど、今回は4点展示。
一番好きなのは「神父カルロス・スクリバーニの肖像」。
神父の優しさと威厳が表現されている。ヴァン・ダイクの肖像画は人柄も絵に現れているように感じる。

オランダ風景画と言えばこの人。ライスダール「渡し舟のある川の風景」1644年。
ライスダールの数ある作品の中でも名作ではないだろうか。少なくとも私個人の評価は、過去見た中でも最高レベル。とても素晴らしい作品だと思う。

ミュージアムショップもウィーン王家御用達デメルが出店していたり、ついつい買い物してしまいます。
会場限定販売の「ショコラーデントルテ」は1050円で、思わず手が出てしまった。

図録は通常2300円のところを10月25日まで期間限定で2000円で販売しています。
絵葉書も名品はきっちり抑えていて1枚100円、印刷も良かったです。

展覧会の記念講演会も下記日程で予定されています。「ハプスブルク家」についてもっと知りたいという方、ぜひご参加されてはいかが。
★9月26日(土)カール・シュッツ ウィーン美術史美術館絵画館長
「デューラー、ティツィアーノ、ブリューゲル、ルーベンス、ベラスケス ―ハプスブルク家とその画家たち」

★10月24日(土)中野京子 早稲田大学講師
「怖い絵―華麗なるハプスブルク家の人々」

★11月14日(土)千足伸行 成城大学教授
「ハプスブルク家栄光の軌跡:ルドルフ2世から美術史美術館へ」

■会場=いずれも国立新美術館3階講堂
■時間=いずれも午後2時~3時30分
■定員=いずれも先着260名 ※定員になり次第受付を終了します。
■聴講無料。ただし本展入場券(半券可)が必要です。 

何はともあれ、本展間違いなく今後混雑必至。
お早目の観賞をお薦めします。

日本橋高島屋の「ウィーン世紀末展」、今回の「THE ハプルブルク」と見てたら、まだ見ぬ地ウィーンに行きたくなってしまいました。

*12月14日(月)まで開催中。
来年1月6日~3月14日(日)まで京都国立博物館に巡回。
京都でも見たいなぁ~。

2009年9月27日前後に会期終了の展覧会 観賞記録

遠征にうつつを抜かしたおかげで、足許東京の展覧会で会期終了近い展覧会で未見のものを駆け足で見て来た。でも、まだ残ってしまったのが、泉屋博古館分館の「高島屋史料館所蔵名品展(後期)」と台東区書道博物館の「趙之謙とその時代」、あと東博の常設も見ておきたい。
これらは、今度の土曜に何とかと思っている。

で、見て来た展覧会記録。会期終了期限の記載のない展覧会は9月27日(日)まで。

1.「建築家 坂倉準三展」 汐留ミュージアム
神奈川近美で開催していた「坂倉準三展」との共同企画。こちら汐留では「モダニズムを住む-住宅、家具、デザイン」を中心とした展示内容。
神奈川近美では、公共建築主体とした展示だったため、汐留の方が身近な感じがした。
更に、こちらの展示内容は毎回素人にも分かりやすいのが特徴。
今回も坂倉と共同で仕事をしていたシャルロット・ペリアン考案の大扉が、原寸大で再現されていたりで頭の中でなく、実際にその仕事を見せてくれたのがありがたかった。

最後に坂倉デザインの低座椅子など実際に座れるコーナーもあり、体験型で楽しめる。
作品リストも丁寧で申し訳ないほど。
数ある坂倉設計の住宅の中では、大谷石の壁面があるMa邸(1957年)や玄関までのアプローチが素敵だったHa邸(1968年)が好み。

坂倉準三作品も良いが、私の関心はむしろシャルロット・ペリアンに傾いていった。彼女のデザインした「折り畳み寝椅子」は今見ても素敵だ。
坂倉デザインものでは、前述の低座椅子とハマグリ型の小テーブルが気に入った。

2.「Stich by Stitch ステッチ・バイ・ステッチ 針と糸で描く私」 東京都庭園美術館
出展作家8組による刺繍・手芸系アート作品の展覧会。
詳細は美術館の展覧会HPに詳しいので、こちらをどうぞ。
<出展作家>
秋山さやか、伊藤存、奥村綱雄、清川あさみ、竹村京、手塚愛子、ヌイ・プロジェクト(大島智美[おおしまともみ]吉本篤史[よしもとあつし])、村山留里子

どれも良かったけれど、一番印象に残ったのは村山留里子さん。
高橋コレクションの作品を上回る、かっこいいしびれるような作品群だった。

手塚さんは所沢の「引込線」でも、大作で圧倒的な存在感を出していたが、ここでもピンク色の糸の束がとても美しかった。彼女の場合、刺繍そのものよりも、糸自体の美しさも見せてくれる点が違う。
やや残念だったのは、白い布地の刺繍作品。布地が白で良かったのか。別の色の布を床にひくという冒険、例えば深紅とか、が見たかったかな。

竹村京さんは、これまで見た彼女の作品の中で、一番分かりやすかった。でも、ちょっと私の好みではない。

秋山さんはお馴染。少し前のhigureでの展示を思い出す。

清川さん、奥村さん、伊藤さんはちょっと上記にあげた4名より印象が薄い。奥村さんの刺繍とは分からぬ刺繍は驚いたけど。。。
Nuiprojectのお二人は、立派な工芸品の域に達しておられる。

全体として、まずまずな内容だが、残るものはあまりなかったのはなぜだろう。

3.「名優たちの系譜-幕末・明治の歌舞伎と現在」 太田記念美術館 9/26(土)まで
歌舞伎に詳しい方なら、絶対楽しめる内容。既に、あべまつ様、ogawama様が記事をアップされている通り。
しかし、私は歌舞伎の世界は未知。
今回は浮世絵だけでなく、実際に演じている役者の写真も併せて展示されていたのがポイント。
おぼろげながらに、歌舞伎の様子が分かった。

とりあえず、いつも通り絵の良しあしを観賞した。
気になったのは、三代歌川豊国の大首絵。この人の「松王丸」はとても良いと思ったら、やはり晩年の代表作とのこと。
2階では、豊原国周の縦三枚もの「五代目尾上菊五郎の小間物屋才次郎」、「歌舞伎座中満久 皿屋舗化粧姿鏡・・・以下略」は物凄い迫力だった。明治の浮世絵は血みどろというか凄残で、生々しい。

歌舞伎と言えば、やはり死絵を忘れてはならない。仏画の涅槃図に見立てた死絵「名優九代目市川団十郎」などは珍しい作品。

とにかく歌舞伎好きな方はぜひご覧いただきたい展覧会である。

4.「銀座界隈隅ガヤガヤ青春ショー」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー 9/29日(火)まで
gayagaya

テツ様からの情報で、全くノーチェックだった展覧会を見に行くことができた。
人気イラストレーター&画家である、灘本唯人・宇野亜喜良・和田誠・横尾忠則の4人展である。
言いだしっぺは横尾忠則。彼の呼びかけにより4名が集合し懐かしの銀座時代を回顧するグループ展が開催されることになった。

和田誠さん大好き、宇野さんも気になる私としては、ぜひ見たい内容。
灘本さんだけお名前を聞いても作品がピンと来なかったが、作品見たらすぐ「これが灘本さんの作品だったのか~」と感動。田辺聖子の本の表紙など手がけておられて、大変お世話になっている方であった。お名前を覚えず大失礼である。
小学生から中学生以後、表紙を基準に本を選んで読むことが多かった。
その時、一番好きだったのが和田さんのイラスト。
その次は灘本さん。
亡くなられてしまったが真鍋博さんのイラストも大好きだった。真鍋さんは星新一さんの著書で挿絵を多く手がけておられたので、非常に馴染がある。

参加4名単位に作品コーナーが分かれていて、各々の世界観を楽しめた。
やはり和田さんの星新一似顔絵や、かっこいいJazzのポスター、「レジェの鉄腕アトム」、マンガ読本などこの方の作品はどれもこれもユーモアがあるか、かっこいいかで惹かれる。

宇野さんのエロティックなんだけど、いやらしくない絵も良い。幻想的っていうのかな。
横尾さんが一番苦手。あの劇画調タッチがどうもね。今回あった中では「男性センス学」の作品は悪が強すぎず、でも面白い作品。横尾さんらしからぬ所が良いと言ったら怒られそう。

本展のポスターが4種類作成されていて、サイン入りで1枚5千円で販売されていた。
更に、本展を記念してか白水社より横尾 忠則、宇野 亜喜良、和田 誠、灘本 唯人 著
「四人四色 イラストレーター4人への30の質問」(2,310円)が出版されている(下)。妙にあっさりした表紙が気に入らないけれど、敢えてそうしたのだろうか。
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展覧会のチラシ(ポスターにもなっている)が素敵で捨てられない。保存しておこうっと。
注:日曜・祝日は休館 入場無料です。 11:00~19:00(土曜日のみ18:00まで)

5.「昭和少年SF大図鑑展」 弥生美術館
昭和20~40年代の少年少女雑誌に見るSF関連挿絵、口絵、付録などなど、サブカル満載。
懐かしいものもいくつかあったが、さすがに私がちょうど生まれたあたりなので、見たことのない絵がほとんどだった。
ただ、当時未来として想定されているもののいくつかは現実化していて、まさに時代を先取りしていたんだなと感じた。
プラモデルなど、SF好きにはたまらない内容の展覧会。

6.「生誕125年 知られざる竹久夢二展~意外な素顔から、初公開作品まで~」 竹久夢二美術館
この展覧会を見る前に、新宿高島屋での竹久夢二展を見たばかりだったので、相互補完がされて良かった。どうしても、展示室が手狭なため、ごっちゃり感と落ち着かない感じはするが、私の好きな「セノオ楽譜」はこちらの方が揃っていた。
今回は夢二の肉筆「王華街夜曲」が初公開されていた。

気になったのは、雑誌『東京パック』の「親子にあらず」という挿絵。
夢二は東京パックにも絵を提供していたのか。ちょっと意外だった。

「没後40年 ノエル・ヌエット展~東京を愛した仏蘭西人~」 ガスミュージアム はじめての美術館49

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東京都小平市にあるガスミュージアムで9月27日(日)まで開催中の「没後40年 ノエル・ヌエット展~東京を愛した仏蘭西人~」を見て来ました。

ガスミュージアムのある小平市には今回初めて行きました。西武新宿線自体めったに使用しないので、どうも車内でも落ち着きません。
距離的に一番近いのは小平駅ですが、その一つ手前の花小平駅から美術館まで西武バスが走っているため、今回はそちらを利用しました。

ガスミュージアムは、文字通り東京ガスが運営母体となっており、東京ガスの事業史や暮らしとガスとの関わりを紹介している歴史博物館。ガス灯館(明治42年建築の東京ガス本郷出張所を移設復元)とくらし館(明治45年建築の東京ガス千住工場計量器室を移設復元)の2棟が敷地内にあります。

今回の企画展はガス灯館2階の展示室で開催されていたため、ガス灯館に向かいました。
ガス灯館の1階は様々なガス灯や東京ガスの創始者である渋沢栄一関連の歴史資料などが展示されています。

お目当ての「ノエル・ヌエット展」では、ノエル・ヌエット没後40年を記念し、スケッチを元に制作された版画を中心に、滞日中に手がけた画集や書籍、絵葉書など41点により、戦前戦後の東京の風景の変遷を紹介するものです。

私は、ノエル・ヌエットの名を今回初めて知りました。昨年だったかニューオータニ美術館で彼の作品が出ていたそうですが展示されていたことさえ知りませんでした。
私のように彼を知らない方もおられると思うので簡単に略歴をご紹介。

<ノエル・ヌエット略歴>
1885年(明治18年)フランス北西部に医者である父の長男として生まれる。
詩人でもあるノエル・ヌエットは旧制静岡高等学校講師として1926年(大正15年)に初来日。
一旦帰国するが、1929年(昭和4年)再来日し、東京外国語学校講師に就任。他大学でも教鞭を取る傍ら、東京各書をまわり、その風景をスケッチし詩にうたい、詩集や画集を出版。
1962年77歳で帰国しパリに居住し、1969年84歳でパリにて死去。

展示されていたのは版画「東京風景」合計24点+目録(1936年)。
全作品を一度に見られたのは非常に良かった。
この版画集は、旧制静岡高校時代の生徒の親が上野末広町にあった土井版画店で、店主より木版画にすべき東京風景を描かないかと誘われて実現したもの。

最初の1枚「桔梗門」2枚目の「増上寺」は黒一色で刷られたが、その後の作品から土井氏の判断により色を加えることとなる。
やはり、色付の方がとても良かった。
元々、ヌエットのペン画のスケッチを元に、版画化するのに彫師を相当悩ませたらしい。

どの風景も東京らしい場所を選んでいるが、作品として特に好印象だったのは次の通り。
・「桜田門」 3枚目で最初に色が加えられた作品。
・「赤坂見附」
・「紀尾井町」
ヌエット本人が東京でもっとも好きだったのは皇居のお堀端だった。
そのせいか、「桜田門」意外にも「弁慶堀」(実際は三宅坂、桜田堀)、「馬場先門」などお堀近辺を多く題材としている。
他には「亀戸」「浅草寺」「歌舞伎座」「明治神宮」「日本橋」「両国橋」などなど浮世絵らしい場所が沢山。
全体として線はきっちりしていて、線は細かい。
色遣いは美しい。

この他、気に入ったのは「メッセージカード」の数々。ハガキよりやや小さめで、愛らしかった。

作品リストだけでなく、ヌエットのスケッチコメントや作品解説、白黒だが作品図版まで掲載されたA32つ折り資料が準備されていて、非常に好感が持てた。更に最終頁には主な参考文献まで記載されている、プチ図録のようだが版が白黒なのが残念。と言ってもカラーになったら本当に図録になって有料になってしまう。

江戸博で開催中の新版画展にもヌエットの木版画が出展されているとか。
予習にもなって良かったと思う。
なお、ガスミュージアムは入館無料

ちょっと遠いですが、ヌエットの版画をもっと見たいという方はぜひ。

*9月27日まで開催中。
ガスミュージアム
・西武新宿線 花小金井駅北口より
・JR中央線 武蔵小金井駅北口より
(武21)錦城高校経由...東久留米駅西口ゆき西武バス 「ガスミュージアム入口」下車徒歩3分
注:バス停はひとつ前の「錦城高校」からでも徒歩約3分とあまり変わりません。
開館時間 10:00~17:00(入館は16:00まで)
休館日 月曜日/年末年始休館  月曜日が祝日及び振替休日の場合は翌日が休館
駐車場 50台(無料)
〒187-0001
東京都小平市大沼町2-590
TEL:042-342-1715

2009年9月27日終了の個展 TWS本郷・Studio90・K.S.ギャラリー原宿

今週の日曜9月27日に会期終了の現代アート企画展&個展を3つご紹介。

1.NEW DIRECTION展 ♯1「exp.」 TWS本郷
本展は、TWS(トーキョーワンダーサイト)と京都造形芸術大学の連携のもと、若き才能を発掘・育成するためのプログラム。京都造形大の後藤繁雄教授と東京藝大の木幡和枝教授の共同キュレーションにより、全国の美大・大学院卒業者の中から」「新たな動向」を予感させる才能を選抜し、美術による社会への作用を目指す。

という訳で、見て参りました。
全国から選抜されたアーティストは次の7名(五十音順)。
・小宮太郎(京都造形大学)
・しょうじまさる(東北芸術工科大学)
・藤本涼(東京藝術大学)
・三井美幸(東京造形大学)
・宮永亮(京都市立芸術大学)
・村田宗一郎(東京藝術大学)
・山下耕平(京都市立芸術大学)

良かった作家は、1階から2階に展示していた次の4名。
☆しょうじまさる 「増殖Ⅱ」 2009年 インスタレーション
雑誌・本を階段横の壁面に見事に作品として展示していた。場所に合わせて、作品も変化し、増殖するのが、この人の真骨頂なんだろう。過去の作品集も拝見したが、面白そうな作品がたくさんあった。
大地の芸術祭の「いけばなの家」に出展しても良さそうな作家さん。

☆山下耕平 「mountain」 2009年
8月にあったINAXギャラリーの個展も良かった。危うく作品を買うすんでのところで思いとどまった作家さん。今回はINAXギャラリーの個展とは趣を変えて、メディア/インスタレーションになっていた。
この作家さんは売れるんではなかろうか。
発想(スコープで覗く)が面白い上に、人型がどうも気になる。今回はついに、与えられた個室を箱庭ならぬ箱山風景にしてしまった。
造形的に面白い。私が欲しいと思ったのも、実は今回ミニチュアになってしまっているが、もう少しサイズの大きい人型だった。
美術館のグループ展などで一度作品の発表をして欲しい。
過去の作品集を見ると、平面作品には、どことなく名和晃平さんの影響を受けている気がした。

☆藤本涼 「live on air」シリーズ 2009年 ダイレクトプリント、アクリルマウント
写真表現が全6点+「i dance/alone」(映像)。まだ在学中の学生さん。初期の野口里佳さんの写真を思い出したが、彼の場合、写真に加工しているようだ。私好みの写真。中でも同シリーズ中「bridge」は欲しいと思った。買えるのだろうか?
映像の方は、写真に比べるとインパクトに欠けた。この映像の向かいにあった映像(次に紹介)があまりに素晴らしかったせいもあるかもしれない。

☆宮永亮 「wondjina」 2009年 映像 7分
これは素晴らしかった。印象的には断トツ。
他に人がいなかったので、思わず座り込んでじっくり観賞したが、椅子を置いて欲しかった。コンクリートの床は冷たい。
音楽付きの映像でいずれも宮永本人の作。タイトルの「wondjina」はオーストラリア先住民に伝わる精霊の名前。本人コメントによれば、日本人である作家が、世界の裏にある普遍性を求めそれをアボリジニの精霊の名に託して、故郷である北海道の風景を引用して表現した作品らしい。
音楽付きの映像と言えば、高木正勝を思い出す。宮永は京都の児玉画廊で作品を扱っているとのこと。
宮永お手製?の作品集が置いてあったが、紙に印刷しても美しかった。
高木正勝の映像と比較すると、ストーリー性は感じられなかったが、むしろ作り物ぽくなくて、その分私には好感が持てた。どうやって制作しているのか知りたい。


2.田中真吾 「灯に照らされた闇」 studio90/京都
更新される都度拝見させていただいている「a holic days」のmoriさん主宰のスタジオでの個展。
この連休で若冲とからめて、京都市南区までレンタカーで行って来た。
studio90のHPはこちら

今回は展示方法にポイントがある。
真っ暗な部屋でろうそくに火を灯して作品を観賞する。
原始、火は縄文より人間の生活に欠かせない。そしてろうそくの灯で思い出すのは、停電時に使用した時の何とも言えない高揚感。これから、どうなるんだろう?みたいな感覚。

蝋燭の向こうにある白い漆喰の壁に幾本もの黒く太い線が描かれていた。描くというのは誤りで、この黒い痕跡は漆喰の上で紙を燃やして作ったもの。焦がし系アートだった。

作家さんご本人と一緒に灯りの元、観賞させていただいた。
特段、黒の痕跡に対してイメージがあった訳ではないそうで、ただただ、浮かぶがまま燃やして行って現在の姿になったという。

27日までの展示が終了したら、この漆喰の壁は壊される。残り数日の闇の中でのアート体験をぜひ味わっていただきたい。


3.「僕は生きているか?」 石塚智寿 K.S.ギャラリー原宿
前述のトーキョーワンダーサイト本郷で本展のA4チラシを見つけ、とても気になったので見に行った。
茨城大学卒業後、独学で絵を描き始めたという。
作家本人のHPはこちら。作品画像を見ることができます。

今回は人の顔らしきペインティングが10数点。
過去の作品集を拝見すると、まだ作風が安定しておらず模索中といった感じを受ける。
黒を背景とした作品が多く、一見おどろおどろしいのだが力強さを感じた。
背景の黒は本人の中にある闇?
面白い色遣いをしているので、背景色の黒にこだわらず、新しい展開も見てみたい。

なお、2009年11月28日~12月20日までトーキョーワンダーサイト本郷で「TWS-EMERGING2009」にて「29年生きた魂」を開催予定。

2009年9月22日 埼玉 長澤英俊展他 観賞記録

本来ならば、ひとつひとつ記事にすべきところですが、今日の埼玉ツアーの行き先で開催されている展覧会は全て明日9月23日まで!

とてもせっかくこのブログを読んで行ってみようと思っても明日以後では手遅れ。
いや、既に手遅れかもしれませんが、お時間のある方はぜひ行ってみてくださいませ。

では、回った順でまとめます。先に結論を申し上げると、川越市美が一推しです。で、そこまで行くなら遠山記念館、特に建築に関心がおありの方は、セットでおでかけください。
明日は川越駅から無料シャトルバスが2往復遠山記念館まで出ています。あの昭和初期の邸宅を一見するだけでも、足を運ぶ価値があります。

1・「長澤英俊展-オーロラの向かう所」 埼玉県立近代美術館

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現在埼玉県の3つの美術館共同で、郷土出身の世界的に活躍する彫刻家長澤英俊の展覧会を開催している。
まずは、JR北浦和徒歩3分の埼玉近美の展覧会へ。本会場での展覧会については、「はろるど・わーど」さんが詳細な記事を書いていらっしゃるので、そちらを併せてご参照ください。
なお、三会場とも展示プランは長澤本人が手がけています。
・「線の影」 2000年
・「ゼロ時間」 1992年
・「ゼノビア」 1994年
・「長椅子」 2002年
・「二つの石」 1972年
・「イリデ」 1993年
以上が特に気に入った作品。以外にも材料に蜜ろうを使った彫刻が上記のうち2点ある。河口龍夫も蜜ろうをよく使用するが、アーティストにとって、蜜蝋は惹かれる素材なのだろうか。「ゼロの時間」に至っては、狭い空間全てが蜜蝋で塗られており、少し中を覗き込んだだけで、甘い香がした。
大型の彫刻作品は、埼玉近美の天井がやや低い空間だと手狭な感じは否めないが、だからと言って作品観賞への影響はそれほど感じなかった。

2.「長澤英俊展-夢うつつの庭」 遠山記念館

toyama

てっきり屋外彫刻中心かと思ったらさにあらず。遠山記念館は展示棟とは別に、昭和初期の有形文化財に指定される和風邸宅でも著名。

今回は、この遠山記念館のある川島町出身の長澤の思いがかなりこめられた内容となっている。
驚いたことに、昭和初期邸宅の中に相当数の彫刻作品が家と一体になって展示されていた。
越後妻有トリエンナーレ大地の芸術祭で見た古民家プロジェクトの大規模版のよう。
ここだけご一緒した遊行七恵さんは、貴重な邸宅が彫刻によって悪影響を及ぼすのではないかと心配されておられたが大丈夫。

しかし、ふすまに銅?を貼るなど、「一体どうなってるの?」という作品の数々で400畳もの邸内のどこに彫刻が潜んでいるか、探すのも楽しかった。
天井から鉄?製の船がぶらさがっていたり、作品設置場所とタイトルなどが書かれたチラシ1枚あると見やすかったが、図録以外何も用意されていなかったのが惜しまれる。
全部で10点のこの遠山記念館のために制作された新作群は、やはり必見かもしれない。
当然、邸宅とセットの作品なので、ここでの作品は、他館への巡回はない。
作品の展示画像はこちらから一部ご覧になれます。

3.「着物の絵模様物語」展 遠山記念館

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展示棟では、上記企画展が開催されている。通常の展示もちゃんと行われているので、この期間に行くと2倍楽しめる。
かつての「小袖」展のように江戸~明治初期にかけての着物の展示。
刺繍が見事なものなど様々だが、やはり紋様、デザインが愛らしい。子犬付きのもの、雀いっぱいのもの動物系に弱い。

4.「長澤英俊展-オーロラの向かう所-」川越市立美術館

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シャトルバスで川越駅に戻り、川越市美に東武バスで向かう。
全く予備知識なしで行ったが、この美術館にものすごい長澤作品が展示されていた。
展覧会タイトルとなっている「オーロラの向かう所-柱の森」は、今回見た作品の中でもっとも感銘を受け、かつ楽しむことができた。
地下1階に奥から僅かな一筋の光が入る以外、真っ暗な空間に大理石の柱を49本規則的に並べ、その柱頭に大理石の板を渡している作品。
中に入って4分ほど暗さに目が慣れてこないと、柱も見えてこない。
目がなれると、これが実に不思議な空間となっている。
柱の間を自由に歩くと分かるが、一方からだと柱は白く、逆方向からだと柱は黒く見える。
森の中を歩いているような気がした。
見る方向によって、見え方が変化する彫刻は、実に楽しい体験だった。 

川越市美では、これ以外に4点、計5点の作品が展示されている。最長6.5mの「鷲」1989年も圧巻な作品。

総じて長澤の作品は、バランス、重力、力学を重視しているように感じた。特に大型の作品、鉄や木を組み合わせたものにその傾向が顕著であるが、柱の森も柱頭に大理石の板を渡すという、やはりバランスを意識した作品だった。これだけの大作彫刻を見る機会はなかなか得られないだろう。
1993年ぶりの回顧展だというが、満足のいく内容だった。

なお、川越市美をお薦めするもう一つの理由は、常設展示にある。
今話題の難波田龍起、織田一磨の作品に加え、版画作品(内田静馬、川西英、畦地梅太郎)やご当地作家岩崎勝平、更には松本竣介など気になる作家の作品が展示されていた。また、相原求一郎室では「原野」が特に良かった。

5.第1回 所沢ビエンナーレ美術展 「引込線」 西武鉄道旧所沢車両工場

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作家自身による手作りの自主企画展。昨年のプレ美術展に続き、昨年より会場を拡大し、新たな作家を迎え、規模を拡大して行うもの。
展覧会タイトル「引込線」には、美術に関心をもつ全ての人々の覚醒した意志を引き込む、吸引力のある磁場を作り出したいという意図が込められている。
出品作家は37名。以下印象に残った作家は、やはり既存の名を知った作家がほとんど。
知らない作家で、いいなと思った作家は3人。

・瀧健太郎 「Bild、Mull ♯4 Kern」 2009
映像とオブジェを組み合わせた作品だが、色が良かった。これ一つでインスタレーションとして完成しており、映像の色の変化が美しかった。

・橋爪彩 「Red Shoes Diary」シリーズ(Berlin♯2、♯3、♯6、♯7、♯8)他全点
平面作家の中ではもっとも気に入った。橋爪の小さな作品があの大きな会場でも決して負けていない所が素晴らしい。

・建畠朔弥 「午後二時のショッピングモール」

大友洋司の抽象絵画の他、既存作家では手塚愛子、戸谷成雄、先日馬喰町で個展を拝見した冨井大裕、遠藤利克、窪田美樹の作品がやはり力強い。

会場が大きいだけに、力のない作家の作品は訴えかけてくるものが弱く、その力量が通常空間より明確であった。シビアな環境である。
横浜のBankArtも似たような空間だが、原口直之ほど作品の力があれば、場に負けることはないのだが。

本展にひとつ苦言を申し上げるとすると、最寄駅の西武所沢駅降りてどこにも案内がないのが気になった。ポスター、道案内の立て看板のせめてひとつは駅前に置いてもよいのではないだろうか。

「特集 狩野派の世界2009」 静岡県立美術館

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東京以西遠征を締めくくるに相応しい展覧会を本日見て来た。
静岡県立美術館で開催中の「特集-狩野派の世界-2009」である。

狩野派と言えば、少しでも誰でも一度はその名を聞いたことがあるのではないだろうか?
私など、狩野派の系譜をひく画家があまりにも多いため、その名をなかなか覚えられず、江戸狩野、
京狩野等々「あれれ?」という体たらく。
現在板橋区立美術館で開催中の英一蝶も、元は狩野派で学んだ画家であった。

さて、狩野派の先祖が伊豆出身であるという言い伝えをご存知だろうか?
本展チラシによれば狩野派と静岡とは様々な縁で結ばれているらしい。江戸時代を通じて幕府の直轄地であった駿府(現静岡市)の主要な絵画制作を担当したことなど、静岡とのゆかりが大変深く、ゆえに同館では開館前から狩野派の作品を系統的に収集し、その数今では40件を超えるそう。
狩野派作品40点も所有している公立(国立の東博、京博は除く)の美術館、博物館は他にないだろう。
本展では、同館所蔵コレクションを中心としつつ、個人所蔵家の近年発見、新発見の初公開作品も併せて展示し、400年に及ぶ狩野派の変遷をたどるもの。
なお、同館では1999年に初の「狩野派の世界」を開催、2003年に「特集 狩野派の世界-2003」が開催され、今回6年ぶりの「狩野派の世界-2009-」開催となった。

過去2回の展覧会開催すら知らず、今回はどんな作品が出てるのだろう?と期待半ばで向かったが、素晴らしいコレクションと新出品の数々にただただ、感動するばかり。
ゆったりとした空間で狩野派の美と技術を目いっぱい楽しませていただいた。
しかも、系統だったコレクションをされているおかげで、狩野派の流れをおよそ実作品を通して知ることができる。
古美術絵画系では、私が今もっともお薦めできる展覧会である。

展覧会の構成とともに、特に印象に残った作品は以下の通り。所蔵先の記載がないものは静岡県美所蔵。主な作品画像は美術館HPをご覧ください→こちら

1.室町から桃山
・「四季花鳥図屏風 室町時代 初期狩野派
花鳥図のタイトルだが山水図と花鳥図の中間に位置する絵画。元信様式学習時期の永徳作品の可能性も伺われる。誰が描いたかは分からないが、とにかく素晴らしい室町初期の狩野派屏風絵。

・「富士参詣曼荼羅図」 重文 元信印 室町時代 富士山本宮浅間大社蔵 注:9/27まで展示
やはり、静岡と言えば富士。数ある富士参詣曼荼羅の中でも名品中の名品。富士に登る人々の姿がしっかりと描かれていて描写が細かい。一体何人の参詣者が登場しているのだろうか?
つい先日和歌山で拝見した「那智滝曼荼羅図」にも見られたように、左右に月と日が描かれ中央山の
中に阿弥陀を中心とした三尊もしっかと描かれていた。

・「西湖図襖」 狩野山楽 重要美術品 桃山時代 初公開
8面の襖絵。墨彩。余白が上手く活かされている。

・「松に鳥・柳に白鷺図屏風」 「八景図」 狩野永徳 個人蔵
松に鳥図は、対決展だったか永徳展で拝見したが、今回は至極ゆったりと椅子に腰掛け十二分に堪能させていただいた。これまで見たどのシチュエーションより作品が素晴らしく見えた。
何という贅沢な空間であろうか。
改めて見ると、やはり絵からオーラが立ち上るような力強さが感じられた。
「八景図」は初見。水墨画であっさりと仕上がっている。

他、思わず引き込まれる作品多数。
宗徳、意精、玄也など狩野派の系譜につながる桃山から江戸初期の画家の作品(いずれも個人蔵)が出ていた。

2.狩野探幽とその周辺
・「市ノ谷合戦・二度之懸図屏風」 狩野探幽
元々一双だったものが片方失われてしまい、一隻となっている。数少ない探幽の金地屏風。
探幽作品は上記以外にも図鑑、「七賢九老図屏風」など他にも名品あり。

・「唐子図巻」 狩野常信 個人蔵
唐子好きには堪らない絵巻物。至るところ唐子だらけ。しかも、皆様々な動作や仕草欲しい。

・「牛馬図」 狩野探幽、常信・安信他狩野36画家合作。
牛と馬がそれぞれ、狩野派36名により思い思いに描かれている。同じ一派の団結を示すために描かれたとか。
どれも似ているようで微妙に違う。

・「蘭亭曲水図屏風」六曲一双 久隅守景
これも素晴らしかった。本展ベスト作品のひとつ。
久隅守景の作品にはなかなかお目にかかれないが、改めてこの屏風を見ていると、極めて人物描写の優れた作家だ。他にも蘭亭曲水図屏風(狩野永納筆)が出展されているが、同じ主題でもかなり違うことが素人でも分かった。
解説によれば、守景初期の作品とのこと。静岡県美新収蔵品。

3.京狩野の系譜
・「四季花鳥図屏風」 六曲一双 狩野山雪 個人蔵
・「富士三保松原図屏風」 六曲一双 狩野山雪
山雪の屏風2点見られただけでも、足を運んだ甲斐があった。いや、前述の久隅守景で相当ハイテンションになっていたが、このあたりで頂点に達した。

更に、京狩野の永納、永良、永岳らの作品が続く。
・「四季耕作図屏風」 六曲一双 狩野永岳
これには驚いた。今回もっとも驚いた一作。19世紀と江戸後期の作品で、過去類例の屏風を永岳が独自に
リメイクした作品と言われている。それにしてもそのリメイクぶりは素晴らしい。
登場人物などが漢人、漢画風であるけれど農耕風景と山水図とのマッチング、画面構成が絶妙であった。同じく新収蔵品。

永岳の作品では他に「富士山登龍図」「三十六歌仙歌意図屏風」などう~むと唸らせる作品が多かった。

なお、1点ガラスケースなしで直に見られる屏風があった。狩野永祥「離合山水図屏風」もとは六曲一双だが、展示スペースの関係で一隻ずつの展示。

4.江戸狩野の展開、そして近代へ
最終章では、江戸狩野の狩野典信から芳崖、橋本雅邦で締めくくられる。

・「百猿図」 1幅 狩野栄信
愛らしさNO.1の作品。京狩野の狩野永良の「親子犬図」もかなりキュートだったが、この百猿図には負ける。
しかも、ガラスケースの向こうでなく、これはかなり近寄れる展示方法にされていたので、猿の一匹一匹をつぶさに、しかも真近で見ることができた。
 
・「竹雀図屏風」六曲一双 狩野養信
・「花見遊楽図屏風」 二曲一双 狩野養信 個人蔵
元信、永徳、山雪、探幽も素晴らしいが、江戸後期の狩野派絵師による作品も、もっと評価されても良いのではないか、そんな風に感じた上記2作品。
構図、描法ともに優れている。

・「江山春色図」 1幅 狩野芳崖 個人蔵
芳崖の未見の大幅。やはり、上手いっ。

・「瀑布図」 1幅 橋本雅邦 個人蔵
応挙の「瀑布図」とはまた違ったシンプルかつ迫力ある作品。橋本雅邦はやはり、私の好み。素晴らしかった。


本展を見るまで、私は狩野派の作品はどれも似通っていて面白みがない、などと腑抜けたことを思っていた。
しかしながら、この展覧会で時代を追って、狩野派絵師の作品を見ていくと、作家それぞれの個性があり、時代性、京都狩野と江戸狩野の違いなども感じられ「狩野派って面白い!」と見方が全く変わってしまった。
それほどまでに、強烈に心に残る内容で、それなのに、入館料は600円。
この内容で600円で良いんですか?と申し訳ないほど。
9/29~の後期展示替えもできれば見に行って、再度感動に耽りたいと思っている。
その前に、もっと狩野派の予習をせねば!

そして、忘れてはならない重要な見所がもうひとつ。
同時開催の収蔵品展の「ランドスケープペインティング西洋編」も素晴らしい。企画展で日本画一辺倒で来て、収蔵品でがらりと西洋画のみで構成。この展開、静岡県美だからこそできる内容でしょう。
しかも、展示作品がまたすごい。
別記事にしたいところだが、主な出展作家のみご紹介する。
ヤン・ファン・ホイネン
クロード・ロラン
ヤコブ・ファン・ロイスダール
クロード=ジョゼフ・ヴェルネ
ジョン・ロバート・カズンズ
ウィリアム・ターナー
ジョン・コンスタブル
後はおなじみのコロー、テオドール・ルソー、クールベ、ピサロ、シニャック、モネ、ヴラマンク、スーチンら。
いやはや、恐れ入りました。

*10月18日まで開催中。
前期:9/27まで 後期:9/29~10/18  
なお、お出かけの際はできれば単眼鏡などあった方が良いです。
美術館でも単眼鏡の貸し出しはありますが、数に限りがあります。

「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM

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2008年に新発見された「象と鯨図屏風」の初公開で話題沸騰「若冲ワンダーランド」展へ行って来ました。
展覧会は滋賀県の山深い里信楽にあるMIHO MUSEUMで開催されています。

今回は京都駅でレンタカーを借りて美術館のある信楽方面へ向かいます。
が、連休で高速は大渋滞。結局高速を使わず一般道を利用しましたが、こちらも混雑していて10時の
開館同時に到着予定が、大幅に遅れ11時ちょっと前に何とか滑り込み。

すぐに、カートに乗って受付棟から展示棟へ向かいました(MIHOでは展示棟とチケットを購入するレセプション棟が徒歩5分強離れている)。
何しろ、駐車場の車の数がいつものMIHOではありません。帰る時には、これまで利用されているのを見たことがない下の方の駐車場まで車が入ってました。
お客様は私が過去見た中では最高の入り。

しかし、この美術館は展示空間が広いのと午前中だったため、混雑によるストレスなく鑑賞することができて一安心。
昨夜TV東京系列「美の巨人たち」で「象と鯨図屏風」が特集されたこともあり、相当混雑するのでは?と懸念しましたが、落ち着いた環境で見ることができて本当に良かったです。

まずは展示構成から。
一章 プロフィール
二章 版画
三章 動植綵絵への道-法度の中に新意を出す-
四章 若冲ワンダーランド-リアリティーとユーモアのカクテル
五章 若冲をめぐる人々
六章 象と鯨図屏風
七章 ワンダーランドの共住者たち
八章 面白き物好き

全8章に亘る今期に一体何点の展示物があったかですが、リストで数えた所49点。
うち5~6点は絵画でなく文献関連資料であるため、絵画は実質約40点と考えて良いでしょう。
この展覧会は6期に亘る展示替えがあり、全作品をこの目で見るには一体何度通えば良いのか・・・
それを見極めるためにも、まずは1期(9/1~9/27)に行くことにしたのですが、結果満足しています。
注:「象と鯨図屏風」は全期間展示。

次に、本展の見所(meme編)をご紹介しましょう。

1.新しい若冲人間像の発見
作品だけでなく、最新の文献資料発見と研究成果により若冲は決してオタクな絵を描くだけに人
だった訳ではなく、錦市場の存在をかけて役人と交渉するという実務的な能力を持った人物である
ということが分かって来た。
新たな若冲の人間的な一面を本展で知ることとなった。
詳細は、辻惟雄氏(MIHO MUSEUM館長)と滋賀大学経済学部教授である宇佐美英機氏による図録解説をご覧いただきたい。これを読むだけでも、図録買う価値あり。

2.「象と鯨図屏風」
何といっても、公開を待ちに待った新発見作品。
角を曲がって突然現れた作品は、予想以上に大きかった。六曲一双屏風だから、当たり前なんだけれど、純粋にその大画面に感動した。白と黒の水墨による若冲の代表作となるのではないか。
象と鯨の組み合わせ、波頭の動き、TV番組で辻先生がお話されていたように象の背に触れんばかりの牡丹の花。

もちろん、TVで見たのと同じものが目の前にある訳ですが、大きさ、細部は実際その目でお確かめ
ください。修理の成果なのか状態は非常に良かった。

3.個人所蔵の未見作品
京博での大規模な若冲展を見ておらず、手許にその際の出展作品リストがないので比較はできないが、私自身これまで見たことのない作品が10点弱はあったと思う。
個人所蔵作品は、この先いつお目にかかれるか分からない。よって貴重な機会であることは申し上げるまでもない。

4.版画
「乗興舟」は見たことがあるが、それ以外の若冲版画作品を私は見たことがなかった。以下今回展示されている版画作品。
・「玄圃瑤華」
・「素絢帖」
・「花鳥版画」
特に「花鳥版画」を除く2点は白黒の木版画集。若冲デザイン満載。
このうち「玄圃瑤華」から1点の作品が、図録用のコットンバッグ(500円)として販売されている。
生地もしっかりしているので、これはオススメ。このバッグなら重たい図録も持ち歩ける。

5.若冲と同時代の作家の作品
蕪村や蕭白、応挙など同時代の力量ある画家の逸品の併せて展示されている。
・「老松図屏風」 与謝蕪村
昭和7年に開催された展覧会以来77年ぶり!の公開。金屏風に老松で、蕪村のイメージとちょっと違う六曲一双屏風の大作。亡くなる2年前の作品(注:10/12までの限定公開)。
他にも今後も展示予定の作品に名品が目白押し。


まずは、美術館に電話するなり、「弐代目・青い日記帳」さん情報によると東博のミュージアムショップ
でも販売されるという図録(3000円)を入手することが先決。
その中で、どうしても見たい!という作品がある展示期間を狙って見に行くしかない。
幸いにも象と鯨図は全期間展示だし、前述の「花鳥版画」以外の黒白版画作品も全期間展示される。

図録の中で辻先生は、10月から始まる「皇室の名宝展」での動植綵絵一挙公開とからめ、本展の位置づけを東博を第1会場として、MIHOを第2会場とされていた。
随分距離のある第1会場と第2会場だが、やはり両方楽しんでこその若冲だろう。
なお、本展イベントとして予定されている辻先生と狩野博幸(同志社大学教授)の講演は既に満員で予約受付終了とのこと。

最後にMIHOへの道のりについて。
私のオススメはやはり車。遠方からなら駅レンタカーが便利。でも、今回の私のように京都駅での
ピックアップはお薦めしない。
大津か草津などで借りた方が、土日などは良いと思う。秋の京都は道路渋滞が予想されます。

車がない方は石山からバスとなりますが、朝早くか逆に夕方狙いが良いと思います。
「若冲ワンダーランド」だけなら鑑賞時間は、約1時間といったところ。
ただ、MIHOは常設や同時開催の「オクサスのほとりより」も素晴らしいので、是非併せてご鑑賞ください。

とりあえず、速報でした。

*12/13まで開催中。

「熊野三山の至宝-熊野信仰の祈りのかたち-」 和歌山県立博物館 はじめての美術館48

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和歌山県立博物館で開催中の世界遺産登録5周年記念特別展「熊野三山の至宝-熊野信仰の祈りのかたち-」に行って来ました。
展示作品リストはこちら

この展覧会、私がよく参考にさせていただいているブログ「観仏三昧的生活」&HP「観仏三昧-仏像と文化財の情報ページ」の管理人でいらっしゃる同博物館学芸員の大河内智之氏がメイン担当をされていらっしゃる特別展。
開催までのご苦労や進行ぶりを上記ブログで拝見しており、開催を楽しみにしていました。

「熊野三山の至宝」って何だろう?どんなものが展示されているのだろう?
展覧会HPによる概要は次の通りです。
和歌山県立博物館では平成17年から19年までの3年間、新宮・那智山・本宮の順に熊野三山のそれぞれを地域ごとにとりあげ、悉皆的な調査に基づいて特別展を開催してきました。世界遺産登録5周年の今年は、国宝・重要文化財・和歌山県指定文化財をはじめとする至宝約300点を集め、これまでの研究成果や新たな発見を踏まえて、熊野三山の重層的な歴史とさまざまな熊野信仰の祈りのかたちをご紹介します。

300点全てを知りたい、観たい!という方は、ぜひ同館にお運びいただきたいのですが、今回は大河内学芸員お手製のミニガイド「ポケットブック」と本展キャラクター那智の滝の女神’ひろう’さんが教えてくれる本展のポイントをご紹介します。
ちなみに、このキャラクターかわいくて、どなたのデザインなのかお伺いしたら学芸課のアルバイトさん?岡山恵子さんでした。
’ひろう’は展覧会のキャプションでも簡単なコメント解説パネルが合って、内容の理解が進みました。

ポイント① 熊野と水
まず、「熊野三山」とは熊野川の上流部、蛇行箇所にできた中洲に「本宮」、川の河口に「新宮」、そして133mの高さがある那智滝がある「那智山」を指す。
川や滝を神として祀ったのが熊野信仰の始まり。
関連展示作品としては各三山の「本社末社図」で江戸時代の様子を伺うことができる。
如何に水系豊富な地であったかがよく分かります。

ポイント② 新たな聖地
釈迦入滅後、阿弥陀如来への信仰が流行し、熊野の神々は「熊野三山」としてひとつにまとまり、「阿弥陀如来」「薬師如来」「千手観音」が住む浄土と考えられ、民にとって憧れの場=聖地となった。

ポイント③ 神と仏
熊野三山の神々は、神であり、仏でもあると考えられていた。
数年前に奈良博で観た「神仏習合」展を思い出す。
展示では、この神仏習合思想を視覚化し、鑑賞者が体感できるような展示の工夫が行われていて非常に感心した。
ガラスケースに国宝熊野速玉神社蔵の「熊野速玉大神坐像」「夫須美大神坐像」「家津御子大神坐像」(いずれも平安時代)の木製坐像が横並びし、少し離れた所から、それぞれと結びつく仏像「薬師如来」「千手観音」「阿弥陀如来」とが重なりあうようにガラスから仏像と神像が重なって見えるように
展示されていた。
更に、3体の仏像は透明な円形のプラ板を背景にしており、これは恐らく懸仏のイメージで作った小道具。
細かな心遣いがうれしい。

なお、上記3神像が熊野三山の権現だが、忘れてならない神像がもう1体。もっとも損傷が激しいが、
「熊野速玉大神坐像」を父、「夫須美大神坐像」を母としてその子供である「国常立命坐像」(国宝)もある。家族の様相を呈した神像。
これらは元々地域の豪族の長の祖霊神として作られた神像だったが、浄土思想が広まるにつれ熊野権現へと扱いが変化していったと考えられている。

他にもキャラクター’ひろう’のオリジナルとなっている「女神坐像」(熊野那智大社)は私のお気に入りだった。

神像は前述奈良博の「神仏習合」展あたりから、関心を持ち始め、そのプリミティブナ造形に惹かれてしまう。ことに女神像はいろいろな様式があって興味深い。
神という目に見えないものを最初に形にしたのは誰なのだろう?自由と言えど、仏像程ではないが、やはり髪型など一定の類型化は見られる。

ポイント④ 熊野参詣
1090年に白川上皇が参詣して以後、皇族貴族の熊野参詣が続く。
大河内学芸員によれば、ここに熊野三山のフィクサーが動いたのではないかと想像されている。
霊場、聖地としてのアピールにより、上皇など貴人が参詣してくれたらこっちのもの。
神社と言えど、寄進がなければやっていけない。現実的側面を思えば、現代も平安時代も左程変わらないと言えるのではないか。

ポイント⑤ 参詣のシステム
これが実によく考えられている。多数の古文書(重文)が展示されていたが、参詣者は、各地の修験者に従って熊野にやってくる。三山に到着すると、山にいる御師(おし)と呼ばれる僧に参詣者を引き渡す。御師は、神々への参詣の手伝いと宿泊場所の提供。
旅行システムに近い制度が完成されていた。

ポイント⑥ 那智参詣曼荼羅
全国に曼荼羅は数あれど、もっとも多く残っているのがこの那智参詣曼荼羅。
この曼荼羅は、熊野比丘尼という尼さんが、各地に赴き、これらの曼荼羅を使い、人々に布教と寄進の依頼に使用した道具、一種の消耗品であった。
これを絵解きという。絵解きしている様子がフィギュアで説明されていたが、これも分かりやすかった。
折り畳んで持ち歩いたため、曼荼羅に折しわが残っているものもあった。

<個人的に感じた見所>
(1)様々な神像たち

(2)熊野速玉大社の御神宝
→これは本当に素晴らしい品々。特に十二の社のために作られた蒔絵手箱と内用品の数々は必見。
漆の種類や紋様の種類を十二の社の格に応じて作成していたのは驚き。
他にも、太刀、紅帖紙、はじめ全て国宝約30点!

(3)経塚-祈りのタイムカプセル-
経筒と言えば、国宝(だったと思う)藤原道長寄進の経筒を思い出すが、それらを埋めていた経塚にどのような形で埋めたかを実際に模型を使用して展示されていた。
思わず、最近見たエジプトのミイラの埋葬やミイラの作り方を思い出したが、日本の経塚は、非常に日本的かつ風土にあった形で埋められていた。
「炭の使用」など、日本以外で使用している国はあったのだろうか?中国では?
経塚では炭を埋めて、湿気を取る工夫を凝らしていた。更にお清めのための合子を入れるあたりは万国共通といったところか。


最後に、和歌山県博での最新発見、調査研究成果が披露されている。
展覧会の最後、そしてポケットガイドブックには博物館のマニュフェストが掲げられていた。以下引用します。
世界遺産を守る。文化財の持つ魅力や情報をあらゆる角度から引き出し、かけがえのないものであることを明らかにして、そしてそれを伝え合うことで価値の共有を図ること、それこそが「守る」ことの基盤です。和歌山県立博物館は、これからも世界遺産を、そして和歌山県の文化財を守り、その魅力と意義を伝える役割を果たしていきます。

強い信念を持っていらっしゃる学芸員さんがおられる博物館の企画展は分かりやすいし、随所に展覧会における鑑賞者に対するメッセージが伝わってくるものです。
今回も、大河内学芸員はじめ主催者の皆様の強いメッセージ性が伝わってきました。

企画展開催中でご多忙にも関わらず、展示のご説明をいただき本当にありがとうございます。
末尾ではございますが、改めて御礼申し上げます。

*10月18日(日)まで開催中。
なお、熊野本宮大社宝物殿、熊野速玉大社神宝館、熊野那智大社宝物殿では、それぞれ特別展を同じく10月18日まで開催中です。

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名和晃平展 「Transcode」 ギャラリー nomart 

大阪ギャラリーノマルで本日よりオープン、名和晃平展「Transcode」に行って来ました。
ノマルは初訪問。
地下鉄中央線深江橋駅1番出口より徒歩5分とあるが、やや迷う。
19時でcloseでぎりぎり到着になったため、あせったが城東中学の向こう側まで行ったらすぐに分かった。
だって、ものすごい人だかりが道に溢れてたから。
なんだなんだ、この人の多さは。
今日はオープニングだったので、パーティらしきことをギャラリー前の屋外で行っていた。でも、見終わっているのに帰らず、周囲を取り囲む人だかりは何だったのだろう。
皆さん、名和さんと一言お話したい方々?

さて、外の賑わいに比して、中は想像してたのより狭かったし、観客はわずか。

今回の新作のテーマはズバリ映像。

最初の展示スペースではモニターをいつものPixCell、樹脂なのか水晶かは不明だが例の透明の球がモニターのあらゆる面を覆っているのだが、面白いのはcellが大きい箇所と小さい箇所で映像の見え方が変化するところ。
映像もループにはなっているが、様々に変化していく。全部で4台のモニターでそれぞれ映像は違っている。長時間見ていても映像が変わると、見え方も変化して行って美しい。
近くで覗き込むと、どんな映像なのかが分かるが、離れてしまうと何が映っているのか分からず、ただただ色や模様の変化を楽しむ。
4つのうち1つに名和さんご本人が出演されていたのではなかろうか?

奥のスペースは映像作品1点で勝負。
映像は床に写されている。
円形の重複でシャボン玉でもないし、ただ、この空間に長時間いると酔ってしまうかもしれない。
視覚への挑戦。
円はcellの一環で、増殖の様子なのだろうか?

なかなかに面白い新作。
映像もビーズと合わせると美しい。私は先に見た作品の方が気に入った。

*10月17日(土)まで開催中。
ギャラリーノマル 大阪市城東区永田3-5-22
13:00 - 19:00 日祝休廊

「トリノ・エジプト展」 東京都美術館

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東京都美術館で開催中の「トリノ・エジプト展」を見て来ました。

NHKで古代エジプト特集をしていたせいか、土曜日の東京都美は大混雑。入場制限までは出ていませんでしたが、特に前半入口最初の第1章ガラスケースの展示に人が群がる群がる。
もう人と人の隙間や空いている所から、ゲリラ的な動きをして展示品を見るしかない状態。

第2章「彫像ギャラリー」以後は比較的ゆったりと見ることができて楽しめました。

以下簡単に展覧会の概要と構成です。なお、詳細は展覧会公式HPをご覧ください⇒こちら
本展は、イタリア・トリノにあるエジプト博物館所蔵の古代エジプトの石像はじめ約120点を日本初公開するもの。展示品の中には、トリノのエジプト博物館内でさえ動かしたことのないものまで含まれており、大変に貴重な機会となっている。

第1章 トリノ・エジプト博物館
第2章 彫像ギャラリー
第3章 祈りの軌跡
第4章 死者の旅立ち
第5章 再生への扉

第1章はこまごまとした展示品が多い。紀元前1186年頃の新王国時代のパピルスなどが公式HPでは見どころとして紹介されていたが、個人的に気に入ったのは「アメンヘテプ1世坐像」「ネフェルトイリ王妃の小像」などの彫像だった。後者はその黒っぽい彩色と木製!紀元前100年以上前の木製品が残っているなんて奇跡的!

第2章が私としては一番楽しめた。
ここから展示照明がぐんと落とされちょっと暗めの展示室内に彫像がスポットを浴びて展示されている。その姿は神々しいばかり。東京都美の展示としては、今まででもっとも展示照明や方法が工夫されていた。拍手。
海外の名だたる美術館でも今回のような見せ方をしてくださると、更に彫像も映えることだろう。

自身が使った作品リストをチェックすると、ほぼすべての彫像にチェックがある。いかに感動したか自分でも振り返ると思いだせる。

第3章の注目展示品は、動物の姿をした神像。
・青銅製の猫の小像
・斑岩製のハヤブサの小像
・ハヤブサの小像 (木製、彩色)
・トキの小像
・ジャッカルの小像 などなど
現代アートにありそうな彫像群で全く古さを感じさせない所が素晴らしい。造形的にもよくできている。

他に「ナキィの葬送用ステラ」の色や「王を守護するイシス女神の像」はじめ、目玉となる展示品がザクザク出ていて、こちらも先に進んでいけば行くほど、すっかりエジプト美術の虜となっていた。

第4章は死者の旅立ち、第5章は再生への扉がテーマ。古代エジプトで死者と言えば、やはりミイラの存在なしには語れない。
今回はミイラの作り方まで図解説明されていて、分かりやすかった。
私が注目したのはミイラの足の裏。
何度もミイラは見たけれど、足の裏って記憶がない。
鹿の子のような模様が愛らしい。

ミイラと共に埋葬されていたお守りや棺、枕などなどの葬送品の数々。

個人的には、小さくて目立たなかったかもしれないが、ファイアンス製の容器やベクトラルなどファイアンスが好きなので、関連の品々が気になった。

想像していた以上に楽しめる展覧会だった。

*10月4日まで開催中。

彫刻/新時代vol.4 「滝上優展 -佇む人間-」 日本橋高島屋美術画廊X

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毎回楽しみにしている日本橋高島屋美術画廊Xの「彫刻/新時代」シリーズ第4回目。
今回は、滝上優(たきがみ・まさる)展-佇む人間-」。

会場に入った時から、「あ、これはすごい」と感じた。
現段階で一番気になる現代アートは木彫作品。

目の前にあるのは、思い切り木彫だった。むしろ、作品を目にするより前に、鼻がそれを察知した。
木の香りが強くしたのだ。

最初に目に入るのは、丸太そのものの上に足を組んで座る人物像「考えない人」。
「考える人」のパロディ。
タイトルは「考えない人」なんだが、どっからどう見ても考えているように見える。
「考えているように見えて考えてない人」なのかもしれない。
鑿あとが、かなり残っていて手彫り感強い。

私の好きな彫刻家に明治時代の橋本平八がいるが、彼の作品にちょっとだけ雰囲気が似ている。

床にど~んと大作が2点。
・「解け」
・「結び」 (樟)
どちらもど太い太腿が気になる。「解け」は両性具有なのだろうか?性別不明な人型裸像。
「結び」は大仏のような顔立ちが気に入った。

一番好きな作品は「ここにいる」(樟)だった。
これは、凛とした姿の坐像で、現代の仏像のような清々しさと気品があった。

・「ソロ」
一輪車に乗った女の子。両腕を広げて、懸命にバランスを取ろうとしている。
不安定なんだけれど、踏ん張っている。ちょっとだけ自分に重なる所があって、とても気になった。

・「小さな丘」 (銀杏)
唯一、材に銀杏を使用した作品。妊婦の横たわる姿をたとえてタイトル「小さな丘」。

・「大きな手を持つ人」(檜)
文字通り、身体に対して大きな手の人物像。

どの作品も素朴な味わいがあって木彫りの良さがそこかしこに感じられる。しっかりした技術もさることながら、作品に感じられるユーモアがギリギリの所で作品の品を失わせる手前でとどまっている所も良かった。
私好みの作品であり、作家さん見つけた。18日夕方と19日、20日には作家さんも在廊される予定です。

*9月28日(月)まで開催中。
同店で開催中の「ウィーン世紀末展」の前後にぜひお立ち寄りください。

小池一馬 「Trance」 AISHO MIURA ARTS

AISHO MIURA ARTSで開催中の小池一馬「Trance」に行って来ました。

AISHO MIURA ARTSは初訪問のギャラリー。都営新宿線曙橋駅より徒歩3分程度です。
先日SCAIに行った際、こちらのDMを見つけて、一目で気になり早速お邪魔して来ました。

ギャラリーHPはこちら。2006年に開廊、オーナーさんも1981年生まれとお若い男性でした。

さて、小池一馬の「Trance(トランス)」。
SCAIにあったDMにとても惹かれた。個展DMにしてはハガキではなく、A42つ折りのサイズで表紙は作品の拡大画像、背表紙には彫刻とアクリルペインティングが。
いずれも、とてもインパクトがあったし、中を開くと作家さん自身の文章がサイン入りで、そしてオーナーからも本展についての文章が掲載されていた。

「これは行かなきゃ。」頭の中ではじけた。

ギャラリーは一軒家を改装したようで1階と2階が展示スペースになっている。
今回の展示作品画像は、作家さんご本人のHPに掲載されていますので、こちらをご参照ください。
1階入口正面には木彫「The oracle」2008年が。
2階にあるペインティングを彷彿させるような細かいうねりが表現されている。

このまま2階へ上がると、思ったより広い空間があって、記憶違いでなければ4点新作のアクリル絵画が展示されていた。

・≪The 8th mountain≫
これが一番大きな作品で182×182cm。かなり好き。編み物のような絵画と言えばいいのだろうか?
一瞬浮かんだイメージはなぜかペルー。
色、特に赤や紫、緑、そして白の使い方が面白い。
そうだ、ブランド「MISSONI」のニットを絵画にした感じに似てるかもしれない。

絵具の盛り上がり具合も平面作品なのに立体感が出ていて、これも良し。

ご経歴を確認したら、幼少期はアルゼンチン、スペインとラテン諸国で過ごしていらっしゃった。
ペルーのイメージが浮かんだ原因はそこにあるのだろうか。

・≪The knit hat≫
これはニット帽とマフラーをした人物と思って良いのか?対象が抽象的、模様のようになっていて何であるのか判然としないがそれも良し。
背景が白の網状になっている。蜂の巣を平たく伸ばしたような感じ、この後、作品集を見せていただいたが、もともと日大芸術学部彫刻科卒業というご経歴で、最初は彫刻や水彩などを多く制作されていたようだ。過去の作品の中に蜂の巣の木彫があり、今にして思えば彫刻作品が絵画という媒体に生まれ変わったというのがピッタリ。
作家の中にあるイメージは、彫刻であっても絵画であっても同じ。表現手法が違えど、同じようなものが観賞者である私に伝わって来た。

・≪The complex housing≫
これも一風変わった絵画。やはり蜂の巣に似ている。
中央に銀色の楕円が描かれていて、これが背景から浮いていた。

・≪[The blessing≫
これは花火に似ている。やはり背景色は白で蜂の巣状。これが一番すっきりした感じ。

1階に戻ると、奥のスペースにも作品が何点もあった。
これらは水彩。水彩は同じ作家さんの作品かと思う程、2階のアクリル絵画とは雰囲気が違う。
過去の個展では、1階にある水彩や木彫がメイン。
アクリル絵画の方が作家としての新境地開拓であった。

水彩は水彩で悪くないが、私の好みからすればやはり、新作のアクリル絵画が好印象。
今後の作品も期待が高まる。
何しろ、作家さんは1980年生まれの若手。

展覧会の案内状にある小池一馬の文章冒頭に「新潟、富山、京都、奈良、和歌山、岐阜を二週間使って周った」とあった。
私もこの夏、ほぼ同じルートを回っていて、次の5連休には和歌山に行く予定。
こんな些細な所にも共通点を見出して嬉しくなってしまった。

かなり気になる作家さんです。

*9月20日(日)まで開催中。オススメです。火~土は21時までやってるから行きやすい!
アイショウミウラアーツ
162-0065 東京都新宿区住吉町10-10
Tel:03-6807-9987
http://www.aishomiura.com
営業時間
火曜日〜土曜日 13:00〜21:00
日曜日 13:00〜19:00
月曜日:休廊日

「ウィーンミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」 日本橋高島屋

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日本橋高島屋で本日スタートした「ウィーンミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」に行って来ました。
この展覧会、ず~っと首を長くして待ってました。
何しろ、国内ではクリムト・シーレの作品にはなかなかお目にかかれません。
我が地元、愛知県美と豊田市美がクリムトの素晴らしい作品を各1点ずつ、シーレはこれまた豊田市美が良いものを持っていて、この2館くらいしか常設で見られる美術館が浮かびません。

豊田市美に何度も通ううちシーレが好きになっていた私。

展覧会タイトルに「クリムト、シーレ」の名前を見るだけでワクワクします。
思ったより、会場は空いていて、今日はゆったりゆっくり観賞できました。更に、高島屋さんの展覧会では初めてではないでしょうか、受付に申し出ると作品リストをいただけます!
今回は駄目もとで「作品リストってありますか?」と伺ったら、「はい」と返されてびっくり。
これだけで、かなりご機嫌になりました。

本展では、ウィーンミュージアム(旧ウィーン市立歴史博物館)のコレクションの中から、クリムト、シーレをはじめ、マカルト、モル、モーザー、オッペンハイマー、ココシュカらの選りすぐりの絵画約120点を公開し、19世紀末から20世紀初頭のウィーンの絵画、芸術の流れを概観するものです。

構成は次の通り。
第1章 装飾美術と風景画
第2章 グスタフ・クリムト
第3章 エゴン・シーレ
第4章 分離派とウィーン工房
第5章自然主義と表現主義

実はウィーンの絵画史などまるで疎い私にとって、第1章は見事に知らない作家さんばかり。
新印象主義という、印象派もどきの絵画や、どこかで見かけたような絵画が多く、ピンと来た絵はゼロではないが少なかった。
どちらかと言えば、後半に「むむ」思う絵が多かったように思う。
一番気になったのはグラニッチュ作「イーゼルの前の自画像」とその次にあったフェオドローヴナ・リース作「自画像」であった。この両極端な雰囲気の2枚の女性自画像は、対照的で興味深い。前者がこれまでの印象派風のウィーン絵画を後者がその後に続く表現主義ぽい画風で、時代の狭間の象徴のようだった。
もう1点、カール・ツェーヴィ「仲人(による結婚の打診)」もドラマチックな作品で面白い。

第2章のクリムトは全部で8点、うち油彩は4点。
・「寓話」 1883年
・「牧歌」 1884年
・「愛」 1895年
・「パラス・アテナ」 1898年 (下)
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「寓話」は初期のアカデミックな画風のクリムト作品で、知らない一面を見たという感じ。
時代が新しくなるにつれ、画風も良く知られている装飾的できらびやかな作風に移っていく。特に、「愛」はちょうど過渡期的な作品であった。三連祭壇画のように両脇が金の太い帯でかたどられ、草花が描かれる。どこか琳派の金屏風に似ているような。
「パラス・アテナ」はそれほど大きな作品ではないが、後のクリムトの代表作作風にもっとも近い。

そして、第2章で忘れてならないのは、グスタフ・クリムトの弟、エルンスト・クリムトの2作品である。
エルンストはわずか28歳で夭折、今回は「宝石商」1889年と「祈る子供たち」1890年頃2点の油彩が出展されている。
中でも「宝石商」(下)は「パラス・アテナ」に近いクリムトらしい装飾的絵画。一瞬宗教絵画のようにも見えるが、人物の表情が素晴らしく映画の一場面を見るようだった。
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第3章 いよいよシーレ登場 シーレ作品は全19点、うち油彩は4点。
冒頭は、アントン・ペシュカの「エゴン・シーレの肖像」で始まる。この肖像画にも注目。衣服と背景がゴッホの影響なのか、カラフルな色彩が渦巻いている。

そんな衝撃的なシーレの肖像に続いて、シーレ作品が並ぶ。格別印象に残った作品のみ紹介。
・「意地悪女」1910年 本展マイベスト3のひとつ。
シーレの妹がモデル。この表情がたまらない。そして、シーレの特徴である体の細さ、細い顔、何といっても目が意地悪な表情を巧みに表出していた。これぞ、シーレという感じをもっとも受けた。

・「ヒマワリ」 1909年
この細く縦に長い、屏風絵のような油彩はとても印象的だった。その理由として、細長いキャンバスを使用しているということもあるが、真っ白な背景に枯れたヒマワリ、そしてヒマワリの下の方になぜか花がいくつも咲いている。本来花があるべき上部のものは枯れている。
輪廻転生を考えていたら、凄いなぁと思うがどうだろう。細長いキャンバスはジャポニスムの影響らしい。

・「自画像」1911年、「アルトゥール・レスラー」1910年
後者はシーレの代表作とのこと。レスラーの体はねじれ、顔は横向き。何とも不自然なポーズをとっている。自画像は顔の部分の二重イメージ技法より色遣いに惹かれた。

そして、シーレの版画作品、私はシーレの線が好き。よって版画作品デッサンもやっぱり好みなのだった。

第4章ではクリムト以外の分離派やウィーン工房の作家作品が続く。
全てはご紹介できないので、気になった作家を挙げると、カール・モル「メートリングの眺め」1924年。
コロ・モーザー。彼の絵は全部で5点あったが、どれも私の好みだった。色遣いが独特。
「シクラメン」1907年は一見何てことのないシクラメンの花なのに、その花の植木鉢の色と模様の大胆でカラフルなこと。

カール・オットー・チェシュカ「学問の寓意」1898年やウィーン工房のハガキ(メラ・ケーラー&マリア・リカルツ)6枚も素敵だった。ちょっと小林かいちを思い出してしまった。

第5章の最終章ではシーレと同時代の自然主義、表現主義の作家を紹介している。
・エドゥアルト・カルパリデス 「秋の風景」 1910年
これからの季節にぴったりの風景画。湖面の輝きと空の色が忘れられない。

作曲家シェーンベルクの油彩も3点並んでいたが、こちらは私の好みではない。
ユングニッケル「マース河畔にて」、ピネル「雪の食品市場」などがやや気になったが、一番はマックス・オッペンハイマーの作品だった。エゴン・シーレとも親交が厚いこの作家の「エゴン・シーレ」像は良かった。

この展覧会の監修は千足伸行氏だが、以前静岡で拝見した展覧会も構成が良いと思ったが、今回も分かりやすい構成で楽しめた。
ただ、恐らく会場の都合だろうが作品リストの順番と展示順序がバラバラなので、若干リストと作品が追いにくかった。もうひとつ、照明が光って見づらい作品が何点かあったこともちょっとだけ残念だった。

*10月12日(月・祝)まで開催中。これから混雑しそうな予感がします。お早めに。
午前10時~午後7時30分(8時閉場) 最終日は午後5時半まで。
この後以下に巡回します。
【大阪会場】 10月24日(土)~12月23日(水・祝) サントリーミュージアム[天保山]
【福岡会場】2010年1月2日(土)~2月28日(日) 北九州市立美術館

「水戸市立博物館コレクション展」 水戸市立博物館 はじめての美術館47

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今回、水戸行きをあせった理由の一つは先にあげた「冨田渓仙展」後期展示を見ること、そしてもう一つの大きな理由は、この「水戸市立博物館コレクション展」(10月1日水曜日まで)を見ることだった。

展覧会チラシ表面に「徳川光圀、徳川斉昭、横山大観、中村彜etc.博物館が集めた水戸のお宝大公開」とある。以前にも書いたが、私は「お宝大公開」という謳い文句にとても弱い。
早速、水戸市立博物館のHPをチェックすると大観の「水温む」がど~んとトップに貼られている。
う~ん、どんなお宝を拝見できるのだろう、気になる、気になるという訳で行って来ました。
場所もろくに調べず、水戸に到着したが水戸芸術館から徒歩10分もかからない場所にあって嬉しくなる。図書館も同じ建物に併設されており、博物館の入口は外階段を上がった2階にある。
今回の展示は2階~4階までの展示室全てを使用して行われていました。

水戸市立博物館の総力をあげての盛り沢山な内容で、個人的には大満足。入館料は通常無料で、本展は今回特別展ということで、それでもわずか200円!200円でこれだけ見せていただけるなら十分です。前に行った茨城県立歴史館も150円とお値打ちでしたが、水戸市も負けてはいません。

以下展覧会の概要です。~チラシより抜粋~
2009年にあたる今年は水戸にとって、市制施行120周年・水戸藩開藩400年という記念の年にあたる。本展は、同館開館から現在まで30年間にわたり、水戸に関する歴史、民俗、美術、自然といった各分野のコレクションの中から代表的なものを展示公開します。
貴重な資料・作品を一堂に公開することにより、水戸の長い歴史と文化を振り返り、将来を展望する機会とします。

では、前置きが長くなりましたが早速展示を振り返ってみましょう。
展示品画像の一部は博物館HPで見ることができます。⇒こちら

<2階展示室>(歴史)
○水戸黄門 徳川光圀の冒険
ご存知水戸と言えば黄門様。私もどれだけ長期間TVドラマのお世話になったことか。
黄門様が蝦夷探検に向かわせた船「快風丸」の復元想定模型(1/20)などがあったが、恐らく光圀屋斉昭関係の資料は、水戸市内にある徳川博物館の方が豊富にのこされているのではないか。

○お殿様の仮想戦略
・備人形(土製295体の人形・31頭の馬) 水戸市指定文化財 1779年頃 (冒頭画像)
3センチ~4センチ程度の大きさのミニチュアフィギュア。この人形を使って当時のお殿様は軍略、軍学を行っていたのだ。よくぞこれだけ沢山の数残っていたもの。
しかも、単なる人ひとがたではなく、かなり精緻に作られていてかわいい。

他には○水戸藩の殿様関連資料、○斉昭と幕末など歴史関連資料が続く中、私が一番ひっかかったのは○弘道館の誕生のコーナーだった。
弘道館は徳川斉昭により1841年幕末に創設。今回私が拝見したのは弘道館の図面、や俯瞰図など。また授業で使用された佐藤中陵『山海庶品』『海河魚属写真』などの詳細な図譜。
当時としては、先進的な授業に取り組んでいた様子がはっきりと感じられた。

ごった煮的で面白かったのは○ニュースのインパクトと題したコーナー。なぜか、ここで錦絵新聞が大きく採りあげられていた。
落合芳幾の「東京日々新聞」はじめ、月岡芳年の「郵便報知新聞」など、千葉市美術館で開催された「芳年・芳幾の新聞錦絵展」以来、久しぶりにお目にかかった。更に、印象深かったのは「諸国珍談新聞ばなし」1876年3点である。これは、初見でまさになかなかお目にかかれない代物だった。

<3階・4階展示室>(美術)
3階・4階は展示室も広めに取られている。
最初にあるのは水戸の彫刻家、木内克(きのうち・よし)のブロンズ作品。これが大量な数で、約35点ほどある。朝倉文夫に師事したせいか、作風は朝倉のそれと似ていた上に、「猫」の彫刻がとても多かったのも同じ。
木内も師匠に似て、猫好きだったらしい。木内克について詳細はこちら(Wikipedia)。

○知られざる水戸の洋画家 五百城文哉(いおき・ぶんさい)の植物画
私にとって今回の展示の目玉的存在。強烈なインパクトを残してくれた。五百城文哉については、今年の2月~3月にかけて出光美術館で開催された「小杉放菴と大観」展で初めて知った。この出光での展示の冒頭に掲げられていた作品を覚えておられるだろうか?
文哉筆「日光東照宮」(水彩)。

文哉は放菴の最初の師であり、水戸藩士の子として幕末の文久3(1863)年に水戸に生まれ、明治39(1906)年に満42歳の若さで日光に没した明治の洋画家。
文哉については、2005年に東京ステーションギャラリーで「五百城文哉展」が開催されていたようです。詳細は「弐代目・青い日記帳」様の記事でご覧下さい。
いかに、素晴らしい画家であるかがお分かりいただけるかと。

今回は3階・4階2つの展示室に文哉の作品が溢れかえっていた。
文字通り溢れかえっている状態であることは、ご覧になっていただければ分かる。特に4階展示室には所せましというか絵がかけられるスペースにぎっしり文哉の作品が展示されていた。

・「高山植物写生図」 16点・3階、72点・4階
・「百花屏風」 1900年頃 油彩・屏風
・「晃嶺群芳之図」 1903年頃 絹本水彩軸装 以上3階
・「輪王寺大猷院」 1893年 油彩
・「子ども」
・「農夫達」
他「日光東照宮」関連水彩画多数などなど。
もう、どれもこれも1点1点がいとおしい。日光東照宮の作品は外国人向けのお土産用(生計を維持するために売っていた)だろうが、「子ども」に見られるような人物画のまなざしの優しさも好ましかった。
植物の写生図に至っては細密かつ色の美しさ、そして背景まで描き上げる、これは植物を余程愛していないとできないだろう。

○水戸ゆかりの洋画家 辻永(つじ・ひさし)の植物画
五百城の植物画だけで驚いてはいけなかった。次に現れたのは、水戸ゆかりの洋画家として紹介されていた辻永の植物画、何とその数4000点!
彼が残した大量の植物画がいまだ未整理のまま渦高く何列にもわたって積み上げられていたのには驚く。4000点展示されていたことは間違いないが、積まれていて見えるのは一番上だけというのが面白い。さすがに、もはや展示室の壁のどこにも展示スペースが余っていなかったと見える。とにかく数に圧倒された。あの山をどこかにこもって、どの植物か調べ上げる作業やってみたい。
ただ、量だけでなく作品自体も美しい。
五百城作品と併せて、植物画展を過去に開催したことはあるのだろうか?
ど~んと茨城だけで留めることなく、ぜひ東京あたりでどんと展覧会を開催して欲しい。

○水戸の生んだ美術の精華 横山大観と中村彜
大観はともかく、中村彜の未見作「芍薬」1912年、「果物」「玉葱」(裏表になってる)は希少。

○水戸に集まった絵画たち 益子コレクション
材木商であった益子氏親子の集めた絵画コレクション。大観、玉堂、青邨など小品の軸物中心に展示。

○江戸時代前期・後期の水戸の絵画
東皐心越、桜井雪館3点。いずれも知らない江戸前期の作家。雪館の「龍虎蝦蟇仙人図」1767年(三幅対)はあくの強い作風で印象に残った。

そして、目当ては後期の立原杏所林十江の作品。
これがとても見たかった。水戸のお宝と言えば、きっと二人の作品も出てる筈と予想したのが大当たり。
個人的に立原杏所と林十江は好きな画家。林十江は板橋区立美術館で初めて作品を見て気に入り、以来追っかけている。
立原杏所の品のある清冽な色遣いの南画も良いが、どっきりするのは林十江の作品。
林十江は杏所に最初の絵の手ほどきをしたことでも知られるが、悲しむべきは37歳の若さで亡くなってしまった。

・「野菜売図」
・「雷公釣鼓図」
・「夜梅図」
・「葦図」
・「鶺鴒図」
以上5点十江の未見作品に出会えた。特に「野菜売図」以外の4点は、前述の板橋美で過去に開催された「林十江」展図録にも未掲載の作品。
格別印象深いのは「夜梅図」(下)。
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もはや、梅には全く見えずある種抽象画の趣すら感じられる。
このような大胆な画風の画家が江戸後期にいたことにほとほと感心するのだった。もっと、注目されても良い江戸期の画家だと思う。

大満足のはじめての水戸市立博物館訪問となった。

*10月1日(水)まで開催中。渓仙展と併せて強くお薦めいたします。

2009年9月14日 日経新聞朝刊コラム「春秋」に思う

今朝の日経新聞朝刊一面のコラム「春秋」に興味深い内容が書かれていた。
本欄にしては珍しく現代アート、しかも森美術館で開催中の「アイ・ウェイ・ウェイ」展での新しい試みと当方ブログ含めアートブログについての記事が書かれていた。

「アイ・ウェイ・ウェイ」展については、既に多くのブロガーの方が記事をアップしておられるが、国内の美術館企画展にしては非常に珍しく作品の写真撮影が可能ということで話題になっている。
私の知る限り、国内で企画展の写真撮影が可能な美術館は、豊田市美術館くらいである。

そして、コラムでは更に写真撮影を可能にしたことで、ブロガーが自由に自分のブログに作品を掲載し
ている状況と、美術館側の狙い「ブログが展覧会の広報的役割を果たすこと」について紹介していた。
筆者としては、この新たな試みに興味を持ち、新しい広報媒体としてのブログを認識したことでコラムのテーマに採り上げたのだろう。
コラムの最後は「時代に合わせ扉を開き、つながりを広げ、味方を増やす。そうすることで、結果的に送り手も潤う。そんな試みと言える。」と結んでいる。

森美術館の南條館長は「客による撮影を美術館の新しい楽しみ方にしていきたい。日本の美術館は厳しすぎる。」と日本の美術館の閉鎖性も指摘されている。
著作権という大きな法的問題が立ちはだかる中、今回の試みは美術館側から著作権について、美術館の閉鎖性について一石を投じた。

私たちブロガーもそれに応えられるような存在になりうれば、これに勝る喜びはない。

森 万里子 「フラットストーン」 SCAI THE BATHHOUSE

SCAI THE BATHHOUSEで開催中の森万里子「フラットストーン」展を見て来た。

森万里子の作品でこれ!というものを拝見したことがなく、しかし名前だけは確実に記憶がある現代アーティスト。
今回は近年海外の美術館で大規模な巡回展を開催してきた森の国内未発表の立体作品と絵画、ドローイングを展示。
ということで、これは見逃せずと急いだのであった。

「テーマは、生死、再生、宇宙といった概念で、自然と融和いた未来のあり方を示唆し、実験的かつ預言的な森の新たなアプローチ」とギャラリー作成の個展案内ハガキには記載されている。

う~ん、そこまで言うかな。

正直私には森万里子のメッセージ、概念といったものがあまり伝わって来なかった。
特に絵画やドローイングはピンと来ず。

ただし、間仕切りの向こうにあった立体作品は一見の価値はあるだろう。
平たい石の素材はセラミック。
研磨作業は森万里子自身によるものか?
更に中央に置かれていた縄文式土器を摸したオブジェは最初ガラスかと思ったが、実際はアクリル樹脂だそう。

作品解説については、私の駄文よりギャラリーHPの方が詳細で的確だろう。

ちょっと彼女の世界観は私にとって近寄りがたい感じを受けた。

*10月3日(土)まで開催中。

「冨田渓仙展」 後期 茨城県立近代美術館

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アートブログ界の先輩「いづつや文化記号」様をして「感動二段重ねの冨田渓仙展」と言わせしめただけのことはある。

前期も感動の「冨田渓仙展」の後期展示を見に茨城県立近代美術館を再訪した。
思えば水戸行きは、この冨田渓仙展が9月23日で終了してしまうがため本日決行となったのである。もう一つのお目当てだった水戸市立博物館については後日記事にする予定。

さて、後期ともなれば同じ作品も当然あるにも拘らず、やはり感動の連続。
何度見ても良いものは良い。冨田渓仙は私の好みなのだった。

今、もっとも見るべき展覧会はこの「冨田渓仙展」だと私は思っている。これほど名作が集まることはなかなかないだろう。しかもはるばるフランスのパリからの里帰り品まで出展されている。

前期展示の感想はこちら
なお、全ての展示作品リストはこちら

今回は簡単に後期の見どころのみ書いておく。

1.画帖関連のページ替え
今回何点も画帖作品が出展されているが、中でも「優雲鉢羅」個人蔵 1972年は前後期とも楽しませていただいた。渓仙らしさ満載の美麗極まる画帖である。
これを所蔵されていらっしゃる方が羨ましい。

2・名作中の名作
・「御室の桜」 1933年 福岡市美術館
今回運よく、担当学芸員の方によるギャラリートークに途中から参加できた。
学芸員さんによれば、この「御室の桜」は、庭園美術館でお馴染の朝香宮様が購入した作品。その後、人出にわたり、落ち着いた先が現在の福岡市美だという。
この作品よくよく注意して見ると、それぞれ描かれている桜の種類が皆違う。桜の名前が幹の下部などに金文字で記載されているのだ。
学芸員さんに教えていただかなければ、全く気付かなかったに違いない。かなり近づいてよく探さないと見つけられないものもある。
ぜひぜひ、忘れずに桜の名前を確認してくださいね。更に、桜の花の色、微妙に皆違っています。

・「雲上鶴図」 滋賀県立近代美術館
鶴の動きがアニメーションの映像のよう。斬新極まりない。

・「蒙古襲来」(試作) 個人蔵
冒頭前半部分に出てくるが、この作品を見た時には、心底驚いた。残念ながら試作のこの1点しか現存しておらず、本作は焼失したか不明である。
何とも大胆な構図で、馬のドアップと数名の人物が同じ大きさで縦横無尽に描かれている。
この作品の完成品たるやさぞかしと思わせる。

・「訶利帝母」 1908年 清水寺
上記「蒙古襲来」同様、渓仙の画風模索期の作品。渓仙らしい大胆さはないが、緻密な構成と色遣い、技の冴えが光る大作。

・「沈竈・容膝」 1913年 福岡県立美術館
紙本墨画淡彩の双幅で、特に「容膝」の画面びっしりと描かれた葉が独特。渓仙らしさはこの頃既に現れている。大観激賞の1枚である。

3.随所に溢れる渓仙のユーモア
ギャラリートークで初めて気付いたのだが、今回のチラシになっている「風神・雷神」。特に雷神の履いている虎のパンツに要注目。
虎シマなだけでなく、よくよく見ると、前に虎の顔まで付いているではないか。
学芸員さんも「顔まで付けてしまうところが渓仙らしくてユニーク」とおっしゃっていた。
しかもこの虎、何ともとぼけた表情をしている。

そういう視点で作品を見直してみると、確かに描かれている動物、人、みな時々にユーモラスな表情をしている。
単に美しいだけでなく楽しい所が渓仙は良いのだ。

大大大満足の「冨田渓仙展」。私の今年度ベスト10上位入り間違いなしである。

*9月23日まで開催中。お見逃しなく。

「現代美術も楽勝よ。」展 水戸芸術館現代美術ギャラリー

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埼玉の3館同時開催の「長澤英俊展」か水戸巡りかでさんざん悩んで結局、今日は水戸詣で。
埼玉にしなかった最大の理由は、遠山記念館のシャトルバスである。
9月20日から無料シャトルバスの運行時間が変更されて、より利用しやすくなっていることを発見。
ということで、長澤展は会期末ぎりぎりになりそう。

で、本日の水戸はツーデーパスも使用できず金銭面でも苦しい状況の中、東京駅から高速バス「みと号」を利用することにした。
ツインチケット(2枚綴りの回数券)は3500円。片道7500円で水戸まで約2時間。
行きは水戸駅の手前、水戸芸術館に徒歩数分の泉町1丁目に停車してくれるため非常に便利だった。

バスを降りてすぐに水戸芸術館へ向かう。
大変失礼ながら、今回の「現代美術も楽勝よ。」展はあまり期待していなかった。見ても見なくてもどちらでもいいかなと思っていたが、せっかくここまで来たらと入館した。

開館9時半に入ったので、お客さんはほとんどいない。
最初の展示室で私が見たものは、チューリップが活けてあるガラスの花瓶。
そして、よく殺人現場で見かけるような人型が白いロープでかたどられている床。
あれ?これも作品?

不安になって受付のスタッフの方にお尋ねしたら、これは本展覧会のために制作されたミステリー仕立ての映画「学芸員Aの最後の仕事」の舞台セットなのであった。
映画は10時に放映されるとのこと、上映時間1時間6分はかなり予定外であったが、2時間ではないので見ることにした。
*映画は1日5回:10:00~/11:30~/13:00~/14:30~/16:00~放映。

開始時間までの間、他の作品を観賞する。

本展は、水戸芸術館の所蔵品の中から写真、絵画、インスタレーションなど、国際的に活躍するアーティスト作品を展示し、現代美術の楽しさを紹介するもの。
更に上記の通り、展示室である会場全てが映画の舞台セットになっているため、作品以外の道具や機材も置かれたままになっている。美術作品と映画の世界を同時に楽しんでもらおうという趣向だった。

以下展示室と構成及び出品作のご紹介。

第1室 「○」
1.曽根裕 「19番目の彼女の足」 1993年
何とも意味ありげなタイトル。自転車が円環となってつながっている。

2.野村仁 「ジュラ紀の巨木:豊中」 1998-2000
今年は野村の作品によく出会う。これ、結構良かった。

第2室 「風景」

3.ジュリアン・オピー 「日本八景 国道300号線からみる本栖湖の富士山」 2007
これは、何度もお目にかかっている。昨年のオピー展が懐かしい。

4.畠山直哉 「スローグラス」 2002年
これはスマッシュヒットだった。未見の写真作品で、全部で6点あったかな。
フロントガラスから見た光景で、窓の向こう側には雨が降っている。どれも色合いが美しい、まるで抽象絵画のようでもある。水滴と窓ににじむ風景の色がマッチして何とも言えない光景を生み出していた。やはり、畠山直哉の写真っていいなぁと改めて思う。

第3室 「空を見上げる」

5.I.F.P 「アナザーワールド(空の眺め)」 1992年
こちらも未見作品だが、かなり大がかりなインスタレーション。天井から空の写真をはめこんだライトボックスを4つ?だったが上に行くほど小さなライトボックスで、提灯のようにぶら下がっていた。
思わず見上げると、空空空。室内なのに、空が見える。面白くなってきた。

6.小林孝亘 「Cloud」 1999-2004
大好きな小林さんの未見作。隣の空に呼応するかのように、水色の空を背景に不思議なもこもこ雲が大きく描かれていた。雲の形がやたらとかわいい。はぁ幸せと感じる一作。

7.野村仁 アナレンマシリーズ3点 1990年
またも野村作品、こちらはアナレンマシリーズ(太陽の動きを写した)午後と正午と午前。

第4室 「黄色と青」

8.アニッシュ・カプーア 「龍」 1992年
出た!と思わず声が出そうになった。おぉ、カプーアのあの深い深い青を使用した彫刻作品。もちろん未見作。龍には見えなくて、むしろ青い盆石に感じた。
カプーアはインド生まれの仏教徒。これに、禅の思想を感じ取れるだろうか。

9.河口龍夫 「関係-時のフロッタージュ」 16点 1996-1998
水戸芸術館での展覧会での作品。
話題の河口龍夫による作品は、今一つでも多く見ておきたいところ。願ったり叶ったり、似たような作品は過去にも見ているが、水戸芸所蔵のものはもちろん未見。
かつて私が名古屋にいた頃、水戸芸術館は現代アートの聖地のように思っていた。行きたいのに、遠すぎて行けない。名古屋から水戸はあまりにも遠かった。
ちなみに、本作品は化石のフロッタージュなのだが、刷るという行為が作者である河口と化石とのエネルギー交換なのである。
額縁は全て、黄色の蜜ろう=これは生命をイメージしている、で作られている。

黄色と青というタイトルに相応しい構成と作品選択。

第5室 「計画を立てる:

10.イリヤ・カバコフ 「はぎとられた風景(1931)」 1998年
ペインティング作品。もちろん未見。右上がはがれていて白の下地が見えている。ここに作者の言わんとする所があるのだろう。過去に開催された同館でのカバコフ展の映像も隣で流れていた。これが見たかった!

11.川俣正 「アーケード・プラン No.3」 1994年
kawamata
思わず大地の芸術祭かと思わせる作家のラインナップ。カバコフに続いて、川俣正。
いつもの板系インスタレーション。

12.蔡國強 「水戸風水龍脈図」 1994年
水戸芸術館は過去、こんな面白い企画展をやっていたのか。
これは非常に面白く興味深かった。私自身風水に興味がある影響も大きい。中国風水学の権威である天津大学建築学部教授と水戸のための風水プロジェクトを計画し、その祭作成された水脈図。
水戸の大地に龍の姿をした龍脈がある。水戸は風水的に良好な土地なのか。時間があったら、過去の展覧会記録をじっくり読みたかったが諦めた。

13.クリスト&ジャンヌ=クロード 「アンブレラ、日本とアメリカのジョインプロジェクト」
アメリカと水戸で同時に傘を広げるという大がかりなプロジェクトを行っていてその記録や構想図案。

第6-1室 「人間」

14.ジュリアン・オピー 「歩く人々」 2007年
この映像作品、何度見てもいい。

15.王慶松 「老栗夜宴図」 2000年
この作品は映画を見た後で観賞した方が良いかもしれない。横長の大きな写真。

16.17.マグダレーナ・アバカノヴィッチ
フェイスシリーズ 3点 1987年
「ベンチの上の立像」 1989年
確か、アバカノヴィッチは、塩田千春が最初に師事したいと思っていたアーティストではなかったか。
結局、アバカノヴィッチでなく、アブラノヴィッチに師事することになったのだが、名前がよく似ていて・・・と以前参加したアーティストトークでおっしゃていたと思う。

強いインパクトがあったのは、ブロンズの「ベンチの上の立像」。
顔も手もない立像は、語ることを奪われた当時の東欧諸国の実像を表していると同時に恐怖感を覚えた。

18.ベルナール・フォコン 写真6点
フォコンの名前も写真も初めて見た。フランスのアーティストで子供のマネキン人形を使用して物語の一瞬をとらえたような写真を撮る。
「磔刑」「4番目の愛の部屋」など、これは見ておいて良かったと思う。

第6-2室 「自然」

19.河口龍夫 「関係-再生・ひまわりの種子とマムサスの歯」 1998年
ここでも、河口先生再登場。マムサスとはマンモスのこと。マンモスの化石がヒマワリの種子の生命エネルギーに再生することを夢見て制作された。

20.ロバート・メープルソープ 4点写真 1998年
メープルソープの写真が突如現れる。晩年の作品だが、やはり良いものは良い。

21.日高理恵子 「樹を見上げてⅥ」 1992年
過去に開催された「こもれび展」の出品作品と思われる。この「こもれび展」参加アーティストの面々が素晴らしい。小林孝亘しかり、今回出展されていなかったが伊庭康子さんも参加していた。
図録をショップで拝見したが、印刷もよく思わず手が出そうになったがじっと我慢。

第7室 「闇」
22.ジェームズ・タレル 「ソフト・セル」 1992年
tareru

1人ずつしか体験できない作品。10分間「ソフト・セル」と題された個室に入り闇と向き合う。そこで見えるものは、果たして何か!
ちょうど待ちなしで参加できた。これに入れただけでも水戸に来た甲斐あり。10分間の暗闇をぜひ体験してみてはいかが?「感覚の中に入り込むことで見えてくる光がある」byタレル。

第9室で映画「学芸員Aの最後の仕事」が上映されていて、第8室では使用された小道具、大道具類が展示されている。
映画は、Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)を中心に制作。
演じているのは、ボランティアスタッフや実際の水戸芸術館学芸員の皆さま。
ちょっと文化祭の映研制作映画のようなノリだが、1時間最後まで飽きさせずに見せたのだから立派。
肩の力を抜いて楽しむのがポイント。

なんやかんやで十分楽しんで約2時間。水戸芸術館を後にした。
個人的には、本展の観賞プログラムとして企画されている「ピローdeトーク」(要電話申込)に参加してみたかった。
アーティスト、タノタイガによるギャラリートーク。カップル間のプライベートで親密な対話方法を美術館というパブリックな空間に導入。移動式ベッドに乗って気さくに感想を語り合う対話方式の観賞とのことだが、一度体験してみたい。参加費は入場券のみ。
どなたか、参加された方の感想を知りたい。

これ以外に「お子さんと一緒に美術館散歩」や「淑女のためのギャラリーガイド」など様々なプログラムが用意されている。

水戸芸術館では、観賞者参加型、新しい観賞方法を模索している姿勢がよく伝わって来た。

*10月12日(月・祝)まで開催中。

「版画がつくる驚異の部屋へようこそ!展」 町田市立国際版画美術館

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町田市立国際版画美術館で開催中の「版画がつくる驚異の部屋へようこそ!展」へ行って来ました。
ご贔屓にしているアートブロガーの「はろるど・わーど」さん絶賛の展覧会。
実はこの展覧会、前回の企画展「中林忠良銅版画展」でチラシを見つけた時から、行くと決めていたのだが、8月は遠征続きですっかり出遅れてしまった。

今朝は珍しく起きたら10時半!になっていて、全ての予定がおじゃんになった。
しかも、体調が思わしくない。
しかし、町田には行きたい。

結局町田への誘惑が勝ち、東京都美でトリノ・エジプトを見た後に町田へ向かった。
先に結論を申しますと、版画好きなら必見。あと鳥や骸骨、博物図譜好きも必見の内容。

<展覧会の概要>
本展は、15世紀~18世紀にヨーロッパで流行した「驚異の部屋」にならい、その雰囲気を版画で構築しようとするもの。版画の世界の広さ、奥深さを垣間見せてくれる変わり種を多く展示。
解剖図や動物図譜など、驚くような作品が大集合します。描かれた事物の珍奇さと、精緻な銅版技法や多色刷りなどの技法の素晴らしさ、二つの驚きを楽しめます。
~展覧会解説より一部引用。

早い話が、珍品、希少版画が勢揃い!
こんなコレクションを持っているのは、日本全国ここ町田市立国際版画美術館だけではなかろうか。
版画展には数多く行けど、知らない版画家さんが多く、新しい版画の境地に目覚めた感じだ。

展覧会は
♦驚異の部屋
♦自然の脅威
♦怪物をさがせ!
♦踊る骸骨
♦番外編

今回はコレクションを同館の企画により構成し、展示している。残念ながら図録は作成されていないが、図録に変わる作品解説付きのリスト全12ページが手作り作成されていた。
この手作り解説にはモノクロだけど図版も少し掲載されていて、感心してしまった。後で読み返すこともできるので、これは永久保存決定!

さて、いつもなら印象に残る作品をつらつらと書き連ねるが、今回は印象に残らない作品の方が少ない。
中でもこれはというものを少しだけご紹介。

・デマジエール「驚異の部屋」1997年 銅版
本展タイトルにもなっている象徴的な作品。冒頭入口にあったが、その線の細さや奥行き感もさることながら、描かれているものが凄かった。天井、壁、至る所に、不気味な動物たちや得体の知れぬ化け物の(想像上の生きもの?)が描かれている。
実際、本当にこんな部屋があったのだろうか。信じがたいが、あったからこんな版画ができたのだろう。

・ダゴティ 「人体構造の解剖陳列」1759年 多色(3版)、手彩色
全部で8点。2枚の紙を縦につなげて大版になっている。手彩色というのが泣かせる。
ただ、作者のダゴティは医学者ではなかったため、解剖図としての正確さには欠けるそうだ。素人目には正しいのかどうかもちろんわからず、ただただ、その色調と細かさに見入った。
国立国際美術館で開催された杉本博司の「歴史の歴史」で似たようなものを見たなぁと思い、帰宅後同展の作品リストを確認したら、ドンピシャ。
「歴史は歴史」展で展示されていた解剖図(杉本のコレクション)も同じダゴティのものだった。
これで、杉本博司ファンも、本展必見ではないか。

・ソーントン 「フローラの神殿」
解説曰く版画で作られた植物図譜の金字塔。
その言葉に偽りなし。
博物図譜としての機能も果たしながら、背景が画面ごとに異なり工夫されている。その植物に似合った背景を用意している上に、その背景が実に芸術的で素晴らしい。
これは、本展のマイベスト。
特に好きなのは「エジプトハス」と「白百合」「夜の女王」「ピッチャープラント」だが全10点どれも見ごたえがある。色刷りの美しさをぜひ堪能していただきたい。

・「地獄」 作者不明 1483年 木版 手彩色
西洋の地獄図。日本の鎌倉や室町時代の地獄図も怖いが、こちらも相当怖い。
背景の朱色は古今東西共通しているのか炎をイメージしているようだ。

・ジョン・マーティン ジョン・ミルトン著「失楽園」より 1827年 メゾチント
全7点あるが、どれも光と影が上手く表現されていて、他の作品とはかなり趣を異にしている。
神に逆らって暗黒へと落とされるサタンの物語の挿絵だと思われる。
どこか版画らしからぬ、むしろ写真に近い雰囲気をもつ。

最後に「エジプトの部屋」と題するコーナーがあり、ここには「エジプト誌」出版総部数わずか300部、かのフランス将軍ナポレオンがエジプトについて考古学から自然科学、地誌、民俗までの包括調査を指示し、その結果を書物で残そうとしたのが「エジプト誌」。
この書物には、多色刷りの手彩色による銅版画が900枚近く入っていた。
今回は、その一部が公開されている。もちろん、こんな珍しいものを見るのは初めてのこと。

博物学編、考古学編から出展されていたが、圧巻だったのは考古学編の空想復元図2枚。
①フィエラ島の神殿内部
②テーベのメムノニウム神殿
いずれもその細かさと言ったらもう言葉を失う。全て極小のドットが打ち込まれ細かい背景や模様を創り出している。色彩も見事だが、図録がないので色彩が思い出せない。。。
ちょうど午前中にエジプト関連の展覧会を見ていたのも役立った。
これは絶対の必見作品。

番外編にはだまし絵のような版画とクロード・メランの「ヴェロニカの聖顔布」1649年があったが、後者の聖顔布は花の頭から一本の線だけで描かれているのが見事。
布にキリストの顔が浮かび上がる趣向。

う~ん、思い出してみるとやっぱり面白かった。めったとない内容です。ぜひお運びください。
美術館では、サイズの異なる虫眼鏡も無料貸出可能です。どんどん借りて、版画の細かさを実体験してみてはいかがでしょう。

*9月23日(水・祝)まで開催中。

「心の眼 稲越功一の写真」 東京都写真美術館

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チラシに掲載されている写真を見た時から気になっていた「心の眼 稲越功一の写真」を東京都写真美術館見て来た。

想像通り、いや想像以上に素晴らしい写真の数々、そして私の好みとマッチしていたので、写真を拝見しつつなぜか、ドキドキしてしまった。先日のTOKYO PHOTO2009もなかなか良かったし、写真運がアップして来たのかもしれない。

稲越功一は1941年生まれ、コマーシャル写真家、肖像写真家として芸能人の写真集を手がけたり多彩な活躍を果たす一方で、自身のために写真を撮り続け、シリアス・フォトの写真家として注目を集める。本展覧会は2年前には既に開催が決定し、稲越本人とも打ち合わせや出展作品などが決まりつつあったが、今年の2月25日に68歳で肺癌のため急逝されてしまった。
構成は、生前からの計画通り、彼が表現したかった写真世界を忠実に再現、未定だった内容については担当学芸員である金子氏が補った。
1970年代初頭から顕著になるスナップショットの眼差しの系譜を、日常的な光景をモノクロでとらえた作品を中心にたどる没後初の個展です。

・稲越功一の公式HPはこちら
・稲越が亡くなった際の、ブルータス副編集長のブログ「フクヘン」での記事はこちら
 稲越の作品集やスクラップ、メモ類などの画像あり。
・同じく「フクヘン」の本展紹介記事はこちら

構成は以下稲越が手がけた写真シリーズ単位になっていて、地下1階の広い展示室がより一層広く、細かく仕切ることなく空間を活かしたシンプルな展示方式で大変好感が持てた。いつもより、回りやすかった。

・「Maybe,maybe」 1971年 撮影地:アメリカ 全30点
もう、のっけからはまってしまう。モノクロのゼラチン・シルバー・プリント1枚1枚がカッコイイのなんのって。構図やぼかしが上手いというか、専門的なことはよく分からないけれど、ちょっとした風景なのに、どうしてこんなにカッコ良く切り取れるのか。
稲越とコラボレーションしている村上春樹曰く、「彼の写真は記憶につながる」と書いてあったけれど、どこかで見た風景というより、「こんな風景もあったのね」という気がした。

・「meet again」 1973年 撮影地:アメリカ 全15点 
こちらは更に焦点をぼかした(ソフトフォーカス?)写真。アートブロガーでもあり、近年写真展も開催されているあおひーさんの写真を思い出した。

・「記憶都市」 1987年 撮影地:都内各所
このシリーズがまた良いのだった。
荒川や向島3丁目付近、浜離宮や東京湾、私は「水」に関する作品に惹かれやすい性質なので、特に東京湾や中央防波堤、京浜島が気に入った。東京湾かr眺める街の風景はかげろうのようだ。
見ていたら、切ない気持になってしまった。約20年前の東京風景、そんなに昔と言う訳でもないのに、どこか懐かしい。

・「Ailleurs」 1993年 撮影地:世界各地
このシリーズと次に出て来た「Out of Season」は本当に素敵だった。
Ailleursの意味は「他の場所で」で良いのだろうか。ギリシャとインド、コートダジュールを撮影していた作品が特にお気に入り。

・「Out of Season」 1993年 撮影地:東京含め世界各地
ここに出てくる写真は絵画のようだった。ますます芸術性を帯びてくる。例えば「ドイツ」で撮影した写真は、どこかハンマースホイの絵画を思わせるし、「ベルリン」の雨の水滴が映る向こう側の街の暗さはなんともベルリン的で、一歩間違うといかにも過ぎるのだが、ギリギリの所で美しさを保っている。
「ニース」の1枚は、構図がどこかマグリット的だし、これと前の「Ailleurs」シリーズの写真集があるなら買ってしまうかも。
このシリーズだけカラー作品だった。

・「まだ見ぬ中国」 2008年 撮影地:北京、新疆ウイグル自治区他
亡くなる前年の作品。こちらはわずか4点だったが、水墨画のような写真。写真を見ながら水墨画を描く現代アーティストもいる昨今、中国の風景は今も昔もモノクロが似合う。
水に映る空と雲が、カッコよすぎてため息が出る。

・「芭蕉景」 2009年 撮影地:日本国内各地
これは次回出光美術館の企画展「芭蕉」の予習になりそう。同タイトルの写真集も出版されており、帰りにナディッフでチェックしたが、文章と写真で芭蕉をたどる内容。
こんなの見たら、また欲しくなってしまうではないか。危険。


中公文庫「使いみちのない風景」は村上春樹の文章と稲越功一の写真コラボ。お手軽なお値段で稲越作品も味わえる。こんなおしゃれな文庫本(下)を中公で出版していたとは。

huukei

*10月12日まで開催中。オススメです。

市民コレクション 「クロード・ワイズバッシュ」展 芦屋市立美術博物館 はじめての美術館46

ashiya

芦屋市立美術博物館で開催中の「クロード・ワイズバッシュ」展に行って来た。
芦屋と聞いてイメージするのは、関西の高級住宅街のひとつということだった。そんなハイソで閑静な高級住宅街の街にある美術博物館というのは一体どんなだろう?とちょっと興味があった。

芦屋には過去降り立ったことがなく、私にとって神戸以西への通過点に過ぎなかったが、今回はふと手にした本展チラシの作品に惹かれ初訪問となった。

事前に伺ってはいたが、こちらの美術館最寄の阪神電車芦屋駅からのアクセスがいまひとつ。
バスの本数が1時間に2本程度しかない。徒歩だと約15分。
真夏の関西で15分も歩くのは、ちょっと勘弁という感じ。今回は急いでいたので、行きは結局タクシー(1メーター)帰りはバスを利用した。

建物自体はかなり立派なもの、お隣に谷崎潤一郎記念館や図書館などもあり芦屋市の文化施設が集中している。
さて、受付をすませ2階が企画展示室1階は常設で博物館関係の展示をしていた。

目指すは「クロード・ワイズバッシュ」展。

クロード・ワイズバッシュって誰?私も知らなかったが、チラシによれば、フランス中東部ドイツ国境に近いディオンビルで1927年に生まれ、現在パリ在住。
彼の作品は、パリ国立現代美術センター、パリ国立美術館、ブリュッセルの王立アカデミー、NYのMOMA、日本では山形美術館に作品が収蔵されている。現在ワイズバッシュはヨーロッパ具象絵画を代表する画家のひとりとして世界でも高く評価され、一方で知識人としても幅広く活動し、サン・テティエンヌ美術学校ではグラビュール担当教授として後進の育成にあたった。

今回は市民コレクションから29点をお借りしての展覧会。

徹頭徹尾、同じようなセピア色の作品が並ぶ。
コレクターのご趣味なのかどうかはわからないが、音楽をテーマとした作品が大半。
作品名からもすぐそれとわかる。
例えば、≪コントラバス奏者≫≪チェロ合奏者≫≪フルート≫≪グランドオーケストラ≫≪ヴァイオリニストⅠ≫≪三重奏≫≪コンパルシータ≫などなど。
演奏家が演奏する姿を描く。
同じ音楽を扱う画家で浮かぶのはラウル・デュフィだが、デュフィとは違い、もっと具象的。
彼の作品を評して、ロートレック風と言われることもあるそうだが、ロートレックともまた違うような。
もっと線が細く描写はこまかい。
どちらかと言えば、激しさを感じる。

音楽関係の主題以外では、チラシに採用されている≪騎手≫(上図)や≪天使の復讐≫など馬を描いた作品がチラホラ。
やはり、圧倒的に音楽的なモチーフが多かった。

本展と同時開催されている「コレクション展2/もっと知りたい!」では、地元芦屋で活躍した具体美術協会のメンバーの作品が展示されていた。
特に今回は、「幻の田中敦子1964-1971」と題した特集展示を行っており、大がかりな大作≪Spring 1966≫(下)を見ることができた。この作品、実際に油彩の円形絵画がモーターで回転するのだ。
atsuko

コレクション展の中では、ハナヤ勘兵衛≪ナンデェ!!≫1937年の写真がとても印象深かった。ハナヤ勘兵衛の写真は、いかにも関西在住の写真家らしい1枚。ハナヤ勘兵衛はアーティスト名で、本名は桑田和雄。芦屋カメラクラブのメンバーとして、1930年代に新しい写真作品を沢山撮ったと作品解説カードで知る。
今回は1枚しか展示がなかったが、この名前記憶にとどめておきたい。

そして、1階にお目当ての小出楢重の作品が4点置いてあった。小出作品だけスペースの都合なのか、博物館の郷土関連資料と一緒に展示されているのに違和感があったが、≪海辺風景≫1930年は良い絵だった。
やはり、絵画は絵画でまとめて欲しい。

解説や作品リストは丁寧に作られているのに、ちょっと惜しい美術館だった。

*9月27日まで開催中。

「慶應義塾をめぐる芸術家たち」 国立国際美術館

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昨日アップした「やなぎみわ 婆々娘々!」の隣で行われていた「慶應義塾をめぐる芸術家たち」が本日のお題です。
私にとってはこちらの方が面白かったかも。

本展は、慶應義塾ゆかりの美術家および詩人6名の作品を国立国際美術館の所蔵品によって、紹介するものです。6人の表現世界を彼らの作品と共に、慶應義塾所管の関連資料を含めて展示します。

さて、選ばれた6名は次の通り。
・西脇順三郎 ⇒ シュルレアリスムの詩人であり、英文学者であり、自ら絵画も描いた。
・瀧口修造 ⇒ 西脇の教えを受け詩人・批評家として戦後美術の牽引者として活躍
・飯田善國 ⇒ 西脇を慕い共同制作も行った彫刻家
・駒井哲郎 ⇒ 版画としてあまりにも有名
・谷口吉郎 ⇒ 慶應義塾の建築を数多く手がける。
・イサムノグチ ⇒ 谷口吉郎とコラボレーションし「新萬莱舎」を手がけた世界的な彫刻家

ここで、大きな問題が立ちはだかった。
6名のうち、西脇と飯田を私は知らなかったのである。
飯田は作品を見たことはあると思うのだが、作品と作家名が一致した記憶としてない。
更に、瀧口、飯田の師である西脇を知らないというのは致命的であった。
今回ご一緒した遊行七恵様を呆れさせたことは申し上げるまでもない。

展示構成は、
1.西脇順三郎/瀧口修造/飯田善國
2.谷口吉郎とイサム・ノグチ
3.駒井哲郎
の3つのコーナーに分かれていた。

最初の部屋がもっとも新鮮で刺激的。
それもそのはず、私は西脇を知らず、まして彼が絵を描いたなど知る由もない。
冒頭に並んでいた西脇の絵が良いのだ。
・「残光」 
・「裸婦」
いずれも1950年代の作品。これに続いて1960年代の水彩「秋日-仁和寺の塔」これがまた素晴らしかった。
絵を描く詩人は西脇に限らず非常に多い。私の手元に「詩人たちの絵」窪島誠一郎著があるが、同著では5名の詩人であり画家が紹介されている。
残念ながらその中に、西脇は入っていないが、画家として充分な力量だと感じた。

瀧口修造は、富山県立近代美術館に彼にちなんだ展示室がひとつあり、そこを訪問してから好きになった。今回もドローイングや「デカルコマニー」などの版画類がクールでかっこいい。

本展チラシ(表面)に掲載されている飯田と西脇のコラボ版画集『』Chromatopoiema」(クロマトポイエマ)1972年は、言葉と色彩の融合を試みた見ているとリズムが感じられるようなデザインと色。
1970年代前半の作品にはとても見えない。今見ても新しい感じがする。

谷口やイサム・ノグチ関連の資料について特に目新しいものはなかったので省略。

最後、お馴染の駒井哲郎の版画作品がわずかに並んでいた。
ここでは『三田評論』(慶應義塾の機関紙)の挿絵などのブックワークが出ていた。
もう少し展示作品数が欲しかった。ファンとしてはちょっと物足りない作品数。

本展最大の収穫は、西脇順三郎を知ったこと。これに尽きる!

*9月23日まで開催中。

「やなぎみわ 婆々娘々!」 国立国際美術館

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国立国際美術館で開催中の「やなぎみわ 婆々娘々(ポーポーニャンニャン)!」展を見て来ました。
やなぎみわと言えば、今年の6月から11月まで開催されている第53回ヴェネチア・ビエンナーレの日本館代表出品者となっていることは御承知の通りでしょう。

関西では7年ぶりの個展となる本展では、モデルとなる女性が自らの理想とする半世紀後の姿に扮する「マイ・グランドマザーズ」シリーズ全作品26点を一堂に展示するほか、ヴェネチア・ビエンナーレに出品される最新作も現地での発表後日本国内で初公開されています。
やなぎ自身により熟考さえた展示構成も見どころのひとつとなっています。~展覧会チラシを一部引用。

展覧会場の構成は大きく3つに分かれています。
最初の展示室は、マイ・グランマザーズ・シリーズ。
こちらは、今年東京都写真美術館で展示されていた内容とほぼ同じ。記憶違いかもしれませんが、1点だけ大阪の方が多かったかもしれません。
展示順序なども東京展とは違っていましたが、ここはキャプションは読まずさらりと見て行きました。
全体照明はやや落とし気味、天井高は新国立美術館のような高さはなく、それなりにしっくりしていました。
このシリーズもさほど高さのない写真が多いので、天井高があまり高すぎると見栄えがしない筈。
程良い天井高だったと思います。
作品詳細については、東京での観賞記録をご参照ください。

次の展示室は一転して相当暗くしています。中間部を暗くしているのは、先日の野口里佳さんの展覧会と同じ。
この部屋では、2004年~2006年制作の寓話シリーズから13作品出展されていました。
過去に見ている作品も何点かある中、目に留まったのは≪泥の面≫2005年。
全体的にどの作品も怖い印象です。加えて、室内も暗いので怖さ倍増。
グランドマザーズはカラープリントですが、こちらは全点モノクロ。
白黒のモノトーン世界が恐怖をあおってます。

寓話シリーズは少女が世界の寓話や説話などから老若の2役を演じることで、幼いものの持つ無垢さと老女の狡猾さ=男性の視線で描かれた女性像の表裏と同一であることを表現しているらしい。

そして、最後の部屋。
いよいよ最新作登場。ウィンドスウェプト・ウィメン・シリーズ(Windswept Women Series」です。
チラシ画像でお分かりのように、荒野に立ちはだかり、はちきれんばかりの胸をゆらしながら、体を揺らす老女の姿。そんな老女、いや強女、狂女なのか?の特大写真(4m×3m)が全部で5点。
天井高くまで様々にポーズをとる女性像が5点。

女の私が言うのもなんですが、これ美しくありません。
もっと言ってしまうと、かなり気持ち悪いです。
しわしわ、たれたれの乳房しかも作り物のそれなどあまり見たいものではない。
どうしても醜さばかりに目が向いてしまいます。

更にどうかと思ったのが最後にあった映像作品≪The Old Girls’Troupe≫(10分)でしょう。
小さな高さの低いテントが会場に設営されていて、中に一台のTVが置いてあります。
観賞者はテントの隙間から覗きこむように映像を見るしかない。
私たちの姿勢は自然に、死語かもしれませんが、いわゆるヤンキー座りとならざるを得ず。
足首が柔らかければそれでも何とか我慢出来ますが、10分の映像ではちと辛い。
最後の方は諦めて、床に体操座りしてました。

映像の内容は、写真のモデルとなっている5人の老女達がテントをかついで、砂漠から現れます。
そして、途中、テントを置き、中から抜け出し、舞い踊ります。
そばにある写真はその舞っている姿の一場面を撮影したという構成なのでしょう。

解説によれば、異なる世代の女性たちの集いを家族写真のように見立て、老若、虚実、生と死の社会通念をかく乱させようと試みているとか。

社会通念までかく乱させているとは残念ながら私の脳は感知できなかった。

実は元々やなぎみわの写真は苦手で、マイグランドマザーズで私の中での評価は上がったが、この新作でまた元に戻ってしまった。
強烈ではありますが、私個人の嗜好からは外れていました。

*9月23日(水・祝)まで開催中です。
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