スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「住友コレクション 富岡鉄斎 -墨に戯れ、彩に遊ぶ-」 泉屋博古館

TESSAI

京都・泉屋博古館で開催中の「住友コレクション 富岡鉄斎 -墨に戯れ、彩に遊ぶ-」に行って来ました。

富岡鉄斎はちょっと苦手な画家で、「なんだか画面が騒々しい作家だなぁ」とか「色がどぎつい」などと見るたびに思うのです。

そもそも富岡鉄斎はいつの時代の作家なのかもちゃんと把握していなかった私。
幕末から明治・大正の京都を生きた文人で1836年に生まれ1924年でほぼ90歳近くまで生涯文人画家としての表現活動を続けた多彩な人物です。
生涯で一万点!以上の絵画を残す一方、和漢の個展に通じ、古画の研究も熱心で、画上の詩句かたはその教養に裏打ちされた洞察が読み取れます。

本展では、住友コレクションのうち鉄斎作品約30点を久々にまとめて公開するものです。

確かに富岡鉄斎の作品は出光美術館他でよくお目にかかるが、30点とまとめて拝見した記憶はない。本展で彼の作品を一度に拝見するのを待ちかねていた。

で、とても面白かった。
何がと言えば、今まで見たことのない掛幅以外の扇面図や巻物、はてはカルタくらいの大きさの画帖など、見ていると楽しくなる絵が本当に多かった。
一万点もの作品を描いているのだから、今回のように掛幅だけでなく多彩な作品があって当然。
どちらかと言えば、これまでは風景山水図や富士山図ばかり見ていたように思う。

そんなイメージをきれいに消し去ってくれたのが本展だった。

印象に残った作品は次の通り。
展示作品のごく一部の画像は美術館HPで見ることができます。⇒こちら

・漱老謔墨帖 第19図 李白月下独酌図 65歳 1900年
全部で何図あるのか失念(メモしなかった)してしまったのだが、確か20点程度だったと思う。
このカルタくらいの画帖の愛らしさといったらない。
切り離して絵がるたにしたら、さぞかし楽しかろうと思う。
文人画家であるゆえ、画題は漢詩や中国の故事などにからんだもので、今回はこの他第7図 「群盲評古図」と第16図「仙客遊戯図」の3点が期間を変えて場面替えされていた。 
画帖というのは、一度に全部見たいのにそれができないのが悲しい。

・利市三倍図巻 2巻 絖本淡彩
解説によれば、絖本は墨がにじみにくく墨絵を描くにはなかなか手強い材料らしい。
しかし、そんなことは露ほども感じさせず見事な筆による書と絵のジョイント絵巻ものであった。ここに乾:69歳、坤:70歳の作。ここでいう、乾、坤は天と地の意味だろうか。
それにしても、自由闊達な筆使いで、人物が多く描かれているこの巻物は背景知識などなくても見ているだけで楽しめる。
特に愛らしいのは唐子が様々なポーズをとっている様子を戯画っぽく描いている場面。ちょっと北斎漫画を思い出した。

・胎笑大方 シリーズ (扇絵) 全部で15点)
この扇絵は見事だった。題材は実に様々で、桔梗や桜花、秋草など季節の草花を描いた花鳥図もあれば、寿老人図、墨龍図、暮山帰樵図などもあり、バラエティに富む。
描くことを楽しんでいる様子を感じる一方、これらは生活の糧として売り物用に描かれたものなのかという気もした。

大幅では≪詩経天保旧如草図≫88歳・1923年と≪古柯頑石図≫77歳・1912年が良かった。

コレクションは、もっとも若描きの作品で45歳、ほとんどが85歳以後の晩年の作品。
60代と70代の作品はごくわずか。
晩年にかけても制作意欲は旺盛で、ますます絵の極意を得たかのような筆づかい。
思えば大正13年まで生きておられたのだから、それほど過去の作家というわけではないのであった。
江戸から始まった文人画の流行とその技術を受け継ぐ最後の文人画家だろう。

*12月6日まで開催中。
スポンサーサイト

「大竹利絵子展 夢みたいな」 小山登美夫ギャラリー京都

ootakerieko

小山登美夫ギャラリー京都で開催中の「大竹利絵子展 夢みたいな」に行って来ました。

大竹利絵子さんは、今夏東京藝大美術館陳列館で開催されていた「彫刻-労働と不意打ち」展で気になる作家さんの一人だった。
(参考)「彫刻-労働と不意打ち」展 過去ログ
今回関西方面に出掛けるにあたり、ちょうど大竹さんの個展が始まったばかりというので、早速云った次第。
しかし、今回は京都駅から市バスを乗り間違え(原因は東本願寺と西本願寺とを勘違い)、結局とんでもない処に出てしまい、タクシーで19時ギリギリに到着。
ギャラリーには事前に電話一本しておいたので、助かったが、本当にギャラリーの方にはご迷惑をおかけしました。

当然閉廊時間なので、お客は私ひとり。
今回は2階と2階から半分高くなっている中3階というべきスペース全てを使用しての展示。
藝大陳列館では、他の作家さんと一緒のグループ展だったため、大竹さんに割り当てられたスペースに限りがあり、あの時は「room」という作品で家族群像のような木彫を出展されていた筈。

今回まず感じたのは、無彩色な木彫たちの香。
だから、この香があるからこそ木彫が好きなんだと思う。
そして、大竹さんを追っかけたくなったもう一つの理由は、鑿跡残し派だから。

現在個展開催中の土屋仁応さんは、鑿跡を残さない。それはもう徹底的に消している。すべすべで頬をスリスリしたくなる質感。
対して、今回の大竹さんや、同じく今年日本橋高島屋美術画廊Xで拝見した滝上優氏は残す派。
本展とはそれるが、ギャラリーに大竹さんの過去の作品資料が置いてあり、2007年の「第3回アトリエの末裔あるいは未来」に両作家は出展されていた。ちなみに、同じく先日アップしたばかりの踊る彫刻家・小畑多丘も出展。「第3回アトリエの末裔あるいは未来」を見たかった。

今回の個展に話を戻す。
小山登美夫ギャラリーでの個展は昨年の「とりとり」に続いて2回目。
階段上がってすぐに目に入るのは、鳥いや鹿?(だったと思う)に乗る少女の木彫1点。これはかなりの大きさで、ギャラリストの藤川さんによれば、オープニングの3時間前まで鑿を入れ続けておられたとのこと。
材をお聞きしたが失念してしまったが、この作品の材質が曲者で最後まで思うような形が決まらなかったらしい。

木彫というのは、止めどころが難しそう。
ここでもうやめた方が良いかな、いやもう少し手を入れて彫った方が・・・作家さんご自身の中で葛藤が繰り返しあるのではないか。

この存在感ある中央の作品を取り巻くように、壁に「足女」(足の形になぜか少女の木彫)やら、昨年の個展「とりとり」で見せた鳥の背に乗る少女の小さいヴァージョンやちょっと前傾しながら、ワンピースの裾をつまんでいる少女立像やらがある。

個人的にはこのワンピースの裾をつまむほそ~い少女の立像が好みだった。
顔がとてもよくできていたから。
それにしても、あの細さは棚田康司さんに共通するものがある。

奥にも作品がありますというので、藤川さんに従うと、真黒に壁を塗った小部屋に少女と人形が。
作品名「doll」と「girl」がちょこんと置かれていた。
横の部屋には、トップ画像の足をぶらんとさせて座っている少女像が、足にくっついているのは幼児の少年。
全体的にメルヘンちっくなのも大竹さんの特徴。

最後の中3階で一番びっくり。
本展でもっとも大きな少女像、前述の黒い部屋にあった「doll」と「girl」の拡大バージョンが鎮座していた。少女像の方は、お顔があまりにも大きい。
身体に比べると顔の方が大きいのではないかと思う程。
椅子に座っている座像だが、迫力満点。
この作品は、ぜひどこかの美術館にでも買い入れて欲しい。

空間全体を上手く使って、そこに合った作品を完成させている力量はさすが。
そして個展全体を通じ、メッセージ性というか共通した何かも感じられた。

最後に売却済みの小品も見せていただいたが、私はこの小品がとても気に入ってしまった。
小鳥(この鳥は羽毛まで彫られている)の背に正座して覆いかぶさる髪の長い少女が乗っている木彫作品。
メルヘンチックと言えばそれまでだが、とても愛らしくて、手の中に押し抱きたくなる感じ。
こんな小品をもう少し見たいし、作っていただきたいな。

*12月26日まで開催中。
小山登美夫ギャラリー 京都
京都府京都市下京区西側町483番地(西洞院通六条下ル)2F  TEL:075-353-9994
• 開廊時間11:00−19:00 (火−土曜日)• 休廊日日・月曜日、祝日

「伊庭靖子展 - resonance 共鳴・余韻- 」 イムラアートギャラリー

iba
untitled 10-2009

昨日11月28日(土)に最終日を迎えた京都・イムラアートギャラリーで開催されていた「伊庭靖子展 - resonance 共鳴・余韻- 」に行って来ました。
伊庭靖子さんの略歴はこちら

伊庭さんの作品と言えば、今年の神奈川近代美術館での個展が思い出されます。
あそこで、魅了されなければ今回の個展も追っかけることはなかったでしょう。
(参考)神奈川近代美術館「伊庭靖子展-まばゆさの在処-」
更にその後資生堂ギャラリーで開催された「椿会2009:Trans-Figurative」においても新作を出品。
そして、来月12日より国立新美術館「DOMANI・明日展」にも出展されることが決定しています。

最終日とあってか、ギャラリーもかなりのお客様がおられ、当然作品(全部で(油彩5点、パステル画2点か3点)は全て完売。
伊庭さんのパステル画というのは初めて見たかも。
一見パステルとは分からない仕上がりで、パステル画のモチーフは陶器(染付)シリーズでした。

陶器の青と白の染付も美しいのですが、やはり私が好きなのはクッション模様。
今回は横に長い大作が1点あり、これが美しかった。
これまでのクッションシリーズ同様、白い布に蔓草ぽい花模様が美しく映えています。
この清潔感が好き。
汚れなき白。
そして、布の質感さえ表現する技術。
モノを超越した何かを感じます。

伊庭さんご本人が、ギャラリーにいらっしゃったので、直接少しだけお話しできました。
資生堂ギャラリー主催のイベントで伊庭さんと神奈川近美の水沢氏とのアーティストトークに今年参加しましたが、その中で伊庭さんが「風景画も手がけてみたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
それゆえ、資生堂ギャラリーでのトークに参加していたことをお伝えした後、「風景画の方は取り組まれていらっしゃるのですか?」と伺ったら、「全然手つかずです。」と苦笑い。

伊庭さんは、画家としてのお仕事だけでなく現在成安造形大学洋画クラス准教授の教職のお仕事もあり、どうしても制作に当てる時間が足りないとのことでした。

ただ、今後も個展は年に1回のペースでやっていきたいと力強くおっしゃっておられたので、来年もまた新作を拝見できそうです。
今回の展覧会タイトルの意味について伺うのを忘れたのは失態でした。
何と何が共鳴し、余韻を残していたのでしょうか。

伊庭さんは、前記のギャラリートークで初めてお姿を拝見したのですが、直接お話しさせていただいて、更に魅力的な方だと感じました。首にまかれたブルーのグラデーションのストールがとってもお似合いで、カッコ良かったです。人気作家になられても、謙虚な姿勢に敬服しました。

*本展は11月28日で終了しています。
イムラアートギャラリー
京都市左京区丸太町通川端東入東丸太町31
1階に広めの展示室、2階にも小展示室がある明るいギャラリーです。
丸太町通に面した路面店で市バス「丸太町京阪前」から徒歩2分

「講談社 野間記念館の名品」 講談社野間記念館

noma

講談社野間記念館で開催中の「講談社 野間記念館の名品」に行って来ました。

野間記念館は、上京し初めて行ってからお気に入りの美術館のひとつで、展示替えの度、欠かさず訪れている美術館のひとつです。

今回は講談社の操業100年にあたる本年と2000年に開館した講談社野間記念館の10年目の秋を記念し、野間コレクションの至宝と呼ぶべき名作を展示しています。

さて、野間記念館の展示作品の大きな特色として、出版文化資料が挙げられます。
親会社である講談社は誰もが知る大手出版社、大正期から昭和の雑誌の表紙原画や挿絵の原画など他の美術館では決してお目にかかれない作品が次々と登場するのが魅力です。

え、この画家が少女雑誌の表紙を描いていたの?という驚き。
例えば今回だと、岡田三郎助、藤島武二、和田英作、小磯良平、東山魁夷、伊東深水まで名だたる洋画家、日本画科の雑誌原画がズラリ。
中でも印象的だったのは、小磯良平と堂本印象。
堂本印象の作品は、変幻自在でどうも作風がつかめません。
一度まとめて回顧展があれば、作家のイメージも浮かぶのですが、個々の作品によって印象が大きく変化するのが常です。

同じく出版文化資料に含めて良いのではと思ったのが、村上豊作品群。画家本人より一括寄贈を受けた作品群が今回は第4室いっぱいに展示されていました。
村上豊の名前を聞いてピンと来ない方も作品を見れば、必ず「あぁこの人か」と思う筈。
『小説現代』に創刊依頼表紙絵を描き続けていたので、書店の店頭で必ず目にされているのではないでしょうか。
かくゆう私も、作品を見て懐かしい気持ちがわき起こりました。

展示順としては逆に最後になってしまいましたが、毎回感心するのは野間コレクションの名画の数々。特に、近代日本画コレクションは素晴らしい作品を所蔵しています。
今回は、土田麦僊≪春≫や川合玉堂≪渓村秋晴≫などお馴染の名品に加え、山村耕花≪江南七趣≫大正10年が忘れられません。

山村耕花と言えば、江戸東京博物館で開催されていた「新版画」展での版画作品が記憶に新しいところ。
今回は、版画でなく日本画で勝負、しかも七面のシリーズ作品。
本作品を耕花は、再興第8回院展に出品し、中国江南に取材し中国風俗を取り入れた風景画として評価されたそうです。
しかし、その一方7枚の作品の出来にばらつきがあり、画面のあざとさ、過剰な色彩がマイナス評価になったりと賛否両論。私の好きな小杉未醒は「中で二三点、パリの秋のサロンに出してみたいと思うのがあった」と語ったそうです。更に7枚のうち1点だけ「黄浦江の雨」だけは水墨の黒白世界で、他の圧倒的な色彩作品とは異なり、前述の未醒は「あの中の墨絵は感心しない」と苦言を呈しています。

私は、圧倒的な色彩の作品の中で、この1点だけある墨絵もとても好きです。
静かで、雨の煙る様子が浮かんできます。
未醒がなぜ、酷評したのかは分かりませんが、私は7枚とも個性的で美しく、だからこそ一番印象に残ったのでしょう。
晩秋に庭のテラスでのんびりするのも心地よい時間でした。

*12月20日(日)まで開催中。

「黄庭堅・伏波神嗣詩巻~中国大書家の気に触れる~」 永青文庫

omote

eiseiura

永青文庫で開催中の「黄庭堅・伏波神嗣詩巻」に行って来ました。

冒頭チラシをご覧になってお分かりのように、今回の永青文庫は中国の書に関する展覧会です。
中国の書家は数多くいますが、今回は宋代の四大家の一人に数えられる黄庭堅の作品がメイン。

最大の目玉は、黄庭堅の真蹟である重要文化財「伏波神嗣詩巻」(ふくはしんししかん)1101年の展示でしょう。
「伏波神嗣詩巻」とは、水難の守護神として祭られた後漢の伏波将軍・馬援の廟堂に唐代の劉禹錫上(りゅうしゃく)が詣でた際に詠じた詩だそうですが、毛頭漢詩を解せない私にとっては、その内容よりもひとえに文字が見たかった。

展覧会チラシ表面を飾るちょっと青みを帯びた墨色と流麗であり、しかも伸びやかさや流れのある文字が非常に好きでした。
私は同じ宋の四大家の米芾の書も好きですが、黄庭堅の書もこと、「伏波神嗣詩巻」に関して言えば非常に好きです。
見ていて惚れ惚れとしてしまいました。
実際に臨書することはできないので、ガラスケースの書を見ながら、空中に指で同じように文字を書いてみましたが、なかなかあのような筆の運びはできそうにありません。
はらい、はね、とめ、字間、字の大小とバランス。どこをとっても素晴らしいの一言です。

この作品は、今私がもっとも気に入って毎日眺めている2006年東博開催の「書の至宝展」にも出展されていました。
やはり、「書の至宝展」はこれ以上のものは開催されないのではと思う程書の名品の全てを集めた、歴史に残る展覧会であったことが分かります。

本展では同じく黄庭堅書「幽蘭賦」(拓本)宋時代や、楚石梵筆「心華室銘」元時代(重要文化財)、清拙正澄筆「与鉗大冶蔵主法語」元時代(重要文化財)など他にも中国書が展示されていましたが、重文でも私の好みではありませんでした。

むしろ、大好きな米芾筆「行草書易説巻」や趙毛頫筆「漢汲黯伝冊」の方が良かったです。

書だけではなく、文房四宝も同時に展示され、硯、筆、更にはこだわりのある紙まで展示されており、書の展示との組み合わせは楽しめました。

なお、来年4月20日~6月6日に「細川家の至宝 珠玉の永青文庫コレクション」が開催されます。
細川護立収集の選りすぐりの名品が展示されるようなので、こちらも今から楽しみです。

*12月27日まで開催中。

「入江 明日香 展」 シロタ画廊

irieasuka

銀座7丁目のシロタ画廊で開催中の「入江明日香展」に行って来ました。
*展示作品は展覧会名をクリックすると画廊HPにてご覧になれます。

入江明日香さんの名は、恥ずかしながら全く存じませんで、twitterで「はろるど・わーど」のはろるど氏の呟きと、ex-chamberで記事を拝見し、早速見に行くことに。

シロタ画廊には今回初めて伺ったが、思っていた以上に広い空間で驚いた。
作品数は2曲屏風だけでも3点、全部で約20点あったが、余裕で展示されている。

大型作品を除きほぼ全て売約済で、人気の程がうかがわれた。

過去の作品を見ていないため、何とも言えないが5回目となる本展では人物を新たに描いた作品と前述の屏風が新しい試みだという。

一番の驚きは、彼女の作品が銅版画のコラージュであるという点。
どこが銅版画になっているのか、一見しただけではまるで分からない。
版画の概念を超越している。
版画ってこんなに色鮮やかなんだっけ?と分からなくなってしまった。

1980年生まれで、既に2004年に第72回版画展奨励賞を受賞、以後2005年にプリンツ21グランプリ展で見事にグランプリ受賞。華々しいデビューを飾っている。

どこか日本画のようでもあり、いかにも女性らしい甘い世界が画面に漂っている。
特に、今回初挑戦の人物については童画のようなメルヘンさを表情にたたえ、周囲にうさぎなど配されているので、一層ファンタジーな感じを醸し出していた。

私の好みからは外れるが、線の美しさ、画面の構成力は折り紙付。
さすが、人気の実力者だと感じた。

*11月28日(土)まで開催中。
シロタ画廊 東京都中央区銀座7-10-8 Tel: 03 3572 7971 
A.M.11:00~P.M.7:00 (最終日P.M.5:00)

「ギリシアの古代美術」 天理ギャラリー はじめての美術館58

tenri

ura

天理ギャラリーで開催中の「ギリシアの古代美術」に行って来ました。

天理ギャラリーは以前から気になっていたものの、毎週日曜日が休館になっているため、なかなかタイミングが合わず行くことができなかったが、今回の「ギリシアの古代美術」展はいつにも増して気になり、祝日(祝日は開館している!本当に日曜日だけ休館)に行って来た。
場所は、東京の千代田区神田錦町。
JRなら神田駅から西へ約500m、地下鉄なら新御茶ノ水・小川町・淡路町から徒歩5分程度。
行きはJR神田駅、帰りは淡路町駅を利用したが、淡路町、小川町駅が一番近そう。

本展では、天理参考館(奈良県所在)が収蔵する考古美術資料を通して、古代ギリシアの神話の世界や、実際の人々の暮らしについて展観するもの。

残念ながら展示作品リストは用意されていなかったが、HPに掲載されている。⇒ こちら
展示作品数としては65点。
しかし、いくつか印象に残る作品があった。

一番の目玉作品は、チラシ表面の展覧会タイトル右にある月桂冠。純金やガラスでできており、紀元前5~3世紀のもの。破損もほとんど見られず美しい形を保っている。

金ぴか系より、もっと心惹かれたのは彫刻。
女神立像、人物像頭部片、女性座像(チラシ表右)など、どれも小ぶりだが美しい。人物像頭片は欠損部分が大きいが、残された僅かな顔面からアルカイックスマイルを浮かべていることは分かる。

解説も分かりやすかった。
一番の収穫は、こうした古代美術の展覧会でよく見かける黒絵式アンフォラ、赤絵式アンフォラなどの土器で、黒絵式と赤絵式の制作過程での違いがやっと理解できたこと。

・黒絵式⇒図像を描いた後、先のとがった道具で細部を描きおこす。どちらかと言えば硬い表現。
・赤絵式⇒図像部分を残して、周囲を塗りつぶし、その後細部を筆で描く。この方式だと自然な曲線が可能。

その解説を読んでから、各作品を見て行くと確かに赤絵式の方が自然な曲線になっている。
ゆっくりと分かりやすい解説を見ながらの鑑賞は満足できた。
しかも、入場無料!です。

なお、次回展覧会「鉄道旅行の味わい―食堂車メニューと駅弁ラベルに見る旅の食文化―」」と題した鉄子系の私にとって、興味をそそられる内容。開催期間は来年2月22日(月)~4月3日(土)まで。
先着500名には、本展を記念して、開催記念券(切符)をいただける。私のは398番のナンバリングがされていた。

*11月28日(土)まで開催中。

「野呂介石-紀州の豊かな山水を描く-」 和歌山県立博物館

赤富士
「富岳紅暾図」 野呂介石筆 文化13年(1816) 個人蔵
⇒ 日本最古の赤富士図

和歌山県立博物館で開催中の「野呂介石-紀州の豊かな山水を描く-」に行って来ました。

47年~1828年)は、江戸時代に紀州で活躍した文人画家で、21歳の時、京都で池大雅に師事し、その後昨日アップした「荻泉翁コレクション」にもあった大阪の木村蒹葭堂らをはじめとする関西の文人たちと交流。
その後47歳で町人の身分から紀州藩に採用され、その後藩士として勤めながら山水画を多く描き、更に、晩年画家としての名声が高まり、各地から教えを請う文人が多く訪れたといいます。

野呂介石の名は、私も過去にいくつかの展覧会や博物館で作品を拝見したことがあり、記憶に残っていました。
本展は、介石の画業を回顧する31年ぶりの展覧会。となれば、次に開催する時に見に行けるかどうか危ういってことだと会期開始早々向かった次第。

展示構成は次の通り。
Ⅰ 学画-鶴亭と池大雅
Ⅱ 開花-交友と遊歴
Ⅲ 出仕-藩士として父として
Ⅳ 東都-江戸と富士
Ⅴ 矮梅居-依頼多き日々
Ⅵ あこがれ-中国絵画の学習と詩意
Ⅶ 紀州を描く-真景と豊かな山水
Ⅷ 指導-次世代の文人画家や弟子たちとの交流
Ⅸ 晩年-藩主のお褒め「山色四時碧」
Ⅹ 没後-その評価と門流

以上の構成を見てお分かりいただけるかと思うが、野呂介石の全貌をつぶさに明らかにする重厚な内容。展示作品も非常に多く、前期(11月15日まで)後期(11月17日~12月6日)で相当数の作品展示替えを行い、前後期合わせて187点もの作品と関連資料が出展されている。
展示作品リストはこちら

また、展覧会のホームページの充実度が凄い。
分かりやすい展覧会みどころはこちら

元々京都から和歌山へ向かうという無謀な計画であったため、鑑賞時間が絶対的に不足し、最後はかなり駆け足の鑑賞になってしまったが、見終わった後に、介石その人の人生を見てきたような感慨を抱いた。

全般的に介石の作風は南画でもやや保守的な傾向にあり、師の池大雅が時折見せる破天荒な作品はない。むしろ中国山水画の影響を強く受けているように感じた。
ただ、どの作品も温かみのある穏やかな作風で、気持ちが和んでくる。

南画と一口に言っても、実に様々であることが徐々に分かりかけて来た今日、この「野呂介石」展を拝見したことで、私の南画についての引き出しが確実に増した。
例えば、介石と同じく紀州で活躍し紀州の三大文人画家と称される桑山玉州の作品も、今回記憶にとどめられたし、以前から気になっていた蒹葭堂の作品も見ることができた。

それに加えて、前半では大好きな池大雅の≪楓林停車図≫≪那智観瀑図≫≪瀟湘八景図屏風≫≪富士十二景図≫は出ていて、全く予備知識なしで出掛けたのでとても嬉しかった。

前述の桑山玉州の作品に続いて、初期から晩年までの介石作品と中国山水、特に≪渓亭秋色図≫倪瓉筆、≪離合山水図≫伊孚九筆(重文)など手本とした中国元~清時代の作品も数点出展されていた。

介石作品では、最も好きなのが≪歳寒三友図巻≫、≪擬米南宮意山水図≫(前期)は素晴らしかった。
この筆達者ぶりは当時著された「古今南画要覧」「現故漢画名家集鑑」など(当時流行していた南画の作家たちを番付したもの)に、池大雅、彰城百川に続いて三番目に名前が挙がり、もう一方では大雅と田能村竹田の間に名前があり、人気画家であったことが窺われる。

なるほど、介石の穏やかな山水や紀州の風景作品は手元に1幅置いておきたくなる、そんな作品なので人気ぶりも納得できる。

意外にも、絵画の仕事は掛軸や絵巻、屏風だけでなく、やきものの絵付けにまで及んでおり、やきもの用の絵は、素朴で単純な図柄が微笑ましい。
力の抜けた所が好感を持てる。

それにしても、和歌山県立博物館の企画展は今回でまだ2度目だが、いずれも丁寧で分かりやすい解説と展示方法が取られており、大変感心しまた担当学芸員の方の奮闘ぶりを随所に感じた。
昨今公立美術館でも作品リストを作成していないことが多い中、こちらでは必ずリストは用意され、更に今回はひらがなばかりの「出陳資料よみがま目録」まで用意されており、泣けた。
こんな心遣いができる博物館なら、遠くても足を運ぼうという気にさせられる。

図録(↓)は言わずもがなの充実した内容で、これ1冊で介石の全てはが分かるという貴重な内容。

図録

できれば、展示替えの後期も行きたいところだが、ちょっと予定が詰まっていて微妙。
関西方面の皆様、素晴らしい内容の展覧会です。
ぜひぜひ足をお運びください。
博物館には隣接して和歌山県立近代美術館があります。そちらでは現在「-世界遺産登録5周年記念-描かれた紀伊山地の霊場と参詣道」展が開催されており、合わせてお楽しみいただけます。

■「野呂介石展」関連イベント
・11月29日(日) 「野呂介石の画集と文人交流」 13:30~15:00
講師:安永拓世(和歌山県立博物館学芸員)
会場:県立近代美術館2階ホール
・12月5日(土) 13:30~14:30 学芸員による展示解説
会場:展示室内

野呂介石が見た紀州の自然を楽しめます。

*12月6日まで開催中。本展の巡回はありません。

「荻泉翁コレクション-藝に遊ぶ-」 世田谷区郷土資料館 はじめての美術館57

tekisenou

世田谷区郷土資料館で開催中の「荻泉翁コレクション-藝に遊ぶ-」に行って来ました。

荻泉翁(てきせんおう)って誰のこと?と思われる方も多いことでしょう。
荻泉翁こと、故・小林克弘氏は、古美術商を営む傍ら、近世文人画の研究に精力を傾け、学究肌の収集家でもありました。
特に、古美術・骨董の情報誌『小さな蕾』に60回にも亘り掲載された「近世文人画家の系譜古き画家の心に会う旅」は、骨董ファンのみならず研究者の間でも高い評価を受けていたそうです。

生前より同氏はご自身のコレクションを世田谷区郷土資料館に寄託されておられましたが、一昨年鬼籍に入られ、そのご遺志により「荻泉翁コレクション」が同館に寄贈されることになりました。

本展覧会は、コレクション全107点の中から選りすぐりの約50点を紹介し、小林氏のご厚情に謝意を表すとともに、近世文人画に造詣深かった個人を偲ぼうとするものです。

近世文人画が、現在密やかに私のマイブームとなりつつある昨今、本展の開催はブログ「Seachang's room」で知りました。

今回展示されている作品は、玄人好みと言って良いのでしょうか。名前を知らない作家もかなりありましたが、作品の出来は良い物が多かったです。
私が名前を知っている作家では、谷文晁≪富士三保清見寺図≫≪秋江独釣図≫、岸駒≪竹虎図≫、立原杏所≪雪夜書斎図≫、鳥文斎栄之画、蜀山人賛≪桜下花魁図≫、佐藤一斎画賛≪墨竹図≫、山東京伝≪美人図・残暑≫、桑山玉洲≪春暁富岳図≫、木村蒹葭堂≪渓山問奇図≫が挙げられる。

特に、谷文晁、岸駒の≪竹虎図≫、鳥文斎栄之の作品などは非常に印象深い。
これらの作品を見ていると、文人画の面白さがおぼろげながら感じられるから不思議だ。

私にとって文人画はどれを見ても似たような感じであったのが、今回の展覧会で実はそうじゃないってことが分かり始めた。
この3連休に群馬県立館林美術館でも地元が生んだ明治の南画家、岸浪百草居の展覧会(詳細はTak様のブログをご覧ください)を拝見し、また記念講演会で東京大学大学院教授の佐藤康宏氏による「日本の南画-江戸時代の新興美術運動-」を拝聴し、日本の南画の系統と流れは大体理解できた。

その上で、この「荻泉翁コレクション」を眺めて見ると(図録で)、別の面白さや視点が出て来た。

名前を知らない作家でも、むむこれは!と思う作品がかなりあって、いつかここで見た作家だと思いだす日が必ず来そうな気がする。
例えば、馬道良・馬孟煕の山水図双幅(1797年)は中国山水図?と思うような出来栄えだし、大岡雲峰の同じく山水図双幅も奥行感があって更に情緒があり、素晴らしい。
また、展示室内のあちこちにゆったり鑑賞できるソファや椅子が置かれているので、落ち着いて心行くまで鑑賞できる環境だったのも良かった。

この内容と質で入場無料は驚きだが、更に驚くべきは図録のお値段。
超破格の600円!!!
入場料の間違いかと思ったほど。
600円の図録だからどうせ小冊子ではないのと思ったら大間違い。

栃木県立博物館の狩野派展図録とほぼ同じ大きさと厚さ、127頁、図版はオールカラー、参考文献はもちろん4名の方の論文+落款印象研究成果まで掲載された驚くべき充実した内容。
本当に600円でよろしいのでしょうか?と言いたくなります。

大きな声では言えませんが、ごく最近拝見したとある公立美術館の1900円図録との違いはあまりに大きい。。。

図録買うだけでも行く価値あります。もちろん、繰り返しとなりますが実際の作品は、質の高いものが揃っています。

世田谷区郷土資料館は、東急世田谷線(そんな線があることを今回初めて知った)の上町駅から徒歩5分程度。2両編成の電車が都内の世田谷区を走っていたことにも驚きました。

*11月29日(日)まで開催中。月曜休館
開館時間:9時~17時(入館は午後4時半まで)

「幻の京焼 京都瓢池園」 泉屋博古館分館

hyoutien
大倉集古館の「根来」展と合わせて楽しめる「幻の京焼 京都瓢池園」 泉屋博古館分館に行って来ました。

この展覧会、とっても良いのに絶対チラシとポスターで損していると思う。
とってもはっきり書いてしまうと、チラシのデザインが悪すぎる~。
チラシを見た時には、行くのやめようかと思ったけれど、行ってみてびっくり。
こんなに素敵な京焼の展示は見逃したら勿体ない。
チラシって、展覧会へ行く気にさせる最重要アイテムだと思うんだけど。もう少し考えたら良いのにね。

チラシのことなど杞憂であった。
館内にはかなり多くのお客様がいらっしゃったので、チラシが云々などとほざいている輩は私くらいだったことだろう。

京都瓢池園は、日本の近代陶芸の大立者・河原徳立と実業家の廣瀬満正(住友家初代総理事の長男)の尽力により、明治40年から大正9年にかけての短期間に制作流通したやきもの(チラシより)。
先日拝見した横浜美術館の「大・開港展」にも出展されていた。
参考「大・開港展」エントリ:http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-858.html

京都瓢池園で制作された京焼は活動期間が短かったこともあり、幻の京焼と言われている。
本展では、廣瀬家ゆかりの京都廣誠員に所蔵される代表的な作品約80点を展示し、京都瓢池園の全貌を紹介する初めての試みです。

何といっても、陶磁器のレベルの高さが目を引いた。
京都らしく、乾山風のものもあれば、神坂雪佳風デザインもあり、絵付けデザインが特に素晴らしい。
もちろん、陶磁器の命とも言える陶肌や地の発色も透明感があり申し分ない。
青磁風、白磁風、更には釉薬の研究により、柿釉、鉄釉、桃色釉、乳白釉など様々な色合いの作品が出来上がっていた。
どれも、これも欲しくなってしまう。

更に、京都瓢池園で検索をかけていたらこちらのブログに行きついた。
どうやら、京都瓢池園はオールドノリタケのルーツだとか。
私の好きなオールドノリタケももとをたどれば、京都瓢池園!?もう少し深く知りたい。
今度京都の泉屋博古館に行ったら、図録熟読して来ようと思った。

驚いたのは、浅井忠の存在と関わりであった。
洋画家である浅井忠は、どうやら単に洋画だけを仕事としていた訳ではないようだ。
大津市歴史博物館に行った時も驚いたのだが、大津歴博のミュージアムショップには浅井忠が描いた大津絵のポストカードが販売されていて、これがとても愛らしいのだ。

大津絵と浅井忠が私の頭の中では全く結びつかなかったが、京焼の絵付け図案も浅井忠が携わっていたと分かり、漸く大津絵と浅井忠も結びついてきた感じがある。

浅井忠図案の瓢池園の陶磁器たち、特に≪染付動物絵角形向鉢≫や≪色絵動物四方皿≫などとても愛らしい。

≪染付稲穂に雀文ビール呑≫(新居浜市広瀬歴史記念館)は今回の一推し。
お酒もろくに飲めない私が言うのもなんですが、このビール呑ならビールも美味しく進みそう。

それにしても、明治の工芸品の素晴らしさの一端を垣間見る素晴らしい内容だった。
もっともっと、明治~大正期の工芸品にスポットが当たっても良いのではないか。「皇室の名宝展」で明治の工芸ブームが到来したら面白いのに。
「京都瓢池園の幻の京焼」も「根来」と合わせて楽しめます。

*12月13日まで開催中。

「根来」 大倉集古館

negoro

大倉集古館で開催中の「根来」展に行って来ました。

「根来」(ねごろ)とは根来塗、すなわち黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねた漆器のこと。
その名の由来は、和歌山県にある真言宗の総本山・一乗山大伝法院根来寺の仏具や什器として作られたものと言われている。

私が初めて根来塗に出会った時のことは今でも忘れられない。
それは今から8年程前に初めて京都の細見美術館に行った時のこと。展覧会の内容は根来と関係ないものだった(多分琳派)と思うが、細見古香庵のコレクションが最後に展示してあって、その中に根来があったのだ。
≪根来亀甲文瓶子≫と≪黒根来双蝶文瓶子≫は間違いなくあった。特に後者の蝶、というか蛾のような大きな図柄はちょっとグロテスクで強烈に印象深かった。
今回は残念ながら細見美術館所蔵品は出展されていないようだった(展示替えで前期にあったのかは不明)。

その後も、様々な展覧会で根来塗を見かけることはあったが、本展のように根来一本で行われる企画展には出くわしたことがない。
昭和41年に現在のMOA美術館、当時熱海美術館で「根来」と題した展覧会が開催されて以来だそう。
この熱海美術館での「根来」展図録は、ネットで調べたら45,000円~50,000円と恐ろしい値段が付いている。

残念ながら作品リストは用意していないとのことだったが、作品名はどれも似たような名前だし、所蔵先の多くは個人になっていたため、あってもあまり意味がなかったかもしれない。

元々仏具、什器用に制作されていたものなので、用の美を成していなければならないが、経年使用によって、朱漆がはげて下地の黒漆が顔を出している所に風情や美や枯淡の美を感じるもので、何とも日本的、日本人の美意識を象徴するかのような品物である。

古今東西、漆がはげた所の風情を楽しむ人類が他にあるだろうか?
根来に美を感じるとは、すなわち日本人であることの証のようにも思われる。

しかし、これだけ沢山の根来の漆芸品を取り揃え、作品の見せ方にも工夫を凝らしていたことをまず評価したいと思う。
大倉集古館が別の美術館のように見えたほど、その雰囲気を一変させていた。

とりわけ、古筆や古写経と合わせた展示は、根来を仏具、什器を超越した立派な美術作品に見せていたと思う。
1階にあった、「東大寺二月堂焼経」+須田悦弘さんの白椿一輪(木彫)+根来の取り合わせは、台になっていた古材がもっと古くてひなびていたら言うことなしだったのに。
それにしても、あの、「東大寺二月堂焼経」は杉本博司氏所蔵のものではあるまいか?表装の銀箔と深い緑の裂を使用していたのが似ている。
須田さんは、ギャラリー小柳が担当しているアーティストだし、組み合わせとしては至極無難。
これ、あくまで勝手な憶測です。
展示の様子はブログ「フクヘン」で画像が掲載されている⇒こちら

お気に入りの根来は沢山ありすぎて、とても紹介しきれない。
両口銚子や富岡鉄斎旧蔵の硯台や、姿の良い湯桶、足付盥(六地蔵寺)などなど。

時代の中心は室町時代が最も多く、次に鎌倉、桃山時代と時代が新しくなるにつれ、デザイン性が高まるように感じた。
根来の亜流と言って良いのか≪漆絵紅葉文大鉢≫室町時代など、赤と黒だけで、ここまでやったかという感動を覚えた。

図録がなかったので、ショップにあった雑誌『目の眼』を購入して、本展企画者の田島充氏(ロンドンギャラリー主人)と白洲信哉氏(白洲次郎、正子の末裔)の対談で、田島氏が根来とマーク・ロスコの絵画をたとえて話をされていたのが興味深かった。
確かに、ロスコのシーグラム壁画で使用されていたような赤と黒の世界はどこか共通している。

menome

無論、根来の魅力は単に赤と黒の2色だけにあるわけではなく、形の美しさという点も見逃せない。

多分、観賞者の誰もが自分のお気に入りの根来を見つけたことだろう。
漆の耐久性、用の美、枯れの美を堪能し、日本人DNAを深く感じる展覧会だった。

なお、図録は12月下旬に完成予定だが、お値段は確実に一万円を超すようです。
雑誌『小さな蕾』も大倉集古館で販売していますが、この雑誌amazonでは既にusedしかありません。

tsubomi

*12月13日まで開催中。

「狩野派-400年の栄華-」 栃木県立博物館

kanouha

既に、あちこちのブログで話題になっている展覧会。
当初、狩野派と言えばこの方、安村敏信先生の講演会に電話予約までしていたのに、急遽関西行きとなりキャンセル。
予定の見直しをしたら、ちょうど今日から宇都宮美術館で「杉浦非水の眼と手」が開催。これを待って、宇都宮行きを決行することにした。

しかし、本展の会期は明日23日まで。
図録1200円はお値打ちでかつ出来が良いと聞いている。板橋の英一蝶展も最終日には図録は完売していた。
ということで、2週間前に図録だけ取り置きを電話でお願いしておいたら、案の定、昨日で図録完売になったとのこと。良かった~予約しておいて。

さて、狩野派展と言えば、この秋静岡県立美術館でも「狩野派の世界」と題した展覧会を開催していた。
しかし、栃木県立博物館の狩野派展との違いは明確だった。栃木では、主に東国のちとゆかりの深い狩野派画人の作品に焦点をあて、その400年の歴史を紹介するもの。
展示替えを含み約100点もの作品が出品される大規模な内容だった。

てっきり、60点程度の出展かと思いきやさにあらず。
行けども行けども終りが見えず。思っていたより作品数も多く見ごたえのある作品ばかり。
気が付けば、あっという間に1時間半が経過していた。

展覧会は4部構成。
?.狩野派誕生
?.探幽の登場
?.江戸の狩野派
?.そして近代へ

一番驚いたのは、栃木県立博物館にこれほど多くの狩野派作品があったのかということ。
板橋区立美術館からも相当作品を借りているが、それでも栃木県博所蔵作品が大半。これは凄い。

*所蔵先が記載されていないのは、栃木県立博物館蔵
・≪観瀑図≫ 狩野正信 室町時代 長林寺
・≪花鳥図屏風≫ 伝狩野元信筆 室町時代
やっぱり伝だろうが、伝なしだろうが正信、元信の狩野派始祖ペアの作品は水墨は忠実に、着彩は華美になっている。

・≪洛外名所遊楽図屏風≫ 狩野永徳 室町時代
まだ若き永徳の洛外名所遊楽図。かの有名な洛中洛外図屏風を思わせるような緻密さ。人間一人ひとりの様子が実に丁寧に描かれている。
こちらの方が近くまで寄れて見やすい。

狩野探幽の画技の上手さが如何なく照明されていた。
・≪陶淵明菊梅図≫ 狩野探幽
華麗の一言につきる。
・≪富士三保清見寺図≫
3幅対で広大な富士の裾野と大地絵を描く。

以前東博で見た伊勢物語の主人公を変わった構図で描いた作品の再会は嬉しい。
家余っく何を描かせても一流だ。

後半は江戸狩野中心の展開。

ここでは狩野一信の凄さを誰もが感じたに違いない。私は、増上寺の五百羅漢図もさることながら、板橋区立美術館の≪源平合戦図屏風≫にKOされた。
この毒々しい色彩、綿密な構図はわすれようにもなかなか忘れ難い。

最後に、お馴染狩野芳崖、橋本雅邦はじめ下村観山まで網羅されているのが凄い。

概して静岡県美は京狩野派をピックアップ、栃木では関東狩野派に絞った点が良かった。

*11月23日!明日まで開催。まだ間に合います。お見逃しなく~。

「ヴェルナー・パントン展」 東京オペラシティアートギャラリー

panton

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「ヴェルナー・パントン展」に行って来ました。
展覧会チラシは一見するとSFフェアのようだが、実は20世紀の北欧デザイナーの回顧展。

本展については、気になっていながらも椅子のデザイナーさんの展覧会と優先順位は低め。
ところがnoelさんおtwitter上の呟き、更にブログ記事⇒こちらで俄然。興味は高まりぐるっとパスの期限内にと遅れ馳せながら行って来ました。

結果、楽しい、面白い、過去に見たデザイナー系の展覧会で一番良かったです。
パントンについて、以下に自分が無知であったかを恥じ入りました。

彼は単なるデザイナーではなかった。
元々建築の勉強をしていて、設計構想をいくつか練ったけれど結局実現せず。結果的にプロダクトデザイナーとして一番名を馳せたのだが、本展を見ればその才能があまりにも時代に対し先端的過ぎたのだろうということが分かる。
北欧デザイナーの家具は元々大好きなのだが、パントンの椅子然り、テキスタイル然り、更に一番好きなのは照明と彼が手がけたモジュール空間。
テキスタイルの中に若冲の升目描きのようなものがあった。
この技法万国共通なのだろうか?朝鮮絵画にも似たような作品がある。

展示会場はいつものオペラシティが別空間になってしまったかのよう。
前回の鴻池朋子さんの展覧会さえ超越しているように感じた。

途中靴を脱いで、実際にパントンが手がけた≪ファンタジー・ランドスケープ≫や≪3Dカーペット≫を体験できるのも良い。
自宅がこんな風になっていたら、毎日帰るのが楽しくなって、家から出たくなくなりそう。
そしたら、私も少しはじっとしていられるのではないかと妄想した。
3Dカーペットは真剣に自宅に欲しい。
楽だこれは。ここにねっ転がって大画面の映画など見たら幸せ過ぎ。今回はパントンのインタビューやら作品の映像作品が流れていたが、これも必見作。
ただし、気持ち良すぎて思わず寝そうになった。

あんまり楽しかったので、もう1度行こうかと思っている。
どうやら私はパントン氏のコンセプトカラーを重視している点、機能的である点に共感を強く覚えた。

図録は3500円とお高いので、一旦見送ったが、自宅に戻りやはり手元に置いておきたくなった。
小さなパントンチェア付の図録、印刷は凸版なのでバッチリ。製本方法も変わっている。

動く家具も私が以前考えていたのと同じ発想。ワイヤー使いのラウンジチェアも良かったなぁ。
だめだ、思いだしたらまた見に行きたくなってきた。
大枚はたくのは辛いが、やはりこれは欲しい。

ところで、デンマークに行ったらパントンが手がけたレストランなどはまだ残っているのだろうか。
空間体験したいなぁ。

すっかり、パントンファンになってしまった。

*12月27日まで開催中。

「東京コンテンポラリーアートフェア2009」 東美アートフォーラム

TCAF

新橋(御成町)の東京美術倶楽部3階4階フロアを使用して、「東京コンテンポラリーアートフェア2009」が本日より明後日(23日)まで開催されています。

早速行って来ましたので、気になる作家さんなどご紹介します。
67軒の画廊とメディア3社が出展しています。出展画廊のリストはこちら

・西村画廊
町田久美さんの新作か旧作か不明だが見たことのない作品が2点。作風とモチーフから察するに新作だと思われる。横尾忠則さんのY字路写真や小林孝亘さんの昔のドローイングなど出ていた。

・ギャラリー広田美術
前を通ったことはあるけれど、入ったことはない。銀座の老舗中の老舗画廊だと思う。取扱作家が凄い。今回は若手作家の紹介に絞っていて、神戸智行さんの日本画に惹かれた。神戸さんは現在岐阜県美術館での展覧会の参加アーティストになっているとのことで、今度名古屋に帰ったら、岐阜県美には必ず行かねば。プライスチェックを忘れてしまった。
過去の展覧会の様子はこちら
生きものをモチーフにして優しい雰囲気の作品を描いている。欲しいなぁ。

・YOKOI FINE ART
前原冬樹さんの新作が3点。スニーカーと自転車のサドル彫刻。ちょっとイメージが違う。
昨年のおぶせミュージアムでの展覧会を逃したのは、痛かった。次回個展に期待したい。

・ギャラリー・ショアウッド
岡村智晴さんの日本画が気になる。こもれびを描いた緑の作品はとても美しい。単色使いが多いが日本画風の内海さんのよう。1984年生まれで今後が楽しみ。

・IMURA  ART GALLERY
現在京都では伊庭靖子さんの個展を開催中。伊庭さんの作品はなかったが、渡邊佳織さんの絵画が気になる。子どもを描いた作品が多いが、1点群像表現されているものがあり、これが一番良かった。修復など手がけれおられるそうで、技術は素晴らしいものをお持ち。1984年生まれの若手。
渡邉さんの作品はこちら

・帝塚山画廊
ここでは添野郁(そえのかおる)さんの作品に目がとまる。不思議なモノクロ平面作品。道行く人々をテンペラで描く。技法が個性的で切り取り方も面白い。1984年生まれの若手で要注目。
作品画像はこちら

・YUKARI ART CONTEMPORARY
大畑伸太郎、南条嘉毅の2人の平面作品が良かった。今回大畑は立体なし。絵画だけでも十分魅力は出ている。南条の土で描いた作品は面白い。かなり大きな作品なので、お値段もそれなりだったが、来月12日に個展が開催されるので、今度こそYUKARI ART 初訪問をする!詳細はこちら

・ラディウム・レントゲンヴェルケ
初めて、あるがせいじさんのペーパー作品を見た。3点中初日オープン1時間後で既に2点売れていた。確かに、これは面白い。
以前から注目している漆の岩田俊彦さんの作品は今回更に冴えていた。ここは全体的に楽しめた。

・ギャラリー新居 東京店
渡部 裕二(わたべ ゆうじ)。過去の作品から大きく路線を変えているように思った。人物から風景へ。私は風景の方がこの作家さんの作品は好き。鉛筆とは思えない。

・小林画廊
もう1人鉛筆画家のご紹介。秋山泉さん。あまりにも敷居が高すぎ、この人の作品だけ出展していたが、大半が既に売却済。確かに上手いし情緒があるが、そこまで人気がある理由は今一つ不明。

・サイギャラリー
森本絵利の繊細な点描画が気になった。額装を上手くすれば素敵なんじゃないかな。シンプル過ぎるほどシンプル。ULTRAで見た芳木麻里絵さんのレース風作品もあり。

・Gallery FURUYA
ここで、凄い作家さんの作品と出合った。武田海。東京藝大卒業後?長らくスペインに行っていたようで、今回は和紙と糸でできた彫刻が4点あり、存在感抜群。本展最大の収穫。

*11月23日まで開催中。入場料600円ですが、全部見ると1時間半は必要です。

「ユートピア 描かれし夢と楽園」 出光美術館

idemitsu

出光美術館で開催中の「ユートピア 描かれし夢と楽園」に行って来ました。
*出品リストなどは美術館HPをご覧ください。

タイトルから展覧会の内容がまるで想像つかなかったのですが、「ユートピア(理想郷)をテーマに、絵画・工芸の優品、約60件を展示し、古来描かれてきた「夢」と「楽園」の知られざる特質を探る」という試み。

分かったような分からないようなテーマなので、あまり深く考えず作品を見て行くことに。

Ⅰ 夢ものがたり-夢見と夢想、そして幻想
・≪青白磁刻花蓮池枕≫景徳鎮
この枕、以前拝見したことがある。あまりにも素敵だったので忘れられない。今回の展示はこの枕に限らず、割と既に見たことがある作品が多かった。通いつめて来た成果だろうか?

・≪布袋図≫ 室町時代
・≪陶淵明図≫ 伝趙孟麩 明時代末期
布袋図は気持ちよさそうに夢見ている布袋。この展覧会のテーマにぴったり。

・吉野龍田図屏風 桃山時代
これとよく似た作品を根津美術館の開館記念展で見たが、あちらは時代が下って江戸期のものだが、今回出光で展示されているのは桃山時代。壮麗さの元祖は桃山にあり!

Ⅱ.描かれし蓬莱仙境-福寿と富貴
・≪寿老四季山水図≫ 池大雅 1761年 五幅対
じわじわと波が来ているマイブーム大雅の作品。やっぱり見れば見るほど見たくなる。かっぱえびせんのような作家だ。

・≪百寿老画賛≫ 仙 
今回のベストを占める作品。119+1の寿老人が皆楽しそうに笑っていたり、寝ていたり、とにかく自由きままで楽しそう。こんな風に老境を過ごせたら申し分ない。

・≪口出蓬莱図≫ 富岡鉄斎 1893年
構図が非常に珍しい。背中を向けた仙人の口から蓬莱境が飛び出している。それを見つめる唐子も観賞者に背を向ける。
富岡鉄斎の作品はアクが強すぎて苦手だが、これはほのぼのとして好き。そういえば京都の泉屋博古館で鉄斎展が開催中。こちらも行かねば。

・≪梅花書屋図≫ 田能村竹田 1832年
南画も登場。田能村竹田以外には野呂介石の作品もあり。

・≪四季花鳥図屏風≫ 山本梅逸 1845年 六曲一双
ゴージャスかつ緻密で、みっちりぎっしり。丹念に描かれている。

・≪粉彩百鹿文双耳篇壷≫ 景徳鎮 清
この景徳鎮は凄かった。鹿鹿鹿。でも不気味さはなくかわいい。

Ⅲ.美人衆芳-恋と雅
恋も夢のうちか。
たばこと塩の博物館で開催された「躍動と快楽」展で初めて見た≪桜下弾弦図屏風≫に再会。何度見ても良い。本当にこの屏風は好き。

・≪琴棋書画図屏風≫ 海北友松 六曲一双 東京国立博物館 *11/15まで展示
今回は出光美術館所蔵作品だけでなく東博や三井記念からの貸出作品も一緒に展示されている。
こういう試みをしないと展示がマンネリ化してしまうので、大歓迎。
海北友松のこの屏風は一見すると友松らしからぬ感じ。豪華さでは他を圧していた。

Ⅳ.花楽園-永遠なる四季
琳派作家登場。
・≪秋草図≫ 鈴木其一
・≪雪月花図≫対決で同タイトルの立原杏所は三幅対、冷泉為㤗の一幅が出展。
いずれ劣らぬ見事な作品。

最後は景徳鎮の粉彩牡丹文瓶で〆。
景徳鎮の粉彩っていいなぁと今回気付いた。

一部作品で展示替えがありますので、ご注意ください。

*12月20日まで開催中

小畑多丘 「IT'S JUST BEGUN」 TWS本郷

obata

定点観測しているギャラリーの中で、今一番外せないのはトーキョーワンダーサイト本郷である。

現在「TWS-Emerging」と題して、東京都主催の公募展「トーキョーワンダーウォール(TWW)」の1000名を超える応募者の中から100名の入選者が選ばれ、更にTWSでの展示希望者を募り審査を経て選出された作家の作品を紹介している。

現在4巡目を迎えたが、過去3回の選出作家、特に2階のワンフロアを使用している作家のレベルの高さは特筆すべきだろう。
初回は福島沙由美(6/6~6/28)、2回目は村上滋郎(7/4~7/26)、前回3回目は海谷慶(10/3~10/25)のサンゴの木彫とどの作品も記憶に今でも強く残っている。

今回2階フロアを使用しているのは、小畑多丘(おばた たく) 「IT'S JUST BEGUN」。
彼の作品は「TWS-EMERGING2009」チラシ表面に採用されており、見た時から一番気になっていた作家だった。

驚くべきは、そのプロフィール(以下TWS本郷HPより引用)

1980 埼玉県生まれ
1999 UNITYSELECTIONS(HIPHOP TEAM)結成
2006 東京藝術大学美術学部彫刻学科卒業
2007 HIPHOP戦隊BBOYGER結成
2008 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了
現在 埼玉県在住

主なグループ展
2009 「トーキョーワンダーウォール都庁2008(立体・インスタレーション作品)受賞二人展」
2008 「トーキョーワンダーウォール公募2008(立体・インスタレーション作品)」大賞
     東京都現代美術館、東京
2007 「第3回アトリエの末裔あるいは未来」展、上野桜木旧平櫛田中邸、東京
2006 「第2回アトリエの末裔あるいは未来」展、上野桜木旧平櫛田中邸、東京

その他
2008 「たけしの誰でもピカソ」 テレビ東京系出演
     「SUMMER SONIC 08」千葉マリンスタジアム&幕張メッセ、千葉
     HIPHOP戦隊BBOYGERとして出演
 「BBOY PARK 08」代々木公園・野外ステージ、東京
     HIPHOP戦隊BBOYGERとして出演
2007 「BBOY PARK 007」代々木公園・野外ステージ、東京
     HIPHOP戦隊BBOYGERとして出演
2006 「ageha live ltd」DEXPISTOLS × bboy Takuspe 
新木場ageHa@STUDIO COAST、東京

HIPHOP戦隊って何だろう?確かにそれらしきグループのHPはある。
http://www.bboyger.com/hero/
http://www.unityselections.com/

これらのHPとプロフィールを見て漸く展示されていた4点の作品がつながってきた。
つまり、彼はHIPHOPが大好きでその動きや戦隊のメンバーを木で彫刻してしまったようだ。

実際に作品を見るまで、それが木彫だとは思いもしなかった。
てっきり発砲スチロールか何かで作っているのだとばかり思っていたが、大きな間違い。
チラシなんてあてにならないなぁと実感する。
木彫でよくぞこれだけのものを作り上げる、しかも人の動きは生半可ではない。

技術的にも優れたものを持っていないと、思い描いた動きをする人体を木彫で表現することなどできないだろう。
前回の海谷慶も確か東京藝大の彫刻科卒業だった筈。
東京藝大の彫刻科の人材の豊富さ、多彩さには本当に感心する。

冒頭作品以外の3点もダンスポーズ何だと思う。
私が訪れた際に、作家さんご本人もいらっしゃったが先客2名から質問されていて、ちょっと入り込めなかった。写真は作家さんご本人が「撮っても良いですよ」とおっしゃっていたので、先客さんがバシ
バシ撮影されていた。

私はカメラを持ち合わせていなかったので、残念ながら撮影できず。

既に訪問されているexーchmber幕内氏の記事をご参照ください。
http://ex-chamber.seesaa.net/article/133210882.html

北川宏人のセラミックな未来人をちょっと思い出した。
木彫でも小畑さんの作品はカッコイイし、存在感がある。
後ろに回ってみても形の面白さがある、1周することを忘れずに!


今回は3階で展示している有賀礼、林田健の作品もなかなか。
ことに私は有賀礼「痕跡」に惹かれた。

*11月22日(日)まで開催中。お見逃しなく!

「清方/Kiyokata ノスタルジア—名品でたどる 鏑木清方の美の世界—」 サントリー美術館

サントリー美術館にて本日より開催されている「清方/Kiyokata ノスタルジア -名品でたどる鏑木清方の美の世界-」に行って来ました。
展覧会HPはこちら。作品リストも掲載されています。

平日水曜でも夜間開館しているのがOLに嬉しいサントリー美術館。
初日だからか水曜だからか、館内はとても空いていた。
空いてるなと感じたのは、単に観客が少ないという理由だけではない。
いつもに比べると、展示空間の広さに対し作品数が少なくいので、がら~んとした雰囲気なのである。

例によって、サントリー美術館恒例展示替えあり。
大まかに前期(12/14まで)後期(12/16~1/11)と考えて良いけれど、中には2週間しか展示されない作品も数点あるので要注意。

展示構成は次の通り。
第一章 近代日本画家としての足跡
第二章 近世から近代へ-人物画の継承者としての清方
第三章 「市民の風懐に遊ぶ」-清方が生み出す回顧的風俗画
第四章 清方が親しんだ日本美術
第五章 清方の仕事-スケッチ、デザイン

この展覧会、鎌倉市鏑木清方記念美術館からの出展作品が非常に多い。
私は昨日、一昨日にアップした通り、かなりの頻度で鎌倉へ出掛けていて、その都度鎌倉市鏑木清方記念美術館に立ち寄ることが多い。こちらの美術館の入館料は割引なしでも300円。
さほどの広さはないが、清方好きなら小町通りから一歩奥に入ってすぐの場所で、寄り道するのにちょうどよい位置にある。

よって、本日展示されていた大半の作品(本画、下絵、ゆかりの品々含める)は、過去に見たことがある作品が大半だった。
清方記念美術館所蔵作品以外でも福富太郎コレクションの≪妖魚≫や東京藝術大学所蔵≪一葉≫などは最近拝見したばかり。

そんなこんなで、期待していたのだが新鮮味はなかった。

本展の特徴として清方ゆかりの浮世絵作品も同時に展示されている。
こちらは、勝川春章の肉筆浮世絵≪桜下美人図≫個人蔵など、清方作品に共通するものがあり、清方が春章作品が好きで研究していたのだろうと推測される。

未見作品を中心に、印象に残った作品は次の通り。
・≪春雪≫昭和21年 サントリー美術館・新収蔵品
展覧会冒頭に薄く白い布(?)を背景に浮かびあがったかのように展示されていた。漆黒の羽織をたたむ小袖姿の女性。薄い藤色は、富士の風景をイメージしたとか。
常々感じるのは清方が描く着物の美しさ。ディテールこそおろそかにしない姿を尊敬する。

・≪初夏の化粧≫名都美術館 
名都美術館所蔵作品も、今回かなりあった。名の字でお分かりの通り、この美術館は愛知県にある。
私も一度行ったことがあるが、日本画中心のコレクションを有している。それにしても、これほど清方作品があるとは知らなかった。

・≪秋の夜≫秋田県立近代美術館
琳派の影響を受けその技法を取り入れている作品。

琳派好きであったことは≪抱一上人≫永青文庫(11/30までの展示)の3幅対を見てもよく分かる。
抱一を見たことは無論ないが、きっとこんな顔でこんな様子をしていただろうなぁと、違っていても逆にこの絵の方が本物になりかねない感じだった。
永青文庫からは≪幽霊≫というタイトルの貴重な扇面画も出展されていたが、こちらも11/30までの展示になっているので要注意。≪幽霊≫扇面図葉右上に年増女性の怖い顔した幽霊が描かれていて、これを目の前で広げられたら、さぞやビックリ!と小道具のような面白さがある。

・≪花ふヾき・落葉時雨≫ 水野美術館 11/30まで展示
清方の6曲1双屏風。6曲屏風は貴重とのこと。情緒あふれる一場面。

・≪伽羅≫ 山種美術館 11/30まで展示
本作品には漆塗りに螺鈿細工が入った枕が登場。絵の中だけでなく、実際に描かれている枕とよく似た≪茫蝶螺鈿蒔絵香箱≫サントリー美術館蔵が実際に置いてあり、絵から飛び出たかのようだった。他にも参考資料として、清方作品によく描かれた簪、櫛などの髪飾り類が何点も出展され、華を添えていた。

この他市井の人々の様子を描いた≪朝夕安居≫鎌倉市鏑木清方記念美術館蔵の絵巻物風作品は、見どころ満載。
清方は美人画だけでなく、日常の庶民の様子も多く残してくれていた。

絵画作品だけでなく、前述の枕のように実際の作品も合わせてみようとしているのが本展特徴。

代に残る江戸情緒、そして自身が学んだ古きよき日本美術という、清方にとっての2つのノスタルジアに焦点をあて、清方芸術の魅力を探ろうとするもの。清方の代表的な名作はもちろん、初公開となる清方作品、清方旧蔵の肉筆浮世絵など、これまでの清方展では紹介されることのなかった作品も出品されている。

・≪藤懸博士寿像≫古河歴史博物館
藤懸博士は美術史がご専門の学者。清方と知遇を得ていたようだ。清方と言えばまずは、美人画をイメージするが、人物の肖像画もよく特徴をとらえており、むしろ美人画にある甘さがなく、緊張感があって好ましい。

・≪桜姫≫ 新潟県立近代美術館
美人画の中では今回一番感銘した。見たことがなかったというのも一番になった大きな理由。

・≪明治風俗十二ヶ月≫東京国立近代美術館蔵
四季折々の景色と女性の姿は明治期の女性スタイルをよく反映している。

この他普段なかなか見ることができないものとして、≪小品集≫(草花風景スケッチ色紙)は、いつもの清方戸は違う一面を見た感じ。
静物画、リンゴやら果物の絵はセザンヌにも似ている。
清方デザインの風呂敷、袱紗などデザイン画科、挿絵画家として糊口をしのいでいた頃の作品なども出展されており、盛りだくさん。

やはり、清方の美人画の良さはその表情と着物の美しさかなと再認識した。
同じ美しいでも上村松園とは違うが師である水野年方の技法は踏襲している。

なお、こちらも先日拝見した大正新版画展にも僅かに出展されていた清方の新版画もあった。、こちらはきめ出しなどの技法も健在で楽しめる。

*1月11日まで開催中。展示替え二ご注意ください。

「大本山光明寺と浄土教美術-法然上人八百年大御忌記念-」 鎌倉国宝館

jyoudo

鎌倉国宝館で開催中の「大本山光明寺と浄土教美術-法然上人八百年大御忌記念-」に行って来ました。
展示作品画像の一部はこちらでご覧いただけます。

昨日アップの神奈川近美と反対側の鶴岡八幡宮内に鎌倉国宝館は位置しています。
鎌倉へ出掛ける時は、必ず近美とセットで訪れる仏教美術中心の古美術の館。

法然上人八百年大御忌記念とあるから、今年が?と思いきや平成23年が記念すべき八百年だそうで、2年先?!と驚いた。
2年前ではあるが、来る年を記念し法然上人の法灯を今に伝える光明寺の寺宝と各地の浄土教美術の名宝を一堂に展観します。

本展の目玉は、先に行かれた一村雨様の「つまずく石も縁の端くれ」(↓)さんがアップされていらっしゃいます。
http://plaza.rakuten.co.jp/ennohasikure/diary/200911150000/

私も本展で心惹かれた作品は同じくしていますが、簡単に感想を連ねます。

・運慶作 阿弥陀三尊像 浄楽寺蔵 重文
30年ぶりとなる寺外公開。普段お寺では後ろに回って仏像を拝見することは叶いませんが、こちらではぐるりと1周することが可能。
中央の阿弥陀如来の脇侍である観音菩薩、勢至菩薩が残っているのは非常に貴重とのこと。
ここで、はたと2009年1月号芸術新潮特集「運慶」を引っ張り出してみた。
やはり、掲載されてましたP39!
この浄楽寺には、同じく運慶作の不動明王立像、毘沙門展立像も所蔵されていますが、今回こちらの2体のお出ましはなし。

ところで、なぜ東国(浄楽寺は横須賀市内のお寺)に奈良仏師の息子である運慶の作品が残っているのか?
前述の芸術新潮1月号で仏像研究家として著名な山本勉氏が解説されている。

運慶は鎌倉時代の仏師。
時の権力者は、申し上げるまでもなく鎌倉幕府。京から東国に権力者は移りつつある頃。
今回の浄楽寺の運慶仏像は1189年で、ちょうど源頼朝が鎌倉幕府(いいくに作ろう鎌倉幕府でお馴染の1192年)を開く3年前に制作されたもの。
時の権力者と人脈を結び強力な関係を作り、社会的地位を向上させたという強かな一面が浮かび上がる歴史的にも貴重な作品であった。

そうとも知らず(上記はこの記事を書くにあたり今知った)、運慶作にしては大人しいかな~などと思っていた。後ろに回ると脇侍の両菩薩の衣の裾が少したくし上がっていて、珍しい表現をしている。
もっちりした肉付きの良さも見どころ。
本像は木造・金泥塗り、漆箔。
浄楽寺で観覧するには、3月3日と10月19日の年2回が公開日。左記以外で観覧希望の場合は、事前予約が必要です。

・阿弥陀如来立像 滋賀・阿弥陀寺 重文
快慶の弟子、行快の作品。こちらも、15年ぶりの寺外公開とのこと。今回見た仏像の中では一番好き。

絵画作品ですごいものがあった。

・当麻曼荼羅縁起絵巻 光明寺 国宝 2巻
突然国宝の登場。本展チラシ表面を飾っている精緻な描写がこの絵巻のものだと知った。
途中まではやや損傷部分も多かったので、さほど感動せず、場面をどんどんと追っていったが、ラストシーンが大変なことになっているではないか。
作者はこのラストに全精力をふりそそいだかのような筆の勢いである。
とにかく描写が細かい。それまで見ていたものは何だったのかと思う程、精緻極まる。波頭や雲まで線が1本1本丁寧に描き込まれていた。
ましてや浄土からの迎えの阿弥陀他、光輪をしょって、衣紋もおろそかにはしない。
しかも、このラストは着彩もよく残っていた。
他の場面も損傷がなければ、このラスト同様の精緻な仕上がりだったのかもしれないが惜しい。

・浄土五祖絵(善導巻) 光明寺蔵 重文
・浄土五祖絵 藤田美術館蔵 重文
この2つは元々セットであったと言われる作品。2つが揃って展示されているのは貴重な機会だろう。
いずれ劣らぬ名品。

・浄土五祖絵伝 光明寺
こちらもラストシーン(?)だったか、天から来迎する阿弥陀から下界の人間たちに降り注がれる落葉らしきものが散華に見える。この落葉らしきものを集める人々の姿がどこかユーモラスで素朴な絵なのが微笑ましい。

この他、香雪美術館蔵「二河白道図」はじめ、重要文化財の仏画、曼荼羅などが並んでいた。

神奈川近美の内藤礼展と合わせて足を運ばれてはいかがでしょうか。

*11月29日(日)まで開催中。

「内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」 神奈川県立近代美術館 鎌倉

naitou

神奈川県立近代美術館 鎌倉にて開催中の「内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」に行って来ました。

初日に行かれたLysanderさんのブログはこちら
私にとっては2007年入善町下山芸術の森発電所美術館「母型」、今年3月のギャラリー小柳「color beginning」に続いての展観である。

実際に展覧会を拝見してまず思うのは、内藤さんの作品を言葉にするのは非常に難しいということ。
言葉にしようとすればするほど、その本質がするりと自分の手の中から抜け出てしまうような感じ。
もがけばもがくほど、からまる。

がんじがらめの状態と内藤さんの展示は、もっとも似つかわしくないのだ。

したがって感想などあれこれ書かず、「気になる方は早めに行って来て下さいね。」とか「今回の展覧会は更に観客が少ない日や時間帯を狙った方がいいですよ。」などと現実的なアドバイスでお茶を濁したくなる。

しかし、尻尾をまいて逃げ込むのもブロガーとしてどうなのか、いや、時にはそんなことがあってもいいさと呟きつつ敢えて書くとすれば、一番広い展示室(チケット切ってもらって最初に入る部屋)≪地上はどんなところだったか≫は、内藤さんでしか作り上げられない空間になっていた。
この空間で各人が何を思い何を感じるかはそれぞれで、だからこそ内藤さんの作品は素晴らしいのだろう。

私の場合は、「葬列」、「葬送」という言葉が最初に浮かんだ。
次に浮かんだのは「浄土」。
この展覧会の前に入った鎌倉国宝館の「光明寺と浄土教美術」の影響か。

次の展示室では更に困惑が深まる。
たとえて言えば、無限の曼荼羅。

1階には≪精霊≫2009年、≪恩寵≫2009年が屋外展示されていた。

ちょうどこの日は秋晴れで、空を見上げたら展覧会のチラシ裏面にある畠山直哉氏撮影の≪精霊≫作品そのまんまの状態があった。
風によって青空を舞う真っ白なリボン-作品タイトル≪精霊≫。

新体操のリボン競技。
もっとましな感想はないのか!とあまりにも貧困な発想に悲しみさえ覚えた。

あまりにもミニマムな展示であるがゆえ、何か気付いていないことがあるのではないかとあちこち目を凝らして見てみる。
地上にあるガラス片でさえも作品に見えてくるから恐ろしい。

最初の展示室にも屋外にもジャムが入っているような瓶に水(だと思う)を入れたものが点在している。
展覧会タイトルの「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」は、ジョルジュ・バタイユ『宗教の理論』の一節。
ここ鶴岡八幡宮という神の宿る地と宗教理論の一節は必然なのか。

クリスマスツリーに飾りつけするようなオーナメント電球、コットンと思しき模様の入った布、小瓶に入った水、展示ケース、小さな小さな風船、肉眼で見えるか見えないか位の小さな透明の玉、薄く白い紙、白いリボン、刺繍風のリボン、小さな小さな透明ビーズ。
これらが内藤さんが作り出した世界を構成する目に見えるものたち。

目に見えないものたちは、各位で感じとっていただくしかない。
それこそが、内藤さんの展覧会に行く最大の楽しみだろうから。

<参考>
本展作品に関する内藤礼さんへの東京新聞インタビュー記事⇒こちら

*1月24日(日)まで開催中。

<アーティストトーク>
・1月11日(月・祝)午後2時より内藤礼氏によるアーティストトークが開催。
 申込不要。参加無料(ただし観覧券必要)

<図録>
・2007年発電所美術館で開催された「母型」展と同じく畠山直哉氏が撮影。 
 完成は11月下旬の予定。現在は完成次第発送の予約受付中。

秋期特別公開 ―「聖宝理源大師1100年御遠忌」記念―『醍醐寺の名宝』  醍醐寺霊宝館

醍醐寺霊宝館にて12月6日まで開催中の秋期特別公開 ―「聖宝理源大師1100年御遠忌」記念―『醍醐寺の名宝』に行って来ました。
daigo

作品リストと一部作品画像は醍醐寺HPでご覧になれます→こちら

以前から醍醐寺所蔵の名品たちには関心があり、古書店で2001年4月に東博で開催された「醍醐寺展」図録を展覧会を見てもいないのに、買い求めた程。
伏見区にある醍醐寺は後回しになり今日に至りましたが、行ってみたらびっくり仰天。
もっと早く来るべきだった・・・。
秋の行楽シーズンで11月の3連休に京都方面へ行かれる方があれば、ぜひともお薦めしたい内容です。特に仏画、仏像に関心がおありの方は必見でしょう。

今回はたまたま月曜に休暇を取ることになり、月曜と言えば軒並み美術館・博物館は休館日。
しかし、そんな窮地の私に、月曜でも来る人を拒まないのがお寺さん。
「弐代目・青い日記帳」のTakさんからも事前情報を得お墨付きをいただいたので、醍醐寺へと向かいました。
前泊が大阪だったので京阪電車で六地蔵に行き、そこからバスで門前まで。
六地蔵はからのバスは1時間に4本程度です。

さて、霊宝館ですが、2001年秋にスペースを拡大改装を終えオープン。
前述の展覧会図録によれば、この霊宝館での展示を行うため外部での公開を行わない方針と当時の醍醐寺座主のお言葉が綴られていました。
まだ新しく、入口を入って左右に伸びる展示室が2つと、更にその奥に広がる広大な展示室の合計3つの展示空間があります。

まず入って右側の展示室に、室町時代のやまと絵風「山水図屏風」があり、俵屋宗達の屏風が2つ松村景文の屏風絵と大型作品がずらりと並ぶ。
それだけでも既に豪華な空間となっているため、琳派好きにもお薦めしたい。

しかし、個人的な趣味から申し上げれば、これらの室町~江戸絵画作品より、むしろこれぞ醍醐寺!と感動したのは奥の体育館かと思うような広大な展示空間にあった仏像仏画の仏教美術の品々。

マイベストはとびきりの仏画3点。もう仏画好きには堪らない世界。垂涎ものでぼ~っと立ち尽くした。

・訶梨帝母図 (国宝) 平安時代

・文殊渡海図 (国宝) 鎌倉時代
monjyu


・地蔵菩薩像(重文) 鎌倉時代

他にも弥勒曼荼羅図、仁王経曼荼羅図(いずれも重文・鎌倉時代)などなど、状態が良くて色も残る仏画の数々。
一番最初にあげた≪訶梨帝母図≫は先の展覧会でも出陳されていない。
良かった~この3点見られて幸せになってしまった。
しかし、感動はまだまだ続く。

仏像で忘れられないのは以下2つ。この計7体に絞るのに相当悩んだ。
・五大明王像 (不動明王像、降三世明王像、軍荼利明王像、大威徳明王像、金剛夜叉明王像) 平安時代
myouou

・大日如来像 平安時代 

帝釈天騎象像、如意輪観音坐像、千手観音立像など平安時代の仏像秀作が目白押し。

最後にこの霊宝館秋の展示で、見どころとして忘れてならないのは、左を正面にし薬師如来像と脇侍の日光・月光菩薩像、帝釈天像が密教様式で祀られ展示されていること。
したがって、参拝客(観客とは言えない雰囲気だった)は、自身の立つ位置からこれらの諸尊像からちょっと距離があり、
厳かな雰囲気を醸し出していた。

それにしても恐るべし醍醐寺の宝物。これがごく一部というから凄い。
当分春と秋にこの霊宝館に通えば、おおよその名宝を目にすることはできるだろう。
こんなに広くて凄いなら、もっと早く来るべきだったと今更ながら後悔した。

*12月6日まで開催中。

「皇室の名宝 2期 正倉院宝物と書・絵巻の名品」 東京国立博物館 平成館

meihou

東京国立博物館 平成館で開催中の「皇室の名宝 2期 正倉院宝物と書・絵巻の名品」に行って来ました。
作品画像はこちらでご覧ください。

初日の開館前には3000人もの人が行列をなしたと聞き、びびりまくっていましたが、本日金曜夜間は入場待ちの列もなくスムースに入館できました。

2期は会期が11月12日~11月29日(日)と会期中無休(当初誤った情報を記載していたため訂正)とはいえ非常に短い。
最初、観覧順序通り第1会場に入りましたが、既に人波で作品はまるで見えない。
「これは駄目だ。」と踵を返して、出口から見て行く計画に変更。
前日読んだサライ最新号の山下裕二先生と緒川たまきさんとの対談で、山下先生が逆から回ると良いとおっしゃっていたのを思い出した。

これが大成功。

私がたどった鑑賞順は次の通り。

出口から入ると第3章「中世から近世の宮廷美 宸翰」の狩野派作品から展示は始まる。
冒頭は、狩野永岳≪散手・貴徳図衝立≫。永岳は≪源氏物語図屏風≫と2点出ているが、いずれも思わずうなりたくなる出来栄え。
京都狩野の力量を見せつける。
更に同じく京狩野の狩野永納≪寛永行幸図≫で画技の高さを証明してくれた。

狩野派と言えばこの人、狩野探幽もやっと出番で大活躍。
≪唐子遊図屏風≫≪井手玉川・大井川図屏風≫≪源氏物語図屏風≫で本気の探幽を見た。
探幽作品は数多く残っていて、よく「これが本当に探幽?」と首をかしげたくなるような・・・な作品も割とあるが、今回は本気オーラが全作品から漂っていた。
やっぱり、本気出すととにかく上手い。探幽が狩野派の代表格と言われるのも無理はなかろう。

そんな探幽の弟子、山本素軒≪琴棋書画図屏風≫にも圧倒された。この作品は冒頭の衝立の次に見た時、いきなり立派な6曲1双屏風で、リストに立て続けにチェックを入れた。以後、どんどんチェック作品ばかりになって、チェックするのをやめてしまった。
どれも素晴らしいから、全部☆になってしまう。

作家名不明の≪御即位行幸図屏風≫は屏風部門のNO.1。
探幽の唐子や素軒の琴棋も素晴らしいが、一番じっくり眺めて、ず~っと張り付いたのはこの屏風。
洛中洛外図とはいかないが、登場人物が非常に多く、またその様子も様々で、見たままを描いたのだろうか?脇役扱の人々の様子が端折られることなく、細かく楽しく描写されている。

狩野常信の≪糸桜図屏風≫も忘れられない。
「簾屏風」といって、屏風に実際に簾を取りつけたもの。簾の上からも、桜の作品を描いていた。
この屏風がインテリアだとしたら、相当立派な装飾品となる。

一連の狩野派作品群に感動した後、俵屋宗達≪扇面散屏風≫が妙に下手に見えた。
中に風神雷神と同じキャラがいたのは楽しい。琳派らしく、デザイン性に優れた屏風だった。

次のコーナーで第4章「皇室に伝わる名刀」と題し、太刀、短刀の名工作品が10点披露されていた。
刀は全く分からないけれど、ぬらりと光る刀身を見て艶めかしさを感じてしまった。いやオーラというべきか。
他に香箱セットなど雅の香漂う作品が続く。

この後、再び第3章に戻り、天皇の書作品(宸翰)が展示されているが、ここもサラリと流した。

第2会場の目玉は出口から回ると最後になる。
第2章「古筆と絵巻の競演」。NHK日曜美術館で特集されたばかりの≪春日権現験記絵≫巻1・5・19の合計3巻がぜ~んぶ惜しげもなく披露されていた。
しかし、私が行った6時過ぎ時点では、この作品に人だかりが三重になっていたため、一旦退散。

それでも≪蒙古襲来絵詞≫(下)だけは、頑張って並んで最前列で見た。
mouko

蒙古はそれほど横幅が長くないため、どの時間帯も人が並んでいる。
これがあの日本史教科書に必ずと言って良いほど出てくる元寇を紹介する作例。
ず~っと写真でしか見たことが無い作品は、ほとんど時代を感じさせず、マンガかアニメのような感じ。
それにしても、今思えば日本史の教科書の方が余程美術の教科書になっているのではなかろうか。
図画工作、美術の教科書で覚えている作品は、小1最初にもらった教科書のルドンの花束だけ。

春日権現に後ろ髪ひかれながら、ようやく第1会場へ。
第1会場も後ろから見て行こうと思ったが、入った瞬間またしても混雑(ここは小野道風や古筆切れなどの書の名品を展示)していたので、ここも後回しにして、正倉院宝物を先に見ることにした。
入口に向かいつつも正倉院宝物は気になるので、空いている所からどんどん見て行く。
この方法を取ると、作品を見落とす危険性があるため、リストに見た作品はチェックして行った。

どれもこれも甲乙つけがたい素晴らしさであり珍品ぶりだった。
≪木画箱≫(法隆寺献納宝物の文様は明らかに西方の意匠が見られて、こんなものがこの時代にと今更ながら驚き、≪螺鈿紫檀阮咸≫の装飾は、先日拝見した奈良正倉院展の阮咸より小型だが、裏の鸚鵡デザインはお見事。華麗さ100点満点。

今年は奈良と東京で正倉院の名宝をこんなに沢山見ることができて本当に幸せ~。
≪黄金琉璃鈿背十二陵鏡≫の碧と黄色と金色の鏡に残欠に赤い靴に・・・あぁもう書ききれない。

ここでやっと入口にたどり着いたがこの時すでに1時間以上経過しており、入館した時大勢いた観客もやっと減って、最前列でゆっくり見られる状態になっていた。
そこで、私の目をとらえたのは≪人物埴輪 女子頭部≫。
この埴輪の愛らしさといったらない。空洞になっている目は、どこか怖さもある。

≪聖徳太子像≫(法隆寺宝物)奈良時代も忘れ難い。
奈良時代の絵画で記憶しているものと言えば、絵因果経くらい。
絵因果経はあくまで経文だが、この聖徳太子像は正真正銘絵画。仏画の一種と言われたら、それまでだが、奈良時代の仏画もめったと、いや見たことがないかもしれない。
それにしても、奈良時代とは思えぬ状態の良さ。

ここから正倉院宝物を間に挟んで書の名品が続く。
書に関心のある私にとって、本当に凄い作品ばかりだった。ガラスケースに吸い寄せられ離れられず。

王義之≪喪乱帖≫唐時代
王義之の書真筆(11/17修正。王義之の真蹟は絶無と言われている。)を敷き写しした摸本。う~ん、これ見るだけでも再訪しても良い。

書作品で今回一番気に入ったのは小野道風≪玉泉帖≫。
真行草と書き分けた玉泉帖は、濃淡、太さ細さ、繊細さ力強さ、あらゆる要素を持ち合わせている名品中の名品。
展覧会を見終わった時、頭にこの道風の書と春日権現がぐるぐる回っていた。

≪安宅切本和漢朗詠集≫伝源俊頼の料紙の美しさといったらもう・・・。
目に焼きついた。通常だと、全画面展示されることはめったにないが、今回は春日権現に続きど~んと全部見られるようになっていたのがとても嬉しい。
キラキラ切り紙を貼ってみたり、雲母を取り入れたり、料紙部門ではNO1。

他に伝橘逸勢の書も好みだった。書はもう一度見に行きたい。

ここで閉館まで30分を切った。
最後に残した春日権現と≪絵師草紙≫に戻るため、第2会場へ向かう。
ついに三重になっていた人の垣根が消え、一列になっていた。

ところで、第2会場入口には前述の小野道風の肖像画があるが、パロディちっくでとても書家の様子とは思えない。先の名筆とこの人物像のアンマッチさが本展最大の驚き。

さて春日権現との対面。
まず、絹本絵巻であることが気になる。鎌倉時代の絹本絵巻って他に何があるだろう。。。ほとんどが紙本ではなかったか。
修復のために科学調査した所、絹本でも大変に上質な生地を使用していることが判明。

絵具も最上のものを使用しているに違いない。
さもなくば、あれほどまでの発色を現在にまで伝えられないだろう。無論、皇室所蔵で展示回数が少なかったことや修理を完了したばかりということも要因だろう。

一場面一場面、ひとつたりともおろそかにできない。
脇役も背景でさえも丁寧で美しい描写。鎌倉時代の絵巻で作者も判明して、一巻たりとも欠本がない貴重さにひれ伏したいくらいだ。
明日の日曜美術館再放送で我が目で見たものを復習しよう。


第2期は正倉院宝物、絵巻物、書など混雑を呼びやすい作品が多いため、鑑賞時間と鑑賞順序に要注意。私も、もし正当に第1会場から回っていたら、最後まで時間内にたどりつけなかったかも。
第1期は過去に見たことのある作品も結構あったけれど、今回は展示物のほとんどが初見だったため、時間が必要だったこともある。

1階に法隆寺宝物を現在の匠たちが模造した作品が展示されていますので、こちらもお見逃しなく。

*11月29日(日)まで。お早めに。

最近行ったギャラリー鑑賞記録

自分のブログのカテゴリーに「ギャラリー」と「鑑賞記録」両方あって、今回のタイトルはどちらに入れるべきか悩んだ。

「カテゴリーがいい加減だと訳が分からなくなる。」と今更悔やんでも遅い。

見たものをどんどん書かないと、たまって気が付けばお蔵入りとなりかねないので、総ざらえです。
思いつくまま順不同。

・高橋治希展-磁器の蔓草- INAXギャラリー2 11/26(木)まで 日・祝休
takahashi
takahashi2

今回ご紹介する中では一推し。
INAXギャラリーは毎回質の高い展示をしているので覗くのを楽しみにしているギャラリーのひとつ。
どなたの展示なのか知らなかったが、通りがかったので入ったら大当たり。
部屋一面に白い蔓草が四方にのびている。
よくよく見ると蔓草の先端には沢山の花や蕾が付いている。
そして、それらの一つ一つに細かい絵付けがされていた。色はピンクだったりブルーだったり。
真っ白な世界に絵付けの色が浮かんで、相乗効果を出している。
蔓草自体は、部屋に円狐を描くような形で展開しているが、どの方向から見ても絵になる。

入口にあったチラシによれば、この作品は今年の越後妻有トリエンナーレで展示されていたものと同種の作品らしい。
私は2度もトリエンナーレに行きながら、この作品は見ていない。
見てはいないが、展示されていたことは知っていたし、チェックもしていたが回り切れなかったのだ。
今回運良く、INAXギャラリーで目にすることができ本当に良かった。
高橋氏は東京藝大絵画科卒業後、同大大学院の壁画専攻を修了。
磁器に取り組み始めたのは2004年頃らしい。
1971年生まれの方なので、試行錯誤の末、行きついたのが磁器での立体オブジェだったのだろう。
須田悦弘が木彫で見事な植物を作り出すが、高橋治希は磁器で植物を作り出す。

今後も要注目作家さんであることは間違いない。


・出和絵理展 INAXガレリアセラミカ 12/1(火)まで 日・祝休

くしくも今回のINAXギャラリーは七宝展(これは別途)を除き、磁器アート。
出和作品は紙のような質感を磁器で表現したオブジェ。真っ白で薄くて繊細で。
磁器で紙を作る作家さん。
よくぞこれだけ薄く作れるものだと感心した。
1枚1枚、1片1片を接着剤で接着し、全体の造形を作り出しているそうだ。

小さな作品が多いので、高橋作品を見た後だったためインパクトが薄れてしまった。


・「大きいものと小さいもの チャプター2」 ジャン=ミッシェル・アルベロラ メゾンエルメス8階 11/29(日)まで

アルベロラは、1953年 アルジェリア生まれ フランス、パリ在住
作品は全部で8点あったが、メインは壁画だと感じた。
大画面いっぱいにポップな色調で、イラスト風のモチーフが描かれる。文字も含めて先入観かもしれないがパリっぽい。
本人が来日して色を塗ったのかを係の女性にお伺いしたが、原画を拡大して下絵を作り、色などの作業を行ったのは職人さんなんだとか。
ガラスケースの中にもデッサンというかスケッチ作品やキッチュな作品が沢山あった。

≪パリー東京≫は東京とパリの地下鉄の切符を使って作ったオブジェ。何十年振りかにパリの地下鉄切符を見た。なつかし~。
展示自体はちょっと迫力不足。ネオンの作品もピンと来なかった。


・柴田敏雄作品展 「a View」 BLD GALLERY 11/29(日)まで 会期中無休
・柴田敏雄作品展 「For Grey」 ZEIT-FOTO SALON 11/25(水)まで 日月祝休

ほぼ同時開催の柴田敏雄の写真展。
柴田敏雄と言えば、今年年初の東京都写真美術館での個展の記憶が鮮烈であった。
今回は新作展ということで良いのだろうか。
本展開催に合わせ、展覧会名を題した作品集も2冊同時に刊行する。

BLD GALLERYは銀座の2丁目にあって、今回初めて行った。相当広いスペースを持っているため、現在に至るまでに撮りためた未発表のモノクロ写真だけを集めたこちらの展示は作品数が結構多い。

ZEIT-FOTO SALONは、既に何度か足を運んでいて、それほど大きなスペースはないがこちらではカラー作品だけを集めている。
どちらも魅力的だが、最近始められたカラー作品ではやはり色の使い方が絶妙。赤っぽい壁面を撮った作品はただの壁面なのに、なぜあんなにも美しく訴えかけられるのだろう。
無論、構図も素晴らしい。
ダムを上から俯瞰して撮影した作品はダイナミックの一語に尽きる。
自分も飛沫となってダムの底に沈んでしまいそう。

やはり、柴田作品は素敵で両方行って正解だった。

「Blank Space」展 ポーラ ミュージアム アネックス

銀座に先月オープンしたポーラ ミュージアム アネックスの第2回企画展「Blank Space」展に行って来ました。
pola


初日が11月7日と知らず、たまたま寄ってみたら「Blank Space」展の初日。
前回とあまりにも様変わりした雰囲気に最初は間違えて今日は貸し切りで講演会か何かあるのかと思いました。

まず、入口から展示作品は何も見えない。
受付の女性がにこやかにお出迎えして下さるのである。
「あの今日は何かイベントでもあるのでしょうか?誰でも入れますか?」と私。
「もちろんです。どうぞ。いらっしゃいませ!」と受付女性+男性。

そのまま奥に誘われ、コーナーを回ると細い通路に椅子のような台が並んでいる。
「ここで、靴を脱いでスリッパに履き替えてお待ちくださいね。」
靴を脱ぐ???

全く何だか分からぬまま言われた通り靴を脱いだが、数分待っても呼ばれないので奥を見ると、また椅子のような台がある。
ここでスリッパのまま待っていると何やら音が聞こえてくる。
どうやらこの隣の部屋で何かが行われている様子。

私一人で待っていると、中に入っておられた先客2名の男性が出て来たのと入れ替わりに私が中に案内された。

クッション性のある(素材名は不明)椅子、横は仕切られ一度に5名までしか鑑賞できない。
これから光のインスタレーションが始まるらしい。
待っている間に壁にあった解説には、今回のインスタレーションを手がけたライティング・アーキテクト豊久将三の次のようなお言葉が。
なお、豊久将三氏はハラミュージアムアーク「觀海庵」や根津美術館、そしてポーラ美術館などの美術館・博物館の光の計画を制作や今回13万個の発光ダイオードを使ってポーラ銀座ビルのファサード(建物正面)の設計を担当した照明家。

ヒトの眼の網膜には、2種類の視細胞がほぼ一面に並んでいる。このうち桿体(かんたい)細胞は、感度は高いが色の判別はできない。一方の錐体(すいたい)細胞は、感度は低いが色の判別ができる。
錐体細胞にはさらに、青、赤、緑、それぞれの色の光を受容する3種類の細胞がある。それぞれは、"青色光を受容する錐体細胞"・"赤色光を受容する錐体細胞"・"緑色光を受容する錐体細胞"である。
光の色に関して考えると、白色光は様々な色(青・赤・緑)の光が混ざったものであるため、"白"を見るためには3種類の錐体細胞の全てが反応しなければならない。
ところが、この錐体細胞からの指令が脳に伝わる段階で、錯覚が起こる事がある。例えば、"赤"をしばらく見つめていると、赤色光を受容する錐体細胞だけが反応し続けて疲労してしまうため、赤を見続けた後すぐに"白"を見ると、他の2つの錐体細胞だけが反応して、"赤"の補色の"青緑"に見えることとなる。


難しいことはよく分からないのでまず体験。
どこからか解説音声が。これが全編英語。
すぐに、正面のスクリーンに光の色が溢れ始める。
体験時間は5分。
しかし、私は終わりが分からず、そのままぼ~っとスクリーンを見つめていた。
もっとずっと見ていたい。
永遠に続く絵インスタレーションのような錯覚。

ちょっと大好きなジェームス・タレルの作品を思い出した。
タレルは光を使う世界的アーティスト。

本展の主旨である「人が光を認識するとはどういうことか?」人と脳の関係性にまで、残念だが1度の鑑賞ではたどりつけなかったが、体験としては面白い。

狐につままれたような感じと足取りで会場を後にした。

11月21日(土)14時~ 定員20名でギャラリートークが開催されます。
参加費無料 要予約 電話にて申込受付:03-3563-5501(受付時間:月~金10:00~17:00)

*11月29日まで開催中。会期中無休
11:00~20:00 入場無料です。

「パリに咲いた古伊万里の華」 東京都庭園美術館

koimari

東京都庭園美術館で開催中の日本磁器ヨーロッパ輸出350周年記念「パリに咲いた古伊万里の華」に行って来ました。

これほどまでに、庭園美術館のアール・デコ空間と展示作品がマッチしたのは私が行った中では最高。
よって、これまで庭園美術館で拝見した展覧会の中ではマイベスト!
余程図録を購入しようか相当迷い、断腸の思いで見送りましたが、記事を書くにあたり、チラシに掲載されている作品を見ていて「やっぱりいいわぁ~」と再び図録が頭によぎってしまうほど。

本展は江戸時代に鎖国下にありつつも世界に輸出されていた磁器の中から、特に渡欧した古伊万里を収集した碓井コレクションの中から選りすぐりの名品を日本初公開。
碓井コレクションは、碓井文夫氏により収集された古伊万里コレクションで、17世紀のヨーロッパ王侯貴族の間で流行した作品をはじめ、輸出初期から明治後半にかけての磁器コレクションは約1000点に及び、その質の高さと希少性で定評があります。

中国磁器の模倣に始まった有田磁器は、日本独自の美意識の技術の発展により、本場中国を凌駕するまでに成熟していきます。ヨーロッパ貴族の邸宅や宮殿を飾った美しい古伊万里の数々を展観します。
なお、今年はオランダ東インド会社がヨーロッパに向けて公式に磁器の輸出を開始して350年目を記念しての開催となります。
*展示作品の一部画像は美術館HPでご覧になれます。

展覧会は、以下の通り制作年代順に構成されているが、会場の都合か構成と展示順序がかみ合っていないのは仕方ないか。
第1章 欧州輸出の始まりと活況(1660~70年代)
第2章 好評を博した日本磁器の優美(廷宝様式、1670~90年代)
第3章 宮殿を飾る絢爛豪華な大作(元禄様式、1690~1730年代)
第4章 欧州輸出の衰退(享保様式、1730~50年代)

しかし、制作年代など全く目に入らず、ただただ美しい古伊万里に集中しキャプションは記憶の片隅にも残らず。
庭園美術館はいつも作品リストが用意されていないのが残念。何とか作成していただけないものだろうか?

まず、最初に仰天したのが≪染付漆装飾花束菊文蓋付大壺≫。
高さ90センチを超える大きくかつ展示作品中一番の豪華さだった。驚いた理由は磁器に漆装飾という斬新さ。模様は蒔絵を彷彿させる細かさ。
「染付」と言えば今年東京国立博物館で開催された「染付」展の青と白の世界がまず浮かぶが、この作品では、青と白以上に金色の部分が目立っている。胴体部のメイン色は黒だが、白地に青の文様が浮かび上がる。この白を目立たせんがために、黒の背景色にしたのか。
頂には繊細な飾と文様が施された蓋(ヨーロッパ向けの古伊万里には蓋つきのものが非常に多い)が付いていて、イヤリングのようなぶら下がり装飾がスズランの花のように可憐で愛らしい。

こんな豪華な金色使いのものばかりではなく、正統派の青と白だけで勝負した≪染付牡丹文蓋付大壺・大瓶≫、これが5点セットになっていて、現在残っている作品では貴重なものだという。
5点あっても皆文様は微妙に異なっているから芸は細かい。

染付にヨーロッパ風の金・ブロンズ?装飾がなされているものは、大昔に行ったベルサイユ宮殿で見たような。。。
さほど違和感がないのは染付のシンプルな青と白のおかげかもしれない。

染付だけでなく色絵の名品も多数出展されている。染付・色絵に共通あうえうのh文様の派手さ。
逆にあえてシンプルにして粋な雰囲気を出している作品もあるから心憎い。

例えば≪色絵鯉滝登り牡丹獅子文蓋付角瓶≫には4面のうち1面に濃いが滝登りしている様子が絵付けされ、全体に下部には青海波文が波をかたどるように施され、デザインの素晴らしさにも感嘆する。同型のものが、マリア・テレジアコレクションにあるという。

もう1点。忘れがたいいのは≪色絵岩梅鶯文花生≫。
どれだけ、この小さな花生の前にいたことか。乳白色の白の美しさはいうまでもなく、掛けて使う花生は珍しく穴のあけ方も気が利いている上に、色・デザインともシンプルな中にも洗練された美を感じた。

外国の貴族、王族にとってイメージする日本の象徴富士山や桜をあしらった豪華な≪色絵富士桜樹文大皿≫も皿全体に桜の花があり、枝はうねり、富士山が上になるように飾ると一幅の絵のよう。

基本的にヨーロッパからの注文によって生産されたものはゴージャスなのだが、中にはあれ?と思うようなあっさりした作品≪染付色絵盆栽朝顔文皿≫は折型と色紙を組み合わせ、更に文様に盆栽を描くという渋さ。
これは日本向けに制作されたようだが、ニーズに生産が追い付かず、ついには日本向けのものも輸出されていたと推測されている。

これだけの名品を集めた碓井氏は現在パリに在住とのことだが、プロフィールなどはネットで調べてみたが不明。

会場はなかなかの混雑ぶり。
会期末に近づけば更に混雑するのではないだろうか?
以前あったエカテリーナ2世の四大ディナーセットより、個人的には絶対こちらの方がお薦め。
全作品165点に圧倒されっぱなしの楽しい時間だった。
いつになく、展覧会オリジナルグッズや書籍などが売り場を別に設けて販売されています。

*12月23日(水・祝)まで開催中。
なお、本展はこの後以下に巡回します。
・九州国立博物館 2010年4月6日(火)-6月13日(日)
・MOA美術館 2010年7月17日(土)-10月3日(日)、
・兵庫陶芸美術館 2010年10月16日(土)-2011年1月10日(月・祝) 

土屋仁応 「夢をたべる獏が夢みる夢」 MEGUMI OGITA GALLERY

tsuchiya

銀座のMEGUMI OGITA GALLERYで本日(11/10)オープニングを迎えた土屋仁応 「夢をたべる獏が夢みる夢」に行って来ました。
展示作品の一部画像はこちらで見ることができます。

土屋さんの彫刻を知ったのは今年3月のこと。
日本橋高島屋美術画廊X「シリーズ彫刻/新時代VOL.3」での個展だった。
生まれたての胎児のような動物や爬虫類、そして蓮の花などの木彫作品の数々に魅せられた。
その時の感想記事⇒http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-550.html

その後アートフェア大阪のMEGUMI OGITA GALLERYで新作が発表されると聞いていたが、残念ながら都合が合わず、ユニコーンの方には出会えなかった。

満を持して、待望の個展。
しかし、創作意欲旺盛でいらっしゃる。半年タームで個展を開催されるのだから凄い。
今回の個展案内ハガキの裏面にある作品に目は釘づけになった。
そこにいるのは、最初イノシシ?かと思ったが、個展タイトルに獏とあるのでイノシシではなく獏なのだと気付いた。

しかし、次に獏って実際にいたっけかな?と思い至り、調べてみると空想上の動物、ただし古代中国に本当にいた可能性はあるが絶滅したとか、人の悪夢を食べてくれるとか様々な伝説付きの生きものだった。
すると、この獏は土屋さんの思い描いた「獏」像ということになろう。

更によくよく見ると、獏の背中に何やら小さな小さな人らしきものがうつ伏せになっている。
土屋作品についに人体彫刻が登場か!?
これは、この目で確かめねば~と、オープニング初日だけは19時半までやっているので、これなら何とか仕事帰りでも間に合いそうと早速ギャラリーへ急ぐ。

土屋さんご本人もいらっしゃって、作品についてのお話も伺えたのでインタビュー形式でご紹介します(記憶なので誤りがあったらごめんなさい)。

私:今回は人魚ならぬ人間がついに登場しましたね。

土屋さん:動物だけでなく、色んなものを作って見ようと思って、試行錯誤中です。

私:獏の上に小さな人が寝ていますが、今までにない試みですよね。作品から物語が浮かんできます。
土屋さん:獏をまず作ろうと思って作ったのですが、構想過程で背中に人が乗っかってたら面白いだろうなと思って、小さな人を乗せてみました。

私:土屋さんの彫刻と言えば、胎児のような白い地色が特徴なのですが、色についてのこだわりは?

土屋さん:白っぽい色は、特に動物などでは確かに多く使用していますが、気を付けているのは血が通っているような暖色をどこかに入れるか、または今回の人魚のように寒色どちらかを効果的に使いたいと考えています。


(確かに、例の「獏」≪夢をたべる獏が夢みる夢≫の鼻や耳、脚や尻尾は淡いピンク色が他の場所に比べるとちょっとだけトーンが強くなっています。)

私:人魚の瞳が涙目のようになっているのですが、これは意識されてのことですか?
土屋さん:水晶を使うと、光の加減でそんな風に見えるのだと思います。本当に意識して涙目にしようとするなら接着剤を使えばもっと涙っぽくなるのですが、今回はそこまで考えていなかったです。

私:人間の木彫≪未来人≫は、やはり人間ということで良いのでしょうか?下半身は人魚までは行かないのですが、脚と分かりづらいのですが。
土屋さん:この作品には裸ではなく何か着用させたいなと。それで浮かんだのが天女の羽衣のイメージ。下半身だけ羽衣で覆われている感じを出してみたのです。

私:≪青い人魚≫≪未来人≫どちらも中性的ですね。
土屋さん:人魚は本当なら胸を作るべきなんでしょうが、そうしたくなかった。いらないもののような気がして。

土屋さんの人物彫刻の顔は博多人形を思い出させる。
人形にとって顔は命と言われるが、土屋さんの人物(人魚も含めて)の魅力はその瞳と繊細な表情ではないだろうか。
もちろん、≪青い人魚≫で見せている鱗の彫の細かさ、指先、≪猫≫(生まれたての子猫)の小さな肉球など彫の技術も感動的。


アートフェア大阪で出展され人気だった≪一角”Unicorn”≫の別ヴァージョンも出展されているので、お楽しみに。大きな角がくるんとカーブしている≪羊≫も夢世界の動物でしょう。

本展では、土屋さんの夢世界を彫刻作品によって堪能できます。


なお、来年1月にMEGUMI OGITA GALLERYは、スペースを拡大して銀座2丁目に移転します。
新住所:中央区銀座2-16-2 銀座大塚ビルB1
本展が現在のギャラリーでの最後の展覧会となります。占いの看板があるビルです。見落としやすいので、初めての方はご注意を!

*12月5日(土)まで開催中(日・月・祝休廊)。

「河口龍夫展 言葉・時間・生命」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館で開催中の「河口龍夫展 言葉・時間・生命」に行って来ました。
kawaguchi

今回は、特別にブロガー内覧会に参加させていただき担当学芸員の大谷氏の解説をお聞きしながら会場を回ることができました。
嬉しいことに、偶然河口龍夫先生も会場に来られていたため、僅かな時間でしたが、ご挨拶のお言葉と参加者からの質問に答えていただき大感激~。

本展は、1960年代から現在に至る河口龍夫の制作のあゆみを「言葉」「時間」「生命」というキーワードにより3つの章で構成し、それぞれのテーマにおいて過去の主要作品と新作を合わせて展示しています。

作品については、簡単に触れるに留め、あとはこのブログを読まれた皆様ご自身が、是非とも体験、体感されることを切に願っています。

本展は「言葉」「時間」「生命」をキーワードにしていますが、全体を通してみると、河口氏が作り上げた世界で五感を研ぎ澄ませ、生と死、物質と言葉、言葉と概念、時間軸を考え体験する旅と言えるのではないでしょうか。
河口氏は見えないものを見せ、見えるものを見せなくする作家さんです。見えないものを見せる=見えないものの存在を観客に提示する。その過程が非常に面白く美しい。
その面白さを感じたのが、2007年の兵庫県美、名古屋市美で同時開催された「河口龍夫展 見えるものと見えないもの」(以下感想)でした。
名古屋市美術館 「河口龍夫展 見えるものと見えないもの」過去ログ
兵庫県立美術館「河口龍夫展 見えるものと見えないもの」過去ログ


今回もその姿勢は一貫していました。

参加者は、旅人となり見えない世界と見える世界を体験します。
*写真は許可を得て撮影したものです。拙い写真ですがご容赦ください。

chapter001 ものと言葉

冒頭に登場するのは闇を閉じ込めた≪DARKBOX≫1975年。
darkbox

ボルトで閉じられた小判が入っていそうな鉄の箱。この箱を閉じたのは闇の中。闇が箱に封じ込められている。闇を想像できませんか?

もう1点同様の作品が≪光(電球)≫1975年
電球

鉄のケースで覆われた電球はやはりボルトでしっかり封じ込められている。
学芸員の方にお聞きしたところ、電球の光は見えないけれど間違いなく鉄のケースの中で光っているとのこと。電球が切れたら、ちゃんとケースを外し電球交換も可能。

考えてみれば≪DARKBOX≫と≪光≫は同じ試み。封じ込められているのは光と闇。閉じてしまえば両者は同じ関係になっている。
河口氏の作品を語る上で『関係』『無関係』のキーワードを忘れてはならない。
常に何かに対して関係を作りだすことで存在を見出すと言って良いのか。
他に対しての自己。

冒頭では光と闇の関係を旅人に喚起する。

そして、≪関係-闇の中の彩色ドローイング≫2009年。
これと同様の試みは、2007年の兵庫県立美術館で開催された「見えるものと見えないもの」展でも行われていたが、私が行った時は大勢並んでいて参加できず。
今回初めて「暗闇ドローイング」(真っ暗な部屋で一人画用紙に向かい描く)を体験した。

真っ暗になってしまうと、視覚以外の感覚、例えば聴覚や触覚が過度に働き始める。
ドローイングしていると、紙の大きさを手で確かめたり、色鉛筆の場所を手で確かめたり、感触は変わらないのに、自分が描いた線を指でたどったりしてしまう。
色鉛筆は闇の中でその色を感知することはできない。色が見えない。見えるのはただ漆黒の闇。
でも、私たちは暗闇の中で実際に色を使って絵を描き、闇から外に出ればちゃんと使い分けできている。何て不思議な体験だろう!


次の部屋は名古屋市美術館で2007年開催の「見えるものと見えないもの」展と同じく、鉛板に文字を切り抜き、切り抜いた文字の部分はアクリル板を貼り、上からスポット照明で照らす。
≪関係-光になった言葉≫2007年。
yami

「闇」という文字が光により照らし出されている状態は、言葉と意味のズレがあり面白い。
結局、言葉というのは記号と同じ役目なのか。

広辞苑を使用し物体と言葉(辞書の意味が書いてある部分)を考えさせる≪意味の桎梏≫(いみのしっこく)。*桎梏は手かせ足かせの意。
全ての言葉が物体と結びついている訳ではないってことだろうか。
この広辞苑の切り抜きは展示会場だけでなく東近美や外にもあるそう。見つけた方はラッキーかも。

『言葉』によるアプローチの最後に挙げておきたいのは、写真作品≪海≫1973年(2008年プリント)。
umi

一見何ということもない海の写真だが、実は海水を河口氏の奥さまがバケツで汲んでそれをまた海に向かって撒いた瞬間を写した作品。
バケツで汲んだ海水は海なのか?海に着水した瞬間に海に戻るのか?
言葉と物体の関係の難しさを考えさせられる。

chapter002 時間

目立つのは黒板で作られた地球儀≪黒板の立体地球儀≫2009年他2点(下画像)や地図≪黒板の地図・日本≫2009年他1点。
地球儀

新潟の妻有「大地の芸術祭」で松代の農舞台にあった作品≪関係-黒板の教室≫を思い出した。
河口氏に黒板へのこだわりについてお伺いしたところ、「毎日のように路上に落書きをしていた幼き河口氏に、ご両親が雨天でも落書きできるようにと黒板を買ってもらった。プレゼントを機に、チョークで思う存分落書きし遊んでいた。」思い出が黒板には詰まっている。

松代の作品は部屋中落書きできるようにとの思いで作られたのだとか。
確かに今夏、農舞台に行った時しっかり落書きしてきた。懐かしくて楽しくてワクワクした。

今回は、国境線を自由に描ける地球儀や地図を制作されたかったとのこと。
歴史によって何度も塗り替えられてきた国境を自由に決められたら、楽しいを通り越してちょっと怖い気もするが、旅人は頭の中で自由に地球儀に国境線を思い描こう。
目に見えない国境線を目に見える形にする。実際に黒板地球儀に線を描きたかったのに、残念。
なお、この部屋におかれている小さな黒板に書かれている座標は、東近美の場所を表示しているのでお見逃しなく。

≪地下時間≫ 2005-2007年
横方向に引かれた線は地層。下に行くほど昔のもの。この地層の中で、ある種の生物の化石が見つかる年代のスパンを縦の線で示している。
何枚も様々な生物のパターンで制作されているが、幾何学模様が実に美しく絵画のようだった。
時間という見えないものを縦と横の線の色の組み合わせにより絵画化し見せてくれる手法はさすが。

化石はフロッタージュ技法(こすり出し)作品でも登場する。
アーティストの杉本博司氏も化石を愛しコレクションされているが、アーティストが化石に惹かれる理由は、果てしない時の長さを目の前で感じることができるからなのか。

chapter003 生命

最終章のテーマは「生命」。河口氏がよく使用する素材に種子、特に「蓮の種」と「蜜蝋」「鉛」の3つがある。ここでは、この3つを様々に組み合わせた作品が展示されるが、それぞれ意味を持っている。
・種=生命エネルギーの象徴
・蜜蝋=鮮やかな黄色をしていることが多く、再生エネルギーを秘めた包皮物
・鉛=危険からの防御
以上を念頭に旅を続けよう。

印象深かったのは、≪へその緒≫1991年、≪関係-蓮の時・3000年の夢≫1994年、≪睡眠からの発芽≫2009年、そして最後の最後に登場する≪木馬から天馬へ≫≪時の航海≫2009年、≪蜂がパイロットの偵察機≫2009年。

≪へその緒≫は河口氏ご本人のものと2人のお子さんのもの合計3点のドローイング。
へその緒

なぜか、河口氏のものだけ背景色が黄色。
へその緒は生命の象徴でもあるが、親子との関係を示す時間軸でもある。

蓮の種は河口氏の作品でもっとも多く使用される材料、モチーフだが、今回ベッドを使用した2点のオブジェが素晴らしかった。
≪睡眠からの発芽≫2009年は、河口氏の奥さまが睡眠=死んでいるようとお話しされたのを機に、睡眠中のエネルギーを蓮の種に転化させる趣向。
ちょうど人型(奥様の寝姿)のまわりにいくつもの蓮の種を頂にした触手が伸びている。
ベッド


本当に人が寝ている間に、そのエネルギーを使って蓮が発芽そうな気がしてくる。

一方≪関係-蓮の時・3000年の夢≫1994年は前述の発芽作品とは対照的。
こちらは鉛でベッドもそこに寝かされた蓮が人のように永遠の眠りについている。
鉛を溶いた時、再び蓮は蘇るのか。そう考えるととてもロマンティックなのだが、目の前にあるベッドは死を想起させる。

「生命」をテーマとする最初の展示室は全体で生と死のサイクル=輪廻転生という言葉を想起する。

今回の旅もいよいよ終盤。
最後の展示室には、長さ8m、重さ600kgの黄色に塗られた木造船にびっしりと蓮の種子が取り付けらている≪時の航海≫2009年。舳先は出口に向かい、まさに航海に出ようとするかのよう。
富山の入善町発電所美術館での「河口龍夫展」図録を所持しているが、発電所美術館での展示のために本船は富山で探し出された廃船で、今夏、発電所美術館に行った時、この船は青いビニールシートをかぶって深い眠りについていた。
その船が見事に新たな作品に生まれ変わっている!これがとてもとても見たかったのだ。

今回は会場の天井高がないため、床に置かれ、浮遊感を出すために(by河口氏)、黄色が塗られているが発電所美術館でのぶら下げはなくても、充分に迫力はある。
真近で見られるというメリットは大きい。

舳先によりには、羽が生えたペガサスもどきの木馬≪木馬から天馬へ≫2009年が乗船。
木馬

天に向かって旅をするのか。一瞬ノアの箱舟が浮かんだ。
この木馬には、一本の長い蓮が取り付けられ、アンテナの役目を果たす。

船を先導する役を仰せつかったのは≪蜂がパイロットの偵察機≫2009年。
こちらも偵察機の頭に蓮の種を付け、操縦席のパイロットには蜂がいる!

ラストシーンからも分かるように、河口氏の制作活動に終りはない。
また、次の展覧会へと旅は続く。
今回は、言葉・時間・生命をテーマとした旅を体験し楽しませてくれたが、次回はどんな旅が展開するのだろう。それを心待ちにしたいと思う。

<参考>
・展覧会HP http://www.momat.go.jp/Honkan/kawaguchi_tatsuo/index.html
・河口龍夫公式ホームページ http://www.tatsuokawaguchi.com/index.htm

<展覧会関連イベント>
旅を体験した後でもその前でも作家さんご本人の話によって更に旅を楽しめること間違いなし。
いずれも開催時間は14:00-15:30で、講堂(地下1階)にて聴講無料・申込不要(先着150名)。
参加されることをお薦めします。

◆河口龍夫×松本透(当館副館長)×大谷省吾(当館主任研究員)
日程: 2009年11月14日(土)

◆河口龍夫
日程: 2009年11月22日(日)

◆河口龍夫×谷新(宇都宮美術館館長)
日程: 2009年12月5日(土)

■担当学芸員によるギャラリートーク  いずれも18:00~19:00 参加無料(要観覧券)・申込不要
2009年11月27日(金)副館長:松本透、12月4日(金)太谷省吾

<展覧会図録>
展示されていない本展の展示ドローイングや最新作の構想ドローイングも掲載。図版も美しくファン必携の内容です。図録1冊目に掲載が間に合わなかった≪時の航海≫は完成したばかりの別冊に雄姿を披露しています。

*12月13日(日)まで開催中。
末尾で恐縮ですが、河口氏はじめ丁寧に解説をして下さった学芸員の大谷氏、関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

「第61回 正倉院展」 奈良国立博物館


syosoin
shosoin

奈良国立博物館で開催中の「第61回 正倉院展」に行って来ました。
展覧会関連HPは奈良博のもの⇒こちら。読売新聞社のもの⇒こちら
これだけ、多くの展覧会に足を運びながらこれまで1度も「正倉院展」には行っておらず、いよいよ御即位20年記念の今年、満を持して奈良博へ向かうことにした。

しかし、過去耳にする噂は、常に行列で30分待ちは当たり前云々とこちらを怯ませるような混雑具合を耳にする。
今年は運良く日曜日と文化の日の平日に休みをいただけたので、平日月曜日(11/2)を狙って出かけることにした。正倉院展は展示期間が限定されているため会期が非常に短いが今年に限り御即位記念で例年より3日間会期が長く、会期中は無休

午前中や昼間は外して、15時半頃博物館に向かったが、行列はなく待ち時間もなしでスムーズに入場することができた。
高まる期待を胸に会場に入ってみれば、平日だろうが4時前だろうが関係なく人は多いが、展示が見られないような混雑具合でもなくほっとした。

正倉院展とは、今更解説する必要もなかろうが、皇室ゆかりの名宝で現代に続く皇室の儀式に使用された用具や、東大寺大仏に聖務天皇の遺愛の品を納めた光明皇后直筆の書など今年は66件の(うち初出陳12点)宝物が出展されている。

とにかく初の「正倉院展」であるため、見るもの全てが珍しい。
66件と数だけ聞けば、大したことがないように思われるかもしれないが、1点1点集中して見ていたら、すっかり最後は放心してしまった。

以下私が選んだ第61回正倉院展で印象に残った作品です。
・平螺鈿背円鏡 (南倉)
kagaku

白銅製の鏡だが、銅の部分は側面や端っこなどにしか見えず、ほぼ全面ラピスラズリ、トルコ石、螺鈿、琥珀により装飾されている。明らかに異国の香が漂う工芸品。
その輝きは、全く今も変わらない状態と言って良い。素晴らしい保存の良さ。

・漆背金銀平脱八角鏡(北倉)
鏡はどれもこれも素晴らしいものばかり。こちらは、貝細工や石こそないが、平脱(へいだつ)という漆技法を使用し、渋いが金色、銀色の鳥や植物紋が映える。明治期に修復されているそうだが、それにしても状態が良い。

・伎楽面 呉女(南倉)
呉女の伎楽面は全部で3点出展されていたが、中でも状態が一番良い物は光明皇后をモデルとすると言われている。よく見ると顎線まであるようだ。
頭頂部の二つの髷が当時の女性の髪形だったのだろう。それにしても、全く違和感のないお顔。
このお面は一生忘れられない思う。

・紫檀木画僧琵琶(南倉)
2種類の本展チラシ(やポスターに使用されている目玉作品のひとつ。
この枇杷を明治期に雅楽員が一度鳴らしたことがあり、その時の音が会場にずっとリフレインで流されていたが、音よりもその楽員の方の声が気になってお経のように聞こえた。
琵琶自体は文句のつけどころのない装飾にただただ感動し、見入った。この裏面(画像下)の装飾は、図録表紙に拡大され使用されているが、実にかっこいい。

ミュージアムショップに過去の正倉院展の図録が並んでいたが、今年の図録は表紙のかっこよさではここ数年でNO1だと思う。
zuroku


裏だけでなく表面の捍撥(かんばち-ばち受け)には狩猟宴楽図(下のチラシの絵)が描かれるという二重のお楽しみがある。更には側面(落帯)にも花唐草文が配されている。
すなわち、手の入っていない所はほとんどないと言って良い。
もう、恐れ入りましたと頭を下げるしかなかろう。

チラシ2種類ありますが、やっぱり上のチラシがかっこいい~。

・琵琶袋残欠(北倉)(南倉)
上記の琵琶が入っていた訳ではないと思うが、琵琶を納めるのに使用されていた袋の残欠。
残欠と言っても、考えられないほど状態が良い。
奈良時代前後のものだろうに、色も模様も良く残り、非常に美しい。

・桑木木画棊局
いわゆる碁盤。しかし正倉院の品となればただの碁盤な訳がない。
側面の飾に注目。象牙に紋様を白く掘り出し、螺鈿など側面全て草花や鳥などの模様で覆われている。

・緑刀撥鏤把鞘御刀子(北倉)
写真で見るのと実物とは大違い。ミニチュアグッズかと思うような小ささ。単眼鏡がなければ模様を肉眼視するのは難しいかもしれない。

・十二支彩絵布幕(中倉)
これも染織品であるがゆえ。残欠で切れ端のみ残っているが、残っている個所に実に素朴な干支らしき動物が描かれているのが面白い。
この表現の素朴さは特筆もの。ことに鶏の頭部(顔)が面白い。

・楽毅論(北倉)
光明皇后の直筆を伝える貴重な資料。王義之の書の臨書だが、実にしっかりとした文字を書かれる方という印象を持つ。

全体を通して感じたのは、正倉院遺物の文様の美。
模様だけに特化して書かれている本があるのは大いに納得した。
工芸の技法も今では再現不可能な程、高度なものも多い。

正倉院については、読売新聞社発行の「知ってる?正倉院」楽しくわかるガイドブックシリーズがお薦め。私は会場でシリーズ3~5までを購入したが、これを読んでおよそのことが理解できます。
shosoin5
<下記HPでも購入できますが、会場でも販売していたので、お買い忘れのないように。
https://www.oys.co.jp/books/zuroku/index2.html
シリーズ1の知識編と2聖務天皇と光明皇后編も欲しいが完売とのこと。
11/8丸善丸の内本店に行ったら、最後の1冊シリーズ1とシリーズ2(こちらはまだあります)を購入できました!
どなたか、お持ちの方で、譲っても良いと思われる方があれば、ぜひコメントにその旨書き込み下さると大変ありがたいです。
出版社でも完売のようで、再販してくださらないかなと思う次第。お願いします!


本展に合わせ、東大寺近くにある本物の正倉院を離れた所から見学してきました。
gaikou
正倉院「正倉」詳細は以下宮内庁HPをご覧ください。
http://www.kunaicho.go.jp/event/shosoin.html
私が想像していた以上に大きな大きな倉。
だからこそ、数千もの宝物を所蔵し守って来ることができたのだと、実感しました。
*現在はコンクリート造の東宝庫、西宝庫で宝物は保管されている。

この名宝の一部が東京の国立博物館でも間もなく公開されます。
「皇室の名宝展」第2期はいよいよ来週11月12日(木)~11月29日(日)まで開催です。
今度こそ、混雑必至でしょう。

*11月12日(木)まで開催中。金・土・日は午後7時まで開催。

「菅原健彦展」 岡崎市美術博物館

sugawara

明日11月8日(日)で会期が終了する「菅原健彦展」を岡崎市美術博物館で見て来ました。
本展は、この後11月15日(日)から練馬区立美術館に巡回します。
関東一円の皆様も、「岡崎なんて無理~行けない」と思わずお付き合いください。

<展覧会概要>
*展覧会公式HPはこちら。クリックするたびに、トップページの作品画像が変わる!
菅原健彦は1962年東京練馬区に生まれ、多摩美術大学日本画専攻を卒業。在学中、加山又造、中野嘉之らに学びました。
1994年、五島記念文化賞新人賞受賞により1年間のドイツ留学を経て帰国後は山梨県内の山間部に転居。1998年、MOA岡田茂吉賞絵画部門優秀賞受賞。2001年より滋賀県大津市近在の山中に転居、京都造形芸術大学教授となり、2004年第2回東山魁夷記念日経日本画大賞を受賞し、それまでの制作活動が高く評価されました。
本展では菅原健彦の初期作品から新作までの代表作約40点を紹介します。

■作品画像は作家さんご本人のHPで見ることができます⇒こちら


菅原健彦氏の名前は現代作家の日本画には疎いため、本展で初めて知ることとなった。
チラシを見た時、見に行くか迷ったが結局行って正解だった。
岡崎市美術博物館の展示空間を狭いと思ったことは、あまりないのに、今回に限って言えば狭かった。作品が大きすぎるのだから、仕方ないことかもしれない。

展示はほぼ制作年代順に約40点が紹介されているのに、40点とは思えない充足感がある。

冒頭の作品、≪操車場≫1989年、≪首都高外環≫1993年ことに、後者を見た時すぐにアンゼルム・キーファーだと思った。
地元の名古屋市美術館の常設コーナーにキーファ-の≪シベリアの女王≫がよく置いてある(展示替えあり)。真っ先に浮かんだのが、≪シベリアの女王≫だった。
具象と抽象の間をさまようような日本画。
マチエールがまた独特の作り込みをしていて、初期作品はベニヤ板に岩絵の具や箔、顔料を使用し、バーナーで焼いているような感じ。荒々しい。
モチーフに採り上げているのも、日本画では珍しく構築物、建造物(例えば高速道路やジャングルジム)のようなハードなものが目に付いた。
≪谷中Y字路≫1993年では、自身のY字路ブームに重なり現代日本画によるY字路表現を楽しみ、長崎県の軍艦島の通称で知られる端島を描いた≪黒い船-端島≫1993年は、不穏さが全体に漂う廃墟の恐ろしさが増幅されている。

図録を後で読んだところ、やはり菅原氏は最初、同じく日本画の横山操氏の作風を好み目指しており、その後海外へ行った際、キーファーの作品を見て感銘を受け、横山+キーファー風の画面作りをしていたとのこと。
その目的は、初期作品で見事に成功している。

しかし、ここから作風はどんどん変化していく。

1995年のドイツ留学を経て、改めて日本の自然を見つめ直し、大きなひとつの転換期を迎える。
その代表作が≪淡墨桜≫2001年。
この作品は六曲一双の屏風仕立てで、これまであった色をほぼ排除し、白と黒の墨表現で勝負している。
桜を墨で描くが、たらしこみを使っている部分もあれば、作品が桜を描いているのか?分からないほど枝がうねり、ちょうど狩野永徳「檜図」のように枝はうねり狂う。
激しいストロークで桜を描き、身体全体を使うアクションペインティングなのか?と思わせるほど。
以後、このストローク中心の技法と墨で描く自然をモチーフとした大型作品が続く。

≪雲水峡≫2004年、≪無名の滝≫、≪聴音無量≫2004年などは、どれも空気を震わせるかと思うような迫力と緊迫感が画面から溢れていた。
鮮烈な印象を残す。

そして、最近のニュージーランド滞在でこれまでのモノトーン画面から一転し、光を帯びたような明るい色彩が使われた作品が登場。
suga1
≪Pupu Springs≫2007年(上画像)は、これまでの滝を描いたような白黒ストロークの激しさから、淡い美しい色彩のストロークへ変わることで、その印象も大きく変わった。
淡い緑や紫は過去の作品でもほとんど見かけなかった。初期作品で色は使用されていたが、茶褐色や緑青ばかり。
この光あふれる新作がまた良い。

展覧会の最後には、本展のために制作された5m×10mの巨大作≪雲龍図≫と6m×8mの≪雷龍図≫を新たに制作。
この2点を見るだけでも足を運ぶ価値は間違いなくある。
新作を制作するにあたり、アメリカ・フリーア美術館所蔵の俵屋宗達≪雲龍図≫を参考にするため、わざわざ現地に飛び、現物を見に行ったそうだ。
こうして、完成した≪雲龍図≫≪雷龍図≫はもちろん、菅原独自の個性溢れる画面が完成されている。
かなりの長時間、二つの絵の間に立って、それぞれをじっくり眺める。

菅原氏は現在47歳、ちょうど私が行った時、菅原氏によるギャラリートークがあったが時間がなく参加できなかったため、お姿だけしっかり拝見した。
若々しい様子で、さっそうとしておられた。
まだまだ、これからも新しい風を日本画に巻き起こして下さることは間違いない。

愛知県近郊の皆様は、本展をお見逃しなく。
また、関東圏の皆様も、練馬区立美術館でぜひご覧になることをお薦めいたします。

*11月8日まで。

2009年11月8日に終了する展覧会 「アイ・ウェイウェイ展」、「栄光のルネサンスから華麗なロココ」

10月の振り返りもできぬまま、明日で会期終了の展覧会2つについて、簡単に感想を。

1.「アイ・ウェイウェイ展-何に因って?」 森美術館 11/8まで
本展はアイ・ウェイウェイの作品や人以前に、観客が写真を自由に撮影しても良いということで脚光を浴びた。私も展覧会の内容より、写真撮影可ということを新聞記事で読んだし、他のブログの皆様も早速続々と写真をあげていらっしゃったことご既承の通り。

さて、アイ・ウェイウェイ氏は中国人クリエイター。活躍の幅は、美術、建築、デザイン、出版、展覧会企画と幅広い。特に2008年北京オリンピックスタジアム設計におけるヘルツォーク&ド・ムーロンとのコラボレーションにより国際的評価を高めた。

本展は新作6点を含め、1990年代以後の主要作品26点を紹介する過去最大級の個展。

お茶の葉っぱを固めたオブジェ≪1トンのお茶≫は、豊田市美術館で現在も展示されている「ジュゼッペ・ペノーネ」のお茶を使ったインスタレーションを思い出した。
≪1トンのお茶≫に限らず、どの作品にも中国の社会情勢や歴史、文化など自国を強く意識している姿を感じる。
アイ・ウェイウェイに限らず、昨年の「アヴァンギャルド・チャイナ展」の中国人アーティストの多くにその姿勢は共通しているように思う。

無論、作家が作品にこめる思いはあって然りであるが、あまりにもそれが強すぎると観賞者(私)はちょっと重い気分になる。その日の体調や気分にもよるが、何も考えず美や感動に浸りたい向きにはあまりオススメできないかもしれない。


2.「栄光のルネサンスから華麗なロココ」 宇都宮美術館 11/8まで
rokoko

こちらの展覧会は、国立新美術館の「THE ハプスブルク展」を見て、あまり日を置かずに見に行った。
本展は、ルネサンス前夜の14世紀からバロックを経てロココ芸術を生んだ18世紀に至るまでの西洋美術400年の大きな流れを紹介するもの。ヨーロッパの精神を貫くキリスト教主題の絵画を中心に、市民文化の成熟を示す17世紀の風俗画や風景画、そして18世紀の宮廷を彩った貴婦人たちの華やかな肖像画など、さまざまな分野の作品を栄光のルネサンス絵画」「「バロック絵画」「華麗なるロココ絵画」「以上の3部構成で展示。

展示作品画像他は以下美術館HPをご覧ください。
*なお、作品リストは私が行った時には準備されていませんでした。恐らく今もないと思われます。
http://u-moa.jp/jp/exhibition/index02.html

目玉はエルグレコ≪聖ペテロ≫、レンブラント≪深襞襟を着た女性の肖像≫ディエーゴ・ベラスケス≪磔刑≫アルティキエロ・ダ・ゼーヴィオ≪聖母の頭部≫(断片)、カスパル・ネッチェル≪音楽仲間≫。

ルネサンスからのバロック、ロココと続く西洋絵画の流れをつかむというには、まぁ良いかもしれない。
しかし、「The ハプスブルク展」の後ではどうもピンと来ないというか。
にしても、なかなかこれらの時代の作品をまとめて日本で見る機会は少ないし、強く感動したというのはないが、私が行った時は観客も少なくじっくり見られて良かった。

なお、同じ宇都宮市にある栃木県立博物館では「狩野派展」(評判良い)や栃木県立美術館では先日滋賀近美で見た「大正期、再興院展の輝き」を開催中。合わせてご覧になると充実の絵画ツアーが出来上がります。

「よみがえる浮世絵-うるわしき大正新版画展」 江戸東京博物館

shinhanga

江戸東京博物館で開催中の「よみがえる浮世絵-うるわしき大正新版画展」もいよいよ会期末まで残り1週間を切りました。
会期は今度の日曜日11月8日までとなっています。
前期:9/19~10/12、後期:10/14~11/8までと2期に分かれ、日本初公開となる米国ムラー・コレクション以外の作品では一定展示替えがあります。

前期、後期両方に行って来ましたので、遅れ馳せながらの以下感想です。

本展は、江戸時代の浮世絵版画の伝統を引き継ぎつつ、新たに創造された大正から昭和初期に興隆した木版画<大正新版画>を一堂に展示し、合わせて近代東京文化を捉える機会とするもの。
また、本展の呼び物となっている米国スミソニアン協会アーサー・M・サックラー・ギャラリー所蔵のロバート・ムラー氏の新版画コレクションの中から選りすぐりの名品を日本初公開します。

<展覧会構成>
第1章 新版画の誕生
第2章 大正新版画と浮世絵
第3章 新版画とモダニスム
第4章 日米の懸け橋 ロバート・ムラー 新版画コレクションの形成
第5章 新版画の制作

以上で分かる通り、新版画の創世から制作に至るまでを概観できる内容となっています。

全体を通して、個人的に印象深かったのは外国人による新版画作品であった。
特に第1章に展示されていたヘレン・ハイド、バーサ・ラムの両名の作品は過去にも見ていて、最初見た時から大好きなのだが、今回も他の作品よりこの2人の温かみのある作風が好きで好きでたまらない。前期・後期を通じて各1点ずつしか展示されていないのが、悲しかった。
外国人による新版画展というのは開催されないのだろうか。企画展でなくとも特集展示くらいでも良いのだけれど。

更に外国人作家の版画は続く。
フリッツ・カペラリ、チャールズ・バートレット、エリザベス・キース、お馴染ノエル・ヌエットなどなど。
恐らく彼らは浮世絵に関心があり、それを学ぶもしくは自身もやってみたいと木版画を始めた。
そして、独自の味付けがされ個性ある新版画作品が出来上がって来る。
浮世絵の模倣などでは決してなく、全く別の魅力があるのだった。
明治・大正期の外国人による木版画はもっと評価されても良いのに。
神奈川近代美術館で今年企画展があった「アンリ・リビエール展」、アンリ・リビエールは新版画の範疇外かもしれないが、浮世絵愛好家でその影響を強く受けていた。

日本人作家は、お馴染の橋口五葉、川瀬巴水、吉田博、伊東深水らに交じって、鮮烈な印象を残した作家が、山村耕花、名取春仙、小早川清、笠松紫浪、小原古邨。
最後の笠松や小原は名前すらこれまで聞いた記憶がなかった。

前期は、過去に見た作品が多かったので本展の良さが自分の中で強く実感できなかったが、後期も足を運んだ所、今度は未見作も前期より増えており、2度以上見ている作品であってもなぜか、しみじみと良いなぁと感じた。

新版画は時代も明治~大正にかけてなので、損傷や色落ちはムラー・コレクションであろうがなかろうがあまり変わらず、どの作品も色の美しさ、グラデーション、取り合わせは見事。彫の技術も高く、例えば橋口五葉の「髪梳る女」(大正9年)で見られるように、髪の毛1本1本まで分かるような精緻な表現をしているものさえある。
つまり、所蔵先がどこであっても新版画の質は高く素晴らしかった。
ただしムラー・コレクションの川瀬巴水による肉筆画は、なかなかお目にかかれないのでちょっと別格。

展覧会企画者の企図は、ムラー・コレクションの質もさることながら、外国人ムラー氏を虜にした新版画の魅力と新版画を通じての日米開戦前の交流の軌跡を伝えることにあったのではないか。

それゆえ、ムラー氏関連の文献資料や写真類なども合わせて多数出展されている。
新版画だけでなく、当時の新版画を通じての交流も見て行くと面白い。

また、もう一つの見どころとして、新版画のモチーフに注目したい。
浮世絵の歌舞伎役者、美人、名所を扱っているのは同じだが、描かれているものは全て時代を的確に反映している。

当時の風俗や日本の様子を知ることもできる。
例えば、山村耕花「踊り上海ニューカルトン所見」(大正13年)では華やかなダンスホールの風景がモダンガールと共に描かれ、小早川清の美人画「近代時世粧ノ内 ほろ酔い」(昭和5年・チラシ表面右列真ん中)の女性は短髪にノースリーブワンピースを身に付け机の上にはさくらんぼ入りカクテルが置かれている。
当時、戦前はこんな洋服や髪形が流行していたのかなと思いを馳せた。


最後に、本展図録について触れておきたい。
改めて図録を見返してみると、図版の色、雲母の使用も分かるほど印刷が良い。
この質と内容であれば、本展をお気に召された方にはぜひ購入をおすすめします。

*11月8日まで開催中。前期だけでなく、後期もお見逃しなく!
カレンダー
10 | 2009/11 | 12
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
ブログ内検索
twitter
最近のエントリ
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。