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「北宋 汝窯 青磁 考古発掘成果展」 大阪市立東洋陶磁美術館

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大阪市立東洋陶磁美術館で開催中の「北宋 汝窯 青磁 考古発掘成果展」を見て来ました。
見に行ったのは、昨年12月のこと。
ちょうど、中之島一体で「OSAKA光のルネサンス」イベントまっただ中で、東洋陶磁美術館は夜9時まで開館していたのだった。周囲の喧騒をよそに、普段夜間開館していない美術館はひっそりして、貸し切り状態。
この展覧会を見に行った頃から、漠然と台湾の故宮博物院に行ってみたいと考え始めていたと思う。

念願かなって昨日初めて訪れた故宮博物院で見た汝窯(じょよう)青磁2点と本展をからめつつ感想を書いてみたい。

大阪市立東洋陶磁美術館は、世界でも71点しか現存しないという貴重な北宋時代の汝窯青磁を1点「青磁水仙盆」を所蔵している。
注目すべきは東洋陶磁美術館所蔵品は、水仙盆というこれまた世界では2つ(残る一つは台湾・故宮博物院蔵)しかないものの1点だということ。

北宋末、宮廷の命により宮廷用の青磁製品を製作した汝窯は「天青色」(てんせいしょく)と呼ばれる青みがかった独特の釉色と精緻な作りで知られ評価が非常に高い。
本展では、中国の河南省文物考古研究所が近年進めて来た河南省宝豊県清凉寺の北宋汝窯青磁窯址の考古発掘成果を日本で初めて紹介するもの。
北宋汝窯青磁窯址の出土資料約80点により、その謎と魅力に迫るとともに、近年汝州市内で発見され注目されている張公巷址の出土資料の一部も併せて紹介している。~展覧会チラシより抜粋~

出土資料であるから、当然完品はなく、かけらを繋ぎ合わせた修復したものや繋ぎあわせることもできず欠片そのものの展示なので、汝窯の「天青色」って結局どんな色なのかを知ることは、この展覧会を見ても分からず仕舞だった。
むしろ、見れば見るほど汝窯の「天青色」って何なのかが分からなくなってきた。

ひとつ思ったのは、汝窯の作品の形が実に様々だということ。
通り一片の輪花碗、文瓶、梅瓶だけでなく、「青磁鴛鴦形香炉蓋」(せいじ えんおうがたこうろふた)のような愛らしい形のものが作られているということが一番記憶に残った。

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しかもこの香炉蓋の類品は、現存伝世品にはなく、むしろ北宋景徳鎮窯の青白磁や高麗青磁に類例があるとのことで、特に高麗青磁との関連を示唆する発見として挙げられていた。
素人目ながら、私は青磁の中では高麗青磁が好きで、稀にこれが「天青色」というのでは?と思うこともあるのだが、結局よく分からない。
ただ、高麗青磁と汝窯青磁に関わりがあるとするならば、それはそれで納得できてしまうのだ。

本展展示品の中で、「青磁輪花碗」(せいじりんかわん)の類品が台北・故宮博物院にあるとされていたが、運良く今回訪問時にそれが展示されていた。
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蓮の花びらをかたどった形で、本展出土品に比べ色も形も明らかに上を行っていて、薄いピンク色のような貫入が特に印象深い。
汝窯の最高峰と言われる作品には貫入が全く入っていないという奇跡的作品「北宋汝窯青磁無文水仙盆」(台北・故宮博物院)があるのだが、通常の汝窯青磁作品には貫入があり、貫入の入り具合もまた見どころの一つとされている。

そして、本展ではもう1つ新たな発見がある。
「青磁刻花龍門瓶」は胴部に刻花で龍文が表されており、龍は天空を駆け、口からは火焔珠(かえんじゅ)を噴き出す図様が描かれていた。これまた、汝窯の伝生品には類品がなく、汝窯には文様のある品はほとんどないという通説を覆す発見になったのだとか。


さて、台北の故宮博物院で見た残る1点の汝窯青磁は、小ぶりな瓶であった。こちらも色は美しかったけれど、貫入の入り具合は前述の「蓮華式碗」には劣る。

この汝窯青磁だけを扱う特別展覧会「北宋汝窯特展」が2006年12月から2007年3月にかけて台北・故宮博物院で行われた。このことは、台北に行くきっかけにもなった「台北 國立故宮博物院を極める」(とんぼの本・新潮社)の中で、伊藤郁太郎氏が書いておられ、ますます汝窯の作品を他にもこの目で見たくなったのだった。

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結局出土資料とわずか2点の汝窯作品を見ただけでは、その素晴らしさたるを知るには足りなかったが、もう少しゆっくり時間をかけて鑑賞してみようと思っている。
特に私の関心は高麗青磁との関連性にある。台北・故宮博物院で上記「北宋汝窯特展」図録を購入したが、同展でも比較として高麗青磁を展示していたようだ。

話を大阪市立東洋陶磁美術館の展覧会に戻す。

来る3月13日(土)14日(日)に、本展開催にちなんで国際シンポジウム「北宋汝窯青磁の謎にせまる」が開催される。中国、台湾、韓国、日本の研究者が汝窯に関する最新の研究成果を発表するというまたとない機会である。
参加費無料で先着250名まで。場所は大阪歴史博物館・講堂。詳細はこちら。発表者のお名前とその発表内容タイトルだけを見ても興味深い。

さらに、同時開催の平常展:李乗昌コレクション韓国陶磁や沖正一郎コレクション鼻煙壺や安宅コレクションもお楽しみいただけます。

*3月28日(日)まで開催中。
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「前田圭介 the patchery 」 hiromiyoshii

清澄白河のギャラリーhiromiyoshiiでもう1人、凄く好みの作家さんを見つけた。

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展示風景は、こちらもフクヘンさんのブログで紹介されている(↓)。
http://fukuhen.lammfromm.jp/?p=2171

「前田圭介 the patchery 」展である。
『カモメのジョナサン』をテーマにしたペインティング、約10点ほど。
油彩作品と色鉛筆だけを使用して着彩したペインティング。
特に、色鉛筆の方は画材となっている紙を燃やして丸く象って額装してあって、とても素敵だった。
この作品の中央にカモメが1羽いる。

全ての作品を通して見ると『カモメのジョナサン』をモチーフにした別の物語を紡げそう。
小さな小さな作品で『カモメのジョナサン』を読んでいる女性を描いたものがあったけれど、宝物みたいに大切にしたくなる作品だった。

青色を背景に森?を描いたペインティングも素敵だし。

どれもこれも欲しくなってしまう作品ばかりだった。

そんな思いをしたのは私だけではなかったのだろう。作品は全て完売。やはり。

前田圭介は1972年の名古屋生まれ。
詳細なプロフィールは明らかにされていないが、これまでヨーロッパ中心に活動されていたようである。
ギャラリーHPに簡単なプロフィールが掲載されている。⇒ こちら

*2月13日(土)まで開催中。

「斎藤真一展 瞽女と哀愁の旅路」 武蔵野市立吉祥寺美術館

武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の「斎藤真一展 瞽女と哀愁の旅路」に行って来ました。

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前期・後期と入替があるのは知っていたけれど、どうしても都合がつかず後期だけやっと拝見することができた。

斎藤真一作品は昨年の東京都美術館で開催された「日本の美術館名品展」で初めて出会い、強く印象に残った。

本展は、前期は旅愁あふれる初期作や、明治吉原を再現した絵草紙の世界を中心に、また後期は赫い瞽女(ごぜ)の作品群や、さすらいや街角の風景を中心に構成し、画家自身の残した言葉とともに斎藤真一の約120点の作品を紹介するものです。
展覧会詳細は、美術館HPをご覧ください(↓)。
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/

しかし、この展覧会本当に行って良かった。
盲目の旅芸人・瞽女(ごぜ)の作品ばかりクローズアップされることが多いようだが、後期の最後に展示されていた街角シリーズにも惹かれた。

瞽女シリーズで使用されている「赫」は文字通り「赫」であって「赤」ではない。
もっと人間の情念やどうにもならない愛情、宿命、哀愁のようなものをこの色から強く感じた。

≪お春の祈り≫1974年、春が想い人と駆け落ちする連作は女性の視点で描かれている。
どうにもならない春の気持ちが、作品からひしひしと伝わってくるのだ。
斎藤は男性であるのに、なぜかくも女性の気持ちを伝えるような絵を描けるのだろう。
一連の作品を通してそれが一番凄いと思った。

今回私が一番好きな作品は≪玉の愁い≫1987年であったが、この何気ない油彩を見た時、自分を見ているかのようにはっとしたのだ。
この作品は1人の女性が座って、机に置いてある玉(多分、水晶玉)を愁いを帯びた表情で見つめている姿を描いている。
何というか、この女性の気持ちが手に取るように伝わって来て怖いくらいだった。
玉にこめた思い、それは何だろう?
日常の退屈さ?
好きな人への実らぬ思い?
もっと切実に迫った問題?
自身の未来が見えるのだろうか?

この作品1枚だけで、いかようにも小説が書けそうな感じ。藤堂志津子さんの小説の表紙に使用して欲しいなと思った。
また、私は斎藤作品の水彩画も好みだった。
≪青い瓶の中≫1988年、≪纏めてみたい額の中の時間≫1988年、ちょっとメルヘンチックな水彩画は「赫」の強い印象とは裏腹に優しい作品。

初期作品の実作は前期展示だったため、見逃してしまったが≪自画像≫1938年は関根正二の作品を彷彿とさせる。
帰りにこの作品のポストカードを買った。

瞽女シリーズに共通して感じたのは、岸田劉生の影響である。
特に作品に画中枠を作り、模様や飾文字を入れているあたり、劉生作品にもよく見られる手法だった。

「越後瞽女日記」を拝見していると、斎藤のペンは走り、絵画だけでなく文字も美しく、文章も達者であることがよく分かる。
展示室を出た所で、映像コーナーがあって過去に放送されたNHK出演番組を2本流していたので、そちらもしっかり拝聴した。
一度に何枚もの作品を同時平行で制作していた様子がよく分かる。

まだまだ、思いはいろいろあるのだが上手く言葉にならない。
ぜひ、実際に作品を見ていただければ、その作品の素晴らしさが分かっていただけると思う。

武蔵野市立吉祥寺美術館は、昨年も「動物画の鬼才・薮内正幸の世界展」などで楽しませていただいたが、本当に他所ではなかなかやらないような好企画をして下さる。
同館が入っている伊勢丹吉祥寺店は3月に閉店が予定されているが、同館はこれまで通りの運営を続けるようで一安心。来年度も素晴らしい企画展を楽しみにしている。

なお、今回は常設の荻原雄記念室の「萩原英雄のイソップ絵噺」全51点も見ごたえがあった。

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こちらも併せて楽しめます。

*2月21日(日)まで開催中。入館料はたったの一般100円です。オススメします。

「名知聡子展 告白」 小山登美夫ギャラリー 7F

清澄白河の小山登美夫ギャラリーで開催中の「名知聡子展 告白」に行って来ました。

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展示風景はフクヘンさんのブログで画像がアップされています。(↓)
http://fukuhen.lammfromm.jp/?p=2118

名知聡子さんの作品を最初に見たのは、日比谷の高橋コレクション「neoneo展女子」だった。
「neoneo展」で一番気になったのが、名知さんの作品。
そして、彼女のプロフィールを見たら名古屋芸術大学美術学部を卒業後、現在も愛知県で活動中とか。
私の地元で活動中とは嬉しい限り。

「neoneo展」で見た作品も女性の顔+上半身クローズアップでかなり大きな作品でビックリしたのだった。

そして、今回の「名知聡子展 告白」はビックリを通り越して凄みを感じた。
EVを降りると、いつになく照明も落とし気味でかなり薄暗い。
左側の展示室に入って息を飲む。

DMになっていた作品を含め3枚の女性の半身像(上画像はそのうち中央の1点)。
しかし、明らかに以前見た作品より相当ブラッシュアップされている。
以前の作品は、もう少し筆が粗かったように思うが、今回は違う。一種研ぎ澄まされているというべきか。
写真ではないけれど、人物の個性を上手く絵画で表現している。これは写実なんだろうか、それとも想像?

私は盲目の女性を描いた入口左手のおさげの女性像がとても気に入った。
ずっと眺めていたくなる感じ。
近づいてみると、女性の肌には金色の粒子がまぶされている。
同じ小山登美夫ギャラリーの取扱作家さんである加藤美佳さんも同じような写実表現をされるが、名知さんの場合は人物にこだわり続けている所がポイント。

奥の一番大きな部屋に展示されているのは、高さ4m横8mの巨大な作品。中央に女性が横たわり、四方には蓮の花が。キャンバスには縁取りがされ、さながら仏画の様を呈している。
女性のスカートが曼荼羅模様に見えて仕方なかった。
そして、スカートがめくれたその奥、両太股の奥には深淵が続くのか。
秘めたエロティシズムを感じてしまう。
緻密にして大胆な構図。

左手にはもう1枚ペインティングがあったが、最初の部屋の3枚のペインティングとほぼ同じ大きさ。
よくよく見ると、写真館で写真を撮ってもらう時に使用する背景にバックの色が似ている。
肖像写真と同じ効果を狙っているのだろうか。

右手には写真が2点。
ペインティングほどインパクトはないが、この写真も悪くない。むしろ好きかも。

ギャラリーのHPによれば本展では、想い人へのメッセージともとれる作品シリーズと、友人をテーマに描いた新作を発表。写真作品も、名知が想い人へ渡したプレゼントをテーマにしたものなどで、制作の根底には一貫して同じ流れがある。

モチーフは身近な人や自分自身の体験が結びついているらしい。

名知聡子は2010年のVOCA展にも入選し出品が予定されている。
今後も目が離せない。
なお、ペインティングは全て完売。オープニング当日にはもう1点大きなペインティングがあったが、これはその後はずされたそうだ。
一番大きな大作も仮おさえが入っていた。あの大作、どこに行くのだろう。。。

*2月13日(土)まで開催中。必見です。

2010年1月27日 ギャラリー鑑賞記録

今日行ったギャラリーで心に留まったものをいくつかご紹介。

●「長谷川潔展 仏訳 『竹取物語』と初期銅版画」 永井画廊
詳細はこちら(画廊HP)。

銀座4丁目歌舞伎座の程近く永井画廊で今月29日(金)まで開催中の「長谷川潔展」へ行った。
長谷川潔は、東近美の常設などで何度か版画作品を観ていて、いいなぁと思っている版画家。今回は、画廊の方曰く、美術館でもなかなかできないような企画ということで、貴重な仏訳『竹取物語』挿画本 1933年の扉絵、挿画18、章初めカット9、章末カット9、オンシアル文字9が一同に壁面展示されている。
本来は挿画本なので、1ページずつ開いて見ていくものだが、上手く額装され展示されていた。それだけでも相当な手間と費用がかかっているに違いない。

さて、この貴重な銅版画は銅版画技術の中でももっとも難しいとされる直刻のビュランとポワントセッシュによって刻画されている。
「刻」という文字がピタリとはまるのはその作品を見ればすぐに分かる。
とにかく1本1本の線が非常に細くて繊細で、更に濃淡まで付いているのだから恐れ入る。
画廊側でも拡大鏡を準備して下さっているので、単眼鏡をお持ちでない方でも大丈夫。
かぐや姫の麗しい顔に十二単≪貴公子たちの求婚≫なども良いけれど、私は≪蓬莱の玉の枝≫の挿画で見せた波の描写や雲のデザインに見惚れた。更に空には2派の鳥が飛んでいる。
さらに≪かぐや姫の昇天≫では、天女が散華しながら天に昇る姿を描く。仏画世界のようだった。

長谷川潔ファンなら必見の名作。
他にも初期銅版画作品や油彩も展示されているが、やはり版画作品の方が良いと思った。

●山脇紘資(やまわきこうすけ) 作品展 「俺の国 in ツァイト・フォト・サロン」

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山脇紘資 (C)Kosuke YAMAWAKI

詳細 → http://www.zeit-foto.com/exhibition/index.html

山脇は1985年千葉県生まれで2008年に武蔵野美術大学入学。ということは現在同大学に在学中ということか。
2006年にGEISAIでデビュー、この時「スカウト審査員賞」を受賞。以後昨年のGEISAIから始まりクムサンギャラリーでのグループ展や野田コンテンポラリー(名古屋)などで個展を開催し活動が本格化している。

ツァイトでは写真作品の展示が多いが、今回は油彩。
作品は全て動物の顔のリアルクローズアップ油彩作品。制作方法は不明だが、写真を撮って、それを油彩に作品化しているのかもしれない。
伊庭靖子さんも、写真を撮ってそれを絵画化していると以前アーティストトークでお話されていた。

彼の作品の特徴は動物の顔だけ、しかもそれが巨大キャンバスになっていることだろう。
ギャラリー一面に展示された作品群には、パンダあり、犬あり、猫ありだが、実の所、それが犬なのか猫なのか、パンダなのかはっきりと分からない。本当に目と鼻と口の部分だけを描いているので、輪郭がないのだ。
目、鼻、口だけでどの動物か当てるのって結構難しい物だなと思った。

とにかく面白いので、この展覧会はオススメ。作品のお値段はかなりの高額だが、既に2点は売約済だった。

*2月13日(土)まで 日・月・祝日休廊 10:30~18:30(土は17:30)

●桝本佳子展 「パノラマ 陶の風景」

桝本佳子の作品は、年初めの東近美工芸館「現代工芸への視点-装飾の力」で見ていた。
その時は、あまり印象に残らなかったが今回の「パノラマ 陶の風景」では複数の作品展示がされているので、やっと作風が分かった。古典的な技法を使用して、全く別の彫像を作り上げる人なのだった。
どこか真葛焼の宮川香山を思わせるようなデコラティブさである。
これが現代風になっていて、例えば信楽焼風の「ショベルカー」だったり、染付風の「白鷺」だったり。
陶芸でこんなに遊んじゃっていいの?という感じ。
私の好みではないが、この作品の大胆さ、面白さは特筆もの。

なるほど、昨年は京展 立体部門で館長奨励賞、トーキョーワンダーウォール 立体・インスタレーション部門で大賞を受賞している。ということは、そのうちTWS本郷あたりに再登場されるのだろうか。

毎度のことながらINAXガレリアセラミカ作成のリーフレットは美しい出来栄え。ちょっとした小作品集のよう。
これは捨てられない。

*2月2日(火)まで開催中
INAXギャラリーでは「松山隼展-今日のお祈り-」は1月29日(金)まで開催中、期間中合わせてご覧いただけます。

「糸あやつりの万華鏡 -結城座 375年の人形芝居-」 INAXギャラリー1(東京)

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INAXギャラリー1(東京)で開催中の「糸あやつりの万華鏡 -結城座 375年の人形芝居-」に行って来ました。
なんだか、妙に気になって気になっていた展覧会。

結城座って何だろう?
どんなあやつり人形が待ってるんだろう?

結城座について簡単に説明すると、江戸時代・寛永12年(1635年)に初代結城孫三郎が創設以来、現在12代目まで375年以上の歴史がある江戸糸あやつり人形一座。国の記録選択無形民俗文化財および東京都の無形文化財に指定されている唯一の江戸糸あやつり人形の劇団。
結城座ホームぺージはこちら

観てびっくり。
「こんな世界があったのね!」的な感動がじわじわと押し寄せる。
何より私が心惹かれたのは、宇野亜喜良さんが意匠全般を担当し昨年上演された「乱歩・白昼夢」である。
これ、何で見に行かなかったというか何でアンテナにひっかからなかったんだろう。

宇野亜喜良さん大好きなのに、本当に残念(でも、今日twitterで呟いた時、お名前の漢字を変換間違いしました)。
もう少し、早くこの展覧会を観ていたら1月につくば市であった再演を見られたかも。
かもとかたらはやめよう。
昨年公演の関連企画として、「宇野亜喜良×結城座『乱歩・白昼夢』 特別展示会」まで開催されていたのだ。
宇野氏は『乱歩・白昼夢』において、200枚もの写し絵画、人形美術、舞台美術、舞台衣装に至るまで、全てをプロデュース。妖艶の美女を、醜悪なこの世ならざるものを、華やかなりし浅草を、大正時代の東京を作り出したそうです。
(参考HP)http://www.youkiza.jp/rampo/unoakira.html

使用された人形や写し絵のごく一部がINAXに展示されていたが、もう素敵過ぎて言葉にならない。
宇野さんの意匠と乱歩の世界ってはまりすぎる。
はぁ。。。公演はさぞかし素晴らしかっただろうとため息ばかり。

宇野さんだけではありません。
あの世界的モデルとして活躍された故山口小夜子氏も結城座の人形デザインや意匠に携わっているではないですか。
彼女は「夢の浮橋 人形たちとの「源氏物語」(2005年上演)を担当。
小夜子さんそっくりな源氏物語に登場する麗しい姫君の人形の頭の数々が展示されていたのだが、どれも長~い睫毛がと切れ長の瞳が印象的。
直筆デザイン画もあり、山口氏のデザインを間近でしっかりこの目で確かめたが素敵なデッサンだった。

他にも古典ものの演目以外は多彩なデザイナーが結城座とコラボレーションしている。

人形の大きさはおよそ60センチ程度。
一番重要な頭だけが、ずら~りと並んでいるコーナーは壮観だったが、個人的には頭だけより、様々なデザイナーの方が作られた人形本体+衣装+写し絵などに興味を惹かれた。
衣装だけの展示コーナーもあり、ゴージャスなもの、愛らしさいっぱいのもの、演目によって様々。

他には公演に際して制作された古い時代のポスターから最近のものまで。
これも思わずはっとするようなデザインのポスターや浮世絵風なポスターがあったり、実に多彩。

宇野さんはじめ、結城座メンバーら関係者のインタビュー映像や実際の上演風景も流れていたが、こちらは時間がなくて観ることができず(再訪するかも)。

本展にちなんで、INAX出版から図録かわりのブックレット(1500円)が刊行されている。
思わず手が出そうになる充実した内容。ひとたび頁をめくれば止まらなくなりそうな危険さがあった。

この展覧会を拝見したら結城座公演を観てみたくなること間違いなし。
そして、上手い具合に3月18日~3月22日(月・祝)に世田谷・シアタートラムで「宦官提督の末裔」という国際共同制作公演があるのだった。
迷う。。。一度実際の舞台で観てみたいが、私が観たいのは宇野さんの世界なのだった。

*2月20日(土)まで開催中。 休館日:日祝日 入場無料
本展は以下に巡回します。
ギャラリー大阪: 2010年3月6日(土)~5月20日(木) 休館日:水曜日、3/31-4/17 □10:00~17:00
ギャラリー名古屋: 2010年6月4日(金)~8月19日(木) 休館日:水曜日、夏期休業□10:00~17:00

「世界遺産 金閣 銀閣 寺宝展」 相国寺承天閣美術館

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再び京都の観賞記録です。相国寺承天閣美術館で開催中の「世界遺産 金閣 銀閣 寺宝展」に行って来ました。

現在京都では「第44回京の冬の旅 非公開文化財特別公開」が行われており、相国寺承天閣美術館も参加施設に名を連ねている。
相国寺と言えば、伊藤若冲が動植綵絵を寄進したお寺としても有名で、動植綵絵30幅と同寺所蔵の釈迦三尊像を一堂に展示した2007年の若冲展は鮮烈で、一生忘れられない展覧会だと思う。

その後も、京都へ行くたび何度か訪れているが、今回の展覧会でもまた初公開作品が何点も出展されており、所蔵作品の懐の深さに感じ入るばかり。かつてあった萬野美術館コレクションを引き継いだのも大きいのだろう。

今回は、第一展示室でプチ若冲特集と言えるほど若冲作品が出展されている。
・釈迦三尊像
・玉熨斗図
・厖児戯箒図
・中鶏左右梅図
・牡丹百合図
・群鶏蔬菜図押絵貼屏風
特に、厖児戯箒図は2007年の同展で初公開された懐かしい作品。久しぶりに拝見した。

さて、若冲だけではない。本展は金閣寺、銀閣寺の寺宝から精選された墨蹟・絵画・茶道具などの数々の名品で、その悠久の歴史と文化を紹介するもの。江戸時代初期の金閣の姿を描いた「金閣寺遊楽図屏風」や、池大雅が克明に銀閣寺の実景を写した「慈照寺境内図」など当館初公開の作品を含む、書画約60点、工芸30点の名品の数々が出展されるのが見どころ。

ということで、以下初公開、もしくは私が未見の作品を中心に感想を綴りたい。

・山水人物図(三面のみ) 与謝蕪村 京都市指定文化財
前記特別公開による展示作品。慈照寺(銀閣)方丈上間一之間襖絵のうち三面だけを展示している。上間は上官之間として格式が高い。この部屋に与謝蕪村なのかとちょっと意外であり、逆に人気があったのかと思った。同じ慈照寺方丈には池大雅の襖絵もあり、二人がコラボ?するのは「十便図十宜図」だけではなかったようだ。
肝心の作品は、蕪村50代の円熟期に入っての作品だが、個人的にはピンと来なかった。

・慈照寺境内図 維明周奎賛 池大雅筆 初公開
池大雅による境内図だが、慈照寺と大雅との強い関係を伺わせる資料的価値が高いとみた。

・金閣寺遊楽図屏風 一隻 初公開
江戸時代前期の遊楽の様子を描いた屏風。境内図とは違って、庶民の様子がよく分かる。

・君台観左右帳記 伝相阿弥筆 室町時代
これは分かりやすかった。展示されていたのは、中国の画家と日本の画家が3段階に分けてランク付けされている。これで東山御物の選定が行われたのかと思うと、見ていて楽しい。
知ってる作家も意外にランクが下の方だったり、当時の人気画家の趨勢を伺える貴重な資料。

・釈迦十六善神像 円山応挙
応挙の仏画は、他にちょっと思い出せない。あまり印象に残らなかったのかもしれないが、本作は違う。しっかり強く印象に残る作品だった。まず目を引くのは、鮮やかな群青の背景が鮮烈。更に対照的に中央に座した釈迦の衣紋の細かさといったらもう、応挙の筆が唸っている。

・頭陀釈迦図 張思恭 初公開 宋
宋代の絵画自体大変貴重で、見る機会が少ないのに、今回は3点の絵画が出展されていた。本作品は重要美術品であるがやや劣化が激しいのが難。

・江天暮雪図 牧谿筆 東山御物 宋 初公開
こちらも初公開の逸品。牧谿のしっとりした風景画である。

先日静嘉堂文庫美術館で、なぜ日本では北宋絵画、南宋絵画のいずれも流入していたのに、南宋絵画が重用されたのかを「水墨画の美」シンポジウムで質問したら、興味深い回答をお二人の専門家からいただいた。
?牧谿のような南宋絵画の湿潤とした作風が日本の気質、風土にあっていた(板倉聖哲氏)
?ちょうど日本で水墨画が流行しはじめた雪舟の時代には南宋絵画が当時の中国では復活人気となっていた。日本の画家たちは、過去の流行を追っていたのではなく、当時の人気先端を追っていた認識を持っていた筈。(小川裕充氏)

なるほど、牧谿の作品を見ているとしっとりした情緒が感じられ、北宋絵画ではそうした余白の美というか遊びがないように思う。

・柳鷺図 楚石梵賛 黙庵霊渕筆 初公開

・妙音弁才天像 作者不明 室町時代 初公開
作者不明ではあるが、良質な弁才天像。

・白楽天像 無学祖元筆 初公開 鎌倉時代 重要文化財
鎌倉時代の貴重な人物画だとか。

・真山水図 伝如拙筆 能阿弥筆 初公開 東山御持物


上記絵画だけでなく、茶碗をはじめとする陶芸品はいつも通り名品揃い。仁清、長次郎銘喝食など枚挙にいとまなし。

見どころは、以下美術館HPに画像入りで掲載されているのでご参照ください。
http://www.shokoku-ji.or.jp/information/news/091213.html

いつ行っても、満足できる展示、西の筆頭美術館だと思う。

*3月22日(月・祝) 会期中無休!

「椿絵名品展~あいおい損保コレクション~」 金沢21世紀美術館 市民ギャラリーA

金沢3連発。これが最終回。
てっきりオラファー・エリアソン+コレクション展+広瀬光治のニット展+恒久作品を楽しめればと思いきや、入館してすぐに「椿絵名品展~あいおい損保コレクション~」のポスターが目に入る。
しかも、使用されている作品は屏風絵。江戸期のものか?と思いきや、近づいてみたら何と(伝)狩野山楽≪椿梅図≫とあるではないか。
本展チラシはこちら

受付の方に、この展覧会の巡回有無を確認したら、ここ金沢だけの開催とのこと。
これで決まり。見ておくことにした。
それにしても、あいおい損保にこんな名品コレクションがあるとは知らなかった。なぜ椿絵を収集しているのだろうか?

本展は、優れた椿絵の収集で知られる「あいおい損保コレクション」の中から、江戸時代の琳派を代表する尾形光琳、乾山らによる絵画や工芸作品から横山大観、竹久夢二、岸田劉生、村上華岳、高山辰雄から堀文子など現代作家らが描いた椿絵の名品84点を選りすぐり、椿の花の美しさで新春を寿ぐとともに、今年の安寧と繁栄につながる吉祥のさきがけとなればと願うもの。

出品作家は上記にご紹介した作家を含め全部で51名の錚々たる面々。

印象に残った作家と作品を簡単にご紹介。

冒頭の(伝)狩野山楽≪椿梅図≫はやや傷みがひどいので、上手く修復して見てみたい。桃山から江戸にかけての艶やかな屏風絵。

椿と言えばこの方、北大路魯山人の≪色絵椿文鉢≫や尾形乾山の≪山茶花図≫、≪色絵椿文輪花向付≫など特に乾山の絵画作品は気に入った。

沢山の椿絵を見て行く中で、途中はっとして足を止めた作品がある。
これが熊谷守一の椿の作品だった。
いつもの熊谷作品のように、椿が単純化され、緑の背景に赤が反対色になって非常に映える。熊谷守一っていいなぁと改めて思った。小品だけど、どれか1点差し上げますと言われれば、迷わずこの熊谷作品を私は選択する。

横山大観≪雪旦≫も大観の手抜きなしの朦朧とした背景に白い椿が凛とした風情を見せる佳品。

村上華岳は数点展示されていたが、≪椿花図≫は花に溢れかえって、椿が毒々しく感じられるほどだった。

小倉遊亀≪古九谷徳利と白椿≫は小倉遊亀らしい、恩師の安田 靫彦も古陶磁が好きで作品モチーフに使用していたが、安田の影響だろうか?

洋画では、岸田劉生の影響を強く受けたその名も椿貞雄の作品が印象的だった。元々濃厚な画面を作り出すが、今回も強い力が画面からみなぎる。
他には香月泰男や福井良之助、鈴木其一、小泉淳作らの作品が良かった。

*2月13日(土)まで開催中。入場料は別になりますので、ご注意ください。

「コレクション展 shift-揺らぎの場」他 金沢21世紀美術館

話題が京都、金沢とあちこちしますが、ご容赦ください。

「オラファー・エリアソン展」目当てで向かった金沢21世紀美術館だが、同時開催されている「コレクション展 shift-揺らぎの場」も楽しめた。更にニットの王子「広瀬光治と西山美なコの “ニットカフェ・イン・マイルーム”」も開催されているし、とにかく盛り沢山。
1日いても飽きないと思う。

かっこいいなぁと思ったのは美術館の図書コーナー。通常の美術館だとこの図書コーナーは誰も利用者がいなかったりということがあるけれど、金沢21世紀美術館は違っていた。置いてあるのは、アルネ・ヤコブセンデザインの様々なカラーのスワンチェアで思い思いに好きな美術雑誌や本を読んでいる利用者がチラホラ。その様子だけで絵になっていた。

「コレクション展」は開館5周年を迎え、「shift-揺らぎの場」をキーワードに「私」を含む様々な物事を繋ぎとめる境界の揺らぎを探る。
と、作品リスト兼解説書には書かれていたが、このキーワードは出品作品から感じることはなかった。

今回の出品作家は、フランシス・アリス、ゴードン・マッタ=クラーク、アン・ウィルソン、村山留里子、須田悦弘、パトリック・トゥットフオコ、ピーター・ニューマンらである。

アン・ウィルソンのアニメーション映像作品も惹かれた(この映像は動きが面白かった)が、目立っていたのは村山留里子の作品群。
東京都庭園美術館や高橋コレクションでも過剰とも言えるビーズや造花を使用したデコラティブなオブジェが非常に印象的でったが、今回は類似のオブジェの他に、巨大なパッチワークのごとき垂れ幕作品に度肝を抜かれた。

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何しろ高さ8.6m、幅7.3mで小さな色布の断片を縫い合わせたもの。使用されている色数は80~90色。
チベットのタンカもここまで派手ではなかったように思う。
2005年の企画展に際し制作されたというこの巨大な作品は近作とは違った、色彩へのこだわりだった作者の挑戦意欲を切実に感じた。

もう一人、既に知っている作家だが須田悦弘の作品も見逃せない。
作品リストには、≪バラ≫≪雑草≫≪葉≫と3点しか掲載されていないが、私が訪問した日にはこれ以外に2点展示されていた。果たして見付けることはできるか?
しかし、≪雑草≫も≪葉≫もどこにでも出現させられるので、その展示場所によって微妙に表情が変わるのが面白い。
木彫りと彩色芸術の極み。

残念ながら、全部を見ることができなかったが、長期インスタレーションルームのピーター・ニューマンの映像作品≪フリー・アット・ラスト≫7分は良さそうだった。
もう少し時間があれば、最初からきっちり見たかったのだが残念。

「広瀬光治と西山美なコの “ニットカフェ・イン・マイルーム”」は靴を脱いで楽しむ空間インスタレーション。

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お菓子の森に来たのかと思う程スイートな空間をニットで創出。西山美なコがデザインしたパビリオンを、広瀬光治がニットによって表現し、中央にある巨大パビリオンの中心には、ニットによって編み上げられる「靴」の作品が設置され、まさにシンデレラのガラスの靴を思い出し、俄かにシンデレラ感覚を味わえることだろう。

*「広瀬光治と西山美なコの“ニットカフェ・イン・マイルーム”」は3月22日(月)まで
「コレクション展 shift-揺らぎの場」は4月11日まで(日)
もちろん、レアンドロのプールやタレルの部屋、カプーアの部屋も楽しめます。夜のレアンドロのプールはオススメ。

「水連池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存」 アサヒビール大山崎山荘美術館

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アサヒビール大山崎山荘美術館で開催中の「水連池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存」に行って来ました。
展覧会HPはこちら

既にご覧になられた方も多いかもしれないが、この展覧会、モネ、須田悦弘の名前は出ているが、事実上は伊藤存の個展に近い。

新館(安藤忠雄設計)のオーバルの壁面には同館所蔵のモネによる「睡蓮」作品5点全数が展示され、中央の仕切られたコーナー(靴を脱いで鑑賞)では須田悦弘の2002年制作「睡蓮」が展示され、更に2点の新作が公開されていた。
その前日に行った金沢21世紀美術館のコレクション展にも須田悦弘作品の展示があり、あちらは5点(既存3点、新作2点)だったが、展示方法の大胆さは金沢の方が上だった。
須田さんの作品というのは、どこにあるのかなと探すのも楽しみの一つなのだ。

さて、メインは本館1階を使用した伊藤存の本展のために制作された作品群とその展示方法である。
伊藤存は刺繍、と言ってもゴージャスな刺繍というのではなく、むしろラインや色数を絞った糸色で勝負している作家。
今回の伊藤存は彼自身が選択した大山崎山荘美術館の所蔵品と山荘でのスケッチをもとに新たに制作した新作とのコラボレーションがとにかく見事。

完全に伊藤存の世界を作り出していた。
伊藤存の作品を初めて見るという方のために、分かりやすい対話形式の解説パネルがあったり、別に見たくない方は見なくても良いけれど、作品を見る視点、自分では気付かない視点を気付かせてくれるという意味でこの解説は助かった。
もちろん、観賞者の感じるままに好きに楽しめ場良く、今回の新作では更に線が絞り込まれている感じがした。
そして、なぜか伊藤存の作品とバーナード・リーチ、濱田庄司、河合寛次郎という民芸の作家たちをはじめ、あのルーシー・リーの器も4点競演している。陶芸と刺繍の作品が妙にマッチしているのが不思議。

箱庭っぽいガラスケースでの展示方法も良かった。
中に入っている、粘土細工の小さなオブジェ達も皆、伊藤の手によるもので、これが更に池のイメージ作りに効果を出している。

・≪人くらいの魚≫
最奥の池の横にある廊下に展示してある作品。ぶら下がって展示されている。
草魚は人の背丈くらいまで成長する魚だそう。この魚の中に入っている人を見つけることができるかな。

・≪草魚ライン≫≪草魚ライン2≫
伊藤が庭でもっとも気に入ったのは草魚。何度も繰り返し観察しているうちに、草を食べる草魚が同じラインを泳ぐことに気付いて、本作品の着想を得る。
ライン的には一番面白いし、分かりやすかった。

今回はかなり、伊藤存が作り出す糸のラインに目をこらさなければならない。
だまし絵ではないのだけれど、線の中から、徐々に浮かびあがって来るものが見えてくるか見えてこないか、問答しているようだった。

・≪コシカケ≫
絵の中のサルを発見できるか?

・≪ここの池に家鴨がいない≫
山荘の池に家鴨はいないが、この作品の中には・・・。

山荘の池に住む様々な生物との伊藤存との対話が作品に表現されている。
静かな対話をリーチらの器に描かれたモチーフと共に楽しめる。

作品を置いているスツールが黒田辰秋のものだったり、宝箱を見せてもらっているような気がした。
刺繍作品だけ展示されているより、陶芸作品との組み合わせで別の見方、感じ方をすることができる。

*チラシには今月末までの開催とあるが、好評により2月28日(日)まで会期が延長しています。

「モノ学・感覚価値研究会 展覧会」 京都大学総合博物館

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京都大学総合博物館で1月31日(日)まで、「モノ」の世界を多角的に考える展覧会が開催されている。
展覧会HPはこちら
主催は2006年に発足した「モノ学・感覚価値研究会」(代表・鎌田東二・京大教授)。

展覧会を見るまでは、内容がピンと来なかったが行ってみて納得。
本展では、同研究会のアート部会に参画したアーティスト(芸術家、工芸家、デザイナーなど)が、京都大学総合博物館所蔵品(岩石、鉱物、化石など)から「美しい」と感じる「物」を選び、そこから触発され、様々な素材を用いて作り出した作品を選ばれた所蔵品と合わせて展示するもの。

その制作と展示過程で、彼らが展示物「モノ」を多面的にとらえることを同研究会に参加する美学者、宗教学者、地質学者が関与し手助けしている。

なお、同研究会のアート部会は30数名のアート関係者が結集し、「混迷する時代の中、従来の西洋のアートや現代美術の価値概念と制度にとらわれることなく、日本の『モノ』という概念とこれにまつわる感覚価値を投じて、地球美術的価値を再発見すること」を目的としている。~京都造形芸術大学教授 原田憲一氏「モノ学・感覚価値研究会 展覧会の意義 地球が生み出した美と人間が生み出す美」より一部引用。

鏡リュウジが選んだ1659年発刊の占星術の本「CHIRISTIAN ASR|TROLOGY」と家具で作られた「HOROSCOPE TABLE」で天文学的アプローチが導入部分。
かと重えば、次には小紋型紙の道具よ大西宏志「KATAGAMI 64」2010年の映像作品がコラボされている。
大西は型紙と映像は似ているような気がすると言っている。
型紙とその型紙の映像作品は、確かにあまり違和感がなく見ることができた。不思議だった。

私が気になったのは原田憲一が選んだ鉱物群(所蔵品)と原田憲一×矢鳴裕美雄の「zone-plate photo」2009年(写真)とのコラボや狩野智宏「amorphous」2009年(ガラス造形)や坪 文子の樟脳、銀を使用したジュエリー「モノノアハレ」2009年、佐藤ミチヒロの木や画鋲、カシューを使用した同じくジュエリー「変わらないもの、変わりゆくもの」2009年。
化石とジュエリーとのコラボレーションは人間が手を加える前の自然鉱物そのものの美しさと、別の材料を使用して鉱物美の再生に取り組んだ各作家の作品とが一緒にガラスケースに置かれていた時、悠久の時の流れを感じずにはいられなかった。
鉱物の美しさの前に、屈服しなければならないのか?
冒頭の論文タイトル「地球が生み出した美と人間が生み出す美」の対比である。

しかし、両者はここで寄り添っていて違和感がなく感じられたことが不思議。

大舩真言が選んだのは化石のアンモナイト(これがかなり大きい!)。
岩絵具は文字通り岩石を砕いた粒子で作られた絵具で、岩石そのものが地球の産物であることを感じ、同時にその粒に自己投影し、作品は自己と粒子である「モノ」との対話の痕跡だと言っている。
普段何気なく目にする日本画も、そんな視点で見てみると、芸術作品は自然界が生み出した「モノ」とのコラボレーションの結果なのだ。無意識から意識的にその視点で作品を捉えて行く感覚が楽しくなってくる。

スティーブン・ギル「Stone Medicine」は石、鳥の羽根、木皮、水で<生け石と詩>の世界を作り出していた。
箱庭ではないのだが、作品解説はないので感じたままを書くと、とても美しい作品だった。タイトルから考えると石が薬であったことからインスパイアされた作品ではないかと思うが、ただ美しく並べるだけで韻律を奏でている。

岡田修二の作品も忘れられない。本展中もっとも「モノ」を意識させられた。
絵画作品「水辺51」2009年は対象を大きくクローズアップした作品、「物質の折目と魂の襞」はデッサンだが、こちらも強く語りかけられる何かがあった。

最奥のコーナーのガラスケースは空っぽ。
作品がない。
どこに?目を凝らすが何も見えない。
するとどこからともなく、音が聞こえてくる。不思議な音。何?耳をすますと消える。
最初ガラスに近づいたり離れると音がするのかと思い、いろいろ試してみたがそうではないことが分かった。
作品は「モノ音の気配」そのまんまのタイトル。
渡邉淳司×荒木優光×大西宏志、鎌田東二のコラボ作品。

音はどこから聞こえてくる?
場所はおよそ分かった。
でも、嫌な音ではない。不思議な音、懐かしい感じ。
ガラス、チベットのホラ貝、エフェクタが素材とあった。
静かに耳をすます時間、時間が止まったような、感覚が研ぎ澄まされたような。
不思議な体験だった。

最後に冒頭にご紹介した原田教授の文章から再び引用させていただいて、終りとする。
「46億年の歴史をもつ地球の特徴を一言で説明するなら『美しくなってきた星』だと言える。しかしこの地球は人間によって大きく傷つけられ、熱帯雨林の乱伐、海洋汚染など人間さえ消滅すれば地球は再び美しさを取り戻すはずという声も聞こえてくる。人間の特徴は意識的に美を表現できること。現代の危機を克服するには、生命史上初の芸術家として登場した人間がなぜ地球の美しさを損ねているのかについて、本展覧会を通じて考えるきっかけになることを望んでいる。」

地球が生み出した美と人間が生み出す美は決して相容れない訳ではないと私は感じた。
むしろ寄り添って行くべきなのではないか。
そんなことを考えさせ気付かせてくれた稀有な展覧会だった。
一人でも多くの方に感じ、考えていただく機会になればと思う。

*1月31日(日)まで開催中。 休館日:月曜日・火曜日 
開館時間:9:30~16:30
なお、京都大学総合博物館で同時開催されている「ツイン・タイム・トラベル イザベラ・バードの旅の世界写真展」も合わせてお楽しみいただけます。こちらは3月28日(日)まで。
入場料は二つ合わせて一般/400円。

<お詫び>
昨夜、記事をアップした際にタイトル(展覧会名・開催場所)を付け忘れました。追記して再アップしました。

「オラファー・エリアソン あなたが出会うとき」 金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館で開催中の「Olafur Eliasson Your chance encounter / オラファー・エリアソン - あなたが出会うとき」に行って来ました。
展覧会HP→こちら

kanazawa

展覧会出展作品は、オラファー・エリアソン公式HPにアップされています → http://www.olafureliasson.net/
オラファー・エリアソンは2005年11月~2006年3月5日に原美術館で日本初個展開催以来、2回目となる大規模展覧会が金沢21世紀美術館開館5周年記念展として開催されている。

原美術館「オラファー・エリアソン 影の光」を見て、こんなに自在に光を操る作家がいるのか驚いた。この時の鑑賞記事は残っていないが、展覧会には間違いなく行っている。
金沢21世紀美術館友の会の会員限定イベント「夕暮れおしゃべりツアー」に参加した。
本展担当学芸員の黒澤浩美氏による、イントロダクションがあった後、簡単な解説をいただきつつ作品鑑賞を参加者で楽しむというもの。

イントロダクションの内容を簡単に要約してみた。

・オラファー(以後オラファー・エリアソンの略称)は、開館前からSANAA設計の金沢21世紀美術館に関心を持ち、美術館側から世界中のアーティストに作品出展依頼を行った時、反応があり金沢まで建物を見に来た。
結果開館記念展に作品を出展し、同館との関係が構築された。

・オラファーの名を世界に知らしめるきっかけになったのは2003年のテート・モダン(ロンドン)のタービン・ホールで発表した《The Weather Project》である。タービンホールに特殊な蛍光灯を使用し夕陽を出現させた。
それ以後、人気アーティストとなったオラファーには作品依頼が相次ぎ多忙を極めたため、開館記念展以後に同館とのつながりがなかなかできなかったが、2007年にサンフランシスコ近代美術館が立ち上げた展覧会《Take your time》(これまでの集大成となる内容)はMOMA、P.S.1コンテンポラリー・アート・センター(NY)、シドニー現代美術館に巡回(シドニー展は4月10日まで開催中)し、作家として重要な次の作品発表の場に金沢21世紀美術館を選んだ。

元々SANAAの建物に強い関心を持っていたこと、同館開館5周年記念のタイミングとマッチし黒澤氏曰く、お見合いが成立したとのこと。
しかし、ビッグなお見合いだ~。

・本展は美術館建物を活かすということを最大限に意識した内容となっていることが重要。

・オラファーからの強い申し出により、キャプションは一切なし、鑑賞順序も不要、作品解説はもちろんのこと、タイトルでさえ展示室には出していない。
鑑賞者が自身の感じるまま作品を楽しみ、遊び、そこから何かを感じ取ってくれればそれで良い。
作品解説ツアーも学芸員の立場上、やらざるを得ないだろうが、極力作品説明をするのでなく、鑑賞者と作品をテーマに対話、感想を拾って欲しい(オラファー談)。

・オラファーは現在ベルリンとコペンハーゲンに在住しているが、巨大なスタジオ(5階建て)がベルリンにあり制作活動の拠点となっている。

本展では、2作品を除き全て本展のために、建物に合わせて作品制作が行われている。全展示作品中19点のうち17点が新作であることも見逃せない。更に、この展覧会は世界のどこにも巡回せず、金沢21世紀美術館だけの開催。
これを見ずして何とするという内容であることは間違いない。

特に印象的な作品について、解説でなく私が感じたままを書いておく。

・《あなたが出会うとき》2009年
黒澤氏曰く、一番最初にこのタイトル名とそれに相応しい内容の作品があることは重要。
ツアーが始まる前に、先に展覧会を見ておいたのだが、その時室内には私と監視係の方だけだった。
私にはこの作品が夜から朝を迎える様子のように感じた。1日の始まり。
闇から光が徐々に現れてくる。
白い壁が、強い照明ライトによってより白く見える。
ここでは様々な鑑賞方法を探って欲しい。光の中に飛び込んで影で遊んでも良し、離れて光の動きを見ても良し。

・《スターブリック》2009年
多面体ライトの集積。オラファーの関心のひとつに多面体が自然界にあるとはどういうことか、それを反映させた作品。増殖する細胞のように見えた。

・《微光の水平線》2009年
安藤忠雄の光の協会のようなわずかなスリットから差し込む光を美しく感じさせる作品なのだが、あいにく私が到着したのは薄暮。光の射し込みはあまり感じられなかったが、オラファーの公式Webでその素晴らしい様子を見ることができる。天気の良い朝がベスト鑑賞タイミングらしい。

・《ゆっくり動く色のある影》2009年
これは楽しい。もう体験してもらうしか楽しむ方法はない。自分が動けば動くほど、そして鑑賞者が多いほど楽しい空間。お子様連れなら、一層楽しめるかもしれない。
こんなに美しい影ってあるんだなと思った。

・《見えないものが見えてくる》2009年
本展のMyベスト3のひとつ。好きだなぁこの作品。まっすぐにのびる白い一直線の光の束が霧の粒子を浮かびあがらせる。原美の作品にちょっとだけ近いかも。
展示空間が広いので、作品がより大きくダイナミックになっている。
まさに見えないものが見えてくるのだった。
オラファーの作品タイトルには作家の重要な意図があるが、作家意図よりも鑑賞者が自由に感じることほど大切なことはないとオラファーは考えているのだった。

・《ワナビ》1991年
他者を観察する方が楽しいかもしれない。あなたはスポットライトが目の前に用意されていたらどうしますか?そう問われているような気がした。

・《動きが決める物のかたち》(まもなく)(いま)(それから)
強いストロボライトを使用した作品なので、長時間見続けることは難しいが、美しさは相当のもの。目の前に繰り広げられていた光景が今も自分の記憶の隅でチカチカと点滅している。美しいオブジェはプラスチックが材料とは思えない。

・《水の彩るあなたの水平線》2009年
いや、これはもう言葉を失う。全員押し黙ってしまうような空間だった。仕掛けは至極簡単かもしれないけれど、これを作ったオラファーは天才でしょう。
色のスペクタクルを二重、三重に楽しめる傑作。Myベスト3のひとつ。

・《あなたが創りだす空気の色地図》2009年
しかし、おしゃれな作品名。色の森だと思った。展覧会チラシの表に採用されているのがこの作品だと思う。
夢の中にいるようだった。
光は赤、緑、青(RGB)の三原色からなっているが、その三原色を空間で表現。でも、そんなこともうどうでもいいような感じがした。むしろ何も知らずに、ただ色があふれた霧の森を楽しめば良いのだ。

・《色のある影絵芝居》2009年
こちらも鑑賞者が増えれば増えるほど楽しめる。というか1人だけだとちっとも面白くない。
この展覧会、普通と違って混んでいればいるほど楽しいかもしれない。もちろん限界はあるけど。

・《アイ・アクティヴィティ・ライン》2009年
建物の長さや空間を色のスペクトラムによって見せる作品。全部で317枚、全て微妙に色が違う。どこからが赤、どこからが緑?複数人で鑑賞するとき、互いの意見を交換すると見え方が人によって違うことが分かる。

ガイドツアーに参加したけれど、これは参加しない方が素直に楽しめるかも。1回目は何も聞かず自分の気持ちと完成に従って、鑑賞し2回目以後はオラファーが作り出した装置や仕掛けを考えてみていくと更に楽しめると思う。

なお、展覧会図録はオラファーが制作中で完成時期、販売価額は未定。決定次第、美術館HPで案内される予定。

*3月22日(月)まで開催中。オススメ!

「珠玉の浮世絵コレクション 江戸の彩」(前期) 太田記念美術館

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太田記念美術館で開催中の同館30周年記念特別展「珠玉の浮世絵コレクション 江戸の彩」(前期)に行って来ました。
展覧会HPはこちら。(画像あり)
詳細は後日書きたいと思いますが、非常に見ごたえのある内容です。
前期展示は1月26日(火)までのため速報のみとりあえず。

<本展のみどころ>

1.浮世絵作家による肉筆画ファンは必見
通常同館の肉筆画コレクションは、1階の畳がひいてあるコーナーに毎回5点程が展示されているが、今回は1階フロア全てを肉筆画の展示にさいている。
前期後期を通じて、全48点!の展示は素晴らしいの一言に尽きる。
菱川師宣から始まり、月岡芳年、後期には小林清親の作品も出る。

前期は、鳥文斎栄之や窪俊満、磯田湖龍斎、古河師政、おなじみ北斎の名品を堪能。

2.初期浮世絵から幕末近代までの名品多数
特に注目すべきは幕末から近代にかけての明治期の浮世絵作家作品。
橋口五葉、名取春仙、尾形月耕、小早川清らの大正から昭和までの作品を網羅。

もちろん、歌麿、北斎、春信、清長、国貞、国芳、広重などお馴染の作家の名品も多数展示されているのでご安心を!

3.版本の世界
個人的には版本もツボであった。
菱川師宣の「新板 団扇画様集」など過去に見た記憶がない。
歌川豊国の「役者相貌鏡」も面白いし、何度見ても素敵な喜多川歌麿「潮干のつと」なども楽しめる。

まずは、なかなか他所では見られない肉筆画コレクション目当てに、是非ともお出かけください。
鎌倉国宝館の氏家コレクションの肉筆画に並ぶ逸品ぞろいです。

*前期は1月26日(火)まで、前期・後期と版本以外は全作品入れ替わります。
なお、後期は1月30日(土)~2月24日(水)まで。

「東京藝術大学先端芸術表現科 卒業/修了制作2010」 BankART Studio NYK

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BankART Studio NYK全館を使用して「東京藝術大学先端芸術表現科 卒業/修了制作2010」展が開催されている(1月24日まで)。
展覧会HPはこちら。作家紹介など情報多数。

ちょうと横浜美術館の束芋演劇イベント「トータルエクリプス」を見に行くために、みなとみらいへ行くことになっていたので、合わせて見て来た。
なお、この日はちょうど赤レンガ倉庫1号館を使用して横浜フォトフェスティバルも開催しており、そちらはトークリレーを2時間ほど拝聴し、その後BankARTに向かった。

元々旧日本郵船の倉庫だった建物をリノベーションしたスタジオはとにかくハードな空間でカッコイイ。
この場所だと半端な作品は負けてしまうし、作家の力量が見えやすい箱ではないだろうかと思っている。
結果、予想以上に楽しめる内容だった。

以下気になった作家さんをリストアップ。
東京藝大先端芸術表現科と言えば、日比野克彦氏、写真家の鈴木理策氏やエルメスギャラリーで個展開催中の小谷元彦氏など華麗なる指導陣、やはり恩師の影響を受けてるなと思う面もあった。

<修士生>
・下平千夏
輪ゴムを使用した空間を大きく使ったミクストメディア≪声の行方≫。
別の作品ですが、同じく輪ゴムを使用した作品≪線のなだらかな変異≫の画像はこちら

最初見た時、それが輪ゴムだと思わなかった。昨年越後妻有トリエンナーレで見たアントニー・ゴームリーの作品に似てるかなと感じたけれど、輪ゴムでこんなに美しい空間が作れるものなのかとラインの美しさに浸る。
シンプルだけど、それで十分という作品
元々多摩美術大学建築学科卒業後に東京藝大先端芸術表現科に入学、写真家の佐藤時啓(目黒美術館開催の炭鉱展での作品が印象深い)ゼミに在籍。

下平千夏の名前で検索すると、他にもいくつか作品画像が出てきてそちらもいい感じ。気になる作家さんNo.1.

・高橋あい
昨年11月23日まで開催されていた愛媛県の町立久万美術館「歸去來兮―久万再発見 旅人のレンズ」展(若手女性写真家3名による写真展)に出品された写真作品「ヤマ ムラ ノラ」2009年を展示。
人物も良し、風景も良し。野口里佳さんの初期作品「フジヤマ」を彷彿させる写真あり。
一目で気に入ってしまった。「歸去來兮―久万再発見 旅人のレンズ」展図録を本展受付で販売していたので、ついつい手が出た。装丁もこっていて、図録というより写真集として楽しめる。他の2名の写真家、萱原里砂、笹岡啓子の写真も美しい。

・文谷有佳里
彼女は現在、あいちアートの森・東栄町プロジェクトにも作品を出展している。
元々、愛知県立芸術大学音楽学部作曲専攻を卒業し、東京藝大先端芸術表現科大学院に入学。
作品は作曲した音楽ではなく、本人が既に日常の一部と語るドローイング作品。
ちょうど本人がまさに制作中というか、読書しながら紙の上で右手が勝手に動いてどんどんドローイングができて行く。それらは創作というより、これまたご本人によれば、手が無意識に近い感覚で線描を繰り出し、それが快感なのだとか。即興作曲ならぬ即興ドローイング。意図的でないにもかかわらず、完成されたドローイングは見事に何者かになっているのだ。作品タイトルは≪drawing 生きた眺める風景≫2009年。
今後は作曲の方に戻りたいとのことだった。

この他、明石雄(、勅使美千代(インスタレーション)、藤本涼(TWS本郷での写真作品に記憶あり)、上田尚宏(立体、インスタレーション)、金川晋吾(写真・映像)、花形愛音(写真)らの作品をマーク。

<学部生>
・木村泰平 立体 
記憶によると2点作品があったように思うが、勘違いか?大がかりな作品ともう一つは形が面白い立体人間彫刻だった。

・竹内千尋 立体
テントを使用した立体というよりインスタレーション。
テントの中というのは、なぜかワクワクさせられるものだが、中を覗くと様々なオブジェがあり、ある種独特の世界を構築していた。ミステリアスという表現が一番近いのか。

他には安藤瑠美(写真)、高野久美子の巨大ドローイングが目を引いた。

*1月24日(日)まで開催中。入場無料。

「日常/場違い」  神奈川県民ホールギャラリー

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神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「日常/場違い」に行って来ました。
展示風景の映像(You Tube)や出品作家プロフィールなどは、展覧会のHPや同展ブログで見ることができます。
展覧会HP → こちら
展覧会ブログ → こちら

会場となっている神奈川県民ホールギャラリーは今回初訪問ですが、あの伝説的な2007年「沈黙から 塩田千春展」の展示風景は印刷物で何回か拝見していた。
どんな場所なのか、それにしても展覧会の開催情報をあまり聞かないと思っていたら、12月16日から本展開催のチラシを入手。神奈川県民ホールギャラリーが、山下公園の目の前で、シルクセンターのすぐ近くと初めて知った。どうやら年に1回現代アート作家の展覧会を開催しているらしい。

開館35周年を記念する本展は、国内外で活躍し、日本初出品を含む6名の作家による「日常」という身近な素材をテーマやモチーフとしながら、違和感、異次元、大きな時間の流れを感じさせる作家たちが新作インスタレーションを制作、展示している。

出品作家は、雨宮庸介、泉太郎、木村太陽、久保田弘成、佐藤恵子、藤堂良門の6名。

6名のうち、雨宮庸介、泉太郎、木村太陽は映像作品がメインのインスタレーション作品。

私は木村太陽さんの作品に以前から関心があって、追っかけしているが、今回は≪Itchu UFO≫2009年(2個組)が一番良かったかな。
本展のチラシを大量に重ねて加工し、動物のような小さなオブジェを作っていた。
ただ、遊び心いっぱいなのは、≪巣アナ/Der Bau≫2009年の段ボール作品の中で映像を見て、はいずり回る作品。
一度にほぼ一人しか体験できないので、沢山の来客があったら相当待ち時間が長くなるのではないか。
幸い私が行った時は、先客が1名段ボール巣穴に入られ体験中なので、程なく自分の番が回って来て無事に鑑賞することができた。しかし、段ボールを靴を脱いで中を探検するという楽しさは記憶として残っているが、肝心の映像作品は4か所前後あったのに、内容の記憶がほぼ失われている。
タコが登場していた作品があったのだけ覚えているけど、私の記憶力の衰えが著しいのかはたまた、作品がいつもの木村さんらしくまぁかる~い内容だったからなのか、衝撃はなかったことだけは間違いない。

木村太陽作品は、何と1月23日会期末寸前の19日に更に3点も追加出展されているではないか。
私が行ったのは16日の土曜なので、この3点の新作はもちろん未見。それにしても5日間だけの展示って・・・粘るなぁ。見られなかったのは悔しいが仕方ない。

衝撃度で言えば、圧巻なのは佐藤恵子の作品。
1階と地下1階の広い吹き抜け空間(700㎡)全体を使った大掛かりなインスタレーション≪変容≫2009年である。
佐藤恵子は1957年生まれで現在オランダ在住の作家。イギリスのゴールドスミス美術大学で美術を専攻し、その後オランダのヤンバンエイク美術大学院にて美術専攻。
知らない作家さんだなぁと思いきや、今回が日本初の作品展示!

彼女の作品は型破りな日常である。
砂、腐葉土、木の幹、瓶の破片、コンピューターの部品、食器、大豆、米などの食材を使用し「生命と物質の循環」を示すインスタレーション。
とても言葉にすることはできないので、佐藤さんの作品を見に行くだけでも足を運ぶ価値はあるかもしれない。

このインスタレーション空間の中で、首藤康之、中村恩恵、青木尚哉の3名のダンサーによるダンス「時の庭」が世界初演されたそうだが、これは見たかったかもと展示を見てから思った。

場違いな感じなのは、久保田弘成(くぼたひろなり)の作品だろうか。
≪性神式≫2009年は、一瞬何だか分からなかった。
よく見れば、ガソリンスタンドにある「洗車機」をもとに電信柱のようなものが車の代わりに突っ込まれている。

屋外には旧東ドイツで聖像された自動車「トラバント」を使った大がかりな立体作品≪Berlin Hitoritabi≫2008年が展示されていて、実際に車を回転させる(体操の大車輪みたいに)パフォーマンスも行われた模様。

個人的に好感をもったのは藤堂良門の石の中にガラスを挟みこんだ彫刻群。
物言わぬ彫刻が、何かを訴えていた。
それにしてもガラスを石で挟みこんだだけなのに、なぜあんなにも美しいのだろうか。
材料には神奈川県の古い建築物で使用されていた古材も使用されていて、展示場所となる現地で時を感じさせるものを作品に使用することで時の流れを伝えようとしている。

*1月23日(土)10:00~18:00 入場は閉場の30分前まで。

「麗しのうつわ-日本やきもの名品選」 出光美術館

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出光美術館で開催中の「麗しのうつわ-日本やきもの名品選」を見て来ました。

やっぱり、出光美術館は素晴らしい展覧会をして下さるなぁと毎回思うのだけれど、今回も全く期待を裏切らない内容で満足してしまった。
作品の質の高さもさることながら、何よりも好きなのは作品解説や章単位、ポイントごとに出てくる解説パネルの文章たち。長すぎず短すぎず、しかもひとつ間違えば専門的になりすぎて難解になってしまいがちな解説を初心者にも分かるように噛み砕いて説明して下さる。

本展では、猿投(さなげ)、志野、織部、唐津、楽、京焼、伊万里、そして近代に及ぶ日本陶磁の名品を一堂に展示し、時を超えて人々を魅了した美の源泉を探るというもの。展覧会チラシの最後に書かれていた「古く麗しいうつわを振りかえり、感性と対話する時間をご堪能ください。」というのが、上手いなぁとまたしても感心してしまうのだった。
感性と対話する時間・・・確かに展覧会を見ている小1時間は、実際そんな気持ちにさせられた。

展覧会の構成は次の通り。
Ⅰ 京の美-艶やかなる宴
Ⅱ 幽玄の美-ゆれうごく、釉と肌
Ⅲ うるおいの美-磁器のまばゆさと彩り
Ⅳ いつくしむ美-掌中の茶碗

冒頭「京の美-艶やかなる宴」は野々村仁清の艶やかな京焼で幕を開く。
既に見た作品もいくつかあるが、≪色絵尺八香合≫や≪色絵熨斗文茶碗≫など、何度見てもじわじわ愛おしさがわく。
熨斗文の大胆なデザイン性など見ると、単に華麗なだけでないセンスの良さを感じるのだった。
≪色絵梅花紋四方香炉≫のてっぺんにいる小さな兎が実に愛らしい。

次は京のやきものと言えば、やはりこの人、尾形乾山が登場。
色絵角皿も何度も様々な展覧会で見ているが、今回は≪色絵定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿≫十二客に驚いた。
こんなの見たことないかも・・・。
乾山でも初期の作品とされていただろうか。
私が今まで見てきた角皿より絵付けが賑やかな印象。これをうるさいと感じるかどうかは人それぞれだと思う。
肝心なのは定家詠の十二ヶ月和歌に合わせた絵柄で、お皿で四季や和歌を詠むとは何とも風流なことこの上ない。

同じく角皿で目を奪われたものがある。≪色絵百人一種和歌角皿≫十客。こちらも百人一首の場面を角皿に描いたもので、各皿に盛りつけられた料理を食べて行くと徐々に更に描かれた絵が見えて来て、何の歌のお皿であるかを当てっこする風流人のお遊びにも使用できる。お皿でカルタとりなのだった。
食べて良し、愛でて良し。

やきものの展示としつつも、しっかり伝尾形光琳≪紅白梅図屏風≫左隻(2/14まで展示)や蒔絵硯箱、更には琳派の境抱一の≪紅白梅図屏風≫六曲一双(2/14まで展示)をしっかり展示して下さるのだから眼福極まりなし。
どっかり椅子に座って、抱一の≪紅白梅図屏風≫を堪能した。これも何度見ても良い。気に入った作品というものは何回見ても飽きることなどないと思う。

Ⅱ幽玄の美-ゆれうごく、釉と肌は、本展で私がもっともツボにはまったところ。
ここで、冒頭を飾っていたのは≪灰釉短頚壺≫奈良時代・猿投窯である。
猿投(さなげ)がどこにあるのかをご存知の方はどの程度おられるのだろうか?
答えは、愛知県豊田市で豊田市は広く、位置的には瀬戸市に近い場所である。

猿投窯は猿投山の西南に広がる低丘陵地に形成された日本最大級の古窯跡で、古墳時代から室町時代まで須恵器に始まるやきものが焼かれていたという(Wikipediaより引用)。
私は幼少の頃から、初詣だけでなく何か祈願する時には、猿投山にある猿投神社に通っていた。
霊験あらたかな感じを受ける神社だが、あの猿投に古窯があったとは、まるで知らなかった。
最初にそれを知ったのは、忘れもしない奈良国立博物館で猿投窯の古陶磁を見た時である。

本展冒頭に置かれていたのも奈良博で最初に見た猿投窯のやきものに勝るとも劣らない灰釉壺だった。
奈良時代のやきものが時を超えて残り、しかも土器でもなく桃山時代のやきものでもない、やきもの本来の素朴さと力強さを秘めつつ釉薬の美を見せる名品。
美術館の解説で初めて知ったが、元々やきものは金属器の形を写して展開した。「えっ、そうだったのか」まさに目からうろこが落ちるような驚きを覚え、比較できるように形のよく似ている≪金銅香水壺≫奈良時代を展示しているのが心憎いが、これがまた頭だけでなく目で見て分かる好例の展示。
このあたりが、出光美術館の凄い所なのである。

更に解説には香水壺に刻印された生命の樹すなわち生命の意図を、一筋の釉流れにより写し取ろうとしたのではないかと書かれていた。
深い、深すぎる・・・。
一筋の釉から生命の流れを表現しようと当時の陶工は考えたのだろうか。
ロマンを感じてしまうような解説だった。

猿投窯でKOされた私に、黄瀬戸、志野の名品が続く。
そして、唐津が現れ再び足を止める。
絵唐津でも桃山時代の古唐津の数々。う~ん。思わず唸ってしまった。
唐津焼も色々あるのだが、私が好きなのは陶肌が薄いベージュっぽい色をしたもの。
≪絵唐津柿文三耳壺≫桃山時代を筆頭に、≪絵唐津松文大皿≫、≪絵唐津葦文角形掛花生≫、≪絵唐津葦文四方口向付≫。。。

素晴らしい。もう感性との対話も飽和状態でアップアップ。
絵唐津の素晴らしい作品がこんなに・・・。ある所にはあるのだ。

この後、染付や鍋島、古九谷、柿右衛門など磁器が続くが、絵唐津が頭から離れない。
最終章は茶碗の名品を集め、初代長次郎から道入(ノンコウ)らの楽茶碗、織部や天目茶碗を楽しむが、やはり絵唐津が脳裏から離れず。
楽茶碗ではノンコウの≪黒楽茶碗 銘 此花≫、慶入≪黒楽不二茶碗 銘餘光≫、長次郎≪黒楽茶碗 銘 黒面翁≫。
しかし、これらの茶碗で実際にお茶をいただく、そこまでいかずとも手で触れらなければ、本当の茶碗の良さは分からないのかもしれない。
是真の対談で、山下裕二先生が楽家で長次郎の茶碗でお茶をいただいて、初めてその素晴らしさ精神を感じることができたと仰っておられたのだ。

絵唐津に話を戻す。
少し前に、私はとある古書店で新潮社とんぼの本シリーズ「唐津 やきものルネサンス」を購入した。

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どうも表紙の絵唐津が気になったのだった。
本展鑑賞後、早速自宅で同著を引っ張り出し、中身を見てみたら今自分が堪能して来た出光美術館の唐津焼の名品達がオールカラーで掲載されているではないか。
共著なのであるが、4名の執筆者のうちお一人が荒川正明氏(当時出光美術館の主任学芸員)だった。

そして、私が唐津焼に惹かれたのは忘れもしない世田谷美術館の「青山二郎の目」展、これが私にとって記念すべきやきものルネサンス展だった。
ここで見たぐい呑み「銘 虫歯」の衝撃は、今でも忘れられない。

しっかり本で復習をして、気持ちを落ち着かせ再訪しよう。あの唐津と猿投窯に会うために。

*3月22日(月・休)まで開催中。

「DOMANI・明日展 2009」 国立新美術館

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国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展 2009」を観て来ました。

今年度の出品作家は美術の様々な分野から以下の12名の作家が選抜されている。本展は、文化庁の在外研修制度(新進芸術家海外研修制度)により、海外派遣された若手芸術家の成果発表の場として1998年より毎年開催されているが、若手作家の発表の場としつつ、毎年ベテラン作家も混じっている。

<2009年度出品作家>
磯崎真理子(彫刻)、呉亜沙(洋画)、浅見貴子(絵画)、高野浩子(彫刻)、久保田繁雄(繊維造形)、栗本夏樹(漆造形)、伊庭靖子(絵画)、安田佐智種(写真)、吉田暁子(現代美術)、吉仲正直(絵画)、三田村光土里(ビデオ&インスタレーション)、藤原彩人(彫刻)

12名のうち明確に認識しているのは5名で、他の7名の方は過去に作品を拝見しているかもしれないが、お名前や作品に記憶がなかった。

今回印象に残った作家さんについて感想を残しておこうと思う。

・藤原 彩人(彫刻)
この方の作品が目的で見に行ったと言っても過言ではない。以前から気になっていた彫刻家で、彫刻マイブーム中であるため、今回はどんな作品を見せてくれるのだろうと思っていた。
あの広大な国立新美術館の展示空間を見事に使用した、≪Swimming Woman≫などの陶芸彫刻は壁面を泳ぐような天女が壁面を覆い、さながら天女に取り囲まれているかのような感覚さえ覚えた。

藤原氏の作品は小品で見るより、このような大作インスタレーションの方が、より作風を活かせるように思う。
これからも楽しみな作家さん。

・呉 亜紗(洋画)
この方の作品はあまりにかわいらしすぎて、ウサギキャラとか好みではないのだけれど、今回の作品や展示は非常によくできているなと感心した。
特に気に入ったのはNY滞在時に自分に宛てた手紙を絵巻物にした作品(全編英語)は良かったなぁ。現代アート作家で絵巻物を作られる方は過去記憶がない。しかも、中身まで読ませる力を醸し出す何かがあった。彼女の作品やキャラクターのうさぎは絵巻物にするとピタリとはまる。
平面の大きなキャンバスより絵本など手がけても良さそうだけれど、それではあまりにもこじんまりしてしまうかな。
他に立体作品がぶら下がっていたのも気に入った。彼女も自分に与えられたスペースを上手く使いきったている。

・高野浩子
この方は、知らない作家さん。とにかく大きな本棚のオブジェが目を引いた。テラコッタの彫像と本棚のオブジェは全く別の作品だったのだろうか?オブジェは別の作品とのセットで一つの作品だったと思うが、両者の関連性がよく分からず、わざわざタイトルを確かめた記憶がある。

他の方は簡潔に。
・伊庭靖子
大好きな作家さんだが、神奈川県立近美での昨年個展で見せた新作のクッションシリーズと染付シリーズの作品展示なので、新鮮味はない。

・磯崎真理子
この方はちょうど新年の美術館はじめで、最初に行った東近美工芸館の「現代工芸への視点 装飾の力」(1/31まで開催中)の和室空間を使用していた作家さんなので非常に記憶に新しい。
しかも、工芸館で展示されていた作品と同じ赤の彫刻シリーズ。あの時は、鑑賞地点から作品まで距離があったため、作品の材質感まで分からなかったけれど、今回は近寄って見ることができたので、ザラザラしたのやツルツルなのと質感が作品によって異なっていることを確かめることができた。

・浅見貴子
こちらも昨年5月に練馬区立美術館で開催された「現代の水墨画2009 水墨表現の現在地点」展で拝見した作品と同じだったのではないか。

・安田佐智種
尖端恐怖症の方が安田氏の写真コーナーに入ったら、さぞやおののくだろう。本展チラシ表面に採用されている鉛筆のような尖った者たちはビル群。
これは東京なのだろう。作品自体よりどうやって作品化したのかに興味がわいた。

・栗本夏樹
他の方の作品はみなほぼ記憶があるのだが、この方の漆作品はどうしても思い出せない。
漆作品が展示されていた記憶はあるのだけれど、他のブロガーの皆様が書かれている車にまるで覚えがないのはなぜだろう?見落としたのだろうか。気になっている。

*1月24日(日)まで開催中

「特別公開 相原求一朗 <北の十名山>」 川越市立美術館 

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昨日アップした川越市立美術館の「色彩の詩人 脇田和」展の続編です。

同美術館1階の「相原求一朗記念室」と常設展示室で今回素晴らしい展示に出会った。
北海道の相原求一朗美術館所蔵の原求一郎 <北の十名山>を特別公開(3月28日まで)している。

相原求一朗は1918年に川越市の豪商の家に生まれ、家業に従事しつつ独学で絵画を学ぶが、太平洋戦争後に猪熊弦一郎に師事し、本格的に画家の道を志し、1950年に新制作協会に初入選を果たす。
相原のたどった足跡については、2007年に日本橋高島屋で開催された「相原求一朗展」をご覧になられた「Art&Bell by Tora」様によるブログ「日本美術散歩」HPそして「気ままにARTSダイアリー」様が詳細に書いておられるので、ぜひご参照ください。

2007年の「相原求一朗展」でも公開されていた相原の後期傑作「北の十名山」シリーズを今回私は初めて観ることができた。
同シリーズは、北海道のお菓子会社として有名な「六花亭」の織田豊社長で、北の大地にこだわる同社が北海道の名山をまとめて描いて貰おうということになった。
大作十点は画家の年齢的なこともあり、当初容易に承諾されなかったようだ。しかし、熟慮の末、引きうけた相原求一朗は、個々の作品としての質だけでなく十作を一堂に並べての表現を目指した。

相原求一朗の作品は川越市立美術館1階にある記念室で数回拝見しているが、今回は記念室一室を使用し、一挙に十点を公開するとともに、地下1階の常設展示室で北海道の相原求一朗美術館所蔵作品と川越市立美術館所蔵作品を一緒に展示して、ちょっとした相原求一朗展となっている。1階と地下1階合わせて全38点が公開!

「北の十名山」シリーズの素晴らしさは、図録や印刷物などではとても分かり得ない。本画ならではの圧倒的な力が観る側にひしひしと伝わってくる。
この部屋に入って北海道の山々を観ていると、気持ちが清々しくなるような清廉な気持ちとずっとこの山を背景とした広大な景色を眺めていたくなる。
特に私のお気に入りは≪春宵 斜里岳≫1995年、≪春の丘陵 トムラウシ山≫1995年、≪早暁 十勝岳≫1998年、≪山峡新緑 羊蹄山≫1995年。

「北の十名山」は「日本百名山」に選定された北海道の9峰が題材となっているが、相原の提案で、阿寒岳を雄阿寒岳・雌阿寒岳の2峰描いて全10点としたそうである。
今回は全10点を掲載したパンフレットをいただけるが、ぜひ大画面を眼前に鑑賞されることをお薦めしたい。
普段は北海道の帯広近くの「中札内美術村」(北海道河西郡中札内村栄東5線)の所蔵作品であるため、おいそれと見に行くことはできないのだ。

地下1階では、相原の油彩の名品とその下図になったと思われる素描作品が並べて展示されている。

とりわけ印象に残ったのは≪雪の教会 バレンジビル≫1979年(油彩)川越市立美術館蔵と≪ブラックの教会≫1978年(コンテ、パステル)相原求一朗美術館蔵の組み合わせ、≪原生林の中の二つの湖≫1988年(油彩)川越市立美術館所蔵と≪双湖台≫1968年(コンテ、パステル)・相原求一朗美術館の組み合わせだった。
これを逃すと、一緒に油彩と観られるのはいつなのだろうというような上手い取り合わせ。

素描作品では、ブラマンクのような力強さを感じる≪オンフルール≫1964年、≪ブラックの協会≫1978年、≪幸福駅≫1982年、≪芦別山麓≫1997年、≪狩勝平野≫1968年ことに≪幸福駅≫などを観ていたら、なぜだか泣きそうになった。

帰りに川越市立美術館所蔵の≪原生林の中の二つの湖≫のポストカードを購入しようかと思ったが、先程観た実作品の素晴らしさがまるで伝わって来ないのでやめた。

冬に観る北海道の山の数々にすっかり魅了されてしまった。
相原求一朗美術館にも行ってみたいが、こちらはさすがに遠い。そして、私はまだ北海道に一度も行ったことはないのだった。

*3月28日まで開催中。オススメします!

「色彩の詩人 脇田和」展 川越市立美術館

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川越市立美術館で開催中の「色彩の詩人 脇田和」展に行って来ました。

脇田和は、1908年に東京で生まれ、15歳で渡欧17歳でベルリン国立美術学校に入学し人体デッサンや版画の技術を学ぶ。この時代に15歳で渡欧ということは素封家のお生まれなのだろうか。
1930年に帰国し、小磯良平、猪熊源一郎ら新制作派協会(現・新制作教会)を創立。戦後はヴェネチア・ビエンナーレなどの国際展や東京藝術大学教授を勤め、97歳で亡くなるまで豊かな色彩感覚が画面に響く作品を残している。

脇田和の名前や作品を知ったのはいつだったろう。
まだ割と最近、多分童画展か何かで拝見したのではなかったか。
今回の展覧会では、脇田美術館の作品を中心にベルリン留学時代の作品を含む初期から晩年までの油彩代表作約50点、素描、版画など約10点により脇田和の世界を紹介するもの。

作品は年代順に並んでいたのだが、順序が分かりづらかったため、真ん中を一番最後にみることになってしまった。
スペースがそれほどないため、やむを得ないのだろうが、もう少し分かりやすい案内表示をして欲しい。

初期の作品は、ベルリン留学なのだけれど、マティスに似ていると思った。そうかと思えば、ピカソっぽい対象をデフォルメする手法も既に現れていて、後の作品では更にそのデフォルメが進み、具象絵画は抽象に近い作風になっていく。
同じ世田谷に住んでいた猪熊弦一郎もマティスやピカソに影響を受けた日本洋画家の一人だけれど、脇田和も渡欧中に彼らの作品に感化されたのだろうか。
特に≪女≫1937年世田谷美術館蔵や≪二人≫1942年はマティス風に見えた。
初期作品では≪婦人像≫1930年東京藝術大学の青の背景に力強い線で描かれた女性の顔の作品が強く印象に残る。
同じく≪金太郎≫1952年脇田美術館も黄色の身体の金太郎の腹巻?は黒で、強い色彩で迫って来る。

かと思えば、≪子供と兎と花≫1946年脇田美術館は、童画の世界観が色濃く現れていて、「私が最初に脇田和っていいなぁと思ったのは、このやさしい色合いの作風だったことを思い出した。

作品リストに好きな作品をチェックするのだけれど、気付けば半分以上の作品にチェックが付いている。
私は猪熊弦一郎がかなり以前から好きだったけれど、猪熊作品より色の使い方は優しく上手い。
この色彩を見ていると、パウル・クレーを思い出す。
特に気になったのは、赤色ベースの作品と緑色ベースの作品。
赤を代表するのは≪亜熱帯の漂流物≫1983年脇田美術館、≪暖帯≫1985年脇田美術館。
緑を代表するのは≪緑雨時≫1981年資生堂アートハウス、≪おやすみさん≫脇田美術館だろうか。

1980年以後は油彩にコラージュ技法を取り入れ、独特のマチエールに更に拍車がかかる。
描かれているものはクレーのようにはっきりとした形態を取らず、デフォルメされ見ていると色のリズムに取り込まれるような感覚が起こって来る。色といっても、先日拝見した絹谷幸二氏の作品とは異なり、強い原色をそのまま使うというのではなく、淡い色がベースで部分的に黒や褐色、原色を使用することで曖昧さを緩和している。

モチーフでは鳥を描いた作品が多い。作品名に「鳥」が入っている作品は11点ある。

一番好きな作品は≪移り香≫1993年脇田美術館、他には≪画房夢想曲≫2000年脇田美術館、≪燃える楽譜≫1987年、≪一つ咲く花≫1996年。

版画作品は、油彩で見せる色彩がなく1920年代制作の木版とアクアチント、メゾチント1975年の4点が紹介されているが、こちらではベルリンでの教育の影響をより感じる。ちょっとドイツ表現主義作家の版画作品風なのだ。

素描やスケッチブックもあり、脇田作品を知るには満足できる内容だった。
一度、軽井沢の脇田美術館にも行ってみたい。

<関連イベント>
■講演会「脇田和の素顔(仮題)」
2月20日(土) 14:00~15:30
講師:脇田智 脇田美術館理事長
申込先着80名、参加費無料
申込/1月17日(日)9:00から電話・ファクスにて川越市立美術館まで。

■担当学芸員によるギャラリートーク
2月13日(土)、3月7日(日) 14:00~
参加費無料(要観覧券) 申込不要


なお、同時開催中の特別公開「相原求一郎<北の十名山>」相原求一郎美術館所蔵も素晴らしかった。内容については次回の記事にて。

*3月14日(日)まで開催中。

「没後50年 北大路魯山人展」 日本橋高島屋・滋賀県立陶芸の森

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日本橋高島屋で18日(月)まで開催中の「没後50年 北大路魯山人展」に行って来ました。

実はこの展覧会、昨年の12月に滋賀県立陶芸の森で既に拝見済みだったが、高島屋カード会員で無料入場券があったのとポルトガルから約57年ぶりに里帰りする壁画「桜」と「富士」が高島屋だけで公開されるというので足を運んだ。

壁画以外は同内容の展覧会なのだが、滋賀県陶芸の森と日本橋高島屋では、展示順序、展示方法も全く違っていたので、別の意味で楽しめた。
私個人としては、日本橋高島屋での展示方法が好み。
高島屋では、書と器とをなるべく組み合わせで、おもてなし感覚で展示していたのに対し、滋賀県では書は書、絵画は絵画、やきものはやきもので種類別、時代別だった。
本来は書や絵を愛でつつ、美味しい料理をそれに合った器でいただくというのが魯山人の理想ではなかったのか。

「星岡茶寮」で会員を最高の料理でもてなした雰囲気がより伝わって来たのは高島屋の方。ないのは残念ながら美味しい料理だけ。懐石「辻留」の料理が盛り付けられた写真が貼られていたが、実際に器を器として使用していた京都の何必館の魯山人作品の展示(別の展覧会)はやはり上手かったなと思う。ガラスケースにも入っていなかったし。

ただ、各種の資料、例えば星岡茶寮での女給募集の広告などの扱いは滋賀の方が上手かったし、解説がしっかりしていたように記憶している。
作品リストはどちらでも用意されていなかった。

以前も書いたけれど、魯山人は器より書の方により関心がある。
魯山人は様々な書法を研究したが、最後にたどり着いたのは良寛だったというのが非常に印象的。
良寛の書を最良とし、これを手本として自信の書を確立。

私の目にとまったものの多くは濡額や刻字扁額で、加賀地方の旅館「白銀屋」のものなど、いいなぁとつくづく思った。
やきものは、昨年春に岐阜市歴史博物館「魯山人の宇宙」展+常設コーナーでの特集で良い物をいくつも見ていた上に、夏には前述の何必館・京都現代美術館で「生活の中の美 北大路魯山人展」でも素敵な器と展示を楽しんでいたので、再会といった感じだった。

目玉の壁画は最後に待っていた。
元々当時パナマ船籍のアンドレ・ディロン号の客室を飾っていたもので「桜」は幅約4m、「富士」は幅約2mと、展覧会チラシによれば生涯随一の大作で、完成後、日本橋高島屋に展示された後、日本を離れ、最終的にポルトガルにたどり着いたもの。日本橋高島屋に展示されていたということから、壁画は高島屋だけでの公開となったのだろう。

「桜」は白蝶貝を金箔地にはめこみ花をかたどっていて、絵画というより工芸作品に近い。
対して、「富士」は即興的な絵画という感じだった。

*1月18日(月)まで開催中。
壁画付の展覧会は下記へ巡回します。
2月24日~3月8日 JR名古屋高島屋

「自宅から美術館へ 田中恒子コレクション展」 和歌山県立近代美術館の図録発売中!

2009年年9月8日(火)~11月8日(日)まで和歌山県立近代美術館で開催されていた「自宅から美術館へ 田中恒子コレクション展」の図録(以下)が届いた。

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(ご参考)展覧会過去ログ http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-855.html

今回は完成見本もないまま、展覧会終了後にやはり図録で田中恒子氏のコレクション形成過程やあの大量の作品群などを再度見てみたいと思い、電話で予約依頼をした。

予定より完成が遅れてどうなったんだろうと思っていた所、完成したという案内が届き早速代金を美術館で指定された販売先の株式会社ノマルへ振込、本日自宅に送付されてきた。
早速中を開封してみたら、サイズはA5(A4の半分)サイズで全80頁の両面印刷、しかもジャバラ折のかつて見たことのない図録になっていた!

株式会社ノマルからの送り状には以下のような記載があったのでご紹介(一部抜粋)。
「この度のカタログでは、田中恒子氏のたっての要望により、全80頁のジャバラ折という、印刷・製本において例をみない形態がとられました。全体を広げると1.8mという、和歌山県立近代美術館においても過去に例のない装丁となっております。手作り本ならではの装丁をお楽しみいただければ幸いです。」

図録掲載内容は次の通り。

Side A
ごあいさつ  雪山行二 (和歌山県立近代美術館 館長)
変幻自在の現代美術に魅入られて20年  田中恒子
田中恒子のあゆみ
自宅風景 自宅から現代美術と一緒に暮らす (カラー写真による紹介)
展示風景 美術館へ田中恒子コレクション展 (同上)
田中さんへ 作家からのコメント (出品作家128人中、約50名の作家からのコメントを掲載)

Side B (Aの裏面)
「暮らす」という基準-田中恒子コレクションの形成  奥村泰彦 (和歌山県立近代美術館 学芸員)
田中恒子コレクション 作品目録 
(モノクロ写真と作家名、作家生没年、作家解説、作品番号、作品名、制作年、寸法、技法・素材を表記)

この内容で送料込で2500円はお値打ち!と思った。
普通の書籍として販売されたら、とてもこのお値段では購入できないだろう。
ジャバラ折の糊しろ部分はもしや手作業?
作品目録の写真がカラーだったらもっと良かったと思ったけれど、カラーにしたらこのお値段でおさまらなかったのではと思えば納得できる。

更に好印象だったのは、同展覧会関連の新聞掲載記事(京都新聞、朝日(夕)、日経、毎日(夕)のコピーが3枚同封されていたこと。
こういう気配りがとても嬉しい。

田中氏のコレクションは先日、和歌山県立近代美術館に正式に寄贈されることが決定したと報道されたばかり。⇒こちら。

本展開催前から寄贈する意思は伝えられていて、展覧会タイトル通りコレクションは「自宅から美術館へ」移動することになったのだと知った。更にこの記事を書くにあたり調べていたら、田中氏は「美術館にアートを贈る会」の副理事長もされているようだ。同会HPに田中氏へのインタビュー(2008年10月19日時点)も掲載されている。→ こちら

田中氏や担当学芸員の方の文章は、これからじっくり読ませていただく。
恐らく、この図録は早期に完売してしまう気がする。
和歌山まで行けなかった方も、ぜひこの図録をお手元に取り寄せ、そのコレクションや住まいとアート作品との関わり方などをじっくりご覧いただけたらと思う。

■図録取扱先  *和歌山県立近代美術館ではありませんので、ご注意ください。
株式会社ノマル
TEL 06-6964-2323 FAX 06-6967-3042
担当 中村・山田

「いけばな 歴史を彩る日本の美」 江戸東京博物館

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江戸東京博物館で開催中の「いけばな 歴史を彩る日本の美」に行って来ました。

すご~くざっくばらんに言ってしまえば、いけばなの歴史をたどる展覧会。美術展というより歴史やいけばながお好きな方なら間違いなく楽しめると思う内容だった。

下記展覧会構成を見ていただければ、それだけでおよその展覧会イメージはつかめるのではないか。
プロローグ いけばなの源流
第1章 いけばなの成立
第2章 豪華になるいけばな
第3章 流派の誕生といけばな大流行
第4章 はなの器
エピローグ いけばなの近現代と広がり

今では日常何気なくしている投げ入れも、源をたどれば仏に供える供花から始まった。年代的には15世紀の室町時代の京都で発生し、16世紀に確立したと解説パネルに記載されていた。いけばなの成立に関わる歴史を私は本展で初めて知り、意識することができ、それだけで足を運んだ甲斐はあったというもの。

確かに第1章で展示されていた室町時代の様々な花伝書や≪立花図屏風≫(華道家元池坊総務所蔵・江戸時代)などの図を見ると、現代の供花に近いものが紹介されている。
この頃、ただの供花が鑑賞用としての立花へと発展していったそうだ。そう思うと、室町時代というのは歴史上の派手さはないが(日本史を習っていた時、室町時代は地味だと思っていたのは私だけ?)様々な文化の発生時点として非常に文化的に重要な時代なのだと実感した。
そして、その背景に足利義政をはじめとする室町文化の担い手の存在を忘れてはならないのだ。
ということから、足利義政を紹介する映像が第1章では流れていた。

展示品の中では≪文阿弥花伝書≫(鹿王院蔵)に「花をたしなむことで現世を楽しみ来世で救われる」と仏教観につながるようないけばなの心得が記載されていたことが特に印象深い。
来世で救われるかどうかまでは分からないが、「花をたしなむことで現世を楽しむ」という言葉は現代にも通じる。

第2章で江戸時代前期に武家屋敷で儀礼の飾りとして立花が取り入れられている様子を紹介。
ここで、凄いのは安土桃山時代(1594年)に豊臣秀吉の前田邸へ御成りの際に、池坊専好(初代)が招かれて立てた花をCGで再現した映像があったこと。
実際に現在に遺されている≪池坊専好立花図≫華道家元池坊総務所や殊院蔵のもの、≪池坊専好立花図屏風≫野村美術館蔵などからも、もちろん当時の立花の様子はわかるのだが、このCGは見ていて面白かったし、邸に対してその立花がどれほど大きいものだったかというサイズが理解できたのが収穫。
最近のホテルやお正月に東博本館に展示されていたいけばなより、ずっと大きくてダイナミックだった。

池坊専好(初代)は僧侶だったというのも恥ずかしながら今回初めて知った。

第3章では公家や武家に広まった「立花」の流行がいよいよ町人層にまで及び展開していく様子を紹介している。
第3章で、何より興味深かったのは、江戸時代前期~中期には「立花」が男子のたしなみとされていたことである。
今でこそ、いけばなは男性より女性のたしなみとされるのが一般的(除く職業華道家)だが、そもそも男子が教養の一環として「立花」を学んでいる書物≪男重宝記≫江戸東京博物館蔵などが展示されているのが目を引く。

その後、中期以後複雑な立花より手軽に楽しめる「投入花」・「生花」が人気を集め、ついに女性のたしなみとして今度は≪女重宝記≫京都文化博物館蔵などで「生花」のノウハウ本が発刊されているのが実に楽しい。

また、庶民の文化を語るこの上ない材料である浮世絵にもいけばなの流行は描かれている。何点も関連する浮世絵が展示されていた中で、ものすごく発色や状態が良い鈴木春信の1枚≪浮世絵美人寄花 南の方 松坂屋内 野風 藤≫個人蔵があったのに驚く。
また、≪青楼美人合姿鏡 巻之一・二≫西尾市岩瀬文庫からは、江戸後期に遊女にとってもいけばながたしなみのひとつとなっている様子が伺われる。

第4章では視点を一気に花器へ向け、名品を紹介する。
私のお気に入りは、≪砂張舟花入 銘淡路屋船≫野村美術館蔵と野々村仁清の「色絵瓔珞文花生」仁和寺蔵。
前者は天下の三舟といわれる花器で、これがインドネシアの祭器だったとは、そしてそれを花器に見立てたあたりが心憎い。
仁清のらっぱ型の花器は今回初めてみたが、なるほど重要文化財もむべなるかなといった仁清らしい色絵が素敵だった。

エピローグでは明治から大正期のいけばなの展開を当時の資料で紹介。
ここでは、ジョサイア・コンドルが日本のいけばなを初めて世界に紹介したとされる書物≪The Flower of Japan and The art of floral Arrangement≫1891年が印象的だった。やはり、コンドルの著作は一度読んでみたい。

上記コンドル著書はじめ、展示作品の一部はブログ「フクヘン」他で紹介されています。⇒ 「フクヘン」はこちら

展覧会を見終わったら、お部屋に生花を置きたくなった。東京に来てからお花を買うことってなくなったなぁ。私自身のの生活文化の貧しさをつくづく感じた。

*1月17日(日)と会期終了はまもなく。お見逃しなく。

Nicolas Buffe "La Tour" ニコラ・ビュフ 「タワワップ」 MEGUMI OGITA GALLERY

あの銀座一等地(エルメス裏手)にあった一坪?のMEGUMI OGITA GALLERYが、銀座二丁目に移転!
これまでの一坪ギャラリースペースは「Showcase」という名でそのまま残して、こちらでも展示を1月22日から予定しているが、そちらはさておき、移転した新しいギャラリーのオープニングに行って来ました。

これが驚くほど広い!
前のスペースに一度でも行ったことがある方であれば、仰天するのではなかろうか。
しかも、オープニングを飾る展覧会は同ギャラリーでの個展開催は初めてとなるニコラ・ビュフで、その空間全体を使用した壁面ドローイングは圧巻。ドローイングは一部天井までも凌駕していた。
普段はドアで隠されている階段下のデッドスペースにまでドローイングは進出し、ちょっとした探検気分が味わえる。

まずはギャラリーの展示風景を一部撮影して来たので、画像をご覧ください(ギャラリーの許可を得て撮影しています)。
なお、「バビル2世」の版権使用につき許可を得ていらっしゃるそうです。

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・ポセイドン登場~。

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・ドラゴンもどきの怪獣がエッフェル塔を咥えて暴れる。

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・白の部分がペインティング作品。

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・ロデムとポセイドンの揃い踏み!

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・ポセイドンのフィギュアでなくオブジェ。もちろん作品。

ニコラ・ビュフの名前を記憶されている方もいらっしゃるかもしれない。
なぜなら、ニコラは2008年に東京都現代美術館で開催された展覧会「屋上庭園」に出展していた。
自分のブログで検索したら、展覧会の感想ログはあったもののどうやらニコラの作品は印象に残らなかったようで、載がないが、ぐぐってみたら、ブロガーの中でもしっかり書かれていらっしゃる方を発見。
ご存知「弐代目・青い日記帳」様がニコラ氏ご本人の解説画像付きで、「屋上庭園」での展示についてレポートされておられるではないですか。ぜひご参照ください。→ こちら

更にごくごく最近では、旧フランス大使館で1月31日まで開催されている「No Man's Land 」展の一番最初の入口にあったThe No Man's Land Gate(ノーマンズランドの門)を制作している。
さすがの私もこのe No Man's Land Gateはとても印象に残っていて、しっかりとあのゲートをくぐった記憶がある。
あれを作ったのがニコラだったのね~とやっと合点がいった。

ニコラ・ビュフは1978年パリに生まれフランス国立美術工芸学校、パリ国立美術学院で学び、現在は東京藝術大学の学生で、フランスと日本で活躍中のアーティスト。
作品や詳細は作家本人のHPをご覧ください。→ http://www.nicolasbuffe.com/  HPもニコラらしくカッコイイ!

新しいMEGUMI OGITA GALLERYは地下1階にあり、いわゆるコンクリート打ちっぱなし風の天井やギャラリーの雰囲気にはニコラ・ビュフのドローイングはマッチしていた。
「屋上庭園」での展示より更にドローイング面は広がり、このドローイングがなくなってしまった後のギャラリーの姿がまるで想像つかない。

ニコラ・ビュフは今回の展示で日本の漫画で横山光輝原作「バビル2世」をモチーフとして使用している。
私は原作の漫画を読んだことはないが、TVアニメとして放映されていた時(再放送だったのか?)からの大大大ファンで、特にポセイドンとロデムをこよなく愛し、私にも3つの僕がいれば・・・と幾度となく思ったのだ。
1人で、自分が主人公の浩一になった気分でいろんな妄想していたよなぁと、ニコラのドローイングを見ながら懐かしんでしまったのだ。
*バビル2世をご存知ない方 → こちら(Wikipediaに飛びます)。

ニコラに話を戻す。
モチーフはバビル2世のキャラが登場したりするが、ドローイングは完全にニコラ独自の世界でありオリジナルである。どうやらルネサンス様式の中のグロテスク紋様を取り入れてとあるが、見ていてもグロテスクな印象は受けなかった。むしろ、お城やドラゴンみたいな怪獣がエッフェル塔を咥えて暴れていたりと、とても楽しい。
漫画をモチーフにしてはいるが、決して漫画ではないのがニコラの良さではなかろうか。
日本の漫画文化への憧れを彼なりに昇華し、異国な雰囲気-敢えて言えばやはりどこかパリっぽい-を加え黒と白だけのモノクロ世界で圧倒する。

フランス語話せないけどと思いつつ、ニコラ本人にご挨拶したら彼は日本語堪能で、聞けば奥様が日本人とのこと。
「なぜバビル2世を知っているのか?」とお聞きしたら、「妻がバビル2世が好きで教えてくれた。」そう。
なるほど~、フランスでバビル2世が放映されている訳ではなかったのか。ちと残念。

ギャラリーとして作品を売るというより、お披露目に相応しい展示空間にしたかったのだろうなとオーナー荻田氏の意図を感じた。実際作品のプライスリストも目に付いた場所にはなく、そもそも壁画ドローイングは黒で塗られた壁に白いチョークで描かれているのだ。逆に、白の壁に黒で描く方が大変らしい。
これだけの大壁画をほぼ1週間毎晩終電時間まで描ききったニコラの力作。
次回はギャラリーにあった作品集で見た大きな立体作品を見てみたい。
ぜひ、多くの方に足を運んでいただきたいと思います。

*2月6日まで開催中。
MEGUMI OGITA GALLERY 日・月・祝日休郎 11:00~19:00
移転先:中央区銀座2-16-12 銀座大塚ビルB1 2-16-12 B1 Ginza Chuo-ku Tokyo 104-0061
Tel & Fax +81(0)3 3248-3405
最寄駅は新富町が一番近いかも。東銀座、銀座1丁目駅からだと徒歩5~6分程度
ナチュラルローソンのあるビルの地下1階です。

なお、これまでの銀座5丁目のギャラリーも引き続き継続するようです。1月22日(金)~2月6日(土)まで”three is a magic number"展が開催されます。

新春スペシャル対談 「真の実力派 柴田是真を応援する」 

zeshin

三井記念美術館で開催中の「柴田是真の漆×絵」展関連イベントの新春スペシャル対談 「真の実力派 柴田是真を応援する」に行って来ました。
■場所:三井別館1階会議室
■講演内容:第1部「基礎レクチャー」三井記念美術館 学芸員 小林祐子 約30分 作品スライド使用
      第2部スペシャル対談 「真の実力派・柴田是真を応援する」 約80分 作品スライド使用
      明治学院大学 教授 山下裕二氏
      武者小路千家第15代家元後嗣 千宗屋氏

簡単ですが、印象に残ったお話をかいつまんでまとめてみます。

第1部 
・戦後日本では忘れ去られてしまった柴田是真。しかし、江戸末期から明治24年に85才で亡くなるまで第1号の帝室技芸員にも任命される評価の高い画家であり蒔絵師だった。この展覧会は、一人でも多くの方に柴田是真を知ってもらいたいという気持ちから企画された。
<忘れられてしまった理由>
①絵画と漆芸のいずれにも活躍したことから、どちらの範疇からも結果的に外れてしまった。
②江戸と明治の時代の狭間に落ち込んだ(絵画と漆芸の狭間に落ち込んだのと同じ)。
③海外に作品が流出し、評価すべき作品が日本に少なくなってしまった。

・絵画の代表作品として挙げられるのは王子稲荷神社に奉納された≪鬼女図額面≫1840年、是真34歳の作品。
今回は損傷が激しいため、出展は見送られたが第2部で山下教授も「筆が走っている。これは別格」とお話されている。即興で描いたように見えるが、本図の下絵が残されており、計算し準備した結果の作品で、ここに是真の性格が見えてくる。
≪鬼女図額面≫は正月三が日と2月の午の日に見ることができるそうですが、山下教授が数年前に見に行った所、「あまりにぞんざいな扱いで驚いた」とのこと。

・是真作品の特徴
①だまし漆器 → これについては美術館HPや図録中にも掲載されているため略。
②粋で格調高いデザイン性 → ≪沢瀉と片喰図印籠≫エドソンコレクションで露の意匠に江戸ガラスを使用している例参照。 
・絵画形式の漆絵
漆独特の濃厚な色彩。漆絵では当時その性質上、赤、黄、緑、黒、褐色(茶)の5色しか出せなかったにも関わらず、あれだけ多様な表現をしている。
是真は、「海外の油絵は耐久性があるが、油を塗り直す必要がある。しかし漆は更に耐久性に優れているので、漆を使用して濃彩の絵画を描けば、素晴らしいものになるに違いない」と考えたという(これは図録の小林学芸員の文章にも掲載されている)。

第2部 対談
・山下教授と千氏のなれそめ。進行は山下教授主導で行われた。
お二人は、1998年千氏がまだ大学生であった頃、山下教授と大学の同級生の方に引きあわされる形で麻布十番にあるグリル満天星で初対面。以後、総武線で千葉市美へ向かおうとする千氏と駅のホームでばったり、そして縁は続いて、千氏は慶應大学文学部で美術史の大学院へ進み、27歳で山下教授の現在の勤務先である明治学院大学で講師をされることとなった。

・是真は千氏にとってどんな感想を持っているか?(山下教授からの問い)
是真作の茶道具は少ないが、茶の湯にも堪能な人だったことが分かる。

日本でより海外でよく作品を見る機会があった。
ここで、例として留学先のNYで昨年夏にメトロポリタン美術館の日本美術ギャラリーの最後のコーナーで「是真特集」が開催されていた話題が出る。千氏が撮影されたメトロポリタン美術館での展示の様子や作品がスライドで紹介されるが、絵画あり漆器ありでなかなか充実していた。
当然、是真ではなくNYではZESHINとして紹介され、千氏にとってのイメージはこのZESHINだとのこと。
メットでの展示を監修したのはオックスフォード大からインターンで派遣されていた蒔絵研究をされている日本人女性。

今回の展覧会を拝見して、明治にしっかりかぶっている画家だったのだと驚いた。
技術の高さをこれみよがしに出さず、ただしそれは奥ゆかしさからではなく、もう少しひねた感じ故だと思う。

対して山下教授。
自分にとっては元々ストライクゾーンに入っている作家であったが、ボールが来てもバットを振ったことはなかった。
(山下教授はきっちりした仕事をする作家がお好きなんだそうです。)
学生時代(1980年)に板橋区立美術館で、若き学芸員だった安村政信氏の監修だったが、以後単独で取り上げた展覧会は本展まで開催されていない。
研究書も数冊程度しか発行されておらず、この展覧会をきっかけに発刊された別冊太陽「柴田是真」(下図)まで出ていない状況。

太陽


・普通の人が見過ごしてしまうような所に超絶技巧を施す。
例:≪紫檀塗交合≫千氏と知遇のある古美術商が扱ってとある個人所蔵家からエドソンコレクションに入ったそうだが、逸話として、蓋表の干割れや鎹は敢えて付けたものと気付いたが、側面の金属のような鎹まで漆とは気付かず、傷があると安く購入したとか。プロまでだます超絶技巧であるが、説明したり言葉に出さない所が真の実力派たる所以。言葉にしたら野暮。

スライドで主に茶道具になっている作品を中心に対談は進む。
・≪瀬戸の意茶入≫個人蔵
竹製の茶入れを是真の技で瀬戸焼を模している作品。蓋については恐らく牙であろうが、はっきりしない。茶入れの重さはわずか42gでX線をとって、縦に筋が付いているためこれは本当に竹製だろうとした。
是真はものの見方まで変えてしまう。本当に本当にそうなのか、実はこれもトリックなのではないか?と疑問を次々に呼び起こす。
笑い話として、「是真の作品を美術館で見るのは老眼にとってきつい」とガラスケースを挟むと老眼鏡をしていると一番微妙な距離なんだそう。

茶入れの話題として、間もなく静嘉堂文庫美術館で公開される藤重の「付藻茄子、松本茄子」や根津美術館蔵蔵の小川破笠が楽茶碗+表面に京焼のテクスチャーを加えた漆芸茶碗などが紹介された。

是真は茶道を江戸で学んでいる。
対談とは関係ないが、私が現在読んでいる村松梢風「本朝画人伝」第4巻(中公文庫)の最終章で是真が登場し、茶道を習うに至るきっかけが書かれている。ある所で茶を出されたが作法を知らぬため、茶を口にせず帰り、早速すぐに茶道を習うことにしたと、負けん気の強さ、向学心の旺盛さが出ているエピソードだった。

・≪砂張漆盆≫エドソンコレクション
sahari

千氏の解説によると、砂張とは東南アジア、中国、朝鮮、でも使用されていて錫、鉛、銅を混ぜた合金のこと。歴史をさかのぼると正倉院御物にも「佐波理」として伝わっているが、成分組成は異なる。
ここで例として舟形の花器が登場。ちょうどこの対談の前に行った江戸東京博物館で野村美術館所蔵の「銘 淡路屋舟」(天下の三舟のひとつ)を見たばかりだったので、ラッキー。
元々舟型花入れはインドネシアの祭器として使用されていたものを見立てで茶の湯に取り入れられるようになった(千氏)。

・忘れられ方がひどい。-山下教授
亡くなって100年しか経過していないのに忘れられ方の進行度が早い(千氏)。
・≪富士田子浦蒔絵額≫福富太郎コレクション資料室
富士山

・山下教授による福富氏の購入経緯
福富氏の奥様が箪笥を買うために、デパートへ向かったが途中、東京美術倶楽部の正札会(東美の中でももっともランクの低い売り立て)でこの蒔絵額が福富氏の目に止まり、「箪笥をやめてこれを買え」ってことになった。
傷みがひどかったので、東京文化財研究所で修理して今回の出展にこぎつけた。
漆は乾燥に弱いのでひび割れる。この額は日本政府が始めて公式参加したウィーン万博に出品され「進歩賞杯」を受賞し、現地で売却されたが、昭和42年に日本に里帰りし、前述の経緯により福富氏の手に入ったもの。
山下教授曰く、「ウィーン万博出品作が東美の正札会に出るという事態がひどい。第1部でこの額を作る前に是真が富士山に登山し、火口付近のスケッチが東京藝大で所蔵されているが、この絵を見ていると登山がまるで役に立ってないのが疑問」。
明治の工芸はどんどん海外に流出している。特に七宝などがそう。

お二人の好きな是真の作品として≪竹葉文箱≫≪琵琶の実文箱≫(エドソンコレクション)、≪蜘蛛の巣図≫(板橋区立美術館)などが紹介された。

最後にまとめとして、是真は漆で描くのに向いている人だった。筆の走る人ではなく、きちんとした仕事をする人だった。例外として≪鬼女図≫はあるのだろう。だまし茶会をやりたい!(山下教授)。


是真のだまし漆器に関連して両氏が挙げた現代アート作家は、千氏が須田悦弘、山下教授はやはり前原冬樹。

「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」は三井記念美術館で2月7日まで開催中。
1月13日から展示替えで一部作品が入れ替わります。
なお、この展覧会は下記に巡回します。
<京都展>
4月3日~6月6日 相国寺承天閣美術館
<富山展>
6月25日~8月22日 富山県水墨美術館

「退任記念展 絹谷幸二 生命の軌跡 ars vita esta・vita ars esta」 東京藝術大学美術館

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東京藝術大学美術館で開催中の「退任記念展 絹谷幸二 生命の軌跡 ars vita esta・vita ars esta」に行って来ました。
展覧会の詳細はこちら

現代日本洋画界の重鎮、絹谷幸二の作品は折に付け見かけますが、ちょっと苦手な作家だった。
どこがと苦手かと問われると困るけれど、アクが強過ぎる所、グラフィカル的な所だろうか。

しかし、今回は藝大卒業制作2点から最新作まで平面、立体合わせて全50点で、見事にその画業を見せてくれた。
これで入場無料とは本当にありがたいと思ってしまった。
そのくらい、満足度は高い。
苦手だと思っていた作家を好きとはいかないまでも苦手ではなくなったには本当に嬉しい。
昨年夏の横尾忠則展も同様で、横尾さんは苦手だったのに脱帽した。今回もそれに近い。

絹谷幸二の平面作品、それも近作ばかりを私は見て来たのだろう。
今回、一番感銘を受けたのは、これまで見たことのない巨大な立体作品の数々と初期の作品やアフレスコ画である。
こんな面白い作品を制作されていたとは・・・恐れながら露知らず。

いきなり、エレベーターをおりると祝花の数々にまずは圧倒される。置ききれず展示会場にまで花が並んでいた。各界著名人ばかり。
そして、その花の香で満ちた空間で一番先に目に入るのが立体作品である。
・≪緑にしみる悲しみ≫1998年
・≪愛する者達・希望≫1997年
・≪Noi ami amo≫1998年
97年から98年にかけての立体作品が私は特に気に入った。
原色に満ち溢れ、立体化されると平面以上にこちらに訴えてくるものがある。訴えてくるものは、タイトルそのまんま。一番最初にあげた≪緑にしみる悲しみ≫は数ある立体作品の中でもやや異色かもしれない。もっともナチュラルでド派手な感じが無い。草か芝の上に青年が寝ころんでいる。彼の悲しみが芝にしみていくのか。

平面作品は奥に進むほど、古い作品になっている。
最奥に展示されているのが、東京藝大卒業制作の必須課題である自画像。遥か遠くを強いまなざしで見つめる姿は、古典的技法グラッシーで描かれたものらしい。
技法のことはよく分からないけれど、素人目で見ても他の作品とは違う技法だと分かる。
初期作品ではブルーが基調になった作品を手がけ、大橋賞や第34回独立賞を受賞する。
この時期の作品では≪諧音の詐術≫1966年が良かった。卒業制作の≪蒼の間隙≫1966年をより更に完成度が上がっている作品。
無駄なものは排除され、不気味な感じ。作者曰く、大学時代スキューバダイビングが好きでよく潜っていたそうで、これらのブルーの作品は海中をイメージして描いたようだ。

藝大卒業後、絹谷はベネツィアへアフレスコ画の研究をするため留学する。
このアフレスコ画の技法で描いた作品が3点出展されていて、これも本展の大きな見どころ。
≪アンセルモ氏の肖像≫1973年東京国立近代美術館蔵で1974年安井賞を受賞。
イタリア留学の成果。これまでの青のシリーズとは全く異なる画風の作品。この作品では赤を背景とした机、溶けてしまいそうなアンセルモ氏の顔がとりわけ印象深い。
この段階で、既にグラフィック的な感じを受け、以後の作品につながっていく技法、作風が見えてくる。

絹谷幸二は奈良市の出身。
そのため、作品全てに仏教観、無常を描くというテーマ性を感じた。
生命、愛、祈り、仏像、どの作品にも原色が溢れ、非常に力強い。そういえば、どことなく横尾さんの作品に似てるような気がしたのだけれど、私だけだろうか。

<関連企画>
■講演会 「想像力の鍛え方」
出演者:若尾文子(女優)、石井竜也(ミュージシャン)、大高 保二郎(早稲田大学文学学術院教授)
一柳 良雄(株式会社一柳アソシエイツ 代表取締役社長&CEO)、絹谷 幸二
日時:2010年1月11日(月・祝) 14:00-
会場:東京藝術大学 美術学部中央棟第一講義室定員:約160名(先着順)
聴講無料

■「作家による作品解説」
日時: 1月16日(土)、17日(日) 各日とも14:00-
集合場所: 東京藝術大学大学美術館 展示室3、4室(3階展示室)
参加無料

*1月19日(火)まで開催中。

第4回shiseido art egg 曽谷朝絵展 「鳴る色―色と音の間に―」 資生堂ギャラリー

shiseido

資生堂ギャラリーにて1月8日(金)から開催されている第4回shiseido art egg 曽谷朝絵展 「鳴る色―色と音の間に―」に行って来ました。
展示作品画像はこちらでご覧いただけます。

曽谷朝絵さんは、VOCA展 2002 - 新しい平面の作家たち』VOCA賞(グランプリ)を受賞された後くらいに知った作家さん。私が初めて拝見した作品は淡い色調のバスタブ≪Bathtub≫2001年(下図)に似た水彩だった。
bathtub

その後、本物の≪Bathtub≫作品も拝見し、続く作品もどちらかというと虹を思わせる淡い色調の作品が多かったように思う。

それが昨年、西村画廊の35周年記念展「Seven」で展示されていた≪air≫シリーズを見て、「あ、変わったなぁ、何か突き抜けたのかな」と思った。Voca賞受賞後、新しい作品の展開に苦悩されていたような気がしていたのだった(私の勝手な憶測だけれど)。
それが、≪air≫を拝見した時、払拭されてご自身の絵を見出されたのだ、とそんな印象を受けた。

そして、今回の資生堂ギャラリーでの展示もまた革新的なものだった。
昨年3月に横浜のZAIMでライブペインティングやカッティングシートを使用したインスタレーションの経験が、今回の音を視覚化するという試みのアイディアにつながったそう。

空間全体を様々な色で埋め尽くす、まさしく色彩による空間インスタレーション。
絵画というのではなく、インスタレーションとして色を楽しむ、作家の意図は色が奏でる音を感じてもらうこと。
色も音も同じく波動を与えるというのが作者の考えなのだ。
詳細は曽谷朝絵(作家)HPをご覧ください→こちら

残念ながら、展示会場で私はその音を感じ取ることはできなかったけれど、色の風が通るような感覚を受けた。

床、壁、天井からつり下がる色のモビール。
しかも、それらの色調は過去の淡い色ではなく、原色に近い力強い色。
淡い色から強い色へ。
ここに画家の心境、成長への自信のようなものを感じた。

*1月31日(日)まで開催中
時間:平日 11:00 - 19:00|日曜·祝祭日 11:00 - 18:00 (月曜休)
入場料:無料

「安井曾太郎の肖像画」 ブリヂストン美術館

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ブリヂストン美術館で開催中の「安井曾太郎の肖像画」に行って来ました。
展示の詳細は美術館HPをご覧ください。→ こちら

既にご覧になったブロガーの方からも好評のテーマ展示。確か昨年の同時期はセザンヌ特集だったような記憶がある。
今年は、そのセザンヌを敬愛していた安井曾太郎を扱っている。
安井の作品は数多いが中でも肖像画にだけ的を絞って展示しているのがポイント。

出展作品リスト(→こちら)をご覧いただけばお分かりのように、ブリヂストン美術館の所蔵作品だけでなく、個人蔵、ひろしま美術館、東北大学史料館、兵庫県美、徳島県立近代美術館など全国各地の美術館から展示作品の大半を借り手の展示。

展示は、ほぼ制作年代順になっており、冒頭にあった≪父の像≫≪母の像≫1915年などのようにセザンヌへの傾倒を強く感じさせる作品から始まり、長いスランプから脱出できたという手ごたえを感じた作品≪画質≫≪坐像≫など安井独自の個性が作品に現れてくる肖像画、晩年の作品に至るまでじっくり作風の変遷を見せてくれた。

作品の制作過程となるデッサンを完成作の横に展示してあるおかげで、最初のデッサンから2枚目、完成作と線や形態を捉える上での安井の迷いまで感じられた。

更に注目したいのは作品にまつわるエピソードやモデルになっている人物と安井との関係である。
肖像画を描くに至った経緯や制作中のエピソードが短すぎず長すぎず、キャプションとして適度な長さで綴られているのは非常に良かった。
キャプションよりもっと詳しく知りたい方は図録をお読みいただくことをお薦めする。1枚1枚の絵に対しての解説やエピソードがきっちり綴られている出来の良い図録だった。

一巡したら、じわじわと安井作品の良さ、展示内容の素晴らしさが感じられて、久々にこんな気持ちの温かくなる展覧会を見せていただいたなぁとしみじみ感じた。
この後、いつもの名画が並ぶ所蔵品を拝見し、そこにも安井の作品が3点(1点は風景、2点は薔薇と桜を描いたもの)を見つけたが、先に見た肖像画の印象が強く、やっぱり肖像画が安井の良さを一番訴えてくるような気がした。

最後に、もう1度安井特集を見て、今回一番お気に入りの≪孫≫1950年大原美術館蔵(下図)の前に立つ。
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この色使いがたまらなく良い。ピカソの人物画にも似たような色使いの作品があった筈。
人物の特徴を上手く捕える術もさることながら、背景の色、さりげなく置かれた椅子の模様など、計算された色へのこだわりを感じるのだった。
安井もこの作品を気に入り、その後『文芸春秋』の表紙に孫を描いている。この表紙作品原画も6点出展されている。

安井は学者や政治家など広く著名人の肖像画を手がけたが、その1人である貴族院議長だった徳川圀順氏が、自身の完成した肖像画を見て語った言葉を以下にご紹介して記事の終わりとする。

「絵は出来上がった。私はこんなおやじかとがっかりしたが、安井さんに描いてもわれた方が皆言われるように、自分もだんだん絵ににてくるように思われる。」

安井には、描くモデルの将来まで見えていたのだろうか。

*1月17日(日)まで開催中。

「現代工芸への視点-装飾の力」 東京国立近代美術館工芸館

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東京国立近代美術館工芸館で開催中の「現代工芸への視点-装飾の力」に行って来ました。

本展では「装飾」をひとつのキーワードとして、現代に生きる工芸家に受け継がれた日本人の美意識をあらためて感じ取りながら、21世紀における工芸制作と表現活動の可能性を探る。

特筆すべきは出品作家(以下)の若さ。
青木克世/青野千穂/礒真理子/十四代今泉今右衛門/植木寛子/上田順平/植葉香澄/大槻智子/大原れいら/梶木奈穂/川端健太郎/北村純子/越川久美子/齋藤大輔/佐合道子/篠崎裕美子/鈴木秀昭/染谷聡/高石次郎/高村宜志/田中知美/徳丸鏡子/富田美樹子/中村牧子/服部真紀子/花塚愛/桝本佳子/村上愛/森野彰人(五十音順)

1947年生まれの高村宜志がもっとも高齢(いまどき60代は高齢とは言えないと思うが)で、最若年は1987年生まれの篠崎裕美子。1970年代、1980年代の作家が中心になっている。

もうひとつ気になったのは「装飾」というテーマだが、技法としては陶磁が中心で、他にはガラス作家が3名、染谷聡だけが漆作家として参加していた。

技法の偏りのせいか、染谷の漆作品が一番印象に残っている。
あちこちのアートフェアで染谷の作品は見かけるが、今回はかなり大型の作品が登場していて楽しませてくれた。
特に、新年らしい華やかさを持っていたのが「冨鹿」(ふじか)2009年。
いちいち芸が細かいというか、鹿を漆で作成しているのだが、なぜか舌を出していて、この舌ベロにジルコニアらしき小さなラインストーンが付いている。
更に鹿の耳には小さな仏像がくっついていて、これぞまさしく過剰ともいえる装飾的鹿のオブジェ。
他にも「おすましる代」「御椀獣三郎」などタイトルで遊んでいる作品はじめ4点が2009年の新作。「Praying for Rain]だけが2005年の作品だった。
乗ってる作家さんだなという印象を受ける。

他に伝統技術の若き継承者と思われる十四代今泉今右衛門の陶磁「色絵薄墨墨はじき雪紋鉢」などの陶芸は造形的にも新しい挑戦をしようという心意気が感じられた。

ガラス作家では植木寛子の作品が圧倒的だった。
元々、シンデレラの靴に憧れてそんなガラスの靴を作成してみたいと思った植木の作品は、シンデレラの靴というより、生きもののようであった。チラシ左上の先がピンクになっているヒール靴が彼女の作品の一つ。
過去の作品より近作の「物語を秘めた存在」2008年「気品に満ちた佇まい」2009年のような靴をモチーフとしたオブジェは女性像のようでもあり、艶めかしさを湛えている。

和室を使用して、陶磁とは思えぬ作品を展開していたのが磯崎真理子。
赤色オンリーの作品は遠目から見るとクッションのような布の質感を思わせるが、実は陶磁製品というから驚く。
タイトルは「Big flower」とFlowerシリーズとして2008年~2009年にかけて制作された作品。
でも、花にも見えなかった。

他には九谷焼の技法を使用した鈴木秀昭、北村順子など出品作家の中ではベテラン組にまじり、最後の服部真紀子「徴」の陶肌感が気になった。

*1月31日まで開催中。

日本の新進作家展vol.8「出発-6人のアーティストによる旅」 東京都写真美術館

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東京都写真美術館で開催中の日本の新進作家展vol.8「出発-6人のアーティストによる旅」に行って来ました。

東京都写真美術館では写真・映像分野で将来性のある作家を発掘し、新しい創造活動の展開の場となるよう様々な事業を展開しているが、その中核となっているのが日本の新進作家に焦点をあてた本展覧会である。
今回は「旅」をテーマに以下6名の写真家、映像作家を紹介する。

<参加アーティスト>
尾中浩二、百瀬俊哉、石川直樹、百々 武、さわひらき、内藤さゆり 

私のお目当ては、大好きな映像作家さわひらきさん。
しかし、ここで痛恨の一大事が。この展覧会は12/19(土)~2/7(日)が会期で、12/20(日)にさわひらきさんの講演会が開催されていたのに、1ヶ月勘違いし1/20だとばかり思っていたのだった。
こんなことなら、何をおいても12/20に駆け付けたのにと歯がみしても、既に手遅れ。
さわさんはロンドン在住で、日本で講演会が開催されることはめったにない(過去にあったのか?)から余計に悔しい。

さわさんは、今回2つの作品を出展している。
・≪small metal godsのためのmusic video≫2009年 5分50秒
・≪HIDDEN TREE≫2007年 4分30秒

small metalは例の飛行機が室内を飛ぶ作品だが、これまで見た作品とは別物。ただし、やはり作風は似ている。
ゆったりとした音楽とモノトーンな映像の中でのスローな飛行機の動き。
このゆったり感、私にもっとも欠けているものではないか。
人間ないものに憧れるのかもしれないと、このゆったり感を楽しむ。

そして、今回のお気に入りはもう1つの≪HIDDEN TREE≫。これは大スクリーンでなく木製の机にある小さな液晶に映像が流れている。画面が小さいため、一度に見ることができる人数は3~4人が限界かもしれない。
私が行ったのは閉館間際の遅い時間だったので、結局途中で一人で見ることができた。
こちらも、私は見たことがない作品。
星や木が出てきてこれまで以上にポエムな映像で、同じくモノクロ。時間帯は夜なのかな。
こういう世界もまた良い。
しかし、映像としては大好きなのだが、こちらの映像は「旅」というテーマとの関連性は感じられなかった。

写真の方で気になったのは2人のアーティスト。
1人はご存知石川直樹さん。
今回展示のメインになっていたのは富士山を撮影した「Mt.Fuji」シリーズ。サイズは900×1120mmと254×305mmの2種類で構成されていた。
先月だったか青山ブックセンターでの鈴木理策さん、藤代冥砂さん、石川直樹さん3名による「聖地を写す」というトークショーに行ったばかり。その時、購入したのが「富士山にのぼる」教育画劇刊(下画像)。
hujisan

富士山の写真集としては「Mt.Fuji」(ペーパーバック)リトルモア刊もあったが、写真が小さかったので、「富士山にのぼる」の方を選んだ。これは石川さんの写真だけでなく富士山に対しての文章も添えられた子供向けの写真絵本。
と言っても、大人でも十分鑑賞に値する内容。

この本で彼が撮影した富士山に魅せられたばかりで、ちょうど本物の作品を見ることができるって、こちらは逆にラッキーだった。てっきり、同じく発売されたばかりの「ARCHIPELAGO(アーキペラゴ)」<日本語では群島の意>が出展されているのかと思っていた。
なお、「ARCHIPELAGO(アーキペラゴ)」は品川のキャノンギャラリーSで写真展を開催中。

トークショーで知ったのだが、石川さんは鈴木理策氏の教え子なのだそう。鈴木氏の作品に憧れ、写真の道に進んだと語っておられた。

もう1人気になったのは尾仲浩二さん。
一番良かったのは、映像化されていた写真集「The Dog in France」より≪From The Dog in France≫1992年。
これは映像になっていなければ、ピンと来なかったかもしれないが、映像化され、音楽が付いていたことで日記のような映画のような雰囲気があって、パリを写美に居ながらにして味わえた感じがした。

他の写真も旅日記風の写真で、こちらも見ていると自分が旅しているような気持ちになる。

出展作家の中で、私にもっとも「旅」というテーマを意識させてくれたのは尾仲氏の作品だった。

<本展関連イベント>
出品作家がそれぞれにゲストをお迎えして対談を行う。
場所:1階創作室(アトリエ)
既に終了したものを除いて、今後行われる対談。
□百瀬俊哉×福島義雄(九州産業大学非常勤講師・編集者)
2010年1月17日(日)14:00~16:00
□石川直樹×山崎ナオコーラ(作家×前田司郎(作家・劇作家)
2010年1月30日(土)14:00~16:00

☆石川直樹さんは以下でも講演やトークが開催される。
・講演会:1月24日(日) 於:多摩図書館 1月11日までに申込必要。詳細はこちら
・トークイベント:2月6日(土)13:30~15:00 於:キャノンホールS 
 2月4日までに以下HPより申込要。先着300名
 http://cweb.canon.jp/s-tower/floor/1f/gallery/archipelago/index.html#talk

□内藤さゆり
未定(詳細は決定次第東京都写真美術館HPにアップ予定)
※展覧会チケットの半券が必要で予約不要。
※当日10時より1階受付で整理券を配布します。番号順入場 自由席。

*2月7日まで開催中。木曜、金曜は20時まで開館しています(入館は30分前まで)。

「オブジェの方へ-変貌する『本』の世界」 うらわ美術館

urawa

昨日アップした埼玉県立近代美術館の「小村雪岱展」に行かれる際に、是非寄っていただきたい展覧会をひとつご紹介します。

埼玉近美の最寄駅はJR「北浦和」駅だが、東京からだとその手前のJR「浦和」駅下車西口から徒歩7分でうらわ美術館に到着する。
現在、うらわ美術館では開館10周年記念として「オブジェの方へ-変貌する『本』の世界」展を開催している。
私は初日の11/14(土)に見に行ったが、夜間だったせいか観客は一人か二人と寂しかったけれど、内容はなかなかのもので、さすが10周年記念と思った。

うらわ美術館は「本をめぐるアート」を収集の柱としていて、その数なんと1000点を超えるという。
本展覧会では、このコレクションをもとに立体的な本、本のオブジェなど、通念や常識を超える「本のアート」を幅広く展示する。

主な出展作家は次の通りだが、国内外の著名作家が並ぶ。

遠藤利克、柄澤齊、若林奮、加納光於、松澤宥、藤井敬子、脇田愛二郎、中村宏、福田尚代、安部典子、荒木高子、西村陽平、河口龍夫、村岡三郎、淤見一秀、山口勝弘、柏原えつとむ、李禹煥、堀浩哉、マルセル・デュシャン、ルーチョ・フォンタナ、アルマン、ピエール・アレシンスキー、ピョートル・コヴァルスキー、グドムンドゥル・エロ、ヴェロニカ・シェパス、ジョージ・マチューナス、ダニエル・スペーリ、ロバート・ラウシェンバーグ、アンゼルム・キーファー、メレット・オッペンハイム、他(順不同)

これだけの作家を揃えて、テーマは「本」にまつわる作品とあっては面白くない訳がない。
作品リストがないのが残念。適当にとったメモによる内容なので間違いがあるかもしれないが、ご容赦ください。
構成は、以下の5部構成による「1.海外の作品から」「2.国内の作品から」「3.箱、カバン」「4.焼く」「5.展開と広がり」。

冒頭の海外作品では、トゥックオ・ダルビゾフの金属板のみで作られた本(1934年)に驚く。これがサイズも大きく迫力あるのだが、大きいだけでなく美しいのだった。単なる金属(銅色)の本なのになぜ、美しいのか。

更に、アンゼルム・キーファ「イヌサフラン」1997年は写真、砂、厚紙で構成され、キーファと言えば、菅原健彦の日本画が浮かんだりもするが、この作品はこれまで見て来た絵画作品とはまた違った魅力がある。
でも、キーファの作品らしいと言えば、すごく彼らしい大胆さ、骨っぽさがあるのだった。

ルーチョ・フォンタナ「アントナン・アルトーの肖像」1968年も一風変わった作品。ピンクの箱に入っている。
メレット・オッペンハイム、ラウシェンバーグ、イ・ジヒョンらの作品が特に印象深い。

次に国内作家の作品に目を向ける。
海外作家の作品に比べると、ややインパクトに欠けるが藤井敦子の作品は美しかった。
他に安部典子、若林奮、福田尚代、淤見一秀、山口勝弘らの作品に交じって先日東近美で個展があった河口龍夫氏の「青い線」1985年の青い銅線の色が真っ白な紙に映えて、やっぱりきれいだなぁと改めて感じる。

最後の最後で「お~」と感動したのは、遠藤利克「敷物-焼かれた言葉-」1993年は圧巻の巨大インスタレーション(トップ画像のちらし表面に掲載作品)。
文字通り本を焼いて真黒になった敷物だが、灰になる前に状態、本としての原型をとどめた真っ黒の石炭のような本達は無言でこちらに何かを語りかけているようだった。
本は焼けても、目を向ける者に何かを語るのだろうか。

同時期に静岡アートギャラリーでも「本」になった美術をテーマとして「THE LIBRARY」展が開催され(12/20で終了)、こちらも見て来たが、同じ「本」をテーマとした展覧会でもうらわ美術館での本展の方がより洗練されている印象を受けた。うらわ美術館で展示されている作品たちは、まさしくアート(定義が何であるかは難しいが)と言って良いような作品群で、静岡のそれらはちょっと素人っぽさが残る作品が多かったように思う。

本展の図録が完成していたら、購入していたかもしれないが、訪問時には見本もできていなかった。
図録の出来が良ければ記録として手元に置いておきたいような作品たち。
記事を書いているうちに、再訪したくなってしまった。
やはり、人の記憶というのはすぐに薄れてしまうから。

*1月24日(日)まで開催中。
■うらわ美術館は土日は20時まで開館(入場は30分前)しています。
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