椿昇展「GOLD/WHITE/BLACK--Complex」 Think Spot KAWASAKI

川崎市のThink Spot KAWASAKI で3月14日(日)まで開催中の椿昇展「GOLD/WHITE/BLACK--Complex」に行って来ました。
展覧会HPはこちら ⇒ http://kitanaka-school.net/event/2010/03/gold-white-blackcomplex.html
本展は、2009年2~3月、京都国立近代美術館で開催された、椿昇2004-2009「Gold/White/Black」展を会場を移し、より「根源的な対話」(Radical Dialogue)を求め開催されている。
会場のThink Spot Kawasakiは、旧日本鋼管の体育館だったが、現在はJFE都市開発株式会社により、撮影現場などに使用されているそうだ。余談だが、日本鋼管と言えば、私が若き頃には男子実業団バレー界の花形チー(井上選手とか)ムの一つだったことを思い出す。体育館なら、彼らが練習場として使用していた場所ではないか。展覧会を観る前に、会場そのものでセンチメンタルな気分になってしまった。
しかし、この展覧会、そんな私の甘っちょろいセンチメンタルなど、見事にぶっとばす内容。twitter上の呟きでは「凄い」とか「かっこいい」「ミサイル」等の言葉を目にしていたので、ある程度予想はしていたが、やはり聞くのと見るのとでは違う。椿昇の作品で私が観たのは、2008年赤坂サカス「Polly Zews」で、やたらと大きい物を作りたがる作家だなという程度の印象しかなかった。
ところが、2009年に開催された京近美の個展はogawamaさんのブログを拝見して、もう少し椿昇の作品と向き合ってみたいと思い、行きたかったが、結局未見に終わる。・・・そんなこんなで、ついに椿昇個展と対峙となった。
個展での展示作品を文章であれこれ書くより、YouTube動画があるので、見に行けない方、行く前に見たい方があれば下記をご参照ください。主催者の北仲スクール:室井尚氏が案内。
http://www.youtube.com/watch?v=da6RFkTyHeg (前半)
http://www.youtube.com/watch?v=ZVbia6Oc2Rc&feature=player_embedded# (後半)
で、個人的な感想です。
展示を見た時は、展示作品のクールな感じと照明が色とりどりに照らすバルーンの超巨大ミサイル(横側にNippon)、とにかく展示会場と作品がマッチしていたので、これを美術館という箱におさめていたら、今日見た以上に作り物っぽく感じただろう内容が、意図を持って立ちあがっていた印象を受けた。
展示を見た後で、京近美の河本氏、前京近美館長の岩城氏、そして本展主催者の北仲スクールの室井氏の展評を読んでみたら、案の定強いメッセージ性のある内容で、作品を見ただけでは理解しがたい背景や作家の思考などがやっと分かった。そして、それらを分かった上で、再度自分が見たものを照合すると見事に筋が通った展示空間を作り、あれだけの見せ方ができるのは凄いと思う。
以前の放送室を使用してアメリカを象徴するものを強調したり(ブッシュ政権の画像、ラップ音楽)、よく聴くとラップの詩にもメッセージ的な内容と徹底している。
牛の睹殺シーンでの血、そして牛の瞳(生から死)、ミサイル、十二使徒のCGは墓碑、金やミサイルは欲望、作家の意図とは反するかもしれないが、私自身は生死と欲望、すなわち人間の業を見せつけられた気がする。
バルーンを使ったり、巨大化させることで鑑賞者の目をハードな物やメッセージ性から敢えてそらすような仕掛け。これらは単一作品で見ると、ただの大きな玩具にしか見えない。
これだけのハードな空間だったからこそ、バルーンが今まさに目の前にある戦争と平和を思い出させてくれたのではないだろうか。
個人的には、放送室の展示と坑道を模した最初の長い廊下(十二使徒展示場所)が好きだった。あの2つの空間は文句なく美しかった。
*3月14日(日)まで開催中。夜間の方が照明が映えるように思います。