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「前衛下着道 鴨居羊子とその時代」 川崎市岡本太郎美術館

zenei

川崎市岡本太郎美術館で7月4日まで開催中の「前衛下着道 鴨居羊子とその時代」に行って来ました。
美術館HP ⇒ http://www.taromuseum.jp/exhibition/current.html

鴨居羊子という女性を美術ファンはご存知ないかもしれない。

鴨居さんは1925年大阪府に生まれる。読売新聞大阪本社の記者の後、1955年に下着デザイナーに転身し「下着屋・CoCoチュニック」を設立した。「下着=白」という意識が強かった時代に黄や赤など華やかな色合いや、透けた素材の下着を発表し、下着ファッションショーも手がけ大きな反響を呼んだ。彼女の活躍の幅は、下着デザイナーに留まらずエッセーなど文筆活動や画家として多彩に活動を行った女性である。画家の鴨居玲の実姉としても著名。
詳細な年譜は彼女が立ち上げたチュニック株式会社HPに詳しい(以下)。
http://www.tunic.co.jp/yoko-kamoi5.htm

私が鴨居さんを知ったのは、国書刊行会から『鴨居羊子コレクション1 女は下着でつくられる』発刊された2004年~2005年のことだった。図書館の新刊本コーナーで見つけて表紙の愛らしさが気になり手に取った。本のタイトル「女は下着でつくられる」にも興味を惹かれ、早速借りて読んでみた。

もうかなり前のことなので記憶は完全に薄れているけれど、時代を考えると当時の時代の最先端、それは思想も行動力も全てにあてはまった。それはもう眩しいくらいに自分の生き方や考えを貫いた女性だと思った。その一方で、『鴨居羊子コレクション1』には、幼年期を回想しながら愛する人々への思い出を語る最後のエッセイ集『わたしのものよ』も収録されているが、そちらを読むと胸がチクチク針を刺されたような傷みを感じて、次のコレクション本には手が伸びなかった。鴨居さんの生活や生き方はとても潔いのだけれど、その反面彼女にはどこか孤独というか寂しさの香を感じ、当時の私にはそれが怖くて更に彼女の世界に踏み込めなかったのだと思う。

そんな思い出の中にあった鴨居羊子さんの展覧会が川崎市の岡本太郎美術館で開催されると知り、気になって仕方がなかった。
鴨居さんの文章は読んだけれど、画家として、下着デザイナーとしての活躍は文章では理解していたもののこの目で確かめた訳ではない。
一体どんな展覧会でどんなものを見せてくれるのか、期待と不安の入り混じった気持ちで生田緑地へ向かった。

本展では、鴨居羊子の業績を紹介するのみならず、1950年代、60年代に触発し合った才能の関係図を探っている。鴨居羊子の「言葉」「絵画」「下着」を中心に紹介するとともに、彼女を支えた作家の今東光、司馬遼太郎らの資料や、彼女が尊敬していた岡本太郎や細江英公氏、井上博道氏が撮影した鴨居羊子のポートレートおよび彼女が作った下着や人形たちの写真も多数出展されています。
更に、彼女が主宰していた下着のファッションショー「チュニカショー」の演出に関わったアーティスト、具体美術協会の美術家たちの当時の作品や記録映像も紹介。
これに加えて、若い劇団唐ゼミ☆のメンバーが鴨居羊子とその時代を現代に復活させるかのごとき下着の展示と新しいチュニカショーにも挑んでいます。

上記の通り、多方面から鴨居羊子の活動を捉え、展開させる非常に盛りだくさんかつ濃い内容で、結局2時間半くらいいたのではないだろうか。

入口すぐにとても目立つインスタレーション作品がある。展示室内にガラス(?)張りの部屋がもう一つ作られている。中には木が一本、その枝のあちこちに鴨居さんがデザインした下着-がクリスマスツリーのデコレーションのごとく吊り下げられている。
傍には、鴨居さんの言葉が記された赤文字の看板が。最初見たのは「はすっぱな娘」についての肯定的意見、「はすっぱには、お転婆・生意気・媚を売る・馴れ馴れしいなど軽はずみな言動をする女性」と言うような意味合いが込められている。
彼女は敢えてそこで「はすっぱな娘」になってみよう、何がいけないのかというようなことを書いている(注:メモをしっかり取らなかったので、記憶に誤りがあるかもしれません)。そんな所に、当時の彼女の心意気を感じる。
いきなりストレートパンチだなぁ・・・とツリーを見上げつつ思った。

次に鴨居さんの「絵画」コーナーへ。展示順がきちんと→で案内されていて分かりやすい。
絵画関連作品だけで87点。個人蔵と長崎県美術館所蔵品が大半を占めている。正直個人蔵の作品をよくこれだけ集めてこれたと感心した。なぜ、大阪出身の鴨居さんの作品がこれほど沢山長崎にあるのか?どうも、彼女を含め鴨居家の本籍が長崎県だからではないかと推察。
鴨居玲の絵画は石川県立美術館で何度か観ているけれど、羊子さんの実作品を拝見するのは初めてのこと。繊細な線描、色遣いは、どこか鴨居さんそのものを感じさせる。
そして、特に私が好きだったのは彼女のペン画で「私のものよ」「七夕」「子連れ狼」。ペン画での線の方がすっきりとシンプルに彼女の作品の良さを表現しているように感じた。

次に水彩「ねてばっかり」「どうしたの」「じゃれる猫」などが愛らしい。
そして、一番忘れられないのは鴨居さんによる宗教絵画。イコン画を鴨居風にアレンジした鴨居風イコンの数々には驚いた。敬虔なカトリックの信者だったのだろう。
彼女が祈る姿は、女性を下着で解放することを目指したというイメージからは想像がつかなかったけれど、エッセイを読んで感じた「孤独」「寂寥感」といった一面を浮かべると受け入れやすい。つまらない私個人の想像だが、祈りもまた孤独や寂しさを慰め、彼女に勇気を与えていたのではないだろうか。
犬や猫の作品も絵画には多く登場する。この愛情が人間に向かなかったのかということもまた疑問として残る。

この後、下着ショーを手伝った早川良雄さんの舞台デッサンや鴨居さんと岡本太郎との間で交わされた書簡など「言葉」の展示を観る。手紙の文章にもエッセイ同様に味がある。

次にとても気に入った細江英公氏による「ミス・ペテン」掲載の写真展示コーナー。
「ミス・ペテン」は1966年に限定500部の私家版として刊行された細江英公氏撮影の鴨居羊子人形写真集。
(参考)「古書きとらHPのミス・ペテン画像」http://kosho-kitora.com/?pid=9722587

細江氏曰く「鴨居羊子が人形を沢山持って現れ、後はよろしくと言って人形を渡された。」そうで、細江先生はそれからトランクに人形たちを詰めて撮影の旅に出る。
この写真がもの凄くいい。人形が線路に置かれたスナップなどは泣きたくなる。

同じく細江氏による鴨居羊子さんのポートレートは実に素敵だ。強烈な自我を感じる。少しだけ塩田千春さんの泥をかぶるパフォーマンスを思い出したが同じくあのパフォーマンスにも強烈な自我の香を感じたからかも。

写真コーナーを抜けると、次に待ち構えているのは舞台装置。
いや、よくこれだけのものを展示室に創り上げたものだと感心する。昭和50年代の下町に下着がぶら下がり、猫の写真があちこちに。

ここを抜けると映画コーナー。
上映されているのは鴨居さんが監督したドキュメンタリー映画『女は下着でつくられる』1958年(38分)。
映画監督までされていたとは・・・。そしてこの映画、女性と下着をめぐる当時の時代感覚を表現しなかなか面白い。38分なので、ぜひ最後まで観て欲しい。

この段階で既にあっぱれ!とテンションはかなり上がる。映画まで見せてくれるとは有り難い。しかも流しっぱなしでどの場面からでも観ることは可能。

映画コーナーの片隅に大御所、今東光、司馬遼太郎との関係資料がひっそりと展示されている。二人は彼女の才能を見抜き、高みから鴨居羊子を引き上げ育てた。選ばれる方も選ぶ方も才あってのことだと思う。

最後に、具体美術協会の貴重な映像作品および絵画などが展示されているが、特に映像は珍しい。具体美術協会の活動単独では良かったけれど、鴨居羊子さんとの関係性は理解しづらかった。唐突過ぎるというか。これだけが残念。

本展の図録(1800円)は、中身まるまる鴨居羊子の全てといった感じ。図版より文章の方が多く読み応えがあります。同内容のものが書店でも販売されていますが、お値段は図録の方が格安。

訪問時には観ることができませんでしたが、下記の関連イベントもあります。

■関連イベント
唐ゼミ☆×チュニック
したぎと中世 ~わたしは驢馬になって下着をうりにゆきたい~
開催日:5月23日(日)、30日(日)
※都合により日程、時間等を変更することがあります。
時間 : 各日とも14:00と15:00の2回公演・各30分を予定
場所 : 企画展示室
料金 : 無料(ただし観覧料が必要です)

鴨居羊子さんの新たなブームがやって来るかもしれない、いや、既に到来しているのか。そんな風に思わせる企画展でした。
キュレーションは、ゲストキュレーターの室井絵里さん。中身の濃い、見どころ一杯の企画に感謝。

*7月4日(日)まで開催中。オススメです。

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あべまつ様

こんばんは。

司馬遼太郎と今東光関連資料はややさびしいですが、
舞台装置と細江英公氏の写真、そして鴨居さんの小さいければ
小さいほどいとおしい絵画にやられました。
36分のドキュメンタリー映画も必見です。

お時間あればぜひ。
「脱:白下着」。先駆者の軌跡をご覧いただければ幸いです。

No title

こんにちは。
私もnoelさんと同様、気になってて。
丁寧かつ充実の記事にまた気持ちが盛り上がります。
深く、染み込んできそう。
関係者の濃厚度もスゴそう。

noel様

おはようございます。
ジェンダー云々も考えないではないですか。
まずは純粋にアーティストとしての鴨居さんを楽しめることと
細江英公さんの写真、これは何の前提なしに惹かれます。

更に会場構成、舞台装置も楽しめます。
本展、私の一推しです。

No title

チラシを見て気になっていたのですが、さすがmemeさん行かれてましたか!
こういうジェンダー論を考えずにいられない展示って、なかなか心穏やかに見れないのが辛いところですよねえ。 でもやっぱり興味あるので行ってみようかしらん(笑)
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