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「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」 神奈川県立近代美術館 葉山

hanashi

神奈川県立近代美術館は山で6月27日まで開催中の「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」に行って来ました。
展覧会HPはこちら。*作品画像が一部掲載されています。

ユーリー・ノルシュテイン(1941年~)はロシアを代表するアニメーション作家で、妻であるフランチェスカ・ヤールブソワは彼の作品の多くの美術監督を務めています。
本展では、ノルシュテインが監督をしたアニメーション映画を中心に、ヤールブソワの美しいエスキースや、マルチプレーンを展覧会用に再現したマケットを交え、夫妻の創作の過程、映画完成後の展開の全貌を約900点にのぼるデッサン・スケッチなどの関連資料で紹介するものです。

展覧会は、ノルシュテインが監督をした以下8つのアニメーション映画によって構成されています。

第Ⅰ章 25日-最初の日
第Ⅱ章 ケルジェネツの戦い
第Ⅲ章 キツネとウサギ
第Ⅳ章 アオサギとツル
第Ⅴ章 霧の中のハリネズミ
第Ⅵ章 話の話
第Ⅶ章 外套
第Ⅷ章 冬の日「狂句 木枯らしの身は竹齋に似たる哉」

会場の都合上、展示順序は上記章立ての順序にはなっていませんでした。最初は第Ⅲ章のキツネとウサギから展示されており、第1章、第2章は後半に第Ⅶ章「外套」と一緒に展示されています。

私は格別アニメーションに関心がある訳ではないけれど、ロシアやチェコの作家に分野は何であろうとも関心がある。刈谷市美の「カレル・ゼマン展」も楽しめたので、ノルシュテイン&ヤールブソワの世界はどんなものかと楽しみにしていた。そんなアニメ初心者であるため、二人の名前は本展開催により初めて知った。無論、作品を拝見したこともない。

しかし、会場に入って最初の作品、入口手前にあるマケット(西洋美術の用語で、概ね模型にあたるものを指す。)を覗くとそこにはアニメーションの1シーンと思われる場面が作られている。
本展で展示されているマケットは、紙芝居のような四角い木枠の中に、ガラス板が4枚程度、それぞれ間隔を空けて並んでいる。一番奥のガラス板にはトレーシングペーパーが貼られ、スモークがかかっているように見える。そして他のガラス板にはそれぞれセルロイド製の切絵が複数貼ってある。
このマケットではガラス板の間隔を変えることで奥行き感、立体感を出し、ノルシュテインが発案したマルチプレーンと呼ばれる手法を再現して見せていた。

本展では、こうしたマケットが第3章以後の作品につき3セット前後展示されている。
そして、おびただしい数のデッサン・スケッチは壁から飛び出したクリアアクリルに挟まれ、展示方法が面白いなと思った。とても観やすい展示方法だと思う。
また、こうしたデッサン・スケッチに加え、絵コンテもあり、ノルシュテインの制作過程の一端が窺われる。

絵画として楽しめるのは、映画のコマのエスキース作品群。ここで言うエスキースとは、ノルシュテインの用語で映画製作後に描かれた作品のこと。
これらが実に美しく、水彩、オイルパステルなどで原画の魅力を伝える。
キャラクターデザインは主に妻であるヤールブソワが行っているが、第Ⅴ章「霧の中のハリネズミ」の主人公キャラであるハリネズミのキャラクターは、生み出すのに相当の困難を極めた。しかし、その甲斐あって本当に魅力的で愛らしいハリネズミが登場。本作品は、映画化された後、絵本になっている。

これら制作過程での溢れるような作品群を観た後は、実作アニメーションの上映会へと向かう。
上映会の定員は恐らく40名程度ではないか。
開館の9時半に午前11時からの上映会整理券が配布される。これを入手するために早起きしたのだ。なお、行った日は生憎の雨模様だたせいか午前中の部には空きがあったものの、午後は満員御礼だったため、これから行かれる方はご注意ください。

<午前の部 上映作品>、11時~ 53分間 9時半整理券配布 *作品順序は上映順
「25 日─最初の日」
「キツネとウサギ」
「霧の中のハリネズミ」
「冬の日」(発句)
「外套」(部分)
 
<午後の部 上映作品> 15時~ 61分間 13時より整理券配布 
「アオサギとツル」
「話の話」
「冬の日」(発句)
「外套」(部分)

午前と午後の両方を拝見(午後は「話の話」まで)。ノルシュテインンの『話の話』(1979年)は、1984年に35人の国際的な評論家や企画者によって、「歴史上、世界最高のアニメーション」に選ばれるという代表作。
歴史上世界最高と言われる傑作を観ないで帰る訳にもいかない。さりとて、第1作『25 日─最初の日』は、音楽をあのショスタコーヴィチが担当し、ロシアアヴァンギャルドの影響も色濃い作品でこちらも観たい。そうなると、午前も午後も観るしかないと葉山館に腰を据えることに・・・。

さすがに、解説はあるもののやはり解説読むより映像観た方が早かった。百聞は一見に如かず。

全作品を観て私がもっとも感動したのは、未完成の『外套』である。
これは、ニコライ・ゴーゴリ(またしても、ゴーゴリ!)原作をノルシュテインが映画化し、はや10年以上が経過しているがいまだ完成をみない。
今回はできあがった部分(20分間)の映像を上映している。終始モノトーンで、官吏である主人公アカーキー・アカーキエヴィチが凍えるような寒さがこちらにも伝わり、観ている私も寒気を感じた。何より素晴らしいのはアカーキーの表情描写である。
まるで、生きているかのような細かい表情、表皮の動き、そして彼はよく鼻をつまむ。これは同じくゴーゴリー原作の『鼻』を意識しているのか?切り詰めた生活、ろうそくの乏しい灯、彼の向こうが透けてしまうような外套の薄さ、どれもこれも細部の表現が際立っている。エンディングはキャプションを読んで分かっているから、あれが最後まで続いたら、間違いなく映像を観ながら泣いていたと思う。

映像には出てこなかったが、展示資料のドローイングの中にアカーキーがアルファベットの文字と戯れる場面が何枚もあった。この作品、タイポグラフィーとしても楽しめる。アルファベット(例えばB)の一文字が、擬人化され躍動感があった。どれだけ時間がかかっても、ノルシュテイン&ヤールブソワ夫妻が納得の行く作品を作り上げていただきたい。

次に好みなのは『アオサギとツル』。
こちらは、デッサンやエスキースを拝見している時から気になっていた作品で、ストーリーが分かりやすい。背景の木々の枝ぶりがどこかアールデコを思わせ、華麗な画面。こちらは黒白ではないが、セピア色ベース。男(ツル)女(アオサギ)の心の機微をうまく表現していて面白い。こちらも、絵本となっている(KIN様、教えて下さってありがとう!そういえば、解説に書いてあったかも)。

ノルシュテインの作品に鮮やかな色彩はほとんど出てこない。
彼はこう言っている。「派手な色彩は人に機関銃を打ち込んでいるようで好きではない。」と。

「映像の詩人」とも言われるノルシュテインたる証は、『話の話』『冬の日「狂句 木枯らしの身は竹齋に似たる哉』を観れば一目瞭然。
『話の話』の抒情性は素晴らしい。ほぼ無声映画に近くセリフなし音楽のみの作品を30分弱見せさせる力量は並大抵のものではない。ノルシュテインの好きな映画は、チャップリンの作品だとのことだが、『話の話』ではバッハとモーツァルトの音楽をバックにチャップリンのような哀愁漂う詩的世界が表現されている。

後者冬の日「狂句 木枯らしの身は竹齋に似たる哉』は、松尾芭蕉の連句「冬の日」を基に、世界のアニメーター35名の競作という形で製作され、ノルシュテインはこの連作アニメーションの発句、「狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉」を担当。
日本文化を如何に彼が理解したのか、短い数分の映像から十分に伝わってきた。
特にボロの編み笠を竹齋が自分で被り、芭蕉に破れのない方を渡したあたり、紅葉を足で蹴散らしながら歩く竹齋の姿。映像のひとコマひとコマが今も記憶に残る。

これから行かれる方で、ノルシュテイン&ヤールブソワのアニメーションをまだご覧になっていないのであれば、充分時間を取って、美術館での映画鑑賞された方が本展をより一層楽しめます。個人的には、大人が楽しめる、感動できるアニメーションだと思いました。

*6月27日まで開催中。
作品リストは、展示室内の受付の方に申し出ればいただけます。900点もの資料をリスト化して下さって本当にありがたかったです。

本展は以下に巡回します。
7/18-9/26 高知県立美術館 10/16-11/28 福岡三菱地所アルティアム 12/11-2011.1/23 足利市立美術館

*5/25に加筆・修正。

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KINさま

こんばんは。
映像はDVDでも観ることはできますが、原画やデッサン、ドローイングなどを
観る貴重な機会。
900点はだてではありません。

> ちなみに「あおさぎとつる」も絵本になってます。
教えて下さって有難うございます。早速、本文に追記しました。

やはり、諸先輩方はお詳しいですね。
アニメ新参者としては、至らぬ文章の数々恥ずかしいです。精進します!

遊行七恵さま

こんばんは。

これは、はまります。
アニメーション全てに関心がある訳ではないですが、カレル・ゼマンも
今回のノルシュテイン夫妻も素晴らしかったです。
そのいずれもが大人でも、いや大人だからこそ楽しめる世界観で「はふ~」と
なってしまいました。

> 今回は殆ど展示がなかったのですが「ケルジェネツの戦い」はイコンが動く!という感じで、たぶんmeme女史の心も動くと思います。
⇒ あ~観たい、観たい。あと観てないのはこれだけ。

> ノルシュテインは阿佐ヶ谷ラピュタだったかな、そこでよく上映会があります。
チェックします。いつも情報ありがとうございます!

ノルシュテイン、LOVE!

でも、まだ行ってません・・・。
そっか、映像コーナーはすぐに満員になってしまう
のですね・・・うー、見たい。
午前の部にハリネズミ、午後の部に話の話、と分散
されているので、どちらをみれば良いのだー、と
迷います(まぁ、館としては当り前の配分ですが)。
しょうがないDVDで見る事に(行くの放棄???)。
ちなみに「あおさぎとつる」も絵本になってます。

スパシーボ

こんばんは
これはもぉ本当に待ってた展覧会なんですよ。
映像そのものはyoutubeにも色々挙げられてるので、見れなかった恨みはまぁなんとか抑えてるところです(笑)。
大昔はレーザーディスクでしか販売もなかったので、今の時代がありがたいです。

「アオサギとツル」のネックレスいらう(指で弄ぶ)アオサギの表情がなんとも言えず好きです。せつない恋。永遠に続くせつなさ。

今回は殆ど展示がなかったのですが「ケルジェネツの戦い」はイコンが動く!という感じで、たぶんmeme女史の心も動くと思います。

ノルシュテインは阿佐ヶ谷ラピュタだったかな、そこでよく上映会があります。
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