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「菅野圭介展 色彩は夢を見よ」 横須賀美術館

sugano

横須賀美術館で6月13日まで開催中の「菅野圭介展 色彩は夢を見よ」に行って来ました。

菅野圭介(1909-1963)は、風景や静物を彼特有の色彩とタッチで描いた洋画家です。
菅野は26歳で渡欧、グルノーブル在住のジュール・フランドンに師事し、帰国後の1937年に出品した独立美術協会展で脚光を浴びます。
続く戦争の時代にもその個性をゆがめることなく、1943年には同協会会員に推挙されました。
戦後の1948年に女流画家の三岸節子と「別居結婚」を宣言するも、二人の関係は5年で破局を迎えます。しかし、この頃、菅野は三岸から刺激を受けたのか色彩も線も大胆に躍動的になり、ブラジルでの個展も成功し第2の充実期となりました。
その後、葉山にアトリエを構え、新たな展開を模索していましたが、病のため53歳で失意のうちに亡くなります。
本展は代表的な作品およそ100点により、15年ぶりとなる菅野圭介の芸術を振り返るものです。

横須賀美術館の本展チラシがなかなか入手できず、ただもう「菅野圭介の作品をまとめて観られる貴重な機会」という一心で出かけた。
結局チラシは、その前に行った神奈川県近美葉山にて入手し、チラシ掲載作品「哲学の橋(ハイデルベルク)」の青と白と茶という3色に惹かれた。

作品の展示順がよく分からず、基本的に制作年代順としつつ、モチーフが同じ作品を並べているため、しばしばその順番は崩れ、作品リストの掲載番号順でもない。このあたりは見づらかったけれど、深く考えずただただ菅野圭介の色彩に頭と心を委ねさえすれば、左程気にならないと思う。

冒頭の3点「風景」(街景)、山岳風景(スイス風景)1936年頃、「グルノーブル」1937年は明らかに他の作品と異なっているが、それ以外の約90点の作品はどれも非常に似ている。

理由として、同じモチーフを繰り返し描いていることが挙げられる。
タイトルも同一な作品が多いため、このように文章にしてしまうと作品の差別化は非常に難しい。
例えば「秋」「風景」「海」「黒潮」「花」「静物」などなどいずれも複数枚の同一作品が展示されている。

なので、ここでは個々の作品というより展覧会全体を通じて感じたことを書いてみようと思う。

菅野の作品で使用される色調は2つに大別されるようだ。
一つは赤褐色や赤、黄など暖色系ベースのもの、そしてもう一つは青と白など寒色系ベースのもの。
私の好みは後者の寒色系ベースの作品で、彼の作品画面に、暖色と寒色が共存しているケースはそれほど多くない。

しかし両者が共存する作品は、そのバランスや配置が絶妙で、例えば「花」個人蔵は花の色を赤や赤褐色、黄色で描いているが、それ以外の背景や花瓶などは深い青や紺色でうまく抑制しバランスをとっている。
この微妙な両者のバランスが上手くいっている作品ほど、印象深いのは言うまでもない。

一方、私好みの寒色ベースの作品、主に海を描いた作品群に強く惹きつけられた。横須賀美術館に行かれた方ならお分かりだろうが、この美術館は目の前に大きく海が広がっている。まさに海の正面に向かって立つ美術館である。
眼前の海は、内湾でなく外洋に面しているせいか遠くに大型船の船影が見えるのも特徴。神奈川県近美の葉山も海を横にしているが、あちらの海ではヨットを多く見かけるが、大型船を見ることはまずない。
大海原を前にして、菅野が描いた海の作品を観る幸せ。

色彩の他に特筆すべきことはストロークだろうか。
横一線に引かれた何色もの横縞。その実に単純な画面は、一見私でも出来るのではないかという錯覚さえ起こさせる。
しかし、丹念に重ねられた微妙な色の違いによる色の選択は、菅野がいかに長時間、長期間海を眺め、海を愛し、その再現を絵画の中で試みようとしたのかを感じる。
何枚もの何枚もの海の作品を観て、「菅野は本当に海を愛していたのだろう。」と彼の気持ちが伝わって来る。
色の線だけが並ぶ画面の中で、ふと気になるのは白色の塗り方だった。白を使う時、彼はやや厚めに線を引くというより割合に細かいタッチで塗り重ねている。よって、絵具の塊がところどころにできている。
この絵肌の感じもとても好ましい。外壁や内壁に見られる漆喰などを塗り重ねた時のあの質感。

菅野の作品の中で第2充実期とされる1948年以後の作品では、ヨーロッパの風景を描いた作品が抜群に良い。
冒頭のハイデルベルクの哲学の橋などハイデルベルクを描いた作品はどれも形態の簡略化と美しい色彩が功を奏している。
他に「ブレーメンの森」「ピレネー」なども良かった。

こうした風景画とは別に彼が描く一連の「花」を描いた作品はどこか三岸節子の影を思い出させる。色遣いもさることながら、花のとらえ方が似ているように思った。

菅野は波乱の人生を歩んでいて、詳細は東御市梅野記念館HP(↓)をご参照ください。
http://www.umenokinen.com/modules/contents0/index.php?id=17
彼は晩年、作品がワンパターンと批評されても自身の作風を変えようとはしなかったという。
抽象画のように見える「蔵王雪山」を描いた作品群は精神のうねりを観るようでもあった。

最晩年の1枚「野菜車」1961年(埼玉県立近代美術館蔵)は、既に病を得て自宅にこもりきりとなり彼が望んだ自然美を失ってしまった時の作品。
その絵は、やはり赤褐色と黒で彩られていた。


なお、企画展だけでなく常設展示も非常に充実しています。特に特集「矢崎千代二の人物と風景」(6/27まで)に出展されていたパステル画は必見です。
日本パステル画会を立ち上げた矢崎のパステルによる美しい風景画は忘れられません。こちらも別記事にしようと思います。

*6月13日まで開催中。
本展は下記に巡回します。
・一宮市三岸節子記念美術館 2010年6月19日(土)~7月19日(月・祝)
・ミウラート・ヴィレッジ(松山市) 2010年8月7日(土)~10月17日(日)
・東御市梅野記念絵画館・ふれあい館 2010年10月30日(土)~2011年1月30日(日)

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