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「フェリックス・ティオリエ展」 世田谷美術館

setagaya

世田谷美術館で7月25日まで開催中の「フェリックス・ティオリエ写真展/いま蘇る19世紀末ピクトリアリズムの写真家」に行って来ました。
展覧会の詳細はこちら(一部画像が紹介されています。)

フェリックス・ティオリエ(1842-1914)は、19世紀末に炭坑や機械産業、繊維産業で急速に発展したフランスの都市サン=テティエンヌに生まれる。1857年にリボン製造業に従事して成功をおさめ、十分な富を蓄えて1879年に37歳の若さで引退。以後、ヴェリエールという村に住みながら、考古学の研究、専門書の出版、画家との交流、写真撮影などでその生涯を過ごした。
特に、バルビゾン派の画家たちとの交流はティオリエの写真に大きな影響を与え、自然や田園などを写した風景写真などにその影響が表れています。
ティオリエの写真は長い間その存在が知られていなかったが、1980年代に子孫によって紹介されることにより次第にその評価が高まっている。本展では、遺族らが保管する世界初のカラー写真であるオートクロームや約170点の貴重なヴィンテージ(ゼラチン・シルバー)・プリントが一堂に紹介されています。 ~展覧会チラシより抜粋


展覧会の構成は次の通り。
第1章 肖像写真
第2章 パリの風景
第3章 農村に暮らす人びと
第4章 工業化の時代
第5章 ティオリエの愛したフランス
第6章 色彩の世界へ

第1章では、ティオリエ一家やティオリエ自身の肖像写真などが展示されている。ここでは≪サン=ジェルマン=ラヴァル村のティオリエの孫たち≫1906年に注目した。ティオリエは、生涯アマチュア写真家を貫き、作品発表の場を持たなかった。しかし、この1枚を見るにつけ、明らかに彼の意図は単なる肖像写真、記録写真ではなく芸術写真を志向しているのではないかと推測される。背景の建築物-ティオリエは壁の垂直線がお気に入り?-にピントを合わせ、肝心の二人の孫は建築物に対して非常に小さく画面の隅にポツリと写っているだけである。孫の顔は、しっかりと判別できない。

肖像写真を撮影しつつ、常に彼の視線はもっと深い所にあったのではないかと第1章で感じた。

続く、第2章。ここでは、先だて三菱一号館美術館のマネ展に展示されていたような19世紀のパリの街の写真が並ぶ。1853年から1870年までセーヌ県知事を務めたオスマンの大規模な都市改造の様子が一見できる。また、1900年に開催されたパリ万博の様子が各パビリオン建設中の様子やセーヌ川から万博会場を臨む風景など、見事なモノトーンの諧調で風景を刻む。
特にパリ・モンソー公園を写した3点、ノートルダム大聖堂(怪獣像含む)5点は素晴らしい。今回、さすがに辛抱たまらず図録(これが図版印刷が出色の出来)を購入したが、改めて眺めてみてもため息モノ。

第3章は、ティオリエの孫たちが再び登場し、農村での人々の生活の様子をカメラでとらえる。農村風景をバックに孫たちも活き活きとした表情を見せている。孫娘と孔雀を写した作品、葡萄の収穫の様子、まるで一点の絵画を見るようだった。

第4章では、フランスの炭坑地を撮影。炭坑というのは洋の東西を問わず、写真を撮影したくなる何かが潜んでいるのだろうか。前章での農村風景が一転して、ボタ山や煙突から黙々と噴煙を吹き出している様子が撮影されている。しかし、炭坑の様子でさえもティオリエの手にかかると≪サン=テティエンヌの工場のある風景≫1880-1910年頃に見られるように、大地の様子、広大な空と雲の関係、そして煙突から高く上がる煙が一体となって、雄大な景色を作り上げていた。どの写真についてもあてはまるが、ティオリエが現像した写真の空の黒と白のバランスおよび諧調は本当に素晴らしい。

第5章。いよいよティオリエの真骨頂が発揮される。彼が愛したフランスの風景写真は実際以上に美しいのではないかと思えるほど。モノトーンによって、見えなくてよいものが見えなくなり、見せたいものだけが上手く表現されているといった印象を受ける。
特に前述したように空の様子。そして水辺の様子。これらの光と影をゼラチンシルバープリントに落とし込んだティオリエの技術力とセンスには脱帽。
が、空も水も良いけれど、彼の撮影する建築物の写真にも注目したい。ティオリエは建築美とも言える、垂直な柱やアーチ型の天井、まっすぐで長い回廊に強く惹かれていたのではないだろうか。
初期作品で見せた建物の垂直線へのこだわり、それは延々と彼の写真の中で受けつがれているように思う。

また、第5章では影のように黒く写った木々の枝、時にはこれを効果的に見せるため写真をアーチ形にカットしていることにも注目した。この樹木の黒は写真を焼く時に決まるのだろうか。写真技術に疎いため、分からないが、この黒と白のバランスの良さが一貫してティオリエの写真の魅力だと思う。

羊の群れの連作シリーは、まさにバルビゾン派の絵画のようでコローやテオドール・ルソーの作品を思い出さずにはいられない。彼らの油彩を意識して、ティオリエがこれらの写真群を撮影したのであれば、もはや絵画と写真の境界線はどこにあるのか・・・私には分からない。両者から感じるものは同じなのだった。

≪モルナンの池、嵐の空≫1880-1910年頃、≪サン=テティエンヌ周辺の木々と冬≫1880-1910年頃、≪プレシヴェの沼、積みわら、嵐の空≫1880-1910年頃、≪ブルターニュの港と釣り船≫≪小さな釣り船に乗る二人の男≫など、どれもこれも情緒と光、空気まで表現した写真作品に写真の中に自分が取り込まれていく気さえした。

第6章 「色彩の世界」へでは、ティオリエの撮影した初期カラー作品「オートクローム」の貴重な作品を3期に分けて7点ずつ紹介している。
第5章までモノクロ写真だけを眺めて来て、ここで初めて色彩世界が登場するが、これまた実に素晴らしい。1点1点はごく小さく、展時台にあるボタンを押すと、中からライトが当たってオートクロームの像が浮かんでくる仕組み。時間が一定経過すると照明が消え、画像は黒く沈んで行く。
何といってもここでは、作品番号174の≪ヴェリエール教会の入口で居眠りする聖歌隊の少年≫が素晴らしい。赤のマントを着用した少年の愛らしさ。最初観た時は少女だと思った。この作品は6月13日までの期間限定展示となっている。ご覧になりたい方は、ぜひ来週日曜日までに世田谷美術館までお運びください。

オートクロームは、カラーと言っても現在のプリントとは無論異なって、抑制のきいた静かな色彩で、時代を感じさせつつそこに魅力を感じるのだった。

展覧会図録もオススメですが、高画質印刷を使用したポストカードもこの質でこのお値段?(100円?だったか)という出来映えです。

*7月25日まで開催中。
以後、下記に巡回します。
・2010年9月4日~10月17日 山梨県立美術館
・2011年5月26日~6月26日 美術館「えき」KYOTO

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あおひー様

これはオススメです。
もう、モノクロの諧調の素晴らしいこと。光も影も自由自在。
実際は相当失敗もしたりご苦労されているようですが、生涯アマチュア
写真家でありながら、素晴らしい作品でした。

ポストカードはこの質でこのお値段!と驚いた記憶があるので
100円だったと思います。
原美術館のエグルストンも素敵でしたが、こちらは図録が未完成なので
7月入ってからの方が良いと思います。

No title

こんばんは。
これは気になってるんですよね~。

>高画質印刷を使用したポストカード
ああ、こんなこと知ったらほしくなっちゃうじゃありませんか。

まあ、おそらく近々のタイミングで行くと思います。
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