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「版画と彫刻による哀しみとユーモア 浜田知明の世界展」 神奈川県立近代美術館 葉山

hamada

神奈川県立近代美術館 葉山で開催中の「版画と彫刻による哀しみとユーモア 浜田知明の世界展」に行って来ました。

浜田知明(はまだ・ちめい)と言えば、最近では2007年にあのウフィッツィ美術館に版画作品が収蔵されたことで、一躍その名を轟かせた版画家・彫刻家。
92歳になる今も作品制作を続けているが、現在は1983年から取り組み始めた彫刻に取り組み、版画は開店休業状態になっている。

本展は、版画173点、彫刻73点、油彩画4点のほか、デッサンやスケッチ、資料など約80点、総計約330点によって浜田知明の世界を展観するもの。

著名な≪初年兵哀歌≫シリーズは他館でも観ているし、葉山まで足を伸ばすか迷ったけれど、330点という展示作品数に惹かれて行ってみることにした。

浜田知明は、熊本県出身で今も熊本在住。
それなのに、なぜ神奈川県立近代美術館での展覧会開催、しかも同館単独開催なのだろうと不思議に思っていた。
本展開催前、いつだったか神奈川県立近代美術館の鎌倉館の方で浜田の小特集が開催されていたように記憶している。この時、私は初めて彼のブロンズ彫刻作品を観たはず。版画家としてのイメージが強すぎたので、彫刻を観て驚いたのだった。

元々、過去に同館で浜田の回顧展を開催するなど、浜田作品を高く評価し作家との縁も深いことから、今回は浜田知明より同館に作品寄贈があり、その記念として開催されていると図録を読んで分かった。

今回は、作品リストの作成はもちろん、切り取るとポストカードとしても使える展覧会の鑑賞ガイドが作成されていて、これが分かりやすい。
ちょっとした工夫だけれど、こんな鑑賞ガイドなら大歓迎。

版画作品を鑑賞ガイドに従って、カテゴライズすると次の4つになる。
・「戦争・命」
・「都市・孤独」
・「不安・ユーモア」
・「愛・孤独」

私の中での浜田作品は、戦争や不安を呼び覚ますようなイメージだったが、もっと人間の根底にあるものを深く追求し、作品化しているのだと思いを新たにすることができた。

特に個人的に感銘を受けたのは「愛・孤独」に関する作品たち。
≪月夜≫1977年は砂漠のような原風景の中、裸でしっかりと横たわって抱き合う男女の全身像。右上に三日月が。そして、作品全体が3つの三角面で構成されているという構図デザインの妙。更には、淡いグリーンを使用して空気感を漂わせる。
≪江上昭三氏年賀状のための作品≫1975年は、父親の中にすっぽり母親と娘が入って、安心している様子を版画にした。母と娘は微かに微笑みを見せ、モノクロ作品ながらどこか温かみを感じる。

20代を戦地で兵として過ごした浜田にとって、戦争、死、命、不安といったテーマは切っても切り離せない。
だからこそ、家族や愛といった生命の根源になるテーマにも取り組んでいるのではないだろうか。

浜田が彫刻を始めたきっかけは、「人体がどのようになっているのか三次元で確認するため粘土で試してみた」ことだったという。
本展では、版画と版画作品を彫刻にした作家を並列して展示することで、両者の比較をすることもできる。
本展チラシ表面に掲載されている≪アレレ・・・≫1974年(エッチング、アクアチント)も彫刻≪アレレ・・・≫1989年にすると、版画とは右手の位置を変えたりと、意図的な変化を見せているのが興味深い。
≪水≫2005年、≪ボール≫2005年、≪チャックを閉じた男≫2009年などの最新作も旺盛な制作意欲を感じさせ、尽きることない創造力に脱帽するばかり。

彫刻作品では、焼け野原に一人佇む少女の作品≪風景≫1997年が忘れがたい。版画という平面を立体化することで、より現実味が強まって見えた。

また、いつもは壁で隠されている海側の展示室の窓が本展では覆われていない。彫刻作品を中心に展示している展示室からは海を臨みつつ作品鑑賞ができるという、この上なく幸せな展示環境になっていた。

最後の展示室では、かつて東京藝術大学陳列館で拝見した「藝大生の自画像」展に出展された浜田の卒業制作≪自画像≫1939年(東京藝術大学大学美術館蔵)に再会。
この自画像で私は浜田知明の名前を忘れられなくなったのだ。
彼の強いまなざしは意志の強さの象徴だろうか。そんな浜田をもってさえ、時に自死を考えさせたという戦争、軍隊制度とはいかにすさまじいものだったか。

≪自画像≫だけでなく≪静物≫1933年、≪外房風景≫1934年(いずれも熊本県立美術館蔵)という最初期の油彩も展示。
戦地でのおびただしいスケッチには圧倒された。
やはり、描くことを忘れることはできなかったのだろう。戦地や戦友の顔のスケッチによって、ともすれば過去を忘れがちになる自分に強い鉄槌を打ち込まれるような感覚を受けた。
こうした一連の資料や私信、年賀状など資料の数々も本展の見どころの一つだと思う。

*9月5日まで開催中。スケッチなど一部の作品に展示替えがあります。

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