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「上村松園展」 東京国立近代美術館

uemura

東京国立近代美術館で開催中の「上村松園展」に行って来ました。
展覧会公式HPはこちら

本展では、松園の画業を大きく3期に分け、代表作を含む約100点の作品によってその軌跡をたどるとともに、松園芸術の本質を改めて探るものです。チラシに謳っている「珠玉の決定版」かは分かりませんが、展示替え作品を含めると代表作の大半を網羅した展覧会と言えるでしょう。

1章 画風の模索、対象へのあたたかな眼差し
2章 情念の表出、方向性の転換へ
3章 円熟と深化
3章-1 古典に学び、古典を超える
3章-2 日々のくらし、母と子の情愛
3章-3 静止した時間、内面への眼差し
附章 写生に見る松園芸術のエッセンス

作品は、ほぼ制作年代にしたがって展示されている。一通りすべての作品を観てから、Uターン。一往復で約1時間ちょっとの鑑賞時間となった。金曜の夜間開館を狙って行ったが、この時点での混雑はそれ程でもないので、自分のペースでじっくり鑑賞することもできる。

自宅に戻り、村松梢風「本朝画人傳」巻八の上村松園の章を読み返してみた。松園の生きざまと今観て来た作品群を思い返し、得心の行く心持になっている。展覧会を一巡した時は思った程の感動が得られる、楽しみにしていたのにどうしたのだろうと思ったが、彼女の作品を鑑賞するにあたっては、作品のみならず、松園の生い立ちや人生をも振り返る必要があったのだ。本展ではそこまでの追求がなかったのが残念。もう少し踏み込んだ展示や解説が欲しかったが、恐らく図録にはそのあたりについて詳細が記されているのだろう。

印象に残った作品は次の通り。

・「清女褰簾之図」 1895(明治28)年
松園20歳の作品でモデルは清少納言。紫式部でなく清少納言を選んだ所が松園らしいと思う。
幼い頃より絵が好きな娘だったという。特に幼い頃から人物画が好きで、人物ばかり描いていたといのは特筆すべきエピソードである。
14歳で京都府画学校に入学し、鈴木松年に指導を仰ぐが、松年と退職により結果的に1年で画学校は退学。鈴木松年の私塾に入り、ひたすら古画や浮世絵などの縮図を描きまくっていたという。東京で浮世絵の展示があると知り、寝食を忘れ、博物館に通い模写を続けたという大変な努力家。
≪清女褰簾之図≫は、松園の古画学習の成果を伺い知ることができる作品。本展では、17歳の時に描いた≪四季美人≫もあるが、これらの作品は、非常に上手いけれど、まだ松園らしさ、松園の人物画表現は見えてこない。

・「人生の花」  1899(明治32)年
24歳で既にこの域に達していることが恐ろしい。前期(9月26日まで)は、名都美術館所蔵作品(前期のみ)と京都市美所蔵の同タイトル、構図、サイズの2点が横に並ぶ。京都市美には2点の≪人生の花≫があるようで、残る1点は東京会場に出展されず京都会場のみ。
この2点の違い探しをするのも楽しいが、女性の着物や帯の家紋や紋様が違っているのでチェック。若き日の松園作品の着物や帯の描写は精緻を極めるが、3章以後の作品では着物に細かな紋様がほとんど入らなくなることにも注目して欲しい。

・「長夜」 1907(明治40)年
1章でもっとも好きな作品。夜っぴいて書物を読みふける娘と行燈に灯をともす女。まるで、観て来たような光景で、時代と情緒が感じられる。

なお、1章の≪四季美人図≫は第三回内国勧業博覧会に応募し、一等を取った作品とは異なるのだろうか?受賞した作品は1幅に季節に応じて4名の美人が描かれているようだったが、この作品は4幅に分かれている。

・「花がたみ」 1915(大正4)年
松園が習っていた謡曲に着想を得たもの。何も前提を知らずとも、花かごを腕にかける女が正気を失っていると分かる。説明なしで、それを醸し出すあたりがさすが。どこか虚ろな焦点の定まらぬ瞳とぽかんと半びらきになった口許。中盤で、この作品のための習作、下絵が何点か展示されているが、人物のポーズはいろいろと思考錯誤していたのだろう、下絵では横を向いて何かに取りすがるポーズがいくつか描かれていた。

・「焰」  1918(大正7)年
狂女の傑作2点が揃い踏み。こちらは『源氏物語』の葵の上の生き霊を描いたもので、糸のような長い髪の一部を口に咥え、着物の蜘蛛の巣の紋様がすべてを象徴している。画人傳によれば、能で美人の嫉妬を表すには白目に金を入れることから、本作も裏から白目に金泥をさしているとのこと。生憎、単眼鏡を持参しなかったので、その点については確認できなかった。般若を思い出した。

・「伊勢大輔」 1929(昭和4)年
たおやかで、これまた漆黒の糸のような黒髪が印象深い。相変わらず精緻な装束の表現も素晴らしい上に、大輔のきりっとした雰囲気が素敵だった。

・「草紙洗小町」 1937(昭和12)年
天井から真っ直ぐ吊り下げられない程の大幅。小野小町を描いたもの。人物からは気合いが感じられた。62歳の作品であるが、既にこの頃には着物に細かな紋様はなく、画面背景もすっきりし、人物をクローズアップした構図。

・「母子」 1937(昭和12)年
チケットや『本朝画人傳』巻八(中公文庫)の表紙にも採用されている。松園59歳の作品。抱かれている赤ん坊が背中を向けていて、頭髪の青々とした剃り跡が清廉な感じ。母と子の静かなひとときと愛情を感じる。

・「鴛鴦髷」  1935(昭和10)年
こちらも小品だが素晴らしい出来栄え。娘の髷に要注目。髷がまるで生きもののように見え、立体的な感じがした。髪飾りの紅珊瑚がたまらない魅力。松園描く女性は数多いが、髪飾に珊瑚を使用しているのは本作だけではないだろうか。白い小花の飾の組み合わせも良し。

・「夕暮」  1941(昭和16)年
松園66歳の作品で、京都府立鴨沂高等学校が所蔵している。公立高校でこんな名作を観られるとは羨ましい限り。恐らく女性は松園が若き日に観た母をモデルとしたもの。松園は父と早くに生き別れ、姉と母の3人家族だったが、後に母との2人暮らしが長く続く。母は昭和9年に86歳で亡くなるが、それ以後母への思慕を感じさせる作品制作が続く。夕陽に明かりを取ろうとする市井の生活の一端を感じさせるとともに、何とも情緒ある作品に仕上がっている。続く≪晩秋≫1943(昭和18)年も見事だった。

・「鼓の音」  1938(昭和13)年、1940(昭和15)年
松園は同じ構図、ポーズ、大きさの作品を何度か描いているようだ。その理由は何だったのだろう。着物と帯の紋様や色が違っているだけ。請われて再び絵筆を取ったか、松園自身が再挑戦したくなったのか。鼓を打つ前の緊張感が漂う。

本展鑑賞後、常設展で鏑木清方はじめ他の日本画家による美人画を観ると、松園が求めたものは何だったのかが感じられる。松園の美人画に描かれる女性たちは、時に艶やかで、気品があれば、狂おしいばかりの感情を内に秘めていることもある。しかし、後年になればなるほど作品中の女性は内に強さを秘めているように見えてならなかった。後期に展示される≪序の舞≫はその最たる作品だと思う。

自身もそうありたいと願った松園の女の生き様が伝わって来る。松園は、鈴木松年⇒幸野楳嶺⇒竹内栖鳳を師とするが、若き頃、松年の愛を受け未婚の母となるのだ。当時ではまだ珍しかった才能ある美人画家は、周囲から羨望や嫉妬によるいじめも受けたという。それをものともせず、自身の画道を貫いた松年やその母に、明治の女の強さを痛感した。

*10月17日まで開催中。途中展示替えがあるのでご注意ください。
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の≪雪月花≫1937年のみ10月5日~10月17日の展示です。
この後、11月2日より京都国立近代美術館に巡回します。

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