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「田中一村展」 千葉市美術館

issonn

千葉市美術館で開催中の「田中一村展」に行って来ました。

田中一村(1908-1977)は、栃木県に生まれ、千葉市に20年住んだ後に奄美大島へ移住。奄美大島の亜熱帯植物や鳥などを題材にした日本画を描き、それらの作品を公表する機会もなく無名のまま亡くなった画家です。
1980年代にテレビの美術番組で紹介され反響を呼び、全国にその名を知られるようになったとのことだが、残念ながら私はその当時まだ中学か高校生だったのか、番組のことも田中一村の名前も知らず今日に至る。

本展は、一村ゆかりの田中一村記念美術館、鹿児島市立美術館、千葉市美術館が共同で取り組む初の回顧展。近年の調査で新たに発見された資料を多数含む約250点の作品により過去最大の規模で一村の画家としての実像を明らかにしようとするものです。

個々の作品云々について述べる前に、全体の感想を挙げておきたい。
一村の構想画、写生図、スケッチブックを含め展示作品の量は非常に多い。しかし、これだけの作品、資料類を展示していただいたおかげで、一村の画業を初期から晩年に至るまで、劇的とも言える変遷の過程や制作方法まで展観できる。と同時に作品を観て行く過程で、一村の気持ちや状況に思いを巡らせ考えることもできた。
結果、自分の命と引き換えに仕事を2年休職し制作だけに集中し完成させた2点≪アダンの海辺>≪不喰芋と蘇鐵≫を前に、思わず涙がこぼれるほど、すっかり一村の世界に没入したが、作品もさることながら、本展関連各位の皆様の企画意図や一人でも多くの来場者に観て欲しいという思いが伝わったからではないか。

先日訪れた栃木県立美術館の常設にも一村の作品が3点程並んでいたが、その時は特段の感慨はなかった。本展チラシを手にした時も、掲載作品について心惹かれることはなかったことを考えると、やはり実作品の持つ力の凄さ、そして一村の場合は、個々の作品について観るよりも、やはり作風の変遷を観ることで魅力が倍増するように思った。

展覧会構成は次の通り。
第一章 東京時代(1908-1938)
第二章 千葉時代(1938-1958)
第三章 奄美時代(1958-1977)

第一章
冒頭、8歳の時に描いた色紙2点から始まる。11歳の作品≪蛤図≫を観ても、既に相当の腕前を持っており才能の片鱗を感じる。明治以後、大正時代は南画全盛の時代で、小室翠雲を師として南画家の道を歩み始める。
この時代の一村の作品は、呉昌碩、趙之謙らの中国(上海)画壇の様式が色濃く、まさに彼らの作品かと思った。絵だけでなく絵に寄せる讃にも一村の学習の成果が観られる。ここでは墨の扱いに注目したい。中学生とは思えぬ伸びやかで大胆な筆づかいと墨の扱い。しかし、先人の書風に追随するため個性に欠ける。≪石榴の花≫、≪藤花図≫≪蘭竹図≫が良かった。

昭和6年(1931年)≪水辺にめだかと枯蓮と蕗の蕾≫。
これまでの作品と大きく趣を変え、一村の趣意を新たに打ち出した転換期となる重要な作品。一村に作品を発注していた支援者から賛同を得られず。しかし、一村は孤立無援であっても独自の画風への道を歩み始める。

第二章 千葉時代
千葉時代の作品はまさしく疾風怒涛の時代と言えようか。自身の画風を追い求める一村のたゆまぬ努力と苦悩が様々に変化する作風から感じられる。精神的に苦しかったのではないかと勝手に想像してしまった。

昭和13年千葉に移住。千葉市近郊の風景を描き始めるが、これらの制作時期は特定できないようで、作品リストの制作年代もブランクになっている。
≪南天図≫≪白梅に群鶏図≫≪桐葉に尾長鳥≫≪秋日村路≫などが印象深い。

戦時中、戦後まもなくは金銭を得るため、依頼して肖像画なども手掛けていたことが資料からわかる。

戦前に依頼を受けたが実現せず、戦後取り組むこととなった個人宅の襖絵や石川県の聖徳太子殿の天井画を再現した展示が素晴らしい。前半のハイライトだと言える。
ここでの一村の画風というのを語るのは難しい。個性をたどれないのが個性というべきか。時に琳派風であったり、木米の水墨画風だったりと、どちらかと言えば精緻な画風。

戦後昭和22年にこれまで使用していた米邨から「一村」へ改号。展覧会へも出品するようになる。
青龍展で≪白い花≫昭和22年(1947年)が初入選。緑の竹や葉とと白い花々の清澄な画面の中に、一羽の鳥が配される。一村の描く鳥はどれも忠実な写生結果により精緻である。
続く≪梨花≫昭和23年(1948年)はやや暗い画面が嫌われたか落選。個人的にはこの作品とても好きなのだが、画壇には認められない。更に本人にとって手ごたえのあった≪秋晴≫が落選したことで、もう1点≪波≫(出展されていない)の入選も辞退する。青龍展だけでなく院展、日展への出品も行っていたが、いずれも落選。

当時の中央画壇に認められなかったことに対して一村の言葉や手記が見つかっていないようだが、本人の心境を鑑みるに、奄美移住への決意の発端になったのではないかと推測される。

千葉時代の最後に描かれた≪忍冬に尾長鳥≫をはじめ、鳥をモチーフにした作品が多く見られる、これらの中には特に鳥の描き方に後の奄美における画風の一端が感じられた。
≪ずしの花≫≪山村六月≫は構図の面白さが目を惹く。植物を大きく前面に持ってくるなどグラフィックデザイン的要素が強いように思った。

第三章 奄美時代
相次ぐ落選、特に満を持して描いた作品が落選したこともあり、ついに一村は50歳で過去の自分との決別とも言える奄美への移住を決める。
移住後の一村は、鳥や植物を写真におさめては絵に転換していく。人物をまったく描かない訳ではないが、それらは、奄美の人々に依頼された遺影だったりと請われて描いたものが多い。そういった肖像画も展示され彼の生活や人となりが伺われる。
そういったものを除けば、スケッチでもとにかく植物や鳥のものが多い。
奄美に移住して後、ここでしか観られないような鳥や植物に接し、しかも奄美が抱く神聖さに打たれ心が湧き立ったことは想像に難くない。
奄美の島の人々と助け合い交流しながら、更なる独自の画風を追求していく姿に強く心打たれた。

「日本画」とう枠組みの中で、常に格闘し続けていた人、そんなイメージが一村にはある。
ありきたりの日本画ではなく、最後に見せた新境地は紛れもない一村だけの絵であり、その形であった。
千葉時代の最後に見せたようなグラフィカルな要素がより強くなり、日本画というより西洋絵画のようにも見える。しかし、蘇鉄の葉の針の一本一本まで色彩を変え描き分けるなど、細部に渡る丁寧な仕事と大胆奇抜な画面構成が混在となり、これまでの作品にはなかった圧倒的な力強さを感じた。濃い溢れんばかりに湿潤な香さえ感じられる。

これが一村の画業の到達点で日本画に対する一村が見出した最後の回答だったのだろう。

なお、展示会場の途中で常設展が配置されているが、これは後回しにして余力があれば鑑賞した方が良いと思います。途中で違うものを観ると、一村展の流れが分断し悉く印象が崩れる可能性があるため、くれぐれもご注意ください。
また、展示作品、資料共に膨大なので途中で休憩しても良いかもしれません。2時間超みっちり作品と対峙した私は精魂尽きた感じがありました。

先程、NHK『日曜美術館』の「田中一村」特集を拝見したが、展示会場では得られなかった奄美大島の様子や『聖地』が映像として紹介され、新たな視点で≪不喰芋と蘇鐵≫を見直すことができました。いかに通り一片の見方や上記感想しか書けなかったかを痛感し、反省しました。ご覧いただけなかった方は、来週夜20時から再放送もあるので、こちらも併せてご覧になることを強くオススメします。

*9月26日まで開催中。今年度必見の展覧会だと思います。

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田中一村 新たなる全貌 @千葉市美術館

 田中一村は、1908年、栃木に生まれた。 2006年、彼の故郷の「とちぎ蔵の街美術館」で開かれた「市制70周年記念: 田中一村の世界」を見て、この画家の概略を知ることができた(記事はこちら)。その時は、画が40点、写真が12点。画としては館蔵1点、個人蔵3点の他はす

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ゆこもり様

こんばんは。
高島野十郎は孤高の画家でしたが、田中一村とは違うような
気がいたします。
野十郎は画業人生においてそれ程大きな作風の変化は見られませんが
一村は劇的な程に変化します。

もし、行くことができなければ図録だけでもお取り寄せされては
如何でしょうか?
2500円とは思えない充実度です。

No title

こんばんは!
やっぱり必見ですよね~。そうですよね~。。。
でも、千葉は遠い。。。
なんだか、ふと野十郎さんを思い出しました。
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