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「彫刻家 エル・アナツイのアフリカ-アートと文化をめぐる旅」 国立民族学博物館

anatui

国立民族学博物館で12月7日まで開催中の「彫刻家 エル・アナツイのアフリカ-アートと文化をめぐる旅」に行って来ました。

エル・アナツイ(1944年生まれ)は、ガーナ生まれでナイジェリア在住の彫刻家。近年はワインやビール瓶のふた、シールといった廃品を使用し、優美でスケールの大きな織物をおりあげることで知られています。
本展では、アフリカの現代美術が置かれた状況を前向きに捉えなおし、エル・アナツイというアーティストの作品世界を美術史と文化人類学の双方から語ろうとしています。更に、美術史と文化人類学、美術館と民族学博物館の新しい創造的な協力関係を模索していきます。

エル・アナツイのことは何も知らなかったけれど、アフリカの現代美術、そして特に彫刻という分野でのアフリカの現代美術とは如何なるものであるか非常に関心があった。

展覧会のフライヤーを見た時には気付かなかったけれど、フライヤー表面に使用されている作品≪レッド・ブロック≫2010年は実は巨大な織物の一部で、織物といっても繊維や布でできているのではない。
前述の通り、何か缶詰の缶蓋を金属線(銅線)でつないで織り上げているのだ。これだけ同種類の缶を集めるということは相当消費量の激しいものでないと、時折異なる種類の缶の一部も混ざっているようだが、ほぼ同じものばかり。
近づいて実物を見るまでは、缶でできているのか分からなかった。

展示は、初期の作品から近作へと時代を追って作品の変遷を辿る。
第1章 記憶を彫る
初期(1982年~)の作品では、木彫やレリーフ表現によって過去のアフリカから現在のアフリカへ。彼の祈りをこめた作品を制作している。
たとえば、「焼け焦げ」は虐げられた植民地支配時代のアフリカでの人々の苦境を表現。作品をアナツイらしくアレンジし、例えばナネビィ(さなぎ)や人間を表現している。アクアバ(お守り)という作品がとても印象に残った。
木を刻み、彫ることで遠い時代の記憶や日々の生活を記憶に留めようとしたという。

第2章 歴史を紡ぐ
1990年代から次第に彼の作品は変化を見せる。インスタレーションとして彫刻を見せるという試行がこの頃から始まる。
そして2000年頃を境にビールやリカーの蓋を再利用して優美でスケールの大きな織物を作り始める。
本展2階の展示スペースを観て作品が制作されたという≪排水管≫2010年は、他の作品とは違って織物でなはなく見事にタイトル通り廃物缶を利用して、管そのものを立体造形として見せてくれる。
可変可能な造形物。

第3章 創造のプロセス
アナツイは工房を持っており、常に5~6人の人々が働き総勢20人ほどの助手がいる。彼らは都合の良い日を選んで工房にやってきて自分の分担作業を行って帰って行く。分業制を採用しているのも特徴のひとつ。日常生活の一部のように缶やアルミ素材を織り上げていく。織り上げる前に膨大な量の瓶のキャップや缶蓋を切り取る作業もある。パーツを助手達の手で作りあげた後に、最終段階でアナツイの指示でそれらは組み合わさり織物や立体化されていく。
彼らの頭の中には芸術作品を制作しているという概念はなく、ただ単に仕事もしくは作業なのだった。会場には、アナツイのインタビュー映像も流れていた。時間がなかったので、少ししか見られなかったけれど、国立新美術館の図書室で本展図録をじっくり読みこんでみたい。

また、彼は作品構想段階でアイデアをノートにメモする。それがドローイングやデッサンへと展開。本展でもその一部が展示されている。

第4章 作品の背景-社会、歴史、文化
最終コーナーでは、アナツイにインスピレーションを与えている彼の故郷ガーナの伝統的な織物「ケニテクロス」(ケニテ布)、これはガーナのアサンテ王族がまとった高貴な人々の衣装として使用されていたらしい。
その色彩は、アナツイの作品で見られるような原色や光を彼流に再生したものであるようだ。

アナツイの中には常にアフリカ、ガーナやナイジェリアは存在し、国や民俗の歴史や文化資源などが作品に融合し投影されていることは否めない。
巨大な幕のような織物としての展示でなく、それらを使って衣装を制作してみるのも面白い。
しかし、やはりただの工芸でなく現代美術と評価されるには、こうした文化を背景にしながらも新しい造形、本展で見せてくれた新作「排水管」のような、一種民族文化人類学とは無関係に思える作品の制作も必要になってくるだろう。
更に、彼が作品に使用する缶やビールの蓋も見事に生活に根付いたものであることを忘れてはならない。数千年の後、アナツイの作品を未来の人類が見た時、現代の私がケンテクロスを観たのと同じような感慨を抱くのではないか。

アナツイの作品は、ロンドンの大英博物館でもパリのポンピドゥーセンターでも観ることができるという。
すなわち、民族学に分類すべきか美術として分類すべきかどちらにも分類可能な境界線上の位置にある証だろう。

が、どちらにあっても良いだろうし、どちらの側面から見ても彼の作品は時代や文化を見事に反映している。
しかし、やはり私の目にはれっきとしたアフリカ現代美術として鑑賞した。
工房制作という方式も、現代の欧米作家ではありがち。

この特別展を鑑賞した後、常設展示の国立民族学博物館に初めて入った。
ぐるりと一周したが、日本人であっても知らないような日本の伝承文化の数々、まして世界中の民族学の形ある物が広大な展示室に満載でめまいを起こしそうだった。
その中で、再びアナツイの彫刻を思い出すと、この常設展示空間にも展示されていた作品≪くずかご≫2004~2010年を拝見すると、やはりこれは美しい彫刻作品として私の中に深く刻まれた。

*12月7日まで開催中。残念ながら作品リストはありませんが鑑賞ガイドが配布されています。

本展は、この後下記に巡回します。
神奈川県立近代美術館葉山 2011年2月5日~3月27日
鶴岡アートフォーラム 4月23日~5月22日
埼玉県立近代美術館 7月2日~8月28日

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