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「没後10年 麻田浩展」 京都国立近代美術館

麻田2


「没後10年 麻田浩展」に行って来ました。
麻田浩(以下敬称略)は本展で初めて意識したのですが、新潮文庫松本清張著「ゼロの焦点」の表紙画を手がけていたということなので、どこかで目にしたことはある筈。

ゼロ


展覧会のチラシの青緑色に惹かれて、同じ京都岡崎で開催中のフィラデルフィア美術館展より先にこちらに入りました。

麻田1


今回の展覧会は没後10年の回顧展でこれまで紹介されることのなかった最初期の作品から未完の絶筆まで、画業の全容を四部構成で網羅しています。


会場正面入るとすぐに代表作・大作「地・洪水のあと」が掲げられており、ぐっと来ました。
麻田はこの大作一点のみで京都のギャラリーで個展を行ったそうです。
それだけの自信作であったのでしょう。

荒廃した世界の中、地中に沈んでいくような感覚を得ました。


Ⅰ知られざる初期作品 1953-1971

初期の作品は、今回近美の常設で参考展示されていた師の桑田道夫氏の作風に似ており、後の作品と大きく異なっています。
しかし、一貫してその色調は変わっておらずどこか暗い。
「赤」というのは明るい色なのに、麻田が使う赤はなぜか暗い。


Ⅱパリへ画家の道を求めて 1971-1982

徐々にシュールレアリスム的な作風となっていきますが、気になったモチーフは「蝶」「貝」「石」そして「水滴」。

日本のシュルレアリスム作家にとって「貝」はどんな意味があるのでしょうか?
先日同じシュルレアリスム作家北脇昇さんの作品「クオ・ヴァディス」を一村雨さんのブログ「つまずく石も縁の端くれ」でも目にしたばかりですが、麻田作品にも貝が何度も登場します。

貝は自分自身?自然の象徴?
謎です。

大作が多く、これだけのの大作を何点も書けばやはり気力・体力とも消耗するだろうなと妙に納得してしまいました。
ただ大きいだけでなく、描き方描く対象も緻密です。


この緻密振りを更に発揮するのが版画作品。
パリ滞在中に麻田は版画作品にも取り組みます。

私はこの版画作品が気に入りました。
もし「1つ欲しい作品をあげるよ」と言われたら迷わず「水のはなし」を選びます。
水滴がまるで生きているような感じです。


Ⅲ「制作ただひとすじの生活」 1983-1997

長期にわたるパリ滞在の末、健康を損なった麻田は日本に帰国。

パリ時代の作品に見られた「水滴」の作品は「水」という形に移行し、同時にテーマに宗教的なものが見られるようになります。
麻田は帰国後キリスト教の洗礼を受けますが、最晩年の作品ではアダムとイブの原罪をテーマにした作品も見られます。

油彩の中で一番好きだったのは、この時代に描かれた「いずこへ」(チラシ表紙に使用されている)。
木蓮なのか、麻田作品ではあまり「花」が描かれることがないのだが、この作品には沢山の木蓮が花を付けている。

作品を通じ一貫して感じて来た「荒廃」さが、「いずこへ」では復活の兆しを受けました。


しかし、大作に取り組む疲れや体調面の不安からか麻田は1997年自らの京都市龍安寺のアトリエで自ら命を絶ちます。


Ⅳ表紙画の仕事 

最後に、麻田が手がけた本の表紙絵がまとめて展示されています。
ここでは中上健次「水の女」が特に印象に残りました。


会場にはパリ時代や晩年の日記や作品についてのメモが展示されています。
特にパリ時代の日記には、不安と戦いつつ制作を続ける様子が伺われ、感銘を受けました。

作品を生み出す、作品を描き続ける大変さのようなものを感じたのです。


初期の作品から絶筆までを通して見る事で麻田の半生を一緒に過ごしたようなそんな錯覚にとらわれました。

麻田の「心の原風景」に少しでも触れることができたのかなと思います。

常設展では、日本画家である父(麻田辨自)、兄(麻田鷹司)の作品、師である桑田道夫らの作品も同時に展示されています。
こちらの作品も一緒に見られたことで、更に麻田浩という人の作品に近づけたような気がします。


終わってみればフィラデルフィア美術館展よりこちらの方が、胸にずしんと来ました。


*没後10年 麻田浩展 於:京都国立近代美術館で9月17日まで開催中。
詳細は同館HP(以下)ご参照下さい。
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2007/357.html
解説がかなり詳しく掲載されておりオススメです。

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没後10年麻田浩展 京都国立近代美術館

memeさんのブログで初めて知った画家。新潮文庫の松本清張「ゼロの焦点」の表紙を描いた画家ということで愛着を感じたこともあって、出かけてみた。びっくりした。この人の絵をどう表現したらいいのだろう。初期の作品こそ、まったくの抽象画であるが、その後の大部分の作..

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みちる様

これはちょっと気合入れて書いたのです。

それが伝わって嬉しい!

読み手さんがいらっしゃってこそです。
最後まで読んでくれて、本当にありがとう。

すごいなあ。

この詳細な記録、改めて感心しちゃいました。
読んでる人には重要な情報源、
memeさん自身にとっても振り返って見られる
有用なデータベースみたいになってますね。
すごいなあ。とちょっと妙な感想でした。

一村雨さま

こんばんは。
タイムリーな話題となってこちらも嬉しいです。
「麻田浩」展、ぜひぜひご覧になって下さい。
昨日、TV日曜美術館のアートシーンでも紹介されておりました。

このような回顧展はこの先いつ開催されるか不明。
北脇昇さんと同じような状況です。

フィラデルフィアは東京より空いているかも。
目の前なので寄るのは楽勝ですよ。

ご紹介ありがとうございます

こんにちは。
私も今週、京都に出かけるので、この展覧会
チェックしたばかりです。やはり、松本清張の
文庫本のカバー絵ということで、魅力があります。
フィラデルフィアは関東地方にも巡回されるので、
こちらもそうかなぁと思ったりして、見に行こうか
迷っていたところです。
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