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版画の「アナ」-ガリ版がつなぐ孔版画の歴史 和歌山県立近代美術館

和歌山

和歌山県立近代美術館で4月17日まで開催中の「版画の「アナ」-ガリ版がつなぐ孔版画の歴史」展に行って来ました。

先日、現在国立西洋美術館で開催中の「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」展では、銅版画(凹版)を堪能したが、今回は、孔版である。

孔版は、版にあけた孔(アナ)からインクを通して刷る技法で、古くは型紙による染色(ステンシル)に起源をもち、現在においては、シルクスクリーンへ発展している。
孔版の中でも特に、日本で発達したのが謄写版、いわゆる「ガリ版」であった。明治以後、官公庁や会社、学校に普及したらしい。

年令が分かってしまうが、私が小学生だった頃、学校の先生が配布して下さるプリントはガリ版刷り。確か、大学生の部活(バレーボール部)で、部員の作文集を例年作成し1年生が編集や作成作業にあたるのだが、確か鉄筆でガリ版ではなかったか。いや、さすがにあの頃にはボールペンで謄写する方式だったか。

とにかく、木版や銅板、石版よりも私にもっとも馴染み深いのは謄写版であることは間違いない。

本展では、和歌山市で謄写印刷工房を開いていた清水武次郎(1915-1993)の謄写版の作品や仕事ともに、同じく謄写版で独自の画境を拓いた福井良之助の作品、日本のシルクスクリーン版画のさきがけとなった村井正誠、横尾忠則ら、現代版画のなかの孔版画など、清水と同時代の孔版画によって、孔版の多様性を紹介するものです。

1.清水武次郎の仕事

第1章の清水武次郎の仕事が本展において、最大の見どころと言って良いだろう。初めて知った版画家で、彼が1915年(大正4年)に和歌山市に生まれ、学生の頃から絵を描いていたが、絵画の製版を得意としていた先輩教員の奥山勇の影響を受け、独学で謄写版の技術を学び、カット集の制作を始める。
そして、驚くべきことに、終戦の年1945年に置く大和謄写印刷書、「蝸牛工房(かぎゅうこうぼう)」を開くことを決め、良く年5月に『創作かっと図案集』を発行する。また、謄写版による雑誌『とうしゃ文化』の創刊も同年に開始。
この雑誌を観た、孔版画家、若山八十氏(わかやまやそうじ)から、「創作版画」としての謄写版を薦められ、本格的に版画制作を開始する。

その後、清水は日本版画協会展への出品をはじめ、国画会展などに出品するようになったが、1967年に展覧会への出品をやめた後も、昼間の謄写印刷所の仕事を終えた後に、制作を続け、1971年に初めての個展を開催。以来、個展を主な作品発表の場とした。
ロウ原紙だけでなく、新しく開発された和紙をもとにした孔版原紙をはじめ、さまざまな素材と技法による孔版により独自の表現を追求していった。

初期作品では、「少女」1948年や「物頭」1948年が良い。
「少女」は、具象的でこの後、晩年になるにつれ抽象的な作品へと変化していくが、その作風の変化を味わうのもこの展覧会の魅力のひとつ。「少女」は背景の夏ミカン?なのか樹木と少女の洋服、背景の空の色、色の組み合わせの妙が印象深い。

そして、前述の「とうしゃ文化」は創刊号からずらりと並ぶが、表紙絵の何とも言えない味わい、懐かしさ、しかし懐かしいだけでない芸術性、殊に私は色味とモチーフのデザイン性に惹かれた。

1958年以後の作品から徐々に抽象化が進んでいく。
「考える鳥」1958年、「埋もれた壺」1959年は謄写版の作品。1962年頃より、和紙孔版の作品取組が始まる。
和紙と言えば、かのレンブラントも支持体である紙に対して強い探究心を持っていたが、やはり洋の東西を問わず版画家の愛するのは「和紙」と共通しているのが嬉しい。

1970年代以後の作品ではタイトルも「作品」と無題に近いものになり、その作品は何らかの形態というより色面の追求、もしくはマティスの切絵を思わせるような画面に変わる。

また、展示では清水の作品だけでなく、彼が保存していた謄写版の貴重な資料も多数紹介されている。
各地の謄写版技術家との交流や、先輩・同業者からの行為と励ましが文書として残されている。また、昭和初期の孔版版画の潮流も読み取れる。

件のマティスの切絵「ジャズ」シリーズ1947年はステンシルで制作された版画集。加えて町田市版画美術館で過去に一度観たかもしれない『ガゼット・デュ・ボントン』1920年(個人蔵)の挿画は、すべてステンシルで1枚ずつ彩色されている。

2.謄写版の三人-若山八十氏、福井良之助、野田哲也
この章では清水と同時代の謄写版画家の3人の作品を紹介する。

若山八十氏(1903-1983)は、戦前から雑誌『孔版』を出版し、1942年以来、日本版画家協会をはじめとする展覧会に謄写版による版画を出品。

今回はこの雑誌『孔版』(個人蔵)が創刊号から90号まで、途中わずかに展示されていない豪\号数(例えば2号、3号、ただしこちらは再刊ものなら出展されている)一挙に展示。
こんな機会はなかなかあるものではない。『とうしゃ文化』も良いが、こちらも魅力的。

私個人としては、福井良之助(1923-1986)の作品が、3名の中では一番好みだった。モチーフは身の回りの静物や人物、動物、植物。特に「蝶と菫」1963年、「けし(2)」1959年などが気に入った。
彼はストレートに謄写版に紙と和紙には手を出さなかったようだ。

3.シルクスクリーンの三人-村井正誠、横尾忠則、靉嘔
ここについては省略。

4.現代美術のなかの孔版
最後は海外作家や現代美術の中で孔版を取り入れた作品の紹介。

有名どころでは、力点シュタイン、ウォーホル、バスキア、フランク・ステラ、リチャード・セラなど。
日本人作家では、うらわ美術館の本をめぐる展覧会で拝見した荒木高子や三島喜美代の作品と再会。
草間弥生や高松次郎らの作品もあり。
これらはみなシルクスクリーン技法が使用されている。シルクスクリーンとは1907年にイギリスで布地のプリントのために特許が取られたのが最初。
もともと枠に張った薄い布の目を利用して版を作る技法。

大正から昭和40年代までの孔版画の歴史から現代美術まで、現在に「ガリ版」に類似した技術が多くの作家によって使用されているのがよく分かった。

なお、和歌山近美は常設展示も充実しています。常設のコレクションはアメリカ近代美術と小倉遊亀をはじめとする日本画コレクションを多く所有している。ごく最近ではコレクターの田中恒子氏による作品寄贈があったり、充実していた。

*4月17日まで開催中。

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