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「松井紫朗-亀がアキレスに言ったこと 新しい世界の測定法」 豊田市美術館

松井

「松井紫朗-亀がアキレスに言ったこと 新しい世界の測定法」 豊田市美術館 6月11日(土) ~ 8月28日(日)
http://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/2011/temporary/matsui.html

松井紫朗と言えば、昨年のあいちトリエンナーレの愛知県美術館会場で、外からも中からもつながる巨大なバルーン作品を思い出さずにはいられない。というか、恥ずかしながら私はその作品で初めて松井の名を知った。
あいトリのバルーン作品は、会期始まってすぐであれば、中に入ることもそれ程難しくなかったのに、タイミングを逃し、結局中には入れずじまいで終わってしまった。

そんなこともあり、松井紫朗のことをそれ以上知ろうとはしなかった。

今回、豊田市美術館で松井の企画展が開催されると知った時も、ピンと来なかった私。しかし、行ってみたら、これがとても面白くて最近拝見した現代美術展の中では一番ストレートにツボにはまった。

面白いと思ったら、調べようというのは必然。
松井紫朗は、1960年、奈良県生まれで、1986年に京都市芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了し、「関西ニューウェーブ」の担い手として注目され、現在は同大学美術学部准教授をされている。

展示室1(2階の最も天井高の高い展示室)で、あいトリで見せたものよりは小規模だが水色のバルーンを使用したインスタレーションが登場。やっと、私も中に入ることができた。靴を脱いで中に入り、作品保存のためもあり一度に入場できる人数が制限されている。青色の世界、素材はポリエチレンシート?を進んでいくと、行き止まりの手前に結界となる置き石が1つ置かれていた。

中から出た後、再び靴を履いて、いつもは使わない(というかそんなドア存在していただろうか?)ドアが出口脇にあり、今度はそのドアから中に入って、外側からバルーンを眺める。
3階へ向かうための階段を上がって、上からもバルーンの形を俯瞰できる。
そして、次の展示室に向かうため、またドアがある!
このドアが作品の重要な鍵を握っていた。バルーンが浮いて膨らんでいるのは、気圧を利用しているとのこと。あいトリの作品では巨大扇風機で風を起こして膨らませていたそうなので、より物理的な仕組みを使って作品を成立させているのが、本展での大きなポイントになっている。
ドアを閉めていることによって、一定の気圧を維持するため、開けたらすぐにドアを閉めなければならない。

3階展示室では、旧作品が並ぶ。
最初の展示室では鉄パイプを使用した作品が展示されている。
一番驚くのはラッパ状の作品で、ヘルメットのように上からラッパの口が、ちょうど鑑賞者の頭上にくるように設置されており、ラッパに向かって、「お~い」など声をあげると、遠くパイプでつながった次の展示室にあるラッパから、声が聴こえてくる仕組み。タイトルの確認を失念したが、1994年にドイツで展示された≪Voice Scope≫(本展チラシ中面に掲載)の縮小版かな。
残念ながら、声を出している本人だけ、自分の声を次の展示室で聴くことは叶わない。

ガラス張りの展示室3は、緩やかな外光が入る展示室。ここでは、80年代の初期作品が並ぶ。
一番初期の作品は木彫だが、他の作品は異素材を組み合わせたもので、どれも非常に大きい。現実にあるものをクローズアップしたような作品、例えば熊の爪やタオル掛けみたいなものもあれば、≪Hanasakazizi≫のような土と真鍮を組み合わせ、ねじれた円環に土鈴のような球形をいくつもぶら下げた作品もある。

ちょうど、展示室3に入る頃、11時から開始されたボランティアガイドによるギャラリーツアーに追いついたので、参加させていただくことにした。お仲間は30代と思しきご夫婦だった。
「展示室3にある彫刻作品の中で一番好きな作品と、その理由、そして名前を付けるなら?」とガイドさんに質問される。
豊田市美のボランティアガイドツアーは基本的に対話型形式なので、解説型とは違う。日本では人前で感想や思ったことを話すのを苦手とする人が多いが、楽しいので是非一度参加されることをお薦めする。ただ、ガイドさんによって巧拙あることは否定できないが、今回担当して下さった方は非常に慣れていらっしゃった。

皆さんの感想を伺いつつ私も好きな作品について語る。
この時、初めてガイドさんから松井紫朗が、京芸出身で中原浩大と同世代の作家であることを知った。
京芸と東京藝大彫刻科出身の作家の方向性の違いが、かねてから気になっている私としては、松井が京芸彫刻出身と分かり、やはり…と思う。
ちなみに若手では、東京藝大彫刻出身が小谷元彦、京芸彫刻出身が名和晃平である。両者の対談を過去に拝聴したが、真逆の方向性に驚いた。そして、両大学の卒展に行くと、その差はもっと歴然と見えて来る。

さて、展示室3を抜けて、展示室4に入る手前で、再び、2階のバルーン彫刻を上から眺めることができる。青を目に焼き付けて、振り返ると展示室全体が黄色っぽく見える。
これも作家の意図したこと、人間の視覚と補色効果で黄色っぽく見せるしかけ。この手法で思い出すのはジェームス・タレルだろう。

展示室4では90年代から2000年にかけて制作されたカラフルなシリコン・ラバーを使用した造形作品とともに、水を使用した作品が登場する。
ガラス管を真空にして、水槽に浮かせて見せる作品や、松井の出生地である奈良ゆかりのお水とり儀式をイメージした水を使った彫刻作品が1点。
ここに来て、徐々に松井の手法が、物理的視点に立って構築されていることに気付く。
お水とりの作品では、見方によっては地球規模で地下水が土壌へとわき出て来るようなイメージが浮かんだ。

そうなると、シリコン・ラバーの作品で見せていた穴の行方も気になる。あの穴は一体どこへ繋がって行くのか?

最後の展示室では、その方向性が更に進み、国際宇宙ステーション「きぼう」で実施された最新パイロットミッション「手に取る宇宙~Massage in a bottle~」を公開。
宇宙からガラス管を運び、そのガラス管に宇宙の大気?を入れて持ち帰る計画を実施。ガラス管は残念ながら輸送中に口の部分が欠けてしまった。その欠けたガラス管が水の中に入ったもう一回り大きなガラスの中で斜めに身を寄せる。

後半からは松井紫朗と野村仁とに共通性を感じた。野村もまた、宇宙的な視野に立った作品を制作している。しかし、ガイドの方によれば、松井が実際に大学時代に指導を仰いでいたのは小清水漸だとのこと。
小清水の作品が、頭に浮かばなかったので、ここではその名前だけしっかり記憶に留めた。

展示室を出て、2階に降りる階段スペース脇に、今回一番お気に入りの金魚を使った作品≪Aqua-Lung Mountain≫が展示されている。
水槽に大きな金魚が5~6匹いて、中央に雪だるまのようなガラスの器が置かれている。
観ているうちに、水槽を泳いでいた金魚が、するっとガラス容器の中に入り込み、ダンスを踊るかのごとく華麗に舞い、少しずつ上に上昇していくではないか。
この予測不可能な作品は、観ていてとても楽しいこの作品は、無重力という状態を視覚化して呈示している。
ご一緒したご夫婦のご主人曰く「自宅に欲しい」とまで言わしめた作品。こんな水槽で金魚を飼育と思わず、本筋から離れた発想をしてしまう。

無重力、気圧、比重、宇宙、真空・・・。

全体を通して観た時、80年代の作品から現在のバルーンに至った過程にとても興味を持った。
今回、展示はなかったが、大きな川に水が落下する「滝」を出現させるプロジェクト「Hole in the river」も行っている。この映像が、今は閉郎してしまった名古屋の白土舎(ギャラリー)のサイトにYou Tubeの画像がアップされている。以下。
http://www.youtube.com/watch?v=qpIT0TW-uBQ&feature=player_embedded

ツアー終了後、彼の師であった小清水漸の図録を図書室でチェックしてみた。
初期作品の異素材による組み合わせは小清水の影響を受け継いでいるように思った。そして、水の使用も、小清水が試みていることからその影響を否定できない。ただし、小清水作品には工芸的要素があるが、松井の作品は工芸要素より、物理学的視点や試みを強く感じるのが相違している。

旧作から最新作まで、展観することで、近代から現代へ至る彫刻史を考える良いきっかけとなった。

ところで、本展タイトル「亀がアキレスに言ったこと 新しい世界の測定法」について考えてみた。
「アキレスと亀」はエレア派の哲学者ゼノンのパラドックスとしてつとに有名で、かの北野武はこのパラドックスを使って「アキレスと亀」と題した映画を制作している。
*「アキレスと亀」のパラドックスについてはこちら
そして、『アキレスが亀にいったこと』はルイス・キャロルがゼノンのパラドックスを引用したルイス・キャロルが書いた対話篇の短編。詳細はこちら。⇒ http://page.freett.com/rionag/carroll/achilles.html

俊足で知られるアキレスだが、亀にアドバンテージを与え、先にスタートさせるが、なぜか両者の距離は縮まらないという。
どこまで行っても終わりが見えない、追いつけない。
この深遠なるタイトルの意味をふまえて、本展を鑑賞するのも楽しいと思う。

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ボギー鈴木様

こんばんは。
松井紫朗さんは、そんな雰囲気の方でいらっしゃるのですね。
シュテーデル美術館展も良かったですが、松井紫朗展は予想以上に楽しめました。

No title

 こんばんは、ごぶさたいたしております。私は11日に豊田市美術館に行ったのですが、松井紫朗さんご本人が、来ていらっしゃいました。長身の坊主頭で、アーティストと言うより、ご住職という感じでした(笑)。でも、フェルメールと松井紫朗の同時開催とは。やってくれますね豊田市美術館。Bunkamura ザ・ミュージアムではできない芸当ですから。
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