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「ワーグマンが見た海-洋の東西を結んだ画家-」 神奈川県立歴史博物館

ワーグマン

「ワーグマンが見た海-洋の東西を結んだ画家-」 神奈川県立歴史博物館 7月31日迄
http://ch.kanagawa-museum.jp/tenji/toku/toku.html

神奈川県立歴史博物館の特別展は、行くたびに感心させられることが多い。
展示室や展示ケース、照明が古かろうが、よく練られた展示構成と展示品の丁寧な見せ方、ツボを押さえた簡潔な解説があれば充分満足できる。

本展はチャールズ・ワーグマン来日150周年記念の特別展。同館では(神戸市立博物館にも巡回)平成2年に「没後100年チャールズ・ワーグマン」展を開催しているので、約20年ぶりのワーグマンの回顧展。
ワーグマンと言えば、彼の弟子に2人の日本近代洋画の幕開けを担った重要な画家がいる。
1人は高橋由一、そしてもう一人は五姓田義松。
五姓田派については、これも同館で平成20年に特別展が開催され、この展覧会は私も拝見し、ここで五姓田義松の画業を知り、驚きとともに拝見したことが甦る。

ワーグマンは1832年ロンドン生まれ、パリで画業を学んだというが詳細は分かっていない。
1857年『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』社の特派員兼挿絵画家として、現在の中国へ向かい、1861年初来日を果たす。

今回は大幅な展示替えにより、ワーグマンやその弟子たちの作品約250点を紹介するもの。当初の予定ではロンドンにあるワーグマンの作品を本展で公開しようと試みたが、震災により見送りとなってしまったのは残念。しかし、図録には、借用予定だった作品の画像が参考掲載されているらしい。

しかし、それを補ってあまりあるワーグマンによる大量の水彩画は圧巻。
こんなことなら、7月10日までの会期Aも観たかったと思ったが後の祭り。やはり情報収集、作品リストのチェックは大切だと改めて思う。
ワーグマンは画家というより、挿絵家、漫画家だろう。彼の油彩画や来日後に描かれた水墨画もあったが、特別画技に優れている訳ではなく、むしろ水彩画やジャパン・パンチの挿絵には彼の個性が光っていた。

展覧会の構成を振り返りつつ簡単に感想を。
Ⅰ.航海
特派員記者として旅した際に描いた水彩画は、当時の様子を活き活きと伝えてくれる。
エジプトから、インド洋をわたり、セイロン→香港、中国と旅ではせっせと筆を走らせていたのだろう。前後期あわせて約120点の水彩画は、制作年不詳のもの以外、大半が1857年に描かれている。
アロー戦争の様子を伝えるために、中国に派遣されたので、戦火や阿片喫煙の室内、広東での街の様子などが描かれる。

個人的には、≪中国の少女たち≫、≪香港の少女≫などが好み。ふっくらとした少女は、他の水彩画では見られない、史実とは別に、彼の心をとらえた対象だったのだろう。どこか、ワーグマンのあたたかな眼差しが伝わってくる。

Ⅱ.港ヨコハマ
ここからは来日後のワーグマンの作品が水彩、油彩と合わせて展示されている。
油彩は、かたいが水彩は得意の筆がよく走っている。
意外なことに、福富太郎氏のコレクションが何点かあった。福富氏と言えば、鏑木清方をはじめとする美人画のコレクターとして知られているが、なぜにワーグマンの作品に惹かれたのか。

来日後は、風景よりもむしろ人物画が多くなっているように感じた。そして、彼の作品は風景画より人物画の方が良い。

油彩の中で、1点目に留まったのは≪鳥≫栃木県立美術館蔵。高橋由一の作品に似ている、実際は逆で、由一が弟子だから、師の作品に似るのは当然。
≪鳥≫以外にも由一との共通点を見いだせる油彩画、例えば≪江ノ島≫藤沢市文書館蔵などがある。

同じく五姓田作品との類似が指摘される作品も多く、ワーグマンに入門した時、わずか10歳だった五姓田義松は、ワーグマンの教えでその才能を大きく開花させることになった。

Ⅲ.海を越えた技術、海を越えた弟子たち

この最終章がまた見ごたえがあった。
ワーグマンと直接関係があるのか分からなかったが、山本芳翠≪富士山≫は初見だがとても良かった。
同じく、いつも子供が石にくくりつけられている作品しか見たことない渡辺幽香(義松の妹)の≪大日本風俗漫画≫1887年、≪大日本帝国古今風俗 寸陰漫稿≫1886年が出展されていたのは嬉しい。

五姓田義松の作品かワーグマンの作品か、定かではない作品≪自画像≫(十三歳)1868年東京藝術大学蔵は、そもそも義松の自画像ではない可能性まで指摘されている。
十三歳は、入門後わずか2年、その年齢でこれだけの絵画を描くとは思えない、実は師のワーグマンが描いたのではなかったかと疑いをもたれているのだった。

高橋由一は38歳、義松は10歳、極端に年齢の離れたこの両者が師と仰いだワーグマン。
ワーグマンは、日本人や日本をどう思っていたのだろう?
油彩画家とは言い難い自分を慕う日本人を煩わしいとは思わなかったか?
弟子とともに成長していったのだろうか?

ワーグマンの存在により、日本の洋画の幕開けは始まり、彼の存在なくば、日本初の油彩画登場はもっと遅れていたに違いない。その一方、ワーグマンでない画家が日本にいたら、近代洋画の幕開けはまた違ったものになっていたかもしれない。
更に、その功績はジャパン・パンチ創刊へと繋がっていく。

図録は1500円、一旦は見送ったけれどやはり欲しい(ここの図録は展覧会にもよりますが、買い逃すと入手困難になる)。良い展覧会でした。

*巡回はありません。

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minamimusashi様

ブログ初コメント有難うございます!
前期に行かれたのですね。羨ましい~。
まさか、こんなに展示替えがあるとは知らず、出遅れたのが
痛かったです。
図録掲載の図版ではなく、やはり実際の水彩が観たかった。

ワーグマンもですが、関連の日本洋画黎明期の油彩も良かったですね。

ブログでは初コメです。

マスコミによるもの以外では久々に読みましたよ、
この展覧会の感想…
今のところ前期のみ鑑賞できたのですが、笑いあり感動ありで、
事前想定や一般的知名度以上の好印象が残りました。
会期末近くになるかと思いますが、再度足を運ぼうかと思っています。
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