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「ジム・ダイン」展 名古屋ボストン美術館

ジムダイン

「ジム・ダイン 主題と変奏:版画制作の半世紀」展 名古屋ボストン美術館 8月28日迄
http://www.nagoya-boston.or.jp/jimdine/index.html

個人的に今イチオシの展覧会「ジム・ダイン 主題と変装:版画制作の半世紀」展の感想です。この展覧会は巡回がありません。名古屋ボストン美術館のみでの開催です。
アメリカのボストン美術館所蔵のジム・ダイン版画コレクションより主要な153点を展示し、ダインの版画制作の軌跡をたどるものです。

この展覧会には2度行きました。1回目は会期が始まって間もなく5月だったかと思いますが、全153点をなめてました。
1時間では到底足りずに時間切れ。最後は駆け足になってしまったので、再訪したのは6月だったか。

ジム・ダインは本展開催のために、震災直後の4月に来名し、4月24日(日)に講演会「ジム・ダインが語るジム・ダインの現在(いま)」を愛知県立芸術大学で行っています。
講演会の様子(美術館のサイトへリンク)→ http://www.nagoya-boston.or.jp/event/report/lecture/post-90.html
私もこの講演会に参加し、ジム・ダイン本人のお話を伺うことができました。

私のへぼい展覧会感想より、講演会のまとめの方がお役に立つのではないかと思い、メモをもとに書いてみました。内容については私自身のメモが頼りなので、間違い等あるかもしれませんが、発見されたら直ちに修正致しますので適宜ご指摘いただければ幸いです。

講演会は、ボストン美術館の版画・素描・写真部 部長クリフォード・S.アクレー氏との対談形式で行われました。以下、ジム・ダイン氏をD、アクレー氏をAとして表記します。

ボストン美術館では1960年代にダインの作品を初めて購入。2006年には、ダインのアーカイブが創設され、作家自身より寄贈された版画作品約800点を収蔵。

A:なぜ、版画だったのか?
D:自分は自然に版画を刷ると反転したイメージが浮かぶ。刷り上がった同じ版を使用しても、刷りにより出来上がりは異なる。これは有機的過程だと思う。手にペンキを付けてスタンプのように、紙に手形を付けることをやっていた。

A:ダインの最初の版画が世に出たのは1960年頃。いつから版画を始めたのか?
D:小さい頃から版画家だったと思っている。ペンキを塗った紙を白い紙に写したり。版画が何かということに気付いたのは、8歳の頃だったと思う。シンシナティにある母の家には北斎の浮世絵があった。中流階級の家なら北斎が2つ、3つあった。
ティーンエイジャーになってかえあ木板を彫って、版画制作をするようになった。キルシュナーやムンクが好き。

A:版画以外の表現形式との関わりがある(版画だけでなく様々な表現をしていた)アーティストとしては、レンブラントやピカソがいる。1960年代はアメリカの版画界にとって、転換期であった。今回のダイン展のサブタイトルは「主題と変装」だが、ひとつだけ独立しているというより連作になっている作品は、ひとつの版からイメージが変容している。例えば、レンブラントの≪3本の十字架≫など、同じ版から色やムードを全く変えて別作品を作る。≪ピカソの闘牛≫について、多くのインスピレーションを得たか?
D:ピカソの11の連作リトグラフは手を加えることにより、削減していく方法。そしてそれをどんどん発展させていく。最初に何かを消したり書いたり、ピカソの作品を観てからグラインダーやドリルといった電動工具を使うようになった。
それにより、早く活き活きとした手を加えることができる。人に託すのではなく、自分で息を作品に吹き込みたいと思った。

A:アメリカの抽象表現主義との関係は?
D:沢山の影響を受けている。デ・クーニングは祖父より2世代前。ジョルジュ・マチューは公の場で制作することで知られていて、その行動、描くことドラマに引き付けられた。
モップと硝酸、スタジオでできずに外で制作した。アクティブな活動もやっているが、こればかりやっている訳ではない。ニードルや手を使って色々なやり方を試みている。ロマンティックな表現主義と言える。

A:≪カークラッシュ≫(最初の作品)は、ハプニングという考え方で制作されている。もし作者が望めば色々な工程で版画に仕上がっていく。エネルギーや自発性、身振りなど、抽象表現主義に基づいたものではないかと思っている。他のビジュアリスト同様、難読症というハンデがあった。それが逆にイメージとして言葉が使用されている。
D:できるだけ自分のイメージから最大限パワーを作品の中に入れたい。その中でイメージを説明したい。言葉を入れることで、力を加えることができると思う。靴という言葉を靴の絵の下に入れることで、多様な表現と言葉のパワーが加わり強いイメージとなる。
左利きであることが障害に影響があるのかもしれない。言葉を沢山読んでいったことが、言葉に対するつながりができたようにも思う。
ひとつの単語を大切に考える。ひとつの単語を入れるのは赤い線や立体を入れるのと同じくらい強いと思っている。
自分はミニマルアーティストではない。ひとつのイメージでできるだけ多くのことを伝えたいと思っている。見るための視覚的寛大さを出したい。
詩人と知り合って、自分も詩を書くようになった。意味だけでなく単語の見かけにも関心がある。カリグラフィが分かりやすいだろう。

A:自身で版画だけでなく絵画やドローイングを行っているのか?
D:当時ロンドンで作品を切ってシルクスクリーンで再現していたが、それが流行だった。大量生産からハンドメイドへシフト。ハンドメイド作品は得意でなかったが、クレーターと≪道具箱≫という作品を作った。シルクスクリーンの完成品より元々のコラージュの方が良かった。機械的なイメージが好きでないことに気付いた。

例えば、デジタル画像をスキャンして印刷しエッチングを加えるという作品を作っているが、そうすると作品が自分のものになる。自分のものは自分でコントロールしたいと思う性格。

A:≪道具箱≫という連作からは今回4点が出展されている。その頃から、機械全盛の時代にも関わらず、手で彩色することを始めているがそれについてはどう思っているか?
D:版画は私にとって、生きている有機的行動。彩色やブラシを塗って色を付けたり、グラインダーで紙に加工する。
時には12枚手で同じものを試しに作ったりすることもある。ただ刷るだけより、パーソナルなものにするのが好き。エディションを沢山作るのは好きではない。ひとつのイメージを作って満足すれば、充分自分は満足。

A:何かを消去するのが前向きな姿勢。消去に電動工具を技法のひとつとして使用している。例えば、70年代の自画像作品。暫くして全く違うものに変える。
作品を選択する際に、同じ版から全く違った自画像が見つかりわくわくした。イメージを版に刷るがその紙も色々な紙を使用している。質感や色のパターンが違っている。紙、特に和紙についてはどう思う?
D:特定の紙を選んで刷る訳ではない。そこにある紙を使用している。
漉きこまれたフランスの紙や和紙には魅了される。紙を選ぶ基準は強度が重要。アイスピックが刺さってもそのまま維持できるような紙。茶色のラッピングペーパーでも美しく仕上がる。ブーツの作品はラッピングペーパーに刷られている。

A:ジムダインは一人で籠るタイプではないと思っているが、それについてどう思う?
D:グリッターとの関係。
画家というのは孤独な専門職だと思っている。版画を制作している時は、友人と一緒に制作。30年来の友人はクロムリング氏の弟子がほとんど。プリンター達との活動は社交性も必要だが、コラボができれば、協力する姿勢を見せれば非常に良い関係になる。
若い人から熟練者まで様々な人と制作してきた。最終的には、私が作りたいと思っている作品に協力してくれる人が残る。そのような人が制作活動には必要。

A:クリムリングはピカソの晩年の版画の刷りを担当していた。作品の対象が自分自身をオブジェクトとしているのが特筆すべき点だと思うがそれについては?
D:これまでの人生と関わっている。祖父が金物店をやっていたので、電動工具が自分の周囲にいつもあり、それで遊んでいた。そういった環境にいたのでカラーチャートも幼少期にあった。水道管のパイプを切ったり、大きくなると機械を使わせてくれたり、削りくずが散りばめられたり。。。
オブジェクトはモノ以上の意味を持っていた。
・ねじを打ちつける金槌
・形が変わる点にも引き付けられる。
道具を見てインスピレーションを得た。道具は人間の状況を象徴していると思う。

A:今、どんな作品を手掛けているのか?
D:まだ完成していないが、リトグラフとエッチングを組み合わせて「共産主義の歴史」、東欧の1950年代のノスタルジックなイメージを自分のスタジオにあるものに似せて制作する大きなプロジェクトに取り組んでいる。
同様に写真や膨張剤?を作っている。

以上で会場からの質疑応答へ。

Q.版画とペインティングの決定的な違いは?
D:質の違い。ペインティング→完成するものはひとつ。版画→2つかそれ以上でもできるイメージを作る行為だと思う。プリンターとペインたーの上下については全くないと思っている。

Q.1点しかないのと同じ版からの連作とでは制作時の気持ちの持ち方は違うか?
D:特に違いはないが、後からの制作に影響を与えることが多いと思う。ナンシーシリーズについては、主題の方が意図を持っていたので、それに私が支配された。結果的に25枚制作。2年半経過し、私から見たナンシーの精神状態だったので、これでいいのかと疑問に思いやめた。

Q.高校生の頃、ダイン氏の素描を見て感銘を受けた。あなたにとって素描とは?
D:素描、ドローイングは重要。
アートの骨組み、構造だと思っている。それが一番明確にあらわれるものだと思うし最も重要なこと。

Q.あなたにとって評価できるアーティストは?
D:私の両親。
自分の考え方として、沢山のアーティストのおかげで育てられ、アーティストの歴史を歩んで来られた。
古代の彫刻や彫像を沢山持っている。

Q.パソコンで絵を描く人が増えているが、手で描くことの強みがあれば教えて下さい。
D:コンピュータ世代ではないので分からない。Good Luckとしか言えない。

Q:作品の保存方法は?
D:乾燥を維持すること。光があまり当たらないように。作品と作品の間に中性紙を挟んでいるが、人に依頼している。


長くなりました。読んでいただいて有難うございます。
版画技法のデパートとも言えるダイン氏の版画作品には驚くことばかり。特に文字を使った初期作品やエナメルを使用した版画、最後の方に出て来る≪歴史的なワンダースブルグ≫の3枚ものは特に好きです。

愛知県美術館の棟方志功や名古屋市美術館のレンブラント展での版画作品と合わせてご覧になると、更に楽しめると思います。

*2011年8月3日、誤植修正。

コメントの投稿

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ボギー鈴木様

こんばんは。
資料の整理など、とんでもないです。
講義録だけは、ノートに書きためているだけで、それさえ
録音していた分はあやうくなっています。


No title

こんばんは。ごぶさたしております。いつも、次に行く展覧会の参考にさせていただいてます。ジム・ダイン展は、講演会に行きましたが、内容は忘れてしまったので、 meme さんのブログを観て思い出しました。最近は図録を買ったことに満足して、読まないので、 meme さんのように資料を整理している方を尊敬しております。展覧会を観る数もmeme さんの10分の1以下でしょうから。それでもちょっと自慢は、講演会の前に歩いているジム・ダイン氏にお願いして、図録にサインと一緒に写真を撮らさせていただきました。最近はこんなことばかりやってます。邪道ですね(苦笑)。

luka様

こんばんは。

よく見つけて下さいました。
そして、ご連絡下さって有難うございます。
他にもおかしな所があったので、修正しましたが
まだ残っているかもしれません。

とりあえず、修正は完了しています。
ジム・ダイン展は本当に良いです。お見逃しのございませんように!

No title

こんばんは。講演会のようす、行かなかったのに、こんなに書いてくださってありがとうございます。memeさんオススメというのを聞き、迷っていましたが、是非行こうという気になりました。
つまらない発見ですが、6番目のAの後の地震→自身?かと。(’一瞬ドキっとしました)
質疑応答の最初のDは、室→質?でしょうか。
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