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「犬塚勉展-純粋なる静寂-」 日本橋高島屋

犬塚勉表
犬塚勉裏

「犬塚勉展-純粋なる静寂-」 日本橋高島屋 9月7日~9月26日

犬塚勉(1949-1988)は、東京学芸大学を卒業後に美術教師を続ける傍ら、山を愛し登り、自然を描き続けた画家である。
没後20年にあたる2009年、NHK『日曜美術館』で「私は自然になりたい 画家・犬塚勉」で紹介され、注目を集めることとなった。
(参考)http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2009/0705/index.html
私もその一人で、2009年に同番組を観て、実作品を観たいと思ったが、奥多摩のせせらぎの里美術館、東御市梅野記念絵画館[長野県)に行くことができず、心残りのまま諦めた。

そして2年後の今回、何と日本橋高島屋(他巡回あり)で「犬塚勉展」が開催されると知り、早速行って来た。

デパートの美術展といって侮ることなかれ。
約110点を第1部「画家としての変遷」、第2部「自然を描く」の2つのパートに分け紹介している。また最後には犬塚を紹介する約9分半の映像(加賀美幸子アナのナレーション)もある。

何より驚いたのは、第1部と第2部の作品が、がらりと変わっていること。
NHKで紹介されていたのは、第2部で見せる自然を超写実で描いた作品群だったので、それ以前の作品が、むしろ抽象的、幻想的なシュルレアリスティックであったと本展で初めて知った。

冒頭は、「自画像」1975年頃。背景は黒、画面全体が暗く重いため、本人の表情、特に上部は陰影のためよく見えない。

1978年頃、2度に渡りスペインへ行き、そこで描いた作品「フラメンコ」1978年、「赤い戸」1978年など、色鮮やかにスペインでの光景を切り取った作品群が登場する。「自画像」作品と比較すると、この変化もまた犬塚にとって、スペインでの経験がいかに大きかったかを物語る。

帰国後は、身近な風景、通勤帰りの夕暮れや夫人をモチーフに描くが、登山に向けてのトレーニングや精神鍛錬を行う中で、仏教美術にも関心を持ち始め、「観世音」1980年や蓮をモチーフにした作品も登場する。犬塚作品は、基本的にアクリル絵具を使用しているが、画面全体から受ける雰囲気は、没個性であるように感じた。
気になったのは、馬が多くの作品でモチーフに扱われていること。
「夫人と馬」、「赤い馬」と作品名にも馬を配したものも多く、彼はなぜ「馬」を執拗に描いたのか不思議だった。仏教的というより、神話的要素はあるが果たして馬に何を見たのか。

また、1983年からは画面構成がシュルレアリスム風の幻想的作品が登場する。これは当時の流行だったのかもしれない。

そして、大きな転機となるのが1984年。
1983年8月~9月にかけて過労からA型肝炎となり入院生活を余儀なくされる。
これを境に描いたのが、「頂A」「頂B」いずれも1984年制作。ナチュラリティーとリアリティーの双方を極めた絵画作品の探求が始まる。
これ以後は、前述の美術番組で紹介された超写実で自然を描いた作品が続く。
その中短い画業の中で、評価が高い「ひぐらしの鳴く」1984年は圧巻だった。パネルを2枚横につなげた大作で、蒸せんばかりの草の緑にあふれている。その草の1本1本を面相筆で描き込み、うっすらと陽光と樹影も分かる。

そうした写実ばかりに目がいきがちだが、特筆すべきは構図で、鑑賞者の視線と画面の位置が絶妙なバランスを保つ。なだらかな山の斜面を登りきった所にある叢が、眼前に現れた時、この一瞬を切り取っているように思った。

あとは、もうひたすら息を詰めるような作品が続く・
「夏の終わり」1984年など叢を描いた作品の後、ついに登山で観る風景の完成をみる。
「縦走路」1986年、これまた傑作で、決して写真を見て描いただけではない、そこには犬塚の巧みな画面構成、構想が結実した結果が現れていた。
目の前に広がる山道、ごろごろとした石が落ちている。遠景にかすむ山々。

次なるモチーフは奥多摩に転居した後に、自宅近辺で見かけたブナの木。
と言っても、樹木全体を描くのではなく、幹の一部や切株を克明に描ききる。「切り株」では、風化したもの、時の流れ、ブナの風格といったものを感じる。「縞リスの食卓」では切り株の上に木の実が置かれていたが、これは画家が意図的に置いたのだろうか。

晩年、絶作となる作品で完成を見ぬまま描いたのは玉子石など石と水野ある渓谷の風景。
「暗く深き渓谷の入り口Ⅰ」(絶筆)1988年は、犬塚が命を落とすことになった、川の風景を描く。
中央には玉子石と言われる石を犬塚なりに解釈し扁平に、床に対して水平にし、画面中央にどんと配置、その上から細かい白い飛沫をあげながら川の水が流れ落ちる。
背景は、自画像で観たような暗く陰鬱な色をしていて、高い精神性を感じつつ画面に吸い込まれそうになる。
亡くなった(山で遭難)日の最後の言葉は「水をもう一度見て来る」だったという。


元々、石やブナそのものに、精神性を感じたのだろう。個人的にはそこに非常に共感した。

犬塚勉作品のすばらしさは、単に見たものを克明に写実的に描いただけではない、その先にあるものまでも画面に描きだそうとした、描いた所にある。

実作品を見ることができ、本当に良かった。なお、展示作品はごく1部を除き、すべて妻の犬塚陽子氏所蔵です。
犬塚勉氏のご冥福を心より申し上げます。

本展は下記に巡回します。
京都島屋 2012年1月6日~1月23日
東御市梅野記念絵画館 2012年4月14日~6月3日
奥田元宋・小由女美術館 2012年11月2日~12月25日

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日本橋高島屋で「犬塚勉展―純粋なる静寂―」を観た!

日本橋高島屋で「犬塚勉展―純粋なる静寂―」を観てきました。犬塚勉については、家人がNHK日曜美術館の「私は自然になりたい」をみて、犬塚勉の展覧会が東御市梅野記念絵画館で開催されていることを知り、「稜線の風の如く 犬塚勉展」を東御市まで観に行きました。秋が深

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