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没後70年「木村武山の芸術」 茨城県天心記念五浦美術館

武山

没後70年「木村武山の芸術」 茨城県天心記念五浦美術館 11月1日(火)~12月4日(日)
http://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/02_tenrankai/01_kikaku.html

3月11日、茨城県天心記念五浦美術館も強い地震に見舞われ、駐車場の下に埋設した四基の浄化槽の破損、入口の流水路損傷や壁面のはく落、駐車場のり面の陥没などの被害に遭った。その後、修復工事を進め、約8カ月ぶりとなる11月1日に美術館は再開され、企画展「没後70周年 木村武山の芸術」が始まっています。

木村武山(1876~1942年)は笠間市出身で、下村観山、横山大観、菱田春草と共に五浦に移り住み、大正3年、岡倉天心の一周忌を機に再興された日本美術院ではその中心となって活躍するなど、天心による日本画の近代化の一翼を担った画家です。五浦に移り住んだ4名のうち最若年で、他の3名の陰に隠れ一般的な知名度は低いのが実に残念な画家です。

私が木村武山の作品を初めて見たのは、野間記念館だったかと思います。
本展にも出展されている≪光明皇后≫≪慈母観音≫など、溶けるような華麗で柔らかな色彩と光に溢れた画面で強く印象に残りました。ここで、木村武山(きむらぶざん)の名をしっかり脳裏に刻み、その後も作品を見つけるたびに武山が好きになっていき、今年の夏には茨城近美「木村武山 彩色杉戸絵展」で待望の須磨御殿の彩色杉戸絵(本展でも一部出展)をすべて見ることができ、感無量の一言でした。
武山、素晴らしい!もっと評価されても良いのにと益々その思いを強くしました。

そして、美術館再開記念としての本展開催。待ちに待ったとはまさにこのこと。
木村武山展は昭和49年に茨城近美で、平成10年に笠間日動美術館で開催されたのみ。
本展は、久々の回顧展であり、過去最大規模のものと言えるでしょう。

前置きが長くなりましたが、展覧会構成に従って本展を振り返ります。

【プロローグ】
明治21年(1888年)わずか12歳で描いた≪梅に茶器図≫で、その非凡な才能の芽を既に発揮。
逆くの字の構図、下方に寄せた花など構図に優れている。
話は前後するが、武山の父は旧笠間藩士であり、その後笠間銀行(現在の常用銀行へ継承)や笠間電気株式会社(現東京電力)を設立する実業家へと転身した。武山は長男であったが、早くに絵の才能を認められ、絵の道に進むよう絵の師も付け、父親に認められたというから、その理解と先進性は特筆に値する。

その後、東京美術学校で菱田春草の一年下で入学。入学後は、橋本雅邦教授、下村観山助教授の専科へ進んでいる。
私が武山好きなのは、橋本雅邦つながりなのかもしれない。
橋本、下村両師の作品の模写や影響を強く受けた作品、例えば≪高倉帝厳島行幸≫東京藝術大学蔵(東京美術学校卒業制作)などで伺うことができる。ただし、これらの作品は、武山なりの創意は見られるものの、絵から立ちあがる強さに欠けている。

そして、美術学校卒業後の作品には先輩の春草や大観が推し進めていた朦朧体を自作に取り入れようとする試みが見られる。特に武山は雲煙、霞などを朦朧体を使って表現。当時批判される要因となった色の濁りについては、相当苦心を重ねたのだろう。部分的な導入など慎重に扱っているのがよく分かった。

【歴史画】
本展は、全作品を制作年代順にしておらず、モチーフによって大別している。
ここでまず注目すべきは第一回文展出品作≪阿房劫火≫1907年・個人蔵。
後年でこれと類似な作品が見られないのは、武山にとって幸せだったのかどうか。

人は一切描かず、画面上に紅蓮の炎が狂ったように阿房宮を包む。もうもうと立ちこめる煙の描写はドラマティックにさえ見えた。

≪祇王祇女≫1908年・永青文庫蔵は平清盛の寵愛を一身に受けた白拍子の祇王が、清盛の心移りを嘆き修業に励み隠棲する姿を描いた大幅。
ここでは、腫瘍となる祇王の人物の透けるような衣の描き方の他に、背景の薄や秋草、全面に祇王を隠すように描かれた薄の緑の葉がとりわけ忘れがたい画面を作っていた。歴史画の中でも神話画や天皇の肖像画など、彼の画力は歴史画で発揮できないように感じた。

以前、酒井抱一らの琳派作品では、抱一の「夏秋草図屏風」のように、薄や背の高い草と下方に自生する草花をその奥や手前に描いている点が面白い。
1908年にして、武山は琳派芸術の技術を自作に取り入れている点に注目したい。
以下3点がここでの重要作と言えるだろう。 

【花鳥図】

本展を観て、実は武山の作品の魅力はこれら花鳥関係にあるのではないかと思った。
特に琳派風の装飾性と写生の要素を組み合わせた成果がここで感じられる。

・≪イソップ物語≫1912~1913年 茨城県近代美術館蔵
高いデザイン性には脱帽。裏彩色も使用しているのか、画面が光っているように見える。

・≪鵜滑鶏≫1933年頃・笠間稲荷美術館蔵
こちらも構図の面白さと鵜骨鶏の依頼上映が
上記と同じくデザイン性が非常に高い。鳥の毛一本たりとも神経を注いで描き続ける作家たち。写生と装飾の融合が武山の生涯に亘るテーマを再興しなければならない。

・≪日盛り≫1917年 福井県立美術館 六曲一双
・≪白菊図屏風≫1917年 個人蔵 六曲一双
六曲一双の屏風絵。横166.3㎝の巨大画面にポロック作品はどのようみ見えるのだろう。あでやかさは本展最高。
金泥で描かれた葉脈も美しく、強い琳派への傾倒を感じた。

六曲一双屏風二つを1年で描き上げている点がすごい。白菊の方は画面上に其一作品にも登場する群青の流水が帯のように描かれている。白菊てんこ盛りで、いくらなんでも盛り過ぎではと思ったほど。

鳥も花も、武山の徹底した視線、写実で描かれている。稀代のカラリストとしての抜群の色彩センスで、装飾画面に仕上げるのが武山風。春草も琳派研究を進めていたことを思い出す。武山はひとつ学年が上の春草を目指していたのかもしれない。
春草作品への傾倒ぶりを感じる≪黒猫≫1917年・茨城県近代美術館、≪柏二鶺≫1916年頃・重林寺などはとても興味深かった。武山は晩年の春草以上に琳派の導入を上手く自身の作品に取り入れているように思った。

【仏画】
いよいよ仏画登場。仏画では古画の学習、仏像研究の成果が結実している。

・≪観世音寺炎上の図≫1934年・横浜美術館蔵
・≪聖観世音菩薩≫1940頃・個人蔵
・≪不空羂索菩薩≫1935年

忠実に模写したものに、独自の表現を描き加える。
武山は天心、大観によると『創』が足りぬとされていた。確かに春草や観山のような強い創意を感じる作品はそれ程多くないが、最終章に続く屏風絵は杉戸絵などを見ると彼の画業はここに完結セリと思った。

【障壁画】
ここでは、普段お目にかかれない武山の室内装飾画の数々を紹介。
・高野山金剛峯寺の新署員襖絵「孔雀図」1915年
・須磨御殿杉戸絵(展示替えで6点を交互に見せる)
・成田山新勝寺奥殿襖絵「天人奏楽」1918年

いずれも勝るとも劣らぬ華麗さ。

更に必見なのは大日堂安置の厨子。
浄瑠璃寺吉祥天厨子絵や阿弥陀来迎図を忠実に模写。正面扉左上には平櫛田中作とされる実寸大コガネムシの彫刻が取り付けられている。なぜ、コガネムシなのか、田中と武山の交流も気になるところだが、田中の作品で間違いないのかも疑問が残る。

一部展示替えあり60点強の作品群は大作揃いで、非常に見ごたえがあります。また、個人蔵の作品も多く作品を鑑賞できる貴重な機会であることは申し上げるまでもありません。感無量でした。是非、一人でも多くの方にご覧いただきたい展覧会です。

図録は175ページ、掲載論文2本で、印章リスト付き。折り込み見開きページも多く、この内容で1200円は破格の安さだと思います。もちろん、武山ファンとして、美術館再開を祝して購入させていただきました。

茨城県内の4つの美術館の企画展を1年間何回でも鑑賞できるお得な共通年間パスポート(3000円)もオススメです。

<参考情報>
大日堂障壁画特別公開
木村武山が母の供養のため郷里笠間に建立した大日堂。堂内には武山が精力を傾けて描いた仏画や花鳥画に彩られているそうです。本展開催を機に、普段見ることのできない大日堂を特別公開しています。
見学方法:電話予約制
予約方法:大日堂管理者 木村明正氏(Tel:0296-72-1326)に電話にて、見学日時を要相談。
*管理者の都合によりご希望に添えないことや、当日の天候等により急遽中止、変更になる場合があります。
 また、電話はお間違えのないようにお願いいたします。
場所:笠間市箱田2210(JR水戸線笠間駅より約3.6キロ)

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kazupon様

こんばんは。
六角堂は地震で倒壊し、その後津波にさらわれたようです。
後日、六角堂がかつてあった海岸の画像をアップする予定です。
文化財指定も取り消しされてしまったし、再建できてもやはりそれは
かつての六角堂ではないことが残念ですね。

No title

こんにちは。ここの美術館も被害が大きかったのですね。
一度訪ねたことがあります。
六角堂が津波で流されたのはショックです。
再建されるようですが、少しでも応援したいと思っています。
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