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「ぬぐ絵画」 蔵屋美香 氏 講演 東京国立近代美術館

「ぬぐ絵画」展 蔵屋美香 氏(本展企画者、美術課長)講演 12月10日 東京国立近代美術館
展覧会特設サイト:http://www.momat.go.jp/Honkan/Undressing_Paintings/highlight/index.html

東京国立近代美術館で来年1月15日まで開催中の「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」の企画者である東近美の蔵屋美香氏の講演に行って来ました。
展覧会も常設展示と合わせて講演前に拝見しましたが、感想よりまずはざっくりと講演の内容をまとめました。

本論からは外れますが、講演は地下1階の講堂で開催されたのですが、蔵屋氏は講演中、聴衆をどんどんあてて、質問され、授業のような緊張感を味わいました。眠気は吹っ飛びです。では、以下講演内容抜粋。メモをもとにまとめているので、間違いなどがあればご指摘くださいますようお願い致します。

・「今」「なぜ」この展覧会をするのか?

(1)東京都の東京都青少年健全育成条例改正に関わるマンガ論争、明治期(100年前)にも猥褻か芸術かという同じような論争があった。

(2)人の裸にはいつの時代でも興味があるのではないか。
自分の身体と比べて他人の身体を比較する。→ 自分の身体や経験と比較して、絵画に描かれた身体を見る。
この結果、裸体に対して誰でもが高い鑑賞眼を持っている筈。

(3)出展作品の9割が女性の裸体。男性の裸体画が少ないのは、裸婦は男性がみるものであり、男性のため、男性目線で描かれている。

しかし、現代では女性誌「アンアン」のヌード特集が人気を博すように、女性が男性のヌードを見る時代に変わりつつある。
女性が新しい視点で女性の裸身を見るのではないか、女性が女性ヌードを見るとどうなるのかに興味があった。
女性を意識して、キャプションなど会場のテーマカラーにピンクを採用してみたが、蓋を開ければ観客の9割は男性。

(4)個人的理由として、蔵屋氏の大学生時代の話題が出される。
蔵屋氏は、女子美術大学の油絵科に在籍されており、学生時代は美大生なら当然の裸婦モデルのヌードデッサンをされたご経験もある。
今でも忘れられない出来事として、4階にある大学アトリエで80人の女学生と3人の裸婦モデルによりデッサンを行っていた。そこは、暗黙の了解の中で裸であることが了解され、成り立っている世界だったが、突然モデルさんの悲鳴が。
窓を見ると、外には電柱工事をしている男性がしっかと中を覗いている姿があったという。
この事件を機に、裸は芸術の目か、エッチな目で観るかいずれかであり、両者の共存は困難だと感じた。

→ ここで、明治期の女子美術大学の裸婦デッサン風景の古写真のスライドが登場

他にも学生時代の思い出として、20歳の時、男性モデルのヌードデッサンを行う授業があったが、学生のうち3名の女子が「恥ずかしくて描けません」「と泣き出した。そこで先生が苦肉の策として、モデルに後ろ向きのポーズを取ってもらうことにしたが、男性モデルも慣れていなかったのか、突然自分も恥ずかしいと言ってサングラスをかけ始めた。
裸にサングラスという奇妙な姿。
芸術と言う約束事が崩れると羞恥が生まれると言える。

今でも美大で基礎訓練として行われているヌードデッサンも、かつてモデルは匿名だったが、最近ではモデルが自己紹介し対話して人間性を知ってから描くように変わっている。また、デッサンに入る前に学生がモデルの写真を撮影するのを防ぐため携帯電話の類は預けさせる。これによって、個人の裸身がネット上に氾濫しないように学校側が留意している。

→ 同じく明治期の女子美術大学の男性裸体デッサンの古写真が登場
→ 次に安井曾太郎の木炭裸婦デッサンのスライドへ

同じ技法で100年前も現在も描く。なぜ、裸を描く授業があるのか?疑問に思っていた。
蔵屋氏は大学院に進み、そこでは美術史専攻となり、この疑問を解明するために色々調べた。
どうやら1988年頃、西洋から輸入された学習法で、この頃の学生も疑問に思っていたことが分かった。

西欧の裸体表現は、ギリシャ・ローマに起源があり、例えば今年国立西洋美術館で開催された「古代ギリシャ展」の円盤投げの彫刻がその好例。ギリシャ時代は裸礼讃の文化だった。
古代オリンピックの再現映像が上映されていたが、そこでは如何にして性器を隠すか編集の苦労が感じられた。

しかし、その後キリスト教により美しい裸礼讃は一旦すたれる。

次にルネサンス文化が隆盛し、人間の姿に関心が向かうようになる。
ルネサンス期にベネチアで活躍したジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」の画像とともに裸婦の元祖として紹介される。

次にフランスのジャック=ルイ・ダヴィッド「テルモピュライのレオニダス」1799~1814年ルーブル美術館蔵画像がスライドに。↓

Louis_David_20111213001816.jpg

ペルシャ人によるギリシャ侵攻を防御している様子を描いているのだが、なぜ戦っているのに彼らは皆、裸なのか?
この作品が描かれた時代では、崇高な歴史的場面は裸で描くのが一番良いと考えられていた。

そして、ここからいよいよ日本洋画へと話題は入って行く。

・黒田清輝 
1860~1880年頃、猛々しい男を裸で描く流行は終わり、なまめかしい女性を描く流行へとパリは変わっていた。ヨーロッパ文化はヌードを更に助長。
黒田清輝は1884年法律の勉強のため渡仏。途中で画家を志し、1886年にはラファエル・コランに学ぶ。
黒田は、日本で裸を描いて鑑賞するという使命感に燃えていた人。
彼は、ヨーロッパ芸術=ヌード、これを日本に伝えようとした。

浮世絵は人間の身体のプロポーションが西欧のものとは全然違う。ただし、浮世絵裸婦は写実ではないが、洗練したものとして日本に定着してきた。

・狩野芳崖
西洋の裸体の描き方を学ぶ。冒頭展示資料にもあるように、当時の日本人にとって、解剖学的な西洋風の画法は非常に難しいことだったことが分かる。

(1)日本人は裸でいるべき状況を設定してから描いた。

・五姓田義松 「銭湯」
意味なく裸(西洋)でなく、銭湯をモチーフに意味ある裸を描いている。

常設にも本展関連作品として90点の裸にまつわる作品を展示した。
・土田麦遷 「湯女」 常設
風呂を流した後に男性に性的サービスをする。その翌朝を描いた作品。
・小倉遊亀 「浴女」 → 銭湯
日本画では、お風呂に入っているから裸を描いている。

(2)裸をどこで見るか。西欧と日本の違い
日本ではこっそり見る。ヨーロッパでは人が大勢いる中で見る。

黒田清輝の「朝粧」(ちょうしょう)は、須磨の住友別邸にあったが第二次世界大戦で焼失。
黒田派1894年の明治美術会第6回展とその翌年に第4回内国勧業博覧会に出展。
意味なく裸で等身大の裸が登場した記念すべき作品。この作品を出展したことにより様々な議論が生じ、騒ぎとなったが、黒田はこれに負けないと誓う。
黒田の功績は裸を通して考えると分かりやすい。
ここから「智」「感」「情」の解説が始まる。
背景やタイトルから、聖なる存在として現実的なことから切り離す工夫をした。
背景の金地はどこにいるのか分からないようにしているし、金色という色が精神世界、聖なる存在感を高めている。
プロポーションの修正が行われ、8頭身、脚の付け根がちょうど四頭身、160センチくらいの女性。明治時代の女性の平均身長が143センチ。本作品を描くにあたり姉妹モデルを使ったことが分かっているが彼女たちは6.5頭身くらいで、8頭身まで引きのばしている。

下絵、デッサン何も残っておらず、キャンバスにいきなり木炭デッサンを行った。
1枚1ヶ月で制作。赤外線調査によれば、胸や脚のゆがみを修正していることが分かる。
8頭身のすらりとした女性を作り上げた黒田。この作品を見ていると、現実が追いついて行く。ある理想的なヴィジュアルイメージが現実を変える。

村上隆が「智」「感」「情」を制作したが、サイボーグのような黒田の美化の意味、意義を村上隆が読み取ったもの。
アニメの女の子はデフォルメされている。
黒田のやったことは、「理想像」が頭にあり、現実離れしたイメージを創り出した。
村上作品は、アニメもマンガも黒田のしたことと同じなのではないかという問題提起だった。

・黒田清輝 「野辺」
野外で裸になっている→ 嘘の情景
アトリエで素描モデルをして後ろで背景を合成。当時のモデルは貧しい子供モデルが多かった。
野辺で描こうとしたのは、春の妖精、ラファエル・コランの「フロレアル」の影響がある。

この後、萬鉄五郎の「裸体美人」の解釈と黒田との関わりについての解説があるが、それらは図録に詳しいので割愛する。
裸体美人の脇毛と大きな黒い鼻の穴を消して、黒田の「野辺」に脇毛を移植した2つの蔵屋氏作の画像がスライドで上映。
確かに脇毛と鼻の穴がなくなった「裸体美人」からは色っぽさが失われ、迫力ないつるんとしたヌードになり、逆に「野辺」は妖精ではなく女になっていた。

以後は上記の作品解説中心で終了となった。これらは会場内の解説パネル図録に詳細記載されています。
・熊谷守一 「轢死」
・古賀春江 「涯しなき逃避」
・安井曾太郎 「画室」
・小出楢重 「立てる裸婦」
甲斐圧楠音と梅原龍三郎ともに美青年で、特に梅原は息子に「ナルシ」と名付ける程のナルシストであったらしい。

なお、本展図録は1600円のハンディサイズ。図録と言いつつ、大半が文章で、文章の合間に出展作品の図版が掲載されている読み物と言えます。森大志郎デザイン。

やはり、企画者意図にしたがって是非一度ご覧いただくことをオススメします。特に女性の方こそ足を運んでみませんか。
そこから何を見つけて感じるかは鑑賞者次第でしょう。

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noel様

こんばんは。
お読みいただいて、有難うございます。
感想は図録読んでから書こうと思っているのですが、
同性の裸身を見るのってどうですか?
私は一向に萌えませんでしたが。。。
やはり、人は自分にないものを求めるような気が致します。

No title

面白い!アップありがとうございます。大変参考になりました。
忙しい時節ですが、ぜひ足を運んで女性観客率アップにつとめたいですww
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