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ス・ドホ|パーフェクト・ホーム 金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館で開催中の「ス・ドホ|パーフェクト・ホーム」展に行ってきました。

ス・ドホと言えば、東京都現代美術館の常設展で見かける光を通す半透明な薄い布によるインスタレーションが浮かびます。
過去に私が拝見した彼の作品はすべて薄布によるインスタレーション。もちろん、設置場所が異なれば形状や布の色も違ってはいますが、作品イメージに大きな変化はありませんでした。

しかし、本展ではそのイメージが見事に一新され、薄布インスタレーションだけでない彼の作品に接することができます。知らなかったス・ドホの世界、そしてなぜ彼が門や階段と言ったものを作品化するのかについて分かるとは言えないまでも、背景やそこに至った過程を知ることができます。
金沢での展覧会はソウルのleeum museum、広島市現代美術館からの巡回ですが、《アメリカ合衆国ニューヨーク州 10011ニューヨーク市348西22番通りアパートA、廊下と階段(金沢版)》2011-2012年のようにソウル、広島で公開された後、2階以上の階層が金沢で初公開されていて、過去2会場とは異なる面白さを孕んでいました。
*展覧会図録も広島のものとは別でお値段も広島の倍近い5000円弱で現在予約受付中。
過去に見たス・ドホの薄布の門や階段のインスタレーション、例えばソウルのleeum museum、都現美、Tate Modernではいずれも宙吊りされていて鑑賞者はそれを下から見上げるかもしくは階上のフロアから見下ろすかのいずれかで、作品そのものに近づく経験を得ることはできませんでしたが、金沢では違います。《アメリカ合衆国・・・以下略》
は1階スペース内部に鑑賞者が実際に入り込み、その中を歩くことができる。ちょっと他人様のお宅にお邪魔しているような感覚にふと陥りました。近くで見ると、内部も外部も平面ではなく実際の建物・部屋そのままを薄布で立体的に再現。玄関の表札にはス・ドホの名前が(カタカナではない)、ガス栓やコンセント、ドアノブや窓ガラスを開けるためのレバー等細部に渡り綿密に再現されている。ただ、内部と外部をつなぐものは薄布であるため、その境界は曖昧でどちらからも見られ見る関係にあるのが非常に面白いのと同時に薄布で包まれる安心感もあり。
1階からは2階へと続く階段も設置されていて、このまま昇ることができるのでは?と錯覚を覚えますが、それはできず。

ス・ドホが育った韓国の自宅をミニチュアやアニメーションで見せ、ひっそりとこじんまりとした外界から隔絶したような庭《秘密の庭》を冒頭で展示。この生家と米国留学後に住んだロードアイランドにアパートメントの自室が衝突した瞬間を1/5スケールで再現したミニチュア作品《墜落星-1/5スケール》2008-2011年は今回もっともインパクトを受けた作品です。パラシュートが付いているのはス・ドホの生家、その家が太平洋を越え不時着したのがロードアイランドのアパートメントの自室で、アパートメントは真っ二つに真ん中で切断され、各部屋の様子を正確無比にミニチュアで再現。ス・ドホの自室だろうと思われる部屋、これは部屋の中に置かれている雑誌類にハングル文字が付されていること、棚には大量の模型キットが積まれていることなどから推測、に生家は突っ込んだようです。
ス・ドホの内部での異文化衝突、あるいは過去と現在の衝突を視覚化したのでしょうか。一見した時に、災害!と思ってしまったのは震災後だからかもしれません。

「墜落星」はパラシュートでソウル→米国へ、そして昨年の光州ビエンナーレで発表した《隙間ホテル》はいずれも移動とそこでの摩擦、コミュニケーションを問題視している印象を受けました。これまで「Home」をテーマに取り組んでいたス・ドホが「ホテル」を提示したのは新たな展開と言えます。《隙間ホテル》は光州市内の街中で建物と建物の隙間に中銀カプセルタワーの1カプセルのような(内部も似ていた)ホテルを車に載せ設置場所に運んで行くというもの。実際に宿泊可能のようで、宿泊者から外部が、外部からは窓を閉ざさない限りホテル室内を観る事ができるようでした(映像と小さな模型のみ展示)。

大がかりなインスタレーションだけでなく、会場内でモニター上映されているス・ドホのドキュメンタリー映像(約86分)は過去に彼が手がけてきたプロジェクトを紹介していて、この映像でこれまでのス・ドホの作品傾向を知ることが可能です。中で特に印象に残ったのは、家具も何もないアパートメントの一室の内側に白い紙を貼り、上から鉛筆?でフロッタージュしている映像と米国・バッファローにあるオルブライト=ノックス美術館屋外に設置されたブロンズ彫刻の制作過程の2つ。
あの薄布のス・ドホがブロンズ彫刻?!と衝撃を受けました。フロッタージュは薄布に至る前提段階、すなわち、フロッタージュしたものが薄布に転換されたように見え、建物に残る記憶をすべて写しとる行為はいずれも大変興味深かったです。

また、俵屋宗達・画、本阿弥光悦・書《鹿下絵和歌巻》や江戸時代の《烏図》屏風(考えてみれば、これら2点ともシアトル美術館蔵でサントリー美術館のシアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展に出展されていた)を取り入れた映像作品《門(金沢版)》や糸を使ったドローイングを和紙に漉き込んだ平面作品、そして完成品の展示はなかったもののプリンターと共同作業で制作していた円が重なる大型の版作品は、ス・ドホの絵画的側面を知る良い機会となりました。

ス・ドホにとって「Home」は自我を支える強い記憶であり、そこから派生した一連の作品群は私たちにも「Home」の記憶を喚起させ、現在の「Home」を考えさせます。と同時に「移動」という点もス・ドホの作品にとって忘れてはならないキーワードであるように思いました。主体となる作品群の素材は薄布であるため、縫製すればどこまでも拡張可能ですが、一方で折り畳み重ねればコンパクトになり優れたポータビリティを兼ね備える。移動をキーに考えた時、布への着目は実に自然です。更に、彼の作品にしばしば登場する「門」「階段」といったものは、現在いる空間から別空間、別階層への入口となります。かつて、生家に内に内にこもっていたス・ドホもやがて門を開け外界に飛び出す。そこでのハレーションは彼にとって大きな衝撃だったと思われますが、最新作を観る限り異文化をうまく自己の中で消化し取り込んでいるように感じました。

年始早々、非常に良い展覧会を拝見できたと思います。

2012年11月23日〜2013年3月17日 金沢21世紀美術館にて開催中。
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