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美術館をめぐる旅(三重・大阪・兵庫・岡山・島根編)

あまりにも久しぶりの更新で、書き出しから戸惑ってしまいますが、この3連休+半日を使って美術館巡りをしたので旅程を記録しておくことにしました。

1日目:午後から休みをとってJR快速みえに飛び乗り、三重県美の中谷泰展へ向かう。
中谷泰は木村荘八に師事し、同年に木村荘八、中谷泰の両画家の回顧展を観ることができる機会などこれを逃したらあろう筈がない。中谷泰の回顧展は同館で1988年に開催して以来25年ぶりの単独開催である。
期待通りの充実した内容と丁寧な展示、また図録の出来映えが素晴らしく非常に資料的価値の高い1冊。ポスト印象派風の作品から戦後がらりと作風が変化する、それに加えて木村荘八同様、書籍の挿絵の力量も見て取れる作品群を紹介していた。

三重県美を後に近鉄で大阪へ向かう。
肥後橋でサードギャラリーAYAの川北ゆうさんの個展とYosimi Artsで興梠優護さん、笹川治子さんの新作を拝見。
特に興梠さんの作品の変化、抽象化が進みつつあるようで今後も期待。黒の小品も良かった。

国立国際美術館の夜間開館で貴婦人と一角獣展を堪能。国立新美術館でも拝見しているが、その時より観客が少なくゆっくり鑑賞できた。建物の構造上、柱が邪魔だったのは致し方ない所。タペストリーは近目で観られた。
コレクションは現代の彫刻、あまり印象に残る作品はなかったか。その頃には目眩が始まっていたのでホテルに早々と退散して1日目終了。

2日目:朝一番で大阪市美の「北魏 石造仏教彫刻の展開」へ向かう。てっきり同館の山口コレクションだけの展示かと思ってノーマークだったが、他館からの借用も含む特別展という情報をTwitterで知り予定に組み込んだ。
北魏前、北魏後と前後の石造彫刻を時代を追って見せることでその特徴をクローズアップさせていた。
他館からの借り入れ品もあったがごく一部を除き、やはり山口コレクションが秀逸かつ貴重な作品群であることを再認識した。
2階では、同館ご自慢の所蔵品展が開催されており今期はカザールコレクションを大公開。行けども行けども根付けや印籠が続く。大阪市美は移転などせず、あの建物自体が既に貴重な文化財なのだから天王寺での存続が決まり本当に良かったと思っている。

大阪市美を後にびわ湖ホールの開館記念コンサートのため一路大津へ。目当ては野村萬斎さんのボレロ。
やはり生は良かった!TVで数年前の公演を観て、再演がないものかと思っていたらなんとびわ湖ホールで開催するということを知り速攻チケットをおさえた。S席が3,000円と手を出しやすいお値段だったのも嬉しい。

大津を後に大阪駅で野暮用をすませ、アートコートギャラリーの野村仁展へ。旧作の展示中心。ギャラリーにいらっしゃった方は野村仁氏ご本人だったのだろうか。

その後もうひとつ野暮用をすませ、兵庫県美の橋本関雪展へ。
東京国立近代美術館で開催中の竹内栖鳳展(その後、京都市美に巡回)を観たが、栖鳳門下であった関雪が師と袂をわかち自身の絵画を模索し作品を展開する過程を大作、重要作を集めて紹介。非常に充実した内容で今回の旅ではベスト2のひとつに挙げられる。栖鳳展と両方観る事で両者の比較を考えつつ眺めると面白さが増した。
橋本関雪展は兵庫県美の単独開催で巡回なし。また同館は土曜日に夜間開館を行っていて混雑なくゆったりじっくり鑑賞できるのでおすすめ。今回、兵庫県美の友の会に入会。橋本関雪と次回展、そしてポンピドーコレクションと3つの特別展と常設の入館可能で2千円ならお得と判断した。

2日目は姫路にて宿泊。

3日目:姫路より岡山へ向かう。往路は新幹線を極力使わないで交通費を節約。相生→岡山間のみ新幹線を利用した。
岡山駅でレンタサイクルを確保し岡山県美の「中原浩大 自己模倣」展と「知られざる震災画家 徳永仁臣」展と所蔵品展を観る。中原浩大の方は作品が並んでいるだけといった印象が強く、もう少し違った展示方法はなかったのか、あれも作家の意向なのか疑問が残った。キュレーション不在感が強かった。
1000部限定らしい貴重な図録の売れ行きは好調らしく、私が行った段階で100冊は売れているとのことでした。

岡山県美を後に初の後楽園へ。
イベントを開催していて神楽の実演が行われていた。それにしても後楽園、あんなに広かったのですね。暑かったので早々に退散し、林原美術館へ。
林原美術館は初訪問。現在は「近代絵画と工芸の名品」展を開催中(11/24迄)。特に印象に残ったのは岡山の金工芸と言えば正阿弥勝義。正阿弥の金工作品が10点程展示されていた。近代絵画では菱田春草などこちらも佳品が並ぶ。

自転車で岡山駅に戻り昼食をとって倉敷へ。
この夏にも大原美術館には行ったので迷ったが、大原美術館でARCOの坂本夏子と倉敷市立美術館の30周年記念展「倉敷仏教寺院の至宝」(11/24)が観たかった。
大原美術館では期間限定で有隣荘の公開と「植物のメタモルフォーゼ」を開催中。
中で一番印象深かったのは坂本夏子の新作だった。これまでは師の影響が強く感じられる作風だったが、滞在制作で仕上げた小品の大半と大作、とりわけ大作はがらりと変化していて、失礼ながら一皮むけたといった印象。これを拝見できただけでも大原へ出向いた甲斐はあった。
また、別館の近代日本美術のコレクションは前回訪問時と展示品がかなり変わっていてこれも良かった。

倉敷市美の至宝展はやや物足りなさを感じる内容だったが涅槃図2点が記憶に残る。

岡山へ戻り高速バスにて米子へ。米子泊(本当は松江に宿泊したかったが、宿が空いてなかった!)。

4日目:早朝6時48分の山陰本線で出雲市へ向かう。目指すは出雲大社。
本来の目的は島根県立美術館なのだが、ここまできたら出雲大社もと欲が出た。が、調べてみると松江から出雲大社は結構な距離がある。しかも列車の本数は少ない。後の島根県美での14時からの講演を拝聴するには遅くとも13時迄には松江に戻らねばならないので早朝出立。
しかし、結果的にはこれが良かった。この日は大学対抗駅伝が出雲で開催。松江駅から出雲大社までは約30分に1本の間隔でバスが運行しており松江駅から25分程度で出雲大社に到着した。
駅伝のため関係者やらTV中継車やらマスコミで早朝から大変な賑わい。
急ぎ参拝をすませ、宝物殿を拝見しおみくじをひいたがいまひとつ。枝に結んでいる最中でおみくじが破れるハプニングと何やら不吉な予兆満載の初出雲大社であった。

駅伝スタートの前に再びバスで出雲市駅に戻り、予定の列車で松江着。島根県立美術館には12時前には到着。
早速、湖に面した絶景のイタリアンレストランで昼食。
そして、今回の旅の最大の目的である「出雲の阿国」展を鑑賞。
いやはやこれがよく頑張ってこれだけ集めたなという内容で、半分も観ない時点で1時間が経過。
能楽方狂言師の小笠原匡さんの講演を拝聴したかったので、展示鑑賞半ばで抜けて講演会場へ向かう。
美術史家のお話も良いが、実際に演じる側の方のお話を伺いたかった。
そして、その目論見は見事にあたり非常に興味深い内容で、映像もまじえた楽しい1時間半だった。
猿楽→能・狂言→阿国の登場。そして阿国の歌舞伎とは実際どんなものであったか、佐渡との関連、権力者と芸能者の癒着などなど展示を観る上で大変参考になった。

講演会の後、企画展会場に戻り残りと最初からもう1巡して2階のコレクション展へ。
島根県美はかねてより行きたい美術館のひとつだったが、所蔵品展も想像以上の量と質で驚いた。
所蔵品展だけでも急ぎ足で1時間以上はかかる。特に浮世絵コレクションと奈良原一高の写真の充実ぶりが光る。
古美術も良いものが出ていて、京狩野の狩野永岳の金屏風、長沢芦雪の《白象黒牛図屏風》があったりで仰天した。白象黒牛図屏風ってプライスコレクションにもなかったか?私の思い違いでしょうか。
とにかく、島根県立美術館は1日過ごせるハイパフォーマンスな美術館であることを痛感しました。

出雲の阿国展はこの日が前期最終日、後期も大幅な展示かえがあるので再訪したいが、さすがに松江まで行くのは無理。後期は出光美術館所蔵作品が目玉で文化庁所蔵の1点が気になるがこれは諦めます。同館のみで巡回なし、彦根屏風があれば完璧という良い展覧会でした。

島根県美で宍道湖に落ちる夕陽を眺めつつ帰路につきました。

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