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「井上洋介図鑑展-漫画、タブロー、絵本-」 刈谷市美術館

刈谷市美術館で2月23日まで開催中の「井上洋介図鑑展-漫画、タブロー、絵本-」に行ってきました。

井上洋介ってどんな作家さんだっけ?と記憶を探ってみたものの手がかりなし。でも、この展覧会のチラシにぐいぐい惹かれて、刈谷市美術館の公式サイトで情報収集したところ、何やら面白そうな気配が濃厚でこれは見逃してはならないと早速出かけた。

刈谷市美術館は2階建で展示は2階の展示室を使用することもあるけれど、今回は1階の展示室のみ。ただ、スペースが不足していて、展示室外にも展示が溢れ出していて、1階はほぼすべて展示会場と関連グッズ売場のみと化していました。
入ってすぐカオス。なんだ、これはすごいすごいすごい・・・(絶句)。

本展は井上洋介の多岐にわたる活動を「漫画」「タブロー」「絵本」「さまざまな仕事」の4つに分けて全貌を紹介する。各コーナーは基本的に時系列になっている。
最初の展示室では井上の出発点である「タブロー」と「漫画」の作品および大量の関連資料が展示されていて、特に資料の多さに気圧される。壁一面に1950年代の新聞記事や漫画新聞などが貼られていて、全文に目を通していたらいくら時間があっても足りない。そうは言っても面白そうなので新聞記事や雑誌などは詠みたい。目を引いたものだけ急いで目を通しつつ、井上洋介が何者であるかを確認していく時間は実に楽しかった。1950年読売新聞に投稿した漫画が小島功や長新太らの評価を受けて1951年に独立漫画派に参加して以後、漫画家としての道を歩み始める。が、並行してタブローも制作していた。
新制作展に出品し、猪熊弦一郎の好評価を得て、その後「読売アンデパンダン展」にも出展している。

初の漫画集『サドの卵』を出版、1965年(昭和40)には一連のナンセンス漫画で第11回文藝春秋漫画賞を受賞。その一方で、井上本人のインタビューで語られている通り「漫画では食えなかった」ため、徐々に絵本の挿絵を開始する。

タブローと漫画の仕事は1950年代の国内美術界において前衛美術と漫画がシンクロする状況にあり、瀧口修造は「黒い漫画」「白い漫画」論を1956年2月に読売新聞で論考を発表。井上の漫画は前者の黒い漫画の系統に属すといえ、読売アンデパンダン展では河原温の印刷絵画、池田龍雄のペン画と自作を並べたという。池田龍雄や河原温に関しては、本展図録(河出書房新社刊)に井上のインタビューで語っているがこれがまた面白い。図録は一般書籍として販売されているため、ご関心のある方にはぜひ一読をおすすめする。

これでまだ前半生しか紹介していない。1960年代には寺山修司劇団の舞台美術を担当と活動領域を更に広げ、挿絵に関しては、それまで武蔵野美術学校洋画科出身で洋画一辺倒であったのが、墨の世界に入り込み、日本美術→東洋美術へと関心を広げ、中でも白隠や仙厓の墨使いに注目し自作に取り込む。
墨を使い始めてからの作品はより不気味さを増していて、洋画では見られないおどろおどろしさが溢れていた。

彼の作品群、特にタブローを見ていると今もなお戦争(第二次世界大戦・太平洋戦争)の記憶が消えず、作品に昇華しているように見受けられる。群像は千葉に向かって歩く戦渦を逃れんとした人々の記憶が、飢えは戦後の食糧難の記憶、井上の濃厚なタブローを見ていると私自身は未体験の戦争の記憶がこちらに乗り移るような気がしてくる。
本展では再開されたタブローの近作と旧作を暗室にびっしり展示しているので、ぜひこちらも体験していただきたい。
目が暗闇に慣れて来た頃、周囲に浮かびあがる井上のタブローに圧倒されるが、過去でなく現在にも通底するような作品だと思えてきた。

そして忘れてならないのは木版画の制作。対象を簡略化する術に優れた方法と井上は版画について語っている(図録インタビュー)、骨太な線と東京の街シリーズの木版画は藤巻義夫の作品を思い起こさせる。

絵本の仕事では代表作「くまの子ウーフ」は最初パンツをはいていなかったが、途中まで描いて、ストーリー中でウーフのズボンのポケットが出てくるため、慌てて最初に戻ってパンツだけはかせたというエピソードも井上らしい。昨日アップした大橋歩は、本の挿絵を依頼されるとどの場面を挿絵にするかだけを考えて詠み進めるので内容が頭に入らないと語っていた。読まずにどんどん描く井上ときっちり読んで練る大橋、挿絵の仕事でも両者の相違が面白い。

エログロナンセンスだけでは片付けられない、井上洋介の実力を展示で紹介している素晴らしい企画展だった。これで300円とは恐れ入る。刈谷市美術館のショップで図録を購入すると井上洋介のオリジナル木版画がもれなくおまけでついてくる。木版画の種類はそれぞれ違っていて選ぶことはできない。何が入っているかはあけてからのお楽しみ!です。

私が幼少だった昭和を井上の漫画やペン画から想起しとても懐かしくなった。まだまだ言い足りないことが沢山あるのだけれど、多岐にわたる彼の活動をうまくまとめることができないので、ひとまずしめとしたい。
後日、書き直しするかもしれません。

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