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高橋耕平 「史と詩と私と」 京都芸術センター

この1ヶ月に見た中で、忘れられず心にひっかかっている作品がある。
京都芸術センターで開催中の作家ドラフト2014の高橋耕平《史と詩と私と》(しとしとしと)だ。

《史と詩と私と》は約60分(正確には58分56秒)の映像作品で、配布されている解説によれば、2010年に閉校となった作家の母校の姿でグラウンドを整備する男性、音楽室で遊ぶこども、合唱する近隣の高齢者たち(同校OBか)、町長の視察などをカメラで追っている。筋書きのないドキュメンタリなのだが、1時間という長尺を感じさせず最後まで映像を追った。

解説は作品を見た後に読んだので、舞台となっている学校が作家の母校であることや、登場人物の中に作家の両親の姿をとらえていることは後で知った。

そうして解説を読むとタイトルの《史と詩と私と》の意味が分かってくる。
展示会場の京都芸術センターも閉校となった小学校(*)の跡地と校舎をアートスペースとして活用したもので、映像の中の小学校と観賞者である私がいる旧明倫小学校が脳内で重なりあう。京都芸術センターが廃校となった小学校であることは解説を読む前から知っていたので、観賞中に映像中の小学校がどこなのか、自分がいる場所も元は小学校であることは認識しつつ観賞していたし、その意味も考えて映像を見ていた。
*『明治2年(1869年)に下京第三番組小学校として開校した明倫小学校は、平成5年(1993 年に124年の歴史をもって閉校』(京都芸術センター公式サイトより引用)

映像を見ていると否応無しに自分の小学校の記憶が立ち上がってきた。小学校というのは、どこもそれほど違いはないのかもしれない。小さな机、音楽室、木の床(自分の小学校は木であっただろうか、中学は木の床だった)など記憶をたぐりよせるのだ。
考えてみれば学校、特に義務教育の小学校・中学校ほど多くの人が共有する場所はないかもしれない。卒業生と思しき高齢者は幼き頃、在校生として通っていて、卒業後に再び同校に戻り教室で歌を唄う。どれだけ多くの個人の時間が積層しているのだろう。しかし、個人の経験は舞台は同じでもそれぞれ固有の自分史がある。同じようでいて微妙にあるいは大きな差異があるだろう。

画面を見ているうちに、スクリーンが気になってきた。映像前半の一瞬に、スクリーンと映像に写った建物のレンガ壁が重なりスクリーンがレンガ壁でできているような錯覚を覚えた。よくよく見てみるとスクリーンは通常のフラットな状態でないことに気づく。レンガのような長方形と同じ形状が積み重なっているのだった。このスクリーンは一体どうなっているのか?蛇足ながら、観賞者が座る椅子は小学校でよく用いられている木製(風?)のスクールチェアで、身体の大きい人は座面からお尻がはみ出してしまう恐れがある。映像が終わった後、近づいてスクリーンを側面から見ると、こちらも小学校で用いられる机の上面をスクリーンとして横倒しにしたものが積み重なっているのだった。

映像と上映されている展示空間が入れ子になり、更に観賞者や作家、そして映像中の登場人物たちの個人史が層をなしていることに気づくと目眩がしそうになった。まるで、何層も版を重ねた版画のような映像インスタレーション。

「史」と「私」は上記の通りその意図がつかめるのだが、残る「詩」はどこにヒントがあるのだろう。
勝手な想像だが、漢字でなく「ひらがな」でタイトルを読み下すと「しとしとしと」これらも全て同じ音韻の積層である。存外「詩」には意味がなく、この音遊びをしたかっただけなのか。あるいは、映像中にしとしとしと雨の場面があっただろうか。


作家の高橋耕平(敬称略)の作品は過去何度か拝見しているが、本作のような公共/個人と歴史の相互作用を扱い始めたのは最近で、直近では惜しくも見逃してしまったが、同じく京都のギャラリーPARCで発表した「 HARADA-san 」も実在のはらだ氏を撮影取材した約1時間のドキュメンタリー映像だった。関心の変化は母校の閉校が契機になったのか、どんな経緯があるのか知りたい。入れ子構造という魅力的なおまけは失うが、展示場所が映画館で見てもドキュメンタリとして観賞者を引き込む内容だったと思う。ドキュメンタリとして見た時に、音声の問題、冒頭から最後まで音声がやや聞き取りづらかったという点は気になったので今後改善を望みたい。

作家の今後に目が離せなくなってきた。

3月9日まで開催中。

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