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戦没画学生慰霊美術館「無言館」

窪島誠一郎氏が私財を投じて、戦没画学生慰霊美術館をオープンしたのは1997年5月、そして2008年には無言館第二展示館「傷ついた画布のドーム」がオープンした。

かねてより、「無言館」のことは窪島氏の著書や様々な展覧会を通じて知っていたが、上田市にあることは認識していなかった。今回、上田市に新たに上田市立美術館が開館し、開館記念展(巡回なし)が山本鼎展であったため上田に行こうと思い立ったが、その時点で無言館のことは頭になかった。
上田に行くための下調べの段階で、ようやく無言館と信濃デッサン館が上田市内にあると知り、せっかくの機会だしぜひ行ってみようと決めた。が、無言館も信濃デッサン館も公共交通機関利用では不便な場所にあり、半日で上田市美、無言館、信濃デッサン館を回るには車が必要だったため格安レンタカーを借り3カ所を回ることにした。
上田市美から無言館までは車で約25分。周囲を山々に囲まれ、この日は秋晴れだった。

前置きが長くなった。
無言館はコンクリート造の建物でまさに慰霊堂といった外観。木製ドアを開けるとひんやりとした空気に身を包まれる。十字架を模した構造で上から俯瞰して建物の形態を確認したかったが内部は十字に広がっていた。主に東京美術学校を卒業または繰り上げ卒業した画学生らの没年月日、亡くなった場所が死因とともにキャプションに記載されていた。
出征前日に徹夜で彫りあげた自刻像や妻や許嫁をモデルにした絵など、どれも時間を惜しむように制作した作品ばかり。親族にとっては何ものにもかえがたい貴重な遺作が1点1点展示されている。戦地でのスケッチ、手記、メモ、家族へのハガキ、出征前の写真など資料もあわせて展示されており、それらを読んでいると当時の状況がまざまざと浮かんでくるのだが、とりわけ写真は文字以上に無言で見るものに語りかけて来る。真摯な眼差しもあれば、美学校時代の同級生らとの集合写真や、家族との写真。まぎれもなく、当時生きていた姿がそこにある。
膨大な想いに飲み込まれそうになりながら、1点1点丁寧に眺めて行く。

今年、三重県美で企画展が開催された画家:中谷泰の東京美校の同級生で仲が良かった中村萬平の名に足が止まった。片や、戦後も行き残り自然を愛し故郷を愛し絵を描き続けた中谷対し、同様に画才を持ちながら戦地に散った中村萬平。生と死について、これほどまでに考えさせられたのは久しぶりだ。
そして、戦争が奪ったあまりにも多くの命や才能に言葉を失う。だからこそ、無言館なのだ。

中村萬平ともうひとり、気になった学生がいた。東京美校彫刻科卒業の高橋英吉。「日曜美術館」でも紹介された
高橋は31歳でガダルカナル戦線で戦死。出征前、そして出征中も自分で作った小刀で木を彫っていた。無言館では彼の作品として「筍」を展示していたが、そのリアルさが妙に物悲しく脳裏に残った。彼が母親と二人で写っている写真があったが、ほとんどの画学生もしくはOBが丸刈りなのに、英吉は前髪を長く伸ばした長髪に丸めがねで、昭和のモダンボーイといった雰囲気を醸し出していた。英吉の彫刻はたまたま宮城県美術館に行った際に、被災した岩手から移されて展示されていて、力強い漁師の彫刻をメインに彼の彫刻家としての才能をひしひしと感じたのを思い出す。

2008年に開館した第二展示館は、ドーム型の天井に亡くなった画学生のデッサンや下絵が隙間なく張り込まれていて天井画となっていることにまず驚く。首が痛くなるのと、双眼鏡を持っていなかったので詳細まで見ることができなかったのは残念だが遠目でも何が描かれているのか分かる作品もあった。
ここでは、2人の作家が目に留まった。ひとつは日本画の美しい小屏風で、作家を見ると小野姓。かの日本画家:小野竹喬の息子であった。いや、これは早逝するには惜しい才能だと素人の私でも思ったくらいなので、父親であった竹喬の想いやいかばかりか。
もうひとつは、今夏に茅野市美術館で企画展が開催された矢崎博信の作品。確か、茅野の企画展でも無言館から出展されていたことを思い出した。矢崎の絵画は、他の洋画と並んでいると、個性が際立っており矢崎と知ったのは絵を見てこれは!と思った後に確認してそれと分かった。
総じて、作家の名前や悲劇的な死は別として、純粋に絵画として鑑賞に値する(上から目線の表現で恐縮至極)作品が多かった。それゆえ、彼らが戦死していなければ、日本の美術界はもっと違っていただろうかと、歴史にもしは禁物と分かっていながら、もうひとつの過去を想像してしまうのだった。

亡くなられた多くの英霊にこの場を借りて、慎んでご冥福をお祈りいたします。

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