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「日本の版画 1941-1950 日本の版画とは何か」 千葉市美術館

同時開催の「芳年・芳幾の錦絵新聞」展を目当てに出かけたのですが、こちらの展示の方が感動しました。「日本の版画」シリーズ第5弾最終回だそうですが、先にあった1~4回を見ていないのが悔やまれます。それほど、充実した内容であったと思います。

最終回は1940年代の日本版画を概観し、版画にとってこの時代がいかなるものであったかを243点の展示により検証しています。

印象に残った作品はほぼ全てと言いたい所ですが、特に良かったものは以下。


第Ⅰ章 戦中の創作版画
・「萩原朔太郎像」 恩地孝四郎 1943年
のっけから、この木版画が飾られているのですが、強烈なインパクト。ぐっときます。顔に刻まれた皺は深い思索の表出か?

・「孤独な夕餉」「眠る女」 ワルワーラ・ブブノワ 1941年、1942年 石版
名前からも推測されるように、ブブノワはロシア人で、戦後旧ソ連に帰国し晩年はレニングラードで終えた。油彩作品の傍ら、版画も手がけたようだが上記2作品とも国内作家とは異なる雰囲気がある。特に眠る女は戦中の作とは思えない。

・「花芭蕉」 前田藤四郎 1940年 リノカット
着物の紋様のような作品。バックの藍色に花が映える。

・「石垣苺」 山口源 1942年 木版
美味しそうな石垣苺、以前石垣イチゴ狩りに行ったことを思い出す。懐かしい感じ。山口源の作品は色が美しい。

・前川千帆-1943年3月 川西英-1943年7月による日本版画協会カレンダー
前川千帆のやさしい作風が気に入った。川西英は赤・青・黄・黒 原色使いが上手い。

第Ⅱ章 奉公する版画
・「古式三段構之図」 奥山儀八郎 木版 1941年
・「吉田松陰先生之像」 同上 1943年
第Ⅱ章では戦時色の濃い作品群が展示されている。Ⅰ章で石垣苺など日本の風景を描いた山口源、川西英も戦争にまつわるモチーフを採り上げていたのが印象的。
奥山の「吉田松陰先生之像」はどこか似顔絵チックで太い眉と厳しい目等特徴をよくとらえていると思う。

第Ⅲ章 「戦中の版画本」
最近とみに、本の装丁画に興味を持ち始めた。本展では戦中の版画本という稀少なものを多く目にすることができた。ここでは川上澄生の作品が印象深い。

第Ⅳ章 「標本たちの箱庭 -加藤太郎と杉原正巳
本展チラシに大きく掲載されているのが加藤太郎の木版画。私の好みはシャープで写実的に草花を描いた杉原作品の方だった。

第Ⅴ章 「焦土より-進駐軍と日本の版画」
やはり、恩地孝四郎、奥山儀八郎の木版作品が良い。

第Ⅵ章 「戦後-抽象と具象のあいだに」
・「版画集 苫小牧」 川上澄生 1948年 木版
気に入った作品はリストに印を付けるのが習慣になっている。何ということもない風景版画であったが、版画集としてまとめて見ると味わい深い。王子製紙の依頼で作成した限定版画集である。

第Ⅶ章 「世界という舞台へ」
いよいよ世界に羽ばたく日本版画の復活である。
山口源、恩地らの戦中には描けなかった抽象版画が見事。

・「海辺」 品川工
シュールレアリスムの影響を感じたが、実際はどうなのだろう。

・「Marikoに」 1950年 浜田知明 エッチング
浜田知明といえば、昨年東京芸大で見た自画像展での自画像作品が深く記憶に残っている。同時代を生きた他の卒業生の自画像と比べ、浜田のそれは背筋をしゃんとのばし、きりっとしたまなざしをしていて、一体この人はどんな作品を描いたのだろうと思っていた。
「Markoに」は戦争を何とか生き抜いた浜田の戦後初作。娘を対象とした浜田の心境はいかなるものだったろうか。生への希望が見出せる。

・「初年兵哀歌」 同上 1952年
モノトーンで決して消えることのない戦争の記憶を表現している。見ていると、悲哀、痛切な傷みが伝わってくる。

この展覧会の翌日に放映された新日曜美術館で浜田の版画作品がウフィッツィ美術館に日本人として初めて収蔵されたことを知った。素晴らしい快挙だと思う。

この他、最終章では駒井哲郎、棟方志功、浜口陽三ら名だたる戦後の日本版画家の作品を見ることができる。


以上、だらだらと書いてしまいましたが、作品数が多いのでこれから行かれる方は時間を多めに見積もられた方が良いかも。版画は印刷に適しているのか図録は上出来。特に料紙仕立てになっているのが気に入って買い求めました。ミュージアムショップで宅配もしていただけます。

チラシは地味ですが、おススメの展覧会です。

*3月2日(日)まで開催中。

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遊行七恵さま

こんばんは。
お返事遅くなり、申し訳ございません。

過去の図録は岡崎市美で見た記憶があります。
再度見てみようと思います。


No title

こんばんは
このシリーズもついにフィナーレを迎えましたね。
3と4あたりは岡崎市美術館でも開催されていたようです。
もしかすると本はまだそこに在庫があるかも・・・

わたしは迷子になりながら千葉へ行きました。いつも道を間違えます。
元々版画ファンなのですが、このシリーズのおかげでますます好きになっています。

とら様

こんばんは。
戦中、戦後を駆け抜けた版画家たちの苦闘が偲ばれました。
見事に新たな芽吹きとなった戦後の作品を見た時
良かったなぁと感動一杯でした。

No title

素晴らしい版画展でしたね。記事を辿りながら、会場の様子を思い出しています。
だれもが感動する作品をこんなに多く展示していたこと、
版画家たちの激動の時代の生きざまが分かるように展示されていたことなど・・・
長く記憶に残る展覧会でした。
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