「觀海庵」 落成記念コレクション展−まなざしはときをこえて ハラミュージアムアーク
昨日の旅程編に続き本編です。
品川の原美術館には何度も訪れていましたが、名古屋から群馬県渋川はあまりに遠かったため、ハラミュージアムアークには行けず仕舞。しかし、東京進出に伴い、北関東が日帰り圏に突入したことによって、ついについに憧れのハラミュージアムアークへ行くことができました。
折しも、今年は磯崎新設計の「觀海庵」が完成。その記念展として7月27日より「まなざしはときをこえて」が開催されています。
まず、ハラミュージアムアークの建物構成ですが、四角の展示室ギャラリーAを中心に左右にギャラリーB、ギャラリーCが両翼となっています。各ギャラリーは中でつながっておらず、一旦外に出て、別のギャラリーに入ることになります。目立つのは、建物の色。黒なのです。同じ群馬県近代美術館も磯崎氏の設計によるものですが、こちらはホワイトキューブと言われる白い建物。対照的に真黒な美術館は、牧場という立地にマッチしています。
今回新たに完成した觀海庵は現代アートのギャラリー群とは反対側の一番端っこにあります。
どの順番に見ても構わない方式は、金沢21世紀美術館と同じです。中でつながっていないのが違いでしょうか。今回は、実際に私が見た順にご紹介します。
1.觀海庵
中央入り口を抜けるとすぐに屋外アートとしてフェディリコ・エレーロの最新作が両側に。エレーロは十和田現代美術館の参加アーティストでもありますが、ここでも同様の彼らしいポップな平面作品を床一面に描いています。
そこを抜けると、磯崎氏がキュレーションを行った展覧会等を紹介するDVD映像が流れていますが、ここは、軽く見て終わり。
長い廊下に当たりますが、右端突き当りには横尾忠則のタイルアートが展示されています。90年代の作品と古めですが、古さなど微塵も感じさせません。
反対方向の月当たり、そこが觀海庵の入口となっています。
黒い木製ドアを開けると、真っ暗な世界に沈み込みます。
最初に目にしたのは、見た瞬間「カプーアだ!」と思うようなオブジェがひとつ。タイトルは「虚空」(Void)。暗さに目が慣れてくるとオブジェの色が藍色であることに気が付きます。
カプーアらしい吸い込まれるような錯覚を起こさせる立体作品。
次に受付の反対側に杉本博司の「海景」シリーズのうち3枚が展示されていました。
このあたりで、既に深い海の世界に潜ったような感覚があります。
いよいよメイン展示室へ。
最初の壁の左側には2点の絵画。ひとつはマークロスコ「赤に赤」、もうひとつは「チボリ」ヤン・ファーブル。赤と青の作品が横並びする光景も見もののひとつ。
正面の大きなガラス張りの展示ケースには森徹山「百鶴図屏風」(六曲一双)。屏風の間には倉俣史朗のピンク色のアクリル花瓶がひっそりと置かれています。
屏風とデザイン性あるアクリル花瓶の取り合わせは、異時代文化でありながら、妙にマッチしていました。
驚きはまだまだ続きます。
手前の細長い巻物専用の展示ケースには円山応挙「淀川両岸図巻」が入っています。手前からも向こう側からも両側から鑑賞可能なケースは過去あまり見たことがありません。
淀川両岸図は、人物の描写の細かさ・小ささは驚異的。双眼鏡を持参していたので、ここぞとばかりに使用しました。
中央に直立するガラスケースの中にあるのは、何とイブ・クラインの「青いスポンジ」。本当にスポンジを使用して制作されていますが、言われなければスポンジとはとても思えません。
本展担当の主任学芸員青野氏によれば「觀海庵」は原六郎の号であるため、今回の企画展ではその名にちなんだ海や青色の作品を揃えたそうです。
徹山のガラスケースの逆サイドには、「龍虎図」 狩野探幽 が。
同じケースには、「軍配に鉄線蒔絵刀筒」と須田悦弘「鉄線」という見事な取り合わせも見られます。この蒔絵筒のために、須田さんの鉄線を新たに作ったのかと思いましたが、さにあらず。
品川にある原美術館の2階パーマネントコレクションの須田作品から、一部を移設したそうです。
とどめは、草間弥生の「かぼちゃ」。止め石の役割として、磯崎氏がセレクト。
そして忘れてならないのは、「虎図」(三井寺旧日光院客殿障壁画)です。
永徳にしては、ちょっと迫力不足のかわいい虎が正面を向いています。
言葉と言うのは、無力だなとつくづく思います。当方の表現力でこの構成の素晴らしさを語るには限界があります。
どうか、実際に足を運んで見られることをお薦めします。
特に、草間ファン、須田ファンの方、必見です。
ギャラリーA、B、Cの各展示作品は省略します。
印象に残ったのは、束芋の「真夜中の海」。2006年の束芋展で出品された作品ですが、見せ方を変えると印象も変わります。シャネルのモバイルアートで見た束芋作品より、こちらの方が良かったです。
当日は、運良くギャラリーガイドツアー(日曜2時半のみ)に参加でき、学芸員さんによる各展示室の解説と普段拝見できない収蔵庫見学をさせていただきました。
こちらの収蔵庫、圧巻です。1階部分でリキテンスタインなど現代アートの名作を眺めつつ、下の階に下りて行けば、森村泰昌の一連の作品が壁一面に展開していました。これだけの森村作品を一度に見たのは、後にも先にも今回が初めて。
戸谷成雄の木彫あり、藤本由紀生のオルゴール作品あり。そしてここにもありました草間弥生。
収蔵庫でもあり、広い展示スペースでもある空間です。展示室ひとつ余分に見させていただいたくらいの満足感でした。
来年以後に更に新しい展示スペースの建設も予定されているとのこと。要注目です。
*前期展示:8月31日まで⇒ 森徹山、狩野永徳作品は前期のみの展示
後期展示:9月2日〜9月23日まで こちらも楽しみです。
なお、8月23日(土)16時半(要予約)で觀海庵の光を手がけた照明家・豊久将三氏による照明に関するガイドツアーが開催されます。光の違いで作品の表情が変わる実験付き解説会とのことなので、ご都合合えば、ぜひ参加されてはいかがでしょう。
品川の原美術館には何度も訪れていましたが、名古屋から群馬県渋川はあまりに遠かったため、ハラミュージアムアークには行けず仕舞。しかし、東京進出に伴い、北関東が日帰り圏に突入したことによって、ついについに憧れのハラミュージアムアークへ行くことができました。
折しも、今年は磯崎新設計の「觀海庵」が完成。その記念展として7月27日より「まなざしはときをこえて」が開催されています。
まず、ハラミュージアムアークの建物構成ですが、四角の展示室ギャラリーAを中心に左右にギャラリーB、ギャラリーCが両翼となっています。各ギャラリーは中でつながっておらず、一旦外に出て、別のギャラリーに入ることになります。目立つのは、建物の色。黒なのです。同じ群馬県近代美術館も磯崎氏の設計によるものですが、こちらはホワイトキューブと言われる白い建物。対照的に真黒な美術館は、牧場という立地にマッチしています。
今回新たに完成した觀海庵は現代アートのギャラリー群とは反対側の一番端っこにあります。
どの順番に見ても構わない方式は、金沢21世紀美術館と同じです。中でつながっていないのが違いでしょうか。今回は、実際に私が見た順にご紹介します。
1.觀海庵
中央入り口を抜けるとすぐに屋外アートとしてフェディリコ・エレーロの最新作が両側に。エレーロは十和田現代美術館の参加アーティストでもありますが、ここでも同様の彼らしいポップな平面作品を床一面に描いています。
そこを抜けると、磯崎氏がキュレーションを行った展覧会等を紹介するDVD映像が流れていますが、ここは、軽く見て終わり。
長い廊下に当たりますが、右端突き当りには横尾忠則のタイルアートが展示されています。90年代の作品と古めですが、古さなど微塵も感じさせません。
反対方向の月当たり、そこが觀海庵の入口となっています。
黒い木製ドアを開けると、真っ暗な世界に沈み込みます。
最初に目にしたのは、見た瞬間「カプーアだ!」と思うようなオブジェがひとつ。タイトルは「虚空」(Void)。暗さに目が慣れてくるとオブジェの色が藍色であることに気が付きます。
カプーアらしい吸い込まれるような錯覚を起こさせる立体作品。
次に受付の反対側に杉本博司の「海景」シリーズのうち3枚が展示されていました。
このあたりで、既に深い海の世界に潜ったような感覚があります。
いよいよメイン展示室へ。
最初の壁の左側には2点の絵画。ひとつはマークロスコ「赤に赤」、もうひとつは「チボリ」ヤン・ファーブル。赤と青の作品が横並びする光景も見もののひとつ。
正面の大きなガラス張りの展示ケースには森徹山「百鶴図屏風」(六曲一双)。屏風の間には倉俣史朗のピンク色のアクリル花瓶がひっそりと置かれています。
屏風とデザイン性あるアクリル花瓶の取り合わせは、異時代文化でありながら、妙にマッチしていました。
驚きはまだまだ続きます。
手前の細長い巻物専用の展示ケースには円山応挙「淀川両岸図巻」が入っています。手前からも向こう側からも両側から鑑賞可能なケースは過去あまり見たことがありません。
淀川両岸図は、人物の描写の細かさ・小ささは驚異的。双眼鏡を持参していたので、ここぞとばかりに使用しました。
中央に直立するガラスケースの中にあるのは、何とイブ・クラインの「青いスポンジ」。本当にスポンジを使用して制作されていますが、言われなければスポンジとはとても思えません。
本展担当の主任学芸員青野氏によれば「觀海庵」は原六郎の号であるため、今回の企画展ではその名にちなんだ海や青色の作品を揃えたそうです。
徹山のガラスケースの逆サイドには、「龍虎図」 狩野探幽 が。
同じケースには、「軍配に鉄線蒔絵刀筒」と須田悦弘「鉄線」という見事な取り合わせも見られます。この蒔絵筒のために、須田さんの鉄線を新たに作ったのかと思いましたが、さにあらず。
品川にある原美術館の2階パーマネントコレクションの須田作品から、一部を移設したそうです。
とどめは、草間弥生の「かぼちゃ」。止め石の役割として、磯崎氏がセレクト。
そして忘れてならないのは、「虎図」(三井寺旧日光院客殿障壁画)です。
永徳にしては、ちょっと迫力不足のかわいい虎が正面を向いています。
言葉と言うのは、無力だなとつくづく思います。当方の表現力でこの構成の素晴らしさを語るには限界があります。
どうか、実際に足を運んで見られることをお薦めします。
特に、草間ファン、須田ファンの方、必見です。
ギャラリーA、B、Cの各展示作品は省略します。
印象に残ったのは、束芋の「真夜中の海」。2006年の束芋展で出品された作品ですが、見せ方を変えると印象も変わります。シャネルのモバイルアートで見た束芋作品より、こちらの方が良かったです。
当日は、運良くギャラリーガイドツアー(日曜2時半のみ)に参加でき、学芸員さんによる各展示室の解説と普段拝見できない収蔵庫見学をさせていただきました。
こちらの収蔵庫、圧巻です。1階部分でリキテンスタインなど現代アートの名作を眺めつつ、下の階に下りて行けば、森村泰昌の一連の作品が壁一面に展開していました。これだけの森村作品を一度に見たのは、後にも先にも今回が初めて。
戸谷成雄の木彫あり、藤本由紀生のオルゴール作品あり。そしてここにもありました草間弥生。
収蔵庫でもあり、広い展示スペースでもある空間です。展示室ひとつ余分に見させていただいたくらいの満足感でした。
来年以後に更に新しい展示スペースの建設も予定されているとのこと。要注目です。
*前期展示:8月31日まで⇒ 森徹山、狩野永徳作品は前期のみの展示
後期展示:9月2日〜9月23日まで こちらも楽しみです。
なお、8月23日(土)16時半(要予約)で觀海庵の光を手がけた照明家・豊久将三氏による照明に関するガイドツアーが開催されます。光の違いで作品の表情が変わる実験付き解説会とのことなので、ご都合合えば、ぜひ参加されてはいかがでしょう。
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COMMENTS
贅沢なひととき
mizdesign様
こんばんは。
現代アートと古美術が見事に融合していた展示ですね。
個人の審美眼とは恐れ入りました。
現代アートと古美術が見事に融合していた展示ですね。
個人の審美眼とは恐れ入りました。
No title
こんばんは。本当に全体の空間からして見応えのある展示でしたね。
束芋は仰るようにシャネルのは今ひとつでしたが、こちらのはこれぞという会心の一作だったと思います。草間さんのはもう目が回りますね。世界観全開です。
金曜に行ったものでギャラリーツアーはあいにく参加出来ませんでしたが、
次回は是非収蔵庫まで見てきたいと思います。
束芋は仰るようにシャネルのは今ひとつでしたが、こちらのはこれぞという会心の一作だったと思います。草間さんのはもう目が回りますね。世界観全開です。
金曜に行ったものでギャラリーツアーはあいにく参加出来ませんでしたが、
次回は是非収蔵庫まで見てきたいと思います。
@はろるど様
こんばんは。
あの展示センス、磯崎氏は、やはりただものではありませんね。
イブ・クラインのスポンジにノックアウトされました。
あれで、スポンジって思えないですよ、普通は。
次回は、水上にある天一美術館とセットでいかがですか?
あの展示センス、磯崎氏は、やはりただものではありませんね。
イブ・クラインのスポンジにノックアウトされました。
あれで、スポンジって思えないですよ、普通は。
次回は、水上にある天一美術館とセットでいかがですか?
No title
觀海庵はあの空間そのものが、全体でひとつのインスタレーションのようでした。
「真夜中の海」、同じ作品が見せ方であんなに変化するなんてすごい。
館林にも行かれたようですし、「美術館三昧」制覇に向かっていますね。
「真夜中の海」、同じ作品が見せ方であんなに変化するなんてすごい。
館林にも行かれたようですし、「美術館三昧」制覇に向かっていますね。
テツ様
こんばんは。
「美術館三昧」のこと覚えていて下さって、光栄です。
近々、進捗状況把握のために記事にしようかと考えていた所。
だんだん、難しい場所が絞られてきました。
「美術館三昧」のこと覚えていて下さって、光栄です。
近々、進捗状況把握のために記事にしようかと考えていた所。
だんだん、難しい場所が絞られてきました。
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7/27-9/23
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古美術を観に行って、草間さんの可愛らしさと須田さんの技の極みに触れる、なんとも贅沢なひとときでした。
やはり建物と展示は実際に行って観ないとその良さが分かりませんね。