「没後50年 魯山人の宇宙」 岐阜市歴史博物館 はじめての美術館35

岐阜市歴史博物館で開催中の「没後50年 魯山人の宇宙」展へ行って来た。
岐阜市歴史博物館の前回の企画展「日本のパロディー―古典にまなぶ、古典であそぶ―」も行きたかったのに、どうしても都合が合わず諦めた。
しかし、今回も冒頭の展覧会チラシが、あまりにも「魯山人の宇宙」というタイトルにピタリとはまっていて、これだけは見に行こうと決意を固めた。
展覧会チラシは、その展覧会に向かせるだけの重要なfactorになることは間違いない。
先日、ブログでお世話になっている遊行さんも「1枚のチラシがきっかけで、どれだけ展覧会に行ったか・・・」と溜息混じりにおっしゃっていたのが印象的だった。
かくいう私も最近だと、BankARTの「原口典之展」など完全にチラシでやられた。
さて、岐阜市歴史博物館はJRまたは名鉄岐阜駅からバスで約15分。金崋山のふもと岐阜公園内にある。
想像していた以上に立派な建物であった。
早速、1階の企画展示室に向かう。
展覧会構成は次の通り。
<多彩な魯山人の陶芸>
<魯山人と美濃のやきもの>
<魯山人のいた風景>
アメリカからカワシマ・コレクションが里帰りし、笠間日動美術館所蔵品と併せて約80件で、昭和34年に没した魯山人没後50年を記念して彼の陶芸作品を中心にその芸術を展観するもの。
カワシマ・コレクションは、窯から出して未使用のままコレクションされたのが特徴。今回は笠間日動所蔵作品と並んで展示されていたが、やはりその差は歴然としていた。
陶肌の輝きが違う。
やはり、使用感があるものはくすんでしまっていて、瑞々しい色合いがやや損なわれているように感じた。したがって、良いなと思う作品の大半はカワシマ・コレクションだった。
笠間市には日動系列の魯山人の居宅を公開している「春風萬里荘」があり、昨年5月に初めて訪れたが、魯山人の精神がそのまま建物に息づいていた。
そこで見た作品、笠間日動美術館で目にした作品も出展されていた。
気に入った作品は数あれど中でもというのは次のもの。
そめつけ竹鉢
そめつけ烏絵花入
九谷風鉢(チラシ掲載)
九谷風龍安寺平向
備前緋襷四方皿
小代風台鉢
於里篇分銅鉢
織部土瓶
織部菊文蓋付碗
この葉平向
紅葉平向
色絵糸巻皿
などなど。
本展は全国巡回で恐らく岐阜展が最後の巡回先ではなかろうか。
岐阜展ならではの試みとして、岐阜歴博所蔵の桃山時代の織部、志野などの名陶と一緒に魯山人の器が展示されていたこと。
また、ご当地出身、人間国宝の荒川豊蔵と魯山人との交流などについて、2階の常設展示室で特集展示「岐阜市に残る魯山人」が同時開催されていた。この特集展示が企画展に勝るとも劣らぬ面白さで、展示作品は岐阜歴博近隣でお借りして来た作品で、ほとんどが本邦初公開!
本当に良いものが沢山あった。
残念なことに、特集展示の方には作品リストが用意されておらず、メモを取る時間もなかったが、充実した内容だったことは記憶に深く刻まれた。リストがなかった理由は、以下上総介様のコメントによれば、徐々に展示作品を増やしたためとのこと。
いずれにせよ、ここ岐阜歴史博物館でなければ見られない逸品の数々である。
荒川豊蔵は、豊蔵得意の志野焼などの焼き物を手助けしていたとか、焼き物の町ならではの解説もああり楽しめた。
魯山人の器など特にそうだが、焼き物を見る時には、この器にどんな料理を盛ったらよいだろうと想像しながら見ると実に面白い。
「器は料理のきもの」と言った魯山人手製の料理を彼のものした器で食すなどなんという贅沢であろうか。
注)6月27日特集展示部分を加筆、修正。
*7月12日(日)まで開催中。
岐阜市歴史博物館
開館時間:9時~17時 月曜休館