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「野村仁 変化する相-時・場・身体」 国立新美術館

hitoshi

国立新美術館で開催中の「野村仁 変化する相-時・場・身体」を見て来ました。

野村仁さんの名前を意識するようになったのは、少し前の日本橋高島屋美術画廊Xでの個展記事にも書いたように、豊田市美での展覧会だったと思う。2001年に豊田市美では野村仁の企画展(個展)を開催。残念ながら私はこの展覧会を見ていないが、その関係もあって常設展その他で野村作品は何かと目にしていた。
つい最近では、東近美でのヴィデオを待ちながらでも複数の映像作品が出展されていたのだが、野村仁の制作活動は映像だったり、写真だったり、ガラスのオブジェだったり多様でちょっととらえどころがない。

野村仁は1945年兵庫県生まれの現代アーティスト。1960年代末から、写真を使った美術表現に取り組み始める。ことに初期の作品では「重力」「時間」を視覚化する作品で注目を集めた。
その後、写真だけでなく映像や音といった様々な媒体を使用し表現活動を現在に至るまで行っている。
本展は、野村仁の40年近くにおよぶ活動を振り返る東京初の大規模な回顧展です。

展覧会構成は以下6章から構成されている。展示は章の順序に市が従っているが、全11の展示室にのどこで章単位での切り替えがどこだったのか、分かりづらかった。
1章 「物質の相」
2章 「地上の相」
3章 「天上の相」
4章 「宇宙の相」
5章 「太古の相」
6章 「未来の相」

この章だてを見ているだけで、野村仁の目指してきたものが伺われる。
冒頭、「物質の相」では巨大な段ボールが展示されている。当時野村は、物質が時間と共に変化して行く様子に関心があった。ゆえに、「重力」「時間」を段ボールが倒れて行く様子、ドライアイスが溶けていく様子を撮影し表現した。

圧巻かつ美しいのは野村が1992年にオーストラリアで撮影した≪ストロマトライト≫太古より地球を酸素で満たし続けた藻類の化石。宇宙の運行と自然の動きについて、この時早くもも野村は企図していた。私が彼の作品を好きなのは、理論だけでなく美しさも一緒に付随してくる点である。
≪液体酸素-183度≫ですら、あやうい美しさを内に秘めているように感じた。時の経過により変化する液体酸素。あるものは霜がつき、あるものは沸き立つように泡立っていた。

「地上の相」
次に野村は自身が身を置く環境に注目する。彼自身の身体と外界との関わりを様々な方法で提示し記録することを試みた。

ここでは、「ヴィデオを待ちながら」で見た≪カメラを手に持ち腕を回す≫(映像)1972年が紹介されている。なるほど、ここで初めてあの映像作品の意義を理解できた。

私が気に入ったのは、豊田市美所蔵の≪Ten-Year photobook≫1972~1982の10年間で全120冊もある。1人につき1冊だけ中身を手に取って鑑賞することができる。何気ない風景を1秒間に4コマ写真で撮影しただけなのに、なぜ美しいのか。サブタイトル視覚のブラウン運動とは、水中に浮遊する微粒子が引き起こす不規則な運動を指すが、私たちの視覚もさまよい、移ろうことを想定した作品。

また「HEARING」という日常にある音を全て集め録音した壮大な記録作品も、こちらはCDで聞くことができるので、ぜひ、お試し。

「天上の相」
ここで、一挙に野村の関心は宇宙と自然に振り向けられる。≪moon score≫はフィルムに5本の線を写し込み、そこに月を撮影したものを音符に見立て、楽譜として演奏してみた。すると、不協和音でなく、自然な音楽に聞こえたのだ。
そこから野村は自然界にある秩序の存在を感じたという。

もう、私には彼の思考にまるで付いていけない。ただただ、すごいとしか言いようがない。古今東西、宇宙と自然をテーマにしたアーティストは彼以外にいるだろうか。思考のスケールの大きさが違う。
音楽にしても自然だが、この月の楽譜は視覚的にも美しい。月の動きが立派な芸術になっている。

そして、私にとって最初の衝撃とあったガラス製のオブジェも沢山鶴の写真がまた美しい。色相の変化が楽しめる。

≪午前のアナレンマ≫シリーズ。こちらも私の好きな作品。
1年間、同じ場所で定期的に太陽を撮影して得られた写真作品。空に現れた8の字は、日常に潜む通常感じることのできない現象を見事に視覚化して私たちに呈示してくれる。
≪3Dアナレンマ≫はこの太陽が描く8の字を彫刻として表現。一見するとブランクーシの作品かと見まごうような調和がある。
ブランクーシが求めていたのは、実はこの自然との調和だったのではなかろうか。

「宇宙の相」
月や太陽の次に野村が向かったのは、宇宙であった。
ここでは≪ハレー彗星の回帰≫などの天体の動きを撮影した写真やガラスの連作(宇宙の形に疑問を持ち、内部構造が見えるようガラスを使用した)が中心作品になっている。
また、≪軟着陸する隕石≫1991-97年の飛行機の翼に落下する隕石を表現したオブジェまで制作。
この3点セットはスケールが大きく圧巻である。

個人的には大理石で惑星をかたどったような彫刻≪ゆらぐ球体≫が好き。

「太古の相」
宇宙の果てしない広がりに思いをはせた結果、銀河と化石の関係に目を向ける。SFのような展開になっている。

しかし、とっかかりはどうあれ、やはり作品は美しさを失わない。
≪1000万年前の接ぎ木≫シリーズは地中深くで化石になった木を現在の楠木に接ぎ木した。
1000万年前と現在とで時間的な隔たりは驚くほど大きいが、作品としての違和感はない。


「「未来の相」
太古に目を向け、今野村は、未来に目を向けている。
未来の人類に対する提案を作品として制作。
色彩言語によるコミュニケーションを植物へと発展させた最新作≪植物を育む言語又は’反照している’を見る≫はそれぞれの植物たち照射された光線の色によりどんな変化があるのだろう。
最後の最後でケースから出してみたら、光線の色に葉の色が変わっていたら凄い。
美術館のガラスケースで植物を育てるのは苦労も多い。
毎日水やり、空気の循環を行って会期終了まで面倒を見ている。

壮大としかいいようのない野村仁の世界を十分に堪能できた。
展覧会図録はこの作りで2300円は破格のお値段。
また、入口で貰える小冊子「アートのとびら」は野村仁を知らなくても、その作品を楽しむ手助けになるガイドブック。難しいことは考えず、彼の意図したことは置いておいて、まずはその世界観を感じて欲しい。

回顧展に相応しい内容です。おススメします。

*7月27日(月)まで開催中。

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21世紀のxxx者さま

少しでもお役に立てて良かったです。
そして、一人でも多くの方に野村仁さんを知っていただけたらと
願うばかりです。
このスケールの大きさ、日本のお若い作家さんでは他に
浮かばないです。

No title

会期末が迫ってきたので慌てていってきました。
かなり面白い内容で収穫大でした。この記事を読んでよかったです。。。
科学とアートって真逆のようで融合することができるんだなと新しい感覚に感激しました(><)

せいな様

国立新美術館はどうもやる気のなさが、あちこちで感じられますね。
アイディアは良いのに。
事前情報ありがとうございました。

No title

本日七夕イベント参加してきました。
広報の消極性に正直ちょとがっかりしました。
庭園はとても綺麗だったですが人の少なさにがっかりしました。
おそらく行かれる際はきっとのんびり楽しめると思います。。

はろるど様

高島屋の展示は、国立新美でも展覧されていた写真作品です。
よって、行く必要はないかも。
重なってる作品もありました。
ただし、プライスチェックは可能です。

21世紀のxxx者様

ヴィデオ作品は彼の作品のごく一部。
やはり、宇宙や地球、天体を視覚化し、音声化するという
試みを体感していただきたいです。
ぜひ!

せいな様

こんばんは。
難解、意味が分からないというお客様が多いと係の方が
おっしゃっておられました。
意味も重要ですが、まずは作品制作のスケールとその出来栄えに
注目できれば楽しめると思います。

あのブランクーシのような彫刻、鶴の音楽、写真の美しさが
忘れられません。
私も七夕イベント行こうかな。

No title

こんばんは。豊田でも個展があったのですか。野村さんはこの前の近美のヴィデオ展の印象が強かったのですが、今回こうした形で見られて良かったなと思いました。

moon score、本当に神秘的ですよね。天上の音楽とはまさにこのことを指すのかと感心しました。

ご紹介の高島屋も今週末に行ってきます!

No title

この人の作品は「、「ヴィデオを待ちながら」展で初めて観ましたけど、この展示も面白そうですね。ラリック行くときにでも行ってみようかな。。。

No title

本日母子で行ってきました。
予備知識ゼロだったのですが長居してしまいました。。
とても見応えがあって楽しかったです。
七夕イベントも参加したいと思ってます。
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