「聖地寧波-日本仏教1300年の源流-」(前期) 奈良国立博物館

奈良国立博物館で開催中の「聖地寧波-日本仏教1300年の源流-」展へ行って来た。
いやはや、この展覧会凄いです!
「院政期の絵画」展以来、仏教絵画の名品、逸品、特に南宋時代の仏画を堪能させていただいた。
あまりにも凄いので、途中めまいがしそうになり(院政期の絵画展でも同様の現象が起きた)、もう駄目~と思って右を向いたら、なぜかそこに遊行七重さんのお顔が。
むむ?これは幻の七重さん?疲労のあまり似た人かと思いきや、あちらも気付かれ「あれ~」ということになりました。
が、我ら二人相変わらず過密スケジュールのため、静寂な奈良博展示室の片隅でこそこそと15分程お話しお別れしました。七重さん東大阪のお寺に間に合ったのでしょうか?
話を戻します。
この展覧会の見所は多数(本当に多数!)あれど、厳選しこれだけは必見というもののみ今回ご紹介。展示替えは前期が8/9まで、後期は8/11~8/30までとなっているが、極めつけの逸品は前期8/2までの限定展示とか、大徳寺の五百羅漢図(全82幅!!!)は3期に分けて展示なので、くれぐれもご注意ください。
やはり、前期の8/2までに来場されることを強力にオススメしますが、その理由は後で書きます。
☆見所1☆
・清涼寺 釈迦如来立像 国宝 7月30日までの展示、要注意!
有名な清涼寺様式仏像の原像がこの釈迦如来立像。私は過去「見仏記」を読んで、こちらの仏像のイラスト(byみうらじゅん)に衝撃を受け、はるばる見に行った。
もちろん、見ることはできたが、仏像との距離はかなりあったが、今回は違う。
こんなに寄ってもいいんですか?!というくらい近い。感動~涙もの。あの時はやはり明かりが足りず細部まで拝見できなかったが、今回は違う、もう前から横から斜め後方から思う存分見させていただいた。
こちらの仏像の中には様々な納入品があり、そちらも併せて展示されている。
仏像好きな方、ぜひ行って下さい。今月30日までの短期間の展示で、その後称名寺の同様式の釈迦如来立像(重文)に展示替えされます。
☆見所2☆
・泉湧寺 観音菩薩坐像(楊貴妃観音) 重文 8月2日までの展示
この美しさ。初見の仏像です。
過去に泉湧寺でご覧になった七重様によると、やはり堂内は薄暗くこんなに明るくしかも近寄れるなどとは夢のようだとか。
もう、頭の飾りの立派さもさることながら、やや面長の顔立ちは明らかに大陸の香りが漂います。
楊貴妃を偲んで作成されたという曰くも、嘘か誠か存じませぬが、むべなるかな。
こちらも必見。
なお、脇を固める「韋駄天立像」も素晴らしい造形美。
・清雲寺 観音菩薩坐像 重文 8月2日までの展示
こちらもかなり風変わりなご様子の仏像。
もう1度見たいですが、2度は無理。
☆見所3☆
・大徳寺 五百羅漢図(82幅) 重文
今回そのうち3分の1が出展されていたが、これほど羅漢図が面白いものとは知らなかった。
やはり、どうにも我慢できず図録(2000円)を購入したので、後ほどじっくり復習するが、羅漢達が愛獣に乗ってどこやらに向かっている様子、水に足をつけてくつろぐ様子、まさに人間の営みを表現するその多様性、神秘的な画題あり、観音様と競演する画題ありとにかく楽しめること請け合い。
展示は画題別になっている。
・ボストン美術館 五百羅漢図 2幅
大徳寺五百羅漢図は当初100幅で合計500の羅漢を描いていたと考えられている。上記の通り82幅が大徳寺に現存するが、残り10幅がボストン美に2幅がワシントン・フリーア美術館に流出。残り6幅は不明。
このボストン美術館所蔵10幅のうち2幅が里帰りしているが、この展示方法が泣かせる(またも感涙)。ガラスケースはるか向こうにあるのではなく、割と最近見られるガラスケースには入っているけど至近距離まで寄れる展示方式なのである。
思いっきり画面近くまで寄れるので、単眼鏡は不要。ただし、縦に長いので上部を見るには必要。
大徳寺蔵のものより、出陳が少ないせいか保存状態が抜群に良い。
この他、「六道絵」新知恩院蔵や奈良博蔵の「仏涅槃図」も素晴らしいが、六道絵は相変わらずとても怖い。餓鬼道、畜生道など地獄には落ちたくない。
入口入って正面には「宋風獅子」(飯盛神社蔵)がお出迎え、こちらのあうん獅子も風変わり。
大陸伝来の仏教を隅々まで見せてくれる展覧会です。
また、銀製の「銀阿育王塔」など中国の博物館から出展されている文物も多数あり。この王塔など銀細工の精緻の極み。
ところで、奈良博の展示方法が来るたびに良くなっている気がする。
今回、よく特別展で拝見する藤原道長の経筒も展示されていたが、過去に拝見したものと同じものとは思えないほど、金がキラキラと輝き美しさを見せていた。
文字刻も全てが書き下ろしされて展示されていて、とにかく照明の使い方がうまい。
第4章以後の展示室では五島美術館の「向付」で見られたような垂れ幕が、効果的に配され展示に華を添えていた。
個人的には、東博の「阿修羅展」より数段楽しめたと書いたら怒られるだろうか。
*8月30日まで開催中。展示替えの内容詳細は博物館HPに掲載されています。