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谷村美術館  はじめての美術館41

藤森照信著「特選 美術館三昧」に紹介されている美術館全てを訪れることが私の目標。このブログで何度も書いている通りです。
その目標が危うく達成できなくなるとあせったのが、先月。
富山のついでに糸魚川にある村野藤吾設計の谷村美術館へ行こうと思い、富山にて美術館HPを携帯でチェックしたら、何と2009年1月31日に閉館したとあるではないか(行く前にHPチェックするかな、普通)!

閉館って・・・。目標達成は早くも挫折!?

しかし、救いの手はすぐに現れた。
8月1日~8月16日、期間限定で開館するとのこと。これを逃したら、いつ拝見できるか分からない。
急遽、妻有の大地の芸術祭とからめて、この期間限定開館中に訪問することを決めた。

最寄駅の糸魚川駅からは徒歩だとどのくらいかかるのだろう?かの藤森先生は歩いて行かれたと本には書かれている。私は時間がなかったのでタクシーを利用したが、片道900円~1000円。

入館料を払って、早速入館。
入ってすぐに広大な石の庭の向こうに、祠、ドームのような白い建物が見える。
下には白っぽい石(後で石灰石の砕石)が敷き詰められている。
壁には、設計者の村野藤吾と中にある仏像(10体)制作者の澤田政廣の略歴と写真が飾ってあった。

この美術館のテーマは、シルクロードの砂漠の遺跡を想定し、外観も館内も石窟調になっているが、仏像ゆえのシルクロードのイメージだったのだろうか。
私にはシルクロードの石窟というより、村野と澤田の石製墳墓のように感じた。中には二人の往生を祈願する金剛王菩薩や弥勒菩薩らが祈りを捧げているのだから。


さて、砕石にも作家二人の紹介にも気が向かず、私の関心は目の前にまっすぐ延びる回廊にあった。
私は建築の専門家でも何でもなく、全くのド素人なので技術的なことは分からないが、最初見た時、奈良・長谷寺の回廊を思い出した。無論造形的には異なる。
こちらは、片側は壁(この壁の仕上げも凝っている)や梁の仕上げもこだわりが随所にある。

長い回廊を進んで、ひとつ曲がると建物の入口が現れ、はやる気持ちを抑えつつ中に進む。
するとどこからか、この美術館の施主となった故・谷村繁雄氏の会社である谷村建設の社員の方が登場し、ご案内をして下さった。

曰く、「この美術館は仏像に導かれて鑑賞するのです」と。
予習不足極まりないが、最初に見る展示室が決まっていて、そこを出ようとすると、次に向かうべき展示室内の仏像作品だけが視界に入る。これを全ての展示室で繰り返す。
全く、よくぞこんな工夫が考えられたものだ。
御年92歳の仕事・発想とは思えない。

更に感動するのは、外光の取り入れ方。
前述の社員の方は、この建物を愛しておられる。私のような素人にも照明を消して外光だけで見せてくださった。外光だけで見るのと、スポットのみ、更に蛍光灯の照明をプラスすると微妙に仏像の表情も変わって見える。
当日は曇天で、陽の光はあまりなかったが、お天気が良いと、朝陽の光と夕日の光がちょうど天井で境界を作って仕切られ、両の光で仏像を照らし出す趣向まである。

専門家の方だと日がな1日、その変化を見つめていることもあったそう。
でも、その気持ちも分かる気がした。

内壁は澤田政廣が鑿跡を残す彫刻作品が特徴であるため、木を削った跡を意識して作りだしたものとのこと。ぱっと見、わらが入った漆喰のように見えるが、全く違うとすぐに分かる。
天井も仕上げの異なる展示室もあり、こちらも見どころ。

この美術館の成り立ちは、まず澤田政廣が糸魚川に戦時中疎開していたことがきっかけで、彼の作品を作る美術館の建設が企図された。この案は、故・谷村社長の知己である相馬御風氏(作詞家)の助言だったそうだ。
そこまでは分かる。では、なぜ大御所村野藤吾の当番となったのか、これは最初に作品を展示することが決まった澤田からの紹介だった。
なるほど、二人は年齢も近く(3歳違いで村野が上)、同じ日本藝術院会員であるし、親交があって当然。

展示する作品が決まっているので、施工は実際に仏像の模造(本物ではないと思うが)を置いて、光の当たり具合を何度も何度も確かめ、壁のいくつもあるカーブを村野が満足行くまでやり直した。この曲線はこの美術館最大の見どころかもしれない。光のためのカーブ。

ここでは、村野が完全に指揮を取り(設計だけでなく監理も行った)、所員の手助けを嫌ったそうで、実際に現場に臨む村野のスナップ写真が何枚も何枚も、併設名庭園「玉翠園」を眺める別棟休憩所に資料として置いてある。無論自由に閲覧可能なので、工事中の様子が本当によく分かった。
当時村野は立ち続けることは難しかったようで、ほとんど椅子に座り切り。付き添いの奥さまが心配そうに村野を見守っている写真まであった。もちろん、模型に至っては二つもあった。

出口近くには、澤田のドローイング、デッサンなどが飾られている。
展示作品はどれも力作だが、中でも私の好みは、最初に見た「金剛王菩薩」1982年、最後の展示室にある「弥勒菩薩」1971年、戦時中の母の思いを彫刻にした「天彦(子供を抱く天使)」 1944年。

外に出て、外観を再度眺めると、出口を出てすぐ横からだと人の横顔、私にはモアイ像のように見える。村野はそれを指摘されると、「面白いね」と言ったらしい(社員の方の話)。


庭園「玉翠園」は、造園の権威・大阪芸術大学学長・中根金作氏の作庭。中根金作の名には記憶がなかったが、2年前?に訪れた島根県の足立美術館の名庭園も手がけていると分かり納得。
受けた印象が足立の庭園と似ていたのだ。
こちらは、砂漠をイメージした美術館とは異なり、流れる滝が作られ、水を強調。
対照的であった。

なお、車で3分の所に、同じ中根金作の手になる名庭園「翡翠園」もある。
お庭好きは必見でしょう。

詳細はこちらのHPを見つけたので、関心ある方はぜひ。
そして、同じ日に1時間違いで行って来られたテツさんの素晴らしい記事と写真(以下)は必見です。
中年とオブジェ~魅惑のモノを求めて~」 *記事は2回に亘っています。

しかし、本当に見ることができて自分は幸せだった。残念ながら私には図面から立体を想像する脳は持ち合わせず、やはり実際足を運ばないと分からない性質なのだ。
この美術館は、過去訪問した中でも特筆すべき建築であったことは間違いない。

*館内は撮影禁止ですので、ご注意ください。テツさんは事前に許可を取られています。

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あべまつ様

む~~と唸られるお気持ち分かります。
予め展示されることが分かっている作品のために作られた美術館ですから。

仏像彫刻+村野遺作+名庭園のセットは強烈。
足を運ぶ甲斐はあります。

遊行七重さま

おはようございます。
記事やリーフで満足してはなりませぬ。
やはり、行って光の入り方や照明の変化で仏像がどう変わるか、
仕上げの仕方の違いなど建築好きなら見るべき点は多数あります。

多分、建築の専門家なら谷村建設に申し入れれば見学させて
いただけるかもしれませんが、1人に対して対応してくれるかは不明。
私のような一般人は、こんな機会でもなければ見られそうにありません。

やっぱり、行ってください。富山経由なら大阪から近いです。

テツ様

おはようございます。
いや、書き足りないことだらけですが、素人視点で頑張った次第。
例えば、出口すぐの松の木にトキがとまってることが多いとか。
建築に関係ないですけどね。

しかし、これを92歳で設計監理するんだから凄い。
ボケの片鱗もありませんね。天才なんでしょうか。

No title

こんばんは。
これは素敵な環境ですね。
建築と美術がセットになっているところは
それだけでワクワクします。
サイトを見て、む~~とうなるのでした。

No title

こんにちは
おお~ついに行かれましたな!
今も旅の空かな~と思いつつ。
そうですか、やっぱり行くべきなんでしょうが、目処が立ちません(ううう)。
リーフレットを眺めて、記事を読んで、それで満足しろ遊行!

No title

memeさんの丁寧なレポート
私のブログでリンクさせていただきました。
付け加えることがない素敵な記事ですね。

私は事前に谷村建設の総務課に連絡し、館内の撮影許可をいただいたんです。
特別公開時ならではのお目こぼしと思います。

谷村美術館に行けてしあわせでしたよね。
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