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「牧島如鳩展 ~神と仏の場所~」 三鷹市美術ギャラリー

makishima

三鷹市美術ギャラリーで開催中の「牧島如鳩展」に行って来た。
足利市立美術館から始まった同展の待ちに待った巡回で、チラシ(同上)を見るだけで、一体どんな画家なのか、どんな作品が待ち受けているのか怖いような気持ちで中に入った。
会場には正教会の聖歌が、低く流れている。聖歌の流れる環境での観賞もよいもの。

牧島如鳩(まきしま・にょきゅう・1892-1975)の略歴、作品画像は同館HPに詳しいのでこちらをご覧ください。

神学校に入学し、日本人初のイコン画家山下りんにイコンのてほどきを受けたことから彼の画業が始まる。
*イコンについての説明はこちら
冒頭に、足利市美での展覧会後に発見されたという、最初期の作品≪天使図≫1910年6月の油彩があった。
この展覧会を開催したことで、日本美術史から取り残されてきた如鳩の画業が見直された成果であろう。新発見作品が出てきたことに、まず喜びを感じ、如鳩もあの世で喜んでいるのではないかと思いを馳せた。

≪天使図≫に続き、展覧会は以下の5部構成。前回のデュフィ展ではなかった作品リストが、今回は作成されている。
Ⅰ.イコンと仏画
Ⅱ 足利での共同生活
Ⅲ 小名浜時代およびイコンと仏画の融合
Ⅳ 足利・東京放浪
Ⅴ 願行寺に庵を結ぶ

全体を通して感じたことをまとめてみたい。
如鳩は、1892年日清戦争の2年前に生まれ、日露戦争、第一次世界大戦、太平洋戦争を生き抜き、亡くなったのは1975年。つまり、私が生まれた時には彼はまだ生きていた、恐らく文京区の願行寺で禅僧・中川宋淵と神と仏に仕える日々を送り、中川より「一打を受け」、名前の鳩にあった『鳥』が飛び去り、以後「如九」と名乗り始めた頃だと思われる。
この一打を受けて描いた作品≪極楽鳥≫は衝立の片面に描かれており、澄み切った青い空に色鮮やかな鳥が羽ばたいている。
その裏面には≪ぶっぽうそう≫と題した墨画が対照的に墨一色で描かれている。

一人の宗教者、伝道者としてハリストス正教会のイコンや天井画などを描いていたが、ロシア革命により正教会の力が弱まり、生活の糧を得るため職業画家として活動の幅を広げ始めた如鳩。
いくたびもの戦争を経て、やがてキリストも仏もない、あるのは唯一の神のみといった思想が絵にあらわれるのは、早かった。
1929年(昭和4年)には、≪達磨図≫、翌年には≪観音図≫を手掛けている。
しかし、そのきっかけとなったのは妻の結核入院に接して描いた≪医術≫だろうか。この作品は、出品作の中でもとりわけ特異な画面を構成している。
中央にキリスト、右下にはレントゲンの結果説明を受ける作家自身、妻と子。左下には帝王切開をしている妻の担当医、更には麻酔を象徴するけしの花。
想像力の限りを尽くした感がある。

この後、晩年までイコンと仏画が融合した牧島独自の世界観、宗教観を表現した作品の数々が生まれる。
中でも、忘れられないのは福島県の小名浜漁業協同組合に今でも豊漁を願って飾られているという≪魚籃観音像≫(1952年)。
霊感を受けて描いた作品というのは確かこれではなかったか。
大漁を祈願して描き、実際この絵の完成後豊漁が続いたという、まさしく神がかり的な作品。
恐ろしい程の迫力と構図、そして観音というにはあまりにも人間的な像が神々しく中央に描かれ、周囲には天女が舞い、小名浜海岸と思われる海景色が背景となっている。
牧島はこの作品を天啓として描いたに違いない、まさに頭に浮かんだそのままをキャンバスに載せたそんな気がする。

もう1点、チラシ表に採用されている≪大自在千手観世音菩薩≫1964年は彼の傑作と言ってよいだろう。
観音の波打つ黒髪、千手が手にする持物は果たして経典にのっとっているか?否恐らく、そこにも牧島の想像が重ねられていると思う。

絵画的に好き嫌いを述べるのであれば、濃厚な油彩より、晩年近くに手がけた席画≪観音像≫や墨画、≪日為不忘録≫1975年など、心穏やかな様子を感じた。

また、興味をひかれたのは透明フィルムに着色された巻物≪奇蹟者聖ニコライのおはなし≫1934年頃、≪郷土の義人 今村仁平≫1951年、≪紙芝居正教座≫1950年代など教義に使用されたと思しき一連の作品群。
ここにも牧島の相違工夫の跡を見る。

展示室最後にあった「牧島如鳩」印、牧島自身が1940年代後半に刻んだものだが、この印こそ彼の志向していた絵画、宗教観の象徴であり、彼の魂のようだった。
印刻に画業の全てが表現されている、あの印鑑を自身の作品に押すたび、牧島は何を思っていたのだろうか。

牧島如鳩は500年後の世界に生きる人々に見てもらいたいと話していたそうだ。
500年も経たずして、彼の画業を回顧する機会を得、またそれに接することができ、日本の歴史、日本人の宗教観にまで考えが及んだ。
約120点の作品を一堂に集め展観して下さった本展主催者の皆さまに心より感謝を申し上げたい。

*8月23日まで開催中。
三鷹市美術ギャラリーは三鷹駅南口すぐのCORAL5階。
月曜の休館日を除き毎日20時(入館は19時半まで)開館しています。貴重な機会をお見逃しなく!

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jchz様

こちらこそ、いつも格調高い内容拝見させていただいて
ありがとうございます。

如鳩展、いろいろ考えさせられ圧倒されました。
私は今回図録は見送りました(絵自体が好みでなかったため)が、
今になってやはり買うべきだったかと思ったりします。
ブロガーの間でも大評判で、如鳩も喜んでいることでしょう。

No title

こんにちは。いつもTBありがとうございます。
私が7月末にこの展覧会に行った直後は、Googleブログ検索をかけても、
ほとんど引っかかる記事がなくて(唯一の例外は、memeさんの
足利市立美術館に行こうと目論んで、行けなかったという記事くらい)
こんなにすごい展覧会なのに、みんな注目していないのか!!
と気をもんだのですが、杞憂だったようですね。
多くの人に見てもらえると嬉しいです。

noel様

ニコライ堂。
いつも通っているのに、まだ一度も中に入ったことがありません。
これを機に、中を見学させていただこうと目論見中です。

ogawama様

日本人ならではの宗教観を持った方で、それを絵画で
表現したら、あのようになったのでしょうね。

薄味の絵もお描きになるのに、濃い絵画があまりに強烈で。
こんな画家もいたのかという衝撃が大きかったです。

No title

すごかったです! 初めはニコライ堂にいる気分だったのにいきなり達磨像が、それからは頭が混乱モード。しかしおっしゃる通り、最後の印に彼の人生全てが現れていましたね。感銘を受けました。

強烈

見に行って良かったです!
どうもありがとうございました。
うーん個人的な好き嫌いを超える、特殊な作家ですね。
1度味わったらクセになると言うか。
宗教って素晴らしいとも、コワイとも思いました。

はろるど様

魂吸い取られましたか!危険ですね。

既存の宗教観のとらわれず、絵画表現をした所に
如鳩の素晴らしさがあると感じました。
本当に霊感とか強かったみたいですね。

聖歌が絵の濃さを中和してくれました。

あべまつ様

いやはや、驚きましたね。

> 正教が身近だった人の、大きな信じるものへの
> 新しい表現、だったのでしょうか?

⇒ 大きな信じるものへの新しい表現に一票を投じます。

> BGMの聖歌で教会に紛れ込んだような気分になりました。

⇒あべまつ様のコメントを拝見し、聖歌について書き忘れたことに
 気がつきました。ということで、追記しました。
 あの聖歌が妙に濃い絵画にマッチしてたんですよね。不思議。

No title

こんばんは。チラシの予想通り、強烈なインパクトのある展示でしたね。魚籃観音は久々に絵の前で魂を吸い取られたような気がしました。シュールなとかそういう言葉など吹っ飛びますよね。本当に神懸かっています。

>聖歌

大概BGMのある展覧会はあまり良いと思わないのですが、(どうしても聞いてしまって集中力が落ちます。)今回は不思議にも違和感なく見聞きすることが出来ました。

No title

こんばんは。
今日、行ってきました。
驚きの作家ですね!!
仏耶混合って??凄い画面でした。
見た画面が頭の中で曼荼羅になっています。
神に温かな血と肉体を捧げたのでしょうか。
正教が身近だった人の、大きな信じるものへの
新しい表現、だったのでしょうか?
唸りました。
BGMの聖歌で教会に紛れ込んだような気分になりました。

一村雨さま

こんばんは。
私は脂ぎるというより、濃厚な感じを受けました。

ともあれ、あの想像は素晴らしいと思いました。
絵画で自身の信仰を実現してましたね。

No title

この画家が、仏像の絵を油彩で描くと
何やら仏の荘厳というより、生々しさ、
ギトギト感を感じました。まさにあぶらぎっていると
いう感覚でした。
日本画と油彩画の魚籃観音にその違いがあらわれて
いたと思います。
それにしても、スゴイ作品ばかりでしたね。
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