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「御赦免300年記念 一蝶リターンズ 元禄風流子 英一蝶の画業」 板橋区立美術館

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板橋区立美術館で昨日から始まった「御赦免300年記念 一蝶リターンズ 元禄風流子 英一蝶の画業」に行って来ました。

展覧会の初日は久しぶり。
何しろ初日の昨日は、私の好きな小林忠先生(学習院大学教授・千葉市美術館長)の講演会「英一蝶の人と芸術」があったので、それに合わせてGO。
講演会の話題は後にして、まずは展覧会の概要から。

<概要>展覧会チラシを一部改編
多賀朝湖(たがちょうこ・流罪前の一蝶の名前)は、元禄期の江戸を代表する画家です。しかし、幕府の怒りを買って三宅島へ流罪となり、そこで足かけ12年!を過ごし、宝永6年(1709年)将軍代替の大赦によって、江戸へ戻り、その後、英一蝶(はなぶさいっちょう)と画名を改めました。今年は、一蝶御赦免より300年目にあたる年。板橋区立美術館では、過去1984年に英一蝶展を開催しましたが、それから現在に至るまで、一蝶の作品は配流以前の作品をはじめ、多くの作品が発見されています。
今回は御赦免300年を記念し、重要文化財2点を含む名品や、配流中に描いた「島一蝶」と呼ばれる作品、新出作品計50点(途中数点展示替えあり)を一堂に集め、一蝶の画業を改めて回顧します。

それにしても、生誕記念、没後記念はよくありますが、「御赦免記念」って凄い。
小林先生も講演会で、これぞ板橋の発想と感心しておられました。

展覧会は第1室、第2室に入る前に、展示室脇のコーナーで、一蝶についての説明がされています。
私はこれに気付かず最後に見ましたが、まぁ、先でも後でもどちらでもよろしいのではないかと。

で、はやる気持ちをおさえて入口から左手の第1室。
こちらは、奥の屏風を除き全て配流前、配流中に描かれた初期の作品です。
江戸に再び戻るまでの一蝶の作風は、この展示を見る限りどこかユーモラスで、市井の人々を観察し、人物の動きをよくとらえているのが特徴です。
小林先生曰く「静動感を実に上手く描く画家」というのがよく分かります。

第1展示室で印象に残った作品。
・四条河原納涼図 千葉市美術館蔵
同時代の画家久隅守景を意識したのか。川床で夕涼みの宴をしている様々な人々を描く。左端の男は何かを落っことしたのか川に頭を突っ込みそうなくらい下を向いて、顔が見えない。右手には男に背負われて扇をかざして川を渡る女性あり。やや右上上方のおぼろ月が皆を見守っている。

・朝霞惹曳馬図 静嘉堂文庫美術館蔵
過去に静嘉堂で見た時も印象深かった作品。空気感や湿度まで表現している名品。馬を曳く牧童の姿とその影が水面に描かれている。この当時、影の描写は非常に珍しい。位置的にずれはあるが、そこはご愛嬌。

・投扇図 板橋区立美術館蔵
扇を投げて鳥居をくぐらせようとしている2人の男。扇がくぐった瞬間、そばで見ていた男がひっくり返って何かを叫んでいる。ちょっとマンガの1コマみたい。

・布晒舞図 遠山記念館蔵
こちらは、小林先生が最初見た時から表装を変えているそう。表装替えの前は、もっと舞を舞う女性の着物の赤が鮮明だったらしい。昔の技術ではどうしても表層替えにより色が落ちることがあったと説明されていた。
この作品は流罪中の三宅島で描かれている。

・七福神図(書状付き)
本作は、かなり褐色を帯びている。このような色状態になっている作品が他にも数点あるが、これらは島に残っていた作品。汐の影響なのか。これは島長(船主)の梅田家に火事見舞いとして贈られた作品。七福神がシャボン玉のような球体の中に描かれ、ふわふわと宙に浮いている。構想、構図とも面白い。

・吉原風俗図巻 サントリー美術館蔵 前期のみ展示 巻き替えあり
会場スペースの都合上全ての場面を見られないのが残念。しかし、図録には全て掲載されているのでこちらで辛抱。一蝶らしい、人物表現の巧みさが目をひく。
小林先生のお気に入りは、第五段で花魁が客の男を怒らせ、男が帰ろうとするのをかむろと太鼓持ちが引き止めている。まるで、会話が聞こえてきそうな所がお好きだとおっしゃっていた。

このほか、雑画帖(大倉集古館)、風俗図絵鑑(茨城県歴史館)なども素晴らしい。

・虚空菩薩像 
第1室を最後に飾るのは仏画。島民が必要としていたのは風俗画ではなく、仏画や縁起物の絵画であった。この虚空菩薩も島の流人生活のため、紙や絵具が乏しい中、工面して描いている。
かなり描写は細かい。非常に小さい絵なので、単眼鏡がないと細部まで見えないだろう。

第2室 ここから、三宅島から戻り、英一蝶と改名後の作品が続く。
江戸に戻ってからの一蝶は、久留米藩主有馬公、豪商紀伊国屋文左衛門、奈良や茂左衛門らをパトロンに活動を再開。
ここで、風俗画廃業宣言をしている。1717年「十二ヶ月風俗図巻」の跋文に「今やかくの如き戯画を事とせず」。真面目な一蝶に変身し、英派を主宰する。

・田園風俗図屏風 六曲一双 サントリー美術館 前期のみ
のどかな田園風景と農村の日常風景と人々の様子を描いた作品。他の作品同様、人物の動きに注目。

・蟻通図 三幅対 板橋区立美術館蔵
こちらも空気感、雨の湿潤、絵を見ているだけなのに私自身もその場にいるような湿った感触が伝わってくる。故事に題材を得た作品。

・張果老・松鷺・柳鳥図 三幅対
左幅にカラス、右幅に鷺と黒白の対比が明確。中幅にはひょうたんに入ってしまった仙人と童子。
いつも必要がある時に、ひょうたんから馬を出しているのが、この絵は反対に馬がひょうたんから出て行ってしまい、張果老が後ろ向きでそれを指さしている。やはり一蝶のユーモアが感じられる。この絵は、箱書から奈良屋に贈られたものと分かっている。

・富士山図 山梨県立美術館蔵
背景に優美な富士の山を描き、手前に川渡し場の情景を描く。大幅の優品。傍らで子供が遊んでいる様子が微笑ましい。「一蝶ほど子供をやんちゃに活動的に描く画家はいない」by小林先生。
そのお言葉がよく理解できる1枚。

・阿弥陀来迎図
やはり第2室の最後も仏画。一蝶の本気出した仏画で、着彩が素晴らしい。仏たちは渦巻くピンクの雲に乗って現れている。


展示は随所に板橋らしさが満載。今回は、展示作品の一つに描かれている一休禅師が作品の一言解説をつとめている。また、通常キャプションは紙本墨画とか絹本着彩とするところを、「絹にちょっとだけ色付け」など全てに専門用語でなく分かりやすい表現を行っていた。
誰でも楽しめるのが板橋美の展示。


長くなりますが、今しばらくお付き合いを。
小林先生の講演をざっとまとめます。
英一蝶概論に相応しい内容で、前半は用意されていたB4・1枚のプリントを使い、一蝶の人生をたどり、その人となりや交友関係まで解説。更に、最近新発見されたという「吉野・龍田図屏風」(六曲一双)についても触れられた。この作品は後半スライドで見せていただけたが、本展には出品されていない。

小林先生と一蝶とのつながりは、若き頃、かの辻惟雄先生より、「夏の伊豆の島に行かないか?」と一蝶の流人時代の作品調査団に参加したのがきっかけ。その後、「この調査結果を論文にまとめよ。」との命が辻先生よりくだり、その時書いた論文が国華に掲載される。

一蝶は生涯を通じ、人の心をつかむのが上手い人だった。
前半生は遊び人(とはいえ医師の子)で、狩野派に学び、当初岩佐又兵衛、菱川師宣を慕っていた。第1室の作品は彼らを意識していたことが感じられる作品が何点もあった。
更に、俳諧を楽しみ芭蕉らと親交を結んでいた。

しかし、桂昌院の怒りを買い、三宅島へ無期流罪。ここでも、一蝶は逞しかった。
島長に取り入り、仕事も何とか江戸から入り、罪人の身でありながら、画業も続け、子供まで3人も作ってしまったという。
小林先生曰く「ワルは逞しい」。

さすがに、大赦によって江戸に戻った後は、心を入れ替え名前も変え、画題も変えもう一つの一蝶としての画業を貫く。

「総じて、一蝶は、自身の身分を高めよう、家運を興そうとする絵ではなく、人の心を慰め、喜ばせようとしている。人々を楽しい観賞に導いてくれたという点で、又兵衛や師宣を乗り越えた画家だった」という最後の先生のお言葉が本展鑑賞にあたり、一番のアドバイスではないだろうか。

なお、講演会はこの後3つ用意されています。詳細は美術館HPをご覧ください。会場は1時間前に開場され、先着100名までとなりますので、ご注意ください。
図録もかつて見たことがない程上質。使用している用紙の名前まで最後の奥付に記載されています。この質と内容で1800円は絶対買いでしょう。

また、現在発売中の雑誌「美術の窓」9月号で本展特集が70ページにも亘り組まれています。
mado

こちらも合わせれば、誰でも一蝶が分かる筈!
更にNHK「日曜美術館」でも10月に本展の特集が放映されますので、お見逃しなく。

*前期:9月5日~9月23日 後期:9月25日~10月12日

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Tak様

こんばんは。
> 翌日行って来ましたが、単眼鏡片手に
> 食い入るように見入るプロっぽい人が
> かなりいらっしゃいました。

⇒ 2日目もそうだったのですか。
   実は初日もプロっぽい方が多くて、講演のせいかなと
   思っていたのです。

annexに掲載されていた「素通りしないでください」の幟良かったですよね。
私も板橋らしいなぁと感じました。

あべまつ様

こんばんは。
小林先生の隠れファンで講演を見つけると、出来る限り
足を運ぶようにしています。
毎回、とても楽しそうにお話されるので、江戸絵画が本当に
お好きなんだろうと、こちらも楽しくなるのです。

書き忘れましたが、流人時代は表装までも一蝶自ら手がけた
そうで、紐は紙のこより、軸は木を削るなど材料の乏しい中での
創意工夫が見られたそうです。
しかし、この貴重な表装がそのまま残されている作品は
現在ほとんどないとのこと。

そんなことも頭に浮かべつつ、ぜひ楽しんでいらしてくださいませ。

No title

こんばんは。

「御赦免300年記念」これ板橋らしくていいですよね~
小林先生の講演会仕事で参加できなかったので
こちらで詳しく内容を知れて大変ありがたいです。

翌日行って来ましたが、単眼鏡片手に
食い入るように見入るプロっぽい人が
かなりいらっしゃいました。

No title

こんばんは。

初日に小林先生の講義、くう~~羨ましい!!
一蝶の軽やかさが大好きで、
いつかたっぷりみたいと思っていました。
又兵衛や師宣の継承の匂いもあるところも
贔屓なところです。
これから、土曜日をみると、なんだかずっと予定が入ってきて、
グレーです。
でも講義なしで、しっかり見てきたいと思います。
講義のお話など、伺えて良かったです。
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