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「久隅守景展-加賀で開花した江戸の画家-」 石川県立美術館

kusumi

石川県立美術館開設50周年記念「久隅守景展」に行って来ました。

この展覧会は年初に「私の気になる美術展」(以下)にも挙げて、行こうと決めていた。
http://memeyogini.blog51.fc2.com/blog-entry-516.html

昨日、最終日を迎えた板橋区立美術館の「一蝶リターンズ」展が好評、盛況を博し終了。この英一蝶と久隅守景は同じ狩野派一門の画技優れた画家であったが、2人とも狩野派から破門された画家としてよく並列される。
そして、同じように現代においてスポットが当たらず、回顧展の開催がない江戸時代の画家である。
奇しくも今年、計ったように守景と一蝶それぞれを単独で取り上げる稀有な展覧会が開催され、「一蝶を堪能したら、守景も見たい!」一念で金沢行きを計画した。

<展覧会概要>
久隅守景と言えばまず浮かぶ国宝≪納涼図≫をはじめ、守景作品で指定されている重要文化財3点全てを含む初期から晩年の主要作品約40点で、渋いながら日本人の心の琴線にふれる高井精神性を打ち出していった守景の画業の歩みをたどる本格的な回顧展としては最初ともいえる展覧会です。

幸いなことに、展覧会を一周したら、ちょうどギャラリートークの開始時間となったので、参加することにした。驚いたことに、トークの講師をつとめられたのは石川県立美術館長:嶋崎氏であった。この規模の美術館で開催されるギャラリートークで館長自らというのは初体験、それだけ力が入っているのだと感じる。
以下、ギャラリートークでのお話を踏まえ、感想とともに展覧会を振り返ります。
展示作品リストはこちら

第一章 種々の世界-山水・花鳥・人物-
本章では、守景の作画姿勢を山水画・花鳥画・人物画などよりたどる。

・四季山水図  瑞龍寺蔵 8面 高岡市指定文化財
守景の狩野派門人時代の画風を伝え、作成年代が判明している貴重な作品。守景は狩野探幽の命により、現在の高岡市にある禅宗寺院・瑞龍寺の襖絵8面大作である。
館長によれば、元信様式をよく学習していることがこの絵で分かるそうだが、確かに後に続く元信の風景画とは明らかに違う、古典的な画風でやや硬さが見られる。
しかし、既にその力量たるや非凡さを発揮していたからこそ、探幽から指名がかかったのだろう。

・瀟湘八景図 6曲1双 サントリー美術館
・瀟湘八景図 1幅  頴川美術館
サントリーの方は主としてモノトーン屏風、頴川美術館の方は多色な絹本著色の掛軸。頴川の作品は思わず息を飲む美しさ。守景の真体山水図でも名作と称されているというのも納得。
こちらも雪舟、周文ら室町期の水墨画の学習成果がよく現れていると説明があった。

・笹に兎図 蓮に翡翠図 2幅 石川県立美術館
展覧会図録背表紙に使用されている≪笹に兎図≫が登場。恐らく月を見ているであろう兎がとても愛らしい。右幅の≪蓮に翡翠図≫の蓮も墨の濃淡を使い分け、とても味わい深い表情を出している。
筆数は多くないのに、余白を活かした構図も光る。

・許由巣父図 2曲1隻 東京国立博物館
『荘士』などで知られる高潔な志士の故事に基づく画題。ここでは、画題に注目。故事が帝位を譲る隠遁にまつわる画題であり、守景が自身に重ねる所があったのではないかとのこと。
何はともあれ上手い。

・竹林七賢図 6曲1双  MOA美術館
本展開催にあたり、特に無理を言って貸出いただいた守景による名作屏風のひとつ。
感動的な技の冴え。特に竹の描き方は墨の濃淡だけで見事に遠近感を出している点に感服した。
人物描写も1人1人ポーズが異なり、表情も描き分けられている。

・鷹狩図 8曲1双  東京国立博物館 寄託
これは、1章でもっとも印象に残った作品。本展担当学芸員氏の仮説によれば、高岡市の個人が旧蔵していたこと登場人物の着衣の紋様などから加賀藩発注で加賀藩の鷹狩を描いたのではないかと推測されている。
その真偽はさておき、まずやまと絵風の両隻併せて10mの大画面(各152.3cm×508.6)に度肝を抜かれる。更に登場人物や鷹狩の様子が細かく丹念に描写されているので、見ているだけで鷹狩の様子が手に取るように分かる実に楽しい屏風であった。
鷹が鶴を押さえ込んでいる場面や白馬の脇の人物が鼻毛を抜いているポーズなど、見どころ満載で、この絵の前で貼りついてしまった。

他にも作品の紹介を省略するが、掛幅中心に約30点の花鳥画、人物画などを鑑賞できる。

第二章 田園風俗画家の誕生  四季耕作図の諸相
いよいよ、守景の四季耕作図がずらりと並ぶ本展の見どころ登場。守景は田園画家と言われるほど数多く≪四季耕作図≫を描いた画家として知られる。各≪四季耕作図≫を比較対照することで、伝統を継承しつつ独自性を打ち出してゆく制作の軌跡をたどる。

本展で展示されている≪四季耕作図≫は全8点。岐阜・大国寺蔵のものを除き、いずれも各隻3mを超す屏風である。これだけ大作屏風が並ぶ展示は圧巻。最初40点は少ないかと思ったが、とんでもない間違い。十二分に満足できる内容だった。

どれもタイトルが≪四季耕作図≫であるが、いずれもそれぞれ違う内容。個人所蔵の作品も多いため、タイトル・所蔵名で作品の区別をつけにくい。
最初は中国風俗の四季耕作図から始まり、作品番号36の四季耕作図以後の作品からは日本風俗によって描かれ始める。

この36番の作品では、他の作品と異なり、四季の展開が右から左になっている点も注目。現在確認されている守景の日本風俗≪四季耕作図≫では本作のみ右から左の四季展開で描かれているそうだ。

守景の四季耕作図の魅力は、風景画としても人物画としても様々な楽しみ方ができることではないだろうか。例えば、34の四季耕作図では驟雨に襲われ、家に駆け込む人々の様子や満員なのに無理やり入り込もうとする姿が生き生きと描かれる。
守景から離れるが、先に挙げた「一蝶リターンズ」でも同様に驟雨に襲われ、雨宿りする人々を描いた東博所蔵の「雨宿り図屏風」が展示されていた。
驟雨というのは、当時の狩野派画家でよく使われる画題であったのかもしれないが、同じ驟雨の様子でもそれぞれ表現方法が異なっているのが興味深い。

当時の農民生活は貧しく苦しいような印象を受けるが、守景作品でその苦しさは見受けられない。むしろ皆、生き生きと楽しそうに農作業を営んでいる。

守景も一蝶も、雨宿りする人々を見つめる視線は温かいと感じた。

守景に話を戻す。
風景画としての四季耕作図であるが、遠近感(奥行)や田の広がりなど、見ているだけで心和んでくる。実際、農村風景を見ているような感じ。特に、後半の日本風俗で描かれた四季耕作図では親近感がある。
古典様式である中国風俗からの脱却をはかり、独自の創意により完成した日本風俗の四季耕作図。
彼の残した功績は大きく、この創意が後の≪納涼図≫制作へとつながっていく。

第三章 円熟の境地
最終章ではいよいよ国宝≪納涼図≫をはじめ、重要文化財指定の作品が並ぶ。惜しくも大倉集古館所蔵の≪賀茂競馬・宇治茶摘図≫は10月10日までの展示で、見ることは叶わなかったのは残念。

本章で注目すべきは、作品番号39石川県立美術館蔵の≪四季耕作図≫である。
日本風俗で描かれた同作品の中ではもっとも完成度の高い名作と言われている。重文指定にあたっては、対抗馬が現れたようだが、こちらに軍配が上がった。
本作の見どころポイントは次の通り。
①左隻やや右寄りの柳の下に描かれた3人の人物の様子
②右隻の右下に描かれた石高を告げる役人とそれを聞く農民の様子(下図)
sikikousakuzu

②は日本史の教科書の参考資料として掲載されているそうだ。
①は目玉の≪納涼図≫に描かれる涼を取る親子と同じようにござを引いてくつろぐ3人の人物。ポーズも似ている点より、39の≪四季耕作図≫などで表現の研究を重ねた結果の集大成として≪納涼図≫が描かれたのではないかとされる。

柳で忘れてならないのは、守景の描く作品には多くこの柳が登場し、しかも同じような描き方であるため、守景の贋物にはよく柳が描かれているそうなので、ご注意を。

さて、≪納涼図≫は過去東博で見たことがあるが、久々の対面。
こちらも教科書で見かけた作品で、いつも懐かしく思う。今回は一連の≪四季耕作図≫からたどって、守景の画業到達点とされる本作を見ると感慨深いものがあった。
3人の家族の視線は先にあげた≪笹に兎図≫の兎と同じく月だろうというのが、同館の推測。

≪納涼図≫を描き上げた守景の心境は、いかばかりであったか。本人しか分からないが、様々に憶測するのも楽しいことだと思う。
一蝶以上に謎の多い画家久隅守景の四季耕作図が深く心に残った素晴らしい展覧会。金沢に足を運んで余りある内容だった。

守景の精神性までは当記事で語ることはできなかったが、ご関心の向きには、ぜひ本展図録の購入をお薦めします。価格2000円で、≪四季耕作図≫をはじめとする大型作品の詳細拡大図や担当学芸員の村瀬氏による守景の画業を考察する論文も掲載されていて、この先いつ開催されるか分からぬ久隅守景展の貴重な記録だと思います。

*10月25日まで開催中。会期中無休!もちろん、お薦め展覧会です。開館時間:9:30~18:00
他館への巡回はありません。

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TADDY K. さま

はじめまして。
コメント本当に有難うございます。目にとめていただけて幸いです。

私が石川県美に行ったのは10月11日朝一番でした。
館長御自らのギャラリートークは11時から1時間にわたり、大変熱が入っておられました。
かなり端折ってしまっているので、本当はもっと多くのことを語られていたのです。
例えば、四季耕作図の個人蔵作品のうち1点は山下家という旧家ご所蔵で、こちらは
他にも第1章に展示されていた作品も所蔵されていました。

喫茶店は、行列ができていたので近寄りませんでしたがケーキが美味しいのですか!
一番残念だったのは、この後行った金沢21世紀美術館のお客様に石川県美にも
立ち寄っていただければと思ったことです。
あちらの盛況ぶりは大変なことになっていました。

今後とも拙い記事ではございますが、宜しくお願いいたします。

あべまつ様

こんばんは。
> 又兵衛・一蝶・守景・・・狩野派から離れた絵師にどうもひかれます。

⇒同感です。古典的な画法をしっかり習得した上で、自身の独創性を出し始めるところが
 非凡な証だと思います。
 更に、一蝶、守景ともに人々を見る目がどこか優しい点が好きです。

> 守景の絵からは気温や、体温が感じられますね。

⇒四季耕作図は季節感、空気、いや煮たきの香すら感じさせます。

巡回がないのは残念ですが、金沢で開催したことに意味があったように思いました。

しつこくて恐縮です

すみません 読み返すと 11日の午前だったのですね(展示替えの記述から)
ああ しかし貴重な機会(ギャラリートーク)・・・

待ってました

拝啓 (おそらくは初めての投稿にて)
地元らしき方が数名 簡にして要を得た記事を書かれておりましたが
しかと書かれたこうしたものを 当方探していたところでした
察するに10日にご覧になったかと 当方は11日朝立って午後に観ました
館長じきじきの展示説明要約も 貴重な記事です 謹んで御礼を申し上げたい
(ほかの記事も 少しずつですが読ませてもらいます) それではご自愛ご健筆を

追伸:あの美術館の ケーキが売り物らしい喫茶店 ご覧になりましたか
本展よりずっと混んでいたような・・・ (ちょいと複雑な気持ちになりました)

No title

こんばんは。
 >他館への巡回はありません。

この一文にうぉ~と倒れ込む私です。
memeさんの久隅守景追っかけは、筋一本入っていますね。
又兵衛・一蝶・守景・・・狩野派から離れた絵師にどうもひかれます。
守景の絵からは気温や、体温が感じられますね。
良い展覧会だったことが伝わってきました。

よし様

石川県美の常設展示室に九谷焼ルームがありました。
不室屋は聞いたことありませんでした。
調べて次回行ってみます☆

No title

不室屋さん、行かれましたか。 おいしいデス。 金沢は陶磁器・漆器類もお手頃ですわ。久谷焼きも彩を添えますよね。
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