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「河口龍夫展 言葉・時間・生命」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館で開催中の「河口龍夫展 言葉・時間・生命」に行って来ました。
kawaguchi

今回は、特別にブロガー内覧会に参加させていただき担当学芸員の大谷氏の解説をお聞きしながら会場を回ることができました。
嬉しいことに、偶然河口龍夫先生も会場に来られていたため、僅かな時間でしたが、ご挨拶のお言葉と参加者からの質問に答えていただき大感激~。

本展は、1960年代から現在に至る河口龍夫の制作のあゆみを「言葉」「時間」「生命」というキーワードにより3つの章で構成し、それぞれのテーマにおいて過去の主要作品と新作を合わせて展示しています。

作品については、簡単に触れるに留め、あとはこのブログを読まれた皆様ご自身が、是非とも体験、体感されることを切に願っています。

本展は「言葉」「時間」「生命」をキーワードにしていますが、全体を通してみると、河口氏が作り上げた世界で五感を研ぎ澄ませ、生と死、物質と言葉、言葉と概念、時間軸を考え体験する旅と言えるのではないでしょうか。
河口氏は見えないものを見せ、見えるものを見せなくする作家さんです。見えないものを見せる=見えないものの存在を観客に提示する。その過程が非常に面白く美しい。
その面白さを感じたのが、2007年の兵庫県美、名古屋市美で同時開催された「河口龍夫展 見えるものと見えないもの」(以下感想)でした。
名古屋市美術館 「河口龍夫展 見えるものと見えないもの」過去ログ
兵庫県立美術館「河口龍夫展 見えるものと見えないもの」過去ログ


今回もその姿勢は一貫していました。

参加者は、旅人となり見えない世界と見える世界を体験します。
*写真は許可を得て撮影したものです。拙い写真ですがご容赦ください。

chapter001 ものと言葉

冒頭に登場するのは闇を閉じ込めた≪DARKBOX≫1975年。
darkbox

ボルトで閉じられた小判が入っていそうな鉄の箱。この箱を閉じたのは闇の中。闇が箱に封じ込められている。闇を想像できませんか?

もう1点同様の作品が≪光(電球)≫1975年
電球

鉄のケースで覆われた電球はやはりボルトでしっかり封じ込められている。
学芸員の方にお聞きしたところ、電球の光は見えないけれど間違いなく鉄のケースの中で光っているとのこと。電球が切れたら、ちゃんとケースを外し電球交換も可能。

考えてみれば≪DARKBOX≫と≪光≫は同じ試み。封じ込められているのは光と闇。閉じてしまえば両者は同じ関係になっている。
河口氏の作品を語る上で『関係』『無関係』のキーワードを忘れてはならない。
常に何かに対して関係を作りだすことで存在を見出すと言って良いのか。
他に対しての自己。

冒頭では光と闇の関係を旅人に喚起する。

そして、≪関係-闇の中の彩色ドローイング≫2009年。
これと同様の試みは、2007年の兵庫県立美術館で開催された「見えるものと見えないもの」展でも行われていたが、私が行った時は大勢並んでいて参加できず。
今回初めて「暗闇ドローイング」(真っ暗な部屋で一人画用紙に向かい描く)を体験した。

真っ暗になってしまうと、視覚以外の感覚、例えば聴覚や触覚が過度に働き始める。
ドローイングしていると、紙の大きさを手で確かめたり、色鉛筆の場所を手で確かめたり、感触は変わらないのに、自分が描いた線を指でたどったりしてしまう。
色鉛筆は闇の中でその色を感知することはできない。色が見えない。見えるのはただ漆黒の闇。
でも、私たちは暗闇の中で実際に色を使って絵を描き、闇から外に出ればちゃんと使い分けできている。何て不思議な体験だろう!


次の部屋は名古屋市美術館で2007年開催の「見えるものと見えないもの」展と同じく、鉛板に文字を切り抜き、切り抜いた文字の部分はアクリル板を貼り、上からスポット照明で照らす。
≪関係-光になった言葉≫2007年。
yami

「闇」という文字が光により照らし出されている状態は、言葉と意味のズレがあり面白い。
結局、言葉というのは記号と同じ役目なのか。

広辞苑を使用し物体と言葉(辞書の意味が書いてある部分)を考えさせる≪意味の桎梏≫(いみのしっこく)。*桎梏は手かせ足かせの意。
全ての言葉が物体と結びついている訳ではないってことだろうか。
この広辞苑の切り抜きは展示会場だけでなく東近美や外にもあるそう。見つけた方はラッキーかも。

『言葉』によるアプローチの最後に挙げておきたいのは、写真作品≪海≫1973年(2008年プリント)。
umi

一見何ということもない海の写真だが、実は海水を河口氏の奥さまがバケツで汲んでそれをまた海に向かって撒いた瞬間を写した作品。
バケツで汲んだ海水は海なのか?海に着水した瞬間に海に戻るのか?
言葉と物体の関係の難しさを考えさせられる。

chapter002 時間

目立つのは黒板で作られた地球儀≪黒板の立体地球儀≫2009年他2点(下画像)や地図≪黒板の地図・日本≫2009年他1点。
地球儀

新潟の妻有「大地の芸術祭」で松代の農舞台にあった作品≪関係-黒板の教室≫を思い出した。
河口氏に黒板へのこだわりについてお伺いしたところ、「毎日のように路上に落書きをしていた幼き河口氏に、ご両親が雨天でも落書きできるようにと黒板を買ってもらった。プレゼントを機に、チョークで思う存分落書きし遊んでいた。」思い出が黒板には詰まっている。

松代の作品は部屋中落書きできるようにとの思いで作られたのだとか。
確かに今夏、農舞台に行った時しっかり落書きしてきた。懐かしくて楽しくてワクワクした。

今回は、国境線を自由に描ける地球儀や地図を制作されたかったとのこと。
歴史によって何度も塗り替えられてきた国境を自由に決められたら、楽しいを通り越してちょっと怖い気もするが、旅人は頭の中で自由に地球儀に国境線を思い描こう。
目に見えない国境線を目に見える形にする。実際に黒板地球儀に線を描きたかったのに、残念。
なお、この部屋におかれている小さな黒板に書かれている座標は、東近美の場所を表示しているのでお見逃しなく。

≪地下時間≫ 2005-2007年
横方向に引かれた線は地層。下に行くほど昔のもの。この地層の中で、ある種の生物の化石が見つかる年代のスパンを縦の線で示している。
何枚も様々な生物のパターンで制作されているが、幾何学模様が実に美しく絵画のようだった。
時間という見えないものを縦と横の線の色の組み合わせにより絵画化し見せてくれる手法はさすが。

化石はフロッタージュ技法(こすり出し)作品でも登場する。
アーティストの杉本博司氏も化石を愛しコレクションされているが、アーティストが化石に惹かれる理由は、果てしない時の長さを目の前で感じることができるからなのか。

chapter003 生命

最終章のテーマは「生命」。河口氏がよく使用する素材に種子、特に「蓮の種」と「蜜蝋」「鉛」の3つがある。ここでは、この3つを様々に組み合わせた作品が展示されるが、それぞれ意味を持っている。
・種=生命エネルギーの象徴
・蜜蝋=鮮やかな黄色をしていることが多く、再生エネルギーを秘めた包皮物
・鉛=危険からの防御
以上を念頭に旅を続けよう。

印象深かったのは、≪へその緒≫1991年、≪関係-蓮の時・3000年の夢≫1994年、≪睡眠からの発芽≫2009年、そして最後の最後に登場する≪木馬から天馬へ≫≪時の航海≫2009年、≪蜂がパイロットの偵察機≫2009年。

≪へその緒≫は河口氏ご本人のものと2人のお子さんのもの合計3点のドローイング。
へその緒

なぜか、河口氏のものだけ背景色が黄色。
へその緒は生命の象徴でもあるが、親子との関係を示す時間軸でもある。

蓮の種は河口氏の作品でもっとも多く使用される材料、モチーフだが、今回ベッドを使用した2点のオブジェが素晴らしかった。
≪睡眠からの発芽≫2009年は、河口氏の奥さまが睡眠=死んでいるようとお話しされたのを機に、睡眠中のエネルギーを蓮の種に転化させる趣向。
ちょうど人型(奥様の寝姿)のまわりにいくつもの蓮の種を頂にした触手が伸びている。
ベッド


本当に人が寝ている間に、そのエネルギーを使って蓮が発芽そうな気がしてくる。

一方≪関係-蓮の時・3000年の夢≫1994年は前述の発芽作品とは対照的。
こちらは鉛でベッドもそこに寝かされた蓮が人のように永遠の眠りについている。
鉛を溶いた時、再び蓮は蘇るのか。そう考えるととてもロマンティックなのだが、目の前にあるベッドは死を想起させる。

「生命」をテーマとする最初の展示室は全体で生と死のサイクル=輪廻転生という言葉を想起する。

今回の旅もいよいよ終盤。
最後の展示室には、長さ8m、重さ600kgの黄色に塗られた木造船にびっしりと蓮の種子が取り付けらている≪時の航海≫2009年。舳先は出口に向かい、まさに航海に出ようとするかのよう。
富山の入善町発電所美術館での「河口龍夫展」図録を所持しているが、発電所美術館での展示のために本船は富山で探し出された廃船で、今夏、発電所美術館に行った時、この船は青いビニールシートをかぶって深い眠りについていた。
その船が見事に新たな作品に生まれ変わっている!これがとてもとても見たかったのだ。

今回は会場の天井高がないため、床に置かれ、浮遊感を出すために(by河口氏)、黄色が塗られているが発電所美術館でのぶら下げはなくても、充分に迫力はある。
真近で見られるというメリットは大きい。

舳先によりには、羽が生えたペガサスもどきの木馬≪木馬から天馬へ≫2009年が乗船。
木馬

天に向かって旅をするのか。一瞬ノアの箱舟が浮かんだ。
この木馬には、一本の長い蓮が取り付けられ、アンテナの役目を果たす。

船を先導する役を仰せつかったのは≪蜂がパイロットの偵察機≫2009年。
こちらも偵察機の頭に蓮の種を付け、操縦席のパイロットには蜂がいる!

ラストシーンからも分かるように、河口氏の制作活動に終りはない。
また、次の展覧会へと旅は続く。
今回は、言葉・時間・生命をテーマとした旅を体験し楽しませてくれたが、次回はどんな旅が展開するのだろう。それを心待ちにしたいと思う。

<参考>
・展覧会HP http://www.momat.go.jp/Honkan/kawaguchi_tatsuo/index.html
・河口龍夫公式ホームページ http://www.tatsuokawaguchi.com/index.htm

<展覧会関連イベント>
旅を体験した後でもその前でも作家さんご本人の話によって更に旅を楽しめること間違いなし。
いずれも開催時間は14:00-15:30で、講堂(地下1階)にて聴講無料・申込不要(先着150名)。
参加されることをお薦めします。

◆河口龍夫×松本透(当館副館長)×大谷省吾(当館主任研究員)
日程: 2009年11月14日(土)

◆河口龍夫
日程: 2009年11月22日(日)

◆河口龍夫×谷新(宇都宮美術館館長)
日程: 2009年12月5日(土)

■担当学芸員によるギャラリートーク  いずれも18:00~19:00 参加無料(要観覧券)・申込不要
2009年11月27日(金)副館長:松本透、12月4日(金)太谷省吾

<展覧会図録>
展示されていない本展の展示ドローイングや最新作の構想ドローイングも掲載。図版も美しくファン必携の内容です。図録1冊目に掲載が間に合わなかった≪時の航海≫は完成したばかりの別冊に雄姿を披露しています。

*12月13日(日)まで開催中。
末尾で恐縮ですが、河口氏はじめ丁寧に解説をして下さった学芸員の大谷氏、関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

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せいな様

こんばんは。
今年は野村仁さんといい、河口龍夫さんといいベテラン現代アーティストの
素晴らしい回顧展が続いて嬉しいです。
本展も総さらえ~的で満足できました。

No title

こちらの展覧会は
「まあいいから見に行ってみましょうよ」と気軽に誘える数少ない展覧会だと
個人的には思っています。
伝えたいメッセージの形態が多様なのに、とても受け止めやすい。
うちの息子もとても楽しかったようです。
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