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「<写生>のイマジネーション 杉浦非水の眼と手」 宇都宮美術館

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今、一番お薦めしたい展覧会をやっとご紹介できる。
宇都宮美術館で開催中の「<写生>のイマジネーション 杉浦非水の眼と手」展である。
展覧会HPはこちら
この展覧会は宇都宮美術館での単独開催で巡回はない。開催を待ちわびて初日の11月22日(日)に合わせるため、栃木県立博物館の狩野派展も行くのを我慢していた。

杉浦非水の名前でピンと来ない方も三越のポスター(下)や≪東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通≫のポスターならどこかで見かけたことがあるのでは?
今年江戸東京博物館で開催された「よみがえる浮世絵-大正新版画」展には、非水の版画作品が出展されていた。
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杉浦非水(1876-1965)は、明治・大正・昭和にかけて活躍した図案家で、商業美術の先駆けであり現代日本のグラフィックデザインの礎を築いた人物である。
今回の展覧会では、特に非水の創作の根本にある写生精神に注目。
展覧会を見れば、非水の図案の魅力が、徹底した写生に成り立っていたことがよく分かる。

代表作はもちろんのこと、東京美術学校から中央新聞社時代までの初期作品群、ヨーロッパ遊学時代のスケッチや写真など、これまでほとんど紹介されてこなかった貴重な資料が多数展示され、非水のデザイン活動の全体像とその変遷を詳細にたどる。

展覧会構成は次の通り。
1 ’図案’への目覚め ⇒ 147点
2 声明を写す-動物、神話、シルエット ⇒ 53点
3 旅の経験-ヨーロッパ遊学 ⇒ 50点
4 非水のコレクション-あつめる・並べる・想像する- ⇒ 33点
5 復興する都市とモダンガール ⇒ 116点
6 『非水百花譜』の世界 ⇒ 23点

展示作品数は400点を超え、杉浦非水決定版とも言える内容だった。もうただただ圧倒され感心した。

1 ’図案’への目覚め、2 声明を写す-動物、神話、シルエットでは彼が手がけた装丁本、ポスター、挿絵、デッサンなど美しいデザインの数々を見ることができる。
特に、2章では動物、神話、シルエットをテーマとした作品群を集めることで、非水が写生を重視していただけでなく、モチーフの本質を考えながら図案化していたことを考察している。

アールヌーボー風のデザインあり、エジプト風のデザインあり、もうどれもこれも素敵でどうやったら次々にこんな素敵なデザインが浮かんでくるのかとうっとりしてしまう。

1~2章で非水デザインを堪能し、3章以後が本展の最も見どころである。

「3.旅の経験-ヨーロッパ遊学」では、1922年~1923年のヨーロッパ遊学時代のスケッチや彼の地で非水が集めた
当時のポスターやラベルなど貴重な作品が披露される。
図案家のお眼鏡にかなったポスターは、ど素人の私が見てもやっぱり素敵だった。
こんなの見たことない~という「フラゴナール展」ポスター(1910年代~20年代)、ルートヴィヒ・ホールヴァインポスター≪パトロナート印のビール≫1917年(自由の女神風だけどモダンでカッコイイ)、ジャン・ガブリエル・ドメルグポスター≪パリ・クチュール組合舞踏会≫(オートクチュールの舞台裏がポスター化されてる)などなど。
非水は、ヨーロッパの中でも、フランスのポスターがお気に入りだったそうだ。


「4 非水のコレクション-あつめる・並べる・想像する-」では、非水が個人的に集めた古物や工芸品、置物をはじめ、旅行の際には必ず携帯したカメラで撮影した写真を展示する。
ここで、驚くべきは彼の写真であった。
豊田市美術館の展覧会で見た恩地孝四郎の写真も素晴らしいと思ったが、非水の写真もさすが図案家というか美術を志した人の視点は違うとここでも感心。
写真家としても大成できたのではなかろうか。特に好きだった作品は≪土管の雪≫≪奥多摩一景≫≪崖と花≫(好きな順)。

「5 復興する都市とモダンガール」では、ヨーロッパ遊学後のポスター、たばこパッケージ、装丁本など、再び非水が手がけた図案が沢山並ぶ。
非水の場合、竹久夢二とは違って、固定化されたイメージや作風がない。ニーズに合わせて作風も変えられる器用さと能力を持ち合わせているのだろう。ヤマサ醤油のアバンギャルド風デザインのポスター(下)とか好きだし、雑誌「たかね」で見せる優しい草花の装丁も好き。
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最終章「6『非水百花譜』の世界」では、非水の数多い図案集の中から特に「写生」精神が際立つ「非水百花譜」を中心に取り上げる。「紫陽花」(下)、「山百合」(展覧会パンフレット表紙)などの著色作品に加え、投影写生図の美しさが印象に残った。影絵のような植物の図は版画のようで、単色であるが故、構図や線の美しさが際立っている。
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他に非水デザインの愛らしい絵ハガキや他の図案集とその根本となっている写生帖が並んで展示されているので、如何にして図案化されたかが過程は分からぬまでも、スタート地点とゴールが明確になっていたのは良かった。

宇都宮美術館はコレクション収集方針に「デザイン」が掲げられているだけに、今回の回顧展は本当に素晴らしかった。新宿の「パントン展」も同館の学芸員さんの協力がある(図録に宇都宮美術館・学芸員の方の名前が掲載されている)。宇都宮美術館の実力を存分に見せていただけた。
惜しむらくは作品リストがなかったことだが、この際忘れます。

杉浦非水ファンは必見の内容です。
遠くて宇都宮美術館まで行けませ~んという方には、ぜひ図録の購入をオススメします。
5本の論文と杉浦非水の著作、年譜に文献リストも付いた完全保存版。プラスチックの非水デザイン図案が入ったケース入りで333頁、422点掲載の2500円はこの内容ならお買い得。ミュージアムショップで電話による購入が可能です。
宇都宮美術館の図録はデザインにもこだわっていて、美術館ニュース26号では過去に手がけた図録が特集されてますが、どれもカッコイイ!

■宇都宮美術館ミュージアムショップ
営業時間  午前9時30分~午後5時00分
定休日    美術館休館日
電話番号  028-643-8855(直通)

<関連イベント>
講演会 「近代日本の“図案”と“自然”」
講 師 : 土田眞紀(美術史家)
日 時 : 2010年1月10日(日)午後2時~(開場は1時30分)
宇都宮美術館講義室にて、先着170名、聴講無料

*1月17日(日)まで開催中。オススメします。

コメントの投稿

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もか様

こんばんは。

コメント有難うございます。
これだけ充実した内容の展覧会は、この先
当分開催されないのではないでしょうか。
同じく大大大満足でした。

美術館の実力

こんにちは。
おっしゃる通り、学芸員さんの真面目な研究姿勢が
うかがわれるような展覧会だと思いました。
遠くても出掛けた甲斐があり、大満足でした!
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