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新春スペシャル対談 「真の実力派 柴田是真を応援する」 

zeshin

三井記念美術館で開催中の「柴田是真の漆×絵」展関連イベントの新春スペシャル対談 「真の実力派 柴田是真を応援する」に行って来ました。
■場所:三井別館1階会議室
■講演内容:第1部「基礎レクチャー」三井記念美術館 学芸員 小林祐子 約30分 作品スライド使用
      第2部スペシャル対談 「真の実力派・柴田是真を応援する」 約80分 作品スライド使用
      明治学院大学 教授 山下裕二氏
      武者小路千家第15代家元後嗣 千宗屋氏

簡単ですが、印象に残ったお話をかいつまんでまとめてみます。

第1部 
・戦後日本では忘れ去られてしまった柴田是真。しかし、江戸末期から明治24年に85才で亡くなるまで第1号の帝室技芸員にも任命される評価の高い画家であり蒔絵師だった。この展覧会は、一人でも多くの方に柴田是真を知ってもらいたいという気持ちから企画された。
<忘れられてしまった理由>
①絵画と漆芸のいずれにも活躍したことから、どちらの範疇からも結果的に外れてしまった。
②江戸と明治の時代の狭間に落ち込んだ(絵画と漆芸の狭間に落ち込んだのと同じ)。
③海外に作品が流出し、評価すべき作品が日本に少なくなってしまった。

・絵画の代表作品として挙げられるのは王子稲荷神社に奉納された≪鬼女図額面≫1840年、是真34歳の作品。
今回は損傷が激しいため、出展は見送られたが第2部で山下教授も「筆が走っている。これは別格」とお話されている。即興で描いたように見えるが、本図の下絵が残されており、計算し準備した結果の作品で、ここに是真の性格が見えてくる。
≪鬼女図額面≫は正月三が日と2月の午の日に見ることができるそうですが、山下教授が数年前に見に行った所、「あまりにぞんざいな扱いで驚いた」とのこと。

・是真作品の特徴
①だまし漆器 → これについては美術館HPや図録中にも掲載されているため略。
②粋で格調高いデザイン性 → ≪沢瀉と片喰図印籠≫エドソンコレクションで露の意匠に江戸ガラスを使用している例参照。 
・絵画形式の漆絵
漆独特の濃厚な色彩。漆絵では当時その性質上、赤、黄、緑、黒、褐色(茶)の5色しか出せなかったにも関わらず、あれだけ多様な表現をしている。
是真は、「海外の油絵は耐久性があるが、油を塗り直す必要がある。しかし漆は更に耐久性に優れているので、漆を使用して濃彩の絵画を描けば、素晴らしいものになるに違いない」と考えたという(これは図録の小林学芸員の文章にも掲載されている)。

第2部 対談
・山下教授と千氏のなれそめ。進行は山下教授主導で行われた。
お二人は、1998年千氏がまだ大学生であった頃、山下教授と大学の同級生の方に引きあわされる形で麻布十番にあるグリル満天星で初対面。以後、総武線で千葉市美へ向かおうとする千氏と駅のホームでばったり、そして縁は続いて、千氏は慶應大学文学部で美術史の大学院へ進み、27歳で山下教授の現在の勤務先である明治学院大学で講師をされることとなった。

・是真は千氏にとってどんな感想を持っているか?(山下教授からの問い)
是真作の茶道具は少ないが、茶の湯にも堪能な人だったことが分かる。

日本でより海外でよく作品を見る機会があった。
ここで、例として留学先のNYで昨年夏にメトロポリタン美術館の日本美術ギャラリーの最後のコーナーで「是真特集」が開催されていた話題が出る。千氏が撮影されたメトロポリタン美術館での展示の様子や作品がスライドで紹介されるが、絵画あり漆器ありでなかなか充実していた。
当然、是真ではなくNYではZESHINとして紹介され、千氏にとってのイメージはこのZESHINだとのこと。
メットでの展示を監修したのはオックスフォード大からインターンで派遣されていた蒔絵研究をされている日本人女性。

今回の展覧会を拝見して、明治にしっかりかぶっている画家だったのだと驚いた。
技術の高さをこれみよがしに出さず、ただしそれは奥ゆかしさからではなく、もう少しひねた感じ故だと思う。

対して山下教授。
自分にとっては元々ストライクゾーンに入っている作家であったが、ボールが来てもバットを振ったことはなかった。
(山下教授はきっちりした仕事をする作家がお好きなんだそうです。)
学生時代(1980年)に板橋区立美術館で、若き学芸員だった安村政信氏の監修だったが、以後単独で取り上げた展覧会は本展まで開催されていない。
研究書も数冊程度しか発行されておらず、この展覧会をきっかけに発刊された別冊太陽「柴田是真」(下図)まで出ていない状況。

太陽


・普通の人が見過ごしてしまうような所に超絶技巧を施す。
例:≪紫檀塗交合≫千氏と知遇のある古美術商が扱ってとある個人所蔵家からエドソンコレクションに入ったそうだが、逸話として、蓋表の干割れや鎹は敢えて付けたものと気付いたが、側面の金属のような鎹まで漆とは気付かず、傷があると安く購入したとか。プロまでだます超絶技巧であるが、説明したり言葉に出さない所が真の実力派たる所以。言葉にしたら野暮。

スライドで主に茶道具になっている作品を中心に対談は進む。
・≪瀬戸の意茶入≫個人蔵
竹製の茶入れを是真の技で瀬戸焼を模している作品。蓋については恐らく牙であろうが、はっきりしない。茶入れの重さはわずか42gでX線をとって、縦に筋が付いているためこれは本当に竹製だろうとした。
是真はものの見方まで変えてしまう。本当に本当にそうなのか、実はこれもトリックなのではないか?と疑問を次々に呼び起こす。
笑い話として、「是真の作品を美術館で見るのは老眼にとってきつい」とガラスケースを挟むと老眼鏡をしていると一番微妙な距離なんだそう。

茶入れの話題として、間もなく静嘉堂文庫美術館で公開される藤重の「付藻茄子、松本茄子」や根津美術館蔵蔵の小川破笠が楽茶碗+表面に京焼のテクスチャーを加えた漆芸茶碗などが紹介された。

是真は茶道を江戸で学んでいる。
対談とは関係ないが、私が現在読んでいる村松梢風「本朝画人伝」第4巻(中公文庫)の最終章で是真が登場し、茶道を習うに至るきっかけが書かれている。ある所で茶を出されたが作法を知らぬため、茶を口にせず帰り、早速すぐに茶道を習うことにしたと、負けん気の強さ、向学心の旺盛さが出ているエピソードだった。

・≪砂張漆盆≫エドソンコレクション
sahari

千氏の解説によると、砂張とは東南アジア、中国、朝鮮、でも使用されていて錫、鉛、銅を混ぜた合金のこと。歴史をさかのぼると正倉院御物にも「佐波理」として伝わっているが、成分組成は異なる。
ここで例として舟形の花器が登場。ちょうどこの対談の前に行った江戸東京博物館で野村美術館所蔵の「銘 淡路屋舟」(天下の三舟のひとつ)を見たばかりだったので、ラッキー。
元々舟型花入れはインドネシアの祭器として使用されていたものを見立てで茶の湯に取り入れられるようになった(千氏)。

・忘れられ方がひどい。-山下教授
亡くなって100年しか経過していないのに忘れられ方の進行度が早い(千氏)。
・≪富士田子浦蒔絵額≫福富太郎コレクション資料室
富士山

・山下教授による福富氏の購入経緯
福富氏の奥様が箪笥を買うために、デパートへ向かったが途中、東京美術倶楽部の正札会(東美の中でももっともランクの低い売り立て)でこの蒔絵額が福富氏の目に止まり、「箪笥をやめてこれを買え」ってことになった。
傷みがひどかったので、東京文化財研究所で修理して今回の出展にこぎつけた。
漆は乾燥に弱いのでひび割れる。この額は日本政府が始めて公式参加したウィーン万博に出品され「進歩賞杯」を受賞し、現地で売却されたが、昭和42年に日本に里帰りし、前述の経緯により福富氏の手に入ったもの。
山下教授曰く、「ウィーン万博出品作が東美の正札会に出るという事態がひどい。第1部でこの額を作る前に是真が富士山に登山し、火口付近のスケッチが東京藝大で所蔵されているが、この絵を見ていると登山がまるで役に立ってないのが疑問」。
明治の工芸はどんどん海外に流出している。特に七宝などがそう。

お二人の好きな是真の作品として≪竹葉文箱≫≪琵琶の実文箱≫(エドソンコレクション)、≪蜘蛛の巣図≫(板橋区立美術館)などが紹介された。

最後にまとめとして、是真は漆で描くのに向いている人だった。筆の走る人ではなく、きちんとした仕事をする人だった。例外として≪鬼女図≫はあるのだろう。だまし茶会をやりたい!(山下教授)。


是真のだまし漆器に関連して両氏が挙げた現代アート作家は、千氏が須田悦弘、山下教授はやはり前原冬樹。

「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」は三井記念美術館で2月7日まで開催中。
1月13日から展示替えで一部作品が入れ替わります。
なお、この展覧会は下記に巡回します。
<京都展>
4月3日~6月6日 相国寺承天閣美術館
<富山展>
6月25日~8月22日 富山県水墨美術館

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ありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

家麿さま

はじめまして。
コメント有難うございます。

京都展、ぜひ楽しみにお待ちください。
もちろんTB大丈夫ですが、拙ブログに一部TBが
上手く飛ばないケースが発生しているようです。
その際にはご容赦くださいませ。

noelさま

こんばんは。
まさしくエポックメイキングでしょうね。
板橋区立美術館での展覧会は絵画中心の
内容だったようで、今回のように工芸作品を
多数並べて展示した訳ではないそうですよ。

これを機に他の明治と江戸の狭間に生きた作家たちを
どんどん取り上げて欲しいです。

はじめまして。

 
 いつも楽しく拝見しております。

 京都での展覧会を見に行きたいと思います。

 トラックバックもさせていただけたら、幸いです。

 よろしくお願いいたします。

詳細なレポートありがとうございます!
「忘れ去られた理由」については会場の図録でも読みましたが本当に残念な気持ちで一杯になりました。この展覧会は是真の名誉復活というか、エポックメーキング的なものになるのかもしれませんね。

あべまつ様

こんばんは。
千氏のお茶の視点でのお話が面白かったですが、
やはり安村先生の講演を拝聴したくなりました。
何しろ1980年の貴重な展覧会を監修されたご本人で
いらっしゃるので万感の思いがあるのではと。
京都展で講演があったら、申し込んでみます。

こんばんは。
貴重な講演会のお話を嬉しく拝読しました。
そうか~やっぱり日本には少ないのか~と落胆ですが、
この展覧会でその凄さは半端なく伝わりますね。
太陽の本も早速手元に置きました。
宗屋氏と山下先生の並んだ絵も見たかったなぁ~と
思ったり。
楽しませていただきました。ありがとうです!!
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