「オラファー・エリアソン あなたが出会うとき」 金沢21世紀美術館
展覧会HP→こちら。

展覧会出展作品は、オラファー・エリアソン公式HPにアップされています → http://www.olafureliasson.net/
オラファー・エリアソンは2005年11月~2006年3月5日に原美術館で日本初個展開催以来、2回目となる大規模展覧会が金沢21世紀美術館開館5周年記念展として開催されている。
原美術館「オラファー・エリアソン 影の光」を見て、こんなに自在に光を操る作家がいるのか驚いた。この時の鑑賞記事は残っていないが、展覧会には間違いなく行っている。
金沢21世紀美術館友の会の会員限定イベント「夕暮れおしゃべりツアー」に参加した。
本展担当学芸員の黒澤浩美氏による、イントロダクションがあった後、簡単な解説をいただきつつ作品鑑賞を参加者で楽しむというもの。
イントロダクションの内容を簡単に要約してみた。
・オラファー(以後オラファー・エリアソンの略称)は、開館前からSANAA設計の金沢21世紀美術館に関心を持ち、美術館側から世界中のアーティストに作品出展依頼を行った時、反応があり金沢まで建物を見に来た。
結果開館記念展に作品を出展し、同館との関係が構築された。
・オラファーの名を世界に知らしめるきっかけになったのは2003年のテート・モダン(ロンドン)のタービン・ホールで発表した《The Weather Project》である。タービンホールに特殊な蛍光灯を使用し夕陽を出現させた。
それ以後、人気アーティストとなったオラファーには作品依頼が相次ぎ多忙を極めたため、開館記念展以後に同館とのつながりがなかなかできなかったが、2007年にサンフランシスコ近代美術館が立ち上げた展覧会《Take your time》(これまでの集大成となる内容)はMOMA、P.S.1コンテンポラリー・アート・センター(NY)、シドニー現代美術館に巡回(シドニー展は4月10日まで開催中)し、作家として重要な次の作品発表の場に金沢21世紀美術館を選んだ。
元々SANAAの建物に強い関心を持っていたこと、同館開館5周年記念のタイミングとマッチし黒澤氏曰く、お見合いが成立したとのこと。
しかし、ビッグなお見合いだ~。
・本展は美術館建物を活かすということを最大限に意識した内容となっていることが重要。
・オラファーからの強い申し出により、キャプションは一切なし、鑑賞順序も不要、作品解説はもちろんのこと、タイトルでさえ展示室には出していない。
鑑賞者が自身の感じるまま作品を楽しみ、遊び、そこから何かを感じ取ってくれればそれで良い。
作品解説ツアーも学芸員の立場上、やらざるを得ないだろうが、極力作品説明をするのでなく、鑑賞者と作品をテーマに対話、感想を拾って欲しい(オラファー談)。
・オラファーは現在ベルリンとコペンハーゲンに在住しているが、巨大なスタジオ(5階建て)がベルリンにあり制作活動の拠点となっている。
本展では、2作品を除き全て本展のために、建物に合わせて作品制作が行われている。全展示作品中19点のうち17点が新作であることも見逃せない。更に、この展覧会は世界のどこにも巡回せず、金沢21世紀美術館だけの開催。
これを見ずして何とするという内容であることは間違いない。
特に印象的な作品について、解説でなく私が感じたままを書いておく。
・《あなたが出会うとき》2009年
黒澤氏曰く、一番最初にこのタイトル名とそれに相応しい内容の作品があることは重要。
ツアーが始まる前に、先に展覧会を見ておいたのだが、その時室内には私と監視係の方だけだった。
私にはこの作品が夜から朝を迎える様子のように感じた。1日の始まり。
闇から光が徐々に現れてくる。
白い壁が、強い照明ライトによってより白く見える。
ここでは様々な鑑賞方法を探って欲しい。光の中に飛び込んで影で遊んでも良し、離れて光の動きを見ても良し。
・《スターブリック》2009年
多面体ライトの集積。オラファーの関心のひとつに多面体が自然界にあるとはどういうことか、それを反映させた作品。増殖する細胞のように見えた。
・《微光の水平線》2009年
安藤忠雄の光の協会のようなわずかなスリットから差し込む光を美しく感じさせる作品なのだが、あいにく私が到着したのは薄暮。光の射し込みはあまり感じられなかったが、オラファーの公式Webでその素晴らしい様子を見ることができる。天気の良い朝がベスト鑑賞タイミングらしい。
・《ゆっくり動く色のある影》2009年
これは楽しい。もう体験してもらうしか楽しむ方法はない。自分が動けば動くほど、そして鑑賞者が多いほど楽しい空間。お子様連れなら、一層楽しめるかもしれない。
こんなに美しい影ってあるんだなと思った。
・《見えないものが見えてくる》2009年
本展のMyベスト3のひとつ。好きだなぁこの作品。まっすぐにのびる白い一直線の光の束が霧の粒子を浮かびあがらせる。原美の作品にちょっとだけ近いかも。
展示空間が広いので、作品がより大きくダイナミックになっている。
まさに見えないものが見えてくるのだった。
オラファーの作品タイトルには作家の重要な意図があるが、作家意図よりも鑑賞者が自由に感じることほど大切なことはないとオラファーは考えているのだった。
・《ワナビ》1991年
他者を観察する方が楽しいかもしれない。あなたはスポットライトが目の前に用意されていたらどうしますか?そう問われているような気がした。
・《動きが決める物のかたち》(まもなく)(いま)(それから)
強いストロボライトを使用した作品なので、長時間見続けることは難しいが、美しさは相当のもの。目の前に繰り広げられていた光景が今も自分の記憶の隅でチカチカと点滅している。美しいオブジェはプラスチックが材料とは思えない。
・《水の彩るあなたの水平線》2009年
いや、これはもう言葉を失う。全員押し黙ってしまうような空間だった。仕掛けは至極簡単かもしれないけれど、これを作ったオラファーは天才でしょう。
色のスペクタクルを二重、三重に楽しめる傑作。Myベスト3のひとつ。
・《あなたが創りだす空気の色地図》2009年
しかし、おしゃれな作品名。色の森だと思った。展覧会チラシの表に採用されているのがこの作品だと思う。
夢の中にいるようだった。
光は赤、緑、青(RGB)の三原色からなっているが、その三原色を空間で表現。でも、そんなこともうどうでもいいような感じがした。むしろ何も知らずに、ただ色があふれた霧の森を楽しめば良いのだ。
・《色のある影絵芝居》2009年
こちらも鑑賞者が増えれば増えるほど楽しめる。というか1人だけだとちっとも面白くない。
この展覧会、普通と違って混んでいればいるほど楽しいかもしれない。もちろん限界はあるけど。
・《アイ・アクティヴィティ・ライン》2009年
建物の長さや空間を色のスペクトラムによって見せる作品。全部で317枚、全て微妙に色が違う。どこからが赤、どこからが緑?複数人で鑑賞するとき、互いの意見を交換すると見え方が人によって違うことが分かる。
ガイドツアーに参加したけれど、これは参加しない方が素直に楽しめるかも。1回目は何も聞かず自分の気持ちと完成に従って、鑑賞し2回目以後はオラファーが作り出した装置や仕掛けを考えてみていくと更に楽しめると思う。
なお、展覧会図録はオラファーが制作中で完成時期、販売価額は未定。決定次第、美術館HPで案内される予定。
*3月22日(月)まで開催中。オススメ!