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「-小林礫斎と手のひらの宇宙- ミニチュアの世界」 兵庫県立歴史博物館 はじめての美術館68

ミニチュア

兵庫県立歴史博物館で開催中の「-小林礫斎と手のひらの宇宙- ミニチュアの世界」に行って来ました。

同館は姫路城の程近く、お城の大手門と反対側に位置している。姫路市に来たのは今回が初めて。元々姫路市立美術館の展覧会目当てに訪れたのだが、姫路市美から徒歩数分の同館で本展が開催されていることを姫路駅で知り、急遽行ってみることにした。

本展の概要は次の通り。~展覧会チラシより引用~
明治から昭和にかけて小林礫斎(こばやしれきさい)と一流の職人たちによって作られたミニチュアは、今、国内外から注目を集めています。
故・中田実氏は、礫斎作品のなかでも格段に小さい超ミニチュアを集めつづけ、彼の死後、コレクションは兵庫県芦屋の地で永らく守り伝えられてきました。本展ではご遺族から近年たばこと塩の博物館に寄贈された旧・中田コレクションを中心に、小林礫斎とその工房のミニチュアを一堂に展観するものです。また、技法や意匠のルーツとなった日本の古美術作品(国宝・重文含む)をあわせてご紹介します。我が国に根づいた「ちいさきもの」を愛でる美意識の系譜に、こころを馳せる契機となれば幸いです。

まず、入口で作品リストを手にとって仰天した。
展示作品数は合計820点!展示替えで入れ替えになる作品は4~5点なので、実質約800点の作品が展示されていることになる。うち、礫斎の作品650点が前述のたばこと塩の博物館所蔵作品である。

<展覧会構成>
序曲    日本美術とミニチュア
第一楽章  小林礫斎とミニチュア
第二楽章  中田実と極小ミニチュアコレクション
第三楽章  見果てぬ夢

序曲から出鼻をくじかれた。
いきなり登場したのは見事な仏画の数々。こちらはてっきりミニチュアが出てくるものだとばかり思っているので、≪法華経変相図≫鎌倉時代初期(海住山寺)の見事な一幅や≪随求曼茶羅図≫鎌倉時代(瑠璃寺蔵)、≪紺紙金字法華経巻第四≫平安時代(鶴林寺)、金銅仏立像・中国・南北朝時代等々が登場し、目が白黒してしまった。
これらのほとんどが優品なのにも感心し、「ミニチュアの世界」展でまさか仏教美術にお目にかかれるとは予想外のと喜び。

これらは信仰のミニチュア表現として制作されたものとして紹介されている。例えば「曼荼羅」=宇宙に溢れる無数の仏を描いた空間の縮図であり、仏世界を縮小したものが「仏画」で、なるほど言われてみれば信仰のミニチュア表現という見方をこれまでして来なかったが、視点は面白い。

歴史博物館らしい観点による展示で、最初から気に入ってしまった。

更に清少納言の「枕草子」の一節を引用する。「なにもなにもちひさき物はみなうつくし」はあまりにも有名。日本人は古来より小さい物を愛して来た。

序章以後、怒涛のミニチュア工芸ラッシュが始まる。

あるわあるわ、よくぞこんなに小さなものを作れたものだと、ほとほと感心する程小さい。
米粒に絵を描くまではよく見かけるが、蒔絵硯箱、象牙細工、たばこ盆にたばこ入れ等々、数え上げればきりがない。
これらは、手のひらの上にちょこんと乗るくらいの小ささ。

中でも、≪葦手模様文車≫小林礫斎・昭11年のミニチュア玩具?の模様は、かの国宝≪葦手下絵和漢朗詠集上巻≫藤原伊行筆・京都国立博物館蔵(2月28日まで展示)で使用されている模様とそっくり。
≪和漢朗詠集≫との類例だとよくぞ看破し、借用できたと学芸員氏の力量にも感服。

こんなに沢山のミニチュアを制作した小林礫斎とはどんな人物なのか、興味は膨らむ。
初代礫斎は江戸時代にはじまり、指物(組み手を見せず、金釘を使用せずに鏡台・茶だんすなどの木工品を作る伝統工芸)細工の職人だった。
本展の小林礫斎はちょうど四代目。関東大震災を機に、ミニチュア制作に傾倒し、彼の作品は袋物商で扱われる以外には、頒布会によって販売された。
前述の古美術作品からの「葦手模様」の引用からも分かるように、彼の作品には意匠、文章などにも古典学習の成果が伺われるものが多く見られる。
それゆえ、一部の文化人たちの間で購入され、愛されてきた。

礫斎のミニチュアを愛した文化人の一人に中田実がいる。
彼は、特別にスタンダードなミニチュアサイズよりも更に小さい極小ミニチュアの制作を依頼した。中田実は、裏千家の茶人・中田宗関の長男で、茶人の家に生まれ育った美意識が礫斎への注文品にも発揮されている。
超ミニチュア茶道具は建水、やかん、香合、茶せん、棗とありとあらゆるものが本物そっくりに再現される。
茶入れに使用される仕覆などに使用される古裂までもがミニチュアとして古裂帳が何冊も制作され、更紗に緞子、金蘭と通常サイズの裂帖と遜色ない質の高さに目を見張る。
茶道具だけではない。香道具や華道具と古典芸能道具全て網羅されていた。

画帖に屏風、掛軸、双六、人形、扇子に団扇。もはや制作されていないものを見つける方が困難。

小ささだけでなく、絵も模様も形もどれも全て高レベルにあることに驚嘆するが、これも全て礫斎を中心とし、共同して制作にあたった一流の江戸職人の存在なしではなしえなかった。あくまで工芸としてのレベルを求めて

しかし、時代はいつまでも礫斎に工芸品としてのミニチュア制作を許してはくれなかった。太平洋戦争に突入し、戦後は礫斎にミニチュアを依頼する人も少なく、実用品としてたばこ道具や箸入れなどを制作し糊口をしのいでいたという。その後、世間は手のひらの世界の存在をすっかり忘れてしまった。

小林礫斎もまた時代に埋もれてしまった工芸家と言える。彼の技術の高さ、その美しさ、多様さ、面白さはもっともっと評価されて良いのに。
本展をきっかけに、小林礫斎のミニチュア作品を改めて見直してみることができたらと切に願ってやまない。

大人も子供も誰にでも楽しめる実に面白い展覧会だった。

*3月28日(日)まで開催中。
なお、下記仏画など一部作品に展示替えがあります。
【前期】~2/28
国宝「葦手下絵和漢朗詠集 上巻」平安時代、京都国立博物館蔵
重要文化財「法華経変相図」鎌倉時代、海住山寺蔵
県指定文化財「随求曼茶羅図」鎌倉時代、瑠璃寺蔵
県指定文化財「降三世明王像」鎌倉時代、瑠璃寺蔵
市指定文化財「紺紙金字法華経巻第四」平安時代、鶴林寺蔵

【後期】3/2~
重要文化財「興福寺曼茶羅図」鎌倉時代、京都国立博物館蔵
府指定文化財「春日曼茶羅十六善神図」鎌倉時代、海住山寺蔵
市指定文化財「春日曼茶羅図」鎌倉時代、西光寺蔵
県指定文化財「紺紙金字大般若経巻第二九八」平安時代、観福寺蔵

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小林礫斎 手のひらの美 @たばこと塩の美術館

 副題は「技を極めた 繊巧美術」、すなわちミニチュアの展覧会。  展示室に入ってあっと驚く。何百という数のミニチュアがところ狭しと並んでいる。観客は小人の国に迷い込んだガリーバーのように大きい。 ↑はチラシ上部に載せてあるものだが、これは展示室の入り...

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とら様

こんばんは。

私も早く再会したくてたまりません。
加えて、各種関連講演が開催されるようなので、
そちらも拝聴したいと思っています。

No title

たばこと塩の博物館で見てきました。
驚愕でした。

遊行七恵さま

この展覧会は、七恵様好みだなぁと思って拝見しました。
図録も900円なのに、充実していてお買い得です。
たばこと塩でも出ていなかったコレクションが新たに
本展で公開されていました。
ぜひぜひ、おでかけくださいませ。
姫路城もまもなく改修でその姿を観られなくなりますし。

追記

いけない、途中で貼り付け損ねた一文があります。
(わたしはいつも直打ちでなくて別に打ちそれをコピペ)
画像云々の後に
「だからこのチラシは上手いと思いますね。ヒトの手との比較で初めて納得が行きますよね」
すみません、追加です。

こんにちは
礫斎すきですよ。たばこと塩で見たとき衝撃でした。
わたしも小さいもの凄く好きなんですが、このサイズでこの精巧さには仰天です。
画像を出すのがムダやな、と思いました。本物を見ないと実感できない精妙巧緻な世界・・・
ああ、本当に参りましたよ。
今日、友人が姫路へ出かけているはずです。
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